特許第6806669号(P6806669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806669
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/135 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   A61B17/135
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-510972(P2017-510972)
(86)(22)【出願日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2016060984
(87)【国際公開番号】WO2016163326
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-78481(P2015-78481)
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】木村 綾子
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
【審査官】 家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−119517(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/095646(WO,A1)
【文献】 実公昭10−005058(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢体の止血する部位に巻き付けることが可能な可撓性を備える帯体と、
前記帯体を前記肢体に巻き付けた状態で固定する固定部と、
前記帯体に連結された、流体を注入することにより拡張する拡張部と、
前記拡張部を前記止血すべき部位に位置合わせするためのマーカーと、を有する止血器具であって、
前記拡張部は、拡張時に、前記帯体の長手方向に対して直交する幅方向に並ぶ複数の凸部を有し、
前記マーカーは、隣り合う前記凸部の間に配置される止血器具。
【請求項2】
前記マーカーは、前記帯体の幅方向の一方側に片寄って配置される請求項に記載の止血器具。
【請求項3】
前記帯体よりも硬質な材料からなる湾曲板を有し、
前記帯体は、前記拡張体と重なるように前記湾曲板を保持する請求項1または2に記載の止血器具。
【請求項4】
前記湾曲板と前記拡張部との間には前記拡張部を押圧する押圧部材を有し、
前記押圧部材は、前記拡張部と重なるように設けられる、請求項に記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺した部位を圧迫して止血するための止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腕または脚の血管の穿刺した部位にイントロデューサーシースを導入し、イントロデューサーシースの内腔を介してカテーテル等を血管等の病変部に挿入して、経皮的に治療・検査などが行われている。このような方法を行った場合、イントロデューサーシースを抜去した後の穿刺部位を止血する必要がある。この止血を行うために、腕または脚の穿刺部位に巻き付けるための帯体と、この帯体を穿刺部位に巻き付けた状態で固定する固定部と、流体を注入することにより拡張して、穿刺部位を圧迫する拡張部とを備えた止血器具が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この止血器具は、拡張部から作用する圧迫力を、穿刺部位に対して直接的に作用させて止血を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−119517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
止血器具は、拡張した拡張部が穿刺部位を押圧するため、拡張部が長時間に渡って血管や神経を圧迫し続けることにより、しびれや痛みを引き起こしたり、血管を閉塞したりすることがある。そのため、医師や看護師は、穿刺部位への拡張部による圧力を調節するため、経時的に拡張部を減圧する操作を行っている。
【0005】
止血器具では、穿刺部位の圧迫による止血性能と、血管及び神経の圧迫による疼痛等の痛みやしびれはトレードオフの関係にあるため、穿刺部位を十分に止血しつつ、より疼痛を軽減する技術が求められる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、拡張部による痛みを軽減しつつ、穿刺部位を十分に止血できる止血器具を提供することを目的とする。具体的には、本発明に係る止血器具は、拡張部による穿刺部位への加圧を分散し、かつ、穿刺した傷口への刺激を軽減することで拡張部による痛みを軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する止血器具は、肢体の止血する部位に巻き付けることが可能な可撓性を備える帯体と、前記帯体を前記肢体に巻き付けた状態で固定する固定部と、前記帯体に連結された、流体を注入することにより拡張する拡張部と、前記拡張部を前記止血すべき部位に位置合わせするためのマーカーと、を有する止血器具であって、前記拡張部は、拡張時に、前記帯体の長手方向に対して直交する幅方向に並ぶ複数の凸部を有し、前記マーカーは、隣り合う前記凸部の間に配置される。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した止血器具は、拡張時の拡張部が、帯体の幅方向に並ぶ複数の凸部を備えている。そのため、帯体を肢体に巻き付けた際、止血する血管が延在する方向に沿って拡張部の凸部が並んで配置される。このため、本発明に係る止血器具は、拡張部が拡張した際、血管の複数の箇所に凸部による圧迫力を分散させることができる。すなわち、本発明に係る止血器具は、血管の複数の箇所に拡張部による圧迫力が分散されるため、痛みの発生を極力抑えつつ止血できる。
【0009】
前記止血器具は、前記拡張部を前記止血すべき部位に位置合わせするためのマーカーを備えるように構成される。これにより、止血器具は、マーカーを穿刺部位に位置合わせすることで、体表面の望ましい位置に対して拡張部による圧迫を付与することができる。このため、本発明に係る止血器具は、拡張部の位置ズレによる血液の漏れ等を抑制でき、穿刺部位を確実に止血することができる。
【0010】
前記マーカーは、隣り合う前記凸部の間に配置されるように構成される。これにより、止血器具は、マーカーを穿刺部位に位置合わせすることにより、拡張時において、2つの凸部の間に穿刺部位を挟むことができる。そのため、本発明に係る止血器具は、血管の穿刺部位の上流側と下流側の両方を挟んで圧迫することができ、凸部による穿刺部位の過度な圧迫を抑制して痛みを低減させつつ、優れた止血効果を得ることができる。なお、動脈の場合、血管の上流側とは、血管の心臓に近づく方向をいう。また、血管の下流側とは、血管の心臓から遠ざかる方向をいう。
【0011】
前記マーカーは、前記帯体の幅方向の一方側に片寄って配置されように構成してもよい。これにより、止血器具は、マーカーを穿刺部位に位置合わせすることで、拡張部を穿刺部位に配置した際、血管の上流側の圧迫力を血管の下流側も高く設定することが容易となる。このため、心臓に近く血圧の高い血管の上流側での圧迫力を血管の下流側よりも高くすることができ、血流を阻害し過ぎずに生体への負担を極力低減させつつ、優れた止血効果を得ることができる。
【0012】
前記止血器具は、前記帯体よりも硬質な材料からなる湾曲板を有し、前記帯体は、前記拡張部と重なるように前記湾曲板を保持するように構成してもよい。これにより、止血器具は、止血器具を装着した後に拡張部を拡張させると、湾曲板により、拡張部の肢体の体表面から離れる方向への拡張が抑制され、拡張部の圧迫力が止血する血管に集中する。このため、止血効果が向上するとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫することを回避することができ、手のしびれや血行不良などが生じることを抑制できる。また、湾曲板が湾曲しているため、拡張部の圧迫力を湾曲板により効果的に受けることができ、肢体への圧迫力を効果的に調整して、優れた止血効果を得ることができる。
【0013】
前記止血器具は、前記湾曲板と前記拡張部との間には前記拡張部を押圧する押圧部材を有し、前記押圧部材は、前記拡張部と重なるように設けられるように構成してもよい。これにより、止血部材は、押圧部材により、拡張部から穿刺部位への圧力の方向を調整することができる。このため、止血効果が向上するとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫することを回避することができ、手のしびれや血行不良などが生じることをより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る止血器具を装着面側から観た平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】止血器具を装着した状態を示す横断面図である。
図4】止血器具を装着した状態を示す縦断面図である。
図5】止血器具を装着した状態を示す平面図である。
図6】拡張部の第1変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図7】拡張部の第2変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図8】拡張部の第3変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図9】拡張部の第4変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図10】拡張部の第5変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図11】拡張部の第6変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図12】拡張部の第7変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図13】拡張部の第8変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図14】拡張部の第9変形例を示す図であり、(A)は装着面側から観た正面図、(B)は装着面に沿う方向から観た側面図である。
図15】拡張部の第10変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
本発明の実施形態に係る止血器具1は、図3に示すように、治療・検査などを行うカテーテル等を血管内に挿入する目的で手首200(肢体)の橈骨動脈210に形成された穿刺部位220(止血すべき部位)に留置していたイントロデューサーシースを抜去した後、その穿刺部位220を止血するために使用するものである。止血器具1は、図1,2に示すように、手首200に巻き付けるための帯体2と、帯体2を手首200に巻き付けた状態で固定する面ファスナー3(固定部)と、湾曲板4と、拡張部5と、マーカー7と、注入部8とを備えている。
【0017】
帯体2は、可撓性を有する帯状の部材である。帯体2は、手首200の外周を略一周するように巻き付けられる。帯体2の中央部には、湾曲板4を保持する湾曲板保持部21が形成されている。湾曲板保持部21は、外面側(または内面側)に別個の帯状の部材が融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により接合されることにより、二重になっており、これらの隙間に挿入された湾曲板4を保持する。
【0018】
帯体2の図1中の左端付近の部分の外面側には、一般にマジックテープ(登録商標)などと呼ばれる面ファスナー3の雄側(または雌側)31が設置されており、帯体2の図1中の右端付近の部分の内面側には、面ファスナー3の雌側(または雄側)32が設置されている。帯体2を手首に巻き付け、雄側31および雌側32が接合することにより、帯体2が手首200に装着される。なお、帯体2を手首200に巻き付けた状態で固定する手段は、面ファスナー3に限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、帯体2の端部を通す枠部材であってもよい。
【0019】
帯体2の構成材料は、可撓性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0020】
帯体2は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220を外側から確実に視認することができ、後述するマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
【0021】
湾曲板(硬質板)4は、帯体2の二重に形成された湾曲板保持部21の間に挿入されることにより帯体2に保持されている。湾曲板4は、その少なくとも一部が内面側(装着面側)に向かって湾曲した形状をなしている。この湾曲板4は、帯体2よりも硬質な材料で構成されており、ほぼ一定の形状を保つようになっている。
【0022】
湾曲板4は、帯体2の長手方向に長い形状をなしている。この湾曲板4の長手方向の中央部41は、ほとんど湾曲せずに平板状になっており、この中央部41の両側には、それぞれ、内周側に向かって、かつ、帯体2の長手方向(手首200の周方向)に沿って湾曲した湾曲部42が形成されている。
【0023】
湾曲板4の構成材料は、穿刺部位220を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0024】
湾曲板4は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220を外側から確実に視認することができ、後述するマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
【0025】
なお、湾曲板4は、中央部41のような湾曲していない部分を有さないもの、すなわち、その全長に渡り湾曲しているものであってもよい。
【0026】
帯体2には、可撓性を有する材料で構成された拡張部5が連結されている。拡張部5は、流体(空気等の気体もしくは液体)を注入することにより拡張し、手首200の穿刺部位220を圧迫する。
【0027】
拡張部5は、帯体2に保持されている湾曲板4の長手方向の一端側に片寄って重なるように位置している。すなわち、図示の構成では、拡張部5は、湾曲板4の図2中の左端側の湾曲部42および中央部41の間の近辺と重なるように位置している。
【0028】
なお、拡張部5が湾曲板4の長手方向の一端側に片寄って重なるように位置している場合、湾曲板4の両側に位置する湾曲部42は、拡張部5が位置する側(湾曲板4の一端側)の湾曲部42の方が長手方向に長くなっている。これにより、止血器具1を手首200に装着して拡張部5を拡張した際、湾曲板4の他端側の湾曲部42が手首に接触し、疼痛等の痛みが生じるリスクを抑制することができる。
【0029】
拡張部5の構成材料は、穿刺部位220を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、前述した帯体2の構成材料と同様のものを用いることができる。また、拡張部5は、帯体2と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着による帯体2との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
【0030】
拡張部5は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220を外側から確実に視認することができ、後述するマーカー7を穿刺部位220に容易に位置合わせすることができる。
【0031】
拡張部5の構造は、例えば、前述したような材料からなる2枚のシート材を重ね、縁部を融着または接着等の方法により接合して袋状に形成したものとすることができる。
【0032】
拡張部5は、流体が流入した拡張時に装着面側(手首に装着したときの内面側)へ凸状となる凸部52が、帯体2の長手方向に対して直交する幅方向に複数(本実施形態では3つ)並んで形成される。拡張部5は、内部に、装着面側から観て円形の3つの単空間53が幅方向に重なりつつ連通して形成されている。なお、凸部52は、拡張部5が拡張する前の状態においては、凸状であっても凸状でなくてもよい。
【0033】
このような拡張部5は、可撓性を有する保持部51を介して、帯体2に連結されている。なお、保持部51は、拡張部5と同材質で構成されていることが好ましい。
【0034】
拡張部5の外面側、すなわち穿刺部位220と接触しない面側には、マーカー7が設けられている。拡張部5にこのようなマーカー7を設けることによって、拡張部5を穿刺部位220に対して容易に位置合わせすることができる。そして、拡張部5の位置ズレによる血液の漏れや血腫の発生が抑制される。
【0035】
マーカー7は、帯体2の幅方向において、拡張部5の注入部82が連結される側に位置している。また、マーカー7は、拡張部5の隣接する2つの凸部52の間に配置される。すなわち、マーカー7は、帯体2の幅方向の一方側に片寄って配置されることが好ましい。
【0036】
なお、マーカー7が拡張部5の隣接する2つの凸部52の間に配置されることにより、拡張部5の凸部52は、肢体の外表面(皮膚)に存在する穿刺部位220に直接的に圧迫力を付与することがほとんどなく、血管の穿刺部位に圧迫力を付与することができる(図4を参照)。また、肢体にイントロデューサーシース等を穿刺して留置する場合、イントロデューサーシース等は、肢体の外表面(皮膚)に対して30°〜45°の角度で穿刺して留置されるため、皮膚に存在する穿刺部位220と血管に存在する穿刺部位は異なる。そのため、止血器具1は、肢体の外表面(皮膚)に存在する穿刺部位220に凸部52で直接的に圧迫力を付与しなくても、血管の穿刺部位のみに凸部52で圧迫力を付与することができる。そのため、止血器具1は、拡張部5による痛みを軽減しつつ、穿刺部位を十分に止血できる。
【0037】
マーカー7の形状は、特に限定されず、例えば、円、三角形、四角形等が挙げられ、本実施形態では、四角形をなしている。
【0038】
マーカー7の大きさは、特に限定されないが、例えば、マーカー7の形状が四角形をなしている場合、その一辺の長さが1〜4mmの範囲であることが好ましい。一辺の長さが5mm以上であると、穿刺部位220の大きさに対してマーカー7の大きさが大きくなるため、拡張部5の中心部を穿刺部位220に位置合わせし難くなる。
【0039】
マーカー7の材質は、特に限定されず、例えば、インキ等の油性着色料、色素を混練した樹脂等が挙げられる。
【0040】
マーカー7の色は、拡張部5を穿刺部位220に位置合わせすることができる色であれば特に限定されないが、緑色系が好ましい。緑色系にすることにより、マーカー7を血液や皮膚上で容易に視認することができるため、拡張部5を穿刺部位220に位置合わせすることがより容易となる。
【0041】
また、マーカー7は半透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位220をマーカー7の外側から視認することができる。
【0042】
拡張部5にマーカー7を設ける方法は特に限定されないが、例えばマーカー7を拡張部5に印刷する方法、マーカー7を拡張部5に融着する方法、マーカー7の片面に接着剤を塗布して拡張部5に貼り付ける方法等が挙げられる。
【0043】
なお、マーカー7は拡張部5の内面側、すなわち拡張部5の穿刺部位220と接触する面に設けてもよい。この際、マーカー7は、穿刺部位220と直接接触しないように拡張部5内の内表面等に設けられることが好ましい。
【0044】
また、マーカー7を拡張部5に設けるのではなく、帯体2もしくは湾曲板4に設けてもよい。この場合も、マーカー7が隣接する凸部52の間に位置するように設けることが好ましい。
【0045】
注入部8は、拡張部5内に流体を注入するための部位であり、図1に示すように、拡張部5に接続されている。注入部8は、その基端部が拡張部5に接続され、その内腔が拡張部5の内部に連通する可撓性を有するチューブ81と、チューブ81の内腔が連通するようにチューブ81の先端部に設置された袋体82と、袋体82に接続された管状のコネクタ83とを備えている。コネクタ83には、逆止弁(図示せず)が内蔵されている。
【0046】
拡張部5を拡張(膨張)させる際には、コネクタ83にシリンジ(図示せず)の先筒部を挿入して逆止弁を開き、このシリンジの押し子を押して、シリンジ内の流体を注入部8を介して拡張部5内に注入する。拡張部5が膨張すると、チューブ81を介して拡張部5と連通している袋体82も膨張し、流体が漏れずに、拡張部5を加圧できていることを目視で確認できる。拡張部5内に流体を注入した後、コネクタ83からシリンジの先筒部を抜去すると、コネクタ83に内蔵された逆止弁が閉じて流体の漏出が防止され、拡張部5が膨張した状態が維持される。
【0047】
次に、本実施形態に係る止血器具1の使用方法について説明する。
【0048】
止血器具1を手首200に装着する前では、拡張部5は、拡張していない状態となっている。手首200に穿刺を行う場合、通常、橈骨動脈210への穿刺部位220は、右手の手首200の内側(腱がある側)の親指側へ片寄った位置にある。通常、穿刺部位220にはイントロデューサーシースが留置されている。このイントロデューサーシースが留置されたままの状態の手首200に帯体2を巻き付け、拡張部5に設けられたマーカー7が穿刺部位220上に重なるように拡張部5および帯体2を位置合わせして、面ファスナー3の雄側31および雌側32を接触させて接合し、帯体2を手首200に装着する。止血器具1は、拡張部5に連結される注入部8が、橈骨動脈210の血流の下流側に向くように、手首200に対して装着される。これにより、手首よりも上流側での手技や、上流側に位置する器具(例えば、血圧計等)に干渉することなしに、注入部8の操作が可能である。また、止血器具1を、注入部8が下流側に向くように右の手首200に装着することで、湾曲板4の一方側に片寄って重なるように配置される拡張部5は、手首200の内側の親指側へ片寄って位置する橈骨動脈210に沿って並んで位置する。そして、拡張部5の複数の凸部52は、帯体2の幅方向に沿って並んでいるため、橈骨動脈210に沿って並ぶことになる。そして、マーカー7が、拡張部5の注入部8が連結される側と反対側の2つの凸部52の間に配置されるため、マーカー7を穿刺部位220に位置合わせすると、橈骨動脈210の穿刺部位220よりも上流側に2つの凸部52が位置し、穿刺部位220よりも下流側に1つの凸部52が位置する。
【0049】
止血器具1を手首200に装着した後、注入部8のコネクタ83にシリンジ(図示せず)を接続し、前述したようにして流体を拡張部5内に注入し、図3、4に示すように、拡張部5を拡張させる。このときの流体の注入量により、症例に応じて、拡張部5の拡張度合い、すなわち、穿刺部位220への圧迫力を容易に調整することができ、止血器具1の操作性が高い。
【0050】
拡張部5を拡張させた後、コネクタ83からシリンジを離脱させる。そして穿刺部位220からイントロデューサーシースを抜去する。これにより、拡張部5は、拡張状態を維持し、穿刺部位220への圧迫状態が維持される。
【0051】
拡張部5が拡張すると、橈骨動脈210に沿って並ぶ3つの凸部52が手首200の体表面を押圧し、橈骨動脈210の穿刺部位220よりも上流側が2つの凸部52により圧迫され、穿刺部位220よりも下流側が1つの凸部52により圧迫される。このとき、拡張部5の穿刺部位220に重なる部位は、皮膚側の穿刺部位220に接触しないか、若しくは接触しても圧迫力が小さい。これにより、本発明に係る止血器具1は、拡張部5が皮膚側の穿刺部位220を直接的に圧迫することが軽減できるため、穿刺した傷口への過度な刺激を抑えることができ、患者が痛みを感じやすくなる要因を軽減することができる。また、本発明に係る止血器具1は、穿刺部位220を局所的に圧迫するのではなく、圧迫力を血管に沿って複数個所に分散させつつ穿刺部位220を止血することが可能となる。そのため、患者の疼痛などの痛みの発生を低減させる。さらに、本発明に係る止血器具1は、凸部52により穿刺部位220を挟んで血管の上流側と血管の下流側を圧迫するため、優れた止血効果を得ることができる。なお、拡張部5の穿刺部位220に重なる部位が、穿刺部位220に直接的に接触しなくとも、穿刺部位220の周辺が圧迫されることで、体内に圧迫力を作用させて、穿刺部位220からの出血を抑制できる。
【0052】
また、皮膚側の穿刺部位220を凸部52の間に配置することで、傷口に過度な刺激が与えられなくなり、痛みを低減できる。
【0053】
また、血管を一箇所で圧迫すると、加圧部位と加圧されない部位との血流差が大きくなり、圧迫を解除した際に、穿刺部位に生じ得る血餅が血流によって飛ばされやすくなる可能性がある。本発明に係る止血器具1では、血管を複数個所で圧迫することで、圧迫を解除した際、血餅が飛ぶことをより確実に抑制できる。
【0054】
また、複数の凸部52により血流に沿って複数個所を圧迫することで、血流が滞留する箇所が複数個所存在することになり、穿刺部位220に血小板が凝集しやすい環境を生じさせることができる。
【0055】
そして、止血器具1により、橈骨動脈210の穿刺部位220よりも上流側が2つの凸部52により圧迫され、橈骨動脈210の穿刺部位220よりも下流側が1つの凸部52により圧迫される。そのため、止血器具1では、橈骨動脈210の穿刺部位220よりも上流側に対する圧迫力が、橈骨動脈210の下流側よりも大きい。このため、止血器具1は、心臓に近く血圧の高い血管の上流側での圧迫力を血管の下流側よりも高くすることができる。これにより、血圧に合わせて拡張部5による圧迫力をバランスよく配分できるため、血流を阻害し過ぎずに生体への負担を極力低減させつつ、優れた止血効果を得ることができる。
【0056】
拡張部5が拡張すると、湾曲板4は、手首200の体表面から離間して、手首200に接触し難くなる。また、止血器具1は、止血器具1を装着した後に拡張部5を拡張させると、湾曲板4により、拡張部5の肢体の体表面から離れる方向への拡張が抑制され、拡張部5の圧迫力が止血する血管に集中する。これにより、拡張部5からの圧迫力が、穿刺部位220の周辺に集中して作用するため、止血効果が向上するとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫するのを回避することができ、手のしびれや血行不良などを生じるのを有効に防止することができる。
【0057】
止血器具1を取り外す際には、注入部8のコネクタ83にシリンジを接続し、拡張部5内の流体をシリンジにより吸引して排出して、拡張部5を収縮させる。この後、面ファスナー3の雄側31および雌側32を剥がすと、止血器具1を手首200から取り外すことができる。なお、止血器具1を取り外す際に、拡張部5を収縮させなくてもよい。
【0058】
なお、止血器具1は、止血器具1を取り外す前において、穿刺部位220付近への拡張部5による圧力を調節するため、経時的に拡張部5を減圧する操作を行ってもよい。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る止血器具1は、肢体の止血する部位に巻き付けることが可能な可撓性を備える帯体2と、帯体を肢体に巻き付けた状態で固定する面ファスナー3(固定部)と、帯体2に連結された、流体を注入することにより拡張する拡張部5とを有している。そして、拡張部5は、拡張時に、帯体2の長手方向に対して直交する幅方向に並ぶ複数の凸部52を有する。これにより、帯体2を肢体に巻き付けた際に、止血する橈骨動脈210が延在する方向に沿って凸部52が並んで配置される。このため、このため、複数の凸部52により圧迫力を血管に沿って複数個所に分散させることができ、痛みの発生を極力抑えつつ止血できる。なお、帯体2の長手方向の長さは、帯体2の幅方向の長さよりも長いため、手首等の肢体に十分に巻き付けることができる。
【0060】
さらに、血管の穿刺部位220を挟んで血管の上流側および血管の下流側の両方に凸部52を配置し、凸部52による圧迫力を分散させつつ穿刺部位220の周囲から穿刺部位220を止血することが可能となり、痛みの発生を極力抑えつつ止血できる。また、穿刺部位220を凸部52の間に配置することで、傷口に過度な刺激が与えられなくなり、痛みを低減できる。
【0061】
また、止血器具1は、拡張部5を穿刺部位220に位置合わせするためのマーカー7を有している。これにより、止血器具1は、マーカー7を穿刺部位220に位置合わせすることで、体表面の望ましい位置を拡張部5により圧迫を付与することができる。このため、止血器具1は、拡張部5の位置ズレによる血液の漏れ等を抑制でき、穿刺部位220を確実に止血することができる。
【0062】
また、マーカー7は、隣り合う凸部52の間に配置される。このため、止血器具は、マーカー7を穿刺部位220に位置合わせすることにより、拡張部5の拡張時において、2つの凸部52の間に穿刺部位220の挟むことができる。そのため、止血器具1は、血管の穿刺部位220の上流側と下流側の両方を挟んで圧迫することができ、凸部52による穿刺部位220の過度な圧迫を抑制して痛みを低減させつつ、優れた止血効果を得ることができる。
【0063】
また、マーカー7は、帯体2の幅方向の一方側に片寄って配置されている。これにより、止血器具1は、マーカー7を穿刺部位220に位置合わせすることで、拡張部5を穿刺部位220に配置した際、拡張部5による血管の上流側の圧迫力を血管の下流側も高く設定することが容易となる。このため、心臓に近く血圧の高い血管の上流側での圧迫力を血管の下流側よりも高くすることができ、血流を阻害し過ぎずに生体への負担を極力低減させつつ、優れた止血効果を得ることができる。
【0064】
また、止血器具1は、帯体2よりも硬質な材料からなる湾曲板4を有し、帯体は2、拡張部5と重なるように湾曲板4を保持するように構成してもよい。これにより、止血器具1は、止血器具1を装着した後に拡張部5を拡張させると、湾曲板4により、拡張部5の肢体の体表面から離れる方向への拡張が抑制され、拡張部5の圧迫力が止血する血管に集中する。このため、止血効果が向上するとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫することを回避することができ、手のしびれや血行不良などが生じることを抑制できる。また、湾曲板4が湾曲しているため、拡張部5の圧迫力を湾曲板4により効果的に受けることができ、肢体への圧迫力を効果的に調整して、優れた止血効果を得ることができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0066】
また、本発明の止血器具は、手首に装着して使用するものに限らず、腕または脚(本明細書では、これらを総称して「肢体」という)のいかなる部分に装着して使用する止血器具にも適用することができる。
【0067】
また、拡張部の構成は、上述した実施形態に限定されない。例えば、図6に示す第1変形例の拡張部9のように、装着面側から観て円形の単空間91が、連通部92により連通されて形成されてもよい。拡張部9は、拡張した際、装着面側に半球状の凸部93が形成され、装着面側の反対側に、凸部93と対称的に突出する半球状の支持部94が形成される。支持部94は、帯体2に接触して凸部93を支持し、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。
【0068】
また、図7に示す第2変形例の拡張部10のように、装着面側から観て略矩形の単空間101が、連通部102により連通されて形成されてもよい。拡張部10は、拡張した際、装着面側に、略角柱状の凸部103が形成され、装着面側の反対側に、凸部103と対称的に突出する略角柱状の支持部104が形成される。支持部104は、帯体2に接触して凸部103を支持して、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。
【0069】
また、図8に示す第3変形例の拡張部11のように、装着面側から観て円形の単空間111が、連通部112により連通されて形成されてもよい。拡張部11は、拡張した際、装着面側に、円柱の頂部に半球が結合された形状の凸部113が形成され、装着面側の反対側が、平坦に形成されている。凸部113は、円柱に半球が結合されていることで突出方向に長く形成される。そのため、各々の凸部113は、体表面の狙った部位に局所的に接触しやすくなる。このため、圧迫力を分散させ過ぎずに、適切な圧迫力を作用させて止血効果を高めることができる。なお、拡張部11に流体を注入することにより、装着面側に凸部113が突出し、装着面の反対側が平坦となる構成は、例えば、重なる2枚のシート材に予め形状を付与したり、重ねる2枚のシート材の材料を異ならせたり、または重ねる2枚のシート材の厚さを変更したりすることで実現できる。
【0070】
また、図9に示す第4変形例の拡張部12のように、装着面側から観て円形の単空間121が、連通部122により連通されて形成されてもよい。拡張部12は、拡張した際、装着面側に、円柱の頂部に円柱の直径よりも小さい直径を有する半球が結合された形状の凸部123が形成される。また、拡張部12は、拡張した際、装着面側の反対側が、平坦に形成されている。凸部123は、円柱にその円柱の直径よりも小さい直径を有する半球が結合されていることで突出方向に長く形成される。そのため、各々の凸部123は、体表の狙った部位に局所的に接触しやすくなる。このため、拡張部12は、圧迫力を分散させ過ぎずに、適切な圧迫力を作用させて止血効果を高めることができる。
【0071】
また、図10に示す第5変形例の拡張部13のように、装着面側から観て円形の単空間131が、連通部132により連通されて形成されてもよい。拡張部13は、拡張した際、装着面側に、半球状の凸部133が形成され、装着面側の反対側に、円柱状に突出する支持部134が形成される。支持部134は、帯体2に接触して凸部133を支持して、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。
【0072】
また、図11に示す第6変形例の拡張部14のように、装着面側から観て円形の単空間141が、連通部142により連通されて形成されてもよい。拡張部14は、拡張した際、装着面側に、円柱の頂部に円柱の直径よりも小さい直径を有する半球が結合された形状の凸部143が形成される。また、拡張部14は、拡張した際、装着面側の反対側に、円柱状に突出する支持部144が形成される。支持部144は、帯体2に接触して凸部143を支持して、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。
【0073】
また、図12に示す第7変形例の拡張部15のように、装着面側から観て円形の単空間151が、連通部152により連通されて形成されてもよい。拡張部15は、拡張した際、装着面側に、半球の頂部にこの半球の直径よりも小さい直径を有する球体である先端部155が結合された形状の凸部153が形成される。また、拡張部15は、拡張した際、装着面側の反対側に、半球状に突出する支持部154が形成される。支持部154は、帯体2に接触して凸部153を支持して、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。凸部153における先端部155の基部は、細くくびれて形成されている。このため、凸部153は、先端部155以外が体表面に接触し難くなっており、体表面に接触して潰れても、接触面積が大きく変化せず、常に適切な圧迫力を作用させることができる。
【0074】
また、図13に示す第8変形例の拡張部16のように、装着面側から観て略矩形の単空間161が、連通部162により連通されて形成されてもよい。拡張部16は、拡張した際、装着面側に、角柱の頂部に球状の先端部165が結合された形状の凸部163が形成される。また、拡張部16は、拡張した際、装着面側の反対側に、角柱状に突出する支持部164が形成される。支持部164は、帯体2に接触して凸部163を支持して、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。凸部163における先端部165の基部は、細くくびれて形成されている。このため、凸部163は、先端部165以外が体表面に接触し難くなっており、体表面に接触して潰れても、接触面積が大きく変化せず、常に適切な圧迫力を作用させることができる。
【0075】
また、図14に示す第9変形例の拡張部17のように、装着面側から観て円形の単空間171が、連通部172により連通されて複数形成され、単空間171の少なくとも1つの直径が異なってもよい。拡張部17は、拡張した際、装着面側に半球状の凸部173が形成され、装着面側の反対側に、凸部173と対称的に突出する半球状の支持部174が形成される。支持部174は、帯体2に接触して凸部173を支持し、血管に対して圧迫力を効率よく作用させる役割を果し、止血効果を向上させる。このように、凸部173の大きさを異ならせることで、凸部173によって発生する圧迫力を任意に設定することが可能となり、体表面に適切な圧迫力を作用させることが可能となる。例えば、拡張部17は、止血器具を肢体に装着した際、図14に示すように心臓側(帯体の幅方向において、拡張部17に注入部が連結される側と反対側)に直径が大きい凸部173が配置されるように構成することが好ましい。これにより、拡張部18は、心臓に近く血圧の高い血管の上流側に配置される凸部173の圧迫力を血管の下流側に配置される凸部173の圧迫力よりも高くすることができる。これにより、血圧に合わせて拡張部17による圧迫力をバランスよく配分できるため、血流を阻害し過ぎずに生体への負担を極力低減させつつ、優れた止血効果を得ることができる。
【0076】
なお、図7図13において、拡張部は、装着面側から観て略矩形の単空間を有しているが、単空間の形状は略矩形の形状に限定されない。例えば、拡張部は、装着面側から観て多角形の単位空間を有していてもよい。
【0077】
また、図15に示す第10変形例のように、拡張部18と帯体2又は湾曲板4の間に、可撓性を有する材料で構成された補助拡張部19(押圧部材)が、拡張部18と重なるようにして設けられてもよい。この補助拡張部19は、拡張部18を押圧する押圧部材として機能する。補助拡張部19は、拡張部18と連通しており、拡張部18に流体を注入して拡張させることで同時に拡張する。補助拡張部19は、拡張部18による肢体への圧迫方向を容易に調整可能とし、操作性を向上させるとともに、止血効果を向上させることができる。なお、拡張部18を押圧する押圧部材は、補助拡張部19に限らず、例えば、スポンジ状の物質、弾性材料、綿(わた)のような繊維の集合体、またはこれらの組み合わせなどによって形成されたパッドのような部材であってもよい。
【0078】
また、拡張部の凸部の数は、3つに限定されず、2つ以上であればよい。凸部の数や大きさ、マーカーの位置等は、状況に応じて望ましいように、任意に設定することが可能である。また、マーカーの位置は、帯体の幅方向の一方側に片寄って配置されず、幅方向の中央に配置されてもよい。
【0079】
さらに、本出願は、2015年4月7日に出願された日本特許出願番号2015−078481号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0080】
1 止血器具、
2 帯体、
3 面ファスナー(固定部)、
4 湾曲板(硬質板)、
5、10、11、12、13、14、15、16、17、18 拡張部、
52、93、103、113、123、133、134、143、153、163、173 凸部、
7 マーカー、
9 拡張部、
19 補助拡張部(押圧部材)、
200 手首(肢体)、
210 穿刺部位。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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