(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806677
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】HOXを発現する改変細胞を製造する方法および該方法によって得られる改変細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20201221BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20201221BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20201221BHJP
A61K 35/12 20150101ALN20201221BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20201221BHJP
A61L 27/36 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
C12N5/10ZNA
C12N15/12
C12N15/867 Z
!A61K35/12
!A61P43/00 101
!A61P43/00 105
!A61L27/36 100
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-525677(P2017-525677)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公表番号】特表2017-523808(P2017-523808A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】IB2015055752
(87)【国際公開番号】WO2016016829
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月26日
(31)【優先権主張番号】MO2014A000227
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517030882
【氏名又は名称】ドミニチ マッシモ
(73)【特許権者】
【識別番号】517030893
【氏名又は名称】カンディーニ オリヴィア
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】ドミニチ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】カンディーニ オリヴィア
【審査官】
池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】
ALESSANDRA CARE,ONCOGENE,1999年,VOL:18, NR:11,PAGE(S):1993 - 2001
【文献】
ALESSANDRA CARE,CANCER RESEARCH,2001年 9月,VOL:61,PAGE(S):6532 - 6539
【文献】
Genet. Mol. Biol. (2008) vol.31, no.4, p.815-823
【文献】
Chinese Journal of Pathophysiology (Feb-2014) vol.30, no.2, p.278-285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原形質膜によって囲まれ、核が存在する細胞質を含む、HOXファミリーのタンパク質を過剰発現する改変された間葉系間質細胞であって、前記タンパク質は、細胞質および核に局在化するタンパク質である、改変された間葉系間質細胞であって、
前記タンパク質は前記細胞からの分泌タンパク質であり、
前記タンパク質はHOXB7タンパク質である、改変された間葉系間質細胞。
【請求項2】
前記タンパク質はDNA相互作用ドメインを含む、請求項1に記載の改変された間葉系間質細胞。
【請求項3】
前記タンパク質はヒト由来である、請求項1又は2に記載の改変された間葉系間質細胞。
【請求項4】
骨組織を形成する能力が増加している、請求項1に記載の改変された間葉系間質細胞。
【請求項5】
成長因子の産生を増加させるか、または成長因子の放出を増加させる、請求項1または4に記載の改変された間葉系間質細胞。
【請求項6】
前記成長因子の少なくとも1つが、bFGF(またはFGF2)である、請求項5に記載の改変された間葉系間質細胞。
【請求項7】
間葉系間質細胞内におけるHOXB7タンパク質の過剰発現を得る方法であって、
前記タンパク質についてのコード配列を保有するレトロウイルス粒子を産生する工程と、
前記レトロウイルス粒子を間葉系間質細胞と接触させ、前記粒子を細胞へ導入することによって前記間葉系間質細胞を遺伝子改変する工程と
を含み、
前記間葉系間質細胞は動物またはヒト由来の間葉系間質細胞を含み、
前記細胞は、骨髄、脂肪、臍帯、月経液、羊水、滑液、歯髄、肝組織、肺組織、膵臓組織から選択される単離細胞を含む、方法。
【請求項8】
改変させていない間葉系間質細胞に比べて、アルカリホスファターゼ分子マーカー(ALP)、アルファ−1I型コラーゲン(Col1A1)及びデコリン(DCN)よりなる群から選択される少なくとも1種の発現がより増加している、請求項1に記載の改変された間葉系間質細胞。
【請求項9】
改変させていない間葉系間質細胞に比べて、前記遺伝子改変された間葉系間質細胞におけるALP、Col1A1及びDCNよりなる群から選択される少なくとも1種の発現をより増加させる工程を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、質を向上させるためにHOXファミリーの転写因子を導入することによるヒトまたは動物の真核細胞の遺伝子改変に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な供給源から単離した幹細胞は前臨床および臨床再生医療用途において広範に使用されており、それらは主にそれらの増殖能および分化能を利用する(Caplan and Bruder、2001)。
【0003】
それにも関わらず、幹細胞のそれらの2つの重要な特性の基本的な分子機構は今もなお集中的に調査され続けている。なぜなら、それらのより深い理解は最適化された細胞療法を導く可能性があり、より長期間続く幹細胞作用を提供するからである。
【0004】
幹細胞の再生能は、患者へそれを注入したとき、一次的であることが見出され(Dominiciら、2009;Li and Lin、2012)、それらの比較的短時間の治療能が、造血幹細胞について示されているように、内因性および外因性の因子によって引き起こされ得ることを示唆している(Van Zant and Liang、2012)。
【0005】
それらの因子のうちの1つは細胞機能を加齢に伴って減少させ得る。加齢に伴う増殖能および分化能の減少に関する多数の証拠が存在する(Altら、2012;Mareschiら、2006;Setheら、2006;Stenderupら、2003;Wagnerら、2008;Zaimら、2012;Zhouら、2008)。
【0006】
ヒトにおける幹細胞老化は複雑であり、まだ十分に理解されていないプロセスであり、対照的に、老齢に特有の変性疾患を治療するために頻繁に示されているように、細胞療法の臨床改善および開発のために差し迫った必要性が存在している。
【0007】
このプロセスに内在する分子機構の理解により、治療アプローチを最適化することができ、それにより細胞老化に影響を与え、それに対抗できる重要な因子の同定を導くことができる。
【0008】
多数の観察研究が、miRNAおよび遺伝子発現プロファイル評価によって、または老化をインビトロでの細胞の複製老化と関連付ける試みによって幹細胞老化についての分子マーカーを同定するために試みられている(Altら、2012;Alvesら、2012;Borkら、2010;Pandeyら、2011;Siegelら、2013;Wagnerら、2009;Zhouら、2008)。これにも関わらず、幹細胞特性の年齢および老化に関連する機能障害の根底にある遺伝的特徴はまだ十分に理解されていない。
【0009】
特定の細胞挙動を標的化し、それにより老化の作用に対抗し、組織防御を提供するのに重要な役割を果たし得る分子的因子としては、ホメオボックス(HOX)遺伝子が挙げられる。
【0010】
転写因子のこのファミリーは、胚発生の間、細胞および組織の同定および位置を決定するのに重要な役割を果たし、この活動は成人期の間も持続している可能性が高い。
【0011】
HOXタンパク質の活動は、組織損傷に対する反応においてさえ、それらの増殖、分解、移動および付着を制御することによって幹細胞の挙動に顕著に影響を与える可能性がある(Gerschら、2005;Leuchtら、2008)。
【0012】
造血におけるHOXタンパク質の役割は、レトロウイルス過剰発現の動物モデルならびにノックアウトおよびノックイントランスジェニックアプローチを使用して集中的に調査されており、それらの調節機能について明確な証拠が与えられている(Argiropoulos and Humphries、2007)。
【0013】
これらの転写因子の非常に重要な作用は、骨髄前駆細胞の増殖および自己再生を促進するそれらの能力である。
【0014】
特定のHOX遺伝子の強制発現は骨髄増殖性疾患の発症を導く場合があるが、Hoxb4などの他の遺伝子は白血病発症を引き起こさずに幹細胞の増殖および増加を誘導することができ、臨床応用についての造血幹細胞操作のための有用で安全な治療アプローチとして記載されている(Sauvageauら、1995)。
【0015】
HOXタンパク質はまた、骨髄幹細胞の発生および分化を制御するのに重要な役割を果たす。
【0016】
HOX機能の損失を導く変異は、このファミリーの因子の機能的冗長性の結果として、表現型レベルで現れないので、造血細胞におけるHOX媒介作用の知見のほとんどは過剰発現の研究に由来する。
【0017】
これらの研究は、造血前駆細胞におけるHOX遺伝子の過剰発現は、増殖の増加および分化結果の変化を誘導することを示している。
【0018】
例えば、HOXB8の異所性発現は顆粒球分化を減少させ、単球分化を向上させるのに対して、HOXA3の過剰発現は顆粒球分化を促進し、単球分化を遮断する。
【0019】
造血前駆細胞におけるHOXA5またはHOXB6過剰発現は赤血球生成を阻害し、HOXA10過剰発現はリンパ球分化を遮断し、単球分化を向上させる。
【0020】
骨髄前駆細胞の発生および機能におけるHOXの重要な役割の明白な証拠にも関わらず、組織再生および修復の間のこの遺伝子の役割は十分に知られていない(Mahdipour and Mace、2011)。
【0021】
HOX転写因子はまた、他の幹細胞、例えば間葉系前駆細胞の挙動を調節できる(Mesenchymal Stem Cells、MSC)。
【0022】
マウスモデルにおける観察研究は、HOXB2、HOXB5、HOXB7およびHOXC4の存在が細胞増加および自己再生に関連している(Phinneyら、2005)が、HOXA7、HOXB3、HOXA3およびHOXB13などの他のHOX遺伝子はヒトMSCの内皮細胞分化の制御に関与していることを示す。
【0023】
さらに、ヒトMSCのインビトロ分化の間のHOX遺伝子発現の分析は、HOXA7およびHOXB3が顕著に上方制御されるのに対して、HOXA3およびHOB13が十分に分化した前駆細胞において顕著に下方制御されることを示した(Chungら、2009)。
【0024】
最後に、多くの証拠により、骨組織修復におけるHOXタンパク質の重要な役割が示唆されている(Gerschら、2005)。
【0025】
このデータは、MSC機能を制御する際のHOXの役割を強く示唆しているが、それはまだ、細胞療法を最適化する目的で組織修復の間のHOX遺伝子の機能的役割を完全に評価するためのノックアウトおよびノックダウン研究ならびに過剰発現アプローチを実行できるモデルの欠如によって限定された観察データである(Mahdipour and Mace、2011)。
【0026】
HOX遺伝子は転写因子として作用するので、それらは、それらのDNA相互作用ドメインを介して遺伝子プロモーターと結合することによって、さらなるタンパク質の産生を特に促進できる。
【0027】
腫瘍細胞についての以前の研究は、HOXB7がbFGF産生を誘導できることを示す(Careら、2011)。
【0028】
さらに、成長因子bFGFが組換え因子として投与される場合、それは細胞増殖を促進でき、分化において重要な機能を有する(Tassoら、2012)。
【0029】
それにも関わらず、多くの証拠により、組換えタンパク質が細胞培養培地中で制限された安定性を有し、連続的な補充または安定性を増加させる介入を必要とすることが示されている。HOXB7はまた、血管形成に関与するVEGFを含む、様々なプロセスに関与するさらなる成長因子の産生を活性化する(Howら、2013)。
【0030】
場合により、生体分子の産生および分泌を増加させるために遺伝子改変された幹細胞が、心筋梗塞後の血管再生、椎間板欠陥の再生、梗塞組織の修復、骨格組織の修復などの組織再生を促進する目的で実験モデルにおいて、および神経変性疾患におけるアジュバントとして、または腫瘍成長を阻害するために使用されている(Meyerroseら、2010)。
【0031】
それにも関わらず、患者へ注入したときの幹細胞の再生能は一次的である(Dominiciら、2009;Li and Lin、2012)。
【0032】
エキソビボでの増加およびヒトMSC能力の最適化アプローチもまた、テロメラーゼ酵素タンパク質(TERT)をコードする遺伝子を導入することによって研究されており、その活性は、テロメアの長さ、高度に反復されたDNAの染色体末端領域を維持し、その進行性短縮は細胞老化と関連する可能性が高い。
【0033】
テロメアの長さを維持することに加えて、ヒトMSCにおけるTERTの異所性発現が細胞生存を延長し、インビトロでの老化を遅延し、新生組織形成を導かずにインビボでの骨形成を向上させる(Simonsenら、2002)。
【0034】
それにも関わらず、TERTの不死化活性に起因して、さらなる調査が、腫瘍を誘発し、それによりヒトの使用に不適切である可能性があり得る、このような改変細胞の安全な使用を確認するために必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明の1つの目的は従来技術を改善することである。
【0036】
本発明の別の目的は、最適化されたエキソビボでの増加のために、HOXB7タンパク質を過剰発現させ、その増殖能を増加させ、その老化傾向を減少させるように細胞を誘導することによって細胞を改変することである。
【0037】
本発明のさらなる目的は、インビボでの注入により、改変されたHOXB7過剰発現細胞の治療有効性の期間を延長することである。
【0038】
本発明の別の目的は、骨組織を産生するHOXB7過剰発現細胞の増加した能力を利用することによって組織再生を促進することである。
【0039】
本発明のさらに別の目的は、HOXB7改変細胞によって成長因子bFGFの増加した自己分泌産生を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
一態様において、本発明は、請求項1に定義されるHOXB7タンパク質を過剰発現する改変細胞を提供する。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、請求項9の特徴に定義される改変されたHOXB7過剰発現細胞を産生する方法に関連する。
【0042】
改変細胞を産生する方法は、
− HOXB7タンパク質を過剰発現する細胞集団;
− より迅速なエキソビボでの増加のために、改変細胞のより多くの増殖;
− 培養培地中で成長因子bFGFを産生し、分泌できる細胞集団;
− 老化が少ない細胞集団;
− 骨組織産生のために適切に刺激された場合、より高い分化能を有する細胞集団;
− インビボで骨再生を潜在的に促進できる細胞集団
を提供する。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、その特異的miRNA調節因子、miR−196aおよびmiR−196bの過剰発現または下方制御によって、内因性HOXB7タンパク質の発現を調節することによってヒトまたは動物細胞に対して作用する能力を提供する。
【0044】
さらなる態様において、本発明は、miR−196aによる調節を受けやすいタンパク質についてのHOXB7コード配列の下流に3’−非翻訳領域(3’−UTR)を付加することによって導入されるような遺伝子改変に対して作用する能力を提供する。
【0045】
成長因子発現のための改変細胞の使用に関して、本発明は、単一の遺伝子配列を導入して様々なタンパク質の発現を制御することによって、より高い調節レベルで作用できる。
【0046】
TERTタンパク質発現のための改変細胞の使用に関して、本発明の改変は不死化せずに増殖を刺激できる遺伝子を導入する。
【0047】
本発明のさらなる態様は従属請求項に与えられる。
【0048】
本発明は以下のさらなる利点を達成する:
− 細胞を不死化させずに改変細胞のより迅速な増加;
− 単一の発現制御遺伝子の挿入による複数のタンパク質産生の誘導;
− 特異的マイクロRNAによってタンパク質発現を制御する可能性。
【0049】
本発明のさらなる特徴および利点は、HOXB7過剰発現のために改変された細胞の好ましい非排他的な実施形態の詳細な説明を読んで、より容易に明らかになるであろう。それらは添付の図面において非限定的な例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】細胞の遺伝子改変のために使用された構築物の概略図である。
【
図2】使用の際にベクターによってコードされた緑色蛍光タンパク質(GFP)によって放出された蛍光の量の評価による、構築物を使用した細胞形質導入の効率分析を示すグラフである。
【
図3】改変細胞におけるHOXB7発現の分析を示すグラフであり、リアルタイムPCTによるメッセンジャー(mRNA)産生として、およびウェスタンブロッティングによるタンパク質としての両方で評価した。
【
図4】より高いHOXB7発現のために改変された初代細胞(画像a)および対応するGFP対照(画像b)を示す顕微鏡画像を示し、矢印は、個々の細胞が画像(b)よりも画像(a)において小さい細胞サイズを強調していることを示す。
【
図5】物理的パラメーターFSCおよびSSCの細胞蛍光分析を示すグラフであり、それぞれ細胞サイズおよび内部複雑性を示している。
【
図6】使用され、改変がなされている細胞を特徴付ける表面抗原を特徴付けている細胞蛍光分析を示すグラフである。
【
図7】リアルタイムPCRによるKi67 mRNA発現の分析を示すグラフである。
【
図8】顕微鏡による細胞計数による改変細胞のインビトロでの細胞増殖および成長評価についてのグラフである。
【
図9】クローン形成効率、すなわちインビトロでの細胞のコロニー形成能の評価についてのグラフである。
【
図10】老化細胞を特定する、ベータガラクトシダーゼ染色細胞の顕微鏡画像を示し、HOXB7改変細胞はGFP対照細胞より老化が少ないことを示す。
【
図11】改変細胞の培養物中のベータガラクトシダーゼ陽性細胞、すなわち老化細胞の定量についてのグラフである。
【
図12】改変細胞によって産生された成長因子bFGF mRNAの発現を示すグラフである。
【
図13】改変細胞によって放出されるbFGFタンパク質の量のELISA評価についてのグラフである。
【
図14】Von Kossa染色の顕微鏡画像である。
【
図15】改変細胞における染色した沈着物の定量を示すグラフである。
【
図16】アルカリホスファターゼ骨組織マーカー(ALP)の発現を示すグラフであり、黒色は対照、すなわちGFPを発現するが、HOXB7を発現しない空ベクターで改変された細胞を示し、灰色はより高いHOXB7発現のために改変された細胞を示す。
【
図17】コラーゲン1(Col1A1)の発現を示すグラフであり、黒色は対照、すなわちGFPを発現するが、HOXB7を発現しない空ベクターで改変された細胞を示し、灰色はより高いHOXB7発現のために改変された細胞を示す。
【
図18】デコリン(DCN)の発現を示すグラフであり、黒色は対照、すなわちGFPを発現するが、HOXB7を発現しない空ベクターで改変された細胞を示し、灰色はより高いHOXB7発現のために改変された細胞を示す。
【
図19】マイクロRNA媒介タンパク質発現制御を可能にするHOXB7遺伝子の3’UTR(3’非翻訳領域)配列の概略図であり、HOXB7の3’UTR配列はマイクロRNA196(miR−196)配列と対合し、HOXB7タンパク質産生を防ぐ(パネルを参照のこと)。
【
図20】HOXB7遺伝子の発現が、マイクロRNA miR−196aによって配列特異的に調節されることを示すために使用されている構築物の概略図であり、構築物は、発光を引き起こす作用がある酵素であるルシフェラーゼを発現し、酵素コード配列から上流のHOXB7 3’UTR領域またはmiR−196との相互作用の上記の領域についての欠失した3’UTR配列(HOXB7 3’UTR 99−227)が、それらの間の直接相互作用を示すために配置される。
【
図21】
図20に示される構築物を形質導入した細胞内へのmiR−196aまたは対照(miR対照)の導入によるルシフェリンの発光の測定によるルシフェラーゼ発現評価を示すグラフである。
【
図22】P−群よりP+群において高いKi67発現を示すグラフである。
【
図23】少ない増殖細胞(P−)および多い増殖細胞(P+)によって差次的に発現されたマイクロRNAの表である。
【
図24】HOXB7タンパク質をコードする配列である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明によれば、HOXB7コード遺伝子が導入され、それによって、HOXB7を過剰発現しない改変を有する対照と比べて、より高い増殖能、低い老化を有し、分化能を増加させる細胞を生成する。
【0052】
HOXB7遺伝子による細胞の遺伝子改変
このアプローチは、HOXとして知られているタンパク質の発現を誘導できる「ベクター」として知られている遺伝子配列を使用した細胞の遺伝子改変にある。
【0053】
図1に示されるように、HOXB7タンパク質コード配列が、挿入部位BgIIIおよびEcoRIを使用して環状プラスミドDNA配列MIGR1内に導入される。
【0054】
プラスミドDNAは、なされた改変を確認する標識として使用されるGFPタンパク質コード配列を含む。
【0055】
HOX遺伝子は、出産前および出産後の生活の間、ヒト細胞の増殖および分化に影響を与え得る転写因子(すなわち、DNAと結合し、他のタンパク質の合成を促進できる因子)である。
【0056】
HOXB7タンパク質産生ベクターの挿入は、骨への分化を促進しながら、成長が増加した改変細胞の産生を与える。
【0057】
構築物の作製
HOXB7コード遺伝子を産生し、造血細胞から抽出した全RNAからポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅させ、それはコードNM_004502によるPubMedデータベースにおける配列領域に対応する。
【0058】
このように得られた配列を、
図1に示すように酵素消化およびクローニングによってレトロウイルスベクター内に挿入した。
【0059】
目的の細胞集団を感染させることができるレトロウイルス粒子のプールを安定に産生できるキャリア細胞の集団を2工程を介して作製した。
【0060】
第1の工程は一過的様式でレトロウイルスを産生する細胞株の取得に基づき、第2の工程は、レトロウイルス子孫を安定に産生できる産生細胞株(PCL)の生成を得ることを目的とする。
【0061】
一過的工程に関して、胚腎線維芽細胞(293T細胞)に、ポリカチオンを利用してプラスミドDNAをトランスフェクトして、レトロウイルス粒子を含有する上清を産生した。
【0062】
レトロウイルス上清を回収し、使用してヒト線維肉腫株に由来するPLCを感染させた:感染の24時間後、細胞蛍光測定(cytofluorimetry)によって細胞を分析して、感染効率マーカーである、緑色蛍光タンパク質(GFP)の陽性を確認した。
【0063】
次にPLCによって安定に産生したウイルス上清を使用して目的の細胞を感染させた。
【0064】
HOXB7過剰発現細胞の形質転換
目的の細胞を密度勾配遠心分離(Ficoll)によって骨髄吸引物から単離し、それらをインビトロで培養する塑性培地に付着するそれらの能力に従って選択した。
【0065】
PLCによるレトロウイルス上清産物を使用して細胞に3回の感染サイクルを受けさせた。
【0066】
次いで緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現の分析によって感染効率を評価した。
【0067】
図2に示されるように、この分析は、全ての細胞がGFP対照(黒色のバー)と同様に、首尾良く改変した(灰色のバー)ことを示す。
【0068】
過剰発現の評価
HOXB7タンパク質過剰発現を定量的PCRおよびウェスタンブロッティングによって検証した(
図3)。
【0069】
定量的PCRにより、HOXB7のmRNAの相対的発現レベル(空ベクター、すなわちHOXB7コード配列を含まないベクターで感染させた対照の160倍超)の検出を可能にし、一方、ウェスタンブロッティングにより、目的の細胞によって構造的に発現される内因性タンパク質(GAPDH)に正規化した、より高い発現のHOXB7の検出を可能にした。
【0070】
形態および抗原発現に対する過剰発現の影響
改変細胞の形態を、倒立顕微鏡観察および細胞蛍光測定によって評価した(
図4および
図5を参照のこと)。
【0071】
HOXB7過剰発現細胞は対照と形態学的に異なり、特に、矢印によって
図4に示されるように、より小さいサイズおよびより低い程度の内部複雑性を有し、
図5においてFSCおよびSSCの値を示す。
【0072】
FSC値は細胞サイズを反映し、SSC値は内部複雑性を反映し、両方は、GFP対照細胞(黒色のバー)についてよりHOXB7改変細胞(灰色のバー)について低い。
【0073】
したがって、HOXB7過剰発現について改変された細胞は、より小さく、複雑性がより少ない細胞である。
【0074】
HOXB7過剰発現について改変された細胞は、特にコード配列を有し、インビトロで成長する(
図4(a)を参照のこと)。
【0075】
細胞、CD90、CD73およびCD105によって典型的に発現される表面マーカーは
図6に示されるように維持され、そのグラフは、これらのマーカーが改変に起因する関連した変化を受けないことを示す。
【0076】
増殖、クローン形成能および老化の評価
HOXB7改変細胞はより高い増殖能を獲得し、それは細胞増殖マーカーKi67の発現として評価される。
【0077】
Ki67は細胞増殖マーカーであり、その量は細胞成長を反映する。
【0078】
図7に示されるように、HOXB7過剰発現について改変された細胞はより高いレベルのKi67を有する。
【0079】
より多くの増殖を、インビトロでの増加の間、顕微鏡による細胞計数によっても評価した。
【0080】
図8は、GFP対照と比較してHOXB7改変細胞のより高い増殖能を示す。
【0081】
さらに、HOXB7過剰発現について改変された細胞は、GFP対照と比較して高いコロニー形成効率(CFU−F)を有する(
図9を参照のこと)。
【0082】
ベータガラクトシダーゼ染色による老化のモニタリングにより、HOXB7改変培養物中で顕著に少ない数の老化細胞を検出できた。
【0083】
図10は、対照細胞(b)と比較して改変細胞(a)の中での少ない数の老化細胞(ベータガラクトシダーゼ陽性細胞、すなわち染色され、矢印によって示される)を示す。
【0084】
図11を参照すると、染色した老化細胞の定量は、GFP対照細胞集団が、HOXB7過剰発現について改変された細胞集団より多くの数の老化細胞を含むことを示す。
【0085】
HOXB7過剰発現細胞におけるFGFレベルの検出
HOXB7過剰発現細胞は、
図12に示されるリアルタイムPCRによるmRNA発現として、および
図13のグラフに値を示す、ELISAにより測定した分泌タンパク質として、より多くの測定したbFGFレベルを生じる。
【0086】
より詳細に、bFGFタンパク質の分泌は、GFP対照よりHOXB7改変細胞において4.3〜8.2倍高いことを見出した。
【0087】
骨形成分化の評価
改変細胞を、デキサメタゾン、アスコルビン酸、ベータ−グリセロホスフェートおよびBMP2(後者は7日目に加えた)を含む馴化培地を使用して骨組織を形成するように誘導し、対照と比較して高い骨形成能を有することを見出した。
【0088】
特に、改変細胞は、インビトロでVon Kossa染色によって評価して、顕著に多い量の石灰化マトリクスを生じる。
【0089】
Von Kossaは、骨形成的に分化している細胞から放出されたカルシウム沈着を同定することが知られている染料である。
【0090】
図14に示されるように、HOXB7過剰発現について改変された細胞(a)はGFP対照(b)より染色する。
【0091】
さらに、特に
図15を参照して、Von Kossa染色定量は、HOXB7過剰発現細胞(灰色のバー)が、適切な骨産生刺激培養培地中での細胞の2週間の誘導または維持後、GFP対照細胞(黒色のバー)と比較して8.5〜12.2倍高いレベルのカルシウム沈着物を生じることを示す。
【0092】
改変細胞は、
図16、
図17および
図18に示されるように、アルカリホスファターゼ分子マーカー(ALP)、アルファ−1I型コラーゲン(Col1A1)およびデコリン(DCN)のより高い発現を示す。
【0093】
より詳細に、これらのマーカーの発現の変化は、GFP対照よりHOXB7改変細胞において2.7〜41倍高いことが見出される。
【0094】
発現制御機構の同定
マイクロRNAは、メッセンジャー(mRNA)の3’非翻訳領域(3’UTR)の特異的認識によって遺伝子発現を調節する低分子RNAである。
【0095】
予測アルゴリズムを使用して、本発明者らはHOXB7発現を調節できる潜在的分子としてmiR−196aを同定した(
図19)。
【0096】
miR−196が細胞内のHOXB7の3’UTR領域を直接標的とすることを示すためにルシフェラーゼアッセイを使用し、それによってその発現を特異的に制御できる(
図20および
図21)。
【0097】
図21を参照して、miR−196の存在は、HOXB7の3’UTR配列とのmiR−196の特異的相互作用に起因して発光を減少させることが見出される(列2)。
【0098】
細胞性能の予測としての、少ない増殖の細胞および多い増殖の細胞の差次的に発現したマイクロRNAの同定
一セットのマイクロRNAを同定した。そのマイクロRNAは異なる増殖能を有する細胞によって差次的に発現された(P−およびP+)。
【0099】
図22を参照すると、P−群はより低いレベルのKi67を発現するので、より低い増殖能を示し、P+群はより高いレベルのKi67を発現するので、より高い増殖能を示す。
【0100】
異なる増殖能を有するこれらの2つの群は、
図23に示されるように、mRNA発現:miR−99、miR−100、miR−196、miR−337−5p、miR−376、miR−431、miR−543の差異を示す。このマイクロRNAセットは細胞増殖能についての情報を得るために使用され得る。
【0101】
本発明は意図する目的を満たすことが見出された。
【0102】
このように想定される本発明は本発明の概念内で変更および変形を受ける。
【0103】
さらに、全ての説明は、以下の請求項によって定義される範囲から逸脱せずに他の技術的に等価の要素と置き換えられてもよい。