特許第6806596号(P6806596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806596樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物および樹脂ベルト成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806596
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物および樹脂ベルト成形体
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/16 20060101AFI20201221BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20201221BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F16G1/16
   C08K7/14
   C08L67/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-43503(P2017-43503)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-172794(P2017-172794A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-54839(P2016-54839)
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優一
(72)【発明者】
【氏名】植村 裕司
(72)【発明者】
【氏名】常峯 邦夫
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−207926(JP,A)
【文献】 特許第4200396(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/16
C08K 7/14
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が190〜225℃の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物であって、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)を80〜92.99重量%、ガラス繊維(B)を7〜15重量%、結晶核剤(C)0.01〜5.0重量%を含有してなり、かつ融点と結晶化温度の差が25℃以下であり、前記熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物に対し、さらにポリエステル樹脂(D)5〜25重量%を含有することを特徴とする樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)50〜85重量%と、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)15〜50重量%とを含むポリエステルブロック共重合体であることを特徴とする請求項1記載の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶核剤(C)が無機物であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物の融点より20℃高い温度におけるメルトフローレートが1〜10g/10minであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物が成形されてなることを特徴とする樹脂ベルト成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐屈曲性に優れ、樹脂強度が高く、さらに成形加工性に優れた樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物および樹脂ベルト成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位及び/又はポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位をソフトセグメントとするポリエステルブロック共重合体は、強度、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などの機械的性質や、低温、高温特性に優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であることから、自動車、電気・電子部品、消費材などの分野に広く使用されている。
【0003】
これらの特徴のうち強度、柔軟性および耐屈曲性に優れ、成形加工が容易であることから、樹脂ベルト材料として使用されている。樹脂ベルトの一例としては歯付きベルトが挙げられ、歯がギヤに噛合され、ギヤの回転によってベルトが摺動動作を行う構造をもつ。使用時に摺動動作が繰り返されることから、本使用方法においてはベルト強度と耐屈曲疲労性が特に重要である。
【0004】
しかしながら、一般的に樹脂強度を上げると耐屈曲疲労性は低下し、耐屈曲性を上げると樹脂強度が下がるという問題があった。そこで、分子量を上げ樹脂の耐屈曲疲労性を改善し、ベルトを帆布で覆うことで強度を補う方法(例えば、特許文献1)がある。また、熱可塑性エラストマにガラス繊維を添加することで樹脂強度を高める方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−206791号公報
【特許文献2】特開平8−169894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の方法の場合、耐屈曲疲労性が低下する懸念が考えられた。また、ベルト強度は、ベルト成形品の寸法に影響を受けることから、成形時のヒケを防ぐことが重要な課題となっている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、上述した従来技術における問題点を解決し、樹脂強度を保ちながら耐屈曲疲労性を向上させ、また成形性に優れた樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物およびそれらからなる樹脂ベルト成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物は、融点が190〜225℃の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物であって、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)を80〜92.99重量%、ガラス繊維(B)を7〜15重量%、結晶核剤(C)0.01〜5.0重量%を含有してなりかつ融点と結晶化温度の差が25℃以下である。好ましくは、前記熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)50〜85重量%と、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)15〜50重量%とを含むポリエステルブロック共重合体である。
【0009】
さらに好ましくは、前記熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物の融点より20℃高い温度におけるメルトフローレートが1〜10g/10minである。
【0010】
また、本発明の樹脂ベルト成形体は、かかる樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、樹脂強度が高く、耐屈曲疲労性および成形性に優れた樹脂ベルト材料用ポリエステルエラストマ樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について記述する。
【0013】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)は、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)と、主として脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点セグメント(a2)とを構成成分とするポリエステルブロック共重合体であり、高融点結晶性重合体セグメントは、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成されるポリエステルである。
【0014】
前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4' −ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明においては、前記芳香族ジカルボン酸を主として用いるが、この芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4' −ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。さらにジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
【0015】
ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は、好ましくはテレフタル酸、ジメチルテレフタレートであり、より好ましくはテレフタル酸である。
【0016】
前記ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' −ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシ−p−ターフェニル、および4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
【0017】
これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用してもよい。
【0018】
かかる高融点結晶性重合体セグメント(a1)の好ましい例は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸またはジメチルイソフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるものが好ましく用いられる。高融点結晶性重合体セグメント(a1)共重合量は、通常、50〜85重量%、好ましくは60〜80重量%である。
【0019】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)で使用される低融点重合体セグメント(a2)は、必要に応じ脂肪族ポリエーテルを使用することができる。
【0020】
かかる脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましく用いられる。
【0021】
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリエステルエラストマの低融点重合体セグメント(a2)の共重合量は、通常、15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。
【0022】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)は、公知の方法で製造することができる。その具体例としては、例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を溶融重縮合する方法、およびジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を溶融重縮合する方法などのいずれの方法をとってもよい。
【0023】
重縮合で得られた熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)は、次いで固相重縮合してもよい。固相重縮合は、溶融重縮合後にペレット化した熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が融着しない温度で実施するが、通常は140℃〜220℃の温度範囲で行う。固相重縮合の前には、予備結晶化と乾燥工程を経ることが望ましい。また、固相重縮合は、高真空下または不活性気流下で実施する。高真空下の場合は、好ましくは665Pa以下、さらに好ましくは133Pa以下の減圧下で行う。不活性気流下の場合は、代表的には窒素気流下で行うことが好ましく、圧力は特に限定されないが大気圧が好ましい。反応容器としては、回転可能な真空乾燥機や、不活性ガスを流すことのできる塔式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるガラス繊維(B)は、チョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維でありアミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤および/またはビスフェノールAジグリシジルエーテルやノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられる。
【0025】
ガラス繊維(B)の平均繊維径は5〜20μmが好ましい。ガラス繊維(B)の平均繊維長に特に制限はないが、0.1〜20mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましい。
【0026】
ガラス繊維(B)の配合量は、熱可塑性エラストマ(A)100重量部に対して、7〜15重量%である。
【0027】
本発明に用いられる結晶核剤(C)は、溶融加工時に未溶融であり、冷却過程において結晶の核となる得るものであれば、特に限定されないが、無機物が好ましく、中でも板状の充填材と粒状の充填材が好ましく使用される。板状の充填材の具体例としては、タルク、マイカ、ガラスフレークなどが挙げられ、粒状の充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、ガラスビーズなどが挙げられる。
【0028】
結晶核剤(C)の配合量は、熱可塑性エラストマ(A)100重量部に対して、0.01〜5重量%である。
【0029】
また、本発明の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物には、さらにポリエステル樹脂(D)を添加することによりベルト強度を向上させることができる。
【0030】
本発明に用いられるポリエステル樹脂(D)とは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などから選ばれた少なくとも1種の酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種のジオール成分との重縮合によって得られるものであり、具体的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチロールテレフタレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート(PET/I)、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)(PET/I)などのような共重合ポリエステルなどを挙げることができる。これらポリエステル樹脂の中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート・イソフタレート)が好ましく、さらに好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
【0031】
ポリエステル樹脂(D)の配合量は、熱可塑性エラストマ(A)100重量部に対して、5〜25重量%である。
【0032】
また、本発明のポリエステルエラストマ樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、シリコーンオイル等の添加剤を添加することができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。本発明は、この発明の要旨の範囲内で、適宜変更して実施することができる。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、例中に示される物性は次の測定方法により測定したものである。
【0034】
[硬度(デュロメーターD)]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で縦120×横75×厚み2mm厚角板を成形し、JIS K7215 デュロメーターD硬さにしたがって測定した。
【0035】
[融点および結晶化温度]
ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q100を使用し、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で40℃から250℃まで加熱し、250℃で3分間保持した後10℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、結晶化温度を測定した。
更に10℃/分の昇温速度で250℃まで加熱した際の融解ピークの頂上温度を測定した。
【0036】
[メルトフローレート]
ASTM D1238にしたがって、ペレットの融点より20℃高い温度、荷重2160gで測定した。
【0037】
[引張破断強度、引張破断伸度]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で、JISK7113 2号ダンベル試験片を成形し、JIS K7113(1995年版)に従って測定した。
【0038】
[屈曲疲労性]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX−1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で成形した縦120×横75×厚み2mm厚角から、縦50×横6×厚み2mmの短冊を切り出し、ディマッチャ屈曲疲労試験機を用いて23℃の雰囲気下にて、チャック間距離30mmから20mmの間でストロークさせて破断に至るまでの屈曲回数を測定した。
【0039】
[押出成形性]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、単軸押出成形機を用いて、220〜250℃の温度条件で樹脂ベルトを成形した。ベルトの外観寸法を測定し、
○:ベルト中央部の収縮1%以下、×:ベルト中央部の収縮1%超のランクで評価した。
【0040】
[ポリエステルエラストマ(A−1)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸593部、低融点重合体セグメント(a2)として1,4−ブタンジオール537部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール229部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A−1)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は75であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は25であった。
【0041】
[ポリエステルエラストマ(A−2)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸638部、低融点重合体セグメント(a2)として1,4−ブタンジオール586部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール165部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A−2)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は82であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は18であった。
【0042】
[ポリエステルエラストマ(A−3)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸505部、低融点重合体セグメント(a2)として1,4−ブタンジオール438部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール354部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A−3)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は61であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は39であった。
【0043】
[ポリエステルエラストマ(A−4)の製造方法]
ポリエステルエラストマ(A−1)のペレットを回転可能な反応容器に仕込み、系内の圧力を27Paの減圧とし、170から180℃で48時間回転させながら加熱して固相重縮合を行った。得られたポリエステルエラストマ(A−4)のペレットのメルトフローレートは240℃、荷重2160gでの測定にて2g/10分であった。
【0044】
[ガラス繊維(B)]
日東紡績社製チョップドストランド状のガラス繊維CS3J948を使用した。繊維径約10μm。
【0045】
[結晶核材(C)]
竹原化学工業(株)製ハイトロン(含水珪酸マグネシウム)を使用した。平均粒子径は4μm。
【0046】
[ポリエステル樹脂(D)]
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂であるトレコン1100S(東レ社製)を使用した。
【0047】
[実施例1〜6]
直径45mmのスクリューを有する2軸押出機を用いて、参考例で示したポリエステルエラストマ(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)および必要に応じて結晶核材(C)、ポリエステル樹脂(D)を表1に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。また、元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置してガラス繊維(B)を上記と同じく表1に示す添加量で添加した。加熱温度は250℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を得た。
【0048】
得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、シリンダー温度230℃〜250℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、硬度、引張破断強度、引張破断伸度、耐屈曲疲労試験用の試験片を得た。得られた試験片を用いて樹脂ベルト成形体の代わりとして各種試験を実施した。試験結果は表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4に示した樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体は、優れた屈曲疲労性を示し高い樹脂強度を示した。さらに、押出成形性が良好で、得られた製品に収縮はみられなかった。また、実施例5〜6に示した樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体は、さらに優れた屈曲疲労性を示した。
【0051】
[比較例1〜4]
直径45mmのスクリューを有する2軸押出機を用いて、参考例で示したポリエステルエラストマ(A−1)、(A−2)、(A−3)、および必要に応じて結晶核材(C)、ポリエステル樹脂(D)を表1に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。また、元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置してガラス繊維(B)を上記と同じく表1に示す添加量で添加した。加熱温度は250℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物を得た。
【0052】
得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、シリンダー温度230℃〜250℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、硬度、引張破断強度、引張破断伸度、耐屈曲疲労試験用の試験片を得た。得られた試験片を用いて樹脂ベルト成形体の代わりとして各種試験を実施した。試験結果は表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果から明らかなように、本発明の条件を満たさない比較例1〜4の熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体は、本発明の樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物から得られた樹脂ベルト成形体に比較して、引張破断強さ、耐屈曲疲労性、押出成形性のいずれかが劣っている。比較例1では樹脂強度が不十分であり、比較例2では屈曲疲労性に劣る結果となった。また、比較例3、4では結晶化までの時間が長くなるため、得られた製品で収縮が発生し、寸法規格を満たすことができなかった。