(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、しわを矯正するために、半径の小さいヒートローラを用いるので、乾燥効率が低下し、乾燥能力が低下する問題がある。また、従来の乾燥装置において、乾燥能力を向上させるために半径の小さいヒートローラを多数配置しているが、こうすることで装置全体の構造が複雑になるうえに、各ヒートローラのメンテナンスも複雑になる問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、乾燥能力を向上し、しわの発生を低減する乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、インクが付着した印刷媒体に対して乾燥処理を行う乾燥装置であって、印刷媒体が巻きつけられるヒートローラと、前記ヒートローラよりも直径の小さい小径ローラと、を備え、前記小径ローラは前記ヒートローラから所定の間隔を置いて配置され、前記印刷媒体は、前記ヒートローラに巻きつけられた後、途中で前記小径ローラに巻きつけられ、その後再び前記ヒートローラに巻きつけられることを特徴とするものである。
【0008】
上述した発明によれば、インクが付着した印刷媒体がヒートローラに巻きつけられることで、印刷媒体の温度が上昇しインクが乾燥し始める。その後、途中で一旦ヒートローラよりも直径の小さい小径ローラに印刷媒体が巻きつけられることで、曲率の大きなローラに接触することになる。そしてこの曲率が大きなローラに巻きつけられている間に乾燥が進むことにより、印刷媒体に発生したしわを延ばし矯正することができる。しわが矯正された印刷媒体は、ヒートローラに当初巻きつけられた印刷媒体よりも乾燥が促進しているのでしわが発生しにくい。この状態で再び同一のヒートローラに巻きつけられるので、インクおよび印刷媒体を乾燥することができる。また、ヒートローラを用いることで印刷媒体に直接接触して印刷媒体の温度を上げることができるので、印刷媒体の表面だけでなく内部の温度も上げることができる。これにより、印刷媒体の内部に浸み込んだインクも乾燥することができる。ヒートローラよりも直径の小さい小径ローラをしわ矯正用ローラとしているので、ヒートローラの曲率は小さくてもよい。これにより、乾燥効率の向上としわの矯正とを両立することができる。また、ヒートローラを複数個備えなくてよいので、装置の構造やヒートローラのメンテナンスを簡易にすることができる。
【0009】
また、本発明において、前記印刷媒体は、所定の温度に達した後飽和温度に達するまでに前記小径ローラに巻きつけられることが好ましい。
【0010】
印刷媒体が所定の温度に達した後にヒートローラから離れて、小径ローラに巻きつけられるので、十分に熱された印刷媒体からインクへ熱が伝動してインクの乾燥が進む。この状態で小径ローラによりしわが矯正されるので、しわを矯正している間もインクの乾燥が進むため、いったん延ばしたしわが後にまた元に戻ってしまうのを低減することができる。また、印刷媒体が飽和温度に達するまでに小径ローラに巻きつけられるので、印刷媒体の乾燥が終わった後に小径ローラに巻きつけられることがない。これにより、しわが印刷媒体に残るのを防止することができる。
【0011】
また、本発明において、側面視で、前記印刷媒体が最初に前記ヒートローラに接触する点と前記印刷媒体が最後に前記ヒートローラに接触する点とを結ぶ線分の中点に直交する直線上に前記小径ローラが配置されることが好ましい。
【0012】
小径ローラを、側面視で、前記印刷媒体が最初に前記ヒートローラに接触する点と前記印刷媒体が最後に前記ヒートローラに接触する点とを結ぶ線分の中点に直交する直線上に配置することで、印刷媒体がヒートローラによる加熱工程のちょうど中間地点に小径ローラが配置される。これにより、小径ローラに巻かれる印刷媒体は、その温度がある程度上昇しているのでインクの乾燥を促進することができ、小径ローラによりしわを矯正した後に再びしわが発生するのをより低減することができる。
【0013】
また、本発明において、前記ヒートローラと前記小径ローラとの間を搬送される印刷媒体を乾燥する非接触式乾燥器を備えることが好ましい。
【0014】
ヒートローラから離れた印刷媒体を非接触式乾燥機により乾燥させることができるので、乾燥能力を向上させることができる。また、小径ローラから離れた印刷媒体を非接触式乾燥機により乾燥させるので、しわが矯正された状態で乾燥を促進することができ、しわが再発生するのを防止することができる。また、ヒートローラと小径ローラの間で印刷媒体が直線になる区間が生じるので、その直線区間に沿ってパネル状の非接触式乾燥機を効果的に配置できる。
【0015】
また、本発明において、前記小径ローラは前記ヒートローラの外周に沿って移動可能であることが好ましい。
【0016】
小径ローラがヒートローラと所定間隔を保ちながらヒートローラの外周に沿って移動可能であるので、印刷媒体の種類および搬送速度に応じて小径ローラの位置を変えることができる。これにより、しわの矯正に最も好ましい位置に小径ローラを配置することができ、印刷物の品質を向上することができる。
【0017】
また、本発明において、前記ヒートローラと前記小径ローラとに接触する熱伝達ローラを備えていてもよい。
【0018】
ヒートローラと小径ローラとに接触する熱伝達ローラを備えることで、ヒートローラの熱を熱伝達ローラを介して小径ローラに伝えることができる。これにより、小径ローラにより印刷媒体を乾燥させることができ、乾燥効率を向上することができる。また、ヒートローラによる駆動力が熱伝達ローラを介して小径ローラにも伝達されるので、小径ローラを駆動ローラとして機能することができる。
【0019】
また、本発明において、前記小径ローラを前記ヒートローラの外周に沿って少なくとも2個以上備えていてもよい。
【0020】
ヒートローラと所定間隔を保ちながらヒートローラの外周に沿って小径ローラを少なくとも2個以上備えることで、印刷媒体の種類および搬送速度に応じて、巻きつける小径ローラを選択することができる。これにより、最適な小径ローラの位置を選択することができるので、しわの再発生を低減することができ、印刷物の品質向上につながる。
【0021】
また、本発明において、前記小径ローラとして第1小径ローラと第2小径ローラとを2個備えられ、前記印刷媒体は、前記ヒートローラに巻きつけられた後、途中で第1小径ローラに巻きつけられ、その後、第2小径ローラに巻きつけられ、その後、再び前記ヒートローラに巻きつけられ、第1小径ローラと第2小径ローラとの間を搬送される印刷媒体を乾燥する非接触式乾燥器を備えていてもよい。
【0022】
ヒートローラにより印刷媒体が加熱された後に、第1小径ローラによりしわが矯正される。その後にさらに非接触式乾燥機により印刷媒体が乾燥されるので、印刷媒体およびインクの乾燥が促進される。この状態で第2小径ローラにより再びしわの矯正がされて、再びヒートローラにより印刷媒体が加熱されるので、しわの再発生をより低減することができ、印刷物の品質を向上することができる。また、ヒートローラと小径ローラの間で印刷媒体が直線になる区間が生じるので、その直線区間に沿ってパネル状の非接触式乾燥機を効果的に配置できる。
【0023】
また、上述した乾燥装置を備える印刷装置であることが好ましい。
【0024】
印刷装置が上述した乾燥装置を備えることで、印刷媒体のしわを低減し、インクおよび印刷媒体の乾燥効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る乾燥装置によればインクが付着した印刷媒体がヒートローラに巻きつけられることで、印刷媒体の温度が上昇しインクが乾燥し始める。その後、途中で一旦ヒートローラよりも直径の小さい小径ローラに巻きつけられ、曲率の大きなローラに接触している間に乾燥が進むことで印刷媒体に発生したしわを延ばし矯正することができる。しわが矯正された印刷媒体は、ヒートローラに当初巻きつけられた印刷媒体よりも乾燥が促進しているのでしわが発生しにくい。この状態で再び同一のヒートローラに巻きつけられるので、インクおよび印刷媒体を乾燥することができる。また、ヒートローラを用いることで印刷媒体に直接接触して印刷媒体の温度を上げることができるので、印刷媒体の表面だけでなく内部の温度も上げることができる。これにより、印刷媒体の内部に浸み込んだインクも乾燥することができる。ヒートローラよりも直径の小さい小径ローラをしわ矯正用ローラとしているので、ヒートローラの曲率は小さくてもよい。これにより、乾燥効率の向上としわの矯正とを両立することができる。したがって、乾燥能力を向上し、しわの発生を低減でき、かつ構造やメンテナンスが簡易な乾燥装置を提供することができる。また、かかる乾燥装置を備えた印刷装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。
図1は、実施例1に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す全体構成図である。
【0028】
インクジェット印刷装置1は、給紙部3と、印刷装置5と、制御部7と、排紙部9とを備えている。
【0029】
給紙部3は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、印刷装置5に対して連続紙WPを巻き出して供給する。印刷装置5は、例えば、インク滴を吐出して画像を形成するインクジェット式の印刷装置であり、連続紙WPに対して印刷を行う。制御部7は、印刷装置5全体を制御する。制御部7は、例えば、タッチパネルディスプレイ等の入力部と表示部とを有するPCまたはマイクロプロセッサで構成される。排紙部9は、印刷装置5で処理された連続紙WPを水平軸周りにロール状に巻き取る。
【0030】
印刷装置5は、給紙部3からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ11を上流側に備えている。駆動ローラ11によって給紙部3から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ13に沿って下流側に搬送される。印刷装置5は、その最下流に、駆動ローラ15を備えている。駆動ローラ11と駆動ローラ15との間には、上流側から印刷部17と、乾燥装置19と、検査器21とが配置されている。印刷部17は、インクジェット式の印刷ヘッド23を備えている。乾燥装置19は、連続紙WPを加熱して印刷面を乾燥させる。検査器21は、連続紙WPの印刷像を検査する。
【0031】
印刷部17は、例えば、4個の印刷ヘッド23を備えている。具体的には、上流側から順に、ブラック(K)用の印刷ヘッド23と、シアン(C)用の印刷ヘッド23と、マゼンタ(M)用の印刷ヘッド23と、イエロー(Y)用の印刷ヘッド23とを備えている。各印刷ヘッド23は、連続紙WPの搬送方向に沿って所定間隔を隔てて配置されている。各印刷ヘッド23の有するインクジェットノズルからインクが連続紙WPへ吐出される。
【0032】
検査器21は、CCDラインセンサ、あるいはCCDカメラにより搬送される連続紙WPに印刷された印刷像を撮影する。この撮影情報は制御部7へ出力される。制御部7は、入力された撮影情報と、インク吐出を行うために使用した画像情報とを比較することにより、印刷ヘッド23における吐出不良の有無を判定する。制御部7は、この判定結果から印刷が良好であるか否かをさらに判定する。
【0033】
次に、
図2を参照して乾燥装置19について説明する。
図2は、乾燥装置の側面図である。
【0034】
乾燥装置19は、インクが塗付された連続紙WPを乾燥させるヒートローラ31と、ヒートローラ31よりも直径の小さい小径ローラ33と、連続紙WPを搬送する案内ローラ35とを備える。ヒートローラ31、小径ローラ33および案内ローラ35は、
図2の紙面における奥手前方向に回転軸を備え、その軸周りに回転可能である。
【0035】
ヒートローラ31は、図示しない駆動モータに連結された駆動ローラである。また、ヒートローラ31は、熱源を内蔵し、乾燥装置19に導入された連続紙WPを外周面に巻き付けて加熱する。これにより、連続紙WPに塗付されたインクを印刷面とは逆側から乾燥する。ヒートローラ31の半径Rは、例えば、27cmである。また、ヒートローラの表面温度は、例えば、100℃にまで加熱される。
【0036】
印刷部17から搬送された連続紙WPは、ヒートローラ31の外周面に巻きつけられる。連続紙WPがヒートローラ31に最初に接触する点を点P2とする。連続紙WPはヒートローラ31から加熱された後、ヒートローラ31から離れて小径ローラ33に向けて搬送される。連続紙WPがヒートローラ31から最初に離れる点を点P3とする。小径ローラ33に巻きつけられた連続紙WPは、ヒートローラ31に巻きつけられていたときよりも強く曲げられるのでしわが矯正される。連続紙WPは小径ローラ33から離れた後、ヒートローラ31の外周面に再び巻きつけられる。連続紙WPが小径ローラ33から離れて再びヒートローラ31に接触する点を点P4とする。連続紙WPは再びヒートローラ31により加熱された後、ヒートローラ31から離れて案内ローラ35に向けて搬送される。連続紙WPがヒートローラ31に最後に接触する点を点P5とする。
【0037】
小径ローラ33は、ヒートローラ31と所定の間隔c(
図5参照)を置いて配置されている。ここでは、例えば、1cmである。小径ローラ33の半径rは、ヒートローラ31よりも小さく、例えば、3.2cmである。したがって、小径ローラ33の曲率はヒートローラ31の曲率よりも大きい。これにより、搬送用紙WPは小径ローラ33に巻きつけられると、ヒートローラ31よりも曲げられるので、搬送用紙WPに発生したしわが引き伸ばされて矯正される。この結果、搬送用紙WPのしわの数および大きさを低減することができる。小径ローラ33とヒートローラ31の半径の比は、約1:8である。ヒートローラ31の半径Rは小径ローラ33の半径rの7倍以上が好ましい。
【0038】
案内ローラ35は、ヒートローラ31により乾燥された連続紙WPを搬送して検出器21へ送り出す。
【0039】
図3は、一つのヒートローラにより加熱される連続紙の温度上昇の一例を示すグラフ図である。連続紙WPはヒートローラに巻きつけられるとその温度が上昇する。この間、連続紙に付着したインクの温度も共に上昇し、インクは徐々に蒸発し始めるが、その蒸発は活発でない。そして、ある一定の温度を超えるとインクが活発に蒸発を始める。かかる温度を紙面温度te1とする。紙面温度te1を超えると、インクの活発な蒸発によってヒートローラからの熱が使われ、連続紙の温度上昇の角度は緩やかになる。その後、インクの活発な蒸発を伴いながら紙面温度は更に上昇し、紙面温度がヒートローラの温度te2に到達すると、紙面温度の上昇は停止し、紙面温度が飽和する。温度te1は、例えば、飽和温度te2の80〜90%の温度である。
【0040】
このような温度上昇の過程で、小径ローラ33によるしわ取りを実施する場合には、紙面温度te1を超えた後に連続紙WPのしわ取りを実施するのがよい。すなわち、紙面温度が十分に加熱されてインクが活発に蒸発して乾燥されているので、小径ローラ33に巻きつけられてしわを延ばしている間に、ヒートローラ31に接触していなくてもインクの乾燥化が中断されずに乾燥を促進することができ、しわを延ばし矯正することができる。インクは連続紙WPの熱を奪って蒸発することができる。連続紙WPが温度te1に達するまでを初期加熱工程とし、温度te1以降を乾燥工程とする。初期加熱工程中もインクの蒸発は発生するが、乾燥工程に入ってからの方がインクの蒸発が格段に進む。小径ローラ33は初期加熱工程から乾燥工程に切り替わるタイミングとなる位置か、あるいはそれよりも後ろに配置されることが好ましい。
【0041】
実施例1の構成によれば、インクが付着した連続紙WPがヒートローラ31に巻きつけられることで、連続紙WPの温度が上昇しインクの乾燥を促進させる。その後、途中で一旦ヒートローラ31よりも直径の小さい小径ローラ33に連続紙WPが巻きつけられることで、曲率の大きなローラに連続紙WPを接触させ、しわを引き延ばしつつ乾燥させることができる。これにより、連続紙WPに発生したしわを矯正することができる。しわが矯正された連続紙WPは、ヒートローラ31に当初巻きつけられた連続紙WPよりも乾燥が促進しているのでしわが発生しにくい。この状態で再び同一のヒートローラ31に巻きつけられるので、インクおよび連続紙WPを乾燥することができる。インクジェット印刷装置1は乾燥装置19を備えることで、連続紙WPのしわを低減し、インクおよび連続紙WPの乾燥効率を向上することができる。
【0042】
また、ヒートローラ31を用いることで連続紙WPに直接接触して連続紙WPの温度を上げることができるので、連続紙WPの表面だけでなく内部の温度も上げることができる。これにより、連続紙WPの内部に浸み込んだインクも乾燥することができる。ヒートローラ31よりも直径の小さい小径ローラ33をしわ矯正用ローラとして用いることで、ヒートローラ31の曲率は小さくてもよい。これにより、乾燥効率の向上としわの矯正とを両立することができる。また、ヒートローラ31を複数個備えなくてよいので、ヒートローラ31のメンテナンスを簡易にすることができる。
【0043】
連続紙WPが温度te1に達した後にヒートローラ31から離れて、小径ローラ33に巻きつけられるので、十分に熱された連続紙WPからインクへ伝熱してインクの乾燥が進む。この状態で小径ローラ33によりしわが矯正されるので、しわを矯正している間も加熱された連続紙WPによりインクの溶媒の蒸発が促進される。しわの矯正中も連続紙WPが中断なく乾燥化されるので濡れ面積は縮小され、小径ローラ33から離れた連続紙WPのしわの再発生を防止することができる。また、連続紙WPが飽和温度te2に達するまでに小径ローラ33に巻きつけられるので、連続紙WPの乾燥が終わった後に小径ローラ33に巻きつけられることがない。これにより、しわが連続紙WPに残るのを防止することができる。
【0044】
また、実施例1の小径ローラ33は、
図2に示されるように、連続紙WPがヒートローラ31と接触する総距離のちょうど中間の位置に配置される。ヒートローラ31の点P2と点P5とを結ぶ線分の中点と直交する直線上に、小径ローラ33を配置する。これにより、初期加熱工程を経て熱的に飽和状態に近い状態の連続紙WPに対して小径ローラ33によりそのしわを矯正することができる。すなわち、生産性を考慮すると、ヒートローラ31の終端側(点P5)の位置で連続紙WPの乾燥が終了することが望ましい。そのために、ヒートローラ31の点P2と点P5とを結ぶ線分の中点と直交する直線上に、小径ローラ33を配置し、この小径ローラ33の位置で連続紙WPの温度が飽和温度付近(例えばte1)に達してしわの除去がなされ、その後ヒートローラ33と再び接触してさらに乾燥が進み、点P5付近で乾燥が終了するように、搬送速度を考慮してヒートローラ31の加熱温度を制御することが好ましい。
【0045】
また、実施例1の構成によれば、しわが発生しにくい印刷媒体の場合、
図4に示すように、オペレータが連続紙WPを小径ローラ33に巻きつけないで乾燥することも可能である。小径ローラ33に巻きつけないことで連続紙WPの乾燥効率を優先することができる。このように、印刷媒体の種類に応じて、しわの矯正と乾燥効率の向上とのどちらを優先するかを選択することができる。
【0046】
次に、
図5を参照してヒートローラ31と小径ローラ33の位置関係についてさらに説明する。
図5は、ヒートローラ31と小径ローラ33の位置関係を説明する説明図である。なお、
図5では連続紙WPを省略して図示している。
【0047】
ヒートローラ31の半径をRとし、小径ローラの半径をrとする。また、ヒートローラ31と小径ローラ33との間隔をcとする。ヒートローラ31の中心点P1と点P3とを結ぶ線分L3と、ヒートローラ31の中心点P1と小径ローラの中心点P6とを結ぶ直線L4とが成す角をθとする。
【0048】
間隔cと、半径Rと、半径rと、角度θとは下記の関係がある。
c=R/cosθ−R−2r−(r/cosθ−r)
=(R−r)/cosθ−(R+r) ・・・ (式1)
【0049】
また、角度θは下記の式から求められる。
θ=arccos((R−r)/(c+R+r)) ・・・ (式2)
【0050】
したがって、ヒートローラ31と小径ローラ33との間隔cと、小径ローラ33の半径rとが小さければ小さいほど角度θが小さくなる。また、角度θが小さければ小さいほど、連続紙WPが小径ローラ33によってヒートローラ31から離される距離2L=2Rθも小さくなる。したがって、間隔cと、小径ローラ33の半径rが小さいと、連続紙WPがヒートローラ31から離れる距離が短くなるので、乾燥効率が向上する。
【0051】
実施例1では、間隔c=10mm、半径R=270mm、半径r=32mmであるので、
θ=arccos((270−32/10+270+32))
≒0.703[radian]
となる。
【0052】
したがって、連続紙WPが小径ローラ33によりヒートローラ31から離される距離2Lは、
2L=2・270・0.703≒380mm
となる。これは、ヒートローラ31の周長2πR≒1696mmの約4分の1程度の長さである。したがって、ヒートローラの半径を十分な大きさに確保することができない場合に、連続紙WPの厚みが大きい場合や、連続紙WPの搬送速度が速い場合の条件が重なると、連続紙WPを十分乾燥できない場合が発生する。この場合、以下の実施例により乾燥能力を向上させることができる。
【実施例2】
【0053】
次に、
図6を参照して本発明の実施例2について説明する。
図6は、実施例2に係る乾燥装置の構成を示す側面図である。
図6において、実施例1に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外のインクジェット印刷装置1の構成は実施例1と同様である。
【0054】
上述したように、連続紙WPがヒートローラ31から離れることで乾燥能力が不足する場合があるので、ヒートローラ31とは別の乾燥器を追加してもよい。実施例2の乾燥装置19aは、実施例1の乾燥装置19に、非接触型の乾燥器を加えたものである。
【0055】
実施例2では、非接触型の乾燥器として平面型の赤外線(IR)ヒータを採用する。赤外線ヒータ41は、連続紙WPがヒートローラ31から離れる点P3から小径ローラ33に巻きつけられるまでの直線区間L5を搬送される連続紙WPを加熱するように配置されている。また、赤外線ヒータ43は、小径ローラ33から離れてヒートローラ31に再び巻きつけられる点P4までの直線区間L6を搬送される連続紙WPを加熱するように配置されている。赤外線ヒータ41、43は、連続紙WPに対してその紙面温度を120℃程度に加熱するだけの赤外線を放射することで連続紙WPに接触することなくインクの溶媒を蒸発させる。
【0056】
赤外線ヒータ41、43により、連続紙WPがヒートローラ31から離れる区間においても連続紙WPを加熱することができるので乾燥能力を向上させることができる。連続紙WPの厚みが大きい場合や連続紙WPの搬送速度が速い場合でも、連続紙WPを十分に乾燥させることができる。なお、赤外線ヒータ41および43のいずれか1つだけ配置してもよい。また、小径ローラ33から離れた連続紙WPを赤外線ヒータ41、43により乾燥させるので、しわが矯正された状態で乾燥を促進することができ、しわが再発生するのを防止することができる。また、ヒートローラ31と小径ローラ33の間で印刷媒体が直線になる直線区間L5、L6に沿って、加熱面が平面型パネル状の非接触型の乾燥機を効果的に配置できる。
【0057】
また、ヒートローラ31は連続紙WPの印刷面と逆側から加熱し、赤外線ヒータ41、43は印刷面を加熱するので、連続紙WPの両面から加熱することができる。これにより、乾燥されずに濡れたまま残る部分を低減することができる。
【0058】
赤外線ヒータ41、43の代わりに、非接触型の乾燥器としてマイクロウェーブ発振器や温風ヒータを採用してもよい。
【実施例3】
【0059】
次に、
図7を参照して本発明の実施例3について説明する。
図7は、実施例3に係る乾燥装置の構成を示す側面図である。
図7において、実施例1に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外のインクジェット印刷装置1の構成は実施例1と同様である。
【0060】
上述したように、連続紙WPがヒートローラ31から離れることで乾燥能力が不足する場合があるので、小径ローラ33にヒートローラ31の熱を伝達することで、小径ローラ33をヒートローラとして用いてもよい。実施例3は、実施例1の構成に、熱伝達ローラを加えたものである。
【0061】
実施例3では、ヒートローラ31と小径ローラ33とに接触する熱伝達ローラ45を備える。熱伝達ローラ45は、
図7の紙面における奥手前方向に回転軸を備え、その軸周りに回転可能である。熱伝達ローラ45により、ヒートローラ31の熱が小径ローラ33に伝達される。これにより、小径ローラ33の温度を高くすることができ、小径ローラ33と接触する連続紙WPの乾燥を促進することができる。この結果、乾燥効率を向上することができる。また、熱伝達ローラ45は、ヒートローラ31の回転駆動力も小径ローラ33に伝達するので、小径ローラ33を駆動ローラとして機能することができる。
【0062】
なお、この実施例3は、以下のように変形することができる。すなわち、一個の熱伝達ローラ45に代えて、2個の伝動ローラ47を設けてもよい。
図8を参照して説明する。
図8は、
図7の直線L2に直交する方向VIIIに相当する方向から見た説明図である。実施例3の熱伝達ローラ45に代えて設けられる伝動ローラ47は、左右に分割された左ローラ47a、右ローラ47bと、左ローラ47aおよび右ローラ47bを接続するシャフト47cとを備える。左ローラ47aおよび右ローラ47bは、ヒートローラ31と小径ローラ33とに接触する。なお、左ローラ47aと右ローラ47bは、連続紙WPがヒートローラ31および小径ローラ33に巻きつけられる領域よりも長手方向外側に配置されている。これにより、左ローラ47aおよび右ローラ47bとヒートローラ31および小径ローラ33とが接触する領域は、連続紙WPと接触しない。これにより、左ローラ47aおよび右ローラ47bとの接触により、ヒートローラ31および小径ローラ33の表面に傷が入ったとしても、連続紙WPとの接触領域には傷が入らないので、傷による連続紙WPの品質低下や乾燥能力の低下を防止することができる。なお、
図8の変形例における左ローラ47aおよび右ローラ47bは、駆動力の伝達を主眼としつつ、ヒートローラ31と小径ローラ33との間隔を近づけるように位置調整した場合などに、両者が誤って接触してしまうことを防止するために、両者の間隔を一定に保つ機能を果たすものである。ヒートローラ31および小径ローラ33との接触面積が小さくなる場合には、熱伝達の効果は少なくなる。
【実施例4】
【0063】
次に、
図9を参照して本発明の実施例4について説明する。
図9は、実施例4に係る乾燥装置の構成を示す側面図である。
図9において、実施例1に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外のインクジェット印刷装置1の構成は実施例1と同様である。
【0064】
実施例1における小径ローラ33はその位置が固定されていたが、実施例4における小径ローラ33はその位置をヒートローラ31の外周に沿って、間隔cを保って変えることができる。小径ローラ33は、例えば、円弧状のレールに沿って移動および回転可能に固定されていてもよい。小径ローラ33は、ヒートローラ31の外周に沿って連続的に移動可能でなくてもよく、少なくとも2か所以上に変位可能であってもよい。
【0065】
小径ローラ33の移動は、オペレータにより紙面の厚みおよび搬送速度に応じて移動される。また、小径ローラ33を移動させる駆動部(図示省略)を設けて、制御部7により小径ローラ33を移動させてもよい。この場合、オペレータが制御部7に、紙面の厚みおよび搬送速度を入力することで、制御部7は駆動部により適切な位置に小径ローラ33を移動させる。
【0066】
例えば、連続紙WPの厚みが小さい場合や搬送速度が遅い場合は、連続紙WPの乾燥化の距離が短い。小径ローラ33を、直線L2上よりも上流側に配置することで、ヒートローラ31の点P3よりも上流側に位置する点P3’で連続紙WPがヒートローラ31から離れる。これにより、連続紙WPの厚みが小さい場合や搬送速度が遅い場合に初期加熱工程を短くすることができる。この構成により、早い段階で初期加熱工程を終えることができ、小径ローラ33によるしわの矯正前に連続紙WPが完全に乾燥するのを防止することができる。小径ローラ33を離れた連続紙WPは、ヒートローラ31の点P4よりも上流側に位置する点P4’で再びヒートローラ31に接触し、十分に乾燥される。
【0067】
また、連続紙WPの厚みが大きい場合や搬送速度が速い場合は、連続紙WPの乾燥化の距離が長い。小径ローラ33を、直線L2上よりも下流側に配置することで、ヒートローラ31の点P3よりも下流側に位置する点P3’’で連続紙WPがヒートローラ31から離れる。これにより、連続紙WPの厚みが大きい場合や搬送速度が速い場合に初期加熱工程を長くすることができる。この構成により、遅い段階で初期加熱工程を終えることができ、連続紙WPを十分に加熱してから小径ローラ33によりしわの矯正を実施することができるので、しわの再発生を防止することができる。小径ローラ33を離れた連続紙WPは、ヒートローラ31の点P4よりも下流側に位置する点P4’’で再びヒートローラ31に接触し、乾燥される。
【0068】
小径ローラ33がヒートローラ31と所定の間隔cを保ちながらヒートローラ31の外周に沿って小径ローラ33を変位させることにより、連続紙WPの種類、厚み、および搬送速度に応じて最適な位置に小径ローラ33を配置することができる。これにより、しわの矯正に最も好ましい位置に小径ローラ33を配置することができ、印刷物の品質の向上をすることができる。
【実施例5】
【0069】
次に、
図10を参照して本発明の実施例5について説明する。
図10は、実施例5に係る乾燥装置の構成を示す側面図である。
図10において、実施例1に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外のインクジェット印刷装置1の構成は実施例1と同様である。
【0070】
実施例5の乾燥装置19dは、実施例1の乾燥装置19に、小径ローラを複数個追加した構成である。実施例4の乾燥装置19cの小径ローラ33は移動可能な構成であったが、実施例5では、小径ローラを複数個備えることで実施例4と同様の効果を得ることができる。
【0071】
乾燥装置19dには、小径ローラ33に加えて、ヒートローラ31から間隔c離れて配置された小径ローラ33a、33bをさらに備える。これにより、連続紙WPの種類や搬送速度に応じて、巻きつける小径ローラを選択することができる。これにより、小径ローラの最適な位置を選択することができるので、しわの再発生を低減することができ、印刷物の品質向上につながる。
【0072】
例えば、連続紙WPの厚みが小さい場合や搬送速度が遅い場合は、小径ローラ33よりも上流側に配置された小径ローラ33aに連続紙WPを巻きつけることで、ヒートローラ31の点P3よりも上流側に位置する点P3’で連続紙WPがヒートローラ31から離れる。これにより、連続紙WPの厚みが小さい場合や搬送速度が遅い場合に初期加熱工程を短くすることができる。小径ローラ33aを離れた連続紙WPは、ヒートローラ31の点P4よりも上流側に位置する点P4’で再びヒートローラ31に接触し、十分に乾燥される。
【0073】
また、連続紙WPの厚みが大きい場合や搬送速度が速い場合は、小径ローラ33よりも下流側に配置された小径ローラ33bに連続紙WPを巻きつけることで、ヒートローラ31の点P3よりも下流側に位置する点P3’’で連続紙WPがヒートローラ31から離れる。これにより、連続紙WPの厚みが大きい場合や搬送速度が速い場合に初期加熱工程を長くすることができる。小径ローラ33bを離れた連続紙WPは、ヒートローラ31の点P4よりも下流側に位置する点P4’’で再びヒートローラ31に接触し、乾燥される。
【0074】
また、連続紙WPに対して乾燥能力に余裕がある場合は、小径ローラ33、33a、33bの中から複数の小径ローラに巻きつけることで、しわの除去を優先した形態とすることもできる。乾燥能力に余裕があれば、ヒートローラ31から離れる区間が長くなっても問題はない。
【実施例6】
【0075】
次に、
図11を参照して本発明の実施例6について説明する。
図11は、実施例6に係る乾燥装置の構成を示す側面図である。
図11において、実施例1に示した符号と同一の符号で示した部分は、実施例1と同様の構成であるのでここでの説明は省略する。また、以下に記載した以外のインクジェット印刷装置1の構成は実施例1と同様である。
【0076】
実施例6の乾燥装置19eは、実施例1の乾燥装置19に、小径ローラと赤外線ヒータ49が追加された構成である。
【0077】
乾燥装置19eには、小径ローラ33cおよび小径ローラ33dが配置されており、小径ローラ33cおよび33d間に赤外線ヒータ49が配置されている。赤外線ヒータ49は小径ローラ33cおよび33d間を搬送される間も乾燥が促進される。2個の小径ローラ33c、33dを用いることで、小径ローラ33cで取りきれなかったしわを小径ローラ33dによりさらに延ばして矯正することができるので、連続紙WPにしわの再発生および残存をより低減することができる。
【0078】
また、連続紙WPがヒートローラ31から離れている間も、赤外線ヒータ49により乾燥を促進することができるので、乾燥能力を向上させることができる。また、ヒートローラ31は連続紙WPの印刷面と逆側から加熱し、赤外線ヒータ49は印刷面を加熱するので、連続紙WPの両面から加熱することができる。これにより、乾燥されずに濡れたまま残る部分を低減することができる。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0080】
(1)上述した実施例では、インクジェット式の印刷装置を例にとったが、本発明は印刷媒体を印刷した後に加熱して乾燥する装置であれば他の方式、例えば電子写真方式の印刷装置であっても適用できる。また、液体塗付処理を行ったウェブに対する乾燥技術としても適用可能である。
【0081】
(2)上述した実施例では、印刷媒体として連続紙WPを例示したが、本発明は紙以外のフィルムなどの印刷媒体であっても適用できる。