特許第6806523号(P6806523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806523車両用補助電源装置および電装品を駆動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806523
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】車両用補助電源装置および電装品を駆動する方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20201221BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201221BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20201221BHJP
   E05B 81/82 20140101ALI20201221BHJP
   E05B 77/12 20140101ALI20201221BHJP
【FI】
   H02J7/34 G
   H02J7/00 302C
   B60R16/033 C
   E05B81/82
   E05B77/12
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-208927(P2016-208927)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-74656(P2018-74656A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
(72)【発明者】
【氏名】山田 英司
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】川村 誠
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大井 康弘
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−231269(JP,A)
【文献】 特開平08−037706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
B60R 16/033
E05B 77/12
E05B 81/82
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の主電源に接続された蓄電装置と、
前記蓄電装置に並列に接続され、前記蓄電装置よりも内部抵抗が小さい静電容量素子と、
前記静電容量素子と電装品の電気負荷との間に設けられ、前記静電容量素子側から供給される直流電圧をパルス電圧に変換するパルス生成部とを備え、
前記パルス生成部は、デューティ比が0.5より小さいパルス電圧を生成する、
車両用補助電源装置。
【請求項2】
前記パルス生成部は、前記静電容量素子と前記電気負荷との間に直列に接続されたスイッチング素子を有する、
請求項1に記載の車両用補助電源装置。
【請求項3】
前記蓄電装置側からの入力電圧を変換して前記電気負荷側へ出力するように構成された電圧変換装置をさらに備えた、
請求項2に記載の車両用補助電源装置。
【請求項4】
前記パルス生成部は、前記静電容量素子側からの入力電圧を規定の出力電圧に変換して前記電気負荷側へ出力するように構成された電圧変換装置と、前記電圧変換装置の出力電圧を制御してパルス電圧に変換する制御部とを有する、
請求項1に記載の車両用補助電源装置。
【請求項5】
前記電装品は、ドアロックアクチュエータである、
請求項1からのいずれか1項に記載の車両用補助電源装置。
【請求項6】
前記電装品は、パルス駆動が可能な第1電装品であり、
前記第1電装品の電気負荷に並列に接続されたパルス駆動が困難な第2電装品の電気負荷と、前記パルス生成部との間には、平滑コンデンサ並列に接続されている、
請求項1からのいずれか1項に記載の車両用補助電源装置。
【請求項7】
車両の主電源に接続された蓄電装置と、前記蓄電装置に並列に接続され、前記蓄電装置よりも内部抵抗が小さい静電容量素子とを備えた車両用補助電源装置を用いて、前記主電源から電装品の電気負荷への電力供給ラインが断たれたときに前記蓄電装置を用いて前記電装品を駆動する方法であって、
前記静電容量素子の放電と蓄電を所定のデューティ比で繰り返し、前記電装品の電気負荷にパルス電圧を供給するステップを含み、
前記パルス電圧は、デューティ比が0.5より小さいパルス電圧である、
電装品を駆動する方法。
【請求項8】
前記蓄電装置側から供給される電圧を変換して前記電気負荷側へ出力するステップをさらに含む、
請求項に記載の電装品を駆動する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の主電源に接続された蓄電装置を備えた車両用補助電源装置、および車両用補助電源装置を用いて電装品を駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行中の安全性を確保するため、車両が所定速度を超えると自動的にドアをロックする自動ドアロック機構を備えた車両が実用化されている。自動ドアロック機構は、車両が事故に遭遇したときに乗員が車外に容易に出られるように、例えば衝撃を感知してドアロックを自動的に解除するように構成されることがある。
【0003】
このとき、事故の際に、バッテリなどの主電源と自動ドアロック機構とを接続する配線にショートや断線が生じると、主電源から自動ドアロック機構へ電力を供給できなくなることから、例えば主電源と自動ドアロック機構とを接続する予備の配線を別途設けることも考えられるが、配線経路が複雑になるので好ましくない。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、蓄電装置としての電気二重層コンデンサと、車両の衝突を検出する衝突検出手段と、衝突検出手段からの信号を受けて強制的にドアロックを解除するドアロック解除スイッチとを備えた補助電源装置が記載されている。前記衝突検出手段により車両の衝突が検出されたときには、電気二重層コンデンサから供給される電力によりドアロック解除スイッチが駆動され、ドアロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−33533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気二重層コンデンサや二次電池などの蓄電装置は所定の内部抵抗を有する。したがって、補助電源として蓄電装置を備えた補助電源装置では、自動ドアロック機構などの電装品を駆動するための蓄電装置の蓄電容量(電気二重層コンデンサであれば、静電容量)を設定するうえで、蓄電装置の内部抵抗による電圧降下を考慮する必要がある。特に蓄電装置を低温環境下で使用する場合や蓄電装置に劣化が生じているときには、その内部抵抗が大きくなり、これを考慮して、蓄電装置の蓄電容量を大きくする必要が生じる。
【0007】
しかし、蓄電装置の蓄電容量を大きくすると、蓄電装置の大型化やコスト上昇につながるおそれがある。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、車両の主電源に接続された蓄電装置を備えた車両用補助電源装置において、主電源から電装品の電気負荷への電力供給ラインが断たれたときに、蓄電装置に蓄えられた電気エネルギーを有効に活用して電装品を駆動することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る車両用補助電源装置は次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明は、車両用補助電源装置であって、
車両の主電源に接続された蓄電装置と、
前記蓄電装置に並列に接続され、前記蓄電装置よりも内部抵抗が小さい静電容量素子と、
前記静電容量素子と電装品の電気負荷との間に設けられ、前記静電容量素子側から供給される直流電圧をパルス電圧に変換するパルス生成部とを備え、
前記パルス生成部は、デューティ比が0.5より小さいパルス電圧を生成する
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用補助電源装置であって、
前記パルス生成部は、前記静電容量素子と前記電気負荷との間に直列に接続されたスイッチング素子を有する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用補助電源装置であって、
前記蓄電装置側からの入力電圧を変換して前記電気負荷側へ出力するように構成された電圧変換装置をさらに備えている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両用補助電源装置であって、
前記パルス生成部は、前記静電容量素子側からの入力電圧を規定の出力電圧に変換して前記電気負荷側へ出力するように構成された電圧変換装置と、前記電圧変換装置の出力電圧を制御してパルス電圧に変換する制御装置とを有する。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の車両用補助電源装置であって、
前記電装品は、ドアロックアクチュエータである。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の車両用補助電源装置であって、
前記電装品は、パルス駆動が可能な第1電装品であり、
前記第1電装品の電気負荷に並列に接続されたパルス駆動が困難な第2電装品の電気負荷と、前記パルス生成部との間には、平滑コンデンサ並列に接続されている。
【0017】
請求項に記載の発明は、
車両の主電源に接続された蓄電装置と、前記蓄電装置に並列に接続され、前記蓄電装置よりも内部抵抗が小さい静電容量素子とを備えた車両用補助電源装置を用いて、前記主電源から電装品の電気負荷への電力供給ラインが断たれたときに前記蓄電装置を用いて前記電装品を駆動する方法であって、
前記静電容量素子の放電と蓄電を所定のデューティ比で繰り返し、前記電装品の電気負荷にパルス電圧を供給するステップを含み、
前記パルス電圧は、デューティ比が0.5より小さいパルス電圧である
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電装品を駆動する方法であって、
前記蓄電装置側から供給される電圧を変換して前記電気負荷側へ出力するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、車両の主電源から電装品の電気負荷への電力供給ラインが断たれたときには、電装品を駆動するために、蓄電装置に並列に接続された静電容量素子から電装品の電気負荷へ、パルス生成部を介してパルス電圧が供給される。このとき、静電容量素子の内部抵抗が蓄電装置の内部抵抗よりも小さいので、電気負荷に流れる電流においては静電容量素子から電気負荷に供給される電流成分が優勢になる。これにより、電気負荷に電流が流れている間の蓄電装置の端子電圧の低下を抑制し、蓄電装置に蓄えられた電気エネルギーが減少するのを抑制できる。このようにして、蓄電装置に蓄えられた電気エネルギーを有効に活用して電装品を駆動できる。
パルス生成部が生成するパルス電圧のデューティ比が0.5よりも小さいので、静電容量素子の放電時間よりも充電時間を長くすることができ、電装品の電気負荷に、十分に大きい電圧を供給できる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、静電容量素子と電気負荷との間に直列に接続されたスイッチング素子がオフのときには、蓄電装置により静電容量素子が充電され、スイッチング素子がオンのときには、静電容量素子から電装品の電気負荷に、より多くの電流が供給される。このようにして、請求項1に記載の効果が具体的に達成される。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、静電容量素子側からの入力電圧は、電圧変換装置により変換されて電気負荷側へ出力される。これにより、電装品をより確実に駆動できる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、制御部により制御された電圧変換装置の出力電圧がオフ電圧のときには、蓄電装置により静電容量素子が充電され、電圧変換装置の出力電圧がオン電圧のときには、静電容量素子から電装品の電気負荷に、より多くの電流が供給される。このようにして、請求項1に記載の効果が具体的に達成される。
【0024】
請求項に記載された発明によれば、電装品がドアロックアクチュエータであるので、請求項1に記載の効果が具体的に達成される。
【0025】
請求項に記載された発明によれば、パルス駆動が可能な前記電装品(第1電装品)の電気負荷に並列に接続されたパルス駆動が困難な他の電装品(第2電装品)の電気負荷には、静電容量素子側から供給される電圧は平滑コンデンサを介して供給される。これにより、例えば、パルス駆動が可能な特性を有する第1電装品とパルス駆動が困難な特性を有する第2電装品とを同時に駆動できる。
【0026】
請求項に記載の発明によれば、車両の主電源から電装品の電気負荷への電力供給ラインが断たれたときには、電装品を駆動するために、蓄電装置に並列に接続された静電容量素子の放電と蓄電が所定のデューティ比で繰り返され、静電容量素子から電装品の電気負荷へパルス電圧が供給される。このとき、静電容量素子の内部抵抗が蓄電装置の内部抵抗よりも小さいので、電気負荷に流れる電流においては静電容量素子から電気負荷に供給される電流成分が優勢になる。これにより、電気負荷に電流が流れている間の蓄電装置の端子電圧の低下を抑制し、蓄電装置に蓄えられた電気エネルギーが減少するのを抑制できる。このようにして、蓄電装置に蓄えられた電気エネルギーを有効に活用して電装品を駆動できる。
パルス電圧はデューティ比が0.5より小さいパルス電圧であるので、静電容量素子の放電時間よりも充電時間を長くすることができ、電装品の電気負荷に、十分に大きい電圧を供給できる。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、静電容量素子側から供給される電圧は、増大されて電装品の電気負荷に供給される。これにより、電装品をより確実に駆動できる。

【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のある実施形態に係る補助電源装置を備えた車両を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る補助電源装置を備えた車両のシステム図である
図3】本発明の第1実施形態に係る補助電源装置の概略構成を示す等価回路図である。
図4】本発明の第1実施形態における蓄電装置の例示的な構成を示す図である。
図5】スイッチング素子のスイッチング動作を説明するための図である。
図6】比較例による補助電源装置の概略構成を示す等価回路図である。
図7】比較例における、蓄電装置の端子電圧とドアロックアクチュエータの端子電圧の時間変化を示すグラフである。
図8】比較例において蓄電装置の内部抵抗を変化させたときの蓄電装置の端子電圧とドアロックアクチュエータの端子電圧の時間変化を示す図であり、(a)では内部抵抗を0Ω、(b)では内部抵抗を2mΩ、(c)では内部抵抗を20mΩとしている。
図9】本発明の第1実施形態における、蓄電装置の端子電圧とドアロックアクチュエータの端子電圧の時間変化を示すグラフである。
図10図9の一部を拡大して示すグラフである。
図11】蓄電装置の端子電圧とドアロックアクチュエータの動作との関係を示す図である。
図12】本発明の第1実施形態の変形例による補助電源装置の概略構成を示す等価回路図である。
図13】本発明の第1実施形態の変形例による補助電源装置の概略構成を示す等価回路図である。
図14】本発明の第1実施形態の変形例による補助電源装置の概略構成を示す等価回路図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る補助電源装置の概略構成を示す等価回路図である。
図16】本発明の第2実施形態における蓄電装置の例示的な構成を示す図である。
図17】本発明の第2実施形態における、蓄電装置の端子電圧とドアロックアクチュエータの端子電圧の時間変化を示すグラフである。
図18図17の一部を拡大して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
(車両1)
図1に示すように、車両1は、エンジンルーム2内に設けられた車両の主電源であるメインバッテリ3を備えている。メインバッテリ3は、配線4を介して、ドア本体に設けられたドアロックアクチュエータの電気負荷5(以下、アクチュエータという)に電気的に接続されている。配線4は、メインバッテリ3からアクチュエータ5への電力供給ラインを構成する。実施形態では、車両1には4つのドアが設けられており、各ドア本体にアクチュエータ5(5a〜5d)が設けられている。
【0031】
アクチュエータ5は、図示しないDCモータを用いて、ドア開放用レバーの操作力が伝達される状態(アンロック状態)と伝達されない状態(ロック状態)との間で、ドアラッチ機構に備えられるリンク機構の状態を択一的に切り替えるように動作する。
【0032】
メインバッテリ3は、配線4の一部を構成する電源配線部4aと車両用補助電源装置20(以下、単に補助電源装置という)とを介してアクチュエータ5に電気的に接続されている。補助電源装置20は、例えば、車両1が事故に遭遇したときに、メインバッテリ3が損傷し、または、電源配線部4aにショートや断線が生じ、これによりメインバッテリ3からアクチュエータ5への電力供給ラインが絶たれたときに、メインバッテリ3に代わってアクチュエータ5を駆動する機能を有する。
【0033】
ドアロックを解除するためには、アクチュエータ5に所定の電力量を供給する必要がある。実施形態では、4つのドアのドアロックをすべて解除するために、例えば直流電圧12V、電流35A、最大作動時間300msec(126J)の電力量をアクチュエータ5に供給する必要がある。ここでは、確実にドアロックを解除するために、余裕をもって後述する閾値(8V)を上回る電圧として、例示的に12Vに設定している。なお、本明細書の説明でなされる数値計算において、アクチュエータ5の電気負荷は、オームの法則に従う電気抵抗であるとする。
【0034】
また、例えばラッチの回動に伴う摩擦力に逆らってアクチュエータ5を動作させるため、アクチュエータ5を駆動するためには、ある閾値以上の電力を供給する必要がある。前記閾値は、例えば直流モータの軸受に塗布されたグリスの粘度などにより変化するが、実施形態では例えば8Vの電圧に相当する電力である。
【0035】
ドアロック制御システム10は、補助電源装置20とドアロックユニット30とを有する。また補助電源装置20は、蓄電装置21を備えている。補助電源装置20とドアロックユニット30は、接地されている。補助電源装置20は、事故などにより車体に衝突荷重が加わった場合でも比較的変形が小さい箇所(例えばシートの下方)に配置されていてもよい。ドアロックユニット30は、インストルメントパネルの内部に配置されていてもよい。図1では、補助電源装置20とドアロックユニット30を実際の寸法よりも大きく描いている。
【0036】
[第1実施形態]
(補助電源装置20)
図2図3に示すように、第1実施形態に係るドアロック制御システム10に備えられる補助電源装置20は、メインバッテリ3に電気的に接続された補助電源としての蓄電装置21と、蓄電装置21に並列に接続された静電容量素子22とを有する。蓄電装置21は、通常の状態(電源配線部4aにショートや断線が生じていない状態)では、メインバッテリ3により充電されている。
【0037】
図3の回路図(および以下で説明する他の回路図)において、符号VLは蓄電装置21の端子電圧を示し、符号Vはアクチュエータ5の端子電圧(負荷電圧)の大きさを示し、符号Iはアクチュエータ5を流れる負荷電流の大きさを示す。
【0038】
実施形態では、蓄電装置21は、複数の単位セルを有する電気二重層コンデンサ(以下、EDLCという)により構成されている。一般に、EDLCは、体積あたりの静電容量が大きく、二次電池と比較すると、急速充電が可能であって長寿命であるという利点がある。
【0039】
一例では、EDLCは、Maxwell社製EDLC(BCAP0050)であってもよい。実施形態で、EDLCの単位セルは、静電容量が25F、内部抵抗が20mΩ、最大充電電圧は2.3Vである。図4に符号21a〜21hで示すように、実施形態では、8個の単位セルが直列に接続されて蓄電装置21が構成されている。したがって、蓄電装置21の内部抵抗(合成抵抗)Rは160mΩ、静電容量(合成容量)Cは3.125F、最大充電電圧Eは18.4Vである。8個の単位セルの静電容量の総和Csは200Fである。
【0040】
静電容量素子22は、内部抵抗が蓄電装置21よりも十分に小さい。静電容量素子22は、直列または並列に接続して2つ以上設けられていてもよい。この例では、静電容量素子22の内部抵抗の合成抵抗が、蓄電装置21よりも十分に小さい。
【0041】
静電容量素子22は、実施形態では、アルミ電解コンデンサである。一例では、アルミ電解コンデンサは、日本ケミコン社製ELBK250EC3143AM(静電容量は14000uF)であってもよい。一般に、アルミ電解コンデンサは、EDLCと比較すると静電容量が小さい一方、内部抵抗(等価直列抵抗)が十分に小さく、温度変化や劣化が生じても内部抵抗の値が比較的安定しているという特徴を有する。実際に、アルミ電解コンデンサの内部抵抗は1mΩ程度であり、蓄電装置21の内部抵抗Rに対して無視できる。
【0042】
メインバッテリ3と蓄電装置21との間には、蓄電装置21の耐電圧を超える高い電圧がメインバッテリ3から蓄電装置21に供給されるのを防止する機能を有するアテネ−タ23が設けられている。アテネ−タ23は、ツェナーダイオードであってもよい。
【0043】
補助電源装置20は、静電容量素子22側から供給される直流電圧をパルス電圧に変換するパルス生成部として、スイッチング素子24と、パルス制御部25とをさらに有する。図3に示すように、スイッチング素子24は、静電容量素子22の一端とアクチュエータ5の一端との間に直列に接続されている。
【0044】
実施形態では、スイッチング素子24は、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などのトランジスタにより構成されている。スイッチング素子24は、静電容量素子22側から供給される直流電圧を所定のデューティサイクルでスイッチングしてアクチュエータ5に供給するように構成されている。
【0045】
パルス制御部25は、スイッチング素子24によるスイッチングのデューティサイクルを制御する。パルス制御部25は、公知の三角波発振回路とコンパレータとの組み合わせ、或いはマイクロコントローラであってもよい。図5に示すように、スイッチング素子24のデューティサイクルにおけるオン時間をT1とし、周期をT2とする。デューティ比はT1/T2で定義される。デューティ比は、0.5よりも小さいことが好ましい。実施形態では、T1は2ms、T2は10ms(デューティ比は0.2)に設定される。
【0046】
実施形態では、周期T2は、直流モータの電機子のインダクタンスLmと抵抗Rmから求められる時定数τ(=Lm/Rm)よりも十分に大きい値に設定される。一般的な直流モータでは、T2は2ms以下である。したがって、周期T2は2msよりも長いことが好ましい。
【0047】
(ドアロックユニット30)
ドアロックユニット30は、MOSFETなどのトランジスタ31a〜31cと、これらのトランジスタを制御するための集中制御部32とを有する。集中制御部32は、図示しない車両センサからの要求信号を受けてトランジスタ31a〜31cを制御し、これにより継電器33a〜33cを操作してアクチュエータ5を駆動するように構成されている。例えば、集中制御部32は、車速センサからの信号を基に(車速が一定値以上となったときに)ドアをロックし、エアバッグセンサからの信号を基に(衝突を検出したときに)ドアをアンロックするようにトランジスタ31a〜31cに制御信号を供給する。
【0048】
図2に示すように、トランジスタ31a〜31cの各一端(例えばMOSFETのソースまたはドレイン)と静電容量素子22の一端との間には、継電器33a〜33cを含む制御回路33が設けられている。継電器33a〜33cの動作により、ドアロック機構がアンロック状態からロック状態に移行するようにアクチュエータ5を駆動するのか、またはロック状態からアンロック状態に移行するようにアクチュエータ5を駆動するのかが切り替えられる。
【0049】
(比較例)
次に、実施形態に係る補助電源装置20の効果を説明するために、比較例による補助電源装置120について説明する。比較例による補助電源装置120での説明において、第1実施形態に係る補助電源装置20に含まれる部品と同じ部品には同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、比較例による補助電源装置120では、蓄電装置121に、静電容量素子22の代わりに電圧変換装置26が設けられている。電圧変換装置26は、DC−DCコンバータであってもよい。電圧変換装置26は、蓄電装置121とアクチュエータ5との間に設けられており、蓄電装置121側からの入力電圧(蓄電装置121の端子電圧VL)を変換し、アクチュエータ5側に規定の電圧(例えば12V)を出力するように構成されている。なお、車両1に備えられる一般的な電装品であれば、12Vの電圧を供給することにより駆動できる。
【0051】
補助電源装置120では、蓄電装置121の端子電圧VLがゼロになるまでの間、アクチュエータ5に規定の電圧を供給できる。なお、電圧変換装置26では、損失がない(変換効率が100%である)という条件の下、入力側電力と出力側電力が等しい。本明細書の説明でなされる数値計算では、電圧変換装置26の損失がないものとする。
【0052】
蓄電装置121では、蓄電装置21と同様に、8個の単位セルが直列に接続されてEDCLが構成されている。ただし、蓄電装置121のEDLCを構成する単位セルの静電容量は、蓄電装置21のEDLCを構成する単位セルの静電容量の2倍の大きさ(50F)である。蓄電装置121の内部抵抗(合成抵抗)Rは160mΩ、静電容量(合成容量)Cは6.25F、最大充電電圧Eは18.4Vである。8個の単位セルの静電容量の総和Csは400Fである。
【0053】
次に、比較例による補助電源装置120の動作を説明する。メインバッテリ3からアクチュエータ5への電力供給ラインが絶たれた状態でアクチュエータ5を駆動することを考える。
【0054】
補助電源装置120において、蓄電装置121の端子電圧VLは、電圧変換装置26により増大されてアクチュエータ5に供給され、蓄電装置121が放電して負荷電流Iが流れる。これにより、蓄電装置121の端子電圧VLが低下する。図7に示すように、比較例による補助電源装置120では、約0.34secの間、12V×35Aの電力がアクチュエータ5に供給され、ドアロックが解除された。なお、図7では、蓄電装置121の端子電圧VLを実線で、アクチュエータ5の端子電圧Vを破線で示している。
【0055】
なお、比較例による補助電源装置120の構成から電圧変換装置26を取り除いた場合、蓄電装置21の端子電圧VLが低下してアクチュエータ5に供給される電力が前記アクチュエータ5を駆動するための閾値を下回った後は、アクチュエータ5を駆動することができなくなってしまい、ドアロックが解除されないおそれがある。
【0056】
ここで、比較例において蓄電装置121の内部抵抗Rを変化させたときの蓄電装置121の端子電圧VLとアクチュエータ5の端子電圧Vとの関係について、図8を参照して説明する。なお、図8では、蓄電装置121の端子電圧VLを実線で、アクチュエータ5の端子電圧Vを破線で示している。
【0057】
図8(a)では、蓄電装置121の内部抵抗Rを0Ωとした。その結果、約300msecの間、12V×35Aの電力がアクチュエータ5に供給され、ドアロックが解除された。
【0058】
図8(b)では、蓄電装置121の内部抵抗Rを2mΩとした。その結果、約80msecの間、12V×35Aの電力がアクチュエータ5に供給され、ドアロックを解除することはできなかった。内部抵抗Rが2mΩ(図8(b))のときに内部抵抗Rが0Ω(図8(a))のときに比べて電力の供給時間が短くなったのは、内部抵抗Rにより蓄電装置121の端子電圧VLが低下することによる。なお、電圧変換装置26では、入力側電力と出力側電力とが等しいので、蓄電装置121の端子電圧VLが低下すると、電圧変換装置26の入力側電流が増大する。これにより、電圧VLがさらに低下することになる。
【0059】
図8(c)では、蓄電装置121の内部抵抗Rを20mΩとした。その結果、内部抵抗Rが2mΩ(図8(b))のときに比べて蓄電装置121の端子電圧VLがより低下し、12V×35Aの電力をアクチュエータ5に供給することはできず、ドアロックを解除することはできなかった。
【0060】
以上のように、比較例による補助電源装置120を用いて、必要な電力量(12V×35A×300msec=126J)をアクチュエータ5に供給してドアロックを解除するためには、静電容量50Fで内部抵抗R=20mΩの単位セルを少なくとも8つ用いる必要があることがわかった。特に、蓄電装置121の内部抵抗Rは、EDLCが低温環境下におかれたときやEDLCに劣化が生じたときには大きくなり、より多くの単位セルが必要になる。なお、比較例ではEDLCの単位セルを直列に接続したが、並列に接続した場合でも、蓄電装置121に蓄えられる電気エネルギー量は同じであり、説明した結果と同様の結果が得られる。
【0061】
(補助電源装置20の動作)
次に、第1実施形態に係る補助電源装置20の動作を説明する。メインバッテリ3からアクチュエータ5への電力供給ラインが絶たれた状態でアクチュエータ5を駆動することを考える。
【0062】
補助電源装置20において、スイッチング素子24が作動すると、パルス制御部25により設定されたデューティ比(実施形態では0.2)で静電容量素子22の放電と蓄電が繰り返され、アクチュエータ5にパルス電圧が供給される。図9図10に示すように、スイッチング素子24がオンのときの電圧は、蓄電装置21の最大充電電圧E(18.4V)から緩やかに減衰する。なお、図10は、図9の1.5s付近(四角囲み部分)の拡大図である。図10では、蓄電装置21の端子電圧VLを実線で、アクチュエータ5の端子電圧Vを破線で示している。
【0063】
スイッチング素子24がオンの間(オン時間T1、実施形態では2ms)、静電容量素子22からの放電が生じ、蓄電装置21の端子電圧VL(直流電圧)がアクチュエータ5に供給されてアクチュエータ5に負荷電流Iが流れる。このとき、アクチュエータ5である直流モータの出力軸は、アクチュエータ5の端子電圧Vに比例する回転トルクを発生する。図11に示すように、端子電圧Vが印加される間、アクチュエータ5の動作速度(直流モータの出力軸の回転速度)は大きくなる。直流モータの出力軸の回転は、スイッチング素子24がオフにされても慣性により一定時間継続される。
【0064】
一方、スイッチング素子24がオフの間(周期T2、実施形態では10ms)、蓄電装置21により静電容量素子22が充電される。一方、放電時においては、静電容量素子22の内部抵抗が蓄電装置21の内部抵抗よりも十分に小さいので、主として静電容量素子22からアクチュエータ5に電流が供給され、蓄電装置21からアクチュエータ5には殆ど電流が供給されない。これにより、アクチュエータ5に負荷電流Iが流れている間に蓄電装置21の端子電圧VLが低下するのを抑制できる。
【0065】
特に、第1実施形態では、スイッチング素子24によるスイッチングのデューティ比が0.5よりも小さい(0.2である)ので、静電容量素子22の放電時間よりも充電時間が長くなる。このようにして、充電時間の間に静電容量素子22が十分に充電され、アクチュエータ5に前記閾値以上の電力を供給でき、またその時間が長くなる。
【0066】
なお、第1実施形態では、スイッチングの周期T2は、一般的な直流モータの時定数τよりも十分に大きい値に設定されるので、スイッチング時に発生する直流モータの電機子で発生する逆起電力の影響は無視できる。
【0067】
結果として、図9に示すように、第1実施形態に係る補助電源装置20では、12V×35A以上の電力が320ms(1.6s×0.2)以上、アクチュエータ5に供給され、ドアロックが解除された。
【0068】
比較例の蓄電装置121では、EDCLの単位セルの容量の総和Csは400Fであり、第1実施形態の蓄電装置21では、容量の総和Csは200Fである。一般に、蓄電装置のサイズやコストは、容量の総和Csに伴って増大する。したがって、第1実施形態では、比較例に対して蓄電装置を小型化し、またはコストを低下させることができる。逆に、容量の総和Csを比較例と同じにした場合は、アクチュエータ5により多くの電力量を供給でき、したがって、より多くの電力量を必要とする電装品を駆動できる。
【0069】
(第1実施形態の変形例)
図12図13に示すように、第1実施形態の変形例による補助電源装置20a,20bでは、図3に示す補助電源装置20に加えて、蓄電装置21とアクチュエータ5との間に電圧変換装置26が設けられている。電圧変換装置26は、静電容量素子22側からの入力電圧を規定の出力電圧に変換しアクチュエータ5側へ出力するように構成されている。
【0070】
図12に示す例では、電圧変換装置26は、蓄電装置21と静電容量素子22との間に設けられている。アクチュエータ5を駆動するときには、蓄電装置21の端子電圧VLが電圧変換装置26により増大される。増大した直流電圧により静電容量素子22が充電され、静電容量素子22から供給される直流電圧がスイッチング素子24によりパルス電圧に変換され、アクチュエータ5に供給される。
【0071】
図13に示す例では、電圧変換装置26は、スイッチング素子24とアクチュエータ5との間に設けられている。アクチュエータ5を駆動するときには、蓄電装置21により充電された静電容量素子22からスイッチング素子24に直流電圧が供給され、スイッチング素子24により生成されたパルス電圧が電圧変換装置26により増大され、増大されたパルス電圧がアクチュエータ5に供給される。
【0072】
図12図13に示す例によれば、アクチュエータ5に供給されるパルス電圧は、電圧変換装置26により予め増大された大きさを有するので、アクチュエータ5に前記閾値以上の電力をより確実に供給できる。なお、図12図13に示す例では、静電容量素子22とスイッチング素子24との間に電圧変換装置26を配置した場合にも、同様にこの効果を得ることができる。
【0073】
図14に示すように、第1実施形態の他の変形例による補助電源装置20cでは、補助電源装置20cを用いて、アクチュエータ5に並列に接続された他の電装品6を駆動することを考える。他の電装品6は、例えばマイクロコンピュータを用いた電装品などのように、パルス駆動が困難な特性を有するものとする。そこで、スイッチング素子24の一端(例えばMOSFETのソースまたはドレイン)と他の電装品6の一端との間にダイオード27を直列に接続して他の電装品6に供給される電流を整流するとともに、他の電装品6と並列接続されたコンデンサ28を設けることにより、他の電装品6に供給する電圧を確保する。図14に示す例では、パルス駆動が可能な特性を有する電装品(例えばアクチュエータ5)とパルス駆動が困難な特性を有する他の電装品6とを同時に駆動できる。
【0074】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る補助電源装置220の説明において、第1実施形態に係る補助電源装置20および比較例による補助電源装置110に含まれる部品と同じ部品には同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0075】
図15に示すように、第2実施形態に係る補助電源装置220は、スイッチング素子24の代わりに、電圧変換装置26と、電圧変換装置26が出力するパルス電圧のデューティサイクルを制御するデューティ制御部29とをさらに有する。電圧変換装置26とデューティ制御部29は、静電容量素子22側から供給される直流電圧をパルス電圧に変換するパルス生成部として機能する。
【0076】
実施形態では、電圧変換装置26は、DC−DCコンバータである。電圧変換装置26は、蓄電装置21の端子電圧VLを変換し、アクチュエータ5側に規定の電圧(実施形態では12V)を出力するように構成されている。デューティ制御部29は、マイクロコントローラであってもよい。デューティ制御部29による電圧変換装置26が出力するパルス電圧のデューティサイクルにおいて、オン電圧を供給する時間をT1とし、周期をT2とする。第1実施形態で説明したように、デューティ比T1/T2は、0.5よりも小さいことが好ましい。実施形態では、T1は2ms、T2は10ms(デューティ比は0.2)に設定される。また、第1実施形態で説明したように、周期T2は2msよりも長いことが好ましい。
【0077】
実施形態で、EDLCの単位セルは、静電容量が50F、内部抵抗が20mΩ、最大充電電圧は2.3Vである。図16に符号221a〜221cで示すように、実施形態では、3個の単位セルが直列に接続されて蓄電装置221が構成されている。したがって、蓄電装置221の内部抵抗(合成抵抗)Rは60mΩ、静電容量(合成容量)Cは16.67F、最大充電電圧Eは6.9Vである。3個の単位セルの容量の総和Csは150Fである。
【0078】
次に、第2実施形態に係る補助電源装置220の動作を説明する。メインバッテリ3からアクチュエータ5への電力供給ラインが絶たれた状態でアクチュエータ5を駆動することを考える。
【0079】
補助電源装置220において、電圧変換装置26とデューティ制御部29が作動すると、デューティ比(実施形態では0.2)で静電容量素子22の放電と蓄電が繰り返され、アクチュエータ5にパルス電圧が供給される。図17図18に示すように、電圧変換装置26が出力するパルス電圧(アクチュエータ5の端子電圧Vに等しい)は、オン電圧(12V)とオフ電圧(0V)をデューティ比で繰り返す。なお、図18は、図17の1.5s付近(四角囲み部分)の拡大図である。図18では、蓄電装置221の端子電圧VLを実線で、アクチュエータ5の端子電圧Vを破線で示している。
【0080】
パルス電圧がオン電圧の間(オン時間T1、実施形態では2ms)、静電容量素子22からの放電が生じ、規定電圧であるアクチュエータ5の端子電圧V(実施形態では12V)がアクチュエータ5に供給されてアクチュエータ5に負荷電流Iが流れる。このとき、アクチュエータ5である直流モータの出力軸は、アクチュエータ5の端子電圧Vに比例する回転トルクを発生する。直流モータの出力軸の回転は、アクチュエータ5の端子電圧Vがオフ電圧となっても慣性により一定時間継続される。
【0081】
一方、パルス電圧がオフ電圧の間(周期T2、実施形態では10ms)、蓄電装置21により静電容量素子22が充電される。このとき、補助電源装置220では、第1実施形態に係る補助電源装置20と同様に、以下の作用効果が得られる。まず、静電容量素子22の内部抵抗が蓄電装置21の内部抵抗よりも十分に小さいことにより、アクチュエータ5に負荷電流Iが流れている間に蓄電装置21の端子電圧VLが低下するのを抑制できる。また、電圧変換装置26が出力するパルス電圧のデューティ比が0.5よりも小さいので、充電時間の間に静電容量素子22が十分に充電され、アクチュエータ5に前記閾値以上の電力を供給できる時間が長くなる。
【0082】
[変形例]
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。また、各実施形態に記載された特徴は、自由に組み合わせられてよい。また、上述の実施形態には、種々の改良、設計上の変更および削除が加えられてよい。例えば、降圧装置を用いてELDCの直列本数を増やしてもよい。
【0083】
例えば、上述の実施形態では、蓄電装置21,221として電気二重層コンデンサを用いたが、本発明はこれに限定されることなく、蓄電装置21,221は、例えばリチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などであってもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、メインバッテリ3からの電力供給ラインが断たれたときにメインバッテリ3の代わりに蓄電装置21,221を用いて駆動する必要がある電装品としてドアロックアクチュエータ5を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、当該電装品は、例えば、パワーウインドウ用、パーキングブレーキ用またはブレーキアシスト用のモータ、緊急通報システム、自動ハザード点滅システムなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明によれば、車両の主電源に接続された蓄電装置を備えた車両用補助電源装置において、例えば車両が事故に遭遇して衝突荷重が加わり、主電源から電装品の電気負荷への電力供給ラインが断たれたときに、電気容量の小さい蓄電装置に蓄えられた限られた電気エネルギーを有効に活用して電装品を駆動できる。したがって、自動ドアロック機構、パワーウインドウシステム、パーキングブレーキシステム、ブレーキアシストシステム、緊急通報システム、自動ハザード点滅システムなどを備えた車両の製造分野において、本発明が好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
3 メインバッテリ
4a 電源配線部
5(5a〜5d) ドアロックアクチュエータ
10 ドアロック制御システム
20,20a,20b,20c,220 車両用補助電源装置
21,221 蓄電装置
22 静電容量素子
24 スイッチング素子
25 パルス制御部
26 電圧変換装置
30 ドアロックユニット
31a〜31c トランジスタ
32 集中制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18