(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806563
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】吸着媒体を使用する感染症の診断法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/10 20060101AFI20201221BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20201221BHJP
C12Q 1/689 20180101ALI20201221BHJP
C12Q 1/6893 20180101ALI20201221BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20201221BHJP
C12N 7/02 20060101ALI20201221BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
C12N1/10
G01N33/569 B
G01N33/569 G
G01N33/569 A
C12Q1/689 Z
C12Q1/6893 Z
C12M1/34 B
C12N7/02
C12N1/20 A
【請求項の数】51
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-528141(P2016-528141)
(86)(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公表番号】特表2017-500014(P2017-500014A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014064419
(87)【国際公開番号】WO2015069942
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/902,070
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509347181
【氏名又は名称】エクステラ・メディカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】マクリア,キース アール.
【審査官】
濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−521413(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0268464(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0216226(US,A1)
【文献】
特表2010−518046(JP,A)
【文献】
特開2001−190273(JP,A)
【文献】
特表2003−520048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)吸着媒体と病原体とを含む接着性複合体を形成する条件下で、対象から得られた生物学的サンプルを、
(i)ヘパリンとマンノースとの組み合わせを含むか;又は
(ii)ヘパリンと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンの群の少なくとも1つのメンバーとを含むか;又は
(iii)ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェートから選択される群の少なくとも1つのメンバーと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンから選択される少なくとも1つのメンバーと、ポリエチレンイミン(PEI)とを含む
複数のタイプの多糖類を有する前記吸着媒体に接触させることと;
(b)前記複合体を維持しながら、前記複合体中に含まれないサンプルの成分から前記接着性複合体を分離することと;
(c)洗浄バッファにより前記接着性複合体を洗浄することと;
(d)溶出バッファを前記複合体に適用することにより、前記接着性複合体の病原体を回収し、それにより、溶出液中の感染性病原体を濃縮することと
を含む、病原体に感染している疑いのある対象から得られた生物学的サンプル中に存在する感染性病原体を濃縮するためのインビトロの方法。
【請求項2】
前記洗浄バッファが、食塩水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶出バッファが、高イオン強度又は高張食塩水である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的サンプルが、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着媒体が、高表面積の固体基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着媒体の少なくとも1つの多糖類が、エンドポイント結合によって、高表面積の前記固体基材に結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体基材が、複数の硬質のポリマービーズを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の硬質のポリマービーズが、硬質のポリエチレンビーズである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マンノースが、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着媒体が、(i)ヘパリン及びマンノースである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記病原体が、プラスモディウム・ファルシパルム、プラスモディウム・ビバックス、プラスモディウム・オバレ、プラスモディウム・マラリエ、エボラウイルス(EBOV)、フィロウイルス、フラビウイルス、ストレプトコッカス・アウレウス、エシェリヒア・コリ、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌、ESBL産生病原体、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌、アシネトバクター・バウマンニ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、カンジダ・アルビカンス、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
単離された前記感染性病原体を検出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
単離された前記感染性病原体を検出することが、比色アッセイ、イムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、PCRベースアッセイ、病原体増殖アッセイ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
吸着媒体で満たされているバレル、プランジャー、及び針を含む、請求項1に記載の方法に従って使用されるための濃縮器。
【請求項15】
請求項14に記載の濃縮器、洗浄バッファ、及び溶出バッファを含む、キット。
【請求項16】
感染性病原体に感染している疑いのある対象から得られた生物学的サンプル由来の血球を減少させるインビトロの方法であって、
(a)サンプル中に存在する病原体と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成する条件下で、対象から得られた生物学的サンプルを、
(i)ヘパリンとマンノースとの組み合わせを含むか;又は
(ii)ヘパリンと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンの群の少なくとも1つのメンバーとを含むか;又は
(iii)ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェートから選択される群の少なくとも1つのメンバーと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンから選択される少なくとも1つのメンバーと、ポリエチレンイミン(PEI)とを含む、複数のタイプの多糖類吸着媒体を有する吸着媒体と接触させること;
(b)前記接着性複合体を維持しながら、前記サンプルの血球と前記接着性複合体とを分離し、前記サンプルから血球を減少させること;
(c)前記接着性複合体に溶出バッファを適用すること;及び
(d)前記接着性複合体の前記感染性病原体を回収すること;
を含む、方法。
【請求項17】
前記溶出バッファが、高イオン塩強度又は高張液である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記感染性病原体を検出することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的サンプルが、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記感染性病原体を検出することが、比色アッセイ、イムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、PCRベースアッセイ、病原体増殖アッセイ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記吸着媒体が、高表面積の固体基材である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記吸着媒体の少なくとも1つの多糖類が、エンドポイント結合によって、高表面積の前記固体基材に結合している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記固体基材が、複数の硬質のポリマービーズを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の硬質のポリマービーズが、硬質のポリエチレンビーズである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
マンノースが、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの多糖類吸着剤が、ヘパリン及びマンノースである、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記病原体が、プラスモディウム・ファルシパルム、プラスモディウム・ビバックス、プラスモディウム・オバレ、プラスモディウム・マラリエ、エボラウイルス(EBOV)、フィロウイルス、フラビウイルス、ストレプトコッカス・アウレウス、エシェリヒア・コリ、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌、ESBL産生病原体、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌、アシネトバクター・バウマンニ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、カンジダ・アルビカンス、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
(a)プラスモディウムに感染しているサンプル中に存在する細胞と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成する条件下で、対象から得られたサンプルを、
(i)ヘパリンとマンノースとの組み合わせを含むか;又は
(ii)ヘパリンと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンの群の少なくとも1つのメンバーとを含むか;又は
(iii)ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェートから選択される群の少なくとも1つのメンバーと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンから選択される少なくとも1つのメンバーと、ポリエチレンイミン(PEI)とを含む
複数のタイプの多糖類を有する吸着媒体と接触させることと;
(b)前記吸着媒体に対する物理的変化を検出することにより、前記接着性複合体の存在を決定することと;
(c)対照サンプルと接触している参照吸着媒体と比較した前記吸着媒体の前記物理的変化に基づいて、前記対象がマラリアを有していることを予測することと
を含む、対象がプラスモディウムに感染していることを決定するためのインビトロの方法。
【請求項29】
前記サンプルが、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルが、全血である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対照サンプルが、健康な対象由来のサンプルである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記対照サンプルが、マラリアを有する対象由来のサンプルである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記物理的変化が、前記吸着媒体の色である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記対照サンプルと接触している前記参照媒体に対する前記物理的変化の標準曲線を生成することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記吸着媒体が、高表面積の固体基材である、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記吸着媒体の少なくとも1つの多糖類が、エンドポイント結合によって、高表面積の前記固体基材に結合している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記固体基材が、複数の硬質のポリマービーズを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の硬質のポリマービーズが、硬質のポリエチレンビーズである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの多糖類吸着剤が、(i)ヘパリン及びマンノースである、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
(a)対象から得られた全血サンプルを、
(i)ヘパリンとマンノースとの組み合わせを含むか;又は
(ii)ヘパリンと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンの群の少なくとも1つのメンバーとを含むか;又は
(iii)ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェートから選択される群の少なくとも1つのメンバーと、ヒアルロン酸、シアル酸、及びキトサンから選択される少なくとも1つのメンバーと、ポリエチレンイミン(PEI)とを含む
複数のタイプの多糖類を有する吸着媒体と接触させて、前記サンプル中に存在する病原体と前記吸着媒体とを含む接着性複合体を形成することと;
(b)前記吸着媒体に対する物理的変化を検出することにより、前記接着性複合体の存在を決定することと;
(c)対照サンプルと接触している参照吸着媒体と比較した前記吸着媒体の前記物理的変化に基づいて、前記対象が感染性病原体に感染していることを予測することと
を含む、対象が感染性病原体に感染していることを決定するためのインビトロの方法。
【請求項41】
前記対照サンプルが、健康な対象由来のサンプルである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対照サンプルが、前記感染性病原体を有する対象由来のサンプルである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記感染性病原体が、プラスモディウム・ファルシパルム、プラスモディウム・ビバックス、プラスモディウム・オバレ、プラスモディウム・マラリエ、エボラウイルス(EBOV)、フィロウイルス、フラビウイルス、ストレプトコッカス・アウレウス、エシェリヒア・コリ、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌、ESBL産生病原体、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌、アシネトバクター・バウマンニ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、カンジダ・アルビカンス、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記吸着媒体が、高表面積の固体基材である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記吸着媒体の少なくとも1つの多糖類が、エンドポイント結合によって、前記固体基材の前記表面に結合している、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記固体基材が、複数の硬質のポリマービーズを含む、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記複数の硬質のポリマービーズが、硬質のポリエチレンビーズである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記マンノースが、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記吸着媒体が、(i)ヘパリン及びマンノースである、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
濃縮器と;
使用前又は後のための包装と
を含む、請求項1に記載の方法に使用するためのキット。
【請求項51】
(a)それに含有されている吸着質を有する中空円筒状バレル部分であって、1つの末端が、前記円筒状バレル部分の直径より小さい直径の排出管において終結している、前記中空円筒状バレル部分と;
(b)前記バレル部分の前記排出管と連絡している中空皮下注射針と;
(c)前記円筒状バレル内に配置されそして前記円筒状バレル内の相互運動のために適応したエラストマー材料を含むプランジャーと;
(d)前記プランジャーに結合しており、そして外見上は前記排出管と反対側の前記バレル部分の前記末端に延びており、そして前記バレル部分の前記排出管の方へ向かいそして前記排出管の方から離れる相互運動を前記プランジャーに付与するために作動する、シャフト手段と;
(f)場合により、前記排出管と吸着質との間に配置された破壊可能なシール108を有するリザーバと
を含む、請求項50に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2013年11月8日に出願された米国仮出願第61/902,070号の優先権を主張するものであり、これらの開示は、その全体が、あらゆる目的で、本明細書中に組み込まれる。
【0002】
《背景技術》
感染症の早期検出は、それらの拡散を制御するために、治療を管理するために、そして患者の転帰を向上させるために必要である。例えば、致命的な病原体の大発生の早期かつ正確な同定は、世界的流行の発生を防止することができる。例えば、ウイルス(エボラ及び関連のフィロウイルスを含む)又は薬剤耐性菌によって引き起こされる血流感染用の現在の多くの診断方法は、実行するために、少なくとも24時間以上を必要とする。個体のサンプル中の病原体の存在を検出するために必要な時間を最小化するための方法が、当該分野で必要とされている。目標は、非常に低濃度で存在している間に、可能であれば、臨床症状が明らかになる前に、病原体を検出することである。早期介入は、感染の強度及び持続時間を最小限に抑えることができ、それによって、罹患率及び死亡率を減少させる。
【0003】
いくつかの場合において、サンプル中の細胞、例えば、血球(例えば、赤血球及び白血球)の存在は、アッセイ法の特異性及び感度を低下させる。現在では、非常に低濃度で存在する場合に病原体を同定又は分析することができるような、生物学的サンプルからの感染性病原体の迅速な単離及び収集のための手段が存在しない。また、病原体を検出するための既存の診断方法の感度を向上させることができる技術が当該技術分野において必要とされている。本発明は、これら及び他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0004】
一観点において、本発明は、病原体に感染している疑いのある対象から得られた生物学的サンプル中に存在する感染性病原体及び毒素の広い範囲を濃縮するためのインビトロの方法を提供する。方法は、(a)吸着媒体(adsorption media)と病原体とを含む接着性複合体(adhering complex)を形成する条件下で、対象から得られた生物学的サンプルを広範囲の吸着媒体(broad-spectrum adsorption media)に接触させることと;(b)例えば、バッファ溶液を用いて接着性複合体を洗浄することにより、前記複合体を維持しながら、前記複合体中に含まれないサンプルの成分から接着性複合体を分離することと;(d)溶出バッフ
ァを前記複合体に適用することにより、接着性複合体の病原体を回収し、それにより、溶出液(eluent)中の感染性病原体を濃縮することとを含む。いくつかの実施態様において、方法は、単離された感染性病原体を検出することをさらに含む。いくつかの例では、単離された感染性病原体を検出することは、比色アッセイ、イムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、PCRベースアッセイ、任意の染色による病原体増殖アッセイ、又はそれらの組み合わせを含む。
【0005】
いくつかの実施態様では、洗浄バッファは、生理食塩水である。いくつかの実施態様では、溶出バッファは、高イオン強度又は高張食塩水である。
【0006】
いくつかの実施態様では、生物学的サンプルは、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
いくつかの実施態様では、吸着媒体は、その表面上に少なくとも1つの多糖類分子吸着剤を有する高表面積の固体基材である。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、エンドポイント結合(end-point attachment)によって、固体基材の表面に結合している。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェート、ヒアルロン酸、サリチル酸、キトサン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。いくつかの例では、マンノースは、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである。いくつかの例では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン及びマンノースである。
【0008】
いくつかの実施態様では、固体基材は、複数の硬質のポリマービーズを含む。複数の硬質のポリマービーズは、硬質のポリエチレンビーズであることができる。
【0009】
いくつかの実施態様では、病原体は、プラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、プラスモディウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、プラスモディウム・オバレ(Plasmodium ovale)、プラスモディウム・マラリエ(Plasmodium malariae)、エボラウイルス(EBOV)、非EBOVフィロウイルス、フラビウイルス(Flaviviridae)、ストレプトコッカス・アウレウス(Streptococcus aureus)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌、ESBL産生病原体、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0010】
第2の観点において、本発明は、病原体に感染している疑いのある対象から得られた生物学的サンプル由来の血球を減少させる又は取り除くインビトロの方法を提供する。方法は、(a)サンプル中に存在する病原体と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成する条件下で、対象から得られた生物学的サンプルを場合により広範囲である吸着媒体と接触させることと;(b)接着性複合体を維持しながら、サンプルの血球と接着性複合体とを分離し、それによって、サンプルから血球を減少させる又は取り除くこととを含む。いくつかの実施態様において、ステップ(b)は、食塩水で接着性複合体を洗浄することをさらに含む。いくつかの実施態様では、方法は、(c)接着性複合体に溶出バッファを適用することと;(d)接着性複合体の病原体を回収することとをさらに含む。いくつかの実施態様において、方法は、単離された感染性病原体を検出することをさらに含む。いくつかの例では、単離された感染性病原体を検出することは、比色アッセイ、イムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、PCRベースアッセイ、病原体増殖アッセイ、又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
いくつかの実施態様では、洗浄バッファは、食塩水である。いくつかの実施態様では、溶出バッファは、高イオンの又は高張の食塩水である。
【0012】
いくつかの実施態様では、生物学的サンプルは、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施態様では、吸着媒体は、その表面上に少なくとも1つの多糖類吸着剤を有する高表面積の固体基材である。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、エンドポイント結合によって、固体基材の表面に結合する。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェート、ヒアルロン酸、サリチル酸、キトサン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。いくつかの例では、マンノースは、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである。いくつかの例では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン及びマンノースである。
【0014】
いくつかの実施態様では、固体基材は、複数の硬質のポリマービーズを含む。複数の硬質のポリマービーズは、硬質のポリエチレンビーズであることができる。
【0015】
いくつかの実施態様では、病原体は、プラスモディウム・ファルシパルム、プラスモディウム・ビバックス、プラスモディウム・オバレ、プラスモディウム・マラリエ、エボラウイルス(EBOV)、ストレプトコッカス・アウレウス、エシェリヒア・コリ、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌、ESBL産生病原体、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌、アシネトバクター・バウマンニ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、カンジダ・アルビカンス、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0016】
第3の観点において、本発明は、プラスモディウムに感染している疑いのある対象においてマラリアを診断するためのインビトロの方法を提供する。方法は、(a)プラスモディウムに感染しているサンプル中に存在する細胞と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成する条件下で、対象から得られたサンプルを吸着媒体と接触させることと;(b)吸着媒体に対する物理的変化を検出することにより接着性複合体の存在を決定することと;(c)対照サンプルと接触している参照吸着媒体と比較した吸着媒体の物理的変化に基づいて、対象がマラリアを有していることを予測することとを含む。いくつかの実施態様において、方法は、対照サンプルと接触している参照媒体に対する物理的変化の標準曲線を生成することをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施態様では、生物学的サンプルは、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、サンプルは、全血である。
【0018】
いくつかの実施態様では、対照サンプルは、健康な対象由来のサンプルである。いくつかの実施態様では、対照サンプルは、マラリアを有する対象由来のサンプルである。
【0019】
いくつかの実施態様では、物理的変化は、吸着媒体の色である。
【0020】
いくつかの実施態様では、吸着媒体は、その表面上に少なくとも1つの多糖類吸着剤を有する高表面積の固体基材である。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、エンドポイント結合によって、固体基材の表面に結合する。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェート、ヒアルロン酸、サリチル酸、キトサン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。いくつかの例では、マンノースは、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである。いくつかの例では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン及びマンノースである。
【0021】
いくつかの実施態様では、固体基材は、複数の硬質のポリマービーズを含む。複数の硬質のポリマービーズは、硬質のポリエチレンビーズであることができる。
【0022】
第
4の観点において、本発明は、対象が感染性病原体に感染していることを決定するためのインビトロの方法を提供する。方法は、(a)対象から得られた全血サンプルを吸着媒体と接触させて、サンプル中に存在する病原体と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成することと;(b)吸着媒体に対する物理的変化を検出することにより接着性複合体の存在を決定することと;(c)対照サンプルと接触している参照吸着媒体と比較した吸着媒体の物理的変化に基づいて、対象が感染性病原体に感染していることを予測することとを含む。いくつかの実施態様において、方法は、対照サンプルと接触している参照媒体に対する物理的変化の標準曲線を生成することをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施態様では、生物学的サンプルは、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、サンプルは、全血である。
【0024】
いくつかの実施態様では、対照サンプルは、健康な対象由来のサンプルである。いくつかの実施態様では、対照サンプルは、感染性病原体に感染した対象由来のサンプルである。
【0025】
いくつかの実施態様では、物理的変化は、吸着媒体の色である。
【0026】
いくつかの実施態様では、吸着媒体は、その表面上に少なくとも1つの多糖類吸着剤を有する高表面積の固体基材である。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、エンドポイント結合によって、固体基材の表面に結合する。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェート、ヒアルロン酸、サリチル酸、キトサン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。いくつかの例では、マンノースは、D−マンノース又はD−マンノースポリマーである。いくつかの例では、少なくとも1つの多糖類吸着剤は、ヘパリン及びマンノースである。
【0027】
いくつかの実施態様では、固体基材は、複数の硬質のポリマービーズを含む。複数の硬質のポリマービーズは、硬質のポリエチレンビーズであることができる。
【0028】
いくつかの実施態様では、病原体は、プラスモディウム・ファルシパルム、プラスモディウム・ビバックス、プラスモディウム・オバレ、プラスモディウム・マラリエ、エボラウイルス(EBOV)、ストレプトコッカス・アウレウス、エシェリヒア・コリ、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌、ESBL産生病原体、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌、アシネトバクター・バウマンニ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、カンジダ・アルビカンス、サイトメガロウイルス (CMV)、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0029】
以下の詳細な説明を読んだときに、これらの及び他の観点、目的および実施態様が、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1は、本発明の濃縮器の実施態様を示している。
【0031】
本発明は、感染症検出及び診断方法を提供する。有利には、本発明は、感染の早期検出に使用されることができる患者サンプルから細菌、ウイルス、及
び他の病原体(例えばパラサイト)を単離するために使用されることができる。本発明の別の観点では、分析物検出アッセイを妨害する可能性のある細胞及びその他の非分析物が、本明細書において記載される吸着媒体を使用して、サンプルから取り除かれることができる。
【0032】
また、本明細書において提供されるものは、ヒト対象から採取されたサンプルから循環しているpRBC及びプラスモディウムを検出するための、単純な発色アッセイ法である。この方法はまた、抗マラリア治療の開始及び/又は完了時にマラリアの進行をモニターするために用いられることができる。
【0033】
驚くべきことに、pRBC中の寄生虫血症(parasitemia)が、感染した血液を吸着媒体と共有結合している多糖類(例えば、ヘパリン又はヘパランサルフェート)に接触させることによって検出可能であることが発見された。パラサイト及びpRBCは、吸着媒体と結合し、そして今度は、媒体の色を変化させる。このように、目に見える色の変化は、対象がマラリア感染を有することを示す。
【0034】
《I.定義》
本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に明記されない限り、それらに帰する意味を有する。
【0035】
用語「マラリア感染」は、プラスモディウム属の寄生原生動物、例えばこれらに限定されないが、P.ファルシパルム、P.ビバックス、P.オバレ、P.マラリエ、及びP.ノウレシ(P. knowlesi)を意味する。
【0036】
用語「吸着媒体」は、細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、生体分子、化学分子が、その表面に付着することのできる材料を意味する。
【0037】
用語「接着性複合体」は、第一分子が基材の表面に結合(例えば、連結(linked)、結合(coupled)、又は結合(bound))しておりそして第二分子が第一分子に結合している少なくとも2つの分子の複合体を意味する。
【0038】
用語「色彩変化」は、第一の色から第二の色への変化を意味する。第一の色と第二の色とにおいて、検出可能な差がない場合には、色彩変化が示されていない。
【0039】
用語「可視スペクトル」は、人の目により検出することができる電磁スペクトルの部分、例えば、約390〜7000nmを意味する。近赤外、中波長赤外線、及び遠波長スペクトルは、人間の目では見えない。
【0040】
用語「健康な対照」は、感染を有していない個体を意味する。用語「陽性対照」は、目的の病原体によって引き起こされる感染症を有する個体を意味する。
【0041】
用語「高表面積」とは、体積比に対して大きな表面積を有する特性を意味する。
【0042】
用語「吸着剤」は、それらに結合(例えば、連結、結合、又は結合)している化学化合物、生体分子、又は物質を有する固体基材を意味する。特定の例において、吸着剤は、固体基材そのものである。一実施態様では、吸着剤は、それらに結合した多糖類を有するポリマー樹脂である。
【0043】
用語「硬質のポリマービーズ」は、ポリマー樹脂から作られる、ビーズ、顆粒、ペレット、球体、粒子、マイクロカプセル、球体、ミクロスフェア、ナノスフェア、マイクロビーズ、ナノビーズ、マイクロ粒子、ナノ粒子などを意味する。
【0044】
用語「炭水化物」は、xとyが異なる数である実験式C
x(H
2O)
yを通常有し、そして炭素、水素、及び酸素原子を含有する分子を意味する。炭水化物の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類を含む。
【0045】
用語「多糖類」は、グリコシド結合によって結合している多くの単糖単位を含み、そしてxが200〜約3000の間である実験式C
x(H
2O)
yを有する分子を意味する。
【0046】
用語「抗マラリア療法」は、治療、例えば、マラリア感染を軽減又は治療することを目的とする薬学的に効果のある薬剤を意味する。
【0047】
《II.実施態様の詳細な説明》
A.吸着媒体
本発明の吸着媒体は、分析物/病原体及びpRBCに結合可能な多糖類吸着剤に結合するための表面を提供する。いくつかの実施態様では、吸着媒体は、その表面上に少なくとも1種の多糖類吸着剤を有する、高表面積を有する固体基材を含む。固体基材は、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリカ、ラテックス、ガラス、セルロース、セルロースアセテート、架橋デキストラン、架橋アガロース、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アルギネート、シリコーン、テフロン(登録商標)、フルオロポリマー、及び他の合成ポリマー製であることができるが、これらに限定されない。高表面積を有する固体基材は、吸着剤モノレイヤー、フィルター、膜、固体繊維、中空繊維、粒子、又はビーズの複数であることができる。場合により、固体基材は、分析物の検出可能な量を結合するのに十分に大きな表面積を提供する、他の形態若しくは形状又は構成された品物(configured articles)中に存在することができる。
【0048】
媒体を作成するために有用な基材は、無孔の硬質ビーズ、粒子、又は充填剤(packing)、網状発泡体(reticulated foams)、(例えば、焼結ビーズ又は粒子から形成された)硬質のモノリシックベッド(monolithic bed)、織布又は不織布で充填したカラム、糸又は中実の若しくは中空の緻密な(微小孔性ではない)モノフィラメント繊維で充填したカラム、平坦な膜又はバリア膜、あるいはこれらの組合せ、例えば、混合されたビーズ/布カートリッジを含むが、これらに限定されない。
【0049】
特定の例において、適切な基材は、最初は微孔性であるが、吸着部位、例えば、エンドポイント結合した1つ以上の多糖類吸着剤を介した吸着部位の生成の前、間、又は後に表面が処理された場合は本質的に無孔となるものである。一実施態様では、基材は、固体ビーズ又は粒子の形態である。
【0050】
特定の例において、固体基材は、複数の硬質ポリマービーズ、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリカ、ラテックス、ガラス、セルロース、架橋アガロース、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アルギネート、シリコーン、フルオロポリマー、及び合成ポリマーのビーズである。好ましくは、硬質ポリマービーズ又はポリエチレンビーズである。
【0051】
固体基材の大きさは、アッセイにおいて使用されるテストサンプルの量又は他のパラメータに応じて選択されることができる。いくつかの実施態様では、硬質ポリマービーズの複数は、約1μm〜約1mm、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、45μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、及び1mmの平均外径を有している。他の実施態様では、硬質ポリマービーズの複数は、約10μm〜約200μm、例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、45μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、105μm、110μm、115μm、120μm、125μm、130μm、135μm、140μm、145μm、150μm、155μm、160μm、165μm、170μm、175μm、180μm、185μm、190μm、195μm、及び200μmの平均外径を有している。有用なビーズは、直径が約100〜500μmを超える範囲まで、例えば、100μm、200μm、300μm、400μm、又は500μmの大きさを有している。ビーズの平均の大きさは、150〜450μmであることができる。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2011/068897号参照。
【0052】
固体基材の表面は、本明細書に記載の多糖類吸着剤の共有結合を可能にするために官能化されることができる。いくつかの実施態様では、固体基材の表面は、少なくとも1つの化学基、例えばアミン基を有する。
【0053】
吸着媒体は、ハウジング、例えば、シリンジ、カラム、カートリッジ、チューブ、遠心チューブなど、又は任意の容器内に収容されことができる。いくつかの実施態様では、容器は、多糖類が結合した吸着媒体上に捕捉されていないRBCを、媒体に結合している寄生RBC(parasitized RBC)を乱すことなく除去することができるような、特定の形状と大きさである。
【0054】
吸着媒体を含むハウジングは、吸着媒体の1つより多い種類を含むことができる。いくつかの実施態様では、サンプル、例えば、全血が、直列で又は並列で種々の媒体と接触するように、種々の媒体がハウジング内にパフェ型配置(parfait-type arrangement)に積層されることができる。カートリッジ内の種々の媒体の一構成は、場合により入口及び出口領域の間に介在する第二吸着媒体を含有する混合領域とともに、カートリッジの入口及び/又は出口に第一吸着媒体を位置させることである。繊維形状、混合織布、ニット、又は不織布構造中の媒体の場合には、混合繊維から布を形成するために繊維産業において周知の方法により調製されることができる。あるいは、1つの繊維のタイプが、接触して血液凝固を活発に阻害する表面を含有する限り、糸は、異なる表面の化学的性質を有する2つ以上の繊維から作られた微細なマルチフィラメント糸又はモノフィラメントから調製されることができる。混合繊維糸は、次に、血液接触のための布を調製するために使用されることができる。
【0055】
《B.多糖類吸着剤》
いくつかの実施態様において、多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパランサルフェート、マンノース、デキストランサルフェート、ヒアルロン酸、シアル酸、キトサン、及びそれらの組み合わせである。いくつかの例では、1つ以上の異なる多糖類吸着剤が、例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上の異なる多糖類吸着剤が、吸着媒体の固体基材に結合する。いくつかの実施態様では、吸
着剤はヘパリンである。いくつかの実施態様では、吸
着剤は、ヘパランサルフェートである。他の実施態様では、吸
着剤はマンノースである。別の実施態様では、吸
着剤はデキストランサルフェートである。いくつかの例では、多糖類吸着剤は、ヘパリン及びマンノースである。いくつかの例では、多糖類吸着剤は、ヘパランサルフェート及びマンノースである。他の例では、多糖類吸着剤は、ヘパリン及びデキストランサルフェートである。さらに他の例においては、多糖類吸着剤は、マンノース及びデキストランサルフェートである。
【0056】
いくつかの実施態様では、1つより多い吸着剤、例えば、2つの吸
着剤が、単一の固体基材に結合している。いくつかの例では、2つの吸着剤(A及びB)の比率は、1:99〜99:1の範囲である。他の実施態様では、基材は、吸着剤Aの約1〜50%と吸着剤Bの約1〜50%とで被覆されている。
【0057】
いくつかの実施態様では、吸着剤として使用されるマンノースは還元糖であるか、又は非還元糖(例えば、マンノシド)である。適切なマンノースとしては、D−マンノース、L−マンノース、p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシド、マンノース含有多糖、及びマンナンを含むがこれらに限定されない。用語「マンノース」はまた、マンノースのポリマー、例えば、マンナンを含む。マンナンは、糖マンノースの直鎖状ポリマーである植物性多糖類を意味する。植物マンナンは、β(1−4)結合を有する。マンナンはまた、酵母で見られる細胞壁多糖類を意味することができる。マンナンのこのタイプは、α(1−6)結合骨格とα(1−2)及びα(1−3)結合の分岐を有している。
【0058】
一実施態様では、マンノースは固体基材に対するエンドポイント結合によって結合している。別の実施態様では、マンノースは、マルチポイント結合によって基材と結合している。
【0059】
他の例では、「マンノース」は、マンノースのポリマー、例えば、マンナンである。マンナンは、糖マンノースの直鎖状ポリマーである植物性多糖類を意味する。植物マンナンは、β(1−4)結合を有する。マンナンはまた、酵母で見られる細胞壁多糖類を意味することができる。マンナンのこのタイプは、α(1−6)結合骨格とα(1−2)及びα(1−3)結合の分岐を有している。
【0060】
P.ファルシパルムに感染した赤血球は、内皮細胞及び他の赤血球の表面上に存在する特異的結合性分子に結合することができる赤血球膜タンパク質1(PfEMP1)を発現する。本明細書で提供される方法は、多糖類のような結合分子に選択的に結合する寄生赤血球の能力に部分的に基づいている。また、これらの結合分子が吸着媒体の表面に結合している場合、媒体は、患者のサンプルからpRBCを分離するために使用されることができ、そのことが、次に、吸着媒体の色を変化させる。従って、マラリア感染の存在は、患者サンプルを吸着媒体に結合した結合分子と接触させることによって決定されることができる。
【0061】
pRBCそして特にPfEMP1に結合可能な分子は、多糖類、例えば、ヘパリン、ヘパランサルフェート、及びコンドロイチンサルフェートA(CSA)などのグリコアミノグリカン、シアル酸、補体受容体1(complement receptor 1)(CR1)、ABO式血液型A抗原及びB抗原、ICAM−1、CD36、トロンボスポンジン(TSP)、内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)、E−セレクチン、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、血小板内皮細胞接着分子1(PECAM−1)、内皮白血球接着分子1(ELAM−1)、血清タンパク質IgG/IgM、及びフィブリノゲン、マンノース基を有する炭水化物、レクチン、並びにキトサンを含むがこれらに限定されない。追加のpRBC結合分子は、ヒアルロネート、ペプチドグリカン、糖タンパク質、糖脂質、グリカン、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)グリカン、ヒアルロン酸、および他のノイラミン酸を含む。
【0062】
上記の結合分子は、表面上にpRBCを吸着するために使用されることができる。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの多糖類吸着剤が、高表面積の固体基材に結合して吸着媒体を形成する。いくつかの実施態様では、多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパランサルフェート、ヒアルロン酸、シアル酸、マンノース配列を有する炭水化物、及びキトサンである。一実施態様では、多糖類吸着剤は、ヘパリンである。
【0063】
混合された炭水化物に加えて、分析物に特異的なさらなる結合部分を含むことが可能である。これらは、タンパク質、ペプチド、抗体、アフィボディ、核酸、及び他の特異的結合部分を含む(参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開公報第2003/0044769号参照)。
【0064】
《C.吸着媒体の表面への多糖類吸着剤の結合》
多糖類を、単一の共有結合エンドポイント結合(例えば、ヘパリン分子の末端残基を介した共有結合)により、吸着媒体の表面に結合させることができる。結合されるべき分子の末端基の単一の共有結合は、非共有結合又はマルチポイント結合と比較して、有利には、それらの表面密度を最大にしながら、固定化された分子の配向性のより良好な制御を提供する。特に、これらの長鎖炭水化物のエンドポイントの結合は、分析物/病原体結合のために利用可能な炭水化物のオリゴマー上のアクセス可能な位置の高濃度につながるブラシ型の分子表面構造を提供する。いくつかの例では、pRBCは、従来技術において一般的に採用されている、ヘパリン断片により被覆されている従来の表面よりもより効果的に、全長ヘパリン(例えば、10キロダルトンより大きな平均分子量を有するヘパリン)が被覆された表面に結合している。
【0065】
固体基材への炭水化物(例えば、多糖類)の共有結合は、非共有結合と比較して、パラメータ、例えば、固定された分子の表面密度及び配向性の制御を提供する。これらのパラメータは、固定された炭水化物分子に結合する吸着質(adsorbate)を提供することが示されている。特定の実施態様では、固体基材上の炭水化物の表面濃度は、0.01〜約0.5μg/cm
2の範囲、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、又は0.2μg/cm
2である。他の実施態様では、固体基材上の吸
着剤の表面濃度は、0.001〜約2.0μg/cm
2の範囲である。別の実施態様では、固体基材上の吸
着剤の表面濃度は、0.005〜約0.5μg/cm
2の範囲である。
【0066】
いくつかの実施態様では、固体基材上の吸着剤の表面濃度は、1μg/cm
2〜20μg/cm
2の範囲、例えば、1μg/cm
2、2μg/cm
2、3μg/cm
2、4μg/cm
2、5μg/cm
2、6μg/cm
2、7μg/cm
2、8μg/cm
2、9μg/cm
2、10μg/cm
2、11μg/cm
2、12μg/cm
2、13μg/cm
2、14μg/cm
2、15μg/cm
2、16μg/cm
2、17μg/cm
2、18μg/cm
2、19μg/cm
2、及び20μg/cm
2である。いくつかの実施態様では、固体基材上の吸着剤の表面濃度は、5μg/cm
2〜15μg/cm
2の範囲、例えば、5μg/cm
2、6μg/cm
2、7μg/cm
2、8μg/cm
2、9μg/cm
2、10μg/cm
2、11μg/cm
2、12μg/cm
2、13μg/cm
2、14μg/cm
2、及び15μg/cm
2である。
【0067】
いくつかの実施態様では、マンノース、マンノース誘導体、及びマンノースのオリゴマーは、還元的アミノ化によって、アミノ化基材例えばアミノ化ビーズ上の第一級アミンに還元的に結合されている。還元性マンノースのオープンアルデヒド型のビーズへの結合は、安定な第二級アミンをもたらす。反応性アミンを有する非還元性マンノースは、アルデヒド官能基を有する中間体を有するビーズに結合することができる。例えば、マンノースは、(a)アミノ化基材をマンノースを含有する水溶液に接触させシッフ塩基中間体(Schiff base intermediate)を形成すること、及び(b)シッフ塩基を還元剤と接触させ、マンノースを結合させることにより、アミン含有基材に結合する。いくつかの実施態様では、マンノースが非還元性マンノースである場合、中間体アルデヒド(例えば、グルタルジアルデヒド)は、非還元マンノースの前にアミン基材に結合する。
【0068】
マンノースは、水溶液、例えば、酸性水溶液中に溶解されることができる。マンノース水溶液を、アミノ化基材、例えば、アミノ化ビーズと接触させる。シッフ塩基が生成される。シッフ塩基は、その後、還元剤で還元される。還元剤は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムであることができる。特定の例において、また、固体基材を反応性アルデヒド官能基を有するヘパリンと反応させる。
【0069】
ヘパリン結合に関して、還元性末端残基においてより反応性のアルデヒド官能基が、部分的な亜硝酸分解により達成されることができる。これは、反応時間を短縮するが、固定化されたヘパリンは、より低い分子量を有するであろう。結合は、還元的アミノ化(シアノ水素化ホウ素)によって、水溶液中で行われる。
【0070】
全長ヘパリン分子の表面への共有結合は、吸着媒体の表面に存在する第一級アミノ基を有するヘパリン分子のアルデヒド基との反応によって達成されることができる。全ての炭水化物の固有の特性は、それらの還元性末端にヘミアセタールを有しているということである。このアセタールは、アルデヒド形と平衡状態にあり、第一級アミンによりシッフ塩基を形成することができる。これらのシッフ塩基は、次に、安定した第二級アミンに還元されることができる。いくつかの実施態様では、全長ヘパリンは、共有コンジュゲーション(covalent conjugation)によって固体基材上に固定された表面である。他の実施態様では、全長ヘパリンは、安定した第二級アミノ基を介して、前記吸着媒体と共有結合する。
【0071】
いくつかの実施態様では、固定化された全長ヘパリン分子は、10キロダルトンより大きな平均分子量を有する。他の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、15キロダルトンより大きな平均分子量を有する。別の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、21キロダルトンより大きい平均分子量を有する。さらに別の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、30キロダルトンより大きな平均分子量を有する。好ましくは、固定化されたヘパリン分子は、15〜25キロダルトンの範囲内の平均分子量を有する。平均分子量はまた、25〜35キロダルトンのように高くてもよい。
【0072】
特定の例では、吸着剤を製造する様々な方法及び吸着剤自体は、その開示が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,663,148号及び第8,758,286号並びに米国特許公開公報第2009/0136586号、第2012/0305482号、及び第2014/231357号に開示されている。
【0073】
《D.吸着媒体に結合する吸着剤に結合する分析物/病原体》
吸着媒体に結合した吸着剤は、サンプル中の関心のある分析物/病原体に結合するために使用されることができる。いくつかの実施態様では、サンプルは、全血、血清、血漿、尿、糞便、痰、涙、唾液、気管支洗浄液、他の体液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、サンプルは、対象、例えば、ヒト対象由来の全血である。
【0074】
いくつかの実施態様では、分析物/病原体は、プラスモディウム・ファルシパルム、プラスモディウム・ビバックス、プラスモディウム・オバレ、プラスモディウム・マラリエ、エボラウイルス(EBOV)、ストレプトコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリヒア・コリ、カルバペネム耐性エンテロバクター(CRE)細菌(例えば、カルバペネム耐性エシェリヒア・コリ及びカルバペネム耐性クレブシエラ)、ESBL産生病原体(例えばESBL産生エシェリヒア・コリ、ESBL産生K.ニューモニエ、及びESBL産生K.オキシトカ)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)細菌(例えば、バンコマイシン耐性E.フェカリス及びバンコマイシン耐性E.フェシウム)、アシネトバクター・バウマンニ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、カンジダ・アルビカンス、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、及びこれらの任意の組合せを含む。
【0075】
他の特定の例において、関心のある分析物/病原体は、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、G型肝炎ウイルス/GB−Cウイルス(HGV/GBV−C)、ヒト免疫不全ウイルス1型及び2型(HIV−1/2)、ヒトT細胞リンパ指向性ウイルスタイプ1型及び2型(HTLV−I/II)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、TTウイルス(TTV)、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV−6)、SENウイルス(SEN−V)、及びヒトパルボウイルス(HPV−B19)を含むが、これらに限定されない。
その他の関心のウイルスは、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV−7)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV−8)、サブタイプH1N1及びH5N1を含むインフルエンザA型ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、コロナウイルス、及び出血熱を引き起こすRNAウイルス、例えば、アレナウイルス(例えば、ラッサ熱ウイルス(LFV)、フィロウイルス(例えば、エボラウイルス(EBOV)及びマールブルグウイルス(MBGV))、ブニヤウイルス(例えば、リフトバレー熱ウイルス(RVFV)とクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV))、及びフラビウイルス(ウエストナイルウイルス(WNV)、デング熱ウイルス(DENY)、黄熱病ウイルス(YFV)、並びに以前はG型肝炎ウイルス(HGV)として知られているGBウイルスC(GBV−C))を含むが、これらに限定されない。
【0076】
特定の例では、細菌は、トレポネマ・パリズム(TP、梅毒の病原体)、エルシニア・エンテロコリティカ、並びにスタフィロコッカス及びストレプトコッカス種(最近コンタミネーションの一般的な病原体)、並びにパラサイト、例えば、プラスモジウム種(マラリアの病原体)、クルーズ・トリパノソーマ(シャーガス病の病原体)、及びバベシア・ミクロチ(バベシア病)を含むが、これらに限定されない。追加の細菌は、スタフィロコッカス・エピデルミジス、バシラス・セレウス、エイケネラ・コローデンス、リステリア・モノサイトジェネシス、ストレプトコッカス・アガラクティアエ、ヘモフィルス・インフルエンザ、ナイセリア・メニンギティディス、ナイセリア・ゴナーリエ、バクテロイデス・フラジリス、バシラス・アンスラシス、エルシニア・ペスティス、エルシニア・エンテロコリティカ、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ・アボルタス、セレイシャ・マーセッセンス、セラチア・リクファシエンス、シュードモナス・フルオレッセンス、及びデイノコッカス・ラジオデュランスを含むが、これらに限定されない。
【0077】
また、新興の血液由来病原体(blood-borne pathogens)、例えば、カンジダ・アルビカンスなどのカンジダ種、アスペルギルス・フミガーツスを含むアスペルギルス種、E型肝炎ウイルス(HEV)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV−8)、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病の病原体)、及びクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の未知の病原体を検出することができる。
【0078】
ヘパリン/ヘパランサルフェートに結合することが知られている病原体が、本明細書に記載の方法において使用されることができる。そのような病原体の非限定的な例としては、細菌、例えば、バシラス・アンスラシス、バシラス・セレウス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボーデテラ・パータッシス、クラミジア・ニューモニエ、クラミジア・トラコマティス、ヘモフィラス・インフルエンザノンタイパブル、ヘリコバクター・ピロリ、リステリア・モノサイトジェネシス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ナイセリア・ゴナーリエ、ナイセリア・メニンギティディス、オリエンティア・ツツガムシ、ポルフィロモナス・ジンジバリス、シュードモナス・アエルギノサ、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・アガラクティアエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、エルシニア・エンテロコリティカ;ウイルス、例えばアデノ随伴ウイルス2型、アデノウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱ウイルス、FMDV、HSV1、HSV2、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HHV8、HIV1、HPV、HTLV1、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、シュードラビエス・ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、シンドビスウイルス、ワクシニアウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス;パラサイト、例えば、ジアルジア・ランビア(Giardia lambia)、リーシュマニア属、エンセファリトゾーン属、ネオスポラ・カニナム、プラスモジウム属、トキソプラズマ・ゴンジー、クルーズ・トリパノソーマ及びプリオンである。Barlett及びParkの、M.S.G. Pavao,ed.Glycans in Diseases and Therapeutics,Biology of Extracellular Matrix(Heidelberg:Spring−Verlag,2011)の「Chapter 2 Heparan Sulfate Proteoglycans in Infection」参照。
【0079】
《E.分析物/病原体の検出方法》
本明細書において提供されているものは、分析物/病原体に感染している又は感染している疑いのある個体由来の生物学的サンプル中の血球を、減少させる方法である。この方法は、関心のある分析物/病原体を検出するために使用される従来の技術の感度を妨害する可能性がある血液細胞を除去するために使用されることができる。方法は、分析物/病原体と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成するための条件下で、血球を含むサンプルを本明細書に記載の吸着媒体に曝露することを含むことができる。サンプルの血球は、例えば、重力、又は接着性複合体を維持するその他の手段により、接着性複合体から分離されることができる。いくつかの例では、食塩水例えば生理食塩水、例えば、約0.90% w/v NaCL溶液、約300mOsm/L、0.01N食塩水、又は同様の溶液が、吸着媒体を含む接着質複合体に適用され、残存している血球を洗い流す。
【0080】
本明細書において提供されているものはまた、分析物/病原体に感染している又は感染している疑いのある個体から得られたサンプルにおいて、分析物/感染性病原体を濃縮する方法である。サンプルは、分析物/病原体と吸着媒体とを含む接着性複合体を形成するための条件下で、本明細書に記載の吸着媒体に曝露されることができる。接着性複合体の一部ではないサンプルの成分は、例えば、重力により、接着性複合体を乱すことなく、分離されることができる。吸着媒体を含む接着性複合体は、洗浄バッファ、例えば生理食塩水又はこの複合体を維持する(保つ)溶液により、洗浄されることができる。いくつかの例では、生理食塩水は、約0.90% w/v NaCL溶液、約300mOsm/L、0.01N食塩水、又は同様の溶液である。複合体は、溶出バッファ、例えば高イオン食塩水を利用して、吸着媒体から分析物/病原体を分離するために破壊されることができる。いくつかの例では、高イオン食塩水溶液は、2N食塩水である。他の場合において、溶出バッファは、多糖類吸着剤と分析物/病原体との結合を妨害することができるバッファである。いくつかの実施態様では、種々の分析物/病原体は、関心のある特定の分析物/病原体のために選択された様々な溶出バッファを使用して、異なる画分における吸着媒体から溶出されることができる。クロマトグラフィーカラムと同様に、特定の分析物/病原体は、種々のプールにおいて種々の時間において溶出されることができる。関心のある分析物/病原体は、1つ以上の画分において溶出されることができる。
【0081】
このプロセスは、その後当業者に公知の標準的な方法を用いて同定されそして分析されることができる分析物/病原体を濃縮する。例えば、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、寄生虫、及び微生物病原体は、アッセイ、例えば、比色アッセイ、イムノアッセイ(例えば、サンドイッチアッセイ又はディップスティックアッセイ)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、PCRベースのアッセイ(例えば、RT−PCR、定量PCR、TaqMan(登録商標)アッセイ)、病原体増殖アッセイ(例えば、薬物耐性又は抗生物質耐性アッセイ)、及びこれらの変形を用いて検出されることができる。例えば、HCV RNAは、COBAS(登録商標)AmpliPrep/COBAS(登録商標)TaqMan(登録商標)HCVテスト(ロシュ・ダイアグノスティックス、インディアナポリス、インディアナ)、及びリアルタイムHCV遺伝子型II(アボット・モレキュラー、アボットパーク、イリノイ)などの標準キットを使用して、RT−PCRを用いて検出される。エボラウイルスは、例えば、BioFire Diagnostics’ FilmArray及びCDCのエボラウイルスVP40 Real−time RT−PCR Assayを用いて検出されることができる。
【0082】
薬物耐性病原体は、薬物の存在下で病原体を培養することによって検出されることができる。例えば、病原体は、エルタペネム又はメロペネムを含む増殖培地に接種するために使用されることができるカルバペネム耐性クレブシエラ属又はE.コリであることが疑われる。培養を準備した後、インキュベートされた培養液培養物(incubated broth culture)は、マッコンキー寒天プレート上に継代培養されることができる。次の日、寒天プレートは、ラクトース発酵(ピンク−赤)コロニーについて検査されることができる。また、単離したコロニーは、カルバペネマーゼ産生に関する表現型試験、例えば修正されたホッジテスト(Modified Hodge Test)(MHT)を用いてスクリーニングされることができる。
【0083】
特定の例において、標準的な実験技術、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて、関心のある分析物を検出及び/又は同定することができる。例えば、特定の例において、市販のELISAキットが使用されることができる、又は容易に開発されることができる。ELISAにおいて、特異的な抗体は受動的にプレートに吸収される。非特異的部位は、特定のアッセイの特定の免疫化学反応において積極的な役割を有していないタンパク質溶液でブロックされる。特定の分析物/病原体は、表面上の抗体によって捕捉され、その後、酵素標識を有する別の抗体によって検出される。酵素標識は、特異的な試薬と反応し、そして分析物の存在が検出及び同定される。
【0084】
他の例では、水晶振動子マイクロバランス(QCM)は表面に吸着する分析物を検出するために使用されることができる。水晶振動子マイクロバランスは、分子がその表面と相互作用する際に水晶振動の周波数シフトを生成する、非常に高感度で安価な検出器/センサである。QCMは、水晶振動子の周波数の変化を測定することにより、物理的変化、例えば、単位面積当たりの質量を検出する。液体では、QCMは、認識部位で官能化される表面への分子の親和性を決定するのに非常に効果的である。より大きな存在、例えば、ウイルス及び細菌も認識されることができる。例えば、QCMは抗体に結合し、それにより、抗体コンジュゲートの選択的感知(selective sensing)が可能となる。ある例では、溶出液は、関心のある分析物又は病原体を含む。QCMは、分析物に特異的な抗体に結合している。QCMを分析物/病原体を含む溶出液に接触させることによって、分析物は、QCMの表面に結合し、QCMはその結合、存在、及び同一性を感知する。他の親和性分子をまた、表面、例えば、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質などに結合させることができる。
【0085】
さらに他の例では、表面プラズモン共鳴(SPR)技術が、分析物/病原体の存在及び/又は同一性を検出するために使用されることができる。表面プラズモンは、光波に関して光子が量子の名前であるのと同様に、金属と誘電体との界面に伝播する電荷密度波(electric charge density wave)に関する量子の名前である。表面プラズモンは、金属材料と誘電体材料との界面に入射する電磁放射による励起に際して共振する。表面プラズモンは、界面に非常に近接して、環境の変化に応答する。この事実により、表面プラズモン共鳴は、生体分子の相互作用の検出用において有用となる。QCMのように、SPR表面に、抗体又は結合部分例えば関心のある分析物/病原体の抗原のいずれかを標識することは可能である。
【0086】
血液、例えば、全血若しくは血清由来の分析物/病原体を濃縮するための、又は血液から血球を減少させるための方法は、血液に固体、例えば、除去されるべき分析物/病原体(吸着質)に対する結合親和性を有する多糖類吸着剤により処理される表面である本質的に非微孔性の基材を接触させることを含むことができる。前記媒体内の格子間チャネルの大きさは、媒体表面積の量及び媒体上の結合部位の表面濃度と釣り合いがとられており(balanced with)、吸着剤媒体を通る血液の比較的高い流量をまた可能にしながら、十分な吸着能力を提供する。その結果、媒体上の結合部位への吸着質の輸送が、ゆっくりとした拡散によってではなく、主として強制対流によって生じる。(強制)対流は、例えば、ポンプ若しくはシリンジにより生じる圧力勾配によって、フレキシブルコンテナ(または剛性コンテナの内圧)の外部圧力の適用によって、重力のヘッド/高低差(gravity head/elevation difference)によって、又は体外装置で処理されている患者における動脈圧及び静脈圧の違いによって、生成される流れを意味する。
【0087】
《F.マラリア感染の診断方法》
本明細書において提供されるものは、マラリア感染の存在を決定するためにヘパリンを固定化した固体基材を含む吸着媒体の使用方法である。マラリアを有することが疑われる個体から採取されたサンプルが、感染した赤血球(RBC)又は寄生赤血球に関して試験されることができる。寄生RBCの細胞表面上に位置しているヘパランサルフェート結合タンパク質が、ヘパリン、ヘパランサルフェート、又は固体表面に結合するその他の多糖類に接着することができるという発見に基づいている。さらに、この方法は、個体が、抗マラリア治療を投与されるべきかどうかを決定するために利用されることができる。さらに、この方法は、前記治療を受けている個体においてマラリアの進行をモニターするために使用されることができる。
【0088】
サンプルは、マラリア感染を有する疑いのある対象(例えば、ヒト対象)から取得されることができる。いくつかの実施態様では、サンプルは、全血、血清、血漿、尿、痰、気管支洗浄液、涙、乳頭吸引液(nipple aspirate)、リンパ液、唾液、脳脊髄液、組織、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。好ましくは、サンプルは、全血である。
【0089】
サンプルを、その後、固体基材の表面上の多糖類吸着剤が、もしサンプル内に存在する場合は寄生赤血球に結合しそして接着性複合体を形成することを可能にする条件下で、吸着媒体と接触させる。
【0090】
いくつかの例では、接着性複合体形成後、サンプル及び吸着媒体は、媒体から複合体を破壊又は分離することなく、分離される。
【0091】
接着性複合体の存在は、可視光スペクトル(例えば、約400nm〜約700nmの波長)内の吸着媒体の色を検査することによって検出される。いくつかの例では、検出可能な色は、約625nm〜740nm、又は赤色若しくはその変形に相当する範囲の波長範囲内にある。吸着媒体の色は、可視光の光検出器又はヒトの目を使用して決定することができる。
【0092】
特定の例において、媒体上の分析物(例えば、ウイルス、病原体、細菌、サイトカイン、又は接着性複合体)を濃縮することと媒体の色彩変化により分析物を検出することとが可能である。代替的な実施態様においては、カラムから分析物を溶出することにより分析されるべき分析物を濃縮し、分析物を濃縮すること及び媒体の色彩変化を測定することが可能である。検出の他の形態もまた可能である。
【0093】
いくつかの実施態様では、試験吸着媒体の色が、対照吸着媒体と比較される。いくつかの実施態様では、対照媒体(例えば、感染の陰性対照)は、健康な対照、例えばマラリア感染を有していない対象から採取されたサンプルに曝露されることができる。他の実施態様では、対照媒体(例えば、陽性対照)は、マラリア感染(例えば、合併症のない又は重症のマラリア感染)を有する対象から採取されたサンプルに曝露されている吸着媒体である。
【0094】
試験対象由来の吸着媒体が、健康対照のそれと同様の色を有する場合には、アッセイは、接着性複合体が存在しないことを示している。しかし、試験対象由来の吸着媒体が、陽性対照のそれと同様の色を有する場合には、アッセイは、接着性複合体、したがって、マラリア感染の存在を示している。
【0095】
接着性複合体の存在を検出した場合は、対象は、抗マラリア治療を投与されることができる。抗マラリア治療の非限定的な例としては、クロロキン(Aralen)、キニーネサルフェート(Qualaquin)、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)、アトバコン−プログアニル(Malarone)、アルテメーテル−ルメファントリン(Coartem)、メフロキン(Lariam)、プリマキン、アモジアキン、キニーネ、キニジン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、スルホンアミド、例えば、スルファドキシン、スルファメトキシピリダジン、ピリメタミン、ハロファントリン、アルテミシニン、それらのアルテミシニン誘導体、及びそれらの組み合わせを含む。アルテミシニン誘導体は、アルテメーテル、アルテスネート、ジヒドロアルテミシニン、アルテニモール、アルテモチル、及びアルテエーテルを含む。適切な抗マラリア薬物である他のアルテミシニン誘導体は、例えば、米国特許第8,722,910号;第8,481,757号;第8,304,440号;第7,851,512号;第7,776,911号;第7,084,132号;第6,586,464号;第6,362,219号;及び第6,306,896号、並びに米国特許公開公報第2012/0258945号、第2013/0072513号、第2013/071474号、第2014/011829号、第2014/011830号、及び第2014/256761号中に見られる。
【0096】
《G.感染RBCは、吸着媒体の表面上のRBC結合性分子に結合することができる》
感染赤血球は、多糖類、例えば、これらに限定されないが、ヘパランサルフェート、ヘパリン、コンドロイチンサルフェート、及びこれらの誘導体により結合される吸着媒体の表面に保持されることができる。ヘパランサルフェート、ヘパリン、及びその類似体に結合することができる感染性物質、例えば、ウイルス及び病原体(例えば、細菌及びパラサイト)の非限定的な例は、細菌、例えば、バシラス・アンスラシス、バシラス・セレウス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボーデテラ・パータッシス、クラミジア・ニューモニエ、クラミジア・トラコマティス、ヘモフィラス・インフルエンザ、ヘリコバクター・ピロリ、リステリア・モノサイトジェネシス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ナイセリア・ゴナーリエ、ナイセリア・メニンギティディス、オリエンティア・ツツガムシ、ポルフィロモナス・ジンジバリス、シュードモナス・アエルギノサ、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・アガラクティアエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、及びエルシニア・エンテロコリティカ、ワクシニアウイルス、例えば、牛痘ウイルス、家兎痘ウイルス、粘液腫ウイルス、及びショープ線維腫ウイルス、HIV1、HPV、HTLV1、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、例えば、ネズミ科ヘルペスウイルス−4(MuHv−4)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、エプスタイン−バールウイルス(EBV)、FMDV、単純ヘルペスウイルス、例えば、HSV−1及びHSV−2、仮性狂犬病ウイルス(PrV)、仮性狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、シドビスウイルス(sidbis viruses)、フラビウイルス、例えば、デング熱ウイルス(デング1、3、4)、日本脳炎ウイルス、クンジンウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、ポワッサンウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、タイ−ボーン脳炎ウイルス(ti-borne encephalitis virus)、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、ペスチウイルス、例えば、ボーダー病、牛ウイルス性下痢症、豚コレラを引き起こすウイルス、出血熱ウイルス、例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、リフトバレーウイルス、その他のアレナウイルス科のウイルス、その他のブニヤウイルス科のウイルス、その他のフィロウイルス、並びにパラサイト、例えば、ランブル鞭毛虫、リーシュマニア属、エンセファリトゾーン属、ネオスポラカニナム、プラスモディウム属、トキソプラズマ原虫、及びクルーズ・トリパノソーマを含む。
【0097】
《H.濃縮器及びキット》
特定の実施態様において、本発明は、皮下注射器(hypodermic syringe)に似た形状の濃縮器を提供する。
図1は、本発明の濃縮器の一実施態様である。濃縮器100は、吸着媒体105により満たされているバレル118を有する。特定の例では、バレルは、円筒状バレル部分118の直径より小さい直径の排出管117において終結する一端を有し、その中に吸着質を含有する中空円筒状バレル部分118である。いくつかの例では、中空皮下注射針112は、バレル部分118の排出管117と連絡する。いくつかの例では、1つ以上の種々の多糖類吸着剤、例えば1、2、3、4、5、又はそれ以上の種々の多糖類吸着剤が、吸着媒体に結合されることができる。濃縮器100は、使用者が濃縮器100に結合している針112を使用して対象からサンプルを除去することを可能とするシャフト115を有するプランジャー130を有する。針は、対象から除去されているサンプルに関して典型的であるような様々なゲージのものとすることができる。特定の観点では、濃縮器100は、場合により、流体、例えば、生理食塩水、水、又は緩衝液で満たされたリザーバ110を有している。操作中には、針を対象内に挿入してサンプル例えば血液を除去する。プランジャー130が、シャフト115を使用してバレル118から引き抜かれるにつれて、リザーバ110と媒体105との間の破壊可能な障壁108が引き抜かれるプランジャーの動作により破壊され、媒体を介して流体が取り出されそして媒体を湿らせる又は用意する(prime)ことを可能にする。流体(例えば、生理食塩水)が媒体105を介して引き出され、エリア121で終了する。特定の例では、場合により、リザーバ110は、破壊可能なシール又は障壁108、例えば、排出管と吸着質105との間に配置されているホイル、接着剤、又はプラスチック(plastic)を含む。
【0098】
サンプル(例えば、血液)が媒体を通じて取り出され、そこに含有される分析物又は病原体が媒体に付着する。特定の例では、引き抜かれたプランジャー115は、濃縮器のバレルの方へ引き戻して、使用者により押されることができる。特定の例では、サンプル、例えば除去された血液を対象に戻して又は返して注入することができる。プランジャーのこの前後の操作は、数回繰り返されることができ、媒体上に分析物/病原体を濃縮させる。プランジャーを前後に除去する操作は、1、2、3、4、5、6又はそれ以上の回数繰り返されることができる。
【0099】
分析物/病原体は、本明細書に教示される方法を用いて媒体から除去されることができる。例えば、特定の場合において、生理食塩水は、任意の接着細胞及び破片を除去するために使用されることができる。その後、2Nの生理食塩水は、分析物又は病原体を除去するために使用されることができる。他の例では、バッファ又は生理食塩水は、付着している全てのサンプル成分を除去するために使用される。
【0100】
さらに他の観点では、濃縮器100の外側に結合されることができる滅菌フィルターが使用されることができる。例えば、針を除去してフィルターを結合させることができる、又は針はフィルターアダプターを有することができる。フィルターにより、濃縮器が現場使用(field use)用に適用されることが可能となる。例えば、現場においては、滅菌水又は流体は、利用されることができない可能性がある。特定の例では、不純な水又は流体が、フィルターを介して取り出され、そして直ちに媒体105を介して滅菌される。特定の例では、リザーバ110は、場合により取り除かれ、そして、滅菌水又は滅菌流体は、媒体を用意する又は湿らせる滅菌フィルタ−を介して取り出される。
【0101】
一実施態様において、本発明は、濃縮器を含むキットを提供する。特定の観点では、キットは、使用前又は後に濃縮器を保持するために使用されることができる包装を含む。濃縮器は上記のようにそしてその後のさらなる所望の分析のために使用されることができる。キットは、場合により、使用のための指示書を含む。
【0102】
一観点では、濃縮器は、
a)それの105に含有される吸着質を有する中空円筒状バレル部分118であって、1つの末端が、円筒状バレル部分118の直径より小さい直径の排出管117において終結している前記中空円筒状バレル部分118と、
b)前記バレル部分118の排出管117と連絡している中空皮下注射針112と、
c)前記円筒状バレル118内に配置されそして前記円筒状バレル118内の相互運動のために適応したエラストマー材料を含むプランジャー130と、
d)前記プランジャー130に結合し、そして外見上は排出管117と反対側の前記バレル部分118の末端に延びており、そして前記バレル部分118の排出管の方へ向かう及びから離れる相互運動を前記プランジャー130に付与するように作動する(operative to)シャフト手段115と、
f)場合により、排出管と吸着質との間に配置された破壊可能なシール108を有するリザーバ110と
を含む。
【0103】
《III.実施例》
以下の実施例は例示するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
【0104】
《実施例1:ヘパリンコンジュゲート吸着媒体を使用した個体におけるマラリアの診断》
この例では、マラリア感染が疑われる個体由来の血液サンプルにおいて寄生された赤血球(PRBC)を検出するための、ヘパリンコンジュゲート吸着媒体の使用を示す。
【0105】
全血サンプルは、標準的な方法及び臨床ガイドラインに従って、個体から採取される。血液サンプル(試験サンプル)を、試験サンプル中の寄生された任意の赤血球が固定化されたヘパリンに結合することが可能となる条件下で、吸着媒体の表面上に固定化されたヘパリンに接触させる。次に、結合していないサンプルが、試験吸着媒体上のヘパリン及びpRBCにより形成される接着性複合体を破壊することなく除去される。試験媒体が、次いで、寄生赤血球を含まない全血の吸着媒体と比較して色の変化を検出するために肉眼で観察される。色彩変化が検出された場合は(例えば、試験媒体がより赤く見える)、これにより、個体がマラリア感染している可能性があることが示される。
【0106】
試験媒体の色は、健康な対照、例えば、マラリア感染を有しない個体由来の血液サンプルの色と比較される。試験吸着媒体と健康な対照媒体が同様の色を有している場合は、個体は、マラリア感染を有していないと診断される。試験媒体の色は、陽性対照、例えば、合併症のないマラリア又は重症のマラリアに罹患している患者由来の血液サンプルに曝露された吸着媒体の色と比較される。試験吸着媒体及び陽性対照媒体が、同様の色を有する場合、マラリア感染を有すると診断される。
【0107】
《実施例2:ウイルス感染の診断用及び体外的な感染治療用システム》
この実施例は、本発明のシステムを示す。
【0108】
システムは、第一カートリッジが小さい診断カートリッジでありそして第二カートリッジがより大きな治療的カートリッジである、少なくとも2つのカートリッジを含む。第一又は診断カートリッジは、ヘパリン化ビーズで満たされている3〜6mLの短いカラムを含有している。第一カートリッジは、C型肝炎ウイルス(HCV)を含有することが疑われる血液サンプルの検出のために使用される。
【0109】
血液サンプル2mLが、対象から得られる。血液サンプルは、診断カラムに充填され、吸着媒体及びHCVを含む接着性複合体を形成する。その後、カラムは洗浄され、0.01N生理食塩水洗浄バッファで洗浄される。カラムは、その後、2N食塩水溶出バッファを適用することによって洗浄され、感染性病原体を濃縮する。
【0110】
HCV RNAが、標準キット、例えば、COBAS(登録商標)AmpliPrep/COBAS(登録商標)TaqMan(登録商標)HCVテスト(ロシュ・ダイアグノスティックス、インディアナポリス、インディアナ)、及びリアルタイムHCV遺伝子型II(アボット・モレキュラー、アボットパーク)を使用して検出される。
【0111】
第二のより大きな治療的カートリッジは、ヘパリン被覆されたビーズにより構築されている。300mLの吸着カラムは、垂直スタンドに固定されている。ビーズ300mLが、その後、カートリッジに添加され、密封される。
【0112】
患者は、治療的カラムを使用して、HCVの体外除去を使用する。C型肝炎ウイルスのヘパリンへの結合が生じる。ヘパリンは、感染性物質を同定及び除去するのに有効である。
【0113】
《実施例3:エボラウイルスに感染していることが疑われる個体由来サンプルのウイルス検出前の処理》
この例では、エボラウイルスに感染した対象由来の生物学的サンプルからエボラウイルス粒子を単離するための、本発明の例示的な実施態様の使用が示されている。
【0114】
エボラ感染した全血サンプルをヘパリン化ビーズで満たされているカラムに循環する。様々な時点で、カラムからのフロースルーを回収し、エボラの存在について試験する。ビーズマトリックスを乱すことなくヘパリン化ビーズを0.01N食塩水で穏やかに洗浄する。洗浄工程からのフロースルーを回収し、エボラについて試験する。フロースルーは、細胞、例えば、商業的なウイルス検出アッセイの感度を妨害する可能性がある血液細胞を含む。2N生理食塩溶液を含有する溶出バッファをカラムに適用し、溶出液を回収する。溶出液は、CDCのプロトコル エボラウイルスVP40 Real−time RT−PCR Assayを用いて、エボラの存在について試験される。この方法は、TaqMan(登録商標)アッセイを使用しており、エボラウイルスのウイルスタンパク質40を検出する。
【0115】
《実施例4:血液サンプル由来の病原体の、多糖類吸着剤で修飾されたビーズを使用した処理及び濃縮》
この例では、生物学的サンプル由来の14種類の病原体を除去及び濃縮するための、本発明の例示的な実施態様の使用が示されている。
【0116】
約0.6グラムの吸着媒体、例えば、ヘパリン媒体単独、マンノース媒体単独、ポリエチレンイミンPEI媒体、ヘパリン及びマンノース媒体の複合体、又はヘパリン及びマンノース媒体並びにむき出しのビーズの複合体のいずれかが、100μmエンドプレートとともに2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填された。血液中の病原体懸濁液2mLが、病原体(例えば、P.アエルギノサ、MRSA、ESBL産生K.ニューモニエ、カルバペネム耐性K.ニューモニエ、K.ニューモニエ、カルバペネム耐性E.コリ、E.コリ、S.ニューモニエ、E.フェカリス、バンコマイシン耐性E.フェカリス、E.フェシウム、A.バウマンニ、C.アルビカンス、及びCMV)を一晩培養しそして適切な濃度に希釈した(表1)。充填されたフィルターシリンジをPBS 3mLで洗浄し、続けてシリンジに病原体懸濁液を3回通過させた。溶出バッファ1.0mL(2N食塩水)をシリンジに通過させ、フロースルー(溶出液)を回収した。標準希釈及びプレーティング技術を使用して、溶出液の病原体を数えた。試験は、分析した各々の媒体及び病原体の組み合わせに関して2回又は3回のいずれかで反復された。結果が表1及び2に示されている。
【表1】
【表2】
【0117】
上記表は、本明細書に開示される方法を用いた、14種類の病原体の除去及び濃縮を示している。例えば、表1に示されているように、MRSAサンプルは、出発濃度1.21×10
5CFU/mLを有する。表1は、本発明の吸着質の種々の効率を示している。ヘパリン、マンノース、むき出しのビーズ(PEI)、ヘパリン/マンノースの混合物、又はヘパリン/マンノース及びPEIを有するカラムを通過又は繰り返し通過した後、各々のサンプルの最終濃度が測定され、記録され、そして表にされた。
【0118】
サンプルを、繰り返しの方法で、反復してカラムを通過させた。サンプルは、複数回通過されることができ、各々の通過によりサンプルにおける細菌濃度が減少しそして媒体上の細菌又は病原体が濃縮される。
【0119】
病原体のかなりの量が、吸着媒体を使用して、サンプルから分離される。表2は、様々な媒体を使用した病原体の除去を報告している要約表である。病原体が媒体のカラム上で濃縮された後、それはカラムから解放されることができ、そしてその存在および同一性が決定されることができる。病原体は、出発サンプルの体積未満である溶出バッファのの量を適用することによって、濃縮されることができる。さらに、この方法は、標準的な病原体検出法、例えば、比色アッセイ、イムノアッセイ、ELISA、PCRベースアッセイなどを妨害する可能性がある血液サンプル由来の細胞及び破片を除去するために使用されることができる。
【0120】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示及び実施例によっていくらか詳細に記載されてきたが、当業者は、特定の変更及び修正が、添付の特許請求の範囲内で実施されることができることを理解するであろう。さらに、本明細書で提供される各々の文献は、各々の文献が参照により個別に組み込まれたかのように、同じ程度にその全体が参照として組み込まれる。