(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施形態としてのパーキングロック機構1について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態としてのパーキングロック機構1の概要構成を説明するための斜視図であり、
図2は、パーキングロック機構1の一部を拡大して示した斜視図、
図3は、後述するパーキングロッド4とカム部材6の構造を説明するための断面図である。
【0021】
パーキングロック機構1は、車両における自動変速機構を備えた動力伝達装置に設けられている。本例では、動力伝達装置は車両において縦置きされており、駆動軸は軸方向が車両の前後方向に略一致されている。
車両においては、運転者等がP(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジの切り替え操作を行うためのシフトレバーLが設けられている(
図1参照)。Pレンジは、車両を停止させておくためのレンジ、Rレンジは車両を後進(後退)走行させるためのレンジ、Nレンジはエンジン等の動力源からの駆動軸への動力伝達を遮断するレンジ、Dレンジは車両を前進走行させるためのレンジである。PレンジとNレンジは非走行レンジに相当し、RレンジとDレンジは走行レンジに相当する。
シフトレバーLに対しては、P、R、N、Dの各レンジを選択状態とするためのシフト位置がそれぞれ定められており、以下、特にPレンジを選択状態とするためのシフト位置のことを「パーキング位置」と表記する。運転者等は、シフトレバーLをパーキング位置に変位させることで、パーキングロック機構1において後述するパーキングギヤ2をロック状態とすることができる。また、シフトレバーLをパーキング位置とは異なるシフト位置に変位させることで、パーキングギヤ2のロック状態を解除することができる。
【0022】
パーキングロック機構1は、駆動軸に連結されたパーキングギヤ2と、シフトレバーLの変位に機械的に連動して回転されるマニュアルシャフト3と、シフトレバーLのパーキング位置への変位に機械的に連動して変位されるパーキングロッド4と、パーキングギヤ2と噛合される係止歯5aを有するパーキングポール5と、パーキングロッド4の変位に基づく駆動力をパーキングポール5に対して伝達するカム部材6と、カム部材6及びパーキングポール5を支持するためのサポート部材7と、パーキングポール8を付勢するリターンスプリング8と、パーキングロッド4の変位に基づく駆動力をカム部材6に対して伝達する弾性部材9とを備えている(
図1及び
図2参照)。
なお、本例のパーキングロック機構1は、摺接部材10、収容部11、及び付勢部材12も備えているが、これらについては後に改めて説明する。
【0023】
図1では、車両における上記した動力伝達装置のケースCを示している。図中では、ケースCの全体のうち一部のみを抽出して示しているが、本例のパーキングロック機構1においては、少なくともパーキングギヤ2、パーキングロッド4の一部(後述する第一フランジ部4a及び第二フランジ部4bを含む一部)、パーキングポール5、カム部材6、サポート部材7、及びリターンスプリング8はケースC内に収容されている。
【0024】
パーキングギヤ2は、ケースCに支持された所定のシャフトa1に対して取り付けられ、シャフトa1と一体に回転する(
図1及び
図2参照)。シャフトa1は、駆動輪と連結された不図示の駆動軸に対して例えば所定のギヤを介して連結されている。つまり、パーキングギヤ2は駆動軸と連結されている。駆動軸は、デファレンシャル機構等を介して駆動輪に連結されている。
なお、パーキングギヤ2は駆動軸に対して直接的に取り付けられる等、パーキングギヤ2と駆動軸との連結態様については特に限定されない。
【0025】
パーキングポール5は、一端部(根元部)がケースCに支持された揺動軸a2に取り付けられて揺動自在とされている。係止歯5aは、パーキングポール5における上記の一端部と他端部との間に位置された凸部として形成されており、上記の揺動により、パーキングギヤ2に対する係止歯5aの噛合/噛合解除が切り替えられる。
以下、係止歯5aがパーキングギヤ2に噛合している状態でのパーキングポール5の位置を「ロック位置」、パーキングギヤ2と係止歯5aとの噛合が解除された状態でのパーキングポール5の位置を「ロック解除位置」と表記する。
また、パーキングポール5のロック解除位置からロック位置への揺動方向を「ロック方向」、ロック位置からロック解除位置への揺動方向を「ロック解除方向」と表記する。
【0026】
リターンスプリング8は、パーキングポール5をロック解除方向に付勢している。
【0027】
パーキングロッド4は、略棒状の部材とされ、一端部がマニュアルシャフト3側に取り付けられ、マニュアルシャフト3の回転に機械的に連動して軸方向に変位される。シフトレバーLがパーキング位置に向けて変位されるとき、パーキングロッド4は
図1の矢印Dpにより表す方向に変位される。本例では、矢印Dpの方向は車両の前方向に略一致している。
パーキングロッド4の他端部には、第一フランジ部4aと第二フランジ部4bとが形成されている(
図1、
図2A、及び
図3A参照)。
図3Aに示すように、第二フランジ部4bは、パーキングロッド4における他端に位置され、第一フランジ部4aは第二フランジ部4aよりもパーキングロッド4の一端側に位置されている。
【0028】
カム部材6は、斜面6aを有する部材とされ、パーキングロッド4の軸方向に貫通された貫通孔6bが形成されている(
図1、
図2A、及び
図3A参照)。
図3Bに示すように、カム部材6は、貫通孔6bにおいてパーキングロッド4における第一フランジ部4aと第二フランジ部4bとを連結する棒状部分が挿通されて、パーキングロッド4に取り付けられている。このような取り付けにより、カム部材6はパーキングロッド4の軸方向に摺動自在とされている。このとき、カム部材6は、第一フランジ部4aによって軸方向への移動範囲が規制される。
【0029】
さらに、このように取り付けられたカム部材6と第二フランジ部4bとの間に、例えばコイルスプリングによる弾性部材9が挿入されている(
図3B参照)。具体的に、コイルスプリングとしての弾性部材9は、一端側がカム部材6と当接し、他端側が第二フランジ部4bと当接した状態で内周側にパーキングロッド4が挿通されている。弾性部材9は、パーキングポール5がロック解除位置にある状態では、自由長(自然長)、若しくは自由長よりも圧縮された状態でカム部材6と第二フランジ部4bとの間に挿入されている。
【0030】
ここで、カム部材6の斜面6aは、パーキングロッド4の他端側(第二フランジ部4b側)に向かって徐々に貫通孔6bの中心軸からの距離が大きくなるように形成されている。本例では、車両の上下左右方向を基準としたときに、斜面6aは後上がりの斜面とされている。
接触面6cは、斜面6aよりも第一フランジ部4a側に位置され、ロック解除位置にあるパーキングポール5の先端部が当接される。
【0031】
サポート部材7は、ケースCに取り付けられ、パーキングロッド4に取り付けられたカム部材6を支持するためのカムサポート部7aと、パーキングポール5を支持するためのポールサポート部7bとを有している(
図1及び
図2A参照)。
カムサポート部7aは、サポート部材7において略半円形に凹んだ部分とされ、カム部材6は、カムサポート部7aに当接することでサポート部材7により支持されている。ポールサポート部7bは、カムサポート部7aに隣接する凸部として形成され、先端部においてロック解除位置にあるパーキングポール5が当接される。
【0032】
パーキングロック機構1においては、シフトレバーLがパーキング位置に変位されると、これに連動してマニュアルシャフト3が回転され、該回転に応じてパーキングロッド4が矢印Dp方向に変位される。そして、パーキングロッド4の該変位に応じ、カム部材6に対して弾性部材9を介して矢印Dp方向への駆動力が印加される。カム部材6が矢印Dp方向に駆動されると、カム部材6における接触面6cと当接していたパーキングポール5の先端部が斜面6a上を摺動し、これによりパーキングポール4が前述したロック方向に揺動されることで係止歯5aがパーキングギヤ2に近接する方向に変位される。このように変位される係止歯5aがパーキングギヤ2に噛合されることで、パーキングギヤ2がロックされる、すなわちパーキングギヤ2の回転が規制され、駆動輪の回転も規制される。
【0033】
一方、シフトレバーLがパーキング位置から異なるレンジの位置に変位されると、マニュアルシャフト3が上記とは逆方向に回転され、パーキングポール4が矢印Dpとは逆方向に変位される。これに応じ、カム部材6としても矢印Dpとは逆方向に変位され、斜面6a上に位置されていたパーキングポール5の先端部が接触面6c上に戻される。すなわち、パーキングポール5は前述したロック解除方向に揺動するものであり、これによって係止歯5aがパーキングギヤ2から離隔される方向に変位されてパーキングギヤ2のロック状態が解除される。
【0034】
ここで、シフトレバーLがパーキング位置に変位された際には、エンジン等の動力源から駆動軸に対する動力伝達が断絶されることで、駆動軸が捩り戻しの力により回転され、パーキングギヤ2が回転する場合がある。このようにパーキングギヤ2が回転される下で、シフトレバーLの操作に応じてパーキングギヤ2に係止歯5aが飛び込むと、係止歯5aがパーキングギヤ2側の歯のエッジ部と接触した際にその衝撃が大きくなり、比較的大きな衝突音を生じさせる虞がある。また、パーキングギヤ2が回転している分、上記の接触によってはパーキングギヤ2と係止歯5aの摩耗が助長され、パーキングロック機構1の寿命低下を招来する虞がある。
本例のように動力伝達装置が縦置きとされている場合、駆動軸が比較的長くなるため、走行レンジの選択状態で車両が停止しているときの駆動軸における捩り力の蓄積量が多くなり、動力伝達が断絶された際のパーキングギヤ2の回転量も大きくなる。つまりその分、係止歯5aがパーキングギヤ2に衝突した際の衝撃は大きくなり、衝突音や摩耗の発生が顕著となる虞がある。
【0035】
そこで、実施形態のパーキングロック機構1においては、パーキングロッド4の変位に対してパーキングポール5の変位を機械的に遅延させる遅延手段として、摺接部材10、収容部11、及び付勢部材12を設けている(
図1、
図2A及び
図2B参照)。
なお、
図2Bは、
図2Aに示す切断面Xにおいてパーキングポール5、摺接部材10、収容部11、及び付勢部材12を切断した様子を表している。
【0036】
収容部11は、パーキングポール5の揺動軸a2に平行な方向において、パーキングポール5と対向する位置に設けられ、パーキングポール5と対向する側の面の一部が開口され、該開口が収容口11aとして形成されている。本例では、収容部11はケースCの一部として形成されている。
【0037】
摺接部材10は、一部が収容口11a内に収容され、該収容された状態では外面の一部が収容部11の内側面(収容口11aとの界面)に対して摺動自在とされている。該内側面に対する摺動に伴い、摺接部材10は収容口11aの開口方向に平行な方向(つまり揺動軸a2に平行な方向)に変位される。
以下、揺動軸a2に平行な方向に関して、収容部11からパーキングポール5に向かう方向を「ポール側方向」と表記し、その逆方向を「収容部側方向」と表記する。
【0038】
摺接部材10は、第一摺接面10aと第二摺接面10bとを有している。第二摺接面10bは、摺接部材10の先端面(ポール側方向の端面)として形成され、第一摺接面10aは、第二摺接面10bに連接し、収容部側方向に向けて摺接部材10の厚みを徐々に厚くする方向に傾斜した斜面として形成されている。
なお、摺接部材10としては、例えば鉄、樹脂、カーボン等の耐摩耗性に優れた材料により構成することが望ましい。
【0039】
付勢部材12は、例えばコイルスプリングとされ、収容口11a内において付勢部材12よりも収容部側方向に配置されている。本例では、付勢部材12は一端が摺接部材10の収容部側方向の端部と固着され、他端がケースC側に固着されている。
付勢部材12による摺接部材10の付勢方向は、ポール側方向とされている。
【0040】
ここで、実施形態のパーキングロック機構1においては、パーキングポール5がロック解除位置にある状態では、パーキングポール5の一部が斜面としての第一摺接面10aに当接するように摺接部材10が位置決めされている。この点、及び上記の付勢方向を考慮すると、この場合の付勢部材12は、摺接部材10の第一摺接面10a(斜面)がパーキングポール5に対して押圧されるように摺接部材10を付勢する部材であると換言できる。
また、摺接部材10は、ロック方向に向けて変位するパーキングポール5に対して該変位の方向とは逆方向の力を作用させる部材として機能する。
【0041】
本実施形態において、弾性部材9としてのコイルスプリングのバネ定数は、付勢部材12としてのコイルスプリングのバネ定数よりも大きくされている。
【0042】
図4及び
図5を参照して、パーキングロック機構1の動作について説明する。なお、
図4及び
図5では、各分図においてパーキングロッド4、パーキングポール5、カム部材6、弾性部材9、摺接部材10、収容部11、及び付勢部材12をそれぞれ断面視により模式的に表している。
【0043】
図4Aは、シフトレバーLがパーキング位置以外のレンジに位置されている状態を表している。この場合、パーキングポール5はロック解除位置にあり、カム部材6における当接面6cと摺接部材10における第一摺接面10aとに当接している。
【0044】
図4B乃至
図5Bは、シフトレバーLがパーキング位置に変位されるまでの過程における各部の動作遷移を表している。
先ず、シフトレバーLのパーキング位置に向けての変位が開始され、パーキングロッド4の矢印Dp方向への変位が開始されたタイミングでは、
図4Bに示すように、パーキングロッド4は変位されるものの、カム部材9の位置はほぼ不変とされる。これは、パーキングポール5が摺接部材10を介して付勢部材12によってロック解除位置方向に付勢されていることに起因して、カム部材6における斜面6aとパーキングポール5との間に摩擦抵抗が生じるためである。このような摩擦抵抗に起因して、
図4Bの状態では、パーキングロッド4の変位に対しては弾性部材9が撓むことになり、カム部材6の位置はほぼ不変とされる。その結果、パーキングポール5としてもロック解除位置にほぼ止まった状態を維持する。
【0045】
図4Bに示す状態からパーキングポール4がさらに変位されると、
図4Cに示すように弾性部材9の撓み度合い(圧縮度合い)が高まり、これに起因してカム部材6の変位が開始され、パーキングポール5が斜面6a上を摺動してロック方向に変位される。パーキングポール5がロック方向に変位される過程では、摺接部材10における第一摺接面10aにおいてもパーキングポール5が摺動してき、これと同時に摺接部材10全体が付勢部材12による付勢力に抗して収納部側方向に後退されていく。
【0046】
図4Cに示す状態からさらにパーキングポール4が変位されると、
図5Aに示すように、パーキングポール5が第一摺接面10aを摺動しきることで、第二摺接面10bがパーキングポール5における収容部側方向の端面に対して当接された状態となる。
このとき、付勢部材12により、第二摺接面10bはパーキングポール5側に押し当てられている。
【0047】
図5Bは、シフトレバーLのパーキング位置への変位が完了した際の様子を示している。
上記のように第二摺接面10bのパーキングポール5に対する当接が開始された以降、シフトレバーLのパーキング位置への変位が完了するまでの間は、パーキングポール5が第二摺接面10b上を摺動し、付勢部材12の後退は停止される。この間、第二摺接面10bは、付勢部材12によってパーキングポール5側に押し当てられ続ける。
【0048】
上記動作から理解されるように、摺接部材10は、シフトレバーLのパーキング位置への変位が完了して係止歯5aがパーキングギヤ2に噛合されるまでの間、パーキングポール5に対する摺接状態を継続するようにされている。
これにより、仮に係止歯5aがパーキングギヤ2の歯のエッジ部に接触しても、パーキングポール5が摺接部材10及び付勢部材12によって制震される。このため、係止歯5aのパーキングギヤ2側への衝突によりパーキングポール5が振動することに伴うパーキングポール5の他部品への衝突、特にポールサポート部7aへの衝突に起因し、二次的な衝突音(係止歯5aとパーキングギヤ2との衝突音とは別途の衝突音)が発生してしまうことの防止を図ることができる。
【0049】
ここで、実施形態のパーキングロック機構1においては、
図4Bで説明したような弾性部材9の撓みが生じる分、パーキングロッド4に対するパーキングポール5の変位が遅延される。
これにより、パーキングポール5の係止歯5aがパーキングギヤ2に飛び込むタイミングを、パーキングギヤ2の捩り戻し回転が発生するタイミングよりも遅延させることができ、パーキングギヤ2の捩り戻し回転が収束してから、又は該回転が収束する間際に係止歯5aが飛び込むようにすることができる。
従って、係止歯5aがパーキングギヤ2側の歯のエッジ部と接触した際の衝撃を緩和することができ、係止歯5aとパーキングギヤ2との衝突音の抑制、及び係止歯5aとパーキングギヤ2の摩耗の抑制によるパーキングロック機構1の長寿命化を図ることができる。
【0050】
ここで、パーキングロック機構1では、パーキングロッド4の変位に基づく駆動力をパーキングポール5に伝達するための伝達部(対ポール伝達部)として、弾性部材9を介した動力伝達を行う構成を採っているが、これにより、パーキングロック状態を確実に実現することができる。
仮に、上記の伝達部において弾性部材9を介した動力伝達を行わないとすると、
図6に示すように、係止歯5aとパーキングギヤ2の歯頭同士が当接するタイミングでパーキング位置へのシフト操作が行われた場合には、シフトレバーLを完全にパーキング位置まで変位させることができない上に、パーキングロック状態も得られない。
これに対し、弾性部材9を介した動力伝達とすれば、
図6に示す状態であっても弾性部材9が撓むことによりシフトレバーLを完全にパーキング位置まで変位させることができると共に、その後、何らかの要因でパーキングギヤ2が回転し係止歯5aがパーキングギヤ2の歯間に位置されることで、弾性部材9の撓みが戻って係止歯5aが該歯間に飛び込み、パーキングギヤ2を確実にロック状態とすることができる。
【0051】
なお、上記では、パーキングロッド4の変位中にパーキングポール5が変位されない不感帯の期間が生じる例を挙げたが、該不感帯の期間を設けることは必須ではなく、パーキングポール5の変位速度を、摺接部材10等による遅延手段を設けない従来構成の場合よりも遅くすることで、係止歯5aがパーキングギヤ2に飛び込むタイミングを従来構成よりも遅延させる手法を採ることもできる。つまり、本発明において、パーキングロッド4の変位に対してパーキングポール5の変位を遅延させることには、このようにパーキングポール5の変位速度を遅らせることも含まれる。
【0052】
また、パーキングロック機構1において、摺接部材10としては、弾性変形可能に構成することもできる。
摺接部材10を弾性変形可能に構成した場合、上記で説明したパーキングポール5の変位を遅延させる作用、及びパーキングポール5を制震させる作用とを実現するにあたって第一摺接面10aと第二摺接面10bの二つの面を設けることは必須でない。例えば、摺接部材10の先端部(ポール側方向の端部)を弾性変形可能な半球状の部位として構成することで、上記二つの作用を実現することができる。
また、摺接部材10を弾性変形可能に構成した場合は、付勢部材12を省略することもできる。
【0053】
また、斜面としての第一摺接面10aを有する摺接部材10については、収容口11aが略円筒状に形成され摺接部材10の収容部側方向の端部としても円筒形状に形成された場合に、パーキングポール5の揺動に伴って摺接部材10が収容口11aの軸周り方向に回転されてしまう虞がある。すなわち、該回転に伴い、ロック解除位置にあるパーキングポール5が適正に第一摺接面10aに当接されない状態となり、動作不具合を来す虞がある。
そこで、収容口11aや摺接部材10の収容部側方向の端部の形状について、例えば三角柱形状や四角柱形状とする等、上記の回転を防止する対策を採ることができる。或いは、摺接部材10の先端部を例えば円錐台形状に形成するなどし、摺接部材10が何れの回転角であっても、ロック解除位置にあるパーキングポール5が斜面に相当する面に当接されるように対策することもできる。
【0054】
また、パーキングロッド4の変位に対してパーキングポール5の変位を遅延させるにあたり、摺接部材10を設けることは必須でない。
例えば、
図7に示すように、弾性部材9に加えて弾性部材9’を設けた構成が考えられる。弾性部材9’は、弾性部材9よりも第二フランジ部4b寄りに配置された弾性部材(例えばコイルスプリング)とされ、バネ定数の関係は「弾性部材9>弾性部材9’」とされる。
このようにバネ定数が小さい弾性部材9’が追加されることで、パーキングロッド4の変位初期段階においては主として弾性部材9’が撓み、該撓みに応じてパーキングポール5の変位が遅延される。この結果、係止歯5aがパーキングギヤ2に飛び込むタイミングを遅延させることができる。
【0055】
以上で説明したように、実施形態のパーキングロック機構(同1)は、車両におけるパーキングロック機構であって、駆動軸に連結されたパーキングギヤ(同2)と、シフトレバー(同L)のパーキング位置への変位に連動して変位されるパーキングロッド(同4)と、パーキングギヤと噛合される係止歯を有するパーキングポール(同5)と、パーキングロッドの変位に基づく駆動力を弾性部材を介してパーキングポールに伝達する対ポール伝達部(第二フランジ部4a、弾性部材9、カム部材6)と、係止歯がパーキングギヤと噛合される際の位置であるロック位置に向けてパーキングポールが変位される際にパーキングポールに当該変位の方向とは逆方向の力を作用させて弾性部材を撓せることで、パーキングロッドの変位に対してパーキングポールの変位を遅延させる遅延手段(例えば摺接部材10、収容部11、付勢部材12)と、を備えている。
【0056】
これにより、シフトレバーのパーキング位置への変位に応じてパーキングポールの係止歯がパーキングギヤに飛び込むタイミングを、パーキングギヤの捩り戻し回転が発生するタイミングよりも遅延させることが可能とされる。
従って、パーキングギヤの捩り戻し回転が収束してから、又は該回転が収束する間際に係止歯が飛び込むようにすることが可能とされるため、係止歯がパーキングギヤ側の歯のエッジ部と接触した際の衝撃を緩和でき、係止歯とパーキングギヤとの衝突音の抑制を図ると共に、パーキングロック機構の長寿命化を図ることができる。
【0057】
また、実施形態のパーキングロック機構においては、遅延手段は、ロック位置に向けてパーキングポールが変位される際にパーキングポールが摺接されてパーキングポールに逆方向の力を作用させる摺接部材(同10)を有している。
【0058】
これにより、パーキングポールがロック位置に向けて変位される際には、摺接部材がパーキングポールの変位に対する抵抗成分として機能し、該抵抗成分に起因して対ポール伝達部の弾性部材が撓み、該撓みによってパーキングポールの変位が遅延される。
パーキングポールの変位を遅延させるために既存構成に対し少なくとも摺接部材を追加すればよく、衝突音の抑制及びパーキングロック機構の長寿命化を図るにあたっての構成を簡易化でき、コスト削減が図られる。
【0059】
さらに、実施形態のパーキングロック機構においては、遅延手段は、係止歯がパーキングギヤに噛合されるまでの間、パーキングポールに対する摺接部材の摺接状態を継続している。
【0060】
これにより、係止歯がパーキングギヤ側の歯のエッジ部に接触しても、パーキングポールが摺接部材によって制震される。
従って、係止歯のパーキングギヤ側への衝突によりパーキングポールが振動して他部品に衝突してしまうことによる二次的な衝突音の発生防止を図ることができる。すなわち、衝突音抑制効果を高めることができる。
【0061】
また、実施形態のパーキングロック機構においては、摺接部材は、ロック位置に向けてパーキングポールが変位される際にパーキングポールが摺接される斜面(第一摺接面10a)を有し、遅延手段は、斜面がパーキングポールに対して押圧される方向に摺接部材を付勢する付勢部材(同12)を有している。
【0062】
上記の斜面により、パーキングポールがロック位置に向けて変位される際には、摺接部材は、パーキングポールの変位に伴ってパーキングポールから遠ざかる方向に後退される。そして、パーキングポールが斜面を摺接しきった後は、上記の付勢部材により、摺接部材の先端部がパーキングポールに押し当てられる。すなわち、係止歯がパーキングギヤに噛合される際には、摺接部材の先端部がパーキングポールに押し当てられている状態とすることが可能とされる。
これにより、係止歯がパーキングギヤ側に衝突した際におけるパーキングポールの制震効果を高めることが可能とされ、従って、上記した二次的な衝突音の発生防止効果をより高めることができる。
【0063】
さらに、実施形態のパーキングロック機構は、車両に縦置きされた動力伝達装置に設けられている。
【0064】
縦置きの動力伝達装置においては駆動軸が長く、駆動軸の捩り戻し回転に伴うパーキングギヤの回転量も多くなり、衝突音や摩耗の発生が顕著となる虞がある。
従って、本発明の遅延手法を適用することが効果的である。
【0065】
なお、本発明は上記で説明した具体例に限定されるものではなく、多様な変形例が考えられる。
例えば、パーキングロック機構を構成する各部の形状や配置位置関係等については
図1乃至
図3で例示したものに限定されず、多様に考えられる。
また、本発明は車両に横置きされた動力伝達装置にも好適に適用できる。