特許第6806623号(P6806623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806623
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】カラオケ装置、カラオケシステム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   G10K15/04 302D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-90366(P2017-90366)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-189737(P2018-189737A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】早野 克己
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−050966(JP,A)
【文献】 特開平10−026993(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0022859(US,A1)
【文献】 唯野 奈津実,CD音源をマイク入力してカラオケ採点すると高得点になるのか?,唯野奈津実のカラオケの世界〜カラオケ評論家のカラオケポータルサイト,2016年 2月18日,[2020年11月18日検索], <URL: https://enjoysing.com/karaoke4030>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作端末から放音される採点テスト用楽曲の所定音量の音声を、当該操作端末から所定距離だけ離れた位置に配置されたマイクを介して取得する音声取得部と、
前記採点テスト用楽曲を再生する演奏処理部と、
取得した前記音声から抽出した音声データと、再生された前記採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する採点値算出部と、
算出した前記採点値を提示する提示部と、
を有するカラオケ装置。
【請求項2】
前記提示部は、前記算出した採点値と比較するための基準採点値を併せて提示する、または前記算出した採点値と前記基準採点値との比較結果に基づく採点結果を提示することを特徴とする請求項1記載のカラオケ装置。
【請求項3】
前記所定音量は、前記基準採点値を設定した際に前記操作端末から出力された音量と等しく、前記所定距離は、前記基準採点値を設定した際の前記操作端末と前記マイクとの距離と等しいことを特徴とする請求項2記載のカラオケ装置。
【請求項4】
前記演奏処理部は、前記採点テスト用楽曲を再生する際に再生音を出力しないように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のカラオケ装置。
【請求項5】
スピーカを有する操作端末、及びマイクを有するカラオケ装置を含むカラオケシステムであって、
前記操作端末は、
前記スピーカを介し、採点テスト用楽曲の音声を所定音量で放音させる放音処理部を有し、
前記カラオケ装置は、
前記操作端末から放音される前記音声を、前記操作端末から所定距離だけ離れた位置に配置された前記マイクを介して取得する音声取得部と、
前記採点テスト用楽曲を再生する演奏処理部と、
取得した前記音声から抽出した音声データと、再生された前記採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する採点値算出部と、
算出した前記採点値を提示する提示部と、
を有するカラオケシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラオケ装置、及びカラオケシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ装置は、マイクにより入力された歌唱音声から抽出した歌唱音声データと、カラオケ演奏された楽曲の主旋律を示すリファレンスデータとを比較することにより、カラオケ歌唱の採点を行うことができる。
【0003】
たとえば、特許文献1には、カラオケ演奏に合わせてマイクから入力される歌唱音声信号から音高データ及び音長データを抽出し、カラオケ演奏に並行して読み出されるガイドメロディと比較することによって歌唱の巧拙を採点評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−69216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、歌唱能力の高い、ある歌唱者(たとえばプロの歌手)が同じメーカ・機種のカラオケ装置で同じ楽曲を歌唱した場合であっても、別のカラオケルームに設置されたカラオケ装置であったり、同じ設置場所でも別の日に歌唱したりすると、採点結果が大きく異なることがある。これは、たとえば、歌唱音声のピッチや音量を検出する回路の故障・劣化や、カラオケ装置のマイク入力端子に接続されたワイヤレスマイクレシーバにおけるボリューム設定値が適当でない(デフォルト値に対して大き過ぎる、または小さ過ぎる)ことが原因である。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような従来の歌唱採点機能は、入力される歌唱音声とリファレンスデータとを単純に比較するものであり、歌唱採点機能による採点が正しく行われているか否かを確認することができない。
【0007】
本発明の目的は、歌唱採点機能による採点が正しく行われるかを判断するための情報を提示可能なカラオケ装置及びカラオケシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一の発明は、操作端末から放音される採点テスト用楽曲の所定音量の音声を、当該操作端末から所定距離だけ離れた位置に配置されたマイクを介して取得する音声取得部と、前記採点テスト用楽曲を再生する演奏処理部と、取得した前記音声から抽出した音声データと、再生された前記採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する採点値算出部と、算出した前記採点値を提示する提示部と、を有するカラオケ装置である。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のカラオケ装置及びリモコン装置に、最小限の機能と採点テスト用楽曲の楽曲データを追加することにより、歌唱採点機能による採点が正しく行われるかを判断するための情報を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るカラオケシステムの概略を示す図である。
図2】実施形態に係るカラオケ装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】実施形態に係るカラオケ装置のソフトウェア構成例を示す図である。
図4】実施形態に係るリモコン装置のハードウェア構成例を示す図である。
図5】実施形態に係るカラオケシステムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、上記の主たる発明の他、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
すなわち、前記提示部が、前記算出した採点値と比較するための基準採点値を併せて提示する、または前記算出した採点値と前記基準採点値との比較結果に基づく採点結果を提示するカラオケ装置が明らかとなる。このようなカラオケ装置によれば、歌唱採点機能による採点が正しく行われるかをより正確に判断することが可能となる。
【0013】
また、前記所定音量が、前記基準採点値を設定した際に前記操作端末から出力された音量と等しく、前記所定距離が、前記基準採点値を設定した際の前記操作端末と前記マイクとの距離と等しいカラオケ装置が明らかとなる。このようなカラオケ装置によれば、基準採点値と算出した採点値との比較を正確に行うことができる。
【0014】
また、前記演奏処理部が、前記採点テスト用楽曲を再生する際に再生音を出力しないように制御するカラオケ装置が明らかとなる。このようなカラオケ装置によれば、採点値算出部においてより正確な採点値を算出することができる。
【0015】
更に、スピーカを有する操作端末、及びマイクを有するカラオケ装置を含むカラオケシステムであって、前記操作端末は、前記スピーカを介し、採点テスト用楽曲の音声を所定音量で放音させる放音処理部を有し、前記カラオケ装置は、前記操作端末から放音される前記音声を、前記操作端末から所定距離だけ離れた位置に配置された前記マイクを介して取得する音声取得部と、前記採点テスト用楽曲を再生する演奏処理部と、取得した前記音声から抽出した音声データと、再生された前記採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する採点値算出部と、算出した前記採点値を提示する提示部と、を有するカラオケシステムが明らかとなる。このようなカラオケシステムによれば、歌唱採点機能による採点が正しく行われるかを判断するための情報を提示できる。
【0016】
<実施形態>
図1図5を参照して、実施形態に係るカラオケシステム1000について説明する。
【0017】
==カラオケシステム==
図1に示すように、本実施形態に係るカラオケシステム1000は、カラオケ装置1及びリモコン装置50を含む。
【0018】
カラオケ装置1は、カラオケ楽曲の演奏、及び歌唱者がカラオケ歌唱を行うための装置である。
【0019】
カラオケ装置1は、カラオケ本体10、スピーカ20、表示装置30、及びマイク40を含む。カラオケ本体10は、選曲されたカラオケ楽曲の演奏制御、歌詞や背景映像等の表示制御といった、カラオケ歌唱に関する各種の制御を行う。スピーカ20はカラオケ本体10からの放音信号に基づいて放音するための構成である。表示装置30はカラオケ本体10からの信号に基づいて映像や画像を画面に表示するための構成である。マイク40は歌唱者の音声をカラオケ本体10に入力するための構成である。また、本実施形態において、マイク40は、リモコン装置50から放音される採点テスト用楽曲の所定音量の音声をカラオケ本体10に入力するために利用される(詳細は後述)。
【0020】
リモコン装置50は、カラオケ装置1と通信可能に接続(ペアリング)されている。リモコン装置50は、カラオケ装置1に対する各種操作を行うための装置である。リモコン装置50の表示画面には各種操作の指示入力を行うためのアイコン等が表示される。本実施形態におけるリモコン装置50は「操作端末」の一例である。
【0021】
ここで、本実施形態に係るカラオケシステム1は、採点テストを行うことができる。採点テストは、あるカラオケ装置において、歌唱採点機能による採点が正しく行われるか否かを確認するためのテストである。カラオケシステム1において採点テストを行う際の具体的な処理は後述する。
【0022】
==カラオケ本体==
[ハードウェア構成]
図2に示すように、カラオケ本体10は、制御部11、通信部12、記憶部13、音響処理部14、表示処理部15、及び操作部16を備える。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。
【0023】
(制御部)
制御部11は、カラオケ本体10の各種処理を制御する。制御部11は、CPUおよびメモリ(いずれも図示なし)を備える。CPUは、メモリに記憶された動作プログラムを実行することにより各種の制御機能を実現する。
【0024】
(通信部)
通信部12は、ルータ(図示なし)を介してカラオケ本体10をリモコン装置50と接続するためのインターフェースを提供する。
【0025】
(記憶部)
記憶部13は、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置であり、たとえばハードディスクドライブなどである。記憶部13は、カラオケ装置1によりカラオケ演奏を行うための複数の楽曲データを記憶する。
【0026】
楽曲データは、個々の楽曲を特定するための識別情報(楽曲ID)が付与されている。楽曲データは、伴奏データ、リファレンスデータ等を含む。伴奏データは、カラオケ演奏音の元となるMIDI形式のデータである。リファレンスデータは、歌唱者によるカラオケ歌唱を採点する際の基準として用いられるデータである。また、記憶部13は、各楽曲に対応する歌詞テロップを提示するための各種情報を含む歌詞テロップデータ、カラオケ演奏時に合わせて表示装置30等に表示される背景画像に対応する背景画像データ、及び楽曲の属性情報(曲名、歌手名、作詞・作曲者名、及びジャンル等の当該楽曲に関する情報)を記憶する。
【0027】
また、本実施形態において、記憶部13は、採点テスト用楽曲、及び基準採点値を記憶している。
【0028】
採点テスト用楽曲は、採点テストの際に使用する楽曲である。採点テスト用楽曲は、通常の楽曲データに加え、リファレンスデータを音声ファイル形式に変換したボーカル音声データを含む。なお、このボーカル音声データを含んだ採点テスト用楽曲の楽曲データをリモコン装置50に予め記憶させておく場合は、カラオケ装置1に記憶される採点テスト用楽曲の楽曲データにボーカル音声データを含めなくてもよい。
【0029】
通常の楽曲を採点テストで使用すると、伴奏音をマイク40が集音することにより採点値に影響を与える可能性がある。従って、採点テスト用楽曲を再生する際に再生音をスピーカ20から放音しないことが好ましい。採点テスト用楽曲のリファレンスデータは、リモコン装置50から放音されるボーカル音声データに基づく音声と比較して採点値を求める際の基準となるデータである。
【0030】
基準採点値は、算出した採点値と比較するための値であり、あるカラオケ装置において歌唱採点機能による採点が正しく行われるかを判断する際に利用できる。基準採点値は、各カラオケ装置に対して共通で用いられる値である。従って、基準採点値と算出した採点値とを比較することで、当該カラオケ装置の歌唱採点機能による採点が正しく行われているかどうかを判断できる。基準採点値は、リモコン装置50から所定の音量で放音させた採点テスト用楽曲の音声を所定の距離だけ離れた位置に配置されたマイク40で集音し、カラオケ装置1で当該音声から抽出した音声データと、採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより算出される値である。
【0031】
(音響処理部)
音響処理部14は、制御部11の制御に基づき、カラオケ楽曲に対する演奏の制御およびマイク40を通じて入力された歌唱音声信号の処理を行う。表示処理部15は、制御部11の制御に基づき、表示装置30における各種表示に関する処理を行う。操作部16は、パネルスイッチおよびリモコン受信回路などからなり、歌唱者によるカラオケ本体10のパネルスイッチあるいはリモコン装置RCの操作に応じて選曲信号、演奏中止信号などの操作信号を制御部11に対して出力する。制御部11は、操作部16からの操作信号を検出し、対応する処理を実行する。
【0032】
[カラオケ本体のソフトウェア構成]
図3はカラオケ本体10のソフトウェア構成例を示す図である。カラオケ本体10は、演奏処理部100、音声取得部200、採点値算出部300、及び提示部400を備える。演奏処理部100、音声取得部200、採点値算出部300、及び提示部400は、制御部11のCPUがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより実現される。
【0033】
(演奏処理部)
演奏処理部100は、伴奏データに基づいてカラオケ演奏を行う。たとえば、演奏処理部100は、あるカラオケ楽曲の楽曲IDの入力を受けると、当該楽曲IDに対応する楽曲データを記憶部13から読み出し、当該カラオケ楽曲のカラオケ演奏を行う。
【0034】
また、本実施形態に係る演奏処理部100は、採点テスト用楽曲を再生する。
【0035】
具体例として、カラオケ事業者の営業マンや店舗の従業員等、採点テストを行う者(以下「作業者」という)が、リモコン装置50の表示画面に表示されたメニュー画面から「採点テスト」ボタンを押下すると、リモコン装置50は、カラオケ装置1に対して採点テスト用楽曲の楽曲IDを送信する。
【0036】
演奏処理部100は、リモコン装置50から受信した楽曲IDを予約待ち行列に登録し、当該楽曲IDに対応する採点テスト用楽曲の楽曲データを記憶部13から読み出して再生待機状態とする。この際、演奏処理部100は、他のカラオケ楽曲(カラオケ歌唱用の楽曲)の予約を禁止することも可能である。
【0037】
また、演奏処理部100は、表示装置30の表示画面に採点テストを行う際の準備情報を提示してもよい。準備情報は、たとえば、マイク40の電源オンオフを確認するコメント(例:マイクの電源をオンにしてください)、リモコン装置50(スピーカ55。図3参照)とマイク40との配置に関する情報(例:リモコン装置のスピーカから2cmの距離にマイクを配置してください)、配置完了後の作業を指示するコメント(例:配置が完了したら、リモコン装置のメニュー画面で「配置完了」アイコンを選択してください)である。また、リモコン装置50とマイク40との配置を視覚的に認識しやすくするため、演奏処理部100は、マイク40のヘッドケースがリモコン装置50のスピーカ55に向いているような画像を表示させることも可能である。
【0038】
また、上述の通り、基準採点値を算出した時の条件と、採点テストを実施する条件を同じにするために、採点テストにおけるマイク40とリモコン装置50のスピーカ55との距離は、基準採点値を算出した時の距離と同じ値とする。基準採点値を算出した時のマイク40とリモコン装置50との距離は、「所定距離」に相当する。なお、カラオケ本体10と接続される歌唱者撮影用のカメラがカラオケルームに設置されている場合、このカメラを利用して、マイク40とリモコン装置50との距離が正しく配置されたことを検出し、その旨を報知する構成としてもよい。
【0039】
作業者は、上記準備情報、或いはカラオケシステム1のマニュアル等を参照しながら、マイク40をリモコン装置50から所定距離だけ離れた位置に配置した後、リモコン装置50のメニュー画面に表示されている配置完了ボタンを押下する。リモコン装置50は配置完了コマンドを演奏処理部100に送信する。
【0040】
演奏処理部100は、配置完了コマンドを受信した場合、演奏待ち状態にあった採点テスト用楽曲の再生を開始する。その際、演奏処理部100は、採点テスト用楽曲に含まれる伴奏データ等に基づく再生音を出力しないように、音響処理部14を制御する。
【0041】
なお、この際、演奏処理部100は、採点テスト用楽曲の再生と、リモコン装置50からの音声の放音のタイミングを同期するための同期信号をリモコン装置50に対して送信する。同期信号は、たとえば、放音のタイミングと、採点テスト用楽曲の再生のタイミングとを一致させるためのタイミングデータ、及び放音のテンポと採点テスト用楽曲の再生テンポを一致させるためのテンポデータを含む。
【0042】
また、演奏処理部100は、採点テスト用楽曲の楽曲IDを受信した後に、所定期間内に配置完了コマンドが受信されない場合、読み出した採点テスト用楽曲データと、予約待ち行列に登録している採点テスト用楽曲の楽曲IDを削除する。また、演奏処理部100は、改めて採点テストを行なう場合は、リモコン装置50から「採点チェック」ボタンの押下が再度必要である旨を表示装置30等に表示させ、他のカラオケ楽曲の予約が可能となるようにしてもよい。
【0043】
(音声取得部)
音声取得部200は、リモコン装置50から放音される採点テスト用楽曲の所定音量の音声を、リモコン装置50から所定距離の位置に配置されたマイク40を介して取得する。
【0044】
リモコン装置50は、演奏処理部100による採点テスト用楽曲の再生に伴って、採点テスト用楽曲の音声を所定音量で出力する(詳細は後述)。
【0045】
音声取得部200は、マイク40を介して、リモコン装置50から放音される音声を取得する。音声取得部200は、取得した音声から音高や音量等の音声データを抽出し、採点値算出部300に出力する。
【0046】
(採点値算出部)
採点値算出部300は、取得した音声から抽出した音声データと、再生された採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する。
【0047】
ここで、採点値算出部300で比較される音声データ及びリファレンスデータは、同一の採点テスト用楽曲に基づくものである。従って、通常であればこれらのデータは一致するため、カラオケ採点機能が正しく機能している場合には採点値が100点(または、ほぼそれに近い値)となるはずである。一方、何らかの原因によりカラオケ採点機能が正しく機能していない場合には、音声データとリファレンスデータとの差異が生じるため、算出される採点値が低い値となる。
【0048】
そこで、採点値算出部300は、取得した音声から抽出した音声データと、採点テスト用楽曲の演奏進行に基づいて読み出したリファレンスデータとを比較し、それぞれのピッチや音量を比較して採点処理を行う。
【0049】
採点値算出部300は、たとえば、採点テスト用楽曲の再生後、得られた音声データとリファレンスデータとを比較し、採点値を算出する。或いは、採点値算出部300は、所定の演奏区間の音声データが入力される毎に、対応する演奏区間のリファレンスデータと比較・採点を行い、採点テスト用楽曲の再生後に算出された各演奏区間の採点値を平均した値を採点値として算出する。採点値算出部300は、算出した採点値を提示部400に出力する。
【0050】
(提示部)
提示部400は、算出した採点値を提示する。たとえば、提示部400は、算出した採点値を表示装置30の表示画面に表示させる。
【0051】
また、提示部400は、算出した採点値と基準採点値とを併せて提示することも可能である。この場合、提示部400は、算出した採点値を表示させる際、記憶部13から基準採点値を読み出して並列で表示させる。或いは、提示部400は、算出した採点値と基準採点値との比較結果に基づく採点結果を提示することでもよい。たとえば、提示部400は、算出した採点値と基準採点値との差分を取り、その差分値を表示させる。
【0052】
なお、算出した採点値の提示は、音声によって行ってもよい。たとえば、提示部400は、スピーカ20を介し、算出した採点値を放音させることで、作業者に対して提示することも可能である。或いは、提示部400は、リモコン装置50に対して算出した採点値を送信し、リモコン装置50の表示画面において提示させることも可能である。
【0053】
また、提示部400は、採点値算出部300が算出したリファレンスデータに含まれる特定の音域毎の採点値を提示してもよい。この場合、記憶部13に記憶された基準採点値と共に、予め各カラオケ装置1に対して共通で用いられる値である基準音域別採点値も記憶しておき、この基準音域別採点値と、算出された特定の音域毎の採点値を比較することで、音声経路の周波数特性上の不具合を報知することができる。
【0054】
==リモコン装置==
[ハードウェア構成]
図4はリモコン装置50のハードウェア構成例を示す図である。リモコン装置50は、記憶部51、通信部52、表示部53、操作部54、スピーカ55及び制御部56を備える。
【0055】
記憶部51は、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置である。記憶部51は、楽曲を選曲する際に使用する目次リストや、各楽曲に対して予め設定されている演奏条件等を記憶している。また、本実施形態に係る記憶部51は、カラオケ本体10の記憶部13に記憶された採点テスト用楽曲の楽曲データのうち、少なくともリファレンスデータに基づくボーカル音声データを記憶している。
【0056】
通信部52は、リモコン装置50とカラオケ本体10とを接続するためのインターフェースを提供する。表示部53はカラオケ楽曲の検索画面や採点テストのメニュー画面等、各種表示を行うための構成である。操作部54は、リモコン装置50に対して各種入力を行うための構成である。操作部54は、リモコン装置50のハードウェア上に設けられるボタン等であってもよいし、表示部53に表示されるアイコンであってもよい。操作部54を介して行われた指示入力は、指示コマンドとして通信部52を介してカラオケ装置1に送信される。スピーカ55は、制御部56からの指示に基づいて、所定の音声を放音するための構成である。
【0057】
制御部56は、リモコン装置50における各種の制御を行う。制御部56は、CPUおよびメモリ(いずれも図示無し)を備える。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。
【0058】
本実施形態において、制御部56は、放音処理部56aを有する。放音処理部56aは、スピーカ55を介し、採点テスト用楽曲の音声を所定音量で放音させる。
【0059】
具体的には、放音処理部56aは、記憶部51から採点テスト用楽曲の楽曲データを読み出し、カラオケ装置1から送信された同期信号に含まれるタイミングデータに基づいて、カラオケ装置1における採点テスト用楽曲の再生と同じタイミング、且つ同期信号に含まれるテンポデータに基づいて、カラオケ装置1における採点テスト用楽曲の再生と同じテンポでボーカル音声データに基づく音声の放音を開始する。
【0060】
この際、基準採点値を算出した時の条件と、採点テストを実施する条件を同じにするために、リモコン装置50から出力される所定音量は、基準となる採点値を算出した時の音量とする。
【0061】
なお、採点テスト用楽曲を記憶部51に予め記憶させておく代わりに、採点テストの指示がある都度、カラオケ装置1からリモコン装置50に対して、採点テスト用楽曲の楽曲データを送信することも可能である。たとえば、作業者がリモコン装置50の表示画面に表示されたメニュー画面から「採点テスト」ボタンを押下すると、リモコン装置50は、カラオケ装置1に対して採点テスト用楽曲の楽曲IDを送信する。カラオケ装置1は、当該楽曲IDに対応する楽曲データを記憶部13から読み出し、リモコン装置50に送信する。
【0062】
また、放音処理部56aが放音させる音声は、カラオケ装置1から採点テスト用楽曲の再生に伴って送信される採点テスト用楽曲のボーカル音声データをストリーミングにてそのまま出力したものであってもよい。
【0063】
==カラオケシステムにおける処理について==
次に、図5を参照して本実施形態に係るカラオケシステム1000における処理について述べる。図5は、カラオケシステム1000における処理例を示すフローチャートである。
【0064】
作業者は、リモコン装置50を介して採点テストの指示入力を行う。リモコン装置50は、採点テスト用楽曲の楽曲IDをカラオケ装置1に送信する(採点テスト用楽曲の楽曲IDを送信。ステップ10)。
【0065】
演奏処理部100は、ステップ10で送信された楽曲IDに対応する採点テスト用楽曲を記憶部13から読み出して、予約待ち行列に登録する(採点テスト用楽曲の予約。ステップ11)。
【0066】
作業者は、リモコン装置50とマイク40とが所定距離となるように位置を調整した後、調整完了の入力を行う。リモコン装置50は、位置調整が完了した旨の信号をカラオケ装置1に送信する(リモコン装置とマイクとの位置調整が完了。ステップ12)。
【0067】
演奏処理部100は、同期信号をリモコン装置50に送信しつつ、採点テスト用楽曲の再生を開始する(採点テスト用楽曲を再生。ステップ13)。
【0068】
一方、放音処理部56aは、記憶部51から採点テスト用楽曲の楽曲データを読み出し、演奏処理部100から受信した同期信号に基づいてスピーカ55から音声を所定の音量で放音させる(所定音量で音声を放音。ステップ14)。
【0069】
音声取得部200は、マイク40を介してステップ14で放音される音声を取得する(音声の取得。ステップ15)。
【0070】
採点値算出部300は、ステップ15で取得した音声から抽出した音声データと、ステップ13で再生された採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する(採点値の算出。ステップ16)。
【0071】
提示部400は、ステップ16で算出した採点値を提示する(採点値の提示。ステップ17)。
【0072】
このように、本実施形態に係るカラオケシステム1000は、リモコン装置50及びカラオケ装置1を含む。リモコン装置50は、スピーカ55を介し、採点テスト用楽曲の音声を所定音量で放音させる放音処理部56aを有する。カラオケ装置1は、採点テスト用楽曲を再生する演奏処理部100と、リモコン装置50から放音される採点テスト用楽曲の所定音量の音声を、リモコン装置50から所定距離だけ離れた位置に配置されたマイク40を介して取得する音声取得部200と、取得した音声から抽出した音声データと、再生された採点テスト用楽曲のリファレンスデータとを比較することにより、採点値を算出する採点値算出部300と、算出した採点値を提示する提示部400と、を有する。
【0073】
リモコン装置50から放音される音声の元となる採点テスト用楽曲と、カラオケ装置1で再生される採点テスト用楽曲とは同一である。上述の通り、カラオケ採点機能が正しく機能している場合、採点値は100点かそれに近い値となる。よって、作業者は表示された採点値を確認することにより、歌唱採点機能による採点が正しいかどうかを確認できる。すなわち、本実施形態に係るカラオケシステム1000によれば、従来のカラオケ装置及びリモコン装置に、最小限の機能と採点テスト用楽曲の楽曲データを追加することにより、歌唱採点機能による採点が正しく行われているかを判断するための情報を提示できる。
【0074】
また、提示部400は、算出した採点値と比較するための基準採点値を併せて提示する、または算出した採点値と基準採点値との比較結果に基づく採点結果を提示することが可能である。このように、採点値と併せて基準採点値と採点値を提示したり、基準採点値と採点値を比較した結果を提示することにより、歌唱採点機能による採点が正しく行われるかをより正確に判断することができる。
【0075】
また、所定音量は、基準採点値を設定した際にリモコン装置50から出力された音量と等しく、所定距離は、基準採点値を設定した際のリモコン装置50とマイク40との距離と等しい。このように所定音量及び所定距離を設定することにより、基準採点値を設定した際と同じ条件で音声取得を行うことができる。従って、算出した採点値と基準採点値との比較を正確に行うことができる。
【0076】
また、演奏処理部100は、採点テスト用楽曲を再生する際に再生音を出力しないように制御することにより、カラオケ装置1で楽曲を再生したとしても伴奏音が放音されることが無い。よって、採点テスト中にマイク40で伴奏音を集音することが無いため、採点処理に影響を与えることが無い。すなわち、採点値算出部300において、より正確な採点値を算出することができる。
【0077】
<その他>
上記実施形態におけるリモコン装置50の代わりに、作業者が所有する携帯端末で同様の機能を実現することでもよい。この場合、予めダウンロードされた専用アプリケーションソフトウェアを実行することにより、携帯端末においてリモコン装置と同様の処理が可能となる。この場合の携帯端末は「操作端末」に相当する。また、携帯端末及びカラオケ装置1が「カラオケシステム」を構成する。
【0078】
なお、携帯端末からカラオケ装置1に対して各種の操作を行う際には、専用アプリケーションソフトウェアを実行している携帯端末と、カラオケ装置1とをペアリングすることにより行うことができるようになる。ペアリングとは、所定の携帯端末と所定のカラオケ装置とが通信可能となるように、サーバ装置(図示無し)等で関連付けを行うことをいう。
【0079】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 カラオケ装置
10 カラオケ本体
50 リモコン装置
100 演奏処理部
200 音声取得部
300 採点値算出部
400 提示部
1000 カラオケシステム
図1
図2
図3
図4
図5