特許第6806570号(P6806570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806570
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】美容方法および美容製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20201221BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20201221BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20201221BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61K8/98
   A61K8/65
   A61K8/02
   A61Q5/00
   A61Q19/00
   A61K35/19 Z
   A61K38/18
   A61K38/39
   A61P17/00
【請求項の数】7
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-574465(P2016-574465)
(86)(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公表番号】特表2017-520555(P2017-520555A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】GB2015051746
(87)【国際公開番号】WO2016001624
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】1411913.5
(32)【優先日】2014年7月3日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516381839
【氏名又は名称】ピープラス スキン ケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ナジャフィ,ミトラ
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/065269(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/007308(WO,A1)
【文献】 特表2008−529663(JP,A)
【文献】 特開2012−102095(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102012104883(DE,A1)
【文献】 FUFA D,ACTIVATION OF PLATELET-RICH PLASMA USING SOLUBLE TYPE I COLLAGEN,JOURNAL OF ORAL AND MAXILLOFACIAL SURGERY,米国,SAUNDERS,2008年 4月,VOL:66, NR:4,,PAGE(S):684 - 690,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.joms.2007.06.635
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 35/00−35/768
A61K 38/00−38/58
A61P 17/00−17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多血小板血漿(PRP)を保管するのに好適な容器と、
前記容器とは分離されている、活性化剤を含む美容上許容される担体をそれぞれ含有する複数のカプセルと、
撹拌器具と、
を含むキットであって、
前記活性化剤がコラーゲンであり、
各カプセル中の前記美容上許容される担体の量が1回の適用に十分な量である、
キット。
【請求項2】
前記美容上許容される担体は、PRPと混合されるために構成されている、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
PRPを保管するのに好適な前記容器がポリプロピレン製である、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
記撹拌器具がPRP容器を載せるのに好適な大きさのバッテリー駆動型振動台である、
求項に記載のキット。
【請求項5】
使用説明書をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
前記容器は、酸素が容器を透過することができる、酸素透過性である、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記攪拌器具は、前記PRPが美容上許容される担体と接触する前に、前記PRPを攪拌するために構成されている、請求項1に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚または毛髪の外観を改善する方法に関する。具体的には、本発明は、対象自身の、血小板に特に富む血漿の画分である多血小板血漿(PRP)を含む、クリームおよび血清などの美容製品、ならびにその用途に関する。また、本発明は、皮膚または毛髪の外観を改善するための処置に関連して、対象自身の多血小板血漿を含むクリームおよび血清などの美容製品の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
老化により、組織修復および細胞再生の速度が遅くなる。皮膚の老化は、ストレス、光線の曝露、汚染、たばこの煙への曝露および不健康な生活習慣要因に起因する皮膚への損傷によって長年にわたり悪化した皮膚の再生周期の遅れによって起こる。皮膚の老化の過程は、しわの出現、皮膚色素沈着の変化、肌の弾力と緻密さの損失、および組織のゆるみなどの非常に明白な徴候によって特徴づけられる。皮膚の老化は、3つの主な皮構造:表皮、真皮表皮接合部および真皮に影響を及ぼす。具体的には、皮膚の老化過程に大きく関与する種々の要因のうちの一つは、真皮の厚みの減少である。真皮は、表皮の下にある厚さが3〜4mmの結合組織であり、豊富な細胞間基質に分散している細胞集団からなる。真皮細胞の大半は線維芽細胞であり、コラーゲンと弾性線維の合成を行うことになっている。コラーゲンは支持機能および抵抗機能を有し、弾性線維は皮膚の適切な弾性を確保するのに対して、コラーゲンと弾性線維が埋没している細胞間基質は強化機能を有する。加齢とともに、これらの重要な構造の再生は遅くなり、この結果、より若々しい外観を保つために多くの人が避けたいと思う不均一な肌の色合いおよびしわなどの徴候がもたらされる。
【0003】
血漿は、増殖、化学遊走を含む組織修復に関わる重要な過程を調節することに関与している多数の分子と細胞を含む。血液凝固に関与することが最初に知られていた血小板は、血小板由来増殖因子(PDGF)、強力な遊走物質、および細胞外基質の沈着を促進するTGF−βを含む増殖因子を放出する。これらの増殖因子の両方は、結合組織の修復と再生において重要な役割を果たすことが示されている。PRP中の濃縮血小板は増加した数の増殖因子を局所部位に送達し、例えば塩化カルシウムによる血小板の活性化は、血小板から大部分の増殖因子を放出する。
【0004】
血小板中の知られている7つの主要な増殖因子は、血小板由来増殖因子、例えば(PDGFaa)、(PDGFbb)、(PDGFab)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、TGF−β2、血管内皮増殖因子(VEGF)および上皮増殖因子である。
【0005】
血小板の濃縮源として、血漿は、組織再生を促進しおよび老化防止活性を有するいくつかのサイトカインを含有する。血漿は、プロスポーツ選手のスポーツ障害の治療におけるその用途のために広く注目を集めており、および歯科医学と創傷治癒での用途でも知られている。血漿療法は、血液がその主な化合物である赤血球、白血球および血漿に分離されるまで個人の血液を遠心分離することを含む。血漿のより豊富な部分はPRPまたはF2画分(F2)とよばれ、血漿のより少ない部分はPPPまたはF1画分(F1)と呼ばれる。増殖因子は、血漿を活性化することによって放出され、次いで損傷組織に注射されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血漿、PPPおよびPRPは、皮膚に注射することによって様々な用途で使用されて目に見える老化の徴候を減少させ、ならびに創傷治癒および損傷組織の修復を促進させるための医療でも使用されている。血漿の医療用途および美容用途のほとんどは、血小板から増殖因子を放出するために塩化カルシムを用いて血漿を活性化すること、および活性化した血漿を皮膚または損傷組織に注射することによって行われる。
【0007】
老化の徴候を減少させるために活性化血漿が皮膚の真皮層に注射されているが、この処置は苦痛を伴い、皮膚の発赤、痛みおよび紫斑の原因になることがある。血漿の効果はわずか数週間または数ヵ月間しか続かず、および効果を長引かせるためにこの処置を繰り返す必要がある。種々の他の老化防止処置、例えば美容レーザー処置は、皮膚の外観にプラス効果をもたらすことが知られているが、皮膚のかぶれ、痛みおよび発赤が短期間起こることもある。
【0008】
したがって、皮膚の外観を改善するために使用でき、他の美容処置後、例えばPRP注射後および美容レーザー処置後に用いて、これらの処置を頻繁に行わなくてもよいように美容処置の効果を長引かせ、および高めることができるPRPの局所製剤を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、最初の美容処置の美容効果を長引かせ、および高めるために、単独の美容処置として、またはPRP注射処置もしくは美容レーザー処置などの最初の美容処置後に、皮膚に局所的にPRPを適用することを可能にするスキンケア製品を提供することである。
【0010】
第一の態様において、本発明は対象の皮膚および/または毛髪の美容的外観を改善する方法を提供し、方法は、
(a)対象からのPRP試料を提供すること、
(b)美容上許容される担体を提供すること、
(c)PRPの一部分を美容上許容される担体の一部分に混合して局所組成物を形成すること、
(d)この局所組成物を対象の皮膚の領域に適用すること、
(e)ステップ(c)と(d)を繰り返すことを含む。
【0011】
ステップcおよびdは、最高8日間、毎日繰り返してもよい。8日間後に、新鮮なPRPが対象から供給されてこの処置を継続できる。本方法の利点は、PRPの一部分が、毎日皮膚に適用する直前に活性化剤と混合されることである。これは、増殖因子が血小板内に保持されることを意味し、これによって活性化剤がPRPと混合されるまで、増殖因子を劣化から防ぐ。増殖因子は次いで血小板から組成物中に放出される。本方法の利点は、皮膚への適用の直前に血小板から放出されたばかりの新鮮な増殖因子を毎日用いる処置が可能になることである。これらの利点は、毎日対象からの新しいPRP試料を供給する必要なしに提供される。したがって、対象は、毎日新しく活性化されるPRPを用いて、8日間自宅で処置を続けることができる。
【0012】
様々な著者らは、創傷治癒および美容手法での患者自身の血漿の使用を論じており、この分野においていくつかの用語の使用にばらつきおよび矛盾がある。本出願では、PRPとF2という用語は、血小板をより多く含む血漿のより豊富な画分を述べるために用い、ならびにPPPとF1という用語は、血小板をより少なく含む血漿のより少ない画分を述べるために用いる。これを図27〜29に示す。本明細書に記載の方法は、好ましくは、血漿のPRP画分を用いて行うことができる。より多くの血小板が増殖因子と皮膚の促進因子のより豊富な供給源を提供するので、これは有利である。
【0013】
本出願の用途と対照的に、他の著者らは、PRPという用語を、血小板に富む血漿の画分だけでなく血液の血漿画分全体を述べるために用いている。
【0014】
活性化剤は、局所組成物が対象の皮膚に適用される前の4時間未満内に、3時間未満内に、2時間未満内に、1時間未満内に、30分未満内に、20分未満内に、10分未満内に、または8分未満内に、PRPと混合されてよい。
【0015】
好ましくは、活性化剤は局所組成物が対象の皮膚に適用される直前にRPRと混合されてよい。直前とは、数分前または数秒前を意味し、例えば、直前は、混合物を皮膚に適用する前の5分未満に、2分未満に、1分未満に、または30秒未満にPRPが活性化剤と混合されることを意味してよい。増殖因子が皮膚に適用される前に劣化せず組成物中に増殖因子が高レベルで存在するように、組成物を皮膚に適用する直前にPRP中の血小板が活性化されて増殖因子を放出し得るので、これは有利である。
【0016】
美容上許容される担体は活性化剤を含んでよく、および局所組成物は、活性化剤を含む美容上許容される担体をPRPと混合した直後に対象の皮膚の領域に適用されてよい。
【0017】
局所組成物は、PRPとの活性化剤の混合の4時間未満内に、3時間未満内に、2時間未満内に、1時間未満内に、30分未満内に、20分未満内に、10分未満内に、または8分未満内に対象の皮膚の領域に適用されてよい。
【0018】
好ましくは、美容上許容される担体は、局所組成物が皮膚に適用される直前に、PRPと混合されてよい。直前とは、数分前または数秒前を意味し、例えば、直前は、混合物を皮膚に適用する前の5分未満に、2分未満に、1分未満にまたは30秒未満にPRPが美容上許容される担体と混合されることを意味してよい。増殖因子が皮膚に適用される前に劣化せず組成物中に増殖因子が高レベルで存在するように、組成物を皮膚に適用する直前にPRP中の血小板が活性化されて増殖因子を放出し得るので、これは有利である。
【0019】
PRPは活性化剤を含む美容上許容される担体と別々に保管されてよく、およびPRPは、混合物を皮膚に適用する直前に活性化剤を含む美容上許容される担体と混合されてよい。
【0020】
一部の実施形態において、美容上許容される担体は活性化剤を含まなくてもよく、ならびに活性化剤は、混合物を皮膚に適用する直前にPRPおよび美容上許容される担体と混合されてよい。
【0021】
活性化剤が美容上許容される担体中に存在しない場合、PRPは美容上許容される担体と、それが生成されてから間もなく混合されて、PRPと美容上許容される担体とを含む組成物として保管されてもよい。美容上許容される担体が、PRPおよび/またはPRP中の血小板を安定させまたは保持する成分を含み得るので、これは有利である。活性化剤は、美容上許容される担体とPRPとを含む組成物と別々に保管されてよい。この活性化剤は、組成物を皮膚に適用する直前に組成物と混合されてよい。
【0022】
ステップ(e)またはステップ(c)および(d)は、少なくとも一日1回、少なくとも一日2回、少なくとも一日3回、少なくとも一日4回または少なくとも一日6回繰り返してよい。
【0023】
ステップ(e)またはステップ(c)および(d)は、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間または少なくとも10日間、繰り返してよい。
【0024】
ステップ(e)は、少なくとも一日1回少なくとも8日間、繰り返してよい。
【0025】
活性化剤はコラーゲンであってよい。コラーゲンは皮膚内に自然に生じ、したがって皮膚内で有害反応を引き起こす可能性が低いので、これは有利である。活性化剤は、塩化カルシウムでなくてよい。塩化カルシウムは有害反応を生じることがありおよび/または皮膚を刺激することがあるので、これは有利である。
【0026】
本方法は、PRP注射処置または美容レーザー皮膚処置などの別の美容処置を用いて処置された対象の皮膚の領域で行われてよい。
【0027】
本方法は、ステップ(c)の前後に、対象の皮膚の1つまたは複数の領域中に多血小板血漿の一部を注射するさらなるステップ(f)を含んでよい。本方法が対象の皮膚のある領域中にPRPを注射することと共に用いられる場合、局所組成物が対象の皮膚の少なくとも同じ領域に適用される。本方法が対象の皮膚のある領域中にPRPを注射することと共に用いられる場合、局所組成物が、PRP注射が行われた直後または1時間後に対象の皮膚の少なくとも同じ領域に適用され、次いで局所組成物は皮膚の同じ領域にその後繰り返して適用され得る。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、対象の皮膚および/または毛髪の外観を改善するための方法が提供され、方法は、
(g)対象からの多血小板血漿の試料を提供すること、
(h)多血小板血漿の第1の部分を対象の皮膚の1つまたは複数の領域中に注射すること、
(i)多血小板血漿の第2の部分を美容上許容される担体と組み合わせて局所組成物を提供すること、
(j)ステップ(h)で多血小板血漿が注射された対象の皮膚の1つまたは複数の領域にステップ(i)からの局所組成物を適用すること
を含む。
【0029】
多血小板血漿は、血小板を他の血液細胞から分離するために個人からの血液試料を遠心分離することおよび高濃度の血小板と共に血漿を含む画分を取得することによって提供される。
【0030】
PRPは、10,000血小板/μLを超える、10,000血小板/μLを超える、10,000血小板/μLを超える、10,000血小板/μLを超える、10,000血小板/μLを超える、100,000血小板/μLを超える、500,000血小板/μLを超えるまたは900,000血小板/μLを超える血小板を含み得る。PRPは、(PDGFaa)、(PDGFbb)、(PDGFab)などの血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、(TGF−β)、TGF−β2、血管内皮増殖因子(VEGF)および上皮増殖因子(EGF)を含んでよい。
【0031】
PRPは自己由来であってよく、すなわち対象から採取され、同じ対象に注射して戻されてよい。それはドナーとレシピエントの間の感染症伝播のいかなるリスクも避け、および異組織または異なるABO血液抗原に対する反応の可能性も回避するので、これは有利である。自己由来PRPは、アレルギー反応または有害反応も回避する。
【0032】
局所組成物が適用される皮膚の領域は、体の任意の部分上であってよい。具体的には、局所組成物が適用される皮膚の領域は、顔面、頭皮、頸部、胸部、両手、両腕、両脚、腹部または臀部上であってよい。顔面および頸部など皮膚の老化が心配を引き起こす領域に局所組成物を適用することは、有利でもある。組成物を頭皮に適用することも有利である。なぜならそれは毛包の寿命を延ばし、髪の成長を促進できるからである。頭皮上での使用の場合、局所組成物はヘアジェル、ヘアローションまたは洗い流さないコンディショナーであってよい。局所組成物は、頭皮中へのPRP注射後の使用のために調剤されてよい。局所組成物は、他の育毛処置と共に使用するために調剤されてよい。
【0033】
皮膚中に注射される多血小板血漿の部分は、皮膚中への注射の前に塩化カルシウムまたはコラーゲンなどの活性化剤と混合されることによって活性化され得る。塩化カルシウムまたはコラーゲンをPRPに加えることにより、血小板は大部分の増殖因子を極めて迅速に放出する。PRPが注射される領域において高濃度の増殖因子を供給するので、これは有利である。
【0034】
美容上許容される担体と混合するように保持されるPRPの部分は、それに加えられる塩化カルシウムまたはコラーゲンなどの活性化剤を有してよい。
【0035】
活性化剤はコラーゲンであってよい。コラーゲンは皮膚内に自然に生じ、したがって皮膚内で有害反応を引き起こす可能性が低いので、これは有利である。
活性化剤は、塩化カルシウムでなくてよい。塩化カルシウムが有害反応を生じることがありおよび/または皮膚を刺激することがあるので、これは有利である。
【0036】
美容上許容される担体と混合するために保持されるPRPの部分は、それに加えられる活性化剤を有していなくてよい。塩化カルシウムは有害反応を生じることがありおよび/または皮膚を刺激することがあるので、これは有利である。血小板が活性化されるまで増殖因子は血小板内に保持されるので、これはさらに有利である。
【0037】
活性化剤を含まないPRPの部分は、皮膚に適用される直前に、例えば皮膚に適用される前に、活性化剤を含む美容上許容される担体に加えられてよい。活性化剤を含まないPRPの一部分と、活性化剤を含む美容上許容される担体の一部分とを、皮膚に適用する直前に混合することは有利である。例えば、それらは、皮膚に適用する数秒前、または最高2分前までに混合されてよい。これは、増殖因子が皮膚に適用されるときにできる限り活性であるように、美容組成物が皮膚に適用される直前に増殖因子が血小板から放出されることを確実にする。PRPは活性化剤なしで数日間、例えば少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間または少なくとも2週間、保管されてよく、混合後すぐ血小板に増殖因子を放出させる活性化剤を含む美容上許容される担体に次いで加えられてよい。PRPは室温で、例えば約22℃で保管されてよい。PRPは冷蔵庫で(例えば約4℃で)保管されない。なぜなら冷蔵は、活性化剤と混合されるときではなくむしろ保管中に血小板を活性化するからである。PRPは凍結保管もできるが、血小板が凍結によって損傷を受け、およびPRPが解凍された直後に血小板は増殖因子を放出する。凍結を用いる場合、PRPは小分けして凍結され、増殖因子の分解を回避するために各小分け分が皮膚への適用直前に解凍される。PRPは、数週間または数ヵ月間凍結保管できる。解凍過程が活性化剤として作用するので増殖因子が血小板から放出され得るため、凍結PRPは解凍される際、活性化剤と混合されて直ちに皮膚に適用される。
【0038】
美容上許容される担体は、活性化剤を含んでよい。美容上許容される担体は、塩化カルシウムを含んでよい。美容上許容される担体は、コラーゲンを含んでよい。美容上許容される担体は、塩化カルシムよりは皮膚への刺激が少なく、もしくは有害反応を引き起こすことが少ないコラーゲン、可溶性コラーゲン、または加水分解コラーゲンなどの活性化剤を含んでよい。コラーゲンは皮膚に存在し、したがって塩化カルシウムよりもより自然の活性化剤を提供する。コラーゲンはより穏やかな活性化剤として作用でき、血小板から増殖因子を塩化カルシウムが作用するよりも遅い速度で放出させる。したがって、コラーゲンは、本発明の美容上許容される担体での使用に好適である。局所組成物は、塩化カルシウムでない活性化剤を含んでよい。
【0039】
活性化剤はコラーゲン、可溶性コラーゲンまたは加水分解コラーゲンであってよく、および動物コラーゲン、ウシ由来コラーゲンまたは合成コラーゲンなどの任意の供給源由来であってよい。
【0040】
有利には、美容上許容される担体は活性剤を含んでよく、およびRPRと別々に保管されてよい。美容上許容される担体の一部分は、組成物が皮膚に適用される前の1時間内に、30分内に、20分内に、または10分内にPRPの一部分と混合されてよい。好ましくは、美容上許容される担体一部分は、PRPの一部分と混合され、混合直後、または混合後数秒内から最高2分までに皮膚に適用されてよい。美容上許容される担体が活性化剤を含む場合、この活性化剤は塩化カルシウムまたはコラーゲンであってよい。コラーゲンは、皮膚の刺激を起こさないので、美容上許容される担体に含まれる有利な活性化剤であり得る。
【0041】
PRPおよび美容上許容される担体の各部分は、1回の適用に必要最低限の量であってよい。必要最低限のPRPおよび美容上許容される担体が1回の適用分のために混合され、混合物は直ちに、例えば数秒内に、または最高2分までに皮膚に適用されるので、これは有利である。これは、増殖因子が皮膚への適用の直前にPRPから放出され、したがってそれらは皮膚に適用されるとき新しくかつ活性であることを意味する。PRPおよび美容上許容される担体の部分は、容積がほぼ同じであってよく、したがってこれらの2つの成分の1:1の混合物を生成するのは簡単である。
【0042】
美容上許容される担体は、クリーム、ゲル、血清、バーム、サンクリーム、アフターサンクリーム、ファンデーション、うす付きカバークリーム、着色サンクリーム、緑色着色アンチレッドネススージングクリーム、スカルプセラム、溶液、懸濁液、乳濁液、軟膏、フォーム、ペースト、ローション、粉末、石鹸、界面活性剤含有クレンジングオイルまたはスプレーを含む、またはこれらから成ってよい。
【0043】
美容上許容される担体は、有利にはクリーム、ゲル、ローションまたは血清であってよい。
【0044】
美容上許容される担体は、多血小板血漿の皮膚中への浸透を増加させるために少なくとも1種の成分を含んでよい。皮膚中への浸透を増加させる少なくとも1種の成分を含む組成物は、血清であり得る。血清は、皮膚中への浸透量を増加させる稠度、脂質含有量および/または疎水性を有してもよい。
【0045】
美容上許容される担体は、包帯、絆創膏、ガーゼまたはフェイシャルマスクを含む、またはこれらから成ってよい。PRPは、PRPが注射された後に皮膚に適用されるフェイシャルマスク中に浸漬されてよい。これにより、PRPが注射された部位での皮膚の刺激、むくみ、痛みおよび発赤を減少させることができる。
【0046】
美容上許容される担体は、表4からの成分および表5からの少なくとも1種の保存料を含んでよい。
【0047】
美容上許容される担体は、少なくとも1種の湿潤剤、少なくとも1種の皮膚軟化剤および少なくとも1種の乳化剤を含んでよい。
【0048】
美容上許容される担体は、塩化カルシウムまたはコラーゲンと混合されない多血小板血漿を保存および安定するのに好適であり得る。
【0049】
美容上許容される担体は、活性化剤を含まなくてよい。美容上許容される担体は、塩化カルシウムを含まなくてよい。美容上許容される担体は、活性化剤を含んでよい。
【0050】
美容上許容される担体は、血小板の活性化剤として作用するために適量のコラーゲンを含んでよい。
【0051】
美容上許容される担体は、塩化カルシウムを含まなくてよい。美容上許容される担体は、コラーゲン以外のどんな活性化剤も含まなくてよい。
【0052】
美容上許容される担体は、皮膚中への多血小板血漿または増殖因子の浸透を増加させるために少なくとも1種の成分を含んでよい。
【0053】
美容上許容される担体は、表1または表2からの1種または複数種の成分をさらに含んでよい。
【0054】
美容上許容される担体は、単球、幹細胞、遺伝子治療生成物、ビタミン、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、ナトリウムアスコビルホスフェート、D−パンテノール、ペプチド、組換え型増殖因子、ヒトと同一の微粒子状ホルモン、アミノ酸、植物抽出物、抗酸化剤、リポ酸、DMAE、コラーゲン、GAG、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、微量元素、ミネラル、タンパク分解酵素、セラミド、多糖、海藻および海生抽出物から選択される1種または複数種の成分をさらに含んでもよい。
【0055】
別の態様において、本発明は、美容上許容される担体と多血小板血漿とを含む美容組成物を提供する。10mLと20mLの間のPRPを美容組成物で50mLの最終量に希釈できる。
【0056】
美容組成物中の多血小板血漿は、組成物の総重量の0.1重量%と50重量%の間、1重量%と50重量%の間、2重量%と30重量%の間、4重量%と10重量%の間または30重量%と50重量%の間であってよい。
【0057】
PRPは、活性化剤を加えなくてよい。美容上許容される担体は、活性化剤を含まなくてよい。美容組成物は、活性化剤を含まなくてよい。
【0058】
美容組成物は、少なくとも1日、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも2週間または少なくとも3週間の間活性な増殖因子を含んでよい。
【0059】
本発明の方法において、PRPが注射された皮膚の領域に美容組成物を適用するステップは、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回または少なくとも9回繰り返すことができる。
【0060】
本発明の方法において、PRPが注射された皮膚の領域に美容組成物を適用するステップは、少なくとも毎日1回、少なくとも毎日2回、少なくとも毎日3回、少なくとも毎日4回繰り返すことができる。PRPが注射された皮膚の領域に美容組成物を適用するステップは、少なくとも毎日1回または少なくとも毎日2回、最高8日間繰り返すことができる。
【0061】
本発明の方法において、美容組成物を皮膚の領域に適用するステップは、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間または少なくとも8週間繰り返すことができる。
【0062】
PRP注射処置の後、PRPを含む美容組成物を適用することで痛み、発赤、むくみまたは紫斑を即座に減少させることができるので、これは有利である。PRP注射処置の後、PRPを含む美容組成物を適用することでPRP注射処置の美容効果を長引かせるおよび/または高めることができるので、これも有利である。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法を実行する際の使用に好適なキットを提供する。
【0064】
キットは、PRPを1日またはそれより長く保管するのに好適なチャンバーを備える1つまたは複数の容器を含んでよい。1つまたは複数の容器は無菌であってよい。1つまたは複数のチャンバーは、滅菌条件下でPRPが容器中に導入され得るように配置されてよい。キットは、美容上許容される担体の1つまたは複数の部分を含んでよい。キットは、PRP容器からのPRPの一部分と、美容上許容される担体の一部分とを混合できるように配置されてよい。キットは、PRPの一部分と美容上許容される担体の一部分とが混合されてPRP組成物を提供しこの組成物が皮膚に適用できるように配置されてよい。
【0065】
美容上許容される担体が活性化剤を含み得るので、これは有利である。PRPの一部分と美容上許容される担体の一部分とが混合されると、PRPのその部分中の血小板が活性化され増殖因子を放出できる。容器中のPRPの残りは活性化されていないままであり、それが含有する増殖因子を保持できる。したがって、新たに活性化されるPRPが、数日間、毎日適用され得る。
【0066】
キットは、PRPを保管するのに好適な容器、活性化剤としてコラーゲンを含む一部分または複数部分の美容上許容される担体および使用説明書を含んでよい。使用者はPRPの一部分を美容上許容される担体の一部分と次いで混合して直ちにその混合物を皮膚に適用できる。PRPを保管する容器は、容器中への空気の流れを排除するように設計できる。PRPを保管する容器の内部は、無菌であってよい。
【0067】
例えば、キットは、コラーゲンを含む美容上許容される担体の一部分をそれぞれ含有する8個のアンプル、PRP用の容器および使用説明書を含んでよい。
【0068】
キットは、ミニ振動台/攪拌器およびその使用説明書をさらに含んでよい。
【0069】
血小板の寿命を延ばすためにPRPを撹拌しながら保管することが有利であるので、攪拌器は有利であり得る。撹拌しながら保管された血小板は、8日目には、撹拌せずに保管された血小板よりも多量の増殖因子を有する。室温での保管は血小板の保管期間を向上させ、および保管の8日目により多くの増殖因子があることを意味するので、キットは室温での保管にも適合できる。
【0070】
キットは、使用説明書をさらに含んでよい。使用説明書は、本発明の方法での使用であってよい。
【0071】
容器は無菌であってよい。容器は、容器中へ酸素を透過させるように配置されてよい。容器は、容器中へ酸素を透過させないように配置されてよい。キットは、少なくとも1つのチャンバー中の美容上許容される担体と、PRPの一部分を受け入れるように配置された少なくとも1つのチャンバーとを備える、本発明に従う容器を含んでよい。キットは、採血するための適切な器材、遠心分離される間に血液を保持するための適切な容器、血液からPRP画分を取り出すための適切な器材および/またはPRPを皮膚中に注射するための適切な器材をさらに含んでよい。
【0072】
別の態様において、本発明は、第1のチャンバーと第2のチャンバーとを含む容器を提供し、これらのチャンバーは第1のチャンバーの内容物および第2のチャンバーの内容物が容器から出る際に混合されるように配置されている。容器は無菌であってよい。第1のチャンバーおよび第2のチャンバーに含有される美容上許容される担体は、多血小板血漿を受け入れるように配置される。容器は無菌であってよい。PRPの一部分は容器の第2のチャンバー中に入れられてもよい。PRPは、使用者が美容組成物を適用する準備ができるまで、容器の第2のチャンバーに保管されてよい。容器が使用されると、第1のチャンバー中の美容上許容される担体の一部分および第2のチャンバー中のPRPの一部分は容器を出て、それらが容器から出ると混合されて美容上許容される担体とPRPとを含む美容組成物をもたらす。美容上許容される担体およびPRPは好適な比率で混合されて本発明の美容組成物をもたらす。美容上許容される担体は容器の第1のチャンバーに含有され、およびPRPは容器の第2のチャンバーに含有されてよい。担体が活性化剤、例えば塩化カルシウム、コラーゲンまたは別の活性化剤を含み得るので、これは有利である。PRPは容器のチャンバー中に残存し数日間活性化されなくてよく、したがって増殖因子はPRP中の血小板内部に残存する。美容組成物が必要とされるとき、容器が活性化され、担体がPRPと混合され得る。PRP中の血小板は、活性化剤を含む担体と混合されると、増殖因子を放出でき、したがって得られた美容組成物は高レベルの活性増殖因子を含み得る。増殖因子は、PRPが活性化剤を含む担体と混合されるときに放出されるまで数日間血小板内部で活性でいられるので、この配置は有利である。容器は、容器の使用ごとにPRPの一部分と担体の一部分が放出され得るように配置されてよい。PRPは、血液が対象から採取され容器の1つのチャンバー中に入れられた時点で調製され得る。PRPはしたがって必要とされるまで活性化されずに保管され、保管されたPRPの一部分だけが、毎日組成物が皮膚に適用される前に、活性化剤を含む担体と混合され得る。
【0073】
活性化剤を含まない美容上許容される担体は容器の第1のチャンバーに含有され、およびPRPは美容上許容される担体に加えられ得る。活性化剤は容器の第2のチャンバーに含有され得る。PRPを安定させおよび/またはPRP中の血小板内部の増殖因子を安定させる成分を担体が含むことができるので、これは有利である。活性化剤、例えば塩化カルシウム、コラーゲン、または別の活性化剤は容器の第2のチャンバーに含有されてもよい。PRPおよび美容上許容される担体は、容器のチャンバー中に残存でき、およびPRPは数日間活性化されないことが可能であり、そのため増殖因子はPRP中の血小板内部に残存する。美容組成物が必要とされるとき、容器は活性化され、ならびに活性化剤は美容上許容される担体およびPRPと混合され得る。PRP中の血小板は、活性化剤と混合されると増殖因子を放出し、したがって得られた美容組成物は高レベルの活性増殖因子を含み得る。PRPが活性化剤と混合されるときに放出されるまで増殖因子は、数日間血小板内部で活性でいられるので、この配置は有利である。PRPは生成された直後に美容上許容される担体と混合され、美容上許容される担体は活性化剤と混合されるまでPRPを安定化し保持できるので、これも有利である。美容上許容される担体と混合されたPRPの一部分および活性化剤の一部分が容器の使用ごとに放出され得るように、容器を配置できる。PRPは、血液が対象から採取され容器の1つのチャンバー中に美容上許容される担体と共に入れられた時点で調製され得る。PRPはしたがって必要とされるまで活性化されずに保管され、保管されたPRPの一部分だけが毎日組成物が皮膚に適用される前に、活性化剤と混合され得る。
【0074】
血小板の寿命を延ばし、それらの内部に増殖因子を保持するために、PRPを室温で保管することは有利である。PRPが撹拌されるように保管することも有利である。低酸素と最小限度の空気の流れと共にPRPを保管することはさらに有利である。混合物が皮膚に適用される直前に血小板から増殖因子が放出されるように、混合物を皮膚に適用する直前に活性化剤をPRPと混合することは、さらに有利である。キットは、空気を通さず無菌であるPRP用の保管容器を提供し、保管中に容器中のPRPを撹拌する器具を提供することによって、これらの特徴のすべてをもたらすように配置される。
容器は、室温での保管に適していてよい。活性化剤が美容上許容される組成物に含まれてもよく、したがって活性化剤は皮膚に適用する直前にPRPと混合され得る。
【0075】
ここで、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を例としてのみ以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明の容器の一実施形態の図を示す。
図2】本発明の容器の一実施形態の図を示す。図2aは容器全体を示し、図2b〜図2dはPRPを含有するのに適したチャンバーの実施形態を示す。
図3】PRPを含有するのに適したチャンバーの一実施形態を示す。
図4A】処置前と処置後の皮膚を比較を示す、1群からの患者1、2および3ならびに2群からの患者1、2および3の処置領域の写真を示す。1群−16日間毎日、処置領域でのPRP注射に続いてPRPと混合した血清を使用した。2群−24日間毎日、PRPと混合した血清だけを患者の顔の片側に使用した(8日間毎日、新鮮な血液を採取した)。3群−コラーゲン血清(PRPを加えずに)だけを使用した。
図4B】処置前と処置後の皮膚を比較を示す、1群からの患者1、2および3ならびに2群からの患者1、2および3の処置領域の写真を示す。1群−16日間毎日、処置領域でのPRP注射に続いてPRPと混合した血清を使用した。2群−24日間毎日、PRPと混合した血清だけを患者の顔の片側に使用した(8日間毎日、新鮮な血液を採取した)。3群−コラーゲン血清(PRPを加えずに)だけを使用した。
図4C】処置前と処置後の皮膚を比較を示す、1群からの患者1、2および3ならびに2群からの患者1、2および3の処置領域の写真を示す。1群−16日間毎日、処置領域でのPRP注射に続いてPRPと混合した血清を使用した。2群−24日間毎日、PRPと混合した血清だけを患者の顔の片側に使用した(8日間毎日、新鮮な血液を採取した)。3群−コラーゲン血清(PRPを加えずに)だけを使用した。
図4D】処置前と処置後の皮膚を比較を示す、1群からの患者1、2および3ならびに2群からの患者1、2および3の処置領域の写真を示す。1群−16日間毎日、処置領域でのPRP注射に続いてPRPと混合した血清を使用した。2群−24日間毎日、PRPと混合した血清だけを患者の顔の片側に使用した(8日間毎日、新鮮な血液を採取した)。3群−コラーゲン血清(PRPを加えずに)だけを使用した。
図5】光透過型血小板凝集能測定法を示す。血小板凝集計は、血小板アゴニストに曝された血小板の撹拌懸濁液の光透過度の変化を測定する。血小板凝集計は、100%光透過率と同等である乏血小板血漿を含有するキュベットによって較正される。血小板アゴニストの非存在下で撹拌された多血小板血漿は、0%光透過率と同等である(ベースライン、A)。血小板アゴニストを加えることによって誘発される血小板の活性化による血小板形状の変化は、光透過率の短時間の低下をもたらす(B)。血小板凝集塊が形成されると、光透過率の上昇が装置によって記録され凝集のパーセンテージとして算出される(C)。
図6】PRP保管容器を示す。(a)70mLのNunc(商標)フラスコ(最も小さいものを示す)、(b)30mLのSterilin(商標)ユニバーサル容器
図7】Luckham R100 Rotatestシェーカーを示す。
図8】ELISAプレートが、ヒトPDGF−BBに対して作られた捕捉抗体ですでに覆われて用意されていることを示す。試験試料または試験基準中に存在するPDGF−BB(標的タンパク質)は、捕捉抗体に結合して、プレートに固定される。ビオチンに結合されたヒトPDGF−BBに対して作られた第2の抗体が加えられ、これは2時間のインキュベーションの間に第1の抗体によって捕捉されたPDGF−BBに結合する。残留する、結合してない物質を洗い落とし、酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合されたストレプトアビジンが各ウェルに加えられる。ストレプトアビジンは、2時間のインキュベーションの間に、ビオチンと強力な、非共有の1:1複合体を形成する。残留する物質を洗い落とし、酵素の基質である、テトラメチルベンジジンが加えられる。酵素−基質反応の産物を発色させ、その強さは試料中のPDGF−BBの量に正比例し、これを標準曲線に対して評価する。www.mitosciences.comから図形を複製した。
図9】コラーゲン誘発凝集を示す。1日目:トレース1とトレース3:コラーゲン10μg/mL。トレース2とトレース4:コラーゲン5μg/mL。
図10】Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。2日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:27%Plt:257×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:52%Plt:241×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:65%Plt:228×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:29%Plt:243×109/L。
図11】ユニバーサル容器に保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。2日目、トレース1とトレース2:一定撹拌MA:79%Plt:149×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:92%Plt:221×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:101%Plt:215×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:77%Plt:149×109/L。
図12】Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。3日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:19%Plt:245×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:36%Plt:202×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:40%Plt:213×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:12%Plt:221×109/L。
図13】ユニバーサル容器に保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。3日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:61%Plt:128×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:88%Plt:221×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:97%Plt:233×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:47%Plt:145×109/L。
図14】Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。4日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:15%Plt:223×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:23%Plt:213×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:37%Plt:209×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:15%Plt:213×109/L。
図15】ユニバーサル容器に保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。4日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:43%Plt:117×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:65%Plt:236×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:77%Plt:243×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:34%Plt:133×109/L。
図16】Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。5日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:13%Plt:205×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:18%Plt:193×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:30%Plt:183×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:11%Plt:200×109/L。
図17】ユニバーサル容器に保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。5日目:トレース1とトレース:一定撹拌MA:61%Plt:102×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:64%Plt:222×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:75%Plt:233×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:27%Plt:118×109/L。
図18】Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。8日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:6%Plt:191×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:12%Plt:151×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:20%Plt:146×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:6%Plt:186×109/L。
図19】ユニバーサル容器に保管されたPRPのコラーゲン誘発凝集を示す。8日目:トレース1とトレース2:一定撹拌MA:58%Plt:85×109/L。トレース3とトレース4:間欠撹拌MA:39%Plt:188×109/L。トレース5とトレース6:定常MA:37%Plt:208×109/L。トレース7とトレース8:一定撹拌+PGE1 MA:27%Plt:87×109/L。
図20】可変的に保管されたPRP中の経時的な%凝集の変化のプロットを示す。Nunc(商標)フラスコに可変的に保管されたPRP中の経時的なコラーゲン誘発凝集の最終パーセンテージの変化をプロットする。Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの最終パーセンテージ凝集プロット。
図21】ユニバーサル容器に保管されたPRPの最終パーセンテージ凝集プロットを示す。ユニバーサル容器に可変的に保管されたPRP中の経時的なコラーゲン誘発凝集の最終パーセンテージの変化をプロットする。
図22】可変的に保管されたPRP中の経時的な血小板数の変化のプロットを示す。Nunc(商標)フラスコに可変的に保管されたPRP中の経時的な血小板数の変化のプロットを示す。Nunc(商標)フラスコに保管されたPRP中の連続測定血小板計数。
図23】ユニバーサル容器に保管されたPRPの連続測定血小板計数を示す。ユニバーサル容器に可変的に保管されたPRP中の経時的な血小板数の変化のプロットを示す。
図24】PDGF−BB ELISAの標準曲線を示す。
図25】可変的に保管されたPRPの上清中の経時的なPDGF−BBレベルのプロットを示す。図25および26は、それぞれ、Nunc(商標)フラスコおよびユニバーサル容器に可変的に保管されたコラーゲン誘発PRPの上清中のPDGF−BBレベルをプロットする。コラーゲン活性化の後、Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの上清の連続測定PDGF−BBレベル。完全なグラフィカルプロットができるようにするため、2日目に入手不可能だった一定撹拌+PGE1の結果に名目レベルを入れたことに留意されたい。
図26】コラーゲン活性化後のユニバーサル容器に保管されたPRPの上清の一連のPDGF−BBレベルを示す。完全なグラフィカルプロットができるようにするため、2日目に入手不可能だった一定撹拌の結果に名目レベルを入れたことに留意されたい。
図27】遠心分離によって分離された血液を示す。各管の下部から順に、第1の層は赤血球であり、第2の極めて薄い層は白血球であり、白血球の層の上は血漿のF2画分(PRPとも呼ばれる)(血漿の約50%)および一番上は血漿のF1画分(PPPとも呼ばれる)(血漿の残りの50%)である。本出願に記載の血小板の保管条件に関する試験で使用されたのはF2(PRP)であり、および本出願に記載の臨床試験で使用されたのもF2(PRP)画分である。F2画分はF1画分よりも若干黒ずんでいるので、実行者は最初にF1画分を引き上げ、次いでF2画分を別に引き上げることができる。血漿画分には印をつけてある。血漿画分は、画分1(F1)(PPP)と画分2(F2)(PRP)に分離される。F2はF1よりも血小板中に豊富に存在し、したがって本発明の方法で用いるのはF2が好ましい。
図28】遠心分離によって分離された血液を示す。血漿の画分1(F1)(PPPとも呼ばれる)には印をつけてある。
図29】遠心分離によって分離された血液を示す。F1画分を除去して、F2画分を残している。
図30】血液を分離して血漿のF1およびF2画分を用意するために使用した遠心分離機の4枚の写真、上左から時計回りに、内部、前面、背部および前部を開放した状態を示す。遠心分離機は、BTI−Endornet遠心機であり、580Gで8分間、血液を回転させる。遠心分離工程の間に、血液は、図27〜29に記載の画分に分離される。
図31】本発明によるキットを示す。キットは以下を含む:血漿、PRPまたはF2を内部に保持するために内部が無菌の容器、これは図の右側に示されている;美容上許容される組成物を含有するいくつかのアンプル、皮膚への組成物の各適用につき1アンプルであってよい、これらのアンプルは図の上部に示されている;その容器内部の血漿、PRPまたはF2を一定に撹拌するために使用できる撹拌器具、これは図の下部に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0077】
美容組成物は、サンクリーム、アフターサンクリーム、ファンデーション、うす付きカバークリーム、着色サンクリーム、皮膚の発赤を覆うための緑色着色アンチレッドネススージングクリーム、スカルプセラムであり得る。
【0078】
増殖因子:
いずれのPRPの場合でも、遠心分離後、7種の基本的なタンパク質増殖因子が血漿中に濃縮される(濃縮程度および望ましくない成分がどのレベルで含まれるかは変化する)。
・血小板由来増殖因子−PDGF−AA、PDGFAB、PDGFBB
・トランスフォーミング増殖因子−TGFβ1、TGFβ2
・血管内皮増殖因子−VEGF
・上皮増殖因子−EGF
【0079】
この濃縮物は、細胞接着分子として作用する血液中の3種のタンパク質、フィブリン、フィブロネクチン、およびビトロネクチンも含有する。
【0080】
PDFG、VEGFおよびEGFは、新しい組織再生にとって最も重要である。担体は、表1から選択される1種または複数種の成分を含んでよい。
担体は以下を含み得る。
【0081】
【表1】
【0082】
表2
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、セテアリルアルコール、Q10、ナトリウムラウロイル、グルタミン酸塩、パルミチン酸レチノール、セテアリルアルコール、シアバター、イソラノリン、ステアリン酸ソルビタン、乳酸塩、尿素、ヒアルロン酸、サポニン、D−パンテノール、グリセリン、アニス酸ナトリウム、レブリン酸ナトリウム、カプリル酸グルセリル、EDTA、カプリリルグリコール、ソルビン酸カリウム、カプリル酸コンボ、パルミチン酸セチル、ステアリン酸、セテアリルアルコール、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ソルビトール、ステアリン酸グリセリル、デーミン滅菌水、ニナトリウムEDTA0.1%、ヒアルロン酸、レチノール(トレチノイン)0.5%、サポニン、Q10酵素、グリシルレチン酸、コラーゲン、ラクトセラミド、L−カルニチン、乳酸、グリコール酸、ステアリン酸ソルビタン、ソルビトール、乳酸塩、Decandenol、カンゾウエキス、緑茶エキス、アルニカ、塩化カルシウム、グルコン酸塩、トロンビン、脱塩滅菌水、ビタミンA、ステアリン酸PEG−40、パルミチン酸アスコルビル、グリシン、塩酸アルギニン、ヒアルロン酸ナトリウム、ラウロイルリシン
【0083】
表3
1−ヒバマタのエキス(海草):海草の一種であるヒバマタの乾燥葉状体(球状の根)に由来する。
2−トクサのエキス:トクサ、スギナモ、ひげ剃り草、またはウマノハブラシとして一般的に知られているエクイセツム・アルベンセは、中央ヨーロッパ中に生える植物である。
3−ツボクスのエキス:ゴツコーラまたはツボ草として一般に知られているハイドロコチル・アジアチカ
【0084】
組成物は、表3に収載される1種または複数種の天然成分を含むこともある。
【0085】
表4
EDTA
グリセリン
キサンタンガム
Avenacare βグルカン−βグルカン、水、バクガデキストリン
Collasurge−水、コラーゲン・アミノ酸、ソルビン酸カリウム、エチルヘキシルグリセリン、フェノキシエタノール
Crotein M−加水分解コラーゲン
水酸化ナトリウム
【0086】
表5
保存料
Dermosoft 1388−水、レブリン酸、パルファム、p−アニス酸、水酸化ナトリウム、グリセリン
Gerogard 221−ベンジルアルコール、水、デヒドロ酢酸
Dermosoft GMCY−カプリル酸グリセリル
ソルビン酸カリウム
【0087】
図1は、本発明による容器の一実施形態の側面図を示す。容器10は、任意の好適な材料製、例えば硬質プラスチック製または軟質プラスチック製であってよい。
【0088】
あるいは、チャンバーうちの1つ11は、本発明による活性化剤12aで充填されるように配置されてよい。チャンバーうちの1つ13は、美容上許容される担体で充填され、および多血小板血漿(PRP)が美容上許容される担体と混合するようにチャンバー中に導入されることを可能にするように配置される開口部、弁またはポート18と共に配置されてもよい。開口部、弁またはポートは、例えばロックもしくはキャップを備えていることによって、またはそれを通して注入され得るゴムシールであることによって、PRPの導入後に再び閉じることができるように配置されてよい。
【0089】
容器はチャンバー11と13の各々に連通している混合チャンバー14をさらに備えてよく、これらのチャンバーは各チャンバーの含有物が必要とされる割合で混合チャンバーに入ることができるように配置される。弁、シール、キャップまたはロックは、必要なときに混合チャンバーの含有物が容器から出ることを可能にする、混合チャンバー17からの出口を閉じることができる。容器は、例えば、容器を圧搾することによって、またはチャンバー11と13の両含有物が必要とされる割合で混合チャンバー14中に押し出され、混合された含有物が出口17を介して容器から押し出される機構によって作動される。容器は何度も作動され、各作動によって各チャンバーの含有物の適当分量が一緒に混合されて、容器を出る。
【0090】
図2aは、本発明の容器の一実施形態の実施形態の図を示す。容器はPRPを含有するのに好適なチャンバー20を備え、容器20は無菌であってよい。容器は、美容上許容される担体22を含む多数のチャンバー21を備える。美容上許容される担体は、活性化剤を含んでよい。美容上許容される担体を含むチャンンバーを開けることができ、および適当量のPRPを美容上許容される担体に加え、混合してからこの組成物を皮膚に適用できる。図2bは、PRPを含有するのに好適なチャンバーの側面図を示す。チャンバー23は、上蓋24と底蓋25を有する。図2cは、上蓋を取り外したチャンバー23を示し、チャンバーがPRPを同チャンバーから振って滴下させることができる点滴器を備えていることを示す。図2dは、上蓋を所定位置に付けて逆さまにしたチャンバー23の図を示す。底蓋は取り外されている。針(28)付きシリンジ27中のPRPは、PRPを無菌状態でチャンバー内に移すことができるゴムシール29を通して注入される。
【0091】
ヒトボランティアでの試験
多血小板血漿は、コラーゲンを含有する血清との組み合わせで局所的に用いられる。血清中のコラーゲンは、PRPと接触すると、血小板活性化を誘発し、活性化血小板から増殖因子を放出させる。血清含有コラーゲンは、以下の調合物で調製されている。
【0092】
【表2】
【0093】
生成物の詳述
コラーゲン血清は、濁ったように見える淡黄色の薄い液体である。コラーゲン血清のpHは、5.20〜5.50であり、スピンドル4@5を使用した粘度は4000〜7000cpである。
【0094】
生成物の安定性と保存
コラーゲン血清は安定性試験の期間中、好適に安定性を維持し、推奨される有効期間が開封日から12ヵ月であることが確定されている。
【0095】
コラーゲン血清は、欧州薬局方標準に応じて実施された完全な誘発試験に合格している。
【0096】
臨床試験
皮膚の領域の外観を改善することを望んでいる9名の被験者を募った。これらの患者を3つの群に分けた。
【0097】
1群
1群の各被験者から血液を採取し遠心分離して、赤血球および白血球などの他の血液成分から血漿を分離した。PRPまたはF2画分と呼ばれる血漿の最も豊富な部分だけを収集した。これが血小板中で最も豊富な画分だからである。少ない画分:血清中のPPPすなわちF1は使用しなかった。
【0098】
PRPは、処置領域にわたり一連の皮内注射を用いて皮膚中に注射した。残ったPRPを保管した。続いての8日間毎日、PRP試料を、コラーゲンを含有する同量の血清と混合し、この混合物を処置領域に適用した。局所処置を注射処置の日からさらに8日間継続するために、8日目にさらに採血し、新鮮なPRP F2を収集した。
【0099】
2群
2群の各被験者から血液を採取し遠心分離して、赤血球および白血球などの他の血液成分から血漿を分離した。血漿の最も豊富な部分、すなわちPRP画分またはF2だけを血漿の他の成分から分離して収集した。これが血小板中で最も豊富な画分だからである。
【0100】
PRPを保管した。続いての8日間毎日、PRP試料を、コラーゲンを含有する同量の血清と混合し、この混合物を被験者の顔面の片側の処置領域に適用した。局所処置を処置の開始から計24日間継続するために、8日目と16日目にさらに採血し、新鮮なPRP(またはF2)を収集した。PRP注射はこの群に投与せず、コラーゲン血清と混合したPRPでの局所処置だけを施した。
【0101】
3群
2群の被験者に、いずれの注射または血清と混合したいずれのPRPも施さず、コラーゲン血清を一日2回、24日間適用した。
【0102】
結果
各被験者の処置前後の処置領域の皮膚の外観を図4に示す。1群からの患者1、2および3ならびに2群からの患者1、2および3の処置領域の写真は処置前と処置後の皮膚の比較を示す。1群−16日間毎日、処置領域にPRP注射を投与し、続いてPRPと混合した血清を用いた。2群−24日間毎日、PRPと混合した血清だけを対象の顔面の片側に用い、それで対象の顔面の他の側との相違を比較できた。3群−コラーゲン血清だけ(それにPRPを加えずに)を用いた。
【0103】
老化防止処置としてPRP注射を用いた後で、PRPが、
−自身の細胞によるヒアルロン酸の自然産生を促進することによって、
−コラーゲンおよびエラスチンの分泌の増加を促進し、それによって皮膚の稠度、はりを高め、たるみを減少させることによって、
−皮膚の水和作用を改善し、
−しわ線としわを滑らかくし、
−明度を上げて、皮膚のつやを高めることにより、
組織再生を活性化し顔色および皮膚の弾力性を改善することがわかった。
【0104】
注射に関する唯一の問題は、顔面および頸部のように敏感な領域にわたり多くの注射によって引き起こされる術後のむくみ、紫斑、痛み、および効果がそれほど長く続かないという事実である。これが、本発明がPRPの効果を劇的に改善し、これらの術後の問題からの回復時間を改善し、および結果をもっと長く維持する理由である。
【0105】
注射に関する唯一の問題は、顔面および頸部のように敏感な領域にわたり多くの注射によって引き起こされる術後のむくみ、紫斑、痛み、および効果がそれほど長く続かないという事実である。本発明の利点は、PRPを血清と混合しそれをPRP注射後に用いることによってPRPの効果を劇的に改善し延ばすこと、また注射を必要とせずに活性因子を皮膚中に浸透させることである。PRPの一部分が血清の一部分と混合される処置のコースとして血清と共にPRPを毎日用いて、新鮮な血小板を毎日活性化させ、活性化血小板が皮膚に適用される。この処置を単独で、またはPRP処置のコース後に行い、注射処置によるPRPの効果を延ばし向上させることができ、また注射処置によるPRPに起因する紫斑、むくみおよび痛みの程度を減少させるのを助けることができる。
【0106】
1群、2群および3群のクライアントからのフィードバック
1群
クライアント1:47歳の女性。顔面と両手へのPRP注射に続いて、本発明の血漿血清を8日間用いた。添付の最初の左側下の写真に認められるように、処置前のクライアントは、両頬および鼻の片側の赤い斑状部位に悩まされていた。PRP注射の直後、クライアントの顔面は注射のためわずかにむくみ炎症を起こした。痛みも非常に感じた。その日クライアントの血漿血清を生成し、クライアントはその使用を直ちに開始し8日間続けた。
【0107】
8日間後、赤い斑状領域はすべて消えた。目の下のくまは、改善された。皮膚が柔らかく、ふくよかになり、より水和され、健康的な「色艶」になったとクライアントは報告した。クライアントは、もはや肌にファンデーションを使用する必要がなくなった。
【0108】
同クライアントは、両手にPRP注射、続いて血漿血清を用いる処置を8日間行った。
【0109】
処置前の両手:
皮膚は非常に乾燥していた。手首のまわりの赤い斑状領域と深いしわ線。毎日何回もハンドクリームを使用しても、皮膚をしっとりと、柔らかく保つには十分でなかった。結果として、皮膚は年をとってしわが多いように見えた、
【0110】
処置後の両手:
皮膚はかなり柔らかく、引き締まり、およびより水和した。手首の発赤は劇的に消えていき、深いしわ線は滑らかになった。
【0111】
PRP注射後の痛みと紫斑は極めて急速に治り、治癒は通常よりもはるかに速かった。
【0112】
両手の皮膚は、柔らかく感じられ、色艶がよくなった。皮膚は柔らかく、より水和し、しわ線と斑状の赤い部位は劇的に消えた。
【0113】
クライアント2:67歳の女性。眉間に深いしわ線と、目の周りおよび両頬と顎にたくさんの小じわ線があった。クライアントは、目の下に深いくまと顔面全体に斑状の赤色/茶色の領域が認められた。この女性にとって、たるみは最大の問題であり、以前の顔面へのフィラー処置は所望した成果が出なかった。
【0114】
クライアントは、9ヵ月前、PRP注射だけの処置を受けていた。クライアントは術後のむくみおよび紫斑から回復するのに約5日かかった。その後肌の感触はよくなったが、その状態はあまり長く続かなかった。
【0115】
今回、クライアントには最初にPRP注射、続いて血漿血清を用いる処置が8日間、施された。
【0116】
クライアントは、24時間以内に、術後のむくみ、痛みおよび紫斑から回復しただけでなく、皮膚の感触が柔らかく、ふくよかで、明るさが継続し、極めて健康的な色艶になった。この女性の最大の改善は、皮膚が引き締まったことであった。クライアントは、それを「穏やかなフェイスリフト」と言い表した。
【0117】
両頬とあごの小じわ線は、劇的に滑らかになった。深い眉間しわ線も滑らかになった。目の下の領域は明るく、健康的見えるようになり、皮膚はより滑らかに、明るい色になった。
【0118】
クライアント3:32歳の男性。ほうれい線(笑いじわ)が非常に深く、そのため実年齢よりも老けて見えた。また、ほうれい線内部の皮膚は非常に乾燥しており、ひげ剃りを非常に難しくしていた。
【0119】
本被験者には、深いPRP注射に続いて血漿血清を用いる処置を8日間、1セッション施した。ほうれい線は完全には消えなかったが、かなり改善し、現在、細い線のように見える。皮膚の感触も柔らかく、引き締まり、より水和した状態になった。
【0120】
2群:
本群のクライアント全員から、極めて類似したフィードバックが報告された。全24日間にわたり、ひなたや風に曝していたが、顔面の処置した側の感触は、非処置側よりもはるかに引き締まり、より水和した状態であり、ふくよかで滑らかになった。
【0121】
目の周りのくまは、はるかに明るく見えた。
クライアント全員は新しい健康的な「色艶」を報告している。
この水分補給の結果として、目の周りのしわ線ははるかに柔らかく見えるようになった。
皮膚が極めて乾燥し、斑状であったクライアントは、24日間血清を用いた後、処置した側の皮膚は柔らかく、ふくよかに、引き締まり、むらのない顔色になったが、非処置側は依然として同じ状態であったことを報告した。
【0122】
3群:
本群では、クライアントがコラーゲン血清を適用したときはいつも、皮膚が若干しっとりと感じられたが、この効果が2〜3時間以上は続かなかったこと以外は、著しいまたは目に見える改善は報告されなかった。
【0123】
キット
キットは、以下を含んでよい:
コラーゲン血清(コラーゲン活性化剤を含む美容上許容される担体)を含有するプラスチックカプセルを8日間使用するように8個、または毎日1個もしくはPRP適用ごとに1個のプラスチックカプセル使用するように適当数。各カプセル中のコラーゲン血清の量は、1適用に十分な量であってよい。コラーゲン血清は、同量のPRPと混合され、指先間で混合されて顔面、首、胸および/または両手に適用される。
【0124】
PRPを保持する容器は、好適な材料、例えば、本出願に記載の試験によってPRP(血漿の最も豊富な部分であるF2とも呼ばれる)保管に最適な材料であることが証明されたSterilinポリプロピレン製であった。
【0125】
PRP容器は、容器内部にいくらかの酸素が存在するが、酸素が一定に流れないように、容器に流れ込む空気量を減少させるように設計され得る。容器はPRPを滴下方法で分配するように配置され、したがって適用ごとに美容上許容される担体と混合されるように使用者がPRPの適当な滴数を分配できる。
【0126】
クライアントが8日間PRPを撹拌させておくことができるように、現在、単4小型電池駆動式振動台も含まれている。試験では一日に2、3回振盪させただけのPRP群でも良好な結果を示したが、PRPが一定に撹拌されている場合、最善の結果が常に達成されることが判明している。この理由で小型の振動台がキットに含まれている。
【0127】
血小板保管条件
PRPは一般に、創傷治癒の促進において組換え増殖因子より好まれているが、本臨床の場でのPRP調製の安定性に関するデータは不足している。無核である血小板の寿命は、in vivoで8〜10日と短く、22℃±2℃で、連続して穏やかに撹拌されながら保管されるクエン酸ベースの抗凝固剤中に取り入れられる血小板献血は、一般に5日間の有効期限が割り当てられている。本調査では、種々の条件下で8日間にわたり室温で保管された正常ドナーの血小板からコラーゲン誘発PDGF−BBが放出されるかを連続で(毎日)調べた。
【0128】
ドナー血小板の収集
合計125.0mLの血液を無症候で臨床的に健康な成人男性ドナーから採取して、25 BD Vacutainer(登録商標)管(Bunzl Healthcare,Enfield,UK)中に取り入れた。各管には抗凝固剤として酸性クエン酸デキトロース溶液B(ACD−B)1.0mLが含まれていた。
【0129】
非外傷性静脈穿刺を、21g−翼付静脈留置針を使用して、最小限静止で行った。ドナーは、この2週間以内に血小板機能に影響をおよぼすことが知られているいかなる薬物も、またはこの5日間に血小板機能に影響を及ぼすことが知られているいかなる食糧も摂取してなかった。
【0130】
血小板診断用の血液は、通常、血液9部対抗凝固剤1部の割合で、0.105Mのクエン酸三ナトリウム中に採取される。しかし、これは、自然劣化が診断の正確度に悪影響を与える前に、新たに採血した血小板の機能を評価するように静脈穿刺から4時間未満内に行われる診断検査に基づいている。本調査用の抗凝固剤としてACD−Bを選択したことは、ACD−Bが、血小板構造の完全性を維持することおよび自然凝集を防止することにおいてクエン酸三ナトリウムより優れていることを立証した、Leiらの研究に基づく。
【0131】
多血小板血漿の調製
静脈穿刺後15分間、血液を冷却させて、血漿凝塊の形成を防止した。次いで、管をIEC Centra CL3遠心分離機(Thermo Scientific,Basingstoke,UK)内、22℃で、130RCF(800RPM)で20分間遠心分離して、RPRを生成した。
【0132】
遠心分離後、PRPを、プラスチック製ホールピペットを用いて2つの30mLのSterilin(商標)ポリプロピレンユニバーサル容器(Thermo Scientific)中に移し、白血球が豊富なバフィーコート層を避けてPRPをプールした。ポリプロピレン容器とプラスチック製ピペットを使用することで、試料を扱う間、血小板の活性化を防止する。2つの容器の含有物を複数回お互いに混合させて、均質にした。
【0133】
残りの全血を2450RCF(3500RPM)で10分間遠心分離して、コラーゲン誘発血小板の活性化においてブランクとして使用するための乏血小板血漿(PPP)を得た。PPPを別のユニバーサル容器中に移した。Sysmex PocH 100i (Sysmex UK,Milton Keynes,UK) を用いて、PRP[12]で血球計数を行い、以下を確かめた。
血小板数は150〜600×109/Lの間であった。
白血球数は<0.5×109/Lであった。
赤血球数は<0.5×1012/Lであった。
【0134】
血小板数が高すぎると、in vitro凝集のアーチファクト抑制が起こることがあり、赤血球が多すぎると、凝集の検出を妨げる。白血球は血小板凝集を阻害し得るので、ほとんどの白血球をPRPから除去することが重要である。
【0135】
コラーゲン活性化血小板の凝集測定
調製直後に、PRPのアリコートをPAP8血小板凝集計(Alpha Laboratories,Eastleigh,UK)で、馬腱コラーゲン懸濁液であるCollagen Reagent HORM(登録商標)(Takeda Austria,Linz,Austria)による活性化にかけた。PAP8は光透過型血小板凝集能測定法を使用する。同方法を図5にまとめる。
【0136】
血小板は、PRP中5μg/mL(正常な血小板中で完全な凝集を起こさせなければならない診断目的の標準濃度)の最終濃度のコラーゲンで活性化された。用量を2倍にすることによって凝集を最大にし、したがってα顆粒成分が放出されるかどうかを確認するために、別々のアリコートを10μg/mLの濃度のコラーゲンで活性化させた。一旦凝集が完了すると、アリコートを遠心分離して、血小板凝集塊をペレット化し、上清を取り除いて−80℃で凍結させた。
【0137】
多血小板血漿の保管
残りのPRPを2種類の容器で異なる条件下で保管した。容器1は、70mLのNunc(商標)非処置フラスコ(Thermo Fisher Scientific,Langenselbold,Germany)であった。これは無菌の非活性化ポリスチレン組織培養フラスコであり、図6(a)に示す。フラスコのポリスチレン本体は酸素を透過しないが、フィルターキャップは一定の空気流を可能にする。容器2は、30mLのSterilin(商標)ポリプロピレンユニバーサル容器(Thermo Scientific)であった。これは無菌であり、酸素を透過させない。図6(b)に示す。
【0138】
各種類の容器を用いて、以下のように4つの異なる方法で8日間にわたりPRPを保管した。
(a)8日間の保管期間にわたり、撹拌し続けた。
(b)毎日数回、穏やかに振盪させ/逆さにした。
(c)期間中、静止状態に維持した。
(d)8日間の保管期間にわたり、PGE1を添加して撹拌し続けた。
【0139】
献血150mLの量に抗凝固剤を加えて、約65mLのPRPを得た。これから各容器に約8.0mLのPRPを保管できた。保管中、血小板を穏やかに撹拌し続けると活性化および細片形成が減少することは長い間認識されている。1日中断すると、ごくわずかな、測定可能な影響があるが、長い期間中断すると、かなり有害な変化をもたらし得ることが示されている。この理由から、PRPのアリコートを、一定に撹拌した状態で、間欠的に撹拌/混合した状態でまたは定常状態で維持して、保管し、可変撹拌の影響を評価した。さらに、カルシウム流出を減少させることによって血小板活性化を妨害する、環状アデノシン一リン酸レベルの上昇を誘発する天然の血小板阻害剤であるプロスタグランジンE1(PGE1)の添加を含めるために、一定に撹拌した状態の保管条件を導入した。PGE1をPRPに加えると、保管中、血小板の活性化が減少し、一方でin vitro分析中にほとんどのアゴニストへの反応を可能にする。PGE1を、診断用途の標準濃度である10μg/mLの最終濃度のPRPに加えた。冷蔵保管は血小板を活性化させるので、すべてのPRPを室温で保管した。
【0140】
Luckham R100 Rotatest Shaker(図7)を用いて、一定撹拌を必要とする容器を撹拌した。輸血に備えて保管されている血小板で用いられている設定をほぼ模倣するために、プラットフォームは、設定の中間である設定5で回転させた。間欠的に混合されるアリコートは、最初の5日間、09:00〜17:00時の研究室のコアタイムの間、1時間ごとに振盪/逆さにし、週末にかかる6日目および7日目は、静置しておいた。
【0141】
コラーゲン活性化血小板の連続凝集測定
毎日、新たに調製したPRPを分析するときにほぼ同時に、8個の容器の各々からの混合PRPのアリコートを別々に、PAP8血小板凝集計でPRP中10μg/mLの最終濃度のコラーゲンによって活性化させて、凝集パターンを記録した。一旦凝集が完了すると、アリコートを遠心分離して、血小板凝集塊をペレット化し、上清を取り除いて−80℃で凍結させた。これを、2日目〜5日目および8日目に行った。PRPの質と血小板活性化の評価、および自然凝集を進行させながら、毎日血小板計数も行った。血小板計数は、凝集測定の直前に行った。
【0142】
PDGF−BBの上清の分析
保管および保管血小板からの増殖因子の放出を評価するために、代表的なマーカーとしてPDGF−BBの測定を選択した。PDGF−BBは同じ目的の同様の調査で用いられているからであり、ベカプレルミンはPDGF−BBの組換えバージョンであり、PDGF−BBのレベルを分析するための試料は市販されている。
【0143】
上清中のPDGF−Bのレベルは、Human PDGF−BB Platinum ELISA試薬キット(Affymetrix eBioscience,Hatfield,UK)で定量した。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によるPDGF−BBの測定の原則は、図8に表す。
【0144】
保管上清中の放出されたPDGF−Bの定量化で用いる前に、キットを標準曲線直線性および分析精度について評価した。検定の各ステップを手動で行ったが、終点検出、標準曲線作成、試験生データおよび最終結果の算出は、すべてDynex DS2(商標)ELISAアナライザー(Instrumentation Laboratory,Warrington,UK)で行った。
【0145】
献血日のPRPの細胞計数
収集直後、およびコラーゲン誘発血小板凝集前のPRPの血球数を、表1に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
5μg/mLのコラーゲンで活性化されたアリコートは、93%と85%の凝集(平均89%)に達した。10μg/mLのコラーゲンで活性化されたアリコートは、91%と84%の凝集(平均88%)に達した。これにより、倍加の標準コラーゲン濃度に対する活性化/凝集反応に増加がないことが明らかになったが、実験の過程中に血小板を経時劣化させる連続試験のために、10μg/mLのコラーゲン濃度を採用した。
【0148】
保管PRPのコラーゲン誘発凝集:2日目
コラーゲン誘発凝集測定を、各保管状況からのPRPアリコートの二つ組で行った。Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの凝集トレースを図10に、および酸素不透過性ユニバーサル容器に保管されたPRPの凝集トレースを図11に示す。凝集測定前の血小板数(Plt)および各組の最終凝集の平均パーセンテージ(MA)をレジェンドに示す。
【0149】
保管PRPのコラーゲン誘発凝集:3日目
コラーゲン誘発凝集測定を、各保管状況からのPRPアリコートの二つ組で行った。Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの凝集トレースを図12に、および酸素不透過性ユニバーサル容器に保管されたPRPの凝集トレースを図13に示す。凝集測定前の血小板数(Plt)および各組の最終凝集の平均パーセンテージ(MA)をレジェンドに示す。
【0150】
保管PRPのコラーゲン誘発凝集:4日目
コラーゲン誘発凝集測定を、各保管状況からのPRPアリコートの二つ組で行った。Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの凝集トレースを図14に、および酸素不透過性ユニバーサル容器に保管されたPRPの凝集トレースを図15に示す。凝集測定前の血小板数(Plt)および各組の最終凝集の平均パーセンテージ(MA)をレジェンドに示す。
【0151】
保管PRPのコラーゲン誘発凝集:8日目
コラーゲン誘発凝集測定を、各保管状況からのPRPアリコートの二つ組で行った。Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの凝集トレースを図18に、および酸素不透過性ユニバーサル容器に保管されたPRPの凝集トレースを図19に示す。凝集測定前の血小板数(Plt)および各組の最終凝集の平均パーセンテージ(MA)をレジェンドに示す。
【0152】
可変的に保管されたPRP中の経時的な%凝集の変化のプロットを図20〜23に示す。
【0153】
可変的に保管されたPRPにおける血小板の経時的パラメータ
血小板数の計数に加えて、後述するように、Sysmex PocH 100iアナライザーは、他の血小板診断パラメータを生成する。
平均血小板容積(MPV)。
血小板分布幅(PDW)は、血小板容積分布の相対的幅を算出する。
血小板−大細胞比(P−LCR)は、12fLより小さい血小板対12〜30fLの容積を有する血小板の比率である。
【0154】
全血についての文献からの基準範囲は、以下の通りである:
MPV:7.5〜11.5fL
PDW:9.3〜16.0fL
P−LCR:24.8〜41.2%
【0155】
それぞれの日のコラーゲン活性化の直前の可変的に保管されたPRPにおける血小板パラメータを表8に示す。
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
実質的に例外なく、美容および創傷治癒用途のための血漿の使用に関する刊行物は、新鮮に採血されたPRP、または場合によっては、凍結解凍されたPRPの使用を述べている。本調査の目的は、マーカーとしてPDGF−BBを用いて、室温で数日間にわたり保管されたPRPからの増殖因子の放出を評価することであった。PRPの凍結は、血小板に損傷を与え、解凍時に増殖因子の迅速な放出を引き起こすことが知られている。この理由で、凍結PRPは、各適用の直前に解凍できるようにPRPが小分けして凍結されない限り、連続した数日間の使用のために血漿が保管される技術には有用でない。
【0159】
血小板の数とサイズのパラメータに対する保管の影響
血小板数は、2日目に激減を示しその後安定した低下を始めた一定撹拌下の2つのユニバーサル容器を除いて、すべての保管容器および条件において経時的に着実に低下した。血小板パラメータの結果は明らかであるが、この観察について直ちに明快な説明がみつからない。これらの両容器は、すべての分析日において、定常ユニバーサル容器および間欠撹拌ユニバーサル容器よりもPDW、MPVおよびP−LCRの値が低かった。より小さい血小板サイズ、狭い分布幅および低い比率は、より大きな血小板がこれらの2つの容器から欠如していたことを示唆するが、これが事実であり得る理由は不明である。撹拌の強度が高すぎてある程度の活性化が達成され、より反応性である大きな血小板が影響を受けやすいということを示唆していると考えたくなるが、これは、明らかに酸素がより接近する一定に撹拌される2つのNunc(商標)フラスコでは同様でなかった。すべての容器中の血小板数の別の着実な低下は、十分に説明された血小板の保管損傷が主因であるだろう。
【0160】
注目すべきことに、ユニバーサル容器に保管されたPRPからのPDW、MPVおよびP−LCRのすべての結果は、Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPよりも低く、容器誘発効果を示していた。さらに、2日目の血小板パラメータは、Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPよりもユニバーサル容器に保管されたPRP中の新鮮なPRPのパラメータに近かった。5日間までの保管中のMPVおよびPDWのわずかな上昇はこれまでに報告されていたが、Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPでのPDWの結果の著しい程度ほどではなかった。保管PRPにおいてMPVが通常、この期間にわたり著しく上昇しない場合、特に一定に撹拌されたフラスコにおいて、PDWの著しい上昇を伴うこれらのフラスコでの2日目の中程度の上昇は、ある程度の微小凝集塊の形成が生じたことを示唆している。これは、より大きな細胞がより多数存在することを示唆するP−LCRの上昇を説明し、それは微小凝集塊である可能性が高かった。わずか中程度に上昇したMPVは、それらが血小板として計数される大多数として十分に小さいままであったことを示している。興味深いことに、一定に撹拌されたNunc(商標)フラスコでのPDW、MPVおよびP−LCRが経時的に低下した。おそらく経時的な自然凝集の増加により最も大きな凝集塊が血球数アナライザー中に吸引されなかったためであろう。微小凝集塊が形成されるさらなる根拠が、Nunc(商標)フラスコに保管されたPRPの結果の多くでの明らかに低い赤血球数から認められた(データ図示せず)。1日目にはPRP中に赤血球はなく、この計数は、凝集塊の小集団が血小板として計数されるには大きすぎたことに起因した。低い赤血球数が記録されたのはユニバーサル容器に保管されたPRPだけであり、8日目の定常ユニバーサル容器からであり、これはすべてのユニバーサル容器に保管されたPRPのうちで最も高いPDW、MPVおよびP−LCRの値を有した。MPVは、間欠的に撹拌されていた、および定常のNunc(商標)フラスコで経時的に安定しており、これは、低レベルの活性化がただでさえより起こりやすい保管状態で、一定撹拌が自然凝集塊の形成を悪化させたことを示唆している。一定に撹拌されたNunc(商標)フラスコではPGE1を含むフラスコとPGE1を含まないフラスコの間で、またはユニバーサル容器の場合、血小板のパラメータにほとんど差がなく、したがってPGE1は自然凝集を抑制しなかったようである。より高い濃度が必要であったか、またはPGE1が保管PRPに対し十分に安定でないのかもしれない。
【0161】
PDW、MPVおよびP−LCRは、間欠的に撹拌されたユニバーサル容器と定常ユニバーサル容器中よりも、一定に撹拌されたユニバーサル容器中で低かったという、逆の結果がユニバーサル容器に保管されたPRPで認められた。上述のように、一定に撹拌されたユニバーサル容器では、2日目に血小板数、PDW、MPVおよびP−LCRのパラメータに奇妙な低下があり、これは、アナライザーで計数されなかった凝集塊が直ちに、より著しく形成され、その後PDWおよびMPVが経時的に比較的小さく減少したことに起因する可能性がある。一定に撹拌されたNunc(商標)フラスコでのP−LCRの経時的な急落とは対照的に、対応するユニバーサル容器は経時的に穏やかな上昇を示し、低いレベルの凝集塊の形成を示唆する。ある程度の活性化および凝集塊形成が、保管血小板で予想されている。間欠的に撹拌されたユニバーサル容器および定常ユニバーサル容器だけが、2日目にPDW、MPVおよびP−LCRの基礎値を反映し、PDWおよびMPVは予想された漸進的だが小さい上昇を経時的に示した。P−LCRの経時的な上昇はより著しく、これらの容器でもある程度の凝集塊が形成されたことを示唆する。
【0162】
これらの観察を踏まえると、間欠的に撹拌されたユニバーサル容器は、経時的に多くの血小板を完全な状態で維持した。撹拌を1日中断しても血小板には測定可能な損傷が生じないことをHunterらは示しており、したがって研究室のコアタイム中の撹拌の断続、および終夜の24時間未満の中断は、同程度の完全性を維持するのに十分であると考えられる。
【0163】
血小板凝集反応に対する保管の影響
前述のように、本調査においてすべての保管条件下で、経時的に血小板の凝集性の低下が全体的に続いた。予想外の知見は、ユニバーサル容器に保管されたPRPの漸進的な低下とは全く対照的に、2日目およびそれ以降でNunc(商標)フラスコに保管されたPRPの凝集の最終パーセンテージが著しく低下したことである。2日目の一定に撹拌されたユニバーサル容器から以外の血小板数の最小減少は、比較的少ない血小板が凝集塊を形成したこと、および凝集反応が保管された血小板の大多数の活性化の結果であったことを示している。その場合、Nunc(商標)フラスコにおける保管条件は、全体的な血小板の機能に有害であった。
【0164】
未処理ポリスチレンへの血小板粘着は非活性化血小板では通常わずかであるが、血小板保管のためにはポリプロピレンが好ましい材料である。しかし、フィブリノーゲンおよびVWFなどの血漿タンパク質のポリスチレンへの結合は、血小板粘着およびその後の活性化を促進し得る。また、血小板数のわずかな減少は、これが起こらなかったか、または最小限だけ起こったかのいずれかを示唆している。したがって、容器自体は血小板機能を阻害すると思われず、PRP自体の状態に問題の原因がある可能性が高かった。最初は同一のPRP試料において保管により誘発されるそのような著しい差異についての最も可能性の高い説明は、血漿pHのドリフトである。Wattsらは、pHを保持するために閉鎖系下で保管されたPRPは、CO2/空気制御環境下で保管されたPRPよりも血小板機能をより良好に保っていたことを示し、これは後者における空気/液体界面の存在におそらく関連していた。ユニバーサル容器はネジ蓋を有し、それらは凝集測定用のPRPを引き出すために一日1回だけはずされたが、Nunc(商標)フラスコは空気の流れが可能であった。30mLのユニバーサル容器を用いてわずか約8.0mLのPRPを保管したため、それらは、血小板の完全状態を著しく損なわないように次に開放されるまで、「デッドスペース」中に十分な酸素を保持した可能性がある。試料収集のために使用された抗凝固剤がPRPのpHに影響を及ぼすこともあり得る。
【0165】
2種類の保管容器間の凝集測定反応における共通性は、間欠的に撹拌された試料または定常に維持された試料と比較して、一定に撹拌された試料からのPRP中の凝集の最終パーセンテージの低下である。容認されている定説は活性化および細片形成を減少させるために保管血小板を一定に、穏やかに撹拌しなければならないということであるため、これは反直観的である。PRP量と用いた容器に対して撹拌が荒すぎたか穏やかすぎたこと、または一定の動きによって(ユニバーサル容器中でもかなりの空気量が維持されているので)pH変化が誇張されたことはあり得る。
【0166】
PDGF−BBレベルに対する保管の影響
新たに調製されたPRP中のPDGF−BBの放出量は、多数の変数、例えば、抗凝固剤、ドナー全血の血小板数、PRP調製条件、PRP中の血小板数と型および放出を誘発するために使用されるアゴニストの濃度によって影響を受ける。それにもかかわらず、本調査において新たに調製されたPRP中のPDGF−BBレベルの18 734pg/mLは、他の研究者によって報告されているレベルに広く対応した。同様の遠心分離条件から、Gonzalezらは32名のドナーから採取したPRPから9.6〜14.6ng/mLの範囲のPDGF−BBを報告しており、およびCastilloらは5名のドナーから13.0〜32.2ng/mLを報告している。
【0167】
PDGF−BBレベルの著しい低下は、結果が入手できたすべての保管条件下で2日目に観察された。平均パーセンテージ減少は32%であり、間欠的に撹拌されたユニバーサル容器での18%の減少から、定常のユニバーサル容器での42%の減少にわたった。大部分は、PDGF−BBレベルにおいて着実な連続的な減少が続き、一部は、表面上は5日目と8日目までにプラトーに達した。これらの知見の大部分は、血小板分泌能が保管中に低下するので驚くほどではないが、8日目までに、PDGF−BBのかなりのレベルは、その時までに血小板の大部分が死滅するかまたは機能的に不十分になるという予想に反して、残存した。可能性のある説明は、上清中のPDGF−BBは、血小板が経時劣化し膜の完全性が失われたた際に血小板から単に漏出したというものであり得る。大部分の保管条件での血小板数のわずかな減少および一定に撹拌されたユニバーサル容器中での最初の著しい減少後のさらに着実な低下を鑑みて、これは唯一の原因要素ではなさそうである。さらに、血小板が経時的に断片化したならば、MPVにおいて漸進的な減少が認められた可能性があり、これは一定に撹拌されたNunc(商標)フラスコでのみ観察され、他は経時的に安定のままであったか、または上昇した。しかし、微小凝集塊の形成が、膜の断片化からのより微妙な容積減少を隠し得る。一定に撹拌されたNunc(商標)でのそれらのMPVの減少が断片化に起因していたならば、PDWの経時的な同時上昇が予想されただろうが、この場合は逆であった。
【0168】
また、興味深いことには、一定に撹拌されたNunc(商標)フラスコに保管されたPRP中の凝集反応は、2日目以降は比較的少なく、同様に著しいPDGF−BBの減少を伴わなかった。少ない程度ではあるが、対の保管条件の他方でこれは同様だった。上清中のPDGF−BBの一部は血小板放出由来ではないようであり、この説明は、PPP中のPDGF−BBをさらに測定した他の調査から来ている。GonzalezらはPPPで8.8〜12.6ng/mLの範囲を報告したが、Valeriらは1549〜2813pg/mLの範囲を報告した。調査間に明確な相違があるが、血漿PDGF−BBは、分析の前に血小板が洗浄されない限り、血小板放出物中で測定される値に関与する。PPPおよびPRP調製の機械的損傷も、PPP中の遊離PDGF−BBの存在に関与しているだろう。Gonzalezらによる調査のPRPにおいて血小板数は、本調査のドナーPRP中の血小板数と同程度の250×109/Lに調整されたが、Castilloらによる調査からのPRP中の平均血小板数は566×109/Lであった。臨床的観点から、本調査で報告されたコラーゲン活性化PRPからのPDGF-BB値は、臨床診療で用いられるよりも低い血小板数に関連しており、したがって新鮮なPRPからの放出と保管PRPからの放出との間の差異はより大きくなる。また、本調査の目的はPDGF−BB放出の相対的な損失を調べることであり、それは利用できる分析技術の適用を最大にするために、低い血小板数で行わなければならなかった。
【0169】
パラメータの安定性
間欠的に撹拌されるユニバーサル容器に保管された多血小板血漿は、他の条件下で保管されたものよりも、調査されたパラメータにおいてより良好な安定性を維持した。5日目まで、特にNunc(商標)ブラスコに保管されたPRP中の一部の血小板パラメータの著しい変化と比較して、血小板数のわずかな減少と、PDW、MPVおよびP−LCRの上昇とが認められた。定常のユニバーサル容器中の血小板の変化は、血小板数を除いてより大きく、2日目の2つの一定に撹拌されたユニバーサル容器中の血小板数の著しい低下についての明確な説明はない。コラーゲン活性化に対する血小板凝集反応は、上述の理由で、ユニバーサル容器に保管されたPRPよりもNunc(商標)フラスコに保管されたPRPのほうが低かった。経時的なより高い最終パーセンテージの凝集は、PGE1を含まないユニバーサル容器における5日目と8日目の明らかな急上昇以外は、一定に撹拌されたユニバーサル容器中のPRPと比較して、間欠的に撹拌されたユニバーサル容器および定常のユニバーサル容器中のPRPによって達成された。しかし、特にNunc(商標)フラスコに保管されたPRPにおける、凝集の低下(全体的な血小板反応性を表す)は、上清中のPDGF−BBレベルの同様の劇的な減少を伴わなかった。分泌能は経時的に減少したが、PDGF−BBのレベルは、老化する血小板からの漏出物の混合物、機械的損傷および先天性血漿のレベルのためにゼロ近くまでは低下しなかったようである。間欠的に撹拌されるユニバーサル容器に保管されたPRPはより良い全体の安定性を維持していたが、39%の最終凝集を達成したにもかかわらず、実際には8日目に最も低いPDGF−BB値を生じた。重要な考慮点は、本調査が単にPDGF−BB濃度だけを評価し機能は評価しなかったことであり、したがってどのレベルのPDGF−BBが治療的に有効であるか、したがって保管中どの時点でPRPを廃棄すべきかを知ることは不可能である。さらに、PDGF−BB自体が経時的に機能性を消失することもあり、放出のレベルが明らかに高くても、治療的に効果がないこともある。
【0170】
機能を別にした考察では、すべての保管条件下でPRPの活性化からのPDGF−BBレベルは、5日目まで、同様の血小板数を有する新鮮なPRPについてGonzalezらによって報告された範囲内であった。これは保管の可能性に関して有望であり得るが、すべての値は新鮮なPRPの場合よりも著しく低かった。PDGF−BBの機能性についての知識、または他の放出される増殖因子の知識がなくても、新鮮なPRPまたは活性化後の上清のいずれかを凍結することは、より有効な治療生成物を生成する可能性があると思われる。PRP低温保管に関する論議を認めつつ、Roffiらは、事前のアゴニスト活性化なしに凍結解凍されたPRPが、PDGF−AB/BBのレベルの減少にもかかわらず新鮮なPRPの効果に匹敵する、培養細胞に対するin vitroでの効果を達成したことを示した。凍結/解凍のサイクルは、血小板膜を破壊し含有物の放出を誘発することによって代理「活性化剤」として作用する。凍結/解凍PRP中のより低い増殖因子のレベルを鑑みて、アゴニスト誘発性血小板活性化よりも増殖因子の有効性を上げる方法は効率が低い可能性がある。なぜならそれらは細胞質内で遊離しているというよりα−顆粒内に詰められているからである。Duranteらは、新鮮なPRP中の17 904±1346pg/mLのPDGF−BBレベルを報告したが凍結/解凍の3サイクル後でも減少したレベルを報告した。これは、コラーゲン活性化後の上清を凍結することは、より高いレベルの増殖因子を生成し維持する可能性があり、最終生成物から血小板細片を除去する付加価値の可能性を有することを示唆する。
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