(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806614
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20201221BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20201221BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20201221BHJP
F01N 13/18 20100101ALI20201221BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
F01N3/28 301V
F01N3/24 L
F01N13/14
F01N13/18
B01D53/94 222
B01D53/94 241
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-68167(P2017-68167)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168806(P2018-168806A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 紀之
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 智之
(72)【発明者】
【氏名】近江 嘉治
【審査官】
坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105308278(CN,A)
【文献】
特開2016−50482(JP,A)
【文献】
実開平6−25512(JP,U)
【文献】
特表2014−513228(JP,A)
【文献】
特開2004−27904(JP,A)
【文献】
実開平6−60730(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第102013220055(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流通する排気流路の途中に、排気ガスを浄化するための浄化材を設置し、排気流路を構成する部材の表面に、断熱材を介して保温カバーを配した排気浄化装置であって、
排気流路を構成する部材の表面から突出し、車両側の取付ブラケットに締結される座面を備え、前記保温カバーは、前記座面まで延在して前記取付ブラケットに対し前記座面と共締めされていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記保温カバーは、前記浄化材を抱持したケーシングの入側を包囲し、該ケーシングに抱持した前記浄化材の前端部に排気ガスを導入する排気流路の外面を覆うように備えられていることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記保温カバーの周は、排気流路を構成する部材に対し断続的に設けられた溶接部にて溶接されていることを特徴とする請求項2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記保温カバーは、前記座面より薄い板厚の素材にて構成されていることを特徴とする請求項1〜3に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される排気ガスには、パティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)やNOx等が含まれるため、排気ガスが流通する排気流路の途中にパティキュレートフィルタや酸化触媒、選択還元型触媒等の浄化材を備え、パティキュレートやNOxを浄化することが行われている。
【0003】
図5はそうした排気浄化装置の一例を示すものである。エンジン1から排気マニホールド2を介して排出される排気ガス3が流通する排気管4の途中に、排気ガス3中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ5と、該パティキュレートフィルタ5の下流側にNOxを還元剤と反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒6とをケーシング7,8によりそれぞれ抱持して並列に配置すると共に、パティキュレートフィルタ5の後端部と選択還元型触媒6の前端部との間をS字構造の連絡流路9により接続し、パティキュレートフィルタ5の後端部から排出された排気ガス3が前方に折り返されて隣の選択還元型触媒6の前端部に導入されるようにしている。また、前記二つの浄化材(パティキュレートフィルタ5、選択還元型触媒6)に加え、パティキュレートフィルタ5が抱持されているケーシング7内の前段には、排気ガス3中の未燃燃料分を酸化処理する酸化触媒10が装備されている。
【0004】
図6に要部を拡大して示す如く、連絡流路9は、パティキュレートフィルタ5の後端部を包囲し且つ該後端部から出た直後の排気ガス3を壁面に衝突させて略直角な向きに方向転換させつつ集合せしめるガス集合室9aと、該ガス集合室9aで集められた排気ガス3を前方に向けて抜出し且つその途中にインジェクタ11を備えたミキシングパイプ9bと、該ミキシングパイプ9bにより前方に導かれた排気ガス3を壁面に衝突させて略直角な向きに方向転換させつつ分散せしめ且つその分散された排気ガス3を選択還元型触媒6の前端部に導入し得るよう該前端部を包囲するガス分散室9cとによりS字構造をなして構成されている。
【0005】
このような構成を採用すれば、パティキュレートフィルタ5により排気ガス3中のパティキュレートが捕集されると共に、その下流側のミキシングパイプ9bの途中でインジェクタ11から還元剤が排気ガス3中に添加され、選択還元型触媒6上で排気ガス3中のNOxと反応する結果、排気ガス3中のパティキュレートとNOxの同時低減が図られることになる。
【0006】
この際、パティキュレートフィルタ5の後端部から排出された排気ガス3が連絡流路9により前方に折り返されてから隣の選択還元型触媒6の前端部に導入されるようになっているので、前記連絡流路9の途中にある還元剤の添加位置から選択還元型触媒6までの距離が長く確保され、排気ガス3の流れが折り返されることで還元剤と排気ガス3との混合促進が図られる。
【0007】
しかも、パティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6とが並列に配置され、これらパティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6との間に沿うように連絡流路9が配置されているので、その全体構成がコンパクトなものとなって車両への搭載性が大幅に向上されることになる。
【0008】
ところで、こうした排気浄化装置においては、浄化材として装備される触媒(ここでは、酸化触媒10や選択還元型触媒6)で各反応を効率的に進行するために所定の触媒床温度を要する。一方、流路内を流通する高温の排気ガス3の熱を周辺の機器からなるべく隔離する必要もあるため、排気浄化装置の表面に断熱層を設け、排気流路外への熱の伝達を低減することが通常である。
【0009】
図7〜
図9はこうした排気浄化装置の断熱構造の一例を示しており、ここでは、連絡流路9におけるミキシングパイプ9bの出側からガス分散室9cの入側にかけての外面を包囲するように備えられた保温カバー12を図示している。保温カバー12は、小径のミキシングパイプ9bの出側と、該ミキシングパイプ9bと隣接する大径のケーシング8の入側ないしガス分散室9cとを一体に覆うよう、正面視で涙滴型の形状をなしており、ミキシングパイプ9bの出側からガス分散室9cに至る排気流路の外面を、扁平な形状をなして覆っている。保温カバー12と、ミキシングパイプ9bやガス分散室9cの外面との間には、保温性を有するグラスウール等の素材が断熱材13として挟み込まれている。
【0010】
保温カバー12の下流側端12aは円弧をなしてガス分散室9cの外周を包囲するようにガス分散室9cに嵌合しており、下流側端12aとガス分散室9cの外周とは、下流側端12aの周全体にわたって設けられた溶接部12bにて溶接されている。また、ミキシングパイプ9bの出側の外周を包囲するように設けられた保温カバー12の上流側端12cも、ミキシングパイプ9bの外周に対して溶接されている。
【0011】
ガス分散室9cにおけるケーシング8の軸方向に関して外側の端面9dには、ケーシング8や連絡流路9を備えて構成される排気浄化装置を車両のフレームに対し支持するための取付部材14が備えられている。取付部材14は、
図9に示す如く、方形の平面をなす座面14aの両端に備えたフランジ部14bを端面9dに溶接することで、端面9dに対し所要の間隔を置いて突出するよう、座面14aを支持するように構成されたU字断面を有する板状の金属の部材である。
【0012】
ここでは、ガス分散室9cの端面9dに取付部材14を三個備えた場合を例示しており、各座面14aを車両のフレームに備えた取付ブラケット15に当接させ、座面14aの中心に備えた穴14cにボルト等の連結具16を通して座面14aを取付ブラケット15に締結することで、各取付部材14を取付ブラケット15に対して固定し、ガス分散室9cや該ガス分散室9cに連結されたケーシング8を、車両のフレームに対し固定できるようになっている。
【0013】
ここで、保温カバー12における取付部材14に対応する箇所には切欠き12dが備えられており、該切欠き12dにおいて、ガス分散室9cの端面9dに備えた取付部材14の座面14aが露出するようになっている。こうすることで、各取付部材14を座面14aにて取付ブラケット15に締結するにあたり、保温カバー12の素材が妨げにならないようにしている。また、切欠き12dの設置により、保温カバー12とミキシングパイプ9bないしガス分散室9cとの間の熱膨張の差を吸収すると共に、保温カバー12とミキシングパイプ9bやガス分散室9cとの間の空間が密閉構造となることを避け、熱を持った空気が前記空間内から適宜逃げるようにし、前記空間に熱が過剰に籠もることを防止するようにしている。
【0014】
尚、この種の保温カバーを備えた排気浄化装置に関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2016−70165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述の如き排気浄化装置においては、取付部材14周辺における断熱性の確保が困難であり、このことが排気ガス3の保温性を損なう要因となっていた。切欠き12dを設けた部分には断熱材13を備えることができず、ここから排気ガス3の熱が外へ逃げてしまうからである。
【0017】
しかも、切欠き12dの縁すれすれの位置まで断熱材13を配置すると、該断熱材13の破片が切欠き12dから漏れ出る虞もあるため、断熱材13は切欠き12dの縁からある程度離れた位置までしか備えることができず、ガス分散室9cの端面9dにおいて断熱材13により被覆されない部分の面積は、切欠き12d自体の面積よりある程度大きくならざるを得ない。さらに、熱膨張の差の問題(ガス分散室9cの端面9dから離間して設置される保温カバー12の温度は、ガス分散室9cの端面9dに直接取り付けられる取付部材14よりも低くなるため、保温カバー12の熱による膨張率は、取付部材14の膨張率より小さくなる)から、保温カバー12の素材が取付部材14と干渉することを確実に防止するためには、切欠き12dは座面14aに対しある程度大きく設計せざるを得ず、このことが保温性の確保を一層困難にしてしまっていた。
【0018】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構成で排気ガスの保温性を向上し得る排気浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、排気ガスが流通する排気流路の途中に、排気ガスを浄化するための浄化材を設置し、排気流路を構成する部材の表面に、断熱材を介して保温カバーを配した排気浄化装置であって、排気流路を構成する部材の表面から突出し、車両側の取付ブラケットに締結される座面を備え、前記保温カバーは、前記座面まで延在して前記取付ブラケットに対し前記座面と共締めされていることを特徴とする排気浄化装置にかかるものである。
【0020】
而して、このようにすれば、座面の直近の位置まで断熱材を配置することができると同時に、保温カバーの固定強度に関する信頼性を向上することができる。
【0021】
本発明の排気浄化装置において、前記保温カバーは、前記浄化材を抱持したケーシングの入側を包囲し、該ケーシングに抱持した前記浄化材の前端部に排気ガスを導入する排気流路の外面を覆うように備えることができる。
【0022】
本発明の排気浄化装置において、前記保温カバーの周は、排気流路を構成する部材に対し断続的に設けられた溶接部にて溶接されていることが好ましく、このようにすれば、保温カバーと排気流路との間の空間が密閉構造とならず、溶接されずに残った残余部分から熱を持った空気が適宜排出される。また、前記残余部分において、保温カバーが排気流路を構成する部材に対して自由に伸び縮みすることで、保温カバーと排気流路を構成する部材との間の熱膨張の差を吸収することができる。
【0023】
本発明の排気浄化装置において、前記保温カバーは、前記座面より薄い板厚の素材にて構成されていることが好ましく、このようにすれば、温度差により保温カバーが座面とは異なる膨張率にて変形したとしても、保温カバー自体が変形することによって膨張率の差を吸収することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の排気浄化装置によれば、以下の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0025】
(I)本発明の請求項1、2に記載の発明によれば、座面の直近の位置まで断熱材を配置することができるので、簡単な構成で排気ガスの保温性を向上することができる。
【0026】
(II)本発明の請求項3に記載の発明によれば、溶接されずに残った残余部分から熱を持った空気が適宜排出されることで、前記空間に熱が過剰に籠もることが防止される。また、前記残余部分において保温カバーと排気流路を構成する部材との間の熱膨張の差を吸収することで、溶接部の断裂を防止することができる。
【0027】
(III)本発明の請求項4に記載の発明によれば、保温カバー自体が変形することによって膨張率の差を吸収することができるので、保温カバーの破損や溶接部の断裂を一層効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第一実施例による保温カバーの形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施例による保温カバーの形態を示す正面図であり、
図1のII−II矢視相当図である。
【
図3】本発明の第一実施例による保温カバーの形態を示す断面図であり、
図2のIII−III矢視相当図である。
【
図4】本発明の第二実施例による保温カバーの形態を示す斜視図である。
【
図5】排気浄化装置の全体構成の一例を示す概略図である。
【
図7】従来の排気浄化装置に設置される保温カバーの形態の一例を示す図である。
【
図8】従来の排気浄化装置に設置される保温カバーの形態の一例を示す正面図であり、
図7のVIII−VIII矢視相当図である。
【
図9】従来の排気浄化装置に備えた保温カバーの形態の一例を示す断面図であり、
図8のIX−IX矢視相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1〜
図3は本発明の実施による排気浄化装置の形態の一例を示すものであって、図中、
図5〜
図9と同一の符号を付した部分は同一物を表している。基本的な構成は
図5〜
図9に示す従来例と共通しているため、以下では必要に応じ、
図5以下をも参照しながら説明することとする。
【0031】
排気ガス3が流通する排気管4の途中には、浄化材としてパティキュレートフィルタ5と選択還元型触媒6とがケーシング7,8によりそれぞれ抱持され、並列に配置されている。ケーシング7内には、パティキュレートフィルタ5の前段に酸化触媒10が装備されている(
図5、
図6参照)。
【0032】
パティキュレートフィルタ5の後端部と選択還元型触媒6の前端部との間はS字構造の連絡流路9により接続され、排気管4とケーシング7,8、及び連絡流路9により排気流路を構成している。連絡流路9は、パティキュレートフィルタ5を抱持したケーシング7の後端部を包囲し且つ該後端部から出た直後の排気ガス3を壁面に衝突させて略直角な向きに方向転換させつつ集合せしめるガス集合室9aと、該ガス集合室9aで集められた排気ガス3を前方に向けて抜出し且つその途中にインジェクタ11を備えたミキシングパイプ9bと、選択還元型触媒6を抱持したケーシング8の前端部を包囲し、ミキシングパイプ9bにより前方に導かれた排気ガス3を壁面に衝突させて略直角な向きに方向転換させつつ分散せしめ且つその分散された排気ガス3を選択還元型触媒6の前端部に導入し得るガス分散室9cとによりS字構造をなして構成されている(
図6参照)。
【0033】
図1〜
図3に示す如く、ガス分散室9cにおけるケーシング8の軸方向外側の端面9dには、ケーシング8や連絡流路9を備えて構成される排気浄化装置を車両のフレームに対し支持するための取付部材14が備えられている。取付部材14は、方形の平面をなす座面14aの両端に備えたフランジ部14bを端面9dに溶接することで、端面9dに対し所要の間隔を置いて座面14aを支持するよう構成されたU字断面を有する板状の金属の部材であり、本第一実施例では、排気流路を構成するガス分散室9cの端面9dから突出するように、計三個備えられている。そして、各座面14aを車両のフレームに備えた取付ブラケット15に当接させ、座面14aの中心に備えた穴14cにボルト等の連結具16を通して座面14aを取付ブラケット15に締結することで、各取付部材14を取付ブラケット15に対して固定し、ガス分散室9cや該ガス分散室9cに連結されたケーシング8を車両のフレームに対し固定できるようになっている。
【0034】
本第一実施例において、上記従来例(
図7〜
図9参照)の保温カバー12に代えて備えた保温カバー17は、
図1、
図2に示す如く、連絡流路9におけるミキシングパイプ9bの出側からガス分散室9cの入側にかけての外面を包囲するように配置され、小径のミキシングパイプ9bの出側と、該ミキシングパイプ9bと隣接する大径のガス分散室9cないしケーシング8の入側とを一体に覆うよう、正面視で涙滴型の形状をなし、且つミキシングパイプ9bの出側からガス分散室9cに至る流路の外面を、扁平な形状をなして覆っている。
図3に示す如く、保温カバー17と、排気流路であるミキシングパイプ9bやガス分散室9cの外面を構成する部材との間には、保温性を有するグラスウール等の素材が断熱材13として挟み込まれている。
【0035】
そして、本第一実施例では、保温カバー17に関し、上記従来例の保温カバー12(
図7〜
図9参照)における切欠き12dの如き各取付部材14の周囲に設定される切欠きを廃止した点を特徴としている。
【0036】
すなわち、本第一実施例の保温カバー17は、
図1〜
図3に示す如く、排気流路を構成するミキシングパイプ9bの出側及びガス分散室9cの入側の外面を従来例の保温カバー12(
図7〜
図9参照)と同様に覆うと共に、取付部材14の座面14aの位置まで延在し、該座面14aを覆うように配置される。そして、保温カバー17における座面14aの穴14cに対応した位置には穴17aが備えられており、
図3に示す如く、この穴17aと座面14aの穴14cとを貫通するように連結具16を備えることで、車両側の取付ブラケット15に対し、取付部材14の座面14aと保温カバー17とを共締めできるようになっている。つまり、本第一実施例の保温カバー17の場合、上記従来例(
図7〜
図9参照)では切欠き12dが備えられていた座面14aの位置まで保温カバー17を延在させることで、座面14aと取付ブラケット15の間に保温カバー17を挟み込むようにしているのである。
【0037】
これに伴い、本第一実施例の保温カバー17では、ミキシングパイプ9bやガス分散室9cに対する溶接の総量を上記従来例の保温カバー12(
図7〜
図9参照)よりも減らしている。具体的には、保温カバー17の下流側端17bが円弧をなしてガス分散室9cの外周を包囲するようにガス分散室9cに嵌合している点は上記従来例の保温カバー12(
図7〜
図9参照)と同様であるが、本第一実施例の保温カバー17の下流側端17bの周は、ガス分散室9cの外周に対し、断続的に設けられた溶接部17cにて溶接されている。また、ミキシングパイプ9bの出側の外周を包囲するように設けられた保温カバー17の上流側端17dは、ミキシングパイプ9bの外周に対して溶接されてはいない。
【0038】
すなわち、上述の如く保温カバー17を座面14aと取付ブラケット15の間に挟み込んで共締めする構造を採用したことで、保温カバー17は溶接部17cの他に座面14aの位置でもガス分散室9cに対して固定されることになり、これにより、保温カバー17の固定強度に関する信頼性を向上しているのである。一方、前記共締め構造を採用した結果、溶接の総量は減らすことができ、組付けに係る作業工数を減らすことができるほか、溶接に伴って生じる熱ひずみも低減することができる。
【0039】
ここで、本第一実施例の保温カバー17では、取付部材14の周囲に切欠きを備えておらず、保温カバー17とミキシングパイプ9bやガス分散室9cとの間の空間から座面14aの位置で熱を持った空気を逃がす構造にはなっていないが、その一方で、保温カバー17の全周をガス分散室9cやミキシングパイプ9bに対し溶接せず、溶接部17cを断続的に配置している。したがって、保温カバー17とガス分散室9cやミキシングパイプ9bとの間の前記空間が密閉構造とはならず、保温カバー17の周とガス分散室9cやミキシングパイプ9bとの間で溶接されずに残った残余部分から熱を持った空気が適宜排出され、前記空間に熱が過剰に籠もることは防止される。
【0040】
また、保温カバー17とミキシングパイプ9bとを溶接しないことで、保温カバー17のミキシングパイプ9bと対向する部分の周がミキシングパイプ9bに対して自由に伸び縮みできるようになっている。これにより、保温カバー17とミキシングパイプ9bないしガス分散室9cとの間の熱膨張の差を吸収し、溶接部17cの断裂を防止することができる。
【0041】
この際、保温カバー17の素材としては、取付部材14ないし座面14aを構成する素材より薄い金属板を用いることで、温度差により保温カバー17が座面14aとは異なる膨張率にて変形したとしても、保温カバー17自体が変形することによって膨張率の差を吸収することができ、保温カバー17の破損や溶接部17cの断裂を一層効果的に防止することができる。
【0042】
また、保温カバー17を取付部材14の座面14aまで延在させることで、
図3に示す如く、断熱材13を取付部材14の直近の位置まで配置することができる。こうすることで、取付部材14の周辺における断熱性を確保して排気ガス3の保温性を大幅に向上することができる。
【0043】
さらに、取付部材14周囲の切欠きを廃止したことにより、該切欠きを保温カバー17に設けるための金型を不要とし、保温カバー17の製造に係る費用を低減することもできる。
【0044】
以上のように、上記本第一実施例においては、排気ガス3が流通する排気流路の途中に、排気ガス3を浄化するための浄化材(選択還元型触媒)6を設置し、排気流路(ミキシングパイプ9bの出側及びガス分散室9c)を構成する部材の表面に、断熱材13を介して保温カバー17を配した排気浄化装置に関し、排気流路を構成する部材の表面から突出し、車両側の取付ブラケット15に締結される座面14aを備え、保温カバー17は、座面14aまで延在して取付ブラケット15に対し座面14aと共締めされているので、座面14aの直近の位置まで断熱材13を配置することができると同時に、保温カバー17の固定強度に関する信頼性を向上することができる。
【0045】
本第一実施例において、保温カバー17は、浄化材6を抱持したケーシング8の入側を包囲し、該ケーシング8に抱持した浄化材6の前端部に排気ガス3を導入する排気流路(ミキシングパイプ9bの出側及びガス分散室9c)の外面を覆うように備えられている。
【0046】
本第一実施例において、保温カバー17の周は、排気流路(ガス分散室9c)を構成する部材に対し断続的に設けられた溶接部17cにて溶接されているので、保温カバー17と排気流路との間の空間が密閉構造とならず、溶接されずに残った残余部分から熱を持った空気が適宜排出されることで、前記空間に熱が過剰に籠もることが防止される。また、前記残余部分において、保温カバー17が排気流路を構成する部材に対して自由に伸び縮みすることで、保温カバー17と排気流路を構成する部材との間の熱膨張の差を吸収し、溶接部17cの断裂を防止することができる。
【0047】
本第一実施例において、保温カバー17は、座面14aより薄い板厚の素材にて構成されているので、温度差により保温カバー17が座面14aとは異なる膨張率にて変形したとしても、保温カバー17自体が変形することによって膨張率の差を吸収することができ、保温カバー17の破損や溶接部17cの断裂を一層効果的に防止することができる。
【0048】
したがって、上記本第一実施例によれば、簡単な構成で排気ガスの保温性を向上し得る。
【0049】
図4は本発明の実施による排気浄化装置の形態の別の一例を示している。上記第一実施例(
図1〜
図3参照)では、浄化材を抱持した複数のケーシング7,8が並列に配置され、該ケーシング7,8の間に沿うように連絡流路9を配置した排気浄化装置のうち、連絡流路9を構成するミキシングパイプ9bの出側及びガス分散室9cの外面に対して本発明を実施した場合を例示したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。
図4に第二実施例として示す如く、例えばケーシング7の円筒部7aに取付部材14により座面14aが設置されている場合には、ケーシング7の円筒部7aに備えた保温カバー18を座面14aまで延在させることで、上記第一実施例と同様の効果を奏することができる。
【0050】
その他の作用効果については上記第一実施例と同様であるため省略するが、本第二実施例によっても、簡単な構成で排気ガスの保温性を向上し得る。
【0051】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
3 排気ガス
6 浄化材(選択還元型触媒)
7 ケーシング
8 ケーシング
9b 排気流路(ミキシングパイプ)
9c 排気流路(ガス分散室)
13 断熱材
14a 座面
15 取付ブラケット
17 保温カバー
18 保温カバー