【実施例】
【0033】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。本発明は、この発明の要旨の範囲内で、適宜変更して実施することができる。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、例中に示される物性は次の測定方法により測定したものである。
【0034】
[硬度(デュロメーターD)]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で縦120×横75×厚み2mm厚角板を成形し、JIS K7215 デュロメーターD硬さにしたがって測定した。
【0035】
[融点および結晶化温度]
ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q100を使用し、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で40℃から250℃まで加熱し、250℃で3分間保持した後10℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、結晶化温度を測定した。
更に10℃/分の昇温速度で250℃まで加熱した際の融解ピークの頂上温度を測定した。
【0036】
[メルトフローレート]
ASTM D1238にしたがって、ペレットの融点より20℃高い温度、荷重2160gで測定した。
【0037】
[引張破断強度、引張破断伸度]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で、JISK7113 2号ダンベル試験片を成形し、JIS K7113(1995年版)に従って測定した。
【0038】
[屈曲疲労性]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で成形した縦120×横75×厚み2mm厚角から、縦50×横6×厚み2mmの短冊を切り出し、ディマッチャ屈曲疲労試験機を用いて23℃の雰囲気下にて、チャック間距離30mmから20mmの間でストロークさせて破断に至るまでの屈曲回数を測定した。
【0039】
[押出成形性]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、単軸押出成形機を用いて、220〜250℃の温度条件で樹脂ベルトを成形した。ベルトの外観寸法を測定し、
○:ベルト中央部の収縮1%以下、×:ベルト中央部の収縮1%超のランクで評価した。
【0040】
[ポリエステルエラストマ(A−1)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸593部、低融点重合体セグメント(a2)として1,4−ブタンジオール537部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール229部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A−1)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は75であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は25であった。
【0041】
[ポリエステルエラストマ(A−2)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸638部、低融点重合体セグメント(a2)として1,4−ブタンジオール586部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール165部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A−2)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は82であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は18であった。
【0042】
[ポリエステルエラストマ(A−3)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸505部、低融点重合体セグメント(a2)として1,4−ブタンジオール438部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール354部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A−3)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は61であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は39であった。
【0043】
[ポリエステルエラストマ(A−4)の製造方法]
ポリエステルエラストマ(A−1)のペレットを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で48時間回転させながら加熱して固相重縮合を行った。得られたポリエステルエラストマ(A−4)のペレットのメルトフローレートは240℃、荷重2160gでの測定にて2g/10分であった。
【0044】
[ガラス繊維(B)]
日東紡績社製チョップドストランド状のガラス繊維CS3J948を使用した。繊維径約10μm。
【0045】
[結晶核材(C)]
竹原化学工業(株)製ハイトロン(含水珪酸マグネシウム)を使用した。平均粒子径は4μm。
【0046】
[ポリエステル樹脂(D)]
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂であるトレコン1100S(東レ社製)を使用した。
【0047】
[実施例1〜6]
直径45mmのスクリューを有する2軸押出機を用いて、参考例で示したポリエステルエラストマ(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)および必要に応じて結晶核材(C)、ポリエステル樹脂(D)を表1に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。また、元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置してガラス繊維(B)を上記と同じく表1に示す添加量で添加した。加熱温度は250℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を得た。
【0048】
得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、シリンダー温度230℃〜250℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、硬度、引張破断強度、引張破断伸度、耐屈曲疲労試験用の試験片を得た。得られた試験片を用いて樹脂ベルト成形体の代わりとして各種試験を実施した。試験結果は表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4に示した樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体は、優れた屈曲疲労性を示し高い樹脂強度を示した。さらに、押出成形性が良好で、得られた製品に収縮はみられなかった。また、実施例5〜6に示した樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体は、さらに優れた屈曲疲労性を示した。
【0051】
[比較例1〜4]
直径45mmのスクリューを有する2軸押出機を用いて、参考例で示したポリエステルエラストマ(A−1)、(A−2)、(A−3)、および必要に応じて結晶核材(C)、ポリエステル樹脂(D)を表1に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。また、元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置してガラス繊維(B)を上記と同じく表1に示す添加量で添加した。加熱温度は250℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を得た。
【0052】
得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、シリンダー温度230℃〜250℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、硬度、引張破断強度、引張破断伸度、耐屈曲疲労試験用の試験片を得た。得られた試験片を用いて樹脂ベルト成形体の代わりとして各種試験を実施した。試験結果は表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果から明らかなように、本発明の条件を満たさない比較例1〜4の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体は、本発明の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体に比較して、引張破断強さ、耐屈曲疲労性、押出成形性のいずれかが劣っている。比較例1では樹脂強度が不十分であり、比較例2では屈曲疲労性に劣る結果となった。また、比較例3、4では結晶化までの時間が長くなるため、得られた製品で収縮が発生し、寸法規格を満たすことができなかった。