特許第6806561号(P6806561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806561
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】動弁機構
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/18 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   F01L1/18 F
   F01L1/18 G
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-257319(P2016-257319)
(22)【出願日】2016年12月29日
(65)【公開番号】特開2018-109377(P2018-109377A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169029
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 恵一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 卓行
(73)【特許権者】
【識別番号】390023032
【氏名又は名称】田中精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169029
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】吉泉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】戸田 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】井澤 勝
(72)【発明者】
【氏名】中西 智英
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−61408(JP,U)
【文献】 特開平3−26810(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008008121(DE,A1)
【文献】 実開昭57−117704(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00− 1/32
F01L 1/36− 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフトと、
前記カムシャフトの中心軸にほぼ直交する軸に沿って配置される吸気バルブおよび排気バルブを有する内燃機関に備えられ、前記カムシャフトにより前記吸気バルブと前記排気バルブを開閉する動弁機構であって、
前記カムシャフトに平行に配置される主ロッカーシャフトおよび副ロッカーシャフトと、
前記主ロッカーシャフトで揺動可能に支持され前記吸気バルブと前記排気バルブのうち前記カムシャフトを基準にして遠くに配置される一方のバルブを開閉する一方のロッカーアームと、
前記主ロッカーシャフトで揺動可能に支持される他方のロッカーアームと、
前記副ロッカーシャフトで揺動可能に支持され、かつ前記他方のロッカーアームで駆動され、前記吸気バルブと前記排気バルブのうち前記カムシャフトを基準にして近くに配置される他方のバルブを開閉する従動ロッカーアームと、
前記主ロッカーシャフトを支える主支持孔、前記副ロッカーシャフトを支える副支持孔、前記内燃機関のシリンダヘッドに当てるベース面、前記シリンダヘッドに締結するボルトを通すボルト孔、および前記従動ロッカーアームの基部を挟む一対の支持壁を有しているロッカーシャフトホルダとを備える内燃機関の動弁機構。
【請求項2】
請求項1に記載の動弁機構において、
前記ロッカーシャフトホルダには、前記一対の支持壁の一方に、前記主ロッカーシャフトと前記副ロッカーシャフトとの間を連通する壁内油路が設けられている動弁機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動弁機構において、
前記従動ロッカーアームは、前記他方のロッカーアームと平面視で重さなるように、前記他方のロッカーアームと前記シリンダヘッドとの間に配置されている動弁機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の動弁機構において、
前記従動ロッカーアームは、前記他方のロッカーアームよりも高い強度の材料で構成されている動弁機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の動弁機構において、
前記従動ロッカーアームが他方のバルブを駆動する作用点を、主ロッカーシャフトの軸心と他方のロッカーアームがプッシュロッドで駆動される力点との間に配置した動弁機構。
【請求項6】
請求項2に記載の動弁機構において、
前記副ロッカーシャフトは、前記副支持孔に圧入固定されている動弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
カムシャフトの中心軸に略直交する方向に、吸気バルブと排気バルブとが並べて配設されたクロスフロー式の内燃機関が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−140014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の動弁機構を備えるエンジンでは、所定の距離だけ離れた位置において、ロッカーアーム(29,31)がロッカー軸(25,27)により支持されている。このため、ロッカー軸(25,27)に直交する方向であって、吸気ポート(15)および排気ポート(19)に沿う方向(特許文献1の第1図の左右方向)のエンジンの幅寸法が大きくなってしまうおそれがある。
【0005】
そこで、たとえば、特許文献1に記載のカム軸(41)に近い側のロッカー軸(25)をシリンダの中央部に配置することで、幅寸法を抑えることが考えられる。しかしながら、この場合、プッシュロッド(45)とシリンダとの干渉を避けるため、ロッカー軸(25)に沿う方向に隣り合うシリンダ間にプッシュロッド(45)を通す必要がある。シリンダ間にプッシュロッド(45)を通す場合、ロッカー軸(25)に沿う方向のエンジンの長さ寸法が大きくなってしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1の態様による動弁機構は、カムシャフトと、前記カムシャフトの中心軸にほぼ直交する軸に沿って配置される吸気バルブおよび排気バルブを有する内燃機関に備えられ、前記カムシャフトにより前記吸気バルブと前記排気バルブを開閉する動弁機構である。この動弁機構は、前記カムシャフトに平行に配置される主ロッカーシャフトおよび副ロッカーシャフトと、前記主ロッカーシャフトで揺動可能に支持され前記吸気バルブと前記排気バルブのうち前記カムシャフトを基準にして遠くに配置される一方のバルブを開閉する一方のロッカーアームと、前記主ロッカーシャフトで揺動可能に支持される他方のロッカーアームと、前記副ロッカーシャフトで揺動可能に支持され、かつ前記他方のロッカーアームで駆動され、前記吸気バルブと前記排気バルブのうち前記カムシャフトを基準にして近くに配置される他方のバルブを開閉する従動ロッカーアームと、前記主ロッカーシャフトを支える主支持孔、前記副ロッカーシャフトを支える副支持孔、前記内燃機関のシリンダヘッドに当てるベース面、前記シリンダヘッドに締結するボルトを通すボルト孔、および前記従動ロッカーアームの基部を挟む一対の支持壁を有しているロッカーシャフトホルダとを備える。
(2)本発明の第2の態様による動弁機構では、前記ロッカーシャフトホルダには、前記一対の支持壁の一方に、前記主ロッカーシャフトと前記副ロッカーシャフトとの間を連通する壁内油路が設けられている。
(3)本発明の第3の態様による動弁機構では、前記従動ロッカーアームは、前記他方のロッカーアームと平面視で重さなるように、前記他方のロッカーアームと前記シリンダヘッドとの間に配置されている。
(4)本発明の第4の態様による動弁機構では、前記従動ロッカーアームは、前記他方のロッカーアームよりも高い強度の材料で構成されている。
(5)本発明の第5の態様による動弁機構では、前記従動ロッカーアームが他方のバルブを駆動する作用点を、主ロッカーシャフトの軸心と他方のロッカーアームがプッシュロッドで駆動される力点との間に配置した。
(6)本発明の第6の態様による動弁機構では、副ロッカーシャフトは、前記副支持孔に圧入固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係る動弁機構を備えたエンジンの側面図
図2図1のII方向から見た第1の実施の形態に係る動弁機構の平面図
図3】第1の実施の形態に係る動弁機構の分解側面図
図4】第1の実施の形態に係る動弁機構の分解斜視図
図5】第1の実施の形態に係るロッカーシャフトホルダを図4のV方向から見た背面図
図6図5のVI-VI線断面図であり、第1の実施の形態に係るロッカーシャフトホルダの内部流路を説明する断面模式図
図7】第1の実施の形態に係る動弁機構のレバー比を説明する図
図8図6のVIII-VIII線断面図であり、第1の実施の形態に係るロッカーシャフトホルダの副ロッカーシャフト取付部を示す一部断面図
図9図8に示す副ロッカーシャフト取付部と、取り付けられた従動ロッカーシャフトを示す一部断面図
図10】第2の実施の形態に係るロッカーシャフトホルダの潤滑油の油路を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明による動弁機構の一実施の形態を説明する。
(エンジン)
図1は、実施の形態に係る動弁機構を備えた内燃機関(エンジン)の側面図である。図2は、実施の形態に係る動弁機構の平面図である。なお、説明の便宜上、図1および図2に示したように、エンジン10の上下方向および前後方向、左右方向を規定する。エンジン10は、前後方向に配列される複数のシリンダ12を備えているが、以下では、一のシリンダ12に着目し、このシリンダ12の吸気バルブ16および排気バルブ18を開閉する動弁機構20を代表して説明する。
【0010】
図1に示す本実施の形態に係るエンジン10は、フォークリフトなどの作業車両に搭載される走行駆動用の内燃機関である。エンジン10は、シリンダ12と、シリンダ12の内部に設けられたピストン11と、吸気バルブ16と、排気バルブ18と、動弁機構20と、を備えている。
【0011】
シリンダ12は内部に円柱状の空間を有する筒状部材であり、円柱状空間の中心軸が上下方向に延在するように配置されている。シリンダ12の上部開口部は、シリンダヘッド14により覆われ、シリンダヘッド14とシリンダ12によって燃焼室が画成されている。
【0012】
シリンダヘッド14には、吸気流路15および排気流路17が設けられている。吸気流路15と燃焼室の間には吸気バルブ16が設けられ、吸気バルブ16が開くと吸気流路15と燃焼室とが連通し、吸気バルブ16が閉じると吸気流路15が吸気バルブ16によって遮断される。排気流路17と燃焼室の間には排気バルブ18が設けられ、排気バルブ18が開くと排気流路17と燃焼室とが連通し、排気バルブ18が閉じると排気流路17が排気バルブ18によって遮断される。吸気バルブ16および排気バルブ18は、吸気用動弁機構と排気用動弁機構とを含む動弁機構20により開閉される。
【0013】
(動弁機構)
図2は、第1の実施の形態に係る動弁機構20の平面図である。図2では、破線でシリンダ12の開口を示し、破線内において吸気バルブ16および排気バルブ18のバルブヘッドを示している。
本実施の形態に係る動弁機構20は、シリンダ12の側方にカムシャフト33が配置され、シリンダ12の上方に吸気バルブ16および排気バルブ18が配置されたオーバーヘッドバルブ式の動弁機構である。図2に示すように、カムシャフト33の中心軸33aに直交する線36またはほぼ直交する線36Bに沿って、吸気バルブ16と排気バルブ18が並べられ、吸気流路15および排気流路17は左右方向に延在している。本実施の形態に係るエンジン10は、いわゆるクロスフロー式のエンジンである。
吸気バルブ16および排気バルブ18は、カムシャフト33の回転に伴って上下動するプッシュロッド34、35により、吸気バルブ16および排気バルブ18の上方に配置されたロッカーアームが駆動されることによって開閉される。
【0014】
図1に示すように、ピストン11は、シリンダ12の内部で上下方向に摺動自在に配置されている。ピストン11の上下動に連動してカムシャフト33が回転する。カムシャフト33の回転により位相が異なる吸気用カムと排気用カムが回転し、吸気用プッシュロッド35と排気用プッシュロッド34が上下動する。吸気用プッシュロッド35の上下動により吸気用動弁機構が駆動されて吸気バルブ16が開閉する。排気用プッシュロッド34の上下動により排気用動弁機構が駆動されて排気バルブ18が開閉する。
【0015】
(排気用動弁機構)
図3は実施の形態に係る吸気用動弁機構と排気用動弁機構を含む動弁機構20の主要部を示す分解側面図であり、図4は第1の実施の形態に係る吸気用動弁機構の分解斜視図である。なお、図4では、各部品を一部簡略化して模式的に示しており、他の図面と完全に整合してはいない。
【0016】
図1図4に示すように、排気用ロッカーアーム27の左右方向略中央部には、主ロッカーシャフト26が挿着される支持孔が設けられている。主ロッカーシャフト26は、円筒状の軸部材である。排気用ロッカーアーム27は、支持孔に主ロッカーシャフト26が挿通され、主ロッカーシャフト26に回動可能に支持される。排気用ロッカーアーム27の左側端部である基端部には排気用プッシュロッド34の上端部が連結されている。排気用ロッカーアーム27の右側端部である先端部には、下方に向かって突出する押圧凸部27aが設けられている。押圧凸部27aは排気バルブ18のステムの上端部であるステムエンドに当接している。
【0017】
カムシャフト33に固着された排気用カムが回転すると、排気用プッシュロッド34が上下動する。排気用プッシュロッド34が上方に移動し、排気用プッシュロッド34から排気用ロッカーアーム27の基端部に上向きの押し付け力が作用すると、排気用ロッカーアーム27が主ロッカーシャフト26を回動支点として図示時計回りに回動する。排気用ロッカーアーム27の回動により、排気用ロッカーアーム27の押圧凸部27aから排気バルブ18のステムに下向きの押し付け力が作用すると、排気バルブ18が押し下げられ、排気バルブ18が開かれる。
【0018】
排気用カムがさらに回転すると、図示しないスプリングの弾性力によって排気用ロッカーアーム27が図示反時計回り方向に回動するとともに排気用プッシュロッド34が下方に移動する。このような各部の動作により、排気バルブ18が閉じる。
【0019】
したがって、ピストン11が上下動してクランクシャフトが回動するとカムシャフト33が回転し、排気用カムによって排気用プッシュロッド34が上下動して、排気用ロッカーアーム27により排気バルブ18が所定のサイクルで開閉にすることになる。
【0020】
(吸気用動弁機構)
図1図6を参照して実施形態に係る吸気用動弁機構について説明する。
吸気側動弁機構は、図2〜4に示すように、主動ロッカーアーム28と、従動ロッカーアーム32と、主動ロッカーアーム28が回動可能に取り付けられる主ロッカーシャフト26と、従動ロッカーアーム32が回動可能に取り付けられた副ロッカーシャフト31と、主ロッカーシャフト26および副ロッカーシャフト31を支持し、ボルト25でシリンダヘッド12に固定されるロッカーシャフトホルダ24とを備えている。
【0021】
図1に示すように、主動ロッカーアーム28の左側端部である基端部には、吸気用プッシュロッド35の上端部が接続される。図3に示すように、主動ロッカーアーム28の右側端部である先端部の下面には、下方に膨出する湾曲面を有する当接部28aが設けられている。当接部28aは、従動ロッカーアーム32の受け部32aに当接されて、主動ロッカーアーム28から従動ロッカーアーム32に回転力を伝達する。当接部28aは、主動ロッカーアーム28の本体部とは別部品であり、溶接等により主動ロッカーアーム28の本体部に固着されている。
【0022】
従動ロッカーアーム32は、右側端部である基端部において副ロッカーシャフト31に回動可能に支持される。従動ロッカーアーム32の中央部の上面には、主動ロッカーアーム28の当接部28aに接する受け部32aが設けられている。受け部32aは、上方に膨出する湾曲面を有し、上述した当接部28aに当接される。受け部32aは、従動ロッカーアーム32の本体部とは別部品であり、溶接等により従動ロッカーアーム32の本体部に固着されている。従動ロッカーアーム32には、中央部から左後方に向かって屈曲する屈曲部32Bが設けられている。屈曲部32Bは、従動ロッカーアーム32の中央部と先端部とを連結する連結部分である。図2に示すように、主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32は、平面視で重なるように配置されている。従動ロッカーアーム32は、基端部が主動ロッカーアーム28の先端部の直下に配置され、先端部が吸気バルブ16のステムエンドの直上に配置されている。
【0023】
図3図6および図9を参照してロッカーシャフトホルダ24を詳細に説明する。なお、図5はロッカーシャフトホルダ24を図4のV方向から見た背面図、図6は、図5のVI-VI線断面図であり、ロッカーシャフトホルダ24の主支持部24Mと副支持部24Sの壁内油路を示す。
図3,4を参照すると、ロッカーシャフトホルダ24は、中空軸状の主ロッカーシャフト26を支持する主支持部24Mと、中実軸状の副ロッカーシャフト31を支持する副支持部24Sとを一体に備えている。主支持部24Mには、主ロッカーシャフト26を支える主支持孔21が形成されている。副支持部24Sには、副ロッカーシャフト31を支える副支持孔22,23が形成されている。主支持孔21および副支持孔22,23は、円形の貫通孔であり、それぞれの中心軸は、カムシャフト33の中心軸と平行とされている。
【0024】
ロッカーシャフトホルダ24の主支持部24Mの底面であるベース面48と、副支持部24Sの底面であるベース面49は、シリンダヘッド14の上面に当接される当接面とされている。ロッカーシャフトホルダ24の主支持部24Mには、図6に示されるように、ボルト25が挿通されるボルト挿通孔41とボルト挿通孔47が形成されている。ボルト挿通孔41は、ボルト取り付け面から主支持孔21まで主支持部24Mを貫通している。さらに、ボルト挿通孔47は、ボルト挿通孔41と同軸で、主支持孔21から主支持部24Mを貫通して底面のベース面48まで延在している。図1に示すように、ボルト挿通孔41,47にボルト25が挿通され、ボルト25の下端部のおねじ部が、シリンダヘッド14に形成されためねじ部にねじ込まれることで、ロッカーシャフトホルダ24がシリンダヘッド14に固定される。
【0025】
ボルト挿通孔41の径は、シリンダヘッド14からボルト25を介して、ロッカーシャフト、ロッカーアーム、バルブまでの取付け位置精度を得るように決定される。ボルト挿通孔47の径は、後述するように、ボルト挿通孔47とボルト25との間の空間を油溜りとして利用するため、ボルト挿通孔41の径よりも大きい。油溜まりの潤滑油は、エンジン起動時に壁内油路46を経由して副ロッカ―シャフト31内の軸内油路52,53(図9参照)に導かれ、副ロッカーシャフト31の外周面に供給される。したがって、その油溜まりの容量は、エンジン起動時に新たに潤滑油が供給されるまで副ロッカ―シャフト31に十分潤滑されるように決定される。
【0026】
ロッカーシャフトホルダ24は、さらに、従動ロッカーアーム32の基部32cを左右から挟む一対の支持壁42,43と、これらの支持壁42,43の下部を連結する下部連結部44と、支持壁42,43の上部を連結する上部連結部45とを備えている。
従動ロッカーアーム32の基部32cを一対の支持壁42,43の間に挿入し、副ロッカーシャフト31を副支持孔22,23に圧入することで、従動ロッカーアーム32がロッカーシャフトホルダ24に上下揺動可能に取り付けられる。
【0027】
図7は、第1の実施の形態に係る動弁機構のレバー比を説明する側面図である。
吸気用プッシュロッド35の上端部は、主ロッカーシャフト26を中心に揺動自在に中央部が支持された主動ロッカーアーム28の基端部にアジャストボルトを介して連結されている。主動ロッカーアーム28の先端部に設けられた当接部28aは、従動ロッカーアーム32の受け部32aに接触点Pで当接している。従動ロッカーアーム32の先端部に設けられた押圧凸部は、吸気バルブ16のステムエンドに当接している。
【0028】
主動ロッカーアーム28の回動中心点O1は、吸気用プッシュロッド35が主動ロッカーアーム28に力を加える第1力点Qと、主動ロッカーアーム28から従動ロッカーアーム32に力が作用する第1作用点(接触点P)との間に配置されている。主動ロッカーアーム28の回動中心点O1から第1力点Qまでの距離であるフォースアームL1と、主動ロッカーアーム28の回動中心点O1から第1作用点(接触点P)までの距離であるレジスタンスアームL2の大小関係は、L1>L2である。
【0029】
従動ロッカーアーム32の回動中心点O2は第1作用点(接触点P)よりも右方に配置されている。なお、第1作用点(接触点P)は、主動ロッカーアーム28が従動ロッカーアーム32に力を加える力点であるので、第1作用点Pを第2力点Pとも記す。従動ロッカーアーム32から吸気バルブ16に力が作用する第2作用点Rは、第1作用点Pよりも左方であって、かつ、左右方向において、主動ロッカーアーム28の回動中心点O1と吸気用プッシュロッド35が主動ロッカーアーム28に力を加える第1力点Qとの間に配置されている。従動ロッカーアーム32の回動中心点O2から第2力点(接触点P)までの距離であるフォースアームL3と、従動ロッカーアーム32の回動中心点O2から第2作用点Rまでの距離であるレジスタンスアームL4の大小関係は、L3<L4である。
このため、主動ロッカーアーム28が従動ロッカーアーム32に加える力は、吸気用プッシュロッド35が主動ロッカーアーム28に加える力に比べて大きくなる。
【0030】
なお、主動ロッカーアーム28が従動ロッカーアーム32に加える接触点Pは主動ロッカーアーム28の回動に伴って変位する。
【0031】
図2図4に示すように、従動ロッカーアーム32は、ボルト25などを迂回するために屈曲しており、小型化のために細い。従動ロッカーアーム32は先端が左右方向に屈曲しているため、従動ロッカーアーム32の基部32cおよび副ロッカーシャフト31に三次元的な力が加わる。
【0032】
クロスフローの吸排気構造を有するオーバーヘッドバルブ方式のエンジンでは、シリンダヘッドを上面から見て、シリンダの内径の内側において、吸気バルブ16と排気バルブ18はカムシャフト33と直交する方向に所定距離、カムシャフト33の軸心方向に所定距離離して配置する必要がある。その一方で、エンジンの幅寸法と長手寸法を小さくする要請もある。
【0033】
これら吸排気バルブの配置とエンジン寸法の短縮化の制約を満足させるため、実施形態のエンジンでは次のような主たる特徴的構成を採用している。
第1の特徴的構成は、吸気バルブ駆動用ロッカーアームを主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32で構成している点である。
第2の特徴的構成は、従動ロッカーアーム32の回動支点O2と、主動ロッカーアーム28から駆動力を受ける力点Pと、吸気バルブ16のステムを押動する作用点Rとの配置を図7で説明した通りとした点である。
第3の特徴的構成は、吸気通路と排気通路を吸気用プッシュロッド35と排気用プッシュロッド34の間に設けた点である。
第4の特徴的構成は、従動ロッカーアーム32の力点Pとなる基端側を、主動ロッカーアーム28とシリンダヘッド14との間に配置するとともに、力点Pから作用点Rに至る先端側に屈曲部32を設けた点である。
【0034】
以上の第4の特徴的構成を採用したため、従動ロッカーアーム32は先端側が屈曲されており、3次元的な力が作用する。この3次元的な力に対して実施形態の動弁機構ではさらに第5の特徴的構成を採用して小型化を可能としている。
【0035】
第5の特徴的構成は、従動ロッカーアーム32を主動ロッカーアーム28に比べて強度の高い材料で製作している点である。
主動ロッカーアーム28は、周囲に干渉物がないため直線形状であり、かつ、剛性を高めるように断面二次モーメントを大きくすることができる。そのため、主動ロッカーアーム28は、低強度材料、たとえばアルミニウム系材料を採用する。これに対して、三次元的な力が作用する従動ロッカーアーム32は、高強度材料、たとえばクロムモリブデン鋼を採用する。
【0036】
アルミニウム合金ダイキャストの一種類であるADC12の引張強さは、約300MPa(約300N/mm)である。クロムモリブデン鋼の一種であるSCM435の引張強さは、約930N/mmである。従動ロッカーアーム32は、主動ロッカーアーム28よりも高い強度の材料で構成することで、剛性を高めている。高い強度の材料で構成されるため、従動ロッカーアーム32は、細くすることや湾曲化することができる。その結果、従動ロッカーアーム32の形状設計の自由度が高まる。なお、本発明は上記の材料に限定しない。
【0037】
本実施の形態では、従動ロッカーアーム32の本体部が、主動ロッカーアーム28の本体部の材料に比べて強度、および剛性が高い材料により形成されている。これにより、図4に示すように、従動ロッカーアーム32を左右方向に細長い形状とし、屈曲部32Bを形成した場合であっても従動ロッカーアーム32が変形することがない。なお、主動ロッカーアーム28の本体部は、従動ロッカーアーム32の本体部の材料よりも安価な材料を採用できるので、動弁機構20の低コスト化を図ることができる。
【0038】
第6の特徴的構成は、副ロッカーシャフト31が一対の支持壁42,43で両端支持されている点である。
第6の特徴的構成により、副ロッカーシャフト31の撓みを少なくすることができる。加えて、一対の支持壁42,43が下部連結部44と上部連結部45で連結され、さらに、副ロッカーシャフト31が副支持孔22,23に圧入されているため、一対の支持壁22,23が左右方向に振れる(倒れる)惧れが少ない。その結果、形状が複雑な従動ロッカーアーム32を安定的に支持することができる。
【0039】
実施形態の動弁機構の作用効果は以下の通りである。
(1)本実施の形態に係る動弁機構20は、カムシャフト33の吸排気用カムにより排気バルブ18および吸気バルブ16を開閉するオーバーヘッドバルブ式のエンジンの動弁機構である。吸気バルブ16は、排気バルブ18よりもカムシャフト33に近い位置に配置されている。動弁機構20は、プッシュロッド34と、排気用ロッカーアーム27と吸気用ロッカーアー28,32を備えている。吸気用プッシュロッド35は、カムシャフト33の吸気用カムにより上下動し、排気用プッシュロッド34は、カムシャフト33の排気用カムにより上下動する。排気用プッシュロッド34に対応して排気用ロッカーアーム27が設けられ、吸気用プッシュロッド35に対応して吸気用ロッカーアーム28,32が設けられている。
【0040】
排気用ロッカーアーム27は、排気用プッシュロッド34に基端部112が押されることで主ロッカーシャフト26を回動支点として時計回転方向に回動し、排気バルブ18を押し下げて開く。吸気用ロッカーアームは、主動ロッカーアーム28と、主動ロッカーアーム28に連動する従動ロッカーアーム32とを有するリンク式のロッカーアームである。主動ロッカーアーム28は、吸気用プッシュロッド35に基端部が押されることで主ロッカーシャフト26を回動支点として時計回り方向に回動する。従動ロッカーアーム32は、主動ロッカーアーム28の先端部に押されることで主ロッカーシャフト26とは所定の距離だけ離れた副ロッカーシャフト31を回動支点として反時計回転方向に回動し、吸気バルブ16を押し下げて開く。
【0041】
このような構成により、吸気用ロッカーアームをシリンダ12の中央部の上方に配置する場合であっても、吸気用プッシュロッド35を前後方向(シリンダブロック長手方向)に隣り合うシリンダ12間に通す必要がない。吸気用プッシュロッド35を隣り合うシリンダ12間に通さなくてよいので、主ロッカーシャフト26やカムシャフト33に沿う前後方向のエンジンの長さ寸法の短縮化を図ることができる。
【0042】
(2)特許文献1に記載の動弁機構を備えるエンジンでは、所定の距離だけ離れた位置において、ロッカーアーム(29,31)がロッカー軸(25,27)により支持されている。このため、ロッカー軸(25,27)に直交する方向であって、吸気ポート(15)および排気ポート(19)に沿う方向のエンジンの幅寸法が大きくなってしまうおそれがある。
【0043】
これに対し、本実施の形態では、排気用ロッカーアーム27と吸気用ロッカーアームの共通の回動支点となる主ロッカーシャフト26を設けた。排気用ロッカーアーム27および吸気用主動ロッカーアーム28を共通の主ロッカーシャフト26を中心に回動させる構成とすることで、エンジンの左右方向の寸法の短縮化を図ることができる。
【0044】
(3)従動ロッカーアーム32から吸気バルブ16に力が作用する第2作用点Rが、主動ロッカーアーム28の回動中心点O1と、吸気用プッシュロッド35が主動ロッカーアーム28に力を加える第1力点Qとの間に位置するように、動弁機構20を構成した。これにより、第2作用点Rを、回動中心点O1と第1作用点(第2力点)である接触点Pとの間に位置させるように構成された動弁機構(不図示)に比べて、動弁機構20の左右方向(エンジン幅方向)の寸法を短くできる。
【0045】
(4)ロッカーシャフトホルダ24は、主動ロッカーアーム28を回動可能に支持する主ロッカーシャフト26が挿着される主支持孔21、および従動ロッカーアーム32を回動可能に支持する副ロッカーシャフト31が挿着される副支持孔22,23を有している。ロッカーシャフトホルダ24は、エンジンのシリンダヘッド14に固定される。
【0046】
このように、本実施の形態では、単一の部品であるロッカーシャフトホルダ24が、主ロッカーシャフト26を介して主動ロッカーアーム28を所定の位置で支持し、副ロッカーシャフト31を介して従動ロッカーアーム32を所定の位置で支持するようにした。主支持孔21と副支持孔22,23との位置関係および形状を精度よく加工することで、主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32の位置決めを容易に行うことができ、精度が良好なバルブリフト量を得ることができる。
【0047】
(5)ロッカーシャフトホルダ24は一対の支持壁42,43を有する。従動ロッカアーム32の基部32cを一対の支持壁42,43で挟み込み、副ロッカーシャフト31を副支持孔22,23に圧入して一対の支持壁42,43で両端支持する。したがって、小型にして強い剛性の主副ロッカーシャフト26,31の取付構造を提供できる。さらに、副ロッカーシャフト31は圧入されて回転しないことで、下記(6)に記載する軸内通路52,53を経由した副ロッカーシャフト31の外周面への潤滑油供給を特定の位相ヘ向けて行うことができる。
【0048】
(6)実施形態の動弁機構20のロッカーシャフトホルダ24には、一対の支持壁42,43の一方に、主ロッカーシャフト26を介して供給される潤滑油を副ロッカーシャフト31内の軸内油路52,53(図9参照)へ導き、副ロッカーシャフト31の外周面に供給する壁内油路46が設けられている。したがって、副ロッカーシャフトの潤滑油供給用の油路を外付けする必要がなく、エンジンの小型軽量化に寄与する。
【0049】
(7)主動ロッカーアーム28および従動ロッカーアーム32を平面視で重なる構造とした。すなわち、従動ロッカーアーム32を主動ロッカーアーム28とシリンダヘッド14との間に配置した。したがって、動弁機構を小型化できる。
(8)上記動弁機構20では、従動ロッカーアーム32は、主動ロッカーアーム28よりも高い強度の材料で構成した。したがって、従動ロッカーアーム32の設計自由度が向上し、ひいては、エンジンの小型化に寄与する。
【0050】
(9)特許文献1に記載の技術のように、単一部品のロッカーアームをプッシュロッドで回動させてバルブを開閉する構成では、リフト量を調整するために、カムシャフトやバルブの位置など、エンジンの基本的な寸法を大きく変える必要が生じるおそれがある。これに対し、本実施の形態では、リンク式のロッカーアームを採用しているため、主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32とが接触する部分の形状を調整することで、吸気バルブ16のリフト量を容易に調整することができる。さらに、本実施の形態では、主動ロッカーアーム28の本体部とは異なる別部品である当接部28aと、従動ロッカーアーム32の本体部とは異なる別部品である受け部32aとを接触させ、主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32との間で力を伝達するようにした。このため、当接部28aや受け部32aの形状を調整することで、吸気バルブ16のリフト量をより容易に調整することができる。
【0051】
(変形例1)
上述した実施形態の動弁機構20では、吸気バルブ16を主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32とから構成されたロッカーアームで開閉する構造とした。しかし、排気バルブ18を、主動ロッカーアーム28と従動ロッカーアーム32とから構成されたロッカーアームで開閉する構造としてもよい。
【0052】
(変形例2)
上述した実施形態の動弁機構20は、オーバ−ヘッドバルブ方式で説明したが、オーバーヘッドカムシャフト方式の動弁機構にも本発明を適用することができる。また、その他の動弁機構にも適宜本発明を適用することができる。
(変形例3)
上述した実施形態の動弁機構は、クロスフロー方式のエンジン吸排気構造で説明したが、カウンタフロー方式のエンジン吸排気構造に適用することも可能である。
【0053】
(変形例4)
上述した実施の形態では、主動ロッカーアーム28の本体部に当接部28aを固着し、従動ロッカーアーム32の本体部に受け部32aを固着する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。主動ロッカーアーム28の本体部と当接部28aとを別部品とせず、同じ材料により一部品として成形してもよいし、従動ロッカーアーム32の本体部と受け部32aとを別部品とせず、同じ材料により一部品として成形してもよい。このような場合であっても、主動ロッカーアーム28に一体成形された当接部28aや従動ロッカーアーム32に一体成形された受け部32aの形状を調整することで、吸気バルブ16のリフト量を容易に調整することができる。
【0054】
(変形例5)
上述した実施の形態では、主動ロッカーアーム28の本体部と従動ロッカーアーム32の本体部を異なる材料で形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、各部材の配置、形状の違いにより、主動ロッカーアーム28が従動ロッカーアーム32に加える力と、吸気用プッシュロッド35が主動ロッカーアーム28に加える力とがほぼ同じ場合には、主動ロッカーアーム28の本体部と従動ロッカーアーム32の本体部の材料は、同じにしてもよい。
【0055】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 エンジン 14 シリンダヘッド
16 吸気バルブ 18 排気バルブ
20 動弁機構 21 主支持孔
22,23 副支持孔 24 ロッカーシャフトホルダ
24M 主支持部 24S 副支持部
25 ボルト 26 主ロッカーシャフト
27 排気用ロッカーアーム 28 主動ロッカーアーム
31 副ロッカーシャフト 32 従動ロッカーアーム
33 カムシャフト 41,47 ボルト挿通孔
42,43 支持壁 46 壁内油路
48,49 ベース面
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