特許第6806667号(P6806667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806667医薬流体の送達のための押出可能な管類および溶剤結合したフィッティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806667
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】医薬流体の送達のための押出可能な管類および溶剤結合したフィッティング
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/52 20060101AFI20201221BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20201221BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20201221BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20201221BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20201221BHJP
   A61M 39/10 20060101ALN20201221BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20201221BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20201221BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   B29C65/52
   B29C48/21
   B29C48/32
   A61K47/08
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/18
   A61K47/20
   A61K47/22
   A61K47/44
   A61K9/08
   A61K9/10
   !A61M39/10
   B29K23:00
   B29L9:00
   B29L23:00
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-505503(P2017-505503)
(86)(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公表番号】特表2017-524577(P2017-524577A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015039641
(87)【国際公開番号】WO2016018577
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】14/448,432
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512116000
【氏名又は名称】テクニ−プレックス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ブルジョア,フィリップ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】オルサブスキー,ジョゼフ・イー
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−001432(JP,A)
【文献】 特開2014−100895(JP,A)
【文献】 特表2008−536974(JP,A)
【文献】 特表2009−522422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00− 65/82
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合管(10)を予め製造された管体(20)に同軸結合させる方法であって、該予め製造された管体(20)が、ポリプロピレンベースの材料の内壁を境界とする前後軸を有する中空の中心の管状通路(22)を定めており、該方法が、以下の工程:
熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料を含む外側管壁表面(18)ならびに前後軸および対向する端部を有する中心管状通路を有する嵌合管(10)を押出し、
該嵌合管(10)の端部(11)の一方における選択された軸長に沿った該嵌合管(10)の外側表面(18)を溶剤で処理し、該処理された外側表面(18)が乾燥時に該管体(20)の内壁に接着するようにする、
該嵌合管(10)の処理された端部(11)を、該処理された端部(11)の外側表面(18)が該管体(20)の内壁と選択された軸長に沿って嵌合して嵌合した接合部を形成するように、該管体(20)の中心管状通路(22)中に同軸で挿入し、
該嵌合した接合部を、該処理された外側表面(18)が該内壁に溶剤結合するように乾燥させる;
を含み、
該溶剤が、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)およびメチルエチルケトン(MEK)の1以上から選択され、該PBEが、主に結晶質立体規則性ポリプロピレンである第1ポリマー構成要素(FPC)ならびにC2、C4〜C20アルファオレフィンおよびプロピレンの結晶化可能なコポリマーである第2ポリマー構成要素(SPC)のブレンドである方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該嵌合管(10)が、ポリエチレン(PE)の層(14)を含む内壁を有する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、該押出の工程が、該PBE材料の外側管層(12)を熱可塑性エチレンベースオレフィン材料の少なくとも1つの最も内側の管層(14)と共押出することを含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、該管体(20)が、PBE材料の予め製造された管体を含む方法。
【請求項5】
該溶剤が、シクロヘキサン、ヘキサン、およびキシレンの1以上から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
外側管壁表面(18)が熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
プロピレンベースの材料の内壁を境界とする前後軸を有する中空の中心管状通路(22)を定める予め製造された管体(20)、
熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料を含む押出された外側管壁表面(18)を有する嵌合管(10)であって、前後軸および対向する端部を有する中心管状通路を有する該嵌合管(10);
を含む結合した管組立品であって、
該嵌合管(10)の端部(11)の一方が、該嵌合管(10)の一方の端部(11)の外側表面(18)が該管体(20)の内壁と該嵌合管(10)の選択された軸長に沿って嵌合するように該予め製造された管体(20)の中心管状通路(22)内に同軸で位置しており、
該嵌合した外側表面(18)および内壁が、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)およびメチルエチルケトン(MEK)の1以上から選択される溶剤を用いて互いに溶剤結合されており、
PBEが、主に結晶質立体規則性ポリプロピレンである第1ポリマー構成要素(FPC)ならびにC2、C4〜C20アルファオレフィンおよびプロピレンの結晶化可能なコポリマーである第2ポリマー構成要素(SPC)のブレンドである管組立品。
【請求項8】
請求項に記載の管組立品であって、該嵌合管(10)が、該PBE材料の外側管層(12)を熱可塑性エチレンベースオレフィン材料の少なくとも1つの最も内側の管層(14)と共に有する嵌合管(10)である管組立品。
【請求項9】
請求項に記載の管組立品であって、該嵌合管(10)の共押出された外層(12)が、少なくとも9重量%のエチレン含有率を有するPBE材料であり、該嵌合管の最も内側の層(14)が、ポリエチレンである管組立品。
【請求項10】
請求項に記載の管組立品であって、該嵌合管(10)が、ポリエチレン(PE)の共押出された層を含む中心管状通路を形成する内壁を有する管組立品。
【請求項11】
請求項10に記載の管組立品であって、該PEが、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはそのブレンドである管組立品。
【請求項12】
水性もしくは非水性の医薬流体またはその組み合わせを患者に送達する方法で用いられる請求項に記載の管組立品であって、該方法が、流体送達部材を該管体の中に挿入し、そして該医薬流体を該嵌合管(10)を通して該流体送達部材に送達することを含み、該管組立品が該流体送達部材に流体接続されている管組立品。
【請求項13】
請求項12に記載の管組立品であって、該医薬流体が、以下:
植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ならびに300および400の分子量を有するポリエチレングリコール類からなる群から選択される非水性溶媒;
の1以上を含む管組立品。
【請求項14】
請求項12に記載の管組立品であって、該医薬流体が、以下:
アルコール類、エステル類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類およびピロリドン類からなる群から選択される、該患者への注射のための溶剤または混合溶剤ベースの流体調製物としての合成および半合成調製物;
の1以上を含む管組立品。
【請求項15】
該溶剤が、シクロヘキサン、ヘキサン、およびキシレンの1以上から選択される請求項7〜14のいずれか一項に記載の管組立品。
【請求項16】
外側管壁表面(18)が熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料からなる請求項7〜15のいずれか一項に記載の管組立品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本発明は、流体の送達のための押出ポリマー管の組成、構造、組み立ておよび作製の方法ならびに管を予め製造されたポリマー体(例えばフィッティング)と同軸配置で結合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[002] 可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)管類は、医学の分野で数十年間利用されてきた。この期間にわたって、管を様々な医学用組立品、例えばインスリンポンプ等に、または健康維持のためのもしくは手術手順の間の流体の患者(ヒトまたは他の動物)への送達のための送達部材(例えば針セット)に接続された医学用組立品中に組み込むために管の末端にフィットメントを適用するために利用される様々な管製造後の操作が存在してきた。典型的には、これらの様々なフィットメントは、管がフィットメント中に挿入され、次いでそれが(例えば接着剤または他の化学的および非化学的結合手段により)フィットメントに液密係合でしっかりと固定される領域を含む。フィットメントは、それらの機械的特性、熱安定性に関して、そして非常に厳しい寸法公差内で正確に成形される能力に関してそのように選択されるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー類、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂および他の熱可塑性材料を含む様々な材料から作製されることができる。
【0003】
[003] 管をフィットメントと組み合わせる組み立てプロセスの間に、結合材、例えば紫外線硬化性接着材が適用装置を用いて管の外側表面に適用される段階が存在し、次いで管がフィットメント中に物理的に係合される。管のフィットメント中への取り付けの終了時に、組立品のこの部分はUV(紫外)光に曝露し、それは、接着剤を活性化して硬化させて最終的な固体形態にし、管は、フィットメントに接着結合する。生じる結合の性質は、例えば組立品の使用の間に意図されずに外れるのを防ぐため、管部分をフィットメントから物理的に取り外すためにある程度の力を要するようなものである。この力は、典型的には、接着剤の表面への適用および硬化後に、接着剤の非存在下での管のフィットメント中への単純な物理的挿入に対してはるかに大きい。
【0004】
[004] 可塑化PVC管類は、上記で参照された異なる材料タイプから作製された様々なフィットメントを用いたこれらの操作の全てに関して最も有用であることが実証されている。しかし、少なくとも環境的、規制的および/または法的な理由で、可塑化PVCの医療用管類を作製するための材料としての使用を避ける必要がある。可塑剤が移動して医薬流体中に入る可能性は、一部の流体のタイプに関する懸念として言及されてきた。
【0005】
[005] 他の可塑材も、様々な医薬流体との相互作用を有し得る化学官能性(エステル類、アミド等)を有する。従って、組立品により送達されている流体と潜在的に相互作用し得る管またはフィットメントにおいて化学官能性を必要としないしっかりした結合を提供する必要性が存在する。
【0006】
[006] 医薬流体(単に溶媒/流体タイプだけでなく医薬流体自体)は、界面活性剤および他の分散/懸濁化剤により緩衝されている有効薬剤の平衡した/安定なコロイドおよび懸濁液を含むことができる。これらの薬剤は、管材/ルアーの化学官能性に優先的に吸着し、従って流体の医薬的有効性に影響を及ぼし得る。
【0007】
[007] さらに、一般的なフィットメント材料(ABS、PC、およびアクリル類)の多くは、ひび割れ/亀裂が生じやすい非晶質の材料である。従って、今日一般的に用いられているABS、PC、アクリル等のルアーは、応力中で成形されている可能性があり、それはそれらを使用の前でも間でも溶媒の存在下で特に亀裂が生じやすくする。医薬流体の性質は、漏れまたは故障を引き起こすそのような非晶質材料の応力亀裂またはルアーの寸法における変化を引き起こし得る。
【0008】
[008] 従って、前記の先行技術の応力亀裂、化学的相互作用、および加工困難性の問題を回避する新規の管類およびフィットメント組立品に関する現在の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
[009] 本発明は、押出管、好ましくは少なくとも2種類の(化学官能性を欠く)非PVC含有ポリマー材料の多層共押出管の製造を意図しており、それは共押出され、それにより管材が、互いにしっかりと、かつ2種類の材料の外側の管層が露出した外側表面上で管構成要素、例えばルアーまたは他のフィットメントの中心流路の内側表面に対して容易にかつしっかりと溶剤結合することができるように結合する。管類は、医療用流体の送達および処置適用における使用のための不活性なポリプロピレンベースの材料で構成されるフィットメントへの結合に特によく適合している。
【0010】
[010] 本発明は、先行技術の可塑化PVC管類の問題を回避し、紫外線硬化性接着剤を使用する問題も回避する。これらの硬化性接着剤は、費用がかかり、かつ紫外線への曝露の追加の工程を必要とし、それは、管類およびフィットメントを組み立てる費用にかなり上乗せされる。
【0011】
[011] 本発明は、さらに、流体の混入に関する可能性を回避する。管類およびフィットメントを通って注入されている流体は、しばしば管類およびフィットメントの間の係合の領域を出て濡らし(wet out)、それにより接着性ポリマー材と接するであろうことが観察されている。紫外線硬化性ポリマーは、抽出され得る未硬化モノマーまたは意図されない他の構成要素を有する可能性があり、それらが患者に送達される注射される流体の一部になる場合、患者に有害であろう。
【0012】
[012] 本発明はさらに、管類またはフィットメントを通って送達されている流体と接触および相互作用し得るエステル、ウレタン、もしくはアミド含有エラストマー類または他の化学官能性、例えばカルボニル類もしくは酸基の使用に関する必要性を排除する。
【0013】
[013] 本発明の一態様によれば、本発明はさらに、医薬流体の存在下で応力亀裂を生じやすいフィットメント材の使用を回避する。
[014] 本発明の一態様によれば、ポリマー管を予め製造された管体に同軸結合させるための方法が提供され、その予め製造された管体は、ポリプロピレンベースの材料の内壁を境界とする前後軸を有する中空の中心の管状通路を定めており、その方法は、以下の工程を含む:
熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料を含む外側管壁表面ならびに前後軸および対向する端部を有する中心管状通路を有する嵌合ポリマー管を押出し、
管の端部の一方における選択された軸長に沿った嵌合管の外側表面を溶剤で処理し、処理された外側表面が乾燥時に管体の内壁に接着するようにする、
嵌合管の処理された端部を、処理された端部の外側表面が管体の内壁と選択された軸長に沿って嵌合して嵌合した接合部を形成するように、管体の中心管状通路中に同軸で挿入し、
嵌合した接合部を、処理された外側表面が内壁に溶剤結合するように乾燥させる。
【0014】
[015] 一態様において、溶剤は、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)およびメチルエチルケトン(MEK)の1以上から選択される。
【0015】
[016] 一態様において、溶剤は、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン、テトラヒドロフラン、およびヘキサンの1以上から選択される。
[017] 一態様において、PBEは、プロピレンおよびアルファオレフィンのコポリマーまたはブレンドである。
【0016】
[018] 一態様において、PBEは、半結晶性イソタクチックプロピレン区分を有するプロピレン/アルファオレフィンコポリマーである。
[019] 一態様において、PBEは、主に結晶質立体規則性ポリプロピレンである第1ポリマー構成要素(FPC)ならびにC2、C4〜C20アルファオレフィンおよびプロピレンの結晶化可能なコポリマーである第2ポリマー構成要素(SPC)のブレンドである。
【0017】
[020] 一態様において、アルファオレフィンはエチレンである。管がポリエチレン(PE)の層を含む内壁を有する、請求項1に記載の方法。
[021] 一態様において、内壁のPEは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはそのブレンドである。
【0018】
[022] 一態様において、押出の工程は、PBE材料の外側管層を熱可塑性エチレンベースオレフィン材料の少なくとも1つの最も内側の管層と共押出することを含む。
[023] 一態様において、嵌合管の共押出された外層は、少なくとも9重量%のエチレン含有率を有するPBEであり、嵌合管の最も内側の層は、ポリエチレンである。
【0019】
[024] 一態様において、管体は、PBE材料の予め製造された体を含む。
[025] 一態様において、管体のPBE材料は、ホモポリマーポリプロピレンまたは主にプロピレン単位およびエチレンのコポリマーである。
【0020】
[026] 本発明の別の態様によれば、以下:
ポリプロピレンベースの材料の内壁を境界とする前後軸を有する中空の中心管状通路を定める予め製造された管体、
熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料を含む押出された外側管壁表面を有する押出管(嵌合管は前後軸および対向する端部を有する中心管状通路を有する)
を含む結合した管組立品が提供され、
ここで、嵌合管の端部の一方は、嵌合管の一方の端部の外側表面が管体の内壁と嵌合管の選択された軸長に沿って嵌合するように予め製造された管体の中心管状通路内に同軸で位置しており、
嵌合した外側表面および内壁は、互いに溶剤結合している。
【0021】
[027] 一態様において、押出管は、PBE材料の外側管層を熱可塑性エチレンベースオレフィン材料の少なくとも1つの最も内側の管層と共に有する共押出管である。
[028] 一態様において、嵌合管の共押出された外層は、少なくとも9重量%のエチレン含有率を有するPBE材料であり、嵌合管の最も内側の層は、ポリエチレンである。
【0022】
[029] 一態様において、管は、ポリエチレン(PE)の共押出された層を含む中心管状通路を形成する内壁を有する。
[030] 一態様において、PEは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはそのブレンドである。
【0023】
[031] 本発明の一態様によれば、流体送達部材を体の中に挿入し、そして医療用流体を管を通して送達部材に送達することを含む、水性もしくは非水性の医薬流体またはその組み合わせを患者に送達する方法が提供され、その部材は、結合した管組立品に流体接続されている。
【0024】
[032] 一態様において、医薬流体は、以下の1以上を含む:
植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ならびに300および400の分子量を有するポリエチレングリコール類からなる群から選択される非水性溶媒。
【0025】
[033] 一態様において、医薬流体は、以下の1以上を含む:
アルコール類、エステル類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類およびピロリドン類からなる群から選択される、患者への注射のための溶剤または混合溶剤ベースの流体調製物としての合成および半合成調製物。
【0026】
[034] 一態様において、流体調製物は、エチルアルコール;ベンジルアルコール;フェニルエチルアルコール;プロピレングリコール;ブチレングリコール;トリクロロ−t−ブチル;ポリオキシエチレングリコール;エチルエーテル;フェノキシエタノール;酢酸エチル;オレイン酸エチル;安息香酸ベンジル;N−メチルアセトアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびN−メチル 2−ピロリドン(NMP)からなる群から選択される。
【0027】
[035] 添付の図面は、本発明の1以上の限定的でない例を図説している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】[036] 図1は、本発明の一態様に従う多層共押出管の一部の模式的透視図であり、管は、選択された軸長ALの終端部分を有する。
図2】[037] 図2は、図1の管の側面断面図であり、その終端部分は、予め製造された管体(ルアー)の中心流体流路内に同軸で挿入されて溶剤結合している。
図3】[038] 図3は、本発明に従うある方法の模式的な流れ図である。
図4】[039] 図4は、本発明の別の態様に従う単層の一部の模式的な透視図である。
図5】[040] 図5は、押出管およびルアーフィッティングを結合させるために異なる溶剤を利用する本発明の様々な態様に関する測定された結合強度値のグラフであり、全てが溶剤結合なしの締り嵌めを超える実質的な向上を示している。
図6】[041] 図6は、異なる流体を充填された共押出管類試料に関する結合強度における有意な向上を示す図5に類似したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[042] 図面に関連する本発明の典型的な態様に参照がなされる。可能な場合は常に、同じ参照番号が、同じまたは類似の部分を指すために図面全体を通して用いられている。
[043] 図1、2を参照して、本発明に従うポリマー管10は、押出可能な熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料で構成される第1外層12を共押出して押出可能な熱可塑性エチレンベースオレフィン材料で構成される第1内層14の外側表面14aと結合係合させることにより製造される。押出可能なポリマー材料の1以上の追加の中間層または内層19が、場合により所望されるならば、層12、14の材料と一緒に共押出されて層12、14とうまく結合係合して3層以上の管10を形成することができる。あるいは、押出可能な熱可塑性PBE(外層12と同じ材料)の単層管が、図4で示されているように、および下記のように用いられることができる。
【0030】
[044] プロピレンベース外層12は、典型的には、PBEを含むように選択され、それは、材料を意図される適用に応じた医薬流体の送達のための管類としての使用のために柔軟にし、プロピレンベースのフィットメント(例えばルアー)とも適合性であり、それへの溶剤結合を可能にする。適切なPBEは、下記で記載される。
【0031】
[045] 一態様において、本発明は、産業において知られている可塑化PVCと実質的に均等な機械的性能を示すプロピレンベースエラストマー(PBE)を含む医薬流体の送達のためのポリマー管に関する。
【0032】
[046] 一態様において、本発明のPBEポリマーの組成は、半結晶性イソタクチックプロピレン区分を有するプロピレン/アルファオレフィンコポリマーである。ある特定の態様において、本発明における使用のためのPBEは、9〜16%、好ましくは9〜11%のコモノマー範囲を有する。コモノマーは、アルファオレフィン類である。加えて、PBEポリマーは、2〜3の狭い分子量分布を有し得る。分子量分布は、誘導されたMw/Mnである(多分散指数またはMWDとも呼ばれる)。
【0033】
[047] さらに別の態様において、本発明における使用のための適切なPBEは、ExxonMobil Vistamaxxシリーズ(例えば3020FLまたは3980FLグレード)である。そのようなPBEを製造する1つの方法が、米国特許第6927258号において開示されており、それは参照により本明細書に援用される。例えば、そのようなPBEは、主に結晶質立体規則性ポリプロピレンである“第1ポリマー構成要素”(“FPC”)をC2、C4〜C20アルファオレフィン(好ましくはエチレン)およびプロピレンの結晶性コポリマーである“第2ポリマー構成要素”(“SPC”)とブレンドすることにより製造される。ブレンドの任意の構成要素は、C2、C4〜C20アルファオレフィン(好ましくはエチレン)の結晶性コポリマーであるSPC2である。他の任意の構成要素は、増量材、着色剤、抗酸化剤、核化剤、潤滑剤および他の加工助剤である。
【0034】
[048] FPCは、110℃(摂氏度)より高い温度で融解し、DSC(示差走査熱量測定)分析により決定されるような少なくとも75J/g(ジュール/グラム)の融解熱を有する。結晶質ポリプロピレンは、ホモポリマーまたは他のアルファオレフィン類とのコポリマーのどちらであることもできる。SPCおよび場合により用いられる場合はSPC2は、結晶化するのに十分に長い立体規則性プロピレン配列を有する。SPCは、105℃未満の融点を有し、75J/g未満の融解熱を有する。SPC2は、115℃未満の融点を有し、75J/g未満の融解熱を有する。一態様は、イソタクチックポリプロピレン(FPC)を、FPCとの高い適合性を確実にするために約4重量%〜約35重量%のエチレンを有するエチレンプロピレンコポリマー(SPC)とブレンドすることである。ブレンド組成物のFPCのSPCに対する比率は、重量により2:98〜70:30の範囲で異なり得る。
【0035】
[049] 一態様において、本発明のPBEは、約−15〜−35℃のガラス遷移温度(Tg)範囲を有する。本発明のPBEは、ASTM D1238による0.5〜50グラム/10分間の230℃において測定される融液流動範囲(MFR)を有する。一態様において、本発明のPBEは、約60〜90の好ましいショアA硬度範囲を有し、かつ約500〜20,000psi(ポンド/平方インチ)の、より好ましくは約1,000〜16,500psiの曲弾性率範囲を有する。
【0036】
[050] あるいは、外層は、ポリプロピレンおよび他のオレフィン系ポリマー(例えばポリエチレンまたはポリエチレン−オクテンブロックコポリマー)のブレンドを含むことができ;ブレンドは、押出可能であるべきであり、かつそれが溶剤結合するであろう内層およびフィットメントの両方と適合性であるべきである。
【0037】
[051] 外層12の厚さは、典型的には約0.0005インチ〜約0.050インチの間の範囲である。外層の厚さは、材料の費用、所望の物理特性、押出設備、管類およびフィットメントの意図される使用、ならびに他の設計関心事に応じて異なるであろう。
【0038】
[052] 第1内層14を構成するエチレンベースオレフィン材料は、好ましくは主に押出可能な熱可塑性エチレンベースオレフィン材料である。内層は、ポリエチレン(“PE”)、典型的には低密度ポリエチレン(“LDPE”)、線状低密度ポリエチレン(“LLDPE”)、高密度ポリエチレン(“HDPE”)またはそれらのブレンドで構成されることができる。内層は、押出可能で隣接する管層と適合性であり、ここで、それは流体送達流路を形成する最も内側の層を含むため、実質的に不活性であり、流体を伴う使用に関して認可されている。内層14の厚さは、典型的には約0.0005インチ〜約0.025インチの範囲であるが、やはり全体的な管の寸法および長さ、材料の費用、押出設備、意図される使用(適用)、ならびに他の設計関心事により異なるであろう。
【0039】
[053] 第1および第2層の材料は、両方とも高温での融解物として押出可能、加工可能である熱可塑性材料であり、著しいクリープを有さず、一般に低いモジュラスのものであり、それらの弾性降伏ひずみを超えて引き伸ばされないならば室温でそれらのおおよその元の長さに戻る能力により繰り返し引き伸ばされることができる柔軟な材料である。
【0040】
[054] 内層14は、非極性であり、そうでなければ意図される適用の医薬流体と相互作用するであろう化学官能性(官能基)を欠いている。医薬流体により、患者(ヒトまたは他の動物)中への注射に許容可能なあらゆる水性流体、非水性流体、またはそれらの組み合わせが意味されており、それは、有効な薬理学的物質または生物学的物質を含み、その選択は、患者の意図される有益な医学的処置に関する。(例えば皮下または筋内導入、静脈内および他の非経口手段により)注射されるべき有効な薬理学的または生物学的物質は、インスリン、抗炎症剤、防腐剤、癌療法、関節炎療法、他の処置療法、タンパク質および酵素ベースの医薬、栄養素、ならびに他の薬物を含み得るが、それらに限定されない。有効な薬理学的または生物学的物質は、様々な水性、非水性、または混合溶媒および他のキャリヤー流体のいずれかにより送達されることができる。非水性溶媒の内で、以下のものが例である:植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ならびに300および400の分子量を有するポリエチレングリコール類。合成および半合成調製物も、患者への注射のための溶媒または混合溶媒ベースの流体調製物として利用可能であり;例は、アルコール類(例えばエチル、ベンジル、フェニルエチル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリクロロ−t−ブチル等)、エーテル類およびエステル類(例えばポリオキシエチレングリコール、エチルエーテル、フェノキシエタノール、酢酸エチル、オレイン酸エチル、安息香酸ベンジル(benzl benzoate)等)、アミド類(例えばN−メチルアセトアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミド)、スルホキシド類(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))、ピロリドン類(例えばN−メチル2−ピロリドン(NMP))等を含む。
【0041】
[055] 有効な薬理学的物質または生物学的物質は、典型的には水性、非水性または溶媒ベースのキャリヤー流体との組み合わせでの安定化された混合物、懸濁液またはエマルジョンとして調製される。医薬流体の構成要素の吸着または吸収による、医薬流体の患者へと運ばれる間の管およびフィットメントの化学官能性との化学的相互作用は、それが医薬流体の安定性に負に影響を及ぼし、有効な薬理学的物質または生物学的物質の適正な投与に影響を及ぼし、従って患者の意図される医学的処置の有効性に負に影響を及ぼし得るため、避けられるべきである。
【0042】
[056] フィットメントはまた、医薬流体の構成要素によるフィットメントの直接的な溶媒和によるものであれ医薬流体によるフィットメントの環境応力亀裂(ESC)によるものであれ、医薬流体との負の相互作用を一切有してはならない。医薬流体によるフィットメントの溶媒和は、フィットメント自体の機械的完全性の喪失をもたらし、使用の間に管およびフィットメントの間の結合強度を低下させ、それは溶解したフィットメントの材料が潜在的に流体輸送の間に患者に注射され得る手段でもある。フィットメントの環境応力亀裂は、フィットメントが使用されている間に接触するであろう安定な薬用の溶液および懸濁液を生成するために利用される界面活性剤、緩衝剤または他の懸濁化剤の形態で存在し得る(応力亀裂剤として知られる)表面活性物質の存在によるフィットメントにおける継続的に作用する外部および/または内部応力により、フィットメントの機械的故障につながる。フィットメントのESCは、管およびフィットメントの間の結合強度の低下にも寄与し得る。ESCは、フィットメントを作製するために用いられたポリマーの特定の化学物質との相互作用の結果もたらされるが、それは、通常はポリマーおよび活性環境の間の化学反応ではなく、当該技術で周知である。実際、ESCは、非晶質ポリマー、例えばABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PEMA(ポリエチルメタクリレート)、PS(ポリスチレン)、硬質PVC、SAN(スチレン−アクリロニトリルコポリマー)において(その全てがフィットメントのための材料として一般的に利用されている)、ならびにポリエチレンのような一部の半結晶性熱可塑性物質においてより容易に生じる。医学の分野において利用される様々なフィットメントの製造において、射出成型が、典型的には好まれるプロセスであり、射出成型プロセスにおいて利用される非常に高いポリマー融解射出圧のため、最終的なフィットメントにおいて内部的に誘発される応力に関する可能性が存在する。非晶質ポリマー(ガラス状ポリマー)は、それらの緩い構造がポリマー中への流体透過を促進するため、このタイプの欠陥に関するより高い傾向を示す。医薬流体中に存在し得る応力作用剤は、フィットメントのひび割れ、亀裂または可塑化を促進し得る。非晶質ポリマーでは、ESCによる亀裂の形成は、しばしばひび割れの形成により先行される。ひび割れは、高度に引っ張られた微細繊維により一緒に保持された拡張された領域であり、それは、微細な亀裂を橋渡しし、それらの伝播および合体を防ぐ。半結晶性ポリマー、例えばPEは、応力亀裂剤に曝露した場合、応力下で脆性破壊を示す。そのようなポリマーでは、結晶子が非晶相を通して結束分子により連結される。結束分子は、ポリマーの機械的特性において負荷の伝達により決定的な役割を果たす。応力亀裂剤は、結晶子中の結束分子を維持する凝集力を低下させ、そうしてそれらのラメラからの“引き出し”およびほぐれ(disentanglement)を促進するように作用する。
【0043】
[057] 対照的に、本発明によれば、ポリプロピレンが、フィットメント材料としての使用に望ましい材料であり、これは、それが室温で医薬の分野で利用されることができる既知の溶剤を有さず、かつポリプロピレンはESCが容易に起こらない物質であるためである。
【0044】
[058] 図2に戻って、管10に溶剤結合するべき管体またはフィットメント20は、典型的には、例えば医薬流体の流体源から患者または容器への無菌方式での送達のための管を連結するための、医学的適用において用いられるルアー、プラスチック管接合具または他のフィットメントの形状へと形成され、ここで、流体は閉鎖系内で密封され、管類および接合具は密封された系内に収容された流体を維持する。管体20は、最も好ましくは予め製造されたPBE材料で構成されており、それはホモポリマーポリプロピレンまたは主にプロピレン単位および適合可能なコモノマー、例えばエチレンのコポリマーのどちらかを利用している。管体20が構成されるポリマー材料は、任意の構成要素、例えば増量材、着色剤、抗酸化剤、核化剤、潤滑剤および他の加工助剤も有することができる。
【0045】
[059] 図1および2において示されるように、管10は、(典型的にはルアーの形態の)管体20の通路22中への挿入および中心流体通路22の内壁表面22aへの溶剤結合の目的のための外側表面18および選択された軸長ALを有する終端部分11を有する。図2において示されているように、(フィットメント20への結合のための溶剤溶剤でコートされた後の)管の終端部分11は、本体20の通路22中に、管10の軸A1が一般に管体20の軸A2と同軸で整列するように挿入される。通路22の断面径D2は、好ましくは管10の終端部分11の断面径D1に相補的である。直系D2は、通路22内の終端部分11の滑り嵌めを確実にするために、D1よりもわずかに小さい(例えば、.001〜約0.015インチ小さい)ことができる。終端部分11の通路22中への挿入の際に、外側表面18は、通路22の内側表面22aに対して係合し、挿入の前に管の末端11の表面18に適用された溶剤が、実質的に選択された軸長AL全体に沿って表面18および22a両方にわたって広がる。
【0046】
[060] 管体20は、典型的には分離した同軸で整列した(A1〜A2)中空の中心通路部分22、24を有し、それはそれぞれが異なる断面内径D2およびD3を有し、ここで、D3は、典型的にはD2よりも小さく、そうして停止表面25を形成し、末端部分11の同軸での通路22中へのそれを通る無理やりの手での挿入の際に、管10の終端部分11のより大きい直系D1(おおよそD2と同じかまたはわずかに大きい)の終端表面17がそれに対して停止し、隣接する。
【0047】
[061] 管10の外側表面18を処理するための溶剤は、典型的には1種類以上の炭化水素、例えばシクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)およびメチルエチルケトン(MEK)から選択される。溶剤処理は、典型的には、溶剤を管10の終端部分11の表面18に適用した後、終端部分11を管体20の軸通路22中に挿入することを含む。
【0048】
[062] 図3は、本発明の一方法態様を図説する流れ図である。第1工程において、管、例えば図1〜2において示されている多層管10が、管体20と溶剤結合すべき嵌合管として共押出される。次の工程において、一方の終端部分における嵌合管の外側表面が、溶剤により、例えば溶剤のコーティングを適用することにより処理される。次の工程において、嵌合管の処理された終端部分が、管体の中心管状通路中に挿入されて、管の外側表面の同軸嵌合部分および管体の中心通路に沿って嵌合した連結を形成する。次の工程において、吻合した連結は、溶剤結合が管の外側表面および管体の中心管状通路の嵌合部分の間で形成されるように溶剤が蒸発するように乾燥させられる。
【0049】
[063] 代替の態様において、図4において示されているように、熱可塑性PBE材料の単層管が提供される。この場合、単層管壁が、管体の中心通路との溶剤結合のための外側表面18を形成し、かつ単層の内部管状表面21が、前に記載されたように非極性であるかそうでなければ意図される適用の医薬流体と相互作用するであろう化学官能性を欠いていることが意図されている流体送達通路を形成する。
【0050】
[064] 様々な多層態様に従う管類試料が、下記で述べられるように試験された。
【実施例】
【0051】
[065] 管類試験試料:管類標本が、下記で明記されるような材料を用いて、そして押出ツーリング、例えばGeneral Cable CompanyのGenca Division(フロリダ州クリアウォーター)により製造された“Tri Die”押出装置を用いて多層形態での共押出により製造された:
外層:Vistamaxx 3980FL、またはVistamaxx 3020FL(ExxonMobil Chemical、米国テキサス州ヒューストン)
内層:Westlake 808 LDPE(Westlake Chemical、米国テキサス州ヒューストン)
試験された溶剤
・酢酸エチル(EA)
・メチルエチルケトン(MEK)
・シクロヘキサノン
・テトラヒドロフラン(THF)
・ヘキサン
・キシレン
・シクロヘキサン
[066] 2材料、2層(2M2L)共押出管類標本を、以下の寸法で押出した:0.152インチOD×0.090インチIDおよび全体の壁厚=0.031インチ。PBEの外層は、0.026インチの厚さを有し、エチレンベース材料の内層は、0.005インチの厚さを有していた。当該技術で既知であるように、押出または共押出プロセスは、ポリマー材料(単数または複数)を融解させ、融解した材料(単数または複数)を圧力下で適切なダイヘッドを通して送って管の形状の押出物または共押出物を形成し、次いでそれを従来の水浴または水真空タンクを通して冷却して最終製品を形成することにより実施される。次いで、そのように製造された管類標本を、下記で明記されるような商業的に入手可能なルアーに結合させ、次いで結合強度に関してプルテストした。以下のように試験試料を調製し、利用した試験設備およびパラメーターは以下の通りであった。
【0052】
[067] 溶剤結合のために調製された試料
1.管試料を8インチに切断し、管の末端を70%イソプロピルアルコールにより洗浄し、風乾させた。
【0053】
2.溶剤を管の洗浄された末端の1/2インチに小型適用装置を用いて適用し、ルアー中に挿入した。
3.管を24時間乾燥させるように設定した後、機械試験を行った(72°F/50%RH)。
【0054】
[068] 下記のような機械試験設備およびパラメーターが、商業的に入手可能なポリプロピレンルアーに溶剤結合した管類試料の試験において用いられた。張力方式で試料を試験して試料における力を記録することができる機械試験設備は、当該技術で周知であり;設備、例えばInstron(米国マサチューセッツ州ノーウッド、ユニバーシティ・アベニュー826)またはLloyd Instruments Ltd(英国ウェストサセックス)により製造された設備が、試験のために有用である。そのような機器は、可動クランプに取り付けられたロードセルを含み、不動クランプまたはジョーを含む。通常、試料は頂部および底部クランプの間で固定され、一方のクランプが制御速度で動き、クランプが動いている間に試料が経験している力を記録する。下記の試験において、管およびルアー組立品は、設備クランプ内でしっかり留められ、管をルアーから取り外すためのポンドでの最大の力が測定される。そのような試験は、プルテストと呼ばれる:
1.試験設備クランプを、3インチ離して設定する。
【0055】
2.管のルアー末端を、上部クランプの中心において固定する。
3.管の解放末端を、底部クランプの中心において固定する。
4.プルテストを開始し、管が毎分12インチの速度でルアーから引き出されるまで循環させる(cycle through)。
【0056】
5.管をルアーから引き出すためのポンド力(ポンド、lbs)を記録し、管をルアーから取り外す。
6.工程1〜5を、それぞれのタイプのルアー/管の組み合わせに関するそれぞれの試料に関して繰り返す(10回)。
【0057】
[0042] 組立品において用いられてプルテストされる商業的に入手可能なルアー標本は、Qosina Inc.、150−Q Executive Drive、米国ニュージャージー州エッジウッド11717(Qosina.com)から購入され、以下の識別番号および明細を有していた:部品番号65213、メスルアーロックコネクター、0.145インチ〜0.156インチID、0.206インチOD、材料:ポリプロピレン。
【0058】
[0044] 図5において要約されている結合強度データにより示されるように、効果が最低限の結合溶剤(酢酸エチル)に溶剤結合しているVistamaxx(商標)3980 FL(斜線付きの棒)またはVistamaxx(商標)3020 FL(斜線なしの棒)から形成された外層を有する多層(2材料、2層)管10は、機械的締り嵌めのみに頼る溶剤結合していない組立品と比較して、なおポリプロピレンルアーに対する結合強度における有意な向上を提供する。データにより示されるように、効果が最低限の溶剤の結合強度は、(溶剤を用いない)機械的締り嵌めのみに基づく約2.3〜2.6lbsの結合強度と比較して、少なくとも約3.5lbsであった。いくつかの溶剤は、4lbsより大きい6.3〜13.5lbsの範囲の結合強度をもたらした。
【0059】
[0045] 図6は、2種類の非水性流体系(DMSOおよびNMP)の本発明の一態様に従う前記のVistamaxx 3980 FL管類試料との化学的適合性を実証する。DMSO(ジメチルスルホキシド)およびNMP(N−メチル 2−ピロリドン)は、アメリカ食品医薬品局により医薬流体における使用に関して認められている一般的な流体キャリヤーまたは溶剤であり、典型的には、数ある用途の中でも、水中で容易に溶けない親油性薬物を可溶化するために利用されている。DMSOおよびNMPは、強溶剤または応力亀裂剤のどちらとしても多くのポリマーに対して非常に攻撃的であることも認識されている。データは、ポリエチレンの内層と共押出され、ポリプロピレンのルアーにキシレンまたはシクロヘキサンを利用して溶剤結合された場合の外層としてのVistamaxx 3980FLから作製された試料に関するプルテストの結果を示す。管およびルアー組立品の用意の後、ルアーを熱圧着させて(heat crimped)ルアーを管が挿入されている側と逆側の末端において密封した。ルアーの末端を密封した後、管およびルアーの組立品にDMSOまたはNMPのどちらかを充填し、密封されたガラスジャー中で室温条件(72F/50%R.H.)下においた。充填後24時間および48時間の時点で、DMSOおよびNMPを管およびルアーの組立品から排出し、試料をプルテストした。図6を見れば理解できるように、記載された期間にわたって管およびルアーの間で結合強度の劣化はほとんどまたは全くなかった。気付かれた管の膨張はなく、ルアーの膨張または亀裂もなかった。
【0060】
[0046] 容易に明らかであるように、数多くの修正および変更が、当業者には容易に思い浮かび得る。従って、本明細書における開示は、示された、および記載された正確な構成および操作に本発明を限定することを意図していない。全ての適切な均等物が、特許請求される本発明の範囲内に含まれる。
本発明は以下の態様を含む。
[1] ポリマー管を予め製造された管体に同軸結合させる方法であって、該予め製造された管体が、ポリプロピレンベースの材料の内壁を境界とする前後軸を有する中空の中心の管状通路を定めており、該方法が、以下の工程:
熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料を含む外側管壁表面ならびに前後軸および対向する端部を有する中心管状通路を有する嵌合ポリマー管を押出し、
該管の端部の一方における選択された軸長に沿った該嵌合管の外側表面を溶剤で処理し、該処理された外側表面が乾燥時に該管体の内壁に接着するようにする、
該嵌合管の処理された端部を、該処理された端部の外側表面が該管体の内壁と選択された軸長に沿って嵌合して嵌合した接合部を形成するように、該管体の中心管状通路中に同軸で挿入し、
該嵌合した接合部を、該処理された外側表面が該内壁に溶剤結合するように乾燥させる;
を含む方法。
[2] [1]に記載の方法であって、該溶剤が、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)およびメチルエチルケトン(MEK)の1以上から選択される方法。
[3] [2]に記載の方法であって、該溶剤が、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン、テトラヒドロフラン、およびヘキサンの1以上から選択される方法。
[4] [2]に記載の方法であって、該PBEが、プロピレンおよびアルファオレフィンのコポリマーまたはブレンドである方法。
[5] [4]に記載の方法であって、該PBEが、半結晶性イソタクチックプロピレン区分を有するプロピレン/アルファオレフィンコポリマーである方法。
[6] [2]に記載の方法であって、該PBEが、主に結晶質立体規則性ポリプロピレンである第1ポリマー構成要素(FPC)ならびにC2、C4〜C20アルファオレフィンおよびプロピレンの結晶化可能なコポリマーである第2ポリマー構成要素(SPC)のブレンドである方法。
[7] [4]に記載の方法であって、該アルファオレフィンがエチレンである方法。
[8] [1]に記載の方法であって、該管が、ポリエチレン(PE)の層を含む内壁を有する方法。
[9] [8]に記載の方法であって、該内壁のPEが、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはそのブレンドである方法。
[10] [1]に記載の方法であって、該押出の工程が、該PBE材料の外側管層を熱可塑性エチレンベースオレフィン材料の少なくとも1つの最も内側の管層と共押出することを含む方法。
[11] [10]に記載の方法であって、該嵌合管の共押出された外層が、少なくとも9重量%のエチレン含有率を有するPBEであり、該嵌合管の最も内側の層が、ポリエチレンである方法。
[12] [1]に記載の方法であって、該管体が、PBE材料の予め製造された体を含む方法。
[13] [12]に記載の方法であって、該管体のPBE材料が、ホモポリマーポリプロピレンまたは主にプロピレン単位およびエチレンのコポリマーである方法。
[14] 以下:
ポリプロピレンベースの材料の内壁を境界とする前後軸を有する中空の中心管状通路を定める予め製造された管体、
熱可塑性プロピレンベースエラストマー(PBE)材料を含む押出された外側管壁表面を有する押出管であって、該嵌合管が、前後軸および対向する端部を有する中心管状通路を有する押出管;
を含む結合した管組立品であって、
該嵌合管の端部の一方が、該嵌合管の一方の端部の外側表面が該管体の内壁と該嵌合管の選択された軸長に沿って嵌合するように該予め製造された管体の中心管状通路内に同軸で位置しており、
該嵌合した外側表面および内壁が、互いに溶剤結合している管組立品。
[15] [14]に記載の管組立品であって、該押出管が、該PBE材料の外側管層を熱可塑性エチレンベースオレフィン材料の少なくとも1つの最も内側の管層と共に有する共押出管である管組立品。
[16] [15]に記載の管組立品であって、該嵌合管の共押出された外層が、少なくとも9重量%のエチレン含有率を有するPBE材料であり、該嵌合管の最も内側の層が、ポリエチレンである管組立品。
[17] [14]に記載の管組立品であって、該管が、ポリエチレン(PE)の共押出された層を含む中心管状通路を形成する内壁を有する管組立品。
[18] [15]に記載の管組立品であって、該PEが、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはそのブレンドである管組立品。
[19] 流体送達部材を該体の中に挿入し、そして該医療用流体を該管を通して該送達部材に送達することを含む、水性もしくは非水性の医薬流体またはその組み合わせを患者に送達する方法であって、該部材が、[14]に記載の管組立品に流体接続されている方法。
[20] [14]に記載の方法であって、該医薬流体が、以下:
植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ならびに300および400の分子量を有するポリエチレングリコール類からなる群から選択される非水性溶媒;
の1以上を含む方法。
[21] [14]に記載の方法であって、該医薬流体が、以下:
アルコール類、エステル類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類およびピロリドン類からなる群から選択される、該患者への注射のための溶剤としての合成および半合成調製物または混合溶剤ベースの流体調製物;
の1以上を含む方法。
[22] [21]に記載の方法であって、該流体調製物が、エチルアルコール;ベンジルアルコール;フェニルエチルアルコール;プロピレングリコール;ブチレングリコール;トリクロロ−t−ブチル;ポリオキシエチレングリコール;エチルエーテル;フェノキシエタノール;酢酸エチル;オレイン酸エチル;安息香酸ベンジル;N−メチルアセトアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびN−メチル 2−ピロリドン(NMP)からなる群から選択される方法。
【符号の説明】
【0061】
10 3層以上の管
11 終端部分
12 第1外層
14 第1内層
14a 外側表面
17 終端表面
18 表面
19 中間層または内層
20 管体またはフィットメント
22 中心流体通路
22a 内壁表面
25 停止表面
A1 軸
A2 軸
AL 軸長
D1 断面径
D2 断面径
D3 断面内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6