(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806629
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】屋外構造体
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20201221BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20201221BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
E04D13/04 J
E04F15/00 G
E04B1/00 501Q
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-100608(P2017-100608)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-193826(P2018-193826A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史隆
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−241768(JP,A)
【文献】
特開2010−236313(JP,A)
【文献】
実開昭55−018502(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0034672(US,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−0780490(KR,B1)
【文献】
国際公開第01/065019(WO,A1)
【文献】
特開2006−077446(JP,A)
【文献】
特開2001−220814(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0290233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04B 1/00
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同一の方向に沿って延在する下地材を複数並設し、かつ前記下地材の上部に互いに同一の方向に沿って延在するデッキ材を複数並設することによってデッキ部を構成した屋外構造体であって、
前記下地材は、前記デッキ材に対向する部位に座面を有し、かつ両側縁部にそれぞれ係合部を有したものであり、互いに隣接する下地材は、前記係合部が上下に対向した状態で相互に並設され、
前記デッキ材は、前記座面に取り付けられた保持部材によって前記下地材に保持されており、
前記下地材には、前記座面よりも低い位置に長手に沿って延在する樋部が設けられ、かつ前記座面に隣接する部位には、前記樋部に向けて漸次低く傾斜した傾斜面が設けられていることを特徴とする屋外構造体。
【請求項2】
前記下地材は、前記係合部の間となる部位に長手に沿った樋状通路を有し、かつ前記樋状通路の外部において前記樋状通路の両側となる部位にそれぞれ前記座面を有したものであり、
前記座面に対して前記樋状通路とは反対側となる部位にそれぞれ個別の樋部を有し、前記樋部の内底面と前記座面との間が前記傾斜面によって連続していることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造体。
【請求項3】
前記下地材において前記デッキ材の下面に当接する上面よりも低くなる位置に前記座面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の屋外構造体。
【請求項4】
前記樋状通路と前記座面との間の隔壁部は、前記座面よりも上方に突出していることを特徴とする請求項2に記載の屋外構造体。
【請求項5】
前記デッキ材の延在方向に対して前記下地材の延在方向が交差するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニー等のデッキ部を有した屋外構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルコニー等の屋外構造体にあっては、単にデッキ材を並設した場合、降雨時においてデッキ材の上面に降った水がそのままデッキ材の相互間から下方に漏水するおそれがある。このため従来では、両側縁部に係合部を有した下地材をデッキ材の下方に並設することによってデッキ部を構成し、上述の問題を解決するようにしたものも提供されている。すなわち、下地材の一方の縁部に設けられた係合部は、上方の上横板部と、上横板部から下方に向けて延在した屈曲部とを有し、他方の縁部に設けられた係合部は、下方の下横板部と、下横板部から上方に向けて延在した屈曲部とを有している。隣接する下地材の間においては、上横板部及び下横板部が上下に対向する状態で並設されることになる。こうした下地材を備える屋外構造体によれば、デッキ材の相互間を水が通過した場合にも、下横板部によって受け止められるとともに、上横板部の水が隣接する下地材の下横板部によって受け止められることになり、下方への漏水を防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−241768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の屋外構造体では、デッキ材を下地材に取り付ける場合に保持部材が適用されている。保持部材は、下地材に取り付けるための取付部と、デッキ材を押さえる押さえ板部とを備えたものである。この保持部材は、取付部を介して下地材の座面に取付ネジを螺合することによって下地材に取り付けられており、下地材と押さえ板部との間にデッキ材を挟持することによって下地材にデッキ材を保持している。ここで、保持部材を取り付けるために取付ネジが螺合される座面は、その作業性を考慮した場合、水平に延在していることが好ましい。しかしながら、水平に延在された座面には、デッキ材の相互間を通過した水が滞留し易く、取付ネジや保持部材に錆や腐食といった問題を招来するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、取付ネジを適用して保持部材を取り付けた場合にも、取付ネジを螺合する際の作業性を損なうことなく、取付ネジや保持部材に錆や腐食等の問題を防止することのできる屋外構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る屋外構造体は、互いに同一の方向に沿って延在する下地材を複数並設し、かつ前記下地材の上部に互いに同一の方向に沿って延在するデッキ材を複数並設することによってデッキ部を構成した屋外構造体であって、前記下地材は、前記デッキ材に対向する部位に座面を有し、かつ両側縁部にそれぞれ係合部を有したものであり、互いに隣接する下地材は、前記係合部が上下に対向した状態で相互に並設され、前記デッキ材は、前記座面に取り付けられた保持部材によって前記下地材に保持されており、前記下地材には、前記座面よりも低い位置に長手に沿って延在する樋部が設けられ、かつ前記座面に隣接する部位には、前記樋部に向けて漸次低く傾斜した傾斜面が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、座面に対して傾斜面が連続して設けられているため、取付ネジの螺合作業を容易化すべく座面を水平に構成した場合にも、座面に到達した水が傾斜面を通じて樋部に導かれることになり、座面に滞留する事態を抑えることが可能となる。これにより、取付ネジを適用して保持部材を下地材に取り付けた場合にも、取付ネジや保持部材に錆や腐食等の問題を招来するおそれがなくなる。
【0008】
また本発明は、上述した屋外構造体において、前記下地材は、前記係合部の間となる部位に長手に沿った樋状通路を有し、かつ前記樋状通路の外部において前記樋状通路の両側となる部位にそれぞれ前記座面を有したものであり、前記座面に対して前記樋状通路とは反対側となる部位にそれぞれ個別の樋部を有し、前記樋部の内底面と前記座面との間が前記傾斜面によって連続していることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、樋状通路の水が下地材の座面に到達するおそれがなくなる。
【0010】
また本発明は、上述した屋外構造体において、前記下地材において前記デッキ材の下面に当接する上面よりも低くなる位置に前記座面を設けたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、デッキ材の下面と座面との隙間に水が滞留する事態を招来するおそれがない。
【0012】
また本発明は、上述した屋外構造体において、前記樋状通路と前記座面との間の隔壁部は、前記座面よりも上方に突出していることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、樋状通路の水が下地材の座面に到達する事態をより確実に防止することができる。
【0014】
また本発明は、上述した屋外構造体において、前記デッキ材の延在方向に対して前記下地材の延在方向が交差するように配置されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、デッキ材から滴下した水が樋部で確実に受け止められることになり、デッキ材と下地材との延在方向が一致している場合に比べて排水効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、座面に対して傾斜面が連続して設けられているため、取付ネジの螺合作業を容易化すべく座面を水平に構成した場合にも、座面に到達した水が傾斜面を通じて樋部に導かれることになり、座面に滞留する事態を抑えることが可能となる。これにより、取付ネジを適用して保持部材を下地材に取り付けた場合にも、取付ネジや保持部材に錆や腐食等の問題を招来するおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態である屋外構造体の要部平面図である。
【
図2】
図1に示した屋外構造体の要部拡大縦断面側面図である。
【
図3】
図1に示した屋外構造体を後方から前方に向けて見た拡大縦断面図である。
【
図4】
図1に示した屋外構造体の一部を破断して示す斜視図である。
【
図5】
図1に示した屋外構造体で適用する下地材の斜視図である。
【
図6】
図1に示した屋外構造体において下地材に対するデッキ材の保持構造を示す要部拡大断面側面図である。
【
図7】
図1に示した屋外構造体で適用する保持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る屋外構造体の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1〜
図4は、本発明の実施の形態である屋外構造体を示したものである。ここで例示する屋外構造体は、建築物の上階となる部分の外壁面Wからデッキ部10が突出するように設けられたバルコニーである。なお、以下においては便宜上、バルコニーにおいて建築物の外壁面Wから離隔する方向を前方、建築物に近接する方向を後方として説明を行うこととする。
【0019】
デッキ部10は、建築物の外壁面Wに取り付けた躯体取付用部材11の両側に妻梁12(
図1では一方のみ表示)を備えるとともに、妻梁12の間となる部位に中間根太13を備え、これら妻梁12及び中間根太13の突出端部間を前桁14によって互いに連結することにより構成してある。妻梁12、中間根太13及び前桁14によって囲まれる矩形領域15には、それぞれ複数の下地材20及び複数のデッキ材30がそれぞれ互いに並設してある。
【0020】
妻梁12、中間根太13、前桁14は、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、ほぼ水平となるように配設してある。本実施の形態では、中空で縦長の長方形状となる角筒状に構成した妻梁12、中間根太13、前桁14を適用している。前桁14において矩形領域15に対向する内側面14aには前桁14の長手に沿ってそれぞれ桁樋16が設けてあり、妻梁12及び中間根太13において矩形領域15に対向する内側面12a,13aには妻梁12及び中間根太13の長手に沿ってそれぞれ梁樋17が設けてある。
【0021】
桁樋16は、前桁14と一体に成形したもので、内側横板部16a及び内側屈曲部16bを有して構成してある。内側横板部16aは、前桁14の内側面14aから矩形領域15に向けてほぼ水平に延在した平板状部分である。内側屈曲部16bは、内側横板部16aの中間部から上方に向けて突出した平板状部分であり、前桁14の内側面14aとの間に上方に開口した樋部を構成している。内側屈曲部16bの上端縁は、前桁14の上端面よりも下方となるように設定してある。桁樋16の両端部はいずれも開口しており、受け入れた水を両端部から排出することが可能である。
【0022】
梁樋17は、別体の樋部材17Aを妻梁12の内側面12a及び中間根太13の内側面13aに取り付けることによって構成したもので、桁樋16よりも下方となる部位において妻梁12及び中間根太13の長手に沿ってほぼ水平に延在している。樋部材17Aは、平板状を成す底壁板17Aaと、底壁板17Aaの両側からそれぞれ上方に向けて延在した側壁板17Abとを有して構成したもので、一方の側壁板17Abを介して妻梁12及び中間根太13に取り付けてある。それぞれの梁樋17は、両端部がいずれも閉塞してある一方、個々の前端部下面に排水樋18が接続してあり、排水樋18を介して排水が可能である。
【0023】
下地材20は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材である。本実施の形態では、
図5に示すように、下地本体部21及び下地本体部21の両側縁部に設けた係合部22,23を有して下地材20を構成している。下地本体部21は、断面がほぼ横長矩形の角筒状を成すもので、中央部に樋状通路21aを有している。樋状通路21aは、上面が開口した断面矩形の凹溝部分である。係合部22,23は、下地本体部21からほぼ水平に延在した平板状を成す横板部22a,23aと、個々の横板部22a,23aに設けた屈曲部22b,23bとを有して構成してある。横板部22a,23aは、下地本体部21の一方の縁部においては上隅部から延在し、かつ他方の縁部においては下隅部から延在している。屈曲部22b,23bは、上下に沿って延在した平板状部分である。下地本体部21の上隅部に設けた横板部(以下、上横板部22aという)には、その延在縁部から下方に向けて屈曲部22bが設けてあり、下隅部に設けた横板部(以下、下横板部23aという)には、その延在縁部から上方に向けて屈曲部23bが設けてある。後述する下地材20の上面20aとは、下地本体部21の上面、上横板部22aの上面及び後述する縁板部26の上面の総称であり、互いに同一の平面上に位置している。
【0024】
上述の構成を有する下地材20は、上横板部22aが前方となる状態で前桁14に沿って配置し、左右の両端部が妻梁12に設けた梁樋17の上面及び中間根太13に設けた梁樋17の上面に載置された状態で前後に複数並設してある。梁樋17に対しては、それぞれ樋状通路21aを介して下地ネジS1を螺合することにより固定してある。下地材20の中間部分は、前桁14と躯体取付用部材11との間に設けたブラケット1に下地ネジS1で固定しても良い。
図2からも明らかなように、互いに隣接する下地材20は、上横板部22aに設けた屈曲部22bが下横板部23aに対向し、かつ下横板部23aに設けた屈曲部23bが上横板部22aに対向するように並設してある。つまり、隣接する下地材20の間においては、係合部22の上横板部22aと係合部23の下横板部23aとが上下方向において互いに重なっており、上下に沿った隙間が生じることがない。しかも、下横板部23aにおいては、延在縁部から上方に向けて屈曲部23bが延在しているため樋の機能を有することになり、隣接する下地材20の相互間に水が滴下した場合に、下方に漏水させることなくその上面において確実に受け取ることが可能である。
【0025】
図2からも明らかなように、もっとも前方に配置した下地材20と前桁14との間には、アタッチメント40が配設してある。アタッチメント40は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材である。本実施の形態では、上下に沿って延在する平板状の本体部41を有するとともに、本体部41の両側縁部にそれぞれ補助横板部42,43を有したアタッチメント40を適用するようにしている。本体部41は、下端を梁樋17の上面に載置させた場合に上端が、後述するデッキ材30の上面30aよりもわずかに上方に突出するように設定したものである。この本体部41には、上端縁にカバー部44が設けてあるとともに、中間部に桁樋当接部45が設けてある。カバー部44は、本体部41の上端縁から後方に向けて略直角に屈曲して延在したものである。桁樋当接部45は、本体部41の前方に臨む表面から前方に向けてほぼ水平に延在した後、上方に向けてほぼ直角に屈曲して延在した部分である。この桁樋当接部45は、梁樋17の上面において本体部41を桁樋16において内側横板部16aの延在縁部に当接させた場合に桁樋16の内側屈曲部16bに当接するように寸法が設定してある。
【0026】
本体部41の後縁側に設けた補助横板部(以下、後方補助横板部42という)は、本体部41の下端縁から後方に向けてほぼ水平に延在した平板状を成している。後方補助横板部42の寸法は、下地材20に設けた上横板部22aの寸法よりも大きく構成してある。一方、本体部41の前縁側に設けた補助横板部(以下、前方補助横板部43という)は、桁樋当接部45の上端縁から前方に向けてほぼ水平に延在した平板状を成している。これらの補助横板部42,43には、それぞれの延在縁部に補助屈曲部46,47が設けてある。後方補助横板部42においては、補助屈曲部46が上方に向けて延在し、前方補助横板部43においては、補助屈曲部47が下方に向けて延在している。後方補助横板部42の補助屈曲部46は、上下に沿った寸法が下地材20における下地本体部21の高さよりもわずかに小さく構成してあり、梁樋17の上面に載置させた場合に上横板部22aとの間に配置することが可能である。図からも明らかなように、本実施の形態では、本体部41の上端縁から前方に向けてカバー部44を延長するとともに、前方補助横板部43の前端縁から上方に向けて補助屈曲部47を延長し、互いの延長部を連結することでアタッチメント40に中空部48を構成するようにしている。図からも明らかなように、アタッチメント40の前後(短手)に沿った寸法は、下地材20に比べて短く構成してある。
【0027】
デッキ材30は、バルコニーの床面となる板状部材であり、木粉を含む樹脂によって成形した中空の板状を成すものを適用し、妻梁12に沿った姿勢で複数並設するようにしている。デッキ材30の両側縁部には、後述する保持金具(保持部材)50の押さえ板部51によって下地材20との間に挟持される挟持部31が設けてある。本実施の形態では、前方に向けてわずかに下方となるように、デッキ材30が傾斜した状態で配設してある。それぞれのデッキ材30は、下地材20に取り付けた保持金具50により挟持部31を介して下地材20の上面20aに保持してある。
【0028】
保持金具50は、
図6及び
図7に示すように、押さえ板部51、基準板部52及び一対の取付板部53,54を有したもので、ステンレス等の金属によって一体に成形してある。押さえ板部51は、矩形の平板状を成すものである。押さえ板部51の長手に沿った寸法は、下地材20に設けた樋状通路21aの幅寸法よりも大きく構成してある。基準板部52は、押さえ板部51のほぼ中央となる部分からほぼ直角となるように延在したものである。基準板部52の幅は、押さえ板部51と同一である。基準板部52の延在縁部には、その両隅部に突出片52aが設けてある。取付板部53,54は、突出片52aの突出縁部から押さえ板部51とほぼ平行となるように延在した平板状部分である。取付板部53,54の相互間隔は、下地材20に設けた樋状通路21aの幅寸法よりも大きく構成してある。図からも明らかなように、一方の取付板部53は、他方の取付板部54よりも大きな幅を有しており、突出片52aから内方に向けて突出している。
【0029】
この保持金具50が取り付けられる下地材20には、樋状通路21aの外部においてその両側となる部位に座面60aが構成してある。座面60aは、樋状通路21aの両側に位置する隔壁部61の上方部からそれぞれ互いに離反する方向に向けて水平となるように設けた平板部60の上面に構成してある。座面60aの位置は、隔壁部61の上端よりも低く設定してある。より具体的には、隔壁部61の上端と座面60aとの距離が、基準板部52からの突出片52aの突出寸法よりわずかに小さい寸法となるように設定してある。またこの距離は、上述した保持金具50の取付板部53,54を座面60aに配置した状態で取付ネジS2を螺合した場合にも取付ネジS2の頭部が下地材20の上面20aから突出しないようにも設定してある。
【0030】
それぞれの座面60aを構成する平板部60には、樋状通路21aから離隔する方向に向けて傾斜板部62、底板部63及び側板部64が連続している。傾斜板部62は、平板部60の縁部から漸次低くなるように傾斜して延在するものである。底板部63は、傾斜板部62の最下端から水平に延在したものである。側板部64は、底板部63の延在縁部から上方に向けて延在し、下地本体部21の上面20aを構成する部分に接続している。すなわち、下地材20においてデッキ材30に対向する部位には、樋状通路21aの外部において隔壁部61の上端よりも低い高さ位置にほぼ水平の座面60aが構成されているとともに、座面60aに隣接する部位に傾斜板部62、底板部63及び側板部64によって樋部65が構成されている。樋部65の内底面65aと座面60aとの間には、傾斜板部62によって構成された傾斜面62aが連続して構成されることになる。
【0031】
さらに、樋状通路21aの隔壁部61には、それぞれ縁板部26が設けてある。縁板部26は、隔壁部61の上端からほぼ水平に延在するもので、樋状通路21aの両側縁部を覆うとともに、座面60aの上方を覆うようにわずかに突出している。座面60a側への縁板部26の突出量は、上述した保持金具50における取付板部53の突出片52aからの突出寸法とほぼ等しい。
【0032】
上述の構成を有する下地材20に対して保持金具50は、取付板部53,54をそれぞれ座面60aに載置させ、この状態から取付板部53,54を介して座面60aを構成する平板部60に取付ネジS2を螺合することによって下地材20に取り付けられる。このとき、幅の広い取付板部53の突出縁部を座面60aと縁板部26との間に配置すれば、取付ネジS2を螺合する以前に保持金具50が下地材20に係合された状態となる。下地材20に取り付けられた保持金具50は、押さえ板部51が下地材20の上面20aに対向した状態となり、押さえ板部51と下地材20の上面20aとの間にデッキ材30の挟持部31を保持することができる。また、座面60aが水平に設けられているため、取付ネジS2を螺合する作業を容易に行うことが可能である。
【0033】
上記のように構成したバルコニーでは、雨天時においてデッキ材30の上面30aに降った雨がデッキ材30の傾斜に従って前方に向かって誘導され、個々の前端縁から下方に落下する。デッキ材30の前端縁から落下した雨水は、アタッチメント40の本体部41と補助屈曲部46との間において後方補助横板部42の上面で受け取られた後、妻梁12もしくは中間根太13に向けて誘導され、端部から落下して梁樋17で受け止められる。前桁14とアタッチメント40との間に降った雨については、前桁14の桁樋16によって受け止められ、妻梁12もしくは中間根太13に向けて誘導され、端部から落下して梁樋17で受け止められる。梁樋17の雨水は、前方に誘導された後、排水樋18を介して地表に誘導されることになる。
【0034】
この間、デッキ材30の上面30aに降った雨の一部は、デッキ材30の相互間から下方に進行することになる。しかしながら、本実施の形態のバルコニーによれば、デッキ材30の下方に下地材20を設けるようにしているため、デッキ材30の相互間を通過した雨水は、下地材20によって受け止められることになり、デッキ部10から直接地表に落下するおそれがない。
【0035】
すなわち、下地材20の上面20aに到達した雨水は、上方に開口する樋状通路21aで受け止められるため、樋状通路21aにおいて妻梁12もしくは中間根太13に向けて誘導され、端部から落下して梁樋17で受け止められる。また、下地材20の上面20aに到達した雨水は、そのまま妻梁12もしくは中間根太13に向けて誘導され、端部から落下して梁樋17で受け止められる。下地材20の上面20aを移動する雨水は、仮に途中で隣接する下地材20に向けて移動したとしても、下地本体部21と屈曲部23bとの間において下横板部23aで受け止められ、地表に落下することなく、確実に梁樋17に誘導されることになる。従って、デッキ材30の相互間を通過した雨水が直接地表に落下する事態を招来することがない。
【0036】
ここで、デッキ材30を通過した雨水の一部には、下地材20の座面60aに到達するものもある。しかしながら、上述バルコニーでは、デッキ材30の下面30bよりも低い位置に座面60aが設けられているとともに、座面60aよりも低い位置に長手に沿って延在する樋部65が設けられ、かつ座面60aに隣接する部位には樋部65に向けて漸次低く傾斜した傾斜面62aが設けられている。このため、座面60aに到達した雨水は、傾斜面62aを通じて樋部65に導かれ、樋部65を介して梁樋17に排出されることになり、座面60aに滞留することがない。これにより、取付ネジS2を適用して保持金具50を下地材20に取り付けた場合にも、取付ネジS2や保持金具50に錆や腐食等の問題を招来するおそれがなくなる。しかも、座面60aは、樋状通路21aの外部に設けられたものであり、さらには、樋状通路21aと座面60aとの間に介在する隔壁部61の上端には縁板部26が設けてある。このため、樋状通路21aに多量の雨水が流れ込んだ場合にも、その水が座面60aに到達するおそれがなく、取付ネジS2や保持金具50に錆や腐食等の問題が生じる事態をより確実に防止することができるようになる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、樋状通路21aの外部に座面60aを設けるようにしているが、樋状通路21aの内部に座面60aを設けるようにしても構わない。この場合、傾斜面62aは、樋状通路21aの内底面に接触している必要はなく、座面60aから単に樋状通路21aに向けて低くなるように傾斜していれば良い。また、デッキ材30の延在方向に対して下地材20の延在方向が交差するように配置されているバルコニーを例示しているため、デッキ材30の相互間を通過した雨水等の水が樋状通路21aや下地材20の下横板部23a、樋部65で受け止められることになるが、下地材20及びデッキ材30を互いに同じ方向に延在させてデッキ部10を構成しても良い。さらに、前桁14と下地材20との間にアタッチメント40を介在させるようにしているが、必ずしもアタッチメント40を設ける必要はない。
【0038】
また、上述した実施の形態では、傾斜面62aが樋部65の一部を構成しているが、座面に連続していれば樋部65とは別に傾斜面を設けてももちろん良い。
【符号の説明】
【0039】
10 デッキ部、20 下地材、20a 上面、21a 樋状通路、22,23 係合部、30 デッキ材、30b 下面、50 保持金具、60a 座面、61 隔壁部、62a 傾斜面、63 底板部、64 側板部、65 樋部、65a 内底面、S2 取付ネジ