特許第6806639号(P6806639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806639
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】墨出し装置、及び墨出し方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20201221BHJP
   G01C 11/06 20060101ALI20201221BHJP
   B25H 7/04 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G01C15/00 103C
   G01C11/06
   G01C15/00 101
   B25H7/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-130417(P2017-130417)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-15511(P2019-15511A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】永元 直樹
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】千葉 史隆
(72)【発明者】
【氏名】春山 真一郎
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3165386(JP,U)
【文献】 特開2010−032216(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031504(WO,A1)
【文献】 特開平05−149750(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0146604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
B25H 7/04
G01C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム光を所定の面(以下、“墨出し面”とする)に走査して墨出しを行う墨出し装置において、
感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂が塗布されてなる前記墨出し面に、該感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるビーム光を走査する光源と、
該墨出し面の凹凸を検知する凹凸検知手段と、
該凹凸にかかわらず該墨出し面の正面から見て直線の光跡が描けるように前記ビーム光の入射角度を前記凹凸検知手段による検知結果に基づいて随時変更する入射角度変更手段と、
を備えたことを特徴とする墨出し装置。
【請求項2】
前記凹凸検知手段は、墨出しを行う構造物のCADデータを記憶している手段及びステレオ写真である、
ことを特徴とする請求項1に記載の墨出し装置。
【請求項3】
前記凹凸検知手段は、前記墨出し面のステレオ写真を撮影するカメラと、該カメラにより撮影したステレオ写真から前記墨出し面の凹凸を解析する凹凸解析部と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の墨出し装置。
【請求項4】
前記凹凸検知手段は、墨出しを行う構造物のCADデータを記憶している手段及び3Dスキャナーである、
ことを特徴とする請求項1に記載の墨出し装置。
【請求項5】
前記凹凸検知手段は、前記3Dスキャナーにて取得したデータから前記墨出し面の凹凸を解析する凹凸解析部、を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の墨出し装置。
【請求項6】
ビーム光を所定の面(以下、“墨出し面”とする)に走査して墨出しを行う墨出し方法において、
該墨出し面の凹凸を検知する工程と、
感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂を前記墨出し面に塗布する工程と、
該墨出し面の凹凸にかかわらず該墨出し面の正面から見て直線の光跡が描けるように入射角度を調整しながら前記感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるビーム光を前記墨出し面に走査する工程と、
を備えたことを特徴とする墨出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム光を所定の面に走査して墨出しを行う墨出し装置及び墨出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事において、仕上げ工事の前に建物の柱の中心線や床・壁の仕上げ面の位置など、工事の基準となる線を構造体などにしるすことを墨出しという。現在、墨出しをするには、レーザー墨出し装置、オートレベルなどでレーザー光を床、壁、天井に当てて、水平や垂直、高さを確認し、墨壺を用いて床、壁、天井等の上に直線を引いたり、建物の位置を出したりすることが行われている。具体的には、図9に例示するように、地墨ポイントなどの基準となる点を基にしてレーザー墨出し装置を使って床や壁や天井等に直線を表示し、実際に線を描く作業は墨出し工が手作業で行うこととなる。なお、図中の符号L1は床の墨を示し、符号L2は壁の墨を示し、符号L3は天井の墨を示し、符号Nは地墨ポイントに置いたレーザー墨出し装置を示し、符号M1は鉛直点を示している。
【0003】
しかし、その場合は、作業に時間がかかってしまい、また、墨出しの精度は墨出し工の熟練度に依存せざるを得ないという問題点があった。また、図9の使用例で示されているようにレーザー光の放射で作り出した3次元空間内の平面を床、壁、天井等に投影しているため、平面と床、壁、天井等が交差する線を表示するのみであり、平面以外のレーザー放射の形を作り出すことは出来ないという問題もあった。
【0004】
また、前記墨出し装置については種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この種の墨出し装置は、上述のように工作物に対してビーム光源から線状にビーム光を走査するというものであり、操作が簡便なために種々の作業現場にて使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−197122号公報
【特許文献2】特開2008−256531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビーム光を使った墨出し装置の場合は、墨出し線を表示するためにビーム光を走査し続けなければならず、多くの墨出し線を表示するには多くの墨出し装置を使用しなければならないという問題があった。
【0007】
また、図10(a)に例示するようにビーム光Bを走査する面Aに段差D1や凹凸D2があると、一定の入射角度θ1でビーム光Bを照射したとしても、正面から見た光跡は同図(b)に例示するようになって、必ずしも直線とはならないという問題もあった。
【0008】
本発明は、上述の問題を解消することのできる墨出し装置及び墨出し方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、図6に例示するものであって、ビーム光(B)を所定の面(符号A参照。以下、“墨出し面”とする)に走査して墨出しを行う墨出し装置(1)において、
感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂が塗布されてなる前記墨出し面(A)に、該感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるビーム光(B)を走査する光源(2)と、
該墨出し面(A)の凹凸を検知する凹凸検知手段(3)と、
該凹凸にかかわらず該墨出し面(A)の正面から見て直線の光跡が描けるように前記ビーム光(B)の入射角度を前記凹凸検知手段(3)による検知結果に基づいて随時変更する入射角度変更手段(4)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点は、前記凹凸検知手段(3)が、墨出しを行う構造物のCADデータを記憶している手段及びステレオ写真であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、前記凹凸検知手段(3)が、前記墨出し面(A)のステレオ写真を撮影するカメラ(不図示)と、該カメラにより撮影したステレオ写真から前記墨出し面(A)の凹凸を解析する凹凸解析部(不図示)と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、前記凹凸検知手段(3)が、墨出しを行う構造物のCADデータを記憶している手段及び3Dスキャナーであることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の観点は、前記凹凸検知手段(3)が、前記3Dスキャナーにて取得したデータから前記墨出し面の凹凸を解析する凹凸解析部、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の観点は、ビーム光(図6の符号B参照)を所定の面(符号A参照。以下、“墨出し面”とする)に走査して墨出しを行う墨出し方法において、
該墨出し面(A)の凹凸を検知する工程と、
感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂を前記墨出し面(A)に塗布する工程と、
該墨出し面(A)の凹凸にかかわらず該墨出し面(A)の正面から見て直線の光跡が描けるように入射角度を調整しながら前記感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるビーム光(B)を前記墨出し面(A)に走査する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
上記した第1乃至6の観点によれば、前記墨出し面には感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂が塗布されており、前記ビーム光は該感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるものであるので、該ビーム光によって走査された部分の感光剤は発色させられる或いは該光硬化樹脂を硬化させることとなる。該光硬化樹脂を使用した場合には、該ビーム光によって硬化されていない部分を作業者が除去することにより、硬化された部分(前記ビーム光が走査された線状の部分)が残り、該部分を墨出し線として利用することができる。また、前記感光剤を使用した場合には、この感光剤の発色部分は、明確に目視でき、墨出し線として利用することができる。また、前記墨出し面に凹凸があったとしてもその凹凸の影響を受けることなく、正面から見て直線の線を描くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る墨出し方法の一例を示すフローチャート図である。
図2図2は、本発明に係る墨出し装置の構造等の一例を示すブロック図である。
図3図3は、キャリブレーションをする様子の一例を示す斜視図である。
図4図4は、後方交会を実施する様子の一例を示す斜視図である。
図5図5は、CADデータと描画データを入力する工程を説明するための斜視図である。
図6図6は、本発明に係る墨出し装置の構成の一例を示す模式図である。
図7図7は、光源の構成の一例を示す模式図である。
図8図8(a)(b)は、本発明の効果を説明するための模式図である。
図9図9は、レーザー墨出し装置の使用状態の従来例を示す斜視図である。
図10図10(a)(b)は、従来の問題点の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1乃至図8に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、本発明に係る墨出し方法の好適な実施の形態について説明する。
【0020】
本発明に係る墨出し方法は、図1に例示するものであって、
・ PC(パーソナルコンピュータ)から上下左右回転ミラー(図2の符号53参照)への回転角度とレーザービームの振れ角との相関を測定する工程(キャリブレーション工程、同図S1参照)と、
・ 基準点とレーザースポットをあわせた後に後方交会によるレーザー墨出し装置のポーズ計算をする工程(後方交会工程、同図S2参照)と、
・ 墨出しをする床、壁などのCADデータと墨出しする線の開始点と終点の3次元位置を入力する工程(CADデータと描画データを入力する工程、同図S3参照)と、
・ 墨出し予定位置周辺に感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂を塗布する工程(感光剤等塗布工程、同図S4参照)と、
・ PCからの制御による自動的なレーザー墨出しをする工程(レーザー墨出し工程、同図S5参照)と、
からなる。
【0021】
以下、この墨出し方法について詳細に説明する。
【0022】
<キャリブレーション工程>
この工程では、あらかじめPCから上下左右回転ミラー53への回転角度とレーザービームの振れ角との相関を以下の方法で測定する。
【0023】
キャリブレーションでは、図2のように装置からある距離に装置に垂直に面して設置した板にレーザースポットをあてて、以下のステップ1〜4を行う。
【0024】
ステップ1:
ミラー53が上下左右に回転してもレーザーが反射する位置が変わらないように設定しておき、その位置を原点とする。原点からのレーザービームがでる基準方向をz軸とし、z=z1の位置にZ軸に垂直な面をXY平面とし、その面に板を設置する。
【0025】
ステップ2:
このXY平面の板に任意数の複数ポイントを決める。図3では、アレー状にXY平面にnx x nyのポイントが決められている。それぞれのポイントの座標(xi,yi,z1)をもとに、(θxi,θyi)を計算しておく。
【0026】
ステップ3:
キャリブレーションの設定者が投影されたレーザースポットを見ながら制御コンピュータを制御してそれぞれのポイントにレーザービームを当て、そのときの、コマンドデータ(MirrorXi,MirrorYi)の値を記録する。これをすべてのポイントに対して行う。
【0027】
ステップ4:
この測定により、(θx,θy)の2次元空間における計測した角度(θxi,θyi)と、コマンドデータ(MirrorX,MirrorY)の2次元空間における計測したコマンドデータ(MirrorXi,MirrorYi)の関係を求めることができる。これをもとに、任意の(MirrorX,MirrorY)があたえられたとき、計測された(θxi,θyi)←→(MirrorXi,MirrorYi)の関係をもとに最小二乗法による最適関数の推定することにより、(θx,θy)を求めることが出来る。関数の代表例として、n次多項式を用いることができる。また、逆に、任意の(θx,θy)があたえられたとき、計測された(θxi,θyi)←→(MirrorXi,MirrorYi)の関係をもとに最小二乗法による最適関数の推定することにより、(MirrorX,MirrorY)を求めることも出来る。
【0028】
<後方交会工程>
この工程では、図4に例示するように、墨出しをする構造物(例えば、部屋)の任意の位置に自動レーザー墨出し装置を設置し、後方交会によって装置の位置と姿勢を以下の方法で計測する。
【0029】
すなわち、現場において、トータルステーション等で3次元位置が計測して位置が既知の複数点(図4中に符号Pで示す点)にレーザースポットをあわせ、そのときに読み取ったコマンドデータ(MirrorX,MirrorY)の値をもとに(θx,θy)を求める。これらの既知点は後に墨出しする線上にある必要はなく、任意の位置で良い。それぞれに既知点についてその3次元位置と(θx,θy)を得た後に、PnP(Perspective n Points)問題を解くことにより、自動レーザー墨出し装置の位置姿勢を求める。PnP問題を解くには最低4個必要であるが、多いほうが墨出し装置の位置姿勢はより正確になる。
【0030】
<CADデータと描画データを入力する工程>
この工程では、墨出しをする床、壁、天井の面の位置情報がふくまれているCADデータおよび墨出しをする線の開始点と終点(図5中に符号Qで示す点)の3次元位置を自動レーザー墨出し装置に入力する。なお、床、壁、天井の面の位置情報は、CADデータから得る方法以外に、現場でステレオ写真や3Dスキャナーを用いて計測したデータを用いることも可能である。
【0031】
<感光剤等塗布工程>
以上の準備の後、墨出しの予定位置周辺(例えば、図5及び図6中に符号Rで示す領域であって、コンクリート等の面)に感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂を塗布する。このうち、感光剤としては、青写真で用いられる、クエン酸鉄(III)アンモニウムとヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(別名:赤血塩)と水とを混ぜた液を挙げることができる。この感光剤の成分の混合比率の典型的な例として、クエン酸鉄(III)アンモニウム10gramと水50ccを混ぜ、さらに赤血塩(赤血カリ)5gramと水50ccを混ぜ、最後に2液を混合する。実験では、パワー50mW、波長375nmのUVレーザー光を直径約0.5mmのスポットに集光させてスキャンした場合、18センチの長さの線を約8秒で描画することができた。
【0032】
<レーザー墨出し工程>
この工程では、PCからの制御により自動的にレーザー墨出しを行うが、レーザービームで墨出しするスポットの位置は以下の方法で求める。その壁や床などのCADデータ上でのスポットの当たるべき3次元位置から自動レーザー墨出し装置からみた角度(θx,θy)を計算し、キャリブレーションでもとめた関数をもとに、(MirrorX,MirrorY)を求め、制御コンピュータから上下左右回転ミラーへコマンドデータ(MirrorX,MirrorY)を送る。
【0033】
本発明によれば、墨出しの作業における水平や垂直、高さの確認作業、および墨出し作業を自動化することができる。その結果、作業時間を短縮することができ、また、自動化のおかげで、墨出し工の熟練度に依存しない墨出し精度を出すことができる。また、レーザー放射で平面以外の任意の形状を作ることができるため、地墨ポイントに限定されない任意の位置からレーザー墨出しをおこなうことができる。
【0034】
本発明に係る墨出し装置は、工作物や建築物の面であって墨出しを行いたい所定の面(以下、“墨出し面”とする)にビーム光を走査して墨出しを行う装置である。
【0035】
本発明に係る墨出し装置は、図2に符号5で例示するものであって、
・ レーザー光(紫外線レーザー)を出射する光源50と、
・ 該レーザー光を導光する光ファイバー51と、
・ 該光ファイバー51から出射されるレーザー光を狭ビームにするレンズ52と、
・ 該狭ビームにされたレーザー光を反射して構造物(例えば、建物の床や壁や天井)に照射するミラー53と、
・ 該ミラー53を上下左右に回転させるアクチュエータ54と、
により構成されている。前記ミラー53は、前記アクチュエータ54によって上下左右に回転駆動できるように構成されているため、レーザービームは該アクチュエータ54への制御信号により任意の方向に向けることができる。また、前記光源50からの光を細い光ファイバー51の一端から入れて他端から出射するようになっているため、該光ファイバーを用いない場合と比べて、より小さな光源を作り出すことができるため、結果として、投影されるレーザースポットの光径を小さくすることができる。さらに、レーザースポットが投影される床、壁、天井と装置5との距離によってレーザースポットのフォーカシングが異なるため、フォーカシング制御装置55によって前記レンズ52の位置を調整制御することにより、投影されたレーザースポットを最小化することができる。なお、符号56で示すものは制御コンピュータであって、前記アクチュエータ54にはアクチュエータ制御信号を送信し、前記フォーカシング制御装置55にはフォーカシング制御信号を送信し、前記光源50にはレーザー光制御信号を送信するように構成されている。
【0036】
また、本発明に係る墨出し装置は、図6に符号1で例示するように、前記墨出し面Aにビーム光Bを走査する光源2を備えるようにすると良い。この墨出し面Aには、感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂(不図示)が塗布されており、前記ビーム光Bは該感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるものである。ここで、本発明に用いる感光剤としては、例えば、青写真で用いられるサイアノタイプ感光剤を挙げることができ、そのような感光剤を使用する場合には前記光源2から走査する光は紫外線にすると良い。
【0037】
また、本発明に係る墨出し装置1は、
・ 前記墨出し面Aの凹凸を検知する凹凸検知手段3と、
・ 前記ビーム光Bの前記墨出し面Aへの入射角度を前記凹凸検知手段3による検知結果に基づいて随時変更する入射角度変更手段4と、
を備えている。該入射角度変更手段4は、該墨出し面Aの凹凸にかかわらず該墨出し面Aの正面から見て直線の光跡が描けるように、前記光源2から前記墨出し面Aに照射される前記ビーム光Bの入射角を(該ビーム光Bの走査中に)随時変更できるように構成されている。すなわち、該ビーム光Bの入射角は、図8(a)に例示するようにθ1→θ2→θ3と随時変更される結果、正面から見たビーム光の光跡は同図(b)に符号Cで例示するような直線となる。
【0038】
本発明によれば、前記墨出し面Aには感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂が塗布されており、前記ビーム光Bは該感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるものであるので、該ビーム光Bによって走査された部分の感光剤は発色させられる或いは該光硬化樹脂を硬化させることとなる。該光硬化樹脂を使用した場合には、該ビーム光Bによって硬化されていない部分を作業者が除去することにより、硬化された部分(前記ビーム光Bが走査された線状の部分)が残り、該部分を墨出し線として利用することができる。また、前記感光剤を使用した場合には、この感光剤の発色部分は明確に目視でき、墨出し線として利用することができる。また、前記墨出し面Aに段差D1や凹凸D2があったとしてもその段差D1や凹凸D2の影響を受けることなく、正面から見て直線の線を描くことができる。
【0039】
ところで、上述の凹凸検知手段3としては、墨出しを行う構造物のCADデータを記憶している手段及びステレオ写真(或いは、該ステレオ写真を撮影するカメラ)を挙げることができ、該凹凸検知手段3は、
・ 前記墨出し面Aのステレオ写真を撮影するカメラ(不図示)と、
・ 該カメラにより撮影したステレオ写真から前記墨出し面Aの凹凸を解析する凹凸解析部(不図示)と、
を有するようにしても良い。また、上述の凹凸検知手段3としては、墨出しを行う構造物のCADデータを記憶している手段及び3Dスキャナーを挙げることができ、該凹凸検知手段3は、
・ 前記3Dスキャナーにて取得したデータから前記墨出し面の凹凸を解析する凹凸解析部、
を有するようにしても良い。
【0040】
一方、本発明に係る墨出し方法は、ビーム光Bを前記墨出し面Aに走査して墨出しを行う墨出し方法であって、
・ 該墨出し面Aの凹凸を検知する工程と、
・ 感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂を前記墨出し面Aに塗布する工程と、
・ 該墨出し面Aの凹凸にかかわらず該墨出し面Aの正面から見て直線の光跡が描けるように入射角度を調整しながら前記感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるビーム光Bを前記墨出し面Aに走査する工程と、
を備えている。
【0041】
本発明によれば、前記墨出し面Aには感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂が塗布されており、前記ビーム光Bは該感光剤を発色させる或いは該光硬化樹脂を硬化させるものであるので、該ビーム光Bによって走査された部分の感光剤は発色させられる或いは該光硬化樹脂を硬化させることとなる。該ビーム光Bによって硬化されていない部分を作業者が除去することにより、硬化された部分(前記ビーム光Bが走査された線状の部分)が残り、該部分を墨出し線として利用することができる。また、前記感光剤を使用した場合には、この感光剤の発色部分は明確に目視でき、墨出し線として利用することができる。また、前記墨出し面Aに凹凸があったとしてもその凹凸の影響を受けることなく、正面から見て直線の線を描くことができる。
【0042】
なお、上述した光源2は、紫外線を走査するだけでなく、該紫外線と同じ経路で可視光のレーザー光を走査できるようにしておくと良い。図7は、そのような光源の構成の一例を示す模式図であって、図中の符号20は、可視光のレーザー光B0を出射するレーザー光出射部を示し、符号21は、紫外線のレーザー光B1を出射するレーザー光出射部を示し、符号22,23は、それらのレーザー光B0,B1を反射するミラーを示し、符号24,25はそれらのミラー22,23を回転させるモーターを示し、符号26は、該モーター24,25の駆動を制御する制御装置を示し、符号27は、パソコンを示している。このような装置を用いる場合、次のような手順を実施すると良い。すなわち、3次元位置が予め分かっている複数の基準点に可視光のレーザー光B0を手動で当て、それぞれのレーザービームの方向を記録しておく。そして、そのデータに基づいて、光源2の位置と姿勢を計算する(後方交会)。墨出し線を引きたいエリアに感光剤或いは着色剤によって着色された光硬化樹脂を塗布する。前記光源2によって紫外線のレーザー光B1を照射する。その際、前記凹凸検知手段3の検知結果に基づき、前記入射角度変更手段4はレーザー光B1の照射方向を随時変更する。図7に示す装置においては、制御装置26が入射角度変更手段を兼用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 墨出し装置
2 光源
3 凹凸検知手段
4 入射角度変更手段
A 墨出し面
B ビーム光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10