(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0034】
≪実施の形態1≫
〈電磁流量計の構成〉
図1は、本発明の一実施の形態に係る励磁回路を備えた電磁流量計の構成を示す図である。
図1に示される電磁流量計10は、導電性を有する流体の流量を測定する機能を有しており、検出器16の測定管Pex内を流れる流体の流れ方向に対して磁界発生方向が垂直となるよう配置された励磁コイルLexへ、極性が交互に切り替わる励磁電流Iexを供給し、励磁コイルLexからの発生磁界と直交して測定管Pexに配設された一対の電極E1,E2の間に生じる起電力を検出し、この起電力を増幅した後、サンプリングして信号処理することにより、測定管Pex内を流れる流体の流量を測定する。
【0035】
具体的に、電磁流量計10は、主な回路部として、電源回路11、データ処理制御回路14、励磁回路15、検出器16、および設定・表示器17が設けられている。
【0036】
電源回路11は、上位装置(図示せず)からの入力直流電源DCin(例えば24V)から複数の直流電圧を生成して、制御回路14および励磁回路15に供給する機能を有している。具体的に、電源回路11は、主な回路部として、制御回路11A、スイッチングトランス11B、整流回路11C、電圧レギュレータ(REG)11D、昇圧DC−DCコンバータ12、および電圧レギュレータ(REG)13から構成されている。
【0037】
制御回路11Aは、入力直流電源DCinを、例えば数10KHz〜数MHz程度の高周波でスイッチングしてスイッチングトランス11Bの一次側巻線へ供給する。整流回路11Cは、スイッチングトランス11Bの二次側巻線から出力された高周波のパルス信号を整流して直流のアナログ信号処理用の動作電圧VmA(例えば24V)と接地電位VmCOM(0V)を生成してデータ処理制御回路14へ供給する。電圧レギュレータ11Dは、VmAからデジタル信号処理用の動作電圧VmD(例えば5V)を生成してデータ処理制御回路14へ供給する。
【0038】
昇圧DC−DCコンバータ12は、非絶縁型の昇圧チョークコンバータ回路からなり、DCinからチョークコイルに流れる電流を、例えば数100KHz程度の高周波数からなるPWM周期Tpwmのクロック信号CLKに基づき入力直流電源DCinをパルス幅変調PWM(Pulse Width Modulation)で高周波スイッチングし、得られた高周波信号をダイオードを介して容量素子で充電することにより励磁用直流電圧VexH(例えば80V−24V)を生成して励磁回路15へ供給する機能と、スイッチングの際、電圧帰還制御および電流帰還制御を行う機能とを有している。
【0039】
電圧レギュレータ13は、入力直流電源DCinから励磁回路15の後述するスイッチS11〜S14を駆動するための共通駆動用電圧VexSW(例えば10V)を生成して励磁回路15へ供給する機能とを有している。
【0040】
また、入力直流電源DCinの負極側の電圧が共通電圧VexCOM(<VexH、例えば0V)として、励磁回路15に供給される。
なお、以下の説明では、電圧を表す参照符号“VexSW”,“VexH”,“VexCOM”,および“VmD”等は、電圧のみならず、その電圧が供給される信号ラインをも表すものとする。
【0041】
データ処理制御回路14は、プログラム処理装置(例えばCPU)、信号処理回路、および伝送I/F回路等を含み、励磁回路15の制御、検出器16の電極から検出した起電力に基づく流量の算出、および上位装置に対する流量信号の出力を行う機能を有している。
【0042】
検出器16は、流量測定対象となる流体が流れる測定管Pexと、このPexに対して励磁回路15から供給された励磁電流により磁界を発生させる励磁コイルLexと、測定管Pexの外周面に設けられた1対の検出電極E1,E2とを有している。
【0043】
設定・表示器17は、作業者の設定操作入力を検出してデータ処理制御回路14へ出力する機能と、データ処理制御回路14からの表示出力をLEDやLCDで表示する機能とを有している。
【0044】
励磁回路15は、データ処理制御回路14からの制御に基づき、検出器16の励磁コイルLexに対して、一定周期で励磁極性が切り替えられる励磁電流Iexを供給する機能を有している。以下、励磁回路15について詳細に説明する。
【0045】
〈本発明に係る励磁回路の構成〉
図2Aは、本発明の一実施の形態に係る励磁回路の構成を概念的に示す図である。
励磁回路15は、励磁コイルLexの励磁極性を切り替えるためのスイッチと、励磁コイルを直接パルス駆動して励磁電流を定電流制御するためのスイッチとを、別個の制御機構によって制御することを一つの特徴としている。
【0046】
具体的には、
図2Aに示すように、励磁回路15は、励磁コイルLexを直接パルス駆動して励磁電流Iexを定電流制御するためのスイッチS1と、励磁コイルLexの励磁極性を切り替えるためのスイッチS11〜S14と、励磁電流Iexを検出するための電流検出用抵抗Rsと、スイッチS1がオフしたときに、励磁電流Iexを、電流検出用抵抗Rsを介して還流させる少なくとも一つの電流還流素子としてのダイオードD1と、電流検出用抵抗Rsに流れる電流が一定になるように、スイッチS11〜S14のスイッチング周期よりも短い周期でスイッチS1のオンとオフを切り替えるスイッチング制御回路150とを備えている。
【0047】
スイッチS1は、第1直流電圧としての励磁用直流電圧VexHが供給される信号ラインVexHと、励磁コイルLexの励磁電圧VOUTが供給される信号ラインVOUTとの間に接続されている。スイッチS1は、例えば、パワートランジスタによって構成されている。
【0048】
スイッチS11は、信号ラインVOUTと励磁コイルLexの一端(ノードn01)との間に接続され、一定の周期でオンとオフが切り替わる。スイッチS12は、信号ラインVFBと励磁コイルLexの一端との間に接続され、スイッチS11がオンするときにオフし、スイッチS11がオフするときにオンする。スイッチS13は、信号ラインVOUTと励磁コイルLexの他端(ノードn02)との間に接続され、スイッチS11がオンするときにオフし、スイッチS11がオフするときにオンする。スイッチS14は、励磁コイルの他端と信号ラインVFBとの間に接続され、スイッチS11がオンするときにオンし、スイッチS11がオフするときにオフする。
【0049】
上述したように、スイッチS1は、スイッチS11〜S14のスイッチング周期、すなわち励磁極性の切替周期よりも短い周期でオンとオフが切り替わる。例えば、スイッチS11〜S14のスイッチング周波数は1kHz以下であり、スイッチS1のスイッチング周波数は少なくとも10kHzである。本願明細書では、スイッチS1を「高速スイッチS1」と称し、スイッチS11〜S14を夫々、「低速スイッチS11〜S14」と称する場合がある。
【0050】
電流検出用抵抗Rsは、共通電圧VexCOMが供給される信号ラインVexCOMと信号ラインVFBとの間に接続されている。
【0051】
整流素子としてのダイオードD1は、アノードが信号ラインVexCOMに接続され、カソードが信号ラインVOUTに接続されている。
【0052】
スイッチング制御回路150は、共通電圧VexCOMを基準電源として動作し、電流検出用抵抗Rsに流れる電流Iexと目標電流値との差に応じてパルス幅を可変したPWM信号を生成し、そのPWM信号に基づいて高速スイッチS1をスイッチングする。
具体的に、スイッチング制御回路150は、共通電圧VexCOMを基準とした電流検出用抵抗Rsの検出電圧(フィードバック電圧)VFBを入力し、その検出電圧VFBが、上記目標電流値に対応する基準電圧Vrefと一致するようにパルス幅を可変したPWM信号を生成する。
【0053】
励磁回路15は、更に、高速スイッチS1がオフしたときに、励磁電流Iexが電流検出用抵抗Rsを通る経路以外の経路に流れないようにするための逆流防止素子としてダイオードD11〜D14を備えている。
【0054】
ダイオードD11は、信号ラインVOUTと励磁コイルLexの一端(ノードn01)との間に低速スイッチS11と直列に接続され、信号ラインVOUT側から励磁コイルLexの一端側へ流れる電流を通過させ、その逆方向に流れる電流を遮断する。
【0055】
ダイオードD12は、励磁コイルLexの一端(ノードn01)と信号ラインVFBとの間に低速スイッチS12と直列に接続され、励磁コイルLexの一端側から信号ラインVFB側へ流れる電流を通過させ、その逆方向に流れる電流を遮断する。
【0056】
ダイオードD13は、信号ラインVOUTと励磁コイルの他端との間に、低速スイッチS13と直列に接続され、信号ラインVOUT側から励磁コイルLexの他端側へ流れる電流を通過させ、その逆方向に流れる電流を遮断する。
【0057】
ダイオードD14は、励磁コイルLexの他端と信号ラインVFBとの間に、低速スイッチS14と直列に接続され、励磁コイルLexの他端側から信号ラインVFB側へ流れる電流を通過させ、その逆方向に流れる電流を遮断する。
【0058】
〈実施の形態1に係る励磁回路の構成〉
図2Aに示した励磁回路15の一実施の形態を
図2Bに示す。
図2Bは、実施の形態1に係る励磁回路の構成を示す図である。
図2Bに示すように、低速スイッチS11〜S14は、データ処理制御回路14(例えばCPU)からの励磁極性信号EXD1,EXD2によってオン/オフの切替制御が行われる。
【0059】
具体的には、励磁コイルLexの励磁極性を“正極性”とする期間においては、データ処理制御回路14(例えばCPU)が低速スイッチS11,S14をオンするとともに低速スイッチS12,S13をオフし、励磁コイルLexの励磁極性を“負極性”とする期間においては、データ処理制御回路14が、低速スイッチS11,S14をオフするとともに低速スイッチS12,S13をオンする。
【0060】
低速スイッチS11〜S14において、励磁極性信号EXD1,EXD2が入力される一次側と、励磁電流Iexが流れる二次側とは、電気的に絶縁されている。例えば、各低速スイッチS11〜S14は、フォトカプラを用いた回路によって構成されており、フォトカプラの一次側のフォトダイオードFDから照射される光の強さに応じて、フォトカプラの二次側のスイッチ(トランジスタ)STのオンとオフが切り替えられる。
【0061】
例えば、データ処理制御回路14は、低速スイッチS11,S13の一次側のフォトダイオードFDのアノード側にデジタル信号処理用の動作電圧VmDを印加した状態において、励磁極性信号EXD1,EXD2の論理(例えば、ハイレベル:VmD,ローレベル:VmCOM)を切り替えて、フォトカプラの一次側のフォトダイオードFDに流れる電流を制御することにより、フォトカプラの二次側のスイッチSTのオン・オフを切り替える。
【0062】
スイッチング制御回路150は、上述したように、検出電圧VFBに基づいて、PWM方式によって高速スイッチS1をスイッチングする回路である。スイッチング制御回路150としては、よく知られた、汎用のDC−DCコンバータ制御用IC(Integrated Circuit)を用いることができる。
【0063】
なお、汎用のDC−DCコンバータ制御用IC(Integrated Circuit)としては、
図2Bに示すように、高速スイッチS1としての外付けのパワートランジスタを制御するスイッチング制御回路150のみが一つのパッケージに封止されたICであってもよいし、高速スイッチS1としてのパワートランジスタとスイッチング制御回路とが一つのパッケージに封止されたICであってもよく、駆動対象のパワートランジスタとスイッチング制御回路150とが一つのICとしてパッケージングされているか否かについては、特に制限はない。
【0064】
スイッチング制御回路150としては、
図2Bに示すように、誤差増幅回路(エラーアンプ,AMP)151、位相補償器152、のこぎり波や三角波等の周期信号を生成する周期信号発生回路153、コンパレータ154、およびドライブ回路155から成る回路を例示することができる。
【0065】
エラーアンプ151は、電流検出用抵抗Rsの検出電圧VFBと、励磁電流Iexの目標電流値に応じた基準電圧Vrefとの誤差に応じた誤差信号を生成する。コンパレータ154は、上記誤差信号と、周期信号発生回路153から出力された周期信号とを比較し、その比較結果に応じた2値信号(PWM信号)を生成する。コンパレータ154によって生成されたPWM信号は、ドライブ回路155によってバッファされ、パワートランジスタから成る高速スイッチS1を駆動する。
【0066】
〈実施の形態1に係る励磁回路の動作〉
次に、実施の形態1に係る励磁回路15の動作について詳細に説明する。
先ず、データ処理制御回路14(例えばCPU)が、低速スイッチS11,S13の一次側のフォトダイオードFDのアノード側にデジタル信号処理用の動作電圧VmDを印加した状態において、励磁極性信号EXD1,EXD2の論理(例えば、ハイレベル:VmD,ローレベル:VmCOM)を切り替えて、低速スイッチS11〜S14の一次側のフォトダイオードに流れる電流を制御することにより、一定の周期で各低速スイッチS11〜S14をスイッチングする(ステップST1)。ここで、低速スイッチS11〜S14のスイッチング周波数は、上述したように1kHz以下である。
【0067】
一方、スイッチング制御回路150が高速スイッチS1を低速スイッチS11〜S14よりも短い周期でスイッチングすることにより、励磁用直流電圧VexHからパルス状の電圧VOUTを生成し、信号ラインVOUTに出力する(ステップST2)。ここで、高速スイッチS1のスイッチング周波数は、上述したように10kHz以上である。
【0068】
ステップST1,ST2での高速スイッチS1および低速スイッチS11〜S14のスイッチング動作により、励磁コイルLexには、低速スイッチS11〜S14の状態に応じて、正極性または負極性のパルス電圧Vexが印加される。これにより、励磁コイルLexには、正極性または負極性の励磁電流Iexが流れる(ステップST3)。なお、励磁電流Iexが流れる経路については、後で詳述する。
【0069】
励磁電流Iexは、電流検出用抵抗Rsを介して信号ラインVexCOMに流れ込むことにより、電流検出用抵抗Rsによって検出電圧VFBに変換され、スイッチング制御回路150の誤差増幅回路151の反転入力端子(−端子)に入力される(ステップST4)。
【0070】
誤差増幅回路151は、検出電圧VFBと基準電圧Vrefとの差に応じて電圧が変化する誤差信号を生成する(ステップST5)。
【0071】
スイッチング制御回路150のコンパレータ154は、誤差増幅回路151によって生成された誤差信号と周期信号生成回路153によって生成された周期信号(例えば、のこぎり波)とを比較し、その比較結果に応じた2値信号を生成する(ステップST6)。
これにより、励磁電流Iexが目標電流値よりも低い場合に高速スイッチS1のオン時間が長くなり、励磁電流Iexが目標電流値よりも高い場合にオン時間が短くなるように、パルス幅が制御されたPWM信号が生成され、高速スイッチS1が制御される(ステップST7)。
上記ステップST2〜ST7のフィードバック制御により、励磁電流Iexが一定値となるように制御される。
【0072】
次に、高速スイッチS1および低速スイッチS11〜S14のスイッチング動作による励磁電流Iexの電流経路について詳細に説明する。
【0073】
図3A〜3Dは、実施の形態1に係る励磁回路における励磁電流の電流経路を示す図である。
図3A〜3Dには、励磁回路15における一部の回路構成のみが図示されている。
【0074】
先ず、励磁極性が“正極性”の場合の電流経路について説明する。
励磁極性が“正極性”の場合、低速スイッチS11,S14がオンし、低速スイッチS12,S13がオフしている。この状態において、高速スイッチS1がオンしたとき、
図3Aに示すように、励磁電流Iexは、信号ラインVexHから、高速スイッチS1、低速スイッチS11、ダイオードD11、励磁コイルLex、低速スイッチS14、ダイオードD14、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに流れ込み、励磁コイルLexは正極性に励磁される。このとき、励磁コイルLexにはエネルギーが蓄えられる。
【0075】
一方、
図3Bに示すように、高速スイッチS1がオフしたときは、高速スイッチS1がオンしているときに励磁コイルLexに蓄えられたエネルギーにより、信号ラインVexCOMから、ダイオードD1、低速スイッチS11、ダイオードD11、励磁コイルLex、低速スイッチS14、ダイオードD14、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに電流が流れ込む。これにより、高速スイッチS1がオフする期間においても、正極性の励磁電流Iexが保持される。
【0076】
次に、励磁極性が“負極性”の場合の電流経路について説明する。
励磁極性が“負極性”の場合、低速スイッチS11,S14がオフし、低速スイッチS12,S13がオンしている。この状態において、高速スイッチS1がオンしたとき、
図3Cに示すように、励磁電流Iexは、信号ラインVexHから、高速スイッチS1、低速スイッチS13、ダイオードD13、励磁コイルLex、低速スイッチS12、ダイオードD12、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに流れ込み、励磁コイルLexは負極性に励磁される。このとき、励磁コイルLexにはエネルギーが蓄えられる。
【0077】
一方、
図3Dに示すように、高速スイッチS1がオフしたときは、高速スイッチS1がオンしているときに励磁コイルLexに蓄えられたエネルギーにより、信号ラインVexCOMから、ダイオードD1、低速スイッチS13、ダイオードD13、励磁コイルLex、低速スイッチS12、ダイオードD12、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに電流が流れ込む。これにより、高速スイッチS1がオフする期間においても、負極性の励磁電流Iexが保持される。
【0078】
ここで、逆流防止素子としてのダイオードD11〜D14について詳細に説明する。
上述したように、ダイオードD11〜D14は、高速スイッチS1がオフしたときに、励磁電流Iexが電流検出用抵抗Rsを通る経路(
図3A〜
図3D参照)以外の経路に流れないようにするための逆流防止素子である。
【0079】
例えば、低速スイッチS11〜S14の二次側のスイッチ素子としてMOSFETを用いた場合、各MOSFETのドレイン―ソース間には寄生ダイオードDs11〜Ds14が存在する。そのため、例えば、励磁極性が正極性(低速スイッチS11,S14がオンし、低速スイッチS12,S13がオフしている)の状態において高速スイッチS1がオンからオフに切り替わったときに、
図4に示す経路P1および経路P2に電流が流れる場合がある。このとき、ダイオードD12,D13を低速スイッチS12,13に夫々直列に配置することにより、経路P1,P2に電流が流れることを防止することができる。
【0080】
同様に、励磁極性が負極性(低速スイッチS11,S14がオフし、低速スイッチS12,S13がオンしている)の状態において高速スイッチS1がオンからオフに切り替わったときには、ダイオードD11,D14を低速スイッチS11,14に夫々直列に配置することにより、電流の逆流を防止することができる。
【0081】
このように逆流防止素子としてダイオードD11〜D14を適切に配置することにより、高速スイッチS1がオフしている期間において励磁電流Iexの全てを抵抗検出用抵抗Rsに流れるようにすることが可能となる。すなわち、低速スイッチS11〜S14のMOSFETの寄生ダイオードDs11〜Ds14を経由した電流が発生し得る状況であっても、励磁電流Iexの逆流を防止し、励磁電流Iexの全てを電流検出用抵抗Rsに流し込むことが可能となる。これにより、例えば、電源電圧VexHの変動や励磁コイルLexの発熱によるコイル抵抗の変化等の外乱要因の発生があったとしても、上述のステップST2〜ST7のフィードバック制御によって励磁電流を一定値に保持することが可能となり、励磁電流Iexのより正確な計測・制御が可能となる。
【0082】
次に、励磁回路15の各ノードの電圧および電流のタイミングチャートを
図5、6に示す。
図5には、励磁用VexH=30V,励磁電流Iexの目標電流値を100mA(絶対値)、スイッチング制御回路150によるPWM信号の最大デューティ比(最大パルス幅)を100%とした場合のシミュレーション結果が示され、
図6には、
図5の期間T1における各電圧および電流の波形が示されている。また、
図5,6に示される各電圧および電流の波形の参照符号は、
図7に示される励磁回路15における参照符号に夫々対応している。
【0083】
図5に示すように、時刻t1において、励磁コイルLexの励磁極性が負極性から正極性に切り替わる(スイッチS11,S14がオンし、スイッチS12,S13がオフする)と、電流検出用抵抗Rsの電流Isが0mAとなる。このとき、電流検出用抵抗Rsの電流Isが目標電流値(100mA)から大きく離れているため、スイッチング制御回路150が、PWM信号のデューティ比を最大(100%)にして、高速スイッチS1を駆動する。これにより、励磁電流Iexが正方向に徐々に増加するとともに、電流検出用抵抗Rsの電流Isが正の方向に徐々に増加する。
【0084】
その後、電流検出用抵抗Rsの電流Isが目標電流値(100mA)に到達すると、
図6に示すように、スイッチング制御回路150が、電流検出用抵抗Rsの電流Isが目標電流値(100mA)と一致するように、PWM信号のテューティ比を落として高速スイッチS1を駆動する。これにより、励磁電流Iexが正の一定値(+100mA)となる。
【0085】
時刻t2において、励磁コイルLexの励磁極性が正極性から負極性に切り替わる(スイッチS11,S14がオフし、スイッチS12,S13がオンする)と、再び電流検出用抵抗Rsの電流Isが0mAとなるので、スイッチング制御回路150が、PWM信号のテューティ比を最大(100%)にして、高速スイッチS1を駆動する。これにより、励磁電流Iexが負の方向に徐々に増加するとともに、電流検出用抵抗Rsの電流Isが正の方向に徐々に増加する。
【0086】
その後、電流検出用抵抗Rsの電流Isが目標電流値(100mA)に到達すると、スイッチング制御回路150が、電流検出用抵抗Rsの電流Isが目標電流値(100mA)と一致するように、PWM信号のテューティ比を落として高速スイッチS1を駆動する。これにより、励磁電流Iexが負の一定値(−100mA)となる。
【0087】
なお、本実施の形態に係る励磁回路15では、上述の特許文献2に開示された回路のように、コンデンサによる励磁電圧Vexの直流化を行っていないため、高速スイッチS1のオン・オフの切替動作に伴うリップル電流が発生する。このリップル電流が大きい場合、流量信号に悪影響を与え、流量計測の誤差や計測値の変動の原因となるおそれがある。
【0088】
そのため、電磁流量計10の更なる高精度化を図る場合には、励磁コイルLexのインダクタンスに対して高速スイッチS1のスイッチング周波数を十分に高くしておくことが望ましい。以下、リップル電流を抑えるための高速スイッチS1のスイッチング周波数の設定例を示す。
【0089】
一般に、リップル電流ΔIexは、スイッチング周波数をfsw、励磁コイルLexのインダクタンスをLex、高速スイッチS1の一端に供給される電源電圧をVexH、励磁コイルLexに印加される電圧の平均値をVex_aveとすると、式(1)で表すことができる。
【0090】
【数1】
ここで、励磁電流Iexの平均値(中心値)をIex_ave、励磁コイルLexの抵抗値をRexとしたとき、励磁コイルLexに印加される電圧の平均値Vex_aveは、式(2)で表すことができるので、式(1)に式(2)を代入することにより、リップル電流ΔIexは、式(3)で表すことができる。
【0093】
例えば、流量計測精度の仕様値が“±0.5%”である電磁流量計において、励磁用直流電圧VexHを30Vとして、インダクタンスLexが100mH、抵抗値Rexが100Ωの励磁コイルLexに平均値(中心値)Iex_aveが150mAとなる励磁電流Iexを流すことを考えた場合、励磁電流Iexのリップル電流ΔIexは、少なくとも流量計測精度の仕様値(±0.5%)以内であることが望ましい。
【0094】
この場合に、例えばスイッチング周波数fswを“50kHz”として上記式(3)に代入すると、リップル電流ΔIexは、“1.5mA”となり、励磁電流の平均値Iex_ave(=150mA)の1%、すなわち“±0.5%”となる。この値であれば、電磁流量計として実用上問題ないレベルとなる。
【0095】
また、例えば、スイッチング周波数fswを“500kHz”とすれば、上記式(3)から、リップル電流ΔIexは“0.15mA”となり、励磁電流の平均値Iex_ave(=150mA)の0.1%、すなわち“±0.05%”となる。この値であれば、リップル電流の流量計測への影響は、ほとんど無視できる。
【0096】
〈本発明に係る励磁回路の効果〉
以上、本発明に係る励磁回路によれば、励磁極性を切り替えるための低速スイッチS11〜S14と、励磁コイルLexを直接パルス駆動して励磁電流を定電流制御するための高速スイッチS1と、電流検出用抵抗Rsと、励磁コイルLexとを
図2Aに示すように接続し、高速スイッチS1を、低速スイッチS11〜S14とは別に、スイッチング制御回路150によって電流検出用抵抗Rsを流れる電流が一定になるように駆動することにより、上述の特許文献1の励磁回路のように励磁電流を定電流駆動するためのパワートランジスタのような発熱量の大きい部品が不要となる。これにより、放熱器を設けなくても励磁電流の大電流化が可能となるので、流量信号の信号レベルを大きくして計測安定性の向上を図りつつ、電磁流量計を小型化することが可能となる。
【0097】
また、本励磁回路は、励磁コイルを直接パルス駆動する回路構成を有しているので、上述の特許文献2に開示された励磁回路のように励磁電圧を直流化するためのインダクタおよび安定化容量(出力コンデンサ)から成る直流化回路が不要となり、回路の応答性が高まる。これにより、励磁周波数を高くして計測安定性を向上させることが可能となる。
【0098】
また、本励磁回路は、電流検出用抵抗Rsの一端の電位と、スイッチング制御回路150の基準電位とが共通(VexCOM)であることから、電流検出用抵抗Rsの他端をスイッチング制御回路150の誤差増幅回路151の反転入力端子に直接接続することができる。これにより、上述の特許文献3の励磁回路のように電流検出のために絶縁された別電源や特殊な信号変換回路等を設ける必要がないので、励磁回路が複雑にならず、電磁流量計の小型化が可能となる。
【0099】
また、本励磁回路によれば、励磁極性を切り替えるための低速スイッチS11〜S14と、励磁コイルLexを直接パルス駆動して励磁電流を定電流制御するための高速スイッチS1とを別個に制御する構成を有していることから、低速スイッチS11〜S14を駆動するドライブ回路をより簡単な回路構成で実現することが可能となり、電磁流量計を小型にすることが可能となる。
例えば、上述の特許文献3の励磁回路では、一組のハイサイドスイッチによって励磁極性の切替と励磁コイルのパルス駆動を兼ねた回路構成を採用しているため、上記ハイサイドスイッチを最低でも10kHzのスイッチング周波数で高速スイッチングする必要があり、上記ハイサイドスイッチを駆動するためのドライブ回路が複雑となる。一方、本励磁回路によれば、低速スイッチS11〜S14は励磁極性を切り替える機能のみを担っているので、最大でも1kHzのスイッチング周波数によってスイッチングすればよく、低速スイッチS11〜S14を駆動するドライブ回路を簡単な回路構成で実現することが可能となる。
【0100】
また、本励磁回路によれば、スイッチング制御回路150として、汎用の電源IC(DC−DCコンバータ制御用IC)を用いることができるので、電磁流量計を更に小型化することが可能となる。
【0101】
以上のように、本励磁回路によれば、計測安定性の向上と小型化を両立することができるので、計測安定性の高い小型の電磁流量計を実現することが可能となる。
【0102】
また、実施の形態1に係る励磁回路15によれば、
図2Aおよび
図2Bに示すようにダイオードD11〜D14を低速スイッチS11〜S14に夫々直列に接続しているので、低速スイッチS11〜S14の二次側のスイッチ素子としてMOSFETを用いた場合に各MOSFETのドレイン―ソース間に存在する寄生ダイオードDs11〜Ds14を介して電流が逆流することを防止することができる。
これによれば、上述したように、低速スイッチS11〜S14の寄生ダイオードDs11〜Ds14を経由した電流が発生し得る状況であっても、励磁電流Iexの全てを電流検出用抵抗Rsに流し込むことが可能となるので、電源電圧VexHの変動等の外乱要因の発生があったとしても、より正確な励磁電流の計測・制御が可能となる。
【0103】
また、ダイオードD11〜D14を低速スイッチS11〜S14に夫々直列に接続することにより、励磁極性の切り替え時に発生する励磁コイルの逆起電力によって低速スイッチS11〜S14に耐圧を超えた電圧が印加されることを防止できる。
【0104】
≪実施の形態2≫
〈実施の形態2に係る励磁回路の構成〉
図8は、実施の形態2に係る励磁回路の構成を示す図である。
同図に示される励磁回路15Aは、スイッチング制御回路がPFM(Pulse Frequency Modulation)制御によって高速スイッチS1を駆動する点において実施の形態1に係る励磁回路15と相違し、それ以外の点においては、実施の形態1に係る励磁回路15と同様である。
【0105】
具体的に、励磁回路15Aは、高速スイッチS1を駆動するための回路として、電流検出用抵抗Rsの検出電圧VFBに基づいて、PFM方式で高速スイッチS1を制御するスイッチング制御回路150Aを備える。
【0106】
スイッチング制御回路150Aは、電流検出用抵抗Rsに流れる電流と目標電流値との差に応じて周波数を可変したPFM信号を生成し、PFM信号に基づいて高速スイッチS1をスイッチングする。
【0107】
スイッチング制御回路150Aとしては、
図8に示すように、コンパレータ(CMP)156、パルス生成回路157、およびドライブ回路155から成る回路を例示することができる。
【0108】
コンパレータ(CMP)156は、励磁電流Iexの目標電流値に対応する基準電圧Vrefと、電流検出用抵抗Rsによる検出電圧VFBとを比較し、比較結果を出力する。パルス生成回路157は、パルス幅(オン時間)が固定された2値信号を、コンパレータ156の比較結果に基づく周期で出力する。ドライブ回路155は、パルス生成回路157から出力された2値信号(PFM信号)をバッファして、パワートランジスタから成る高速スイッチS1を駆動する。
【0109】
〈実施の形態2に係る励磁回路の効果〉
実施の形態2に係る励磁回路15Aによれば、誤差増幅回路(および位相補償器)を用いていないので、PWM方式よりも応答速度が速くなる。これにより、励磁周波数を更に高くすることが可能となり、電磁流量計の計測安定性を更に向上させることが可能となる。
【0110】
≪実施の形態3≫
〈実施の形態3に係る励磁回路の構成〉
図9は、実施の形態3に係る励磁回路の構成を示す図である。
同図に示される励磁回路15Bは、電流還流素子としてのダイオードをスイッチに置き換えた同期整流型のスイッチング制御回路を備える点において実施の形態1に係る励磁回路15と相違し、それ以外の点においては、実施の形態1に係る励磁回路15と同様である。
【0111】
具体的に、励磁回路15Bは、高速スイッチS1を駆動するための回路として、同期整流型のスイッチング制御回路150Bを備える。
スイッチング制御回路150Bは、実施の形態1に係るスイッチング制御回路150に対して、同期整流用スイッチS2とドライブ回路158とを更に備えている。
【0112】
同期整流用スイッチS2は、(フライホイール)ダイオードD1の代わりに設けられた電流還流素子であり、信号ラインVOUTと信号ラインVexCOMとの間に接続されている。同期整流用スイッチS2としては、高速スイッチS1と同様に、パワートランジスタを例示することができる。
【0113】
ドライブ回路158は、コンパレータ154から出力されたPWM信号をバッファするとともに論理を反転して、同期整流用スイッチS2を駆動する。
【0114】
スイッチング制御回路150Bによれば、高速スイッチS1と同期整流用スイッチS2とは交互にオン・オフが切替られる。すなわち、高速スイッチS1がオンしているとき、同期整流用スイッチS2がオフし、電流は、信号ラインVexHから高速スイッチS1を経由して励磁コイルLexに流れ込む。一方、高速スイッチS1がオフしているとき、同期整流用スイッチS2がオンし、電流は、信号ラインVexCOMから高速スイッチS1を経由して励磁コイルLexに流れ込む。
【0115】
このように、同期整流型のスイッチング制御回路150Bを用いた励磁回路15Bによれば、ダイオードD1を用いた実施の形態1に係る励磁回路15と同様に、高速スイッチS1のオン・オフの切替に応じて励磁電流Iexを還流させることができる。
【0116】
〈実施の形態3に係る励磁回路の効果〉
実施の形態3に係る励磁回路15Bによれば、ダイオードD1での発熱がなくなるので、励磁電流の更なる大電流化が可能となり、電磁流量計の計測安定性を更に向上させることが可能となる。
【0117】
≪実施の形態4≫
〈実施の形態4に係る励磁回路の構成〉
図10は、実施の形態4に係る励磁回路の構成を示す図である。
同図に示される励磁回路15Cは、電流還流素子としての2個のフライホイール・ダイオードを有する点において実施の形態1に係る励磁回路15と相違し、それ以外の点においては、実施の形態1に係る励磁回路15と同様である。
【0118】
具体的に、励磁回路15Cは、電流還流素子として、ダイオードD1の代わりにダイオードD1a,D1bを備える。ダイオードD1aは、アノードが信号ラインVexCOMに接続され、カソードが励磁コイルLexの一端(ノードn01)に接続されている。ダイオードD1bは、アノードが信号ラインVexCOMに接続され、カソードが励磁コイルLexの他端(ノードn02)に接続されている。
【0119】
ここで、励磁回路15Cにおける励磁電流Iexの電流経路について、図を用いて説明する。
図11A〜11Dは、実施の形態4に係る励磁回路15Cにおける励磁電流の電流経路を示す図である。
図11A〜11Dには、励磁回路15Cにおける一部の回路構成のみが図示されている。
【0120】
先ず、励磁極性が“正極性”の場合の電流経路について説明する。
励磁極性が“正極性”の場合、低速スイッチS11,S14がオンし、低速スイッチS12,S13がオフしている。この状態において、高速スイッチS1がオンしたときの電流経路は、実施の形態1に係る励磁回路15と同様である。具体的には、
図11Aに示すように、励磁電流Iexは、信号ラインVexHから、高速スイッチS1、低速スイッチS11、ダイオードD11、励磁コイルLex、低速スイッチS14、ダイオードD14、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに流れ込み、励磁コイルLexは正極性に励磁される。このとき、励磁コイルLexにはエネルギーが蓄えられる。
【0121】
一方、高速スイッチS1がオフしたときは、
図11Bに示すように、高速スイッチS1がオンしているときに励磁コイルLexに蓄えられたエネルギーにより、信号ラインVexCOMから、ダイオードD1a、励磁コイルLex、低速スイッチS14、ダイオードD14、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに電流が流れ込む。これにより、高速スイッチS1がオフする期間においても、正極性の励磁電流Iexが保持される。
【0122】
次に、励磁極性が“負極性”の場合の電流経路について説明する。
励磁極性が“負極性”の場合、低速スイッチS11,S14がオフし、低速スイッチS12,S13がオンしている。この状態において、高速スイッチS1がオンしたときの電流経路は、実施の形態1に係る励磁回路15と同様である。具体的には、
図11Cに示すように、励磁電流Iexは、信号ラインVexHから、高速スイッチS1、低速スイッチS13、ダイオードD13、励磁コイルLex、低速スイッチS12、ダイオードD12、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに流れ込み、励磁コイルLexは負極性に励磁される。このとき、励磁コイルLexにはエネルギーが蓄えられる。
【0123】
一方、高速スイッチS1がオフしたときは、
図11Dに示すように、高速スイッチS1がオンしているときに励磁コイルLexに蓄えられたエネルギーにより、信号ラインVexCOMから、ダイオードD1b、励磁コイルLex、低速スイッチS12、ダイオードD12、および電流検出用抵抗Rsを経由して、信号ラインVexCOMに電流が流れ込む。これにより、高速スイッチS1がオフする期間においても、負極性の励磁電流Iexが保持される。
【0124】
このように、励磁回路15Cによれば、励磁極性が正極性である場合に高速スイッチS1がオフしたときには、ダイオードD1aを経由して励磁電流Iexを還流させ、励磁極性が負極性である場合に高速スイッチS1がオフしたときには、ダイオードD1bを経由して励磁電流Iexを還流させることができる。
【0125】
〈実施の形態4に係る励磁回路の効果〉
実施の形態4に係る励磁回路15Cによれば、励磁極性が正極性である場合と負極性である場合とにおいて、夫々異なるダイオードD1a,D1bを通して励磁電流を還流させるので、励磁極性によらず一つのダイオードD1を用いて電流を還流させる場合に比べて、1つダイオードによる発熱量の平均値を小さくすることができる。これにより、励磁電流の更なる大電流化が可能となり、電磁流量計の計測安定性を更に向上させることが可能となる。
【0126】
≪実施の形態5≫
〈実施の形態5に係る励磁回路の構成〉
図12は、実施の形態5に係る励磁回路の構成を示す図である。
同図に示される励磁回路15Dは、逆流防止素子としてダイオードの代わりにMOSFETから成るスイッチ回路を用いる点において、実施の形態3に係る励磁回路15と相違し、それ以外の点においては、実施の形態3に係る励磁回路15Bと同様である。
【0127】
具体的に、励磁回路15Dは、低速スイッチS11〜S14およびダイオードD11〜D14の代わりに、低速スイッチ回路S11D〜S14Dを備えている。
【0128】
先ず、ハイサイドの低速スイッチ回路S11D,S13Dについて説明する。
図13Aは、ハイサイドの低速スイッチ回路S11D,S13Dの回路構成を示す図である。
図13Aに示すように、ハイサイドの低速スイッチ回路S11D,S13Dは、トランジスタMP1,MP2と、抵抗RHと、フォトカプラPCHとを夫々含んで構成されている。
【0129】
トランジスタMP1,MP2は、例えばPチャネル型のMOS−FETである。トランジスタMP1,MP2は、互いの寄生ダイオードDp1,Dp2が対向するように、信号ラインVOUTと励磁コイルLexの端子(ノードn01またはノードn02)との間に直列に接続されている。すなわち、低速スイッチ回路S11Dの場合には、トランジスタMP1のドレインが励磁コイルLexの一端(n01)に接続され、低速スイッチ回路S13Dの場合には、トランジスタMP1のドレインが励磁コイルLexの他端(n02)に接続されている。トランジスタMP1のソースおよびバックゲートは、トランジスタMP2のソースおよびバックゲートと接続され、トランジスタMP2のドレインは、信号ラインVOUTに接続されている。
【0130】
トランジスタMP1のゲートとトランジスタMP2のゲートは、フォトカプラPCHの二次側のトランジスタのコレクタに共通に接続され、そのトランジスタのエミッタは信号ラインVexCOMに接続されている。また、抵抗RHは、トランジスタMP1,MP2のゲートと、トランジスタMP1のソースおよびトランジスタMP2のソースとの間に接続されている。
【0131】
ハイサイドの低速スイッチ回路S11D,S13Dにおいて、フォトカプラPCHの一次側のフォトダイオードに電流が流れた場合には、フォトカプラPCHの二次側のトランジスタがオンするため、トランジスタMP2の寄生ダイオードD2および抵抗RHを介してフォトカプラの二次側のトランジスタに電流が流れることにより、トランジスタMP1,MP2がオンする。
【0132】
一方、フォトカプラPCHの一次側のフォトダイオードに電流が流れていない場合には、フォトカプラPCHの二次側のトランジスタがオフしているため、抵抗RHおよび寄生ダイオードDp2を介してトランジスタMP1,MP2のゲートがハイレベル(VOUT)になり、トランジスタMP1,MP2はオフする。
【0133】
このとき、励磁コイルLex側から信号ラインVOUT側に向かう電流の逆流はトランジスタMP2の寄生ダイオードDp2によって阻止される。すなわち、トランジスタMP2は、トランジスタMP1とともに信号ラインVOUT側から励磁コイルLex側に電流を通過させるスイッチとして機能するとともに、励磁コイルLex側から信号ラインVOUT側に逆流する電流を防止するための逆流防止素子としても機能する。
【0134】
次に、ローサイドの低速スイッチ回路S12D,S14Dについて説明する。
図13Bは、ローサイドの低速スイッチ回路S12D,S14Dの回路構成を示す図である。
図13Bに示すように、ローサイドの低速スイッチ回路S12D,S14Dは、トランジスタMN1,MN2と、抵抗RLと、フォトカプラPCLとを夫々含んで構成されている。
【0135】
トランジスタMN1,MN2は、例えばNチャネル型のMOS−FETである。トランジスタMN1,MN2は、互いの寄生ダイオードDn1,Dn2が対向するように、励磁コイルLexの端子(ノードn01またはノードn02)と信号ラインVFBとの間に直列に接続されている。すなわち、低速スイッチ回路S12Dの場合には、トランジスタMN2のドレインが励磁コイルLexの一端(n01)に接続され、低速スイッチ回路S14Dの場合には、トランジスタMN2のドレインが励磁コイルLexの他端(n02)に接続されている。トランジスタMN2のソースおよびバックゲートがトランジスタMN1のソースおよびバックゲートと接続され、トランジスタMN1のドレインが信号ラインVFBに接続されている。
【0136】
トランジスタMN1のゲートとトランジスタMN2のゲートは、フォトカプラPCLの二次側のトランジスタのエミッタに共通に接続され、そのトランジスタのコレクタは信号ラインVexSW(>VexCOM)に接続されている。また、抵抗RLは、トランジスタMN1,MN2のゲートと、トランジスタMN1のソースおよびトランジスタMN2のソースとの間に接続されている。
【0137】
このローサイドの低速スイッチ回路S12D,S14Dにおいて、フォトカプラPCLの一次側のフォトダイオードに電流が流れた場合には、フォトカプラPCLの二次側のトランジスタがオンするため、信号ラインVexSWから、フォトカプラPCLの二次側のトランジスタ、抵抗RL、およびトランジスタMN1の寄生ダイオードDn1を介して信号ラインVFBに電流が流れることにより、トランジスタMN1,MN2がオンする。
【0138】
一方、フォトカプラPCLの一次側のフォトダイオードに電流が流れていない場合には、フォトカプラPCLの二次側のトランジスタがオフしているため、抵抗RLおよび寄生ダイオードDn1を介してトランジスタMN1,MN2のゲートがローレベル(VFB)となり、トランジスタMN1,MN2はオフする。
【0139】
このとき、信号ラインVFB側から励磁コイルLex側に向かう電流の逆流はトランジスタMN1の寄生ダイオードDp1によって阻止される。すなわち、トランジスタMN1は、トランジスタMN2とともに励磁コイルLex側から信号ラインVFB側に電流を通過させるスイッチとして機能するとともに、信号ラインVFB側から励磁コイルLex側に逆流する電流を防止するための逆流防止素子としても機能する。
【0140】
〈実施の形態5に係る励磁回路の効果〉
実施の形態5に係る励磁回路15Dによれば、逆流防止素子としてダイオードD11〜D14の代わりにトランジスタから成るスイッチ回路S11D〜S14Dを用いることにより、ダイオードD11〜D14での発熱がなくなるので、励磁電流の更なる大電流化が可能となり、電磁流量計の計測安定性を更に向上させることが可能となる。また、励磁回路15Dによれば、電源回路としての効率を高めることも可能となる。
【0141】
また、ダイオードD11〜D14における電圧降下を減らすことができるので、励磁電圧Vexのロスを低減することができる。これによれば、励磁用直流電圧VexH(出力電圧VOUT)として大きな電圧を供給することができない2線式の電磁流量計や電池式(バッテリ駆動方式)の電磁流量計にも本励磁回路を適用することが可能となる。
【0142】
≪実施の形態6≫
〈実施の形態6に係る励磁回路の構成〉
図14は、実施の形態6に係る励磁回路の構成を示す図である。
同図に示される励磁回路15Eは、励磁コイルの逆起電力を利用してより大きな励磁電圧を生成する機能を有する点において実施の形態4に係る励磁回路15Cと相違し、それ以外の点においては、実施の形態4に係る励磁回路15Cと同様である。
【0143】
励磁回路15Eは、励磁極性の切り替え直後に発生する励磁コイルの逆起電力を容量にチャージして回収し、この容量に充電した電圧を次の励磁電流の立ち上げ時の電源電圧(励磁電圧)として利用する機能を有している。
【0144】
より具体的には、励磁回路15Eは、実施の形態4に係る励磁回路15Cに対して、ダイオードD2,D3,D4、容量C1を更に備える。
【0145】
ダイオードD2は、信号ラインVexHへ電流が逆流することを防止するための逆流防止素子である。ダイオードD2のアノードが信号ラインVexHに接続され、ダイオードD2のカソードが高速スイッチS1の一端(信号ラインVIN)に接続されている。
【0146】
容量C1は、一端が信号ラインVINに接続され、他端が信号ラインVexCOMに接続されている。
【0147】
ダイオードD3,D4は、逆起電力回収用ブリッジ・ダイオード(+電圧側)である。また、ダイオードD1a,D1bは、逆起電力回収用ブリッジ・ダイオード(−電圧側)としての機能と、実施の形態4に係る励磁回路15Cと同様に、高速スイッチS1がオフしているときに励磁電流Iexを還流させる電流還流素子としての機能とを備えている。
【0148】
ダイオードD3のアノードは、励磁コイルLexの一端(ノードn01)に接続され、ダイオードD3のカソードは、信号ラインVINに接続されている。
【0149】
ダイオードD4のアノードは、励磁コイルLexの他端(ノードn02)に接続され、ダイオードD4のカソードは、信号ラインVINに接続されている。
【0150】
図15は、実施の形態6に係る励磁回路15Eの各ノードの電圧および電流のタイミングチャートである。
図15に示されるシミュレーション結果のシミュレーション条件は、上述の
図5と同様である。
【0151】
図15に示すように、時刻t1において、励磁コイルLexの励磁極性が負極性から正極性に切り替わる(スイッチS11,S14がオンし、スイッチS12,S13がオフする)と、励磁コイルLexの両端に、負極性の励磁電流Iexを維持する方向に逆起電圧が生じる。この逆起電圧により、ダイオードD3から容量C1に電荷が充電され、信号ラインVINには励磁用直流電圧VexHを超える電圧VINが印加される。このとき、ダイオードD2により、信号ラインVexH側への電流の逆流が阻止される。
【0152】
これにより、励磁電流Iexの立ち上げ時には、励磁用直流電圧VexHよりも大きな励磁電圧Vexを励磁コイルLexに印加することができるので、励磁電流Iexの立ち上がり時間を更に短くすることができる。
【0153】
励磁電流Iexの立ち上がり後は、実施の形態4に係る励磁回路15Cと同様の制御となる。すなわち、高速スイッチS1がオンしているときは、励磁用直流電圧VexHが高速スイッチS1を介して励磁コイルLexに印加され、
図11Aと同様の経路で励磁電流Iexが流れる。一方、高速スイッチS1がオフしているときは、ダイオードD1aを介して、
図11Bと同様の経路で励磁電流Iexが流れる。
【0154】
その後、
図15の時刻t2において、励磁コイルLexの励磁極性が正極性から負極性に切り替わる(スイッチS11,S14がオフし、スイッチS12,S13がオンする)と、励磁コイルLexの両端に、励磁電流Iexを維持する方向に逆起電圧が生じる。この逆起電圧により、ダイオードD4から容量C1に電荷が充電され、信号ラインVINには励磁用直流電圧VexHを超える電圧VINが印加される。
【0155】
これにより、励磁電流Iexの立ち下げ時にも、励磁用直流電圧VexHよりも大きな励磁電圧Vexを励磁コイルLexに印加することができるので、励磁電流Iexの立ち下がり時間を更に短くすることができる。
【0156】
励磁電流Iexの立ち下がり後は、実施の形態4に係る励磁回路15Cと同様の制御となる。すなわち、高速スイッチS1がオンしているときは、励磁用直流電圧VexHが高速スイッチS1を介して励磁コイルLexに印加され、
図11Cと同様の経路で励磁電流Iexが流れる。一方、高速スイッチS1がオフしているときは、ダイオードD1bを介して、
図11Dと同様の経路で励磁電流Iexが流れる。
【0157】
〈実施の形態6に係る励磁回路の効果〉
実施の形態6に係る励磁回路15Eによれば、励磁用直流電圧VexHよりも大きい電圧によって励磁コイルLexを励磁することができるので、励磁電流Iexが安定するまでの時間(静定時間)を早めることができる。これにより、励磁周波数を更に上げることが可能となり、電磁流量計の計測安定性を更に向上させることが可能となる。
【0158】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0159】
例えば、上記実施の形態では、各低速スイッチS11〜S14に逆流防止素子としてのダイオードD11〜D14を夫々直列に接続する回路構成を例示したが、これに限れられない。例えば、高速スイッチS1がオフしたときの電流の逆流による影響が、電磁流量計に要求される計測安定性に対して無視できる場合には、
図16に示すように、逆流防止素子としてのダイオードD11〜D14を設けなくてもよい。
【0160】
また、実施の形態4,6において、電流還流素子として、ダイオードD1の代わりに2つのダイオードD1a,D1bを設ける場合を例示したが、これに限られず、2つのダイオードD1a,D1bに加えて、信号ラインVOUTと信号ラインVexCOMとの間にダイオードD1が接続されていてもよい。
【0161】
また、実施の形態5において、ハイサイドのスイッチ回路S11,S13を構成するトランジスタとしてPチャネル型のMOSトランジスタ(MP1,MP2)を用いる場合を例示したが、これに限られず、Nチャネル型のMOSトランジスタを用いてもよい。なお、この場合には、上記Nチャネル型のMOSトランジスタを駆動するためのブートストラップ回路等を設ける必要がある。
【0162】
また、実施の形態3乃至6において、PWM方式のスイッチング制御回路150を用いる場合を例示したが、実施の形態2に示したPFM方式のスイッチング制御回路150Aを用いてもよい。
【0163】
また、上記実施の形態において、整流素子としてダイオード(D1a,D1b等)を用いる場合を例示したが、ダイオードD1と同様にトランジスタ等に置き換えて適宜オン・オフを制御することにより、整流機能を実現してもよい。
【0164】
また、上記説明では、各実施の形態に係る励磁回路を容量式の電磁流量計に適用する場合を例示したが、接液式の電磁流量計にも同様に適用することができる。