(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806675
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】走査型内視鏡の画像評価システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20201221BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
A61B1/00 523
A61B1/00 630
G02B23/26 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-524833(P2017-524833)
(86)(22)【出願日】2016年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2016067986
(87)【国際公開番号】WO2016208491
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2015/068195
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤義
(72)【発明者】
【氏名】雙木 満
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−018556(JP,A)
【文献】
特開平09−294705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照明光を導光し、先端から射出させる光ファイバと、該光ファイバの前記先端を振動させて、射出される前記照明光を走査させるアクチュエータとを備えるファイバスキャナ部と、光検出部とを備える走査型内視鏡と、
該走査型内視鏡により取得される画像の特性を評価するための指標部を備えるチャートとを備え、
該チャートを挟んで、前記光ファイバの前記先端と、前記光検出部とを対向させて配置し、前記光ファイバの前記先端から射出され前記チャートを透過した前方散乱光を前記光検出部により検出する走査型内視鏡の画像評価システム。
【請求項2】
前記チャートが、前記指標部または前記指標部以外の部材のいずれか一方を、光を透過する透過性部材、他方を遮光部材により構成されている請求項1に記載の走査型内視鏡の画像評価システム。
【請求項3】
前記指標部が、光散乱体を備える請求項1または請求項2に記載の走査型内視鏡の画像評価システム。
【請求項4】
前記指標部が、光を透過する透過性部材の表面に前記光散乱体を配置することにより構成されている請求項3に記載の走査型内視鏡の画像評価システム。
【請求項5】
前記光検出部が受光用の光ファイバを有し、該受光用の光ファイバが前記チャートにおいて発生した前方散乱光を受光する請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像評価システム。
【請求項6】
前記受光用の光ファイバが、マルチモードファイバである請求項5に記載の画像評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型内視鏡の画像評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を導光する光ファイバの射出端を振動させて、射出端から射出される光を被写体において2次元的に走査させ、被写体の各走査位置から戻る光を受光することにより画像を取得する走査型内視鏡が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この走査型内視鏡では、光を射出する光ファイバの射出端の径方向外方に射出端と同一方向を向けた受光用の光ファイバを固定して、射出端の方向に戻ってきた被写体からの光を受光して集めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5608718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1の走査型内視鏡により取得される画像を評価する場合には、光を射出した射出端の方向に戻る後方散乱光を検出するため、各走査位置からの光のみならず、被写体の表面において反射して戻る光についても受光用の光ファイバによって検出してしまうことがある。すなわち、被写体の表面における反射光は強い迷光として検出され、ハレーションを伴って画像を劣化させてしまうため、被写体の状態を表す画像を精度よく生成することができない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被写体の表面における反射光の影響を受けることなく、取得される画像の特性を精度よく評価することができる走査型内視鏡の画像評価システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、光源からの照明光を導光し、先端から射出させる光ファイバと、該光ファイバの前記先端を振動させて、射出される前記照明光を走査させるアクチュエータとを備えるファイバスキャナ部と、光検出部とを備える走査型内視鏡と、該走査型内視鏡により取得される画像の特性を評価するための指標部を備えるチャートとを備え、該チャートを挟んで、前記光ファイバの前記先端と、前記光検出部とを対向させて配置し、前記光ファイバの前記先端から射出され前記チャートを透過した前方散乱光を前記光検出部により検出する走査型内視鏡の画像評価システムである。
【0007】
本態様によれば、ファイバスキャナ部をチャートの一側に対向させ、光検出部をチャートの他側に対向させて、光源からの照明光を光ファイバにより導光させるとともに、アクチュエータを駆動して光ファイバの先端を振動させることにより、光ファイバの先端から射出される照明光がチャートにおいて走査される。チャートにおいては、照明光の各走査位置において発生した光が全方位に散乱するが、そのうちのチャートの指標部を透過する方向に散乱した前方散乱光がチャートを挟んでファイバスキャナ部とは反対側に配置されている光検出部により検出される。
【0008】
これにより、光検出部により検出された光の強度と、ファイバスキャナ部による各走査位置の情報とを対応づけて記憶しておくことによって、チャートの画像を生成することができる。
この場合において、光検出部にはチャートの指標部を透過した前方散乱光のみが検出されるので、光ファイバの先端から射出された照明光がチャートの表面において反射して戻る反射光が検出されずに済む。すなわち、取得される画像は、強度の高い迷光である反射光が含まれないので、チャートを精度よく表した画像となり、取得された画像の特性を精度よく評価することができる。
【0009】
上記態様においては、前記チャートが、前記指標部または前記指標部以外の部材のいずれか一方を、光を透過する透過性部材、他方を遮光部材により構成されていてもよい。
また、上記態様においては、前記指標部が、光散乱体を備えていてもよい。
また、上記態様においては、
前記指標部が、光を透過する透過性部材の表面に前記光散乱体を配置することにより構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被写体の表面における反射光の影響を受けることなく、取得される画像の特性を精度よく評価することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走査型内視鏡の画像評価システムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1の走査型内視鏡を示す全体構成図である。
【
図3】
図1の走査型内視鏡の画像評価システムのファイバスキャナ部を示す斜視図である。
【
図4】
図1の走査型内視鏡の画像評価システムのファイバスキャナ部による照明光の操作軌跡の一例を示す図である。
【
図5】
図1の走査型内視鏡の画像評価システムに備えられるチャートの一例を示す部分的な縦断面図である。
【
図6】
図1の走査型内視鏡の画像評価システムに備えられるチャートの他の例を示す部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る走査型内視鏡20の画像評価システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る走査型内視鏡20の画像評価システム1は、
図1に示されるように、光源2からの照明光(例えば、可視光、赤外光、励起光など)を走査させて画像を取得する走査型内視鏡20と、該走査型内視鏡20により取得される画像の特性を評価するための指標パターン(指標部)Sを有する透過型のチャート(被写体)Tとを備えている。
【0013】
また、本実施形態に係る走査型内視鏡20は、照明光を発生させる光源2と、光源2からの照明光を走査させるファイバスキャナ部3と、光(例えば、前方散乱光、蛍光、直接光)を検出する光検出部4と、光検出部4により検出された光の強度に基づいてチャートTの画像を生成する画像処理部5と、生成された画像を表示するモニタ6を備えている。また、走査型内視鏡20においては、
図2に示されるように、光源部2、光検出部4、画像処理部5および後述する駆動制御部10が筐体30内に設けられている。
【0014】
ファイバスキャナ部3は、光源2からの照明光を導光し、先端7aから射出させる光ファイバ7と、該光ファイバ7の先端7aから所定距離を空けた位置において光ファイバ7を貫通させた状態に支持する筒状の振動伝達部材8と、該振動伝達部材8の外面に周方向に等間隔をおいて接着された4つの圧電素子(アクチュエータ)9と、該圧電素子9に加える交流電圧を調節する駆動制御部10とを備えている。また、ファイバスキャナ部3は、振動伝達部材8の後端に、振動伝達部材8および振動伝達部材8に貫通された光ファイバ7を固定する円形のホルダ部11を備えている。
【0015】
振動伝達部材8は、少なくとも表面に導電性の金属材料を備え、
図3に示されるように、正四角柱の長手軸に沿って、光ファイバ7を貫通可能な貫通孔12が形成された形状を有している。
ホルダ部11は外筒部材13に固定されている。
【0016】
圧電素子9は、厚さ方向の両端面に電極14a,14bが設けられた平板状に形成され、一方の電極14aを振動伝達部材8の正四角柱部分の各側面に電気的に接触させた状態で固定されている。光ファイバ7を挟んで対向する位置に配置される2対の圧電素子9は、それらの分極方向が、同一の方向に向かうように配置されている。光ファイバ7を挟んで対向する位置に配置されている圧電素子9には、同一位相の交流電圧が供給されるようになっている。
【0017】
駆動制御部10は、2対の圧電素子9に、一定の周波数で振動する交流電圧の振幅を正弦波状に変化させながら、位相を90°異ならせて印加するようになっている。すなわち、各対の圧電素子9に交流電圧を印加することにより、各対の圧電素子9の伸縮振動によって光ファイバ7を屈曲振動させ、それによって、光ファイバ7の先端7aを
図4に示されるように、渦巻き状に変位させて、光ファイバ7の先端7aから射出させた照明光を渦巻き状に走査させるようになっている。
【0018】
図1中、符号15は集光レンズである。光ファイバ7は、例えば、シングルモードファイバである。
また、駆動制御部10は、照明光の走査位置を示す情報を画像処理部5に送るようになっている。
【0019】
光検出部4は、ファイバスキャナ部3とは別体に構成され、チャートTにおいて発生した光を先端において受光する1以上の受光用光ファイバ(光ファイバ)16と、該受光用光ファイバ16により受光された光を検出する光電子増倍管などの光検出器17とを備えている。図中、符号18は、受光用光ファイバ16により検出された光を光検出器17に集光する集光レンズである。
【0020】
本実施形態においては、光検出部4の受光用光ファイバ16は、チャートTを挟んでファイバスキャナ部3とは反対側に配置されるようになっている。受光用光ファイバ16は、例えば、マルチモードファイバである。受光用光ファイバ16としては、2以上の光ファイバを束ねてもよいし、ファイババンドルを採用してもよい。
【0021】
画像処理部5は、ファイバスキャナ部3による照明光の各走査位置と、各該走査位置に照明光が照射されたときに光検出器17によって検出された光の強度とを対応づけて画像を生成するようになっている。生成された画像はモニタ6に表示されるようになっている。
【0022】
透過型のチャートTとしては、
図5に示されるように、照明光を透過する透明材料(透過性部材)21と、照明光を遮断する遮光材料22とを用いて、指標パターンSを形成したものを採用することができる。なお、図中の矢印は、照明光が透過する向きを示す。指標パターンSまたは指標パターンS以外の部分のいずれか一方を透明材料21、他方を遮光材料22で構成すればよい。
【0023】
また、透明材料21からなる指標パターンSを透過した照明光が直接受光されることを防止するために、透明材料21がフィルタなどの散乱体(光散乱体:例えば、紙、蛍光体など)であってもよい。または、
図6に示されるように、チャートTの受光用光ファイバ16側の面に散乱体23を配置することにしてもよい。
【0024】
例えば、指標パターンSを透過した照明光を直接受光する場合には、散乱体23に光量カットフィルタなどを用いることで、光検出部4で検出される光量が少なくなるため、画像の飽和を抑えることができる。また、散乱体23が波長カットフィルタを備えることで、前方散乱光のうち所望の波長の光のみを光検出部4で検出することができる。さらに、照明光に励起光を用いた場合には、散乱体23が蛍光体を備えることで、励起された蛍光を検出することができる。なお、これらの散乱体23は組み合わせて配置してもよい。
【0025】
透過型チャートTは、例えば格子チャート、ドットチャート、視野角チャート、解像チャートが挙げられる。これらのチャートは、得られる画像の特性が異なため、評価したい特性に応じて使い分けることができる。具体的には、格子チャートおよびドットチャートは画像の歪み、視野角チャートは画像の視野角、解像チャートは画像の解像度を評価することができる。
【0026】
このように構成された本実施形態に係る走査型内視鏡20の画像評価システム1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る走査型内視鏡20の画像評価システム1を用いて走査型内視鏡20により取得された画像の評価を行うには、
図1に示されるように、ファイバスキャナ部3の先端をチャートTに対向させる。また、チャートTを挟んでファイバスキャナ部3の先端に対向する位置に、受光用光ファイバ16の先端を配置する。
【0027】
この状態で、光源2において照明光を発生させ、駆動制御部10によりアクチュエータ9を駆動する。これにより、光ファイバ7によって導光された光源2からの照明光が、光ファイバ7の先端7aからチャートTに向けて射出されるとともに、光ファイバ7の先端7aの振動によって、例えば、渦巻き状に走査される。
【0028】
照明光が走査されることにより、チャートTの各走査位置において発生した光は、全方向に散乱するが、チャートTを透過した前方散乱光の一部が、光検出部4の受光用光ファイバ16の先端によって受光され、光検出器17によりその強度が検出される。光検出器17により検出された光は、画像処理部5に送られる。画像処理部5には、駆動制御部10から照明光の走査位置を示す情報が送られてきているので、光検出器17により検出された光の強度と走査位置を示す情報とを対応づけて記憶することにより、画像が生成される。生成された画像はモニタ6に表示される。
【0029】
この場合において、本実施形態に係る走査型内視鏡20の画像評価システム1によれば、照明光を射出するファイバスキャナ部3と、光を受光する光検出部4とを、チャートTを挟んで対向する位置に配置したので、チャートTの表面において反射した照明光が光検出部4により検出されることを確実に防止することができる。従来、後方散乱光を検出する方式を採用していたもののように、被写体の表面における反射光が強度の高い迷光となって画像を劣化させていたのと比較して、画像の劣化を確実に防止し、チャートTを精度よく表す画像を生成することができる。その結果、取得された画像に基づいて、高精度に画像の特性を評価することができるという利点がある。画像の特性とは、例えば、視野角、歪み、解像度などであり、生成された画像からチャートTの指標部Sとのズレや歪みが得られれば、これに基づいて装置のキャリブレーションを行うことができる。
【0030】
また、ファイバスキャナ部3と光検出部4とを別体としたので、両者を一体化していた従来の走査型内視鏡と比較すると、ファイバスキャナ部3および光検出部4のそれぞれを細径化することができるという利点もある。
【0031】
なお、キャリブレーション方法としては、従来の後方散乱光を検出する方式の走査型内視鏡のキャリブレーション方法としても有効である。すなわち、較正用の画像としては、走査型内視鏡に備えられた受光ファイバにより受光された後方散乱光を利用するのではなく、チャートTを挟んでファイバスキャナ部3に対向配置された受光用光ファイバ16により受光された前方散乱光を利用すればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 画像評価システム
2 光源
3 ファイバスキャナ部
4 光検出部
7 光ファイバ
7a 先端
9 圧電素子(アクチュエータ)
16 受光用光ファイバ(光ファイバ)
20 走査型内視鏡
21 透明材料(透過性部材)
23 散乱体(光散乱体)
S 指標パターン(指標部)
T チャート