【文献】
Mixture of Lager Beer and Red Orange Flavoured Drink,Mintel GNPD [online],記録番号(ID#) 2021887,2013年 3月,[retrieved on 2019.12.13],Retrieved from the Internet,URL,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2021887/
【文献】
Organic Pomegranate Flavoured Pure Malt Beer,Mintel GNPD [online],記録番号(ID#) 2465727,2014年 7月,[retrieved on 2019.12.13],Retrieved from the Internet,URL,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2465727/
【文献】
'LacVege For Women',2008年,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/895971/from_search/KxTkrCPVK5/
【文献】
Appetizer Smoothie Pre-Treatment Mask',2013年,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2241548/from_search/CVOvV0Mwtq/
【文献】
Age Fighter Supplement',URL,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1525931/from_search/CVOvV0Mwtq/
【文献】
Berry-Force Powder Supplement',2009年,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1167384/from_search/rXIBne6oO8/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
飲食品などに利用されている天然の植物には、抗菌性成分が含まれているものが知られており、それらを飲食品の抗菌剤として使用することは食の安全性の観点から好ましい。例えば、ビール製造に古来より用いられているホップ(アサ科)は、その抽出物に抗菌作用があることが知られている。ホップ抽出物の抗菌性はホップの苦味成分であるアルファ酸(フムロン)とベータ酸(ルプロン)に起因する(例えば特許文献1および2参照)。
【0003】
また、セリ科植物の明日葉(アシタバ:Angelica keiskei)は、味に独特なクセがあるが、バター炒めや天ぷらなどにして食されるほか、従前より、漢方としても利用されており、抗菌作用もあることが知られている。明日葉の抗菌性は、カルコン類(キサントアンゲロールや4−ヒドロキシデリシンなど)やクマリン類に起因する(例えば特許文献3および4参照)。
【0004】
また、フクギ科植物のマンゴスチン(mangosteen:Garcinia mangostana)は、果実が食用されているが、特にその果皮には、特有の強い香りがあり、また、抗菌作用を含めた薬効が知られている。マンゴスチンのその効果はキサントン(Xanthones)及びキサントン誘導体(例えば、α−マンゴスチン)に起因する(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
他にも、植物の抽出物としてザクロ(ミソハギ科)の果実抽出物もポリフェノール類による抗菌作用を有していることが知られている(特許文献6および7参照)が、飲食品に用いる場合、抽出物として100ppm程度が必要であるとされている。
【0006】
しかし、これらの抗菌性を有する有効成分は特有の苦みや臭いを有しているため、風味や旨味が重視される飲食品または薄味が好まれる飲食品への使用は量的に制限される。
【0007】
その反面、飲食品の風味や旨味への影響を考慮して、飲食品への抗菌性成分の使用量を制限すると、腐敗や変敗が懸念される。また、細菌の中でも芽胞菌、特に耐熱性芽胞菌は、食品衛生法に定められる一般的な加熱条件では十分に滅菌されない場合があり、特に、加温後に、芽胞菌の増殖に好適な条件におかれる飲食品では、加熱以外の抗菌方法が重要になる。
【0008】
ホップ抽出物の臭気を低減しつつグラム陽性細菌の生育を抑制する方法としては、非油溶性シソ科植物抽出物と併用する方法が知られている(特許文献8参照)。他に、豆乳に対して、ホップ0.1重量%と唐辛子抽出物0.1重量%を加えること、または、ホースラディッシュから抽出した抗菌性物質0.1重量%と唐辛子抽出物0.1重量%とマンゴスチン果皮抽出物0.1重量%を加えることで、ホップ単独やホースラディッシュ単独よりも保存性を向上させた例が知られている(特許文献9、特許文献10)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一の態様の抗菌剤は、ベータ酸を含有するホップまたはその抽出物と、ザクロまたはその抽出物とを有効成分として含有する組成物である。
【0015】
本発明に用いられるホップは、少なくともベータ酸を含有するホップであれば、いずれのホップをも用いることができ、その品種は特に限定されないが、例えばブリオン(Bullion)、ブリューワーズゴールド(Brewers Gold)、カスケード(Cascade)、チヌーク(Chinook)、クラスター(Cluster)、イーストケントゴールディング(East Kent Golding)、ファグルス(Fuggles)、ハレトウ(Hallertau)、マウントフッド(Mount Hood)、ノーザンブリューワー(Northan Brewer)、ペーレ(Perle)、ザーツ(Saaz)、スティリアン(Styrian)、テットナンガー(Tettnanger)およびウィラメット(Willamette)等があげられる。
【0016】
ホップの部位としては、葉、茎、根等を用いることもできるが、通常は毬花が用いられる。毬花はそのまま用いてもよいが、乾燥処理や粉砕処理等の物理的処理をして得られる乾燥物や粉砕物を用いることもできる。以下、これらを合わせて本明細書中では、単に「ホップ」という。
【0017】
ホップからの抽出物の調製は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール、酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、その他アセトン、酢酸等の極性溶媒、ベンゼンやヘキサン等の炭化水素、エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒、超臨界二酸化炭素等を用いる常法により行うことができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
溶媒としては上記のいずれを用いてもよいが、エタノールおよび超臨界二酸化炭素が好ましい。エタノールを用いる場合、通常、水およびエタノールの任意比率の混合溶媒が用いられる。該混合溶媒におけるエタノール濃度は、1〜99.9容量%、好ましくは2〜60容量%、より好ましくは5〜30容量%である。
【0019】
抽出に用いる溶媒量、抽出温度、抽出時間等に特に制限はなく、抽出操作後に得られる抽出物中に、ベータ酸が1重量%以上、好ましくは10重量%以上含有されるように条件を適宜設定すればよい。
【0020】
抽出操作後に得られるホップ抽出物は、そのまま用いてもよいが、濃縮処理、乾燥処理等に供して、それぞれ濃縮物および乾燥物として用いてもよい。
【0021】
本発明において、ホップ抽出物は上記方法により調製してもよいが、ホップエキスとして市販されているものを用いてもよい。市販のホップエキスとしては、たとえば、「BetaStab」(ベータテック社製;ベータ酸を10重量%含有)、「ベータ・アロマ・エクストラクト」(ホップステイナー社製;ベータ酸を41重量%含有)があげられる。
【0022】
ザクロの部位としては葉、茎、根等を用いてもよいが、果実部分が好ましく用いられる。以下、これらを合わせて本明細書中では、単に「ザクロ」という。
【0023】
ザクロはそのまま本発明に用いてもよいが、乾燥処理や粉砕処理等の物理的処理を行って得られる乾燥物や粉砕物を用いることもできる。
【0024】
ザクロからの抽出物の調製は、ホップからの抽出物の調製に準じて行うことができるが、抽出に用いられる溶媒としては、水、エタノールおよび超臨界二酸化炭素が好ましい。エタノールを用いる場合、通常、水およびエタノールの任意比率の混合溶媒が用いられる。該混合溶媒におけるエタノール濃度は、1〜99.9容量%、好ましくは2〜60容量%、より好ましくは5〜30容量%である。
【0025】
抽出に用いる溶媒量、抽出温度、抽出時間等に特に制限はなく、抽出操作後に得られる抽出物中の総ポリフェノール類が、乾燥重量として10重量%以上、好ましくは30重量%、より好ましくは40重量%以上含有されるように条件を設定すればよい。
【0026】
抽出操作後に得られるザクロ抽出物は、そのまま用いてもよいが、濃縮処理、乾燥処理等に供して、それぞれ濃縮物および乾燥物として用いてもよい。
【0027】
本発明において、ザクロ抽出物は、上記方法により調製してもよいが、ザクロエキスとして市販されているものを用いてもよい。市販のザクロエキスとしては、たとえば、ザクロ果実エキス「ポメラ」(オムニカ社製)、「ザクロエキス末」(ヴィディヤ・ジャパン社製)があげられる。
【0028】
本発明の抗菌剤における有効成分であるホップまたはその抽出物と、ザクロまたはその抽出物との含有割合は、本発明の効果を発揮する限り、特に限定されるものではないが、重量比で、99:1〜1:99、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは70:30〜50:50である。
【0029】
本発明の第二の態様の抗菌剤は、カルコン類を含有する明日葉またはその抽出物と、ザクロまたはその抽出物とを有効成分として含有する組成物である。
【0030】
本発明に用いられる明日葉は、少なくともカルコン類を含有する明日葉であれば、いずれの明日葉も用いることができ、その品種は特に限定されない。明日葉の部位としては、葉、茎、根等を用いることもでき、その加工物、例えば、乾燥処理や粉砕処理等の物理的処理をして得られる乾燥物や粉砕物を用いることもできる。以下、これらを合わせて本明細書中では、単に「明日葉」という。
【0031】
明日葉からの抽出物の調製は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール、酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、その他アセトン、酢酸等の極性溶媒、ベンゼンやヘキサン等の炭化水素、エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒、超臨界二酸化炭素等を用いる常法により行うことができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
抽出に用いる溶媒量、抽出温度、抽出時間等に特に制限はなく、抽出操作後に得られる抽出物中に、カルコン類が1重量%以上、好ましくは3重量%以上含有されるように条件を適宜設定すればよい。
【0033】
抽出操作後に得られる明日葉抽出物は、そのまま用いてもよいが、濃縮処理、乾燥処理等に供して、それぞれ濃縮物および乾燥物として用いてもよい。
【0034】
本発明において、明日葉抽出物は上記方法により調製してもよいが、明日葉エキスとして市販されているものを用いてもよい。市販の明日葉エキスとしては、たとえば、「あした葉ポリフェノールCHALSAP−P8」(日本生物科学研究所社製:総カルコン類含量8重量%以上)があげられる。
【0035】
また、もう一つの有効成分であるザクロの定義、およびザクロの抽出物の調製方法は前記のとおりである。
【0036】
本発明の第三の態様の抗菌剤は、α−マンゴスチンを含有するマンゴスチンまたはその抽出物と、ザクロまたはその抽出物とを有効成分として含有する組成物である。
【0037】
本発明に用いられるマンゴスチンは、少なくともα−マンゴスチンを含有する、マンゴスチンであれば、いずれのマンゴスチンも用いることができ、その品種は特に限定されない。マンゴスチンの部位としては、果実、果皮、葉、茎、根等を用いることもでき、好ましくは、α−マンゴスチンを多く含む果皮である。また、マンゴスチンのいずれの部位を用いてもよいが、その加工物、例えば、乾燥処理や粉砕処理等の物理的処理をして得られる乾燥物や粉砕物を用いることもできる。以下、これらを合わせて本明細書中では、単に「マンゴスチン」という。
【0038】
マンゴスチンからの抽出物の調製は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール、酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、その他アセトン、酢酸等の極性溶媒、ベンゼンやヘキサン等の炭化水素、エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒、超臨界二酸化炭素等を用いる常法により行うことができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
抽出に用いる溶媒量、抽出温度、抽出時間等に特に制限はなく、抽出操作後に得られる抽出物中に、α−マンゴスチンが2重量%以上、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上含有されるように条件を適宜設定すればよい。
【0040】
抽出操作後に得られるマンゴスチン抽出物は、そのまま用いてもよいが、濃縮処理、乾燥処理等に供して、それぞれ濃縮物および乾燥物として用いてもよい。
【0041】
本発明において、マンゴスチン抽出物は上記方法により調製してもよいが、マンゴスチンエキスとして市販されているものを用いてもよい。市販のマンゴスチンエキスとしては、たとえば、「マンゴスチンエキス」(バイオアクティブズジャパン社製:α−マンゴスチン含量10重量%および20重量%)があげられる。
【0042】
また、もう一つの有効成分であるザクロの定義、およびザクロの抽出物の調製方法は前記のとおりである。
【0043】
本発明の抗菌剤の調製は、上記有効成分を含有させる以外は、通常の方法にて行うことができる。また、本発明の抗菌剤はその効果の妨げとならない限り、上記有効成分の他、必要に応じて食品衛生学上許容可能な添加剤等を含有してもよい。かかる添加剤としては、例えば、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、食物繊維、pH調整剤、その他日持向上剤(グリシン、エタノール等)等があげられる。
【0044】
本発明の抗菌剤の形態は、液状、半液体状、固体状のいずれの形態であってもよい。固体状としては、粉体、粒体および粉粒体のいずれであってもよい。
【0045】
本発明の抗菌剤は、飲食品に腐敗や変敗をもたらす細菌、特に芽胞菌の増殖を抑制する効果を奏するので、飲食品における細菌の増殖抑制方法に用いることができる。本発明の飲食品における細菌の増殖抑制方法は、本発明の抗菌剤を細菌、特に芽胞菌の増殖抑制が望まれる飲食品中に含有させる方法であればいかなる方法であってもよく、上記飲食品を製造する際に原料の一部として添加する方法、上記飲食品を使用(流通・販売段階を含む)する際に添加する方法等があげられる。
【0046】
本発明の抗菌剤により増殖が抑制される細菌は、飲食品に腐敗や変敗をもたらす芽胞菌(芽胞形成菌)、特に耐熱性芽胞菌であり、嫌気性芽胞菌および好気性芽胞菌のいずれをも包含する。芽胞菌としては、バチルス(Bacillus)属、スポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)属、クロストリディウム(Clostridium)属、スポロサルシナ(Sporosarcina)属、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属等に属する微生物があげられるが、好適にはバチルス(Bacillus)属に属する微生物があげられる。バチルス属に属する微生物としては、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・スミチー(Bacillus smithii)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilius)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・サックレトニー(Bacillus shackletonii)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)等があげられる。
【0047】
本発明の第一の態様の抗菌剤を飲食品中に含有させる場合、ホップまたはその抽出物は、飲食品中のベータ酸の含有量が0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上となるように含有させ、かつ、飲食品中のザクロまたはその抽出物の含有量が乾燥重量として1ppm以上となるように含有させる。
【0048】
一方、飲食品中に含有させるホップまたはその抽出物およびザクロまたはその抽出物量の上限量は、細菌の増殖抑制効果の観点では特にないが、本発明の特長の一つであるところの風味や旨味が重視される飲食品または薄味が好まれる飲食品の風味への悪影響を及ぼさない量であることが好ましい。例えば、ホップまたはその抽出物は、飲食品中のベータ酸の含有量が10ppm未満となる量が好ましく、ザクロまたはその抽出物は、飲食品中のザクロまたはその抽出物の含有量が乾燥重量として50ppm未満となる量が好ましい。
【0049】
したがって、本発明の抗菌剤中のホップまたはその抽出物およびザクロまたはその抽出物の含有量は、本発明の抗菌剤の飲食品への添加量に応じて適宜設定すればよい。例えば、飲食品100重量部に対して本発明の抗菌剤を1重量部添加することを想定した場合、該抗菌剤におけるホップまたはその抽出物は、該抗菌剤中のベータ酸の含有量が10ppm以上、好ましくは50ppm以上となる量であり、該抗菌剤中のザクロまたはその抽出物の含有量が、乾燥重量として100ppm以上となる量である。
【0050】
本発明の第二の態様の抗菌剤を飲食品中に含有させる場合、明日葉またはその抽出物は、飲食品中のカルコン類の含有量が0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上となるように含有させ、かつ、飲食品中のザクロまたはその抽出物の含有量が乾燥重量として1ppm以上となるように含有させる。
【0051】
一方、飲食品中に含有させる明日葉またはその抽出物およびザクロまたはその抽出物量の上限量は、細菌の増殖抑制効果の観点では特にないが、本発明の特長の一つであるところの風味や旨味が重視される飲食品または薄味が好まれる飲食品の風味への悪影響を及ぼさない量であることが好ましい。例えば、明日葉またはその抽出物は、飲食品中のカルコン類の含有量が200ppm未満となる量が好ましく、150ppm未満となる量がより好ましく、100ppm未満となる量がさらに好ましく、ザクロまたはその抽出物は、飲食品中のザクロまたはその抽出物の含有量が乾燥重量として50ppm未満となる量が好ましい。
【0052】
したがって、本発明の抗菌剤中の明日葉またはその抽出物およびザクロまたはその抽出物の含有量は、本発明の抗菌剤の飲食品への添加量に応じて適宜設定すればよい。例えば、飲食品100重量部に対して本発明の抗菌剤を1重量部添加することを想定した場合、該抗菌剤における明日葉またはその抽出物は、該抗菌剤中のカルコン類の含有量が10ppm以上、好ましくは50ppm以上となる量であり、該抗菌剤中のザクロまたはその抽出物の含有量が、乾燥重量として100ppm以上となる量である。
【0053】
本発明の第三の態様の抗菌剤を飲食品中に含有させる場合、マンゴスチンまたはその抽出物は、飲食品中のα−マンゴスチンの含有量が0.05ppm以上、好ましくは、0.1ppm以上、より好ましくは0.15ppm以上となるように含有させ、かつ、飲食品中のザクロまたはその抽出物の含有量が乾燥重量として1ppm以上となるように含有させる。
【0054】
一方、飲食品中に含有させるマンゴスチンまたはその抽出物およびザクロまたはその抽出物量の上限量は、細菌の増殖抑制効果の観点では特にないが、本発明の特長の一つであるところの風味や旨味が重視される飲食品または薄味が好まれる飲食品の風味への悪影響を及ぼさない量であることが好ましい。例えば、マンゴスチンまたはその抽出物は、飲食品中のα−マンゴスチンの含有量が200ppm未満となる量が好ましく、150ppm未満となる量がより好ましく、100ppm未満となる量がさらに好ましく、ザクロまたはその抽出物は、飲食品中のザクロまたはその抽出物の含有量が乾燥重量として50ppm未満となる量が好ましい。
【0055】
したがって、本発明の抗菌剤中のマンゴスチンまたはその抽出物およびザクロまたはその抽出物の含有量は、本発明の抗菌剤の飲食品への添加量に応じて適宜設定すればよい。例えば、飲食品100重量部に対して本発明の抗菌剤を1重量部添加することを想定した場合、該抗菌剤におけるマンゴスチンまたはその抽出物は、該抗菌剤中のα−マンゴスチンの含有量が5ppm以上、好ましくは10ppm以上、より好ましくは15ppm以上となる量であり、該抗菌剤中のザクロまたはその抽出物の含有量が、乾燥重量として100ppm以上となる量である。
【0056】
本発明の抗菌剤を使用する対象となる飲食品は、細菌の増殖抑制が望まれる飲食品であれば特に限定はされず、例えば、味噌、醤油、みりん、つゆ(おでんつゆ、鍋つゆ、めんつゆ等)、アルコール含有発酵調味料、マヨネーズ、ドレッシング、ポン酢等の調味料、焼き肉のたれ等のたれ、ミートソース、トマトソース、ホワイトソース等のソース、ポタージュ、コンソメスープ等のスープ、ビーフシチュー、カレー、ラーメン、味噌汁、佃煮、煮物、肉まん、餃子、ハンバーグ等の調理食品、キムチ、漬物、かまぼこ、ソーセージ、冷凍食品、レトルト食品、菓子、パン、米飯、チャーハン等の加工食品等の飲食品をあげることができる。なかでも、風味や旨味が重視される飲食品、薄味が好まれる飲食品、または芽胞菌の増殖に好適な条件に長時間晒される飲食品が好ましい。芽胞菌の増殖に好適な条件に長時間晒される飲食品としては、例えばホットベンダーで提供される飲料、汁物(味噌汁、豚汁、おでん等)、カレー、シチュー等があげられる。
【0057】
本発明の飲食品における細菌の増殖抑制方法としては、上記のように本発明の抗菌剤を飲食品中に含有させる方法の他に、ホップまたはその抽出物とザクロまたはその抽出物とが飲食品中で共存するように、または、明日葉またはその抽出物とザクロまたはその抽出物とが飲食品中で共存するように、マンゴスチンまたはその抽出物とザクロまたはその抽出物とが飲食品中で共存するように、それぞれ添加してもよい。
【0058】
本発明の飲食品の製造方法としては、本発明の抗菌剤、またはホップもしくはその抽出物とザクロもしくはその抽出物とをそれぞれ飲食品中に含有させる工程、または明日葉もしくはその抽出物とザクロもしくはその抽出物とをそれぞれ飲食品中に含有させる工程、またはマンゴスチンもしくはその抽出物とザクロもしくはその抽出物とをそれぞれ飲食品中に含有させる工程、を含む以外は各飲食品の通常の製造方法に準じて製造する方法があげられる。本発明の抗菌剤を飲食品中に含有させる工程において、該抗菌剤の飲食品への含有量は、前述の飲食品における細菌の増殖抑制方法の場合に準じる。
【0059】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
NB培地(バクトペプトン5g、ビーフエキストラクト・パウダー3gを水1L中に含有)にグルコースを1重量%となるように加えて培地を調製した。滅菌した5ml用のL字管に該培地を4.85mlずつ分注し、あらかじめ調製したホップエキス(ベータテック社製「BetaStab」;ベータ(β)酸10%を含有)およびザクロエキス(オムニカ社製「ポメラ」;ポリフェノール総量50%)の水溶液をそれぞれ50μl加えて表1に示した組成の培地1〜8を調製した。対照はホップエキスおよびザクロエキスを添加しない培地(対照培地)とした。
【0061】
【表1】
【0062】
また、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis) NBRC3134株をYNA培地(ディフコ・ニュートリエントブロス10g、バクト・イーストエキストラクト3g、寒天20g、A液10ml、B液10mlを水1Lに含有。A液:塩化マンガン・4水和物2.5g、硫酸マンガン・7水和物25g、硫酸鉄・7水和物30mg、0.01規定塩酸1Lからなる。B液:塩化カルシウム・2水和物15g、0.01規定塩酸1Lからなる。)で37℃、3日間培養して芽胞を形成させた。生育した菌体をプレートからかきとり、滅菌水に懸濁させた後、75℃で30分間温浴した。湯浴後、遠心分離し、得られた沈殿物を新たな滅菌水で遠心分離により数回洗浄した。得られた沈殿物を芽胞として滅菌水に懸濁し、1×10
7個/mlの芽胞の懸濁液(以下、芽胞液という)を得た。
【0063】
該芽胞液を、調製した対照培地および培地1〜8にそれぞれ50μlずつ添加し、バイオフォトレコーダー(アドバンテック社製「TVS062CA」)にセットした後、30℃、40rpmで振とう培養して30分間隔でO.D.660nmを測定した。
【0064】
結果を表2に示す。表中、「+」は菌の増殖による培地濁度の上昇が明らかに認められたことを示し、「−」は菌の増殖による培地濁度の上昇が明らかには認められなかったことを示す。また、20時間目と60時間目の間は、結果に変動がないため、記載を省略している。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示すとおり、ザクロエキスでは100ppmにおいても芽胞菌の増殖抑制効果は認められなかったが(培地1)、少量(1〜5ppm)であってもホップエキスと併用することにより相乗的な芽胞菌の増殖抑制効果が認められ(培地3〜5)、その効果はホップエキスの増量による効果(培地6〜8)以上であった。
【0067】
(実施例2)
(1)芽胞菌の増殖抑制試験
実施例1の培地調製の手順と同様にして、培地中のホップエキスおよびザクロエキスの濃度が表3に示す濃度の培地2、9、10を調製した。
【0068】
【表3】
【0069】
上記の培地を用い、実施例1と同様の方法によりバチルス・サブチリス(B.subtilis)に代えてバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)NBRC12200株に対する増殖抑制効果を調べた。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示すとおり、バチルス・サブチリス(B.subtilis)以外のバチルス属微生物であるバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)に対しても同様にホップエキスおよびザクロエキスの併用による相乗的な増殖抑制効果が認められた。
【0072】
(2)風味評価試験
市販のめんつゆ(ヤマキ社製;2倍濃縮タイプ)40mlを水で5倍希釈し、チャック付きのプラスチックパックに充填した。上記(1)で用いたホップエキスおよびザクロエキスを、それぞれのめんつゆに、表5に記載した含有量となるように添加した。
【0073】
【表5】
【0074】
それぞれのエキスを添加後、プラスチックパックを密封し、ウォーターバス中、70℃となるまで加熱した後開封し、開封直後の味および香りについて、ホップエキスおよびザクロエキスを添加しないめんつゆを対照として比較した。比較試験は、7人の熟練したパネラーにより行った。結果を表6に示す。表中の数字は各評価を選んだパネラーの人数を示す。
【0075】
【表6】
【0076】
表6に示すとおり、10ppmのホップを含有するめんつゆ1は、無添加のめんつゆと比較して味および香りともに差を感じたパネラーが多かったのに対し、7ppmに低減し、3ppmのザクロと併用しためんつゆ3では、無添加のめんつゆと差を感じないパネラーが多かった。
【0077】
実施例1および上記(1)の結果から、ホップエキスとザクロエキスを併用することにより、各エキスの使用量を低減することができ、結果としてめんつゆの味および香りへの影響を抑えつつ、芽胞菌の増殖抑制を行うことができることが示された。
【0078】
(実施例3)
ホップエキスと併用する他のエキス成分として緑茶エキス粉末、およびブドウ種子ポリフェノール粉末の効果を調べた。実施例1の培地調製の手順と同様にして、培地中のホップエキス、ザクロエキス、緑茶エキス粉末(バイオアクティブズジャパン社製;ポリフェノール総量80%)、およびブドウ種子ポリフェノール粉末(バイオアクティブズジャパン社製;ポリフェノール総量70%)の濃度が、表7に示す濃度となるように培地2、9、10、11、12、13、14を調製した(各粉末の添加量はポリフェノール総量がほぼ等量となる量に調整した)。
【0079】
【表7】
【0080】
上記の培地を用い、実施例1と同様の方法によりバチルス・サブチリス(B.subtilis)に対する増殖抑制効果を調べた。結果を表8に示す。
【0081】
【表8】
【0082】
表8に示すとおり、ザクロエキス、緑茶エキス、およびブドウ種子ポリフェノールのいずれも単独ではバチルス・サブチリスの増殖抑制効果はほとんど認められなかった(培地9、11、12)。ホップエキスとその他のエキスの併用をした場合、緑茶エキスが相乗的な効果を示したが(培地14)、ホップエキスとザクロエキスとの併用(培地10)に比べて効果としては弱いものであった。
【0083】
(実施例4)
(1)芽胞菌の増殖抑制試験
実施例1の培地調製の手順と同様にして、培地中の明日葉エキス(総カルコン類8%、日本生物科学研究所社)およびザクロエキスの濃度が表9に示す濃度の培地15、16、17を調製した。
【0084】
【表9】
【0085】
上記の培地を用い、実施例1と同様の方法により、増殖抑制効果を調べた。結果を表10に示す。また、10時間目と120時間目の間および、140時間目と220時間目の間は、結果に変動がないため、記載を省略している。
【0086】
【表10】
【0087】
表10に示すとおり、少量(5ppm)のザクロエキスであっても明日葉エキスと併用することにより相乗的な芽胞菌の増殖抑制効果が認められた(培地17)。
【0088】
(2)風味評価試験 市販のめんつゆ(ヤマキ社製;2倍濃縮タイプ)40mlを水で5倍希釈し、チャック付きのプラスチックパックに充填した。上記(1)で用いた明日葉エキスおよびザクロエキスを、プラスチックパック内のめんつゆに、明日葉エキスを10ppm、ザクロエキスを5ppmの含有量となるように添加した。エキスを添加後、プラスチックパックを密封し、ウォーターバス中、70℃となるまで加熱した後開封し、開封直後の味および香りについて、明日葉エキスおよびザクロエキスを添加しないめんつゆを対照として比較した。比較試験は実施例2の(2)に従って行った。その結果、明日葉エキスおよびザクロエキスを添加しためんつゆは、無添加のめんつゆと比較して味、香り共に大きな差異は感じられなかった。
【0089】
(実施例5)
(1)芽胞菌の増殖抑制試験
実施例1の培地調製の手順と同様にして、培地中のマンゴスチンエキス(α−マンゴスチン20%、バイオアクティブズジャパン社)およびザクロエキスの濃度が表11に示す濃度の培地18、19、20を調製した。
【0090】
【表11】
【0091】
上記の培地を用い、実施例1と同様の方法により、増殖抑制効果を調べた。結果を表12に示す。また、10時間目と25時間目の間および、30時間目と140時間目の間は、結果に変動がないため、記載を省略している。
【0092】
【表12】
【0093】
表12に示すとおり、少量(5ppm)のザクロエキスであってもマンゴスチンエキスと併用することにより相乗的な芽胞菌の増殖抑制効果が認められた(培地20)。
【0094】
(2)風味評価試験
市販のめんつゆ(ヤマキ社製;2倍濃縮タイプ)40mlを水で5倍希釈し、チャック付きのプラスチックパックに充填した。上記(1)で用いたマンゴスチンエキスおよびザクロエキスを、プラスチックパック内のめんつゆに、マンゴスチンエキスを1ppm、ザクロを5ppmの含有量となるように添加した。エキスを添加後、プラスチックパックを密封し、ウォーターバス中、70℃となるまで加熱した後開封し、開封直後の味および香りについて、マンゴスチンエキスおよびザクロエキスを添加しないめんつゆを対照として比較した。比較試験は実施例2の(2)に従って行った。その結果、マンゴスチンエキスおよびザクロエキスを添加しためんつゆは、無添加のめんつゆと比較して味、香り共に大きな差異は感じられなかった。