(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態による光線治療システムを示す図である。
【
図2】
図1の光線治療システムの光ケーブルの線2-2に沿った断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態による実質的に円錐形の形状を画定する先端を示す図である。
【
図4】本開示の別の実施形態による実質的に丸い形状を画定する先端を示す図である。
【
図5】本開示のさらに別の実施形態による1つ又は複数の拡散要素を含む先端を示す図である。
【
図6】患者の食道に挿入された
図1の光線療法システムの光ケーブルを示す図である。
【
図7】患者の右主幹気管支に挿入された
図1の光線療法システムの光ケーブルを示す図である。
【
図8】患者の気管支樹全体に配置された
図1の光線療法システムの導波管を示す図である。
【
図9】本開示の別の実施形態による、抗力を制御するための先端を横切るフィンを含む先端を示す図である。
【
図10】光ケーブルの遠位端が第1の遠位セクションと第2の遠位セクションに分割されている
図1の光線治療システムを示す図である。
【
図11】患者の気管支樹全体に配置された
図10の光線療法システムの導波管を示す図である。
【
図12】バルーン、液体源、及びガス源を含む、
図1の光線療法システムを示す図である。
【
図13】バルーンが膨張状態にある、
図12の光線療法システムを示す図である。
【
図14】患者の食道に挿入された、
図13の光線療法システムの光ケーブルを示す図である。
【
図15】本開示の一実施形態による、気管支鏡と一体化された
図1の光線療法システムを示す図である。
【
図16】本開示の一実施形態による、
図1の光線療法システムを動作させるためのステップの概要を示す図である。
【
図17】本開示の別の実施形態による光線治療システムを示す図である。
【
図18】本開示の一実施形態による、
図17の光線療法システムを動作させるためのステップの概要を示す図である。
【
図19】本開示のさらに別の実施形態による光線治療システムを示す図である。
【
図20】本開示の一実施形態による、
図19の光線療法システムを動作させるためのステップの概要を示す図である。
【
図21A】一酸化炭素中毒のネズミモデルについて、吸入又は吐出された一酸化炭素濃度対時間を示す図である。
【
図21B】一酸化炭素中毒のネズミモデルについてのカルボキシヘモグロビン百分率対時間を示す図である。
【
図22】本開示の一実施形態による、マウスの肺に直接的にレーザ光を照射する光線療法システムを示す図である。
【
図23A】400ppmのCOで1時間被毒され空気又は100%酸素のいずれかを呼吸するマウスにおける光線療法中の吸入又は吐出された一酸化炭素濃度対時間を示す図である。
【
図23B】1時間400ppmのCOで被毒され100%酸素を呼吸するマウスにおける光線療法中のカルボキシヘモグロビン百分率対時間を示す図である。
【
図23C】400ppmのCOで1時間被毒され空気を呼吸するマウスにおける光線療法中の吸入又は吐出された一酸化炭素濃度対時間を示す図である。
【
図23D】400ppmのCOで1時間被毒され空気を呼吸するマウスにおける光線療法中のカルボキシヘモグロビン百分率対時間を示す図である。
【
図24A】628nmで光線療法を行った場合としない場合の収縮期動脈圧と時間との関係を示す図である。
【
図24B】628nmで光線療法を行った場合としない場合の心拍数対時間を示す図である。
【
図25】628nmでの光線療法がマウスの体及び肺の温度に及ぼす影響を示す図である。
【
図26A】90%の一酸化炭素を除去する時間に対する波長の影響を示す図である。
【
図26B】カルボキシヘモグロビン半減期対628nmの放射を示す図である。
【
図26C】90%の一酸化炭素を排除する時間に対するパルス持続時間及び放射の影響を示す図である。
【
図26D】532nmにおける放射暴露対90%一酸化炭素除去の時間を示す図である。
【
図27A】同時光線療法を伴う又は伴わない、マウスの吸気及び呼気の一酸化炭素濃度対時間を示す図である。
【
図27B】同時光線療法を伴う又は伴わない、マウスの累積一酸化炭素摂取対時間を示す図である。
【
図27C】同時光線療法を伴う又は伴わない、マウスのカルボキシヘモグロビン百分率対時間を示す図である。
【
図28A】532nmで光線療法を行った場合としない場合のマウスの生存率対時間を示す図である。
【
図28B】532nmで光線療法を行った場合としない場合のカルボキシヘモグロビン百分率対時間を示す図である。
【
図28C】532nmで光線療法を行った場合としない場合の収縮期動脈圧と時間との関係を示す図である。
【
図28D】532nmで光線療法を行った場合としない場合の心拍数対時間を示す図である。
【
図28E】532nmで光線療法を行った場合としない場合のマウスの血液乳酸塩濃度対時間を示す図である。
【
図29A】マウスの食道に配置された光ファイバーを有するマウスのCTスキャンを示す図である。
【
図29B】食道光線療法を行った場合としない場合の、100%酸素を呼吸するマウスの吸入又は吐出された一酸化炭素濃度対時間を示す図である。
【
図29C】食道光線療法を行った場合としない場合の、100%酸素を呼吸するマウスのカルボキシヘモグロビン百分率対時間を示す図である。
【
図30A】500ppmのCOで90分間被毒され空気又は100%酸素のいずれかを呼吸するラットの光線療法中の吸入又は吐出された一酸化炭素濃度対時間を示す図である。
【
図30B】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気又は100%酸素のいずれかを呼吸するラットの光線療法中の時間に対するカルボキシヘモグロビン百分率を示す図である。
【
図31A】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気又は100%酸素のいずれかを呼吸するラットの532nmでの光線療法の有無による時間の関数としての呼気一酸化炭素濃度を示す図である。
【
図31B】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気又は100%酸素のいずれかを呼吸するラットの532nmにおける光線療法の有無による時間の関数としてのカルボキシヘモグロビン百分率を示す図である。
【
図32A】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気を呼吸するラットの532nmでの光線療法の有無による時間の関数としての平均動脈圧を示す図である。
【
図32B】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気を呼吸するラットの532nmにおける光線療法の有無による時間の関数としての心拍数を示す図である。
【
図32C】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気を呼吸するラットの532nmでの光線療法の有無による時間の関数としてのカルボキシヘモグロビン百分率を示す図である。
【
図32D】500ppmのCOで90分間被毒した後に空気を呼吸するラットの532nmにおける光線療法の有無による時間の関数としての乳酸塩濃度を示す図である。
【
図33A】500ppmのCOで90分間被毒した後に100%の酸素を呼吸するラットの532nmにおける過換気及び光線療法を行った場合としない場合の、吸入又は吐出された一酸化炭素濃度を時間の関数として示す図である。
【
図33B】500ppmのCOによる90分間被毒した後に100%の酸素を呼吸するラットの532nmにおける過換気及び光線療法を行った場合としない場合の時間の関数としてのカルボキシヘモグロビン百分率を示す図である。
【
図34A】500ppmのCOで90分間被毒した後に100%の酸素を呼吸するラットの532nmにおける胸腔内光線療法を伴う一酸化炭素除去を示す図である。
【
図34B】500ppmのCOで90分間被毒した後に100%の酸素を呼吸するラットの532nmにおける胸腔内光線療法を伴う及び伴わないカルボキシヘモグロビン半減期を示す図である。
【
図35】化学発光光線療法に使用される化学発光反応によって生成される光スペクトルを示す図である。
【
図36A】500ppmのCOで90分間被毒した後に100%の酸素を呼吸するラットの532nmにおける化学発光光線療法を伴う一酸化炭素除去を示す図である。
【
図36B】500ppmのCOで90分間被毒した後に100%の酸素を呼吸するラットの532nmでの化学発光光線療法を伴う又は伴わないカルボキシヘモグロビン半減期を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する「可視光」という用語は、一般に人間の目に見える約380ナノメートル(nm)〜約750nmの波長の間に束縛される電磁スペクトルの一部を指す。当業者は、可視光の波長範囲が人の視覚に応じて人によって異なることを認識するであろう。したがって、380nm〜750nmの範囲は、一般的に認められている範囲であり、決して限定的な意味を持つものではない。
【0016】
一酸化炭素(CO)中毒は、世界的に有毒関連死の最も一般的な原因の1つである。米国では、COの吸入により、毎年約5万件の救急室往診と400件以上の死亡事故が発生している。たとえそれが致命的ではない場合でも、CO中毒は、記憶、注意、及び障害を含む重大な罹患率と関連している。
【0017】
CO及び酸素は、ヘモグロビン(Hb)に結合する確率が等しい。しかし、いったん結合すると、COは酸素より約200倍大きい親和性でHbに結合する。したがって、HbからのCOの解離にははるかに時間がかかり、Hbへの酸素結合の可能性が減少する。
【0018】
上述したように、COHbを光解離させるために、可視光による光線療法を用いることができる。典型的には、光線療法技術は、COHbによって良く吸収される光波長(例えば、540nm及び570nm)を利用してきた。しかしながら、光線療法中のCOHbを光解離する可能性は、光の波長とは無関係であり得る。すなわち、化学的収率(Hbから光解離される分子の数)と吸収される光子の数との比として定義される量子収率は、光の波長に依存しないと言える。本開示のCO被毒治療又は予防システム及び方法は、COHbによってはほとんど吸収されないがヒト組織に十分に浸透することができる光の波長を利用することによって、この非直感的な現象を活用する。1つの非限定的な例では、これらの波長の光は、590nmと630nmの間であり得る。
【0019】
人間の組織に十分に浸透することができる波長の光を利用することにより、以下に詳細に説明する本発明のCO被毒治療又は予防システム及び方法が、患者の身体の1つ又は複数の部分に光線療法を直接提供することが可能になり、大量の血流へのアクセスを提供する。特に関心のある患者の身体の一部分は肺であり、特に肺血管系である。放射された可視光線が干渉組織に十分に浸透できる場合、患者の体内に放射される可視光線は肺血管系に到達し得る。動脈、肺胞−毛細血管網及び静脈を含む肺血管系は、換気−灌流マッチングのために毎回の呼吸サイクル中に絶えず再循環する大量の血流(全心拍出量)へのアクセスを提供する。健康な人間では、約5リットルの全血液量が1分ごとに肺を循環する。さらに、肺脈管構造は肺胞に囲まれており、光解離したCOは肺胞ガス空間に放出され、呼気時に患者の体内から排出される。
【0020】
可視光による光線療法はまた、肺中のオキシヘモグロビン(HbO2)を光解離する可能性があり、このことは組織酸素化をさらに損なうのでCO中毒の治療又は予防を妨げる可能性がある。しかしながら、可視光を用いたHbO2の光解離に伴う量子収率は約0.008であり、可視光によるCOHbの光解離に伴う量子収率は約0.5以上である。したがって、COHbの方がHbO2に比べてかなり多くがデオキシHbに光解離され、血液中のHbO2レベルの回復を助ける。
【0021】
以下の詳細な説明は、可視光線を肺血管系又は皮膚に照射することによってCO中毒を治療又は予防するための光線療法を提供することができるシステム及び方法の様々な非限定的な例に向けられている。
【0022】
図1は、CO中毒を治療又は予防するための光線療法システム10の1つの非限定的な例を示す。光線療法システム10は、光源14と通信するコントローラ12を含む。光源14は、約590nmと650nmの間の波長の可視光を出力するように構成されたレーザの形態であり得る。他の非限定的な例では、光源14は、発光ダイオード(LED)、又は当技術分野で知られている任意の他の可視発光デバイスの形態であってもよい。コントローラ12は、光源14のパルス幅、周波数、及びエネルギー出力を制御するように構成されている。コントローラ12はまた、望んだ通りに、光源14をオンオフし、光源14がオンになる時間を制御するように構成される。さらに、
図1に示すように、コントローラ12は、患者のEKG(心電図)信号13及びエアフローメータ15と通信している。エアフローメータ15は、患者の気管及び気管支を通る酸素又は空気の流量を測定するように構成され、患者がいつ吸気して呼気しているかをコントローラ12が識別することを可能にする。したがって、コントローラ12は、光源14に供給される光信号をゲートすることで吸気を終了させ、これによって電力を節約し肺組織の加熱を低減し、COリッチガスの即時の呼気を可能にするように構成することができる。追加的又は代替的に、コントローラ12は、患者の血液中の動脈CO濃度を連続的に測定することができる測定装置、例えば経皮COHbパルスオキシメータと通信することができる。コントローラ12は、患者の血液中のCO濃度が十分に減少した後に光源14をオフするように構成することができる。
【0023】
このように、COHbによる可視光のピーク吸収は、540nm付近と570nm付近で発生する。COHbによる可視光の吸収は、波長が570nmを超えて増加するにつれて実質的に減少し、690nmを超える吸収はほとんど又は全く生じない。COHbによる可視光の吸収は、570nmを超えて実質的に減少するが、波長が約570nmを超えると、人間の組織への又はそれを通る可視光の浸透深さは増加する。したがって、光源14によって出力された光の波長は、ヒトの組織内に又はそれを通って十分に浸透することができ、COHbによって吸収されることもできる。
【0024】
他の非限定的な例において、光源14は、約380nmと約750nmの間の波長の光を出力するように構成されてもよい。さらに他の非限定的な例では、光源14は、所望に応じてCOHbによって吸収される任意の波長の光を出力するように構成されてもよい。
【0025】
図1及び
図2に示すように、光源14は光ケーブル16に結合され、光源14からの光出力が、光ケーブル16内及び光ケーブル16に沿って配置された1つ又は複数の導波管18を介して伝送される。光ケーブル16の直径Dは、患者の食道又は気管に挿入された場合に光ケーブル16の周りで換気又は呼吸できることを保証するのに十分小さいような寸法にされている。1つの非限定的な例では、光ケーブル16の直径Dは、約10ミリメートル(mm)未満であり得る。他の非限定的な例では、光ケーブル16は、必要に応じて異なる形状を画定することができる。
【0026】
光ケーブル16は、患者の食道又は気道に挿入されている間に変形することなく曲げることができる可撓性で生体適合性の材料から製造することができる。これに代えて又はこれに加えて、光ケーブル16は、PVCチューブ、PTFEチューブ、PESチューブ、又は当該技術分野で知られている任意の可撓性のある生体適合性のチューブ内に収容することができる。光ケーブル16又はチューブは、気管内チューブの一部又は余分な管腔(又は胸部外科手術において肺隔離を得るために使用される二重管腔内気管チューブ)を備えた気管内チューブの一部であってもよい。導波管18は、光ファイバー気管支鏡による直接の視覚化の下で、各主幹気管支に別々に配置されてもよいし越えて通されてもよい。
【0027】
導波管18は、光源14によって出力された光を効率的に伝送することができる、ガラス、プラスチック、液体、ゲル、又は当技術分野で知られている任意の他の実行可能な材料のような可撓性で生体適合性の材料から製造される。図示した非限定的な例では、導波管18は1つ又は複数の光ファイバである。別の非限定的な例では、導波管18は、可撓性かつ生体適合性であることに加えて生分解性であるコラーゲンゲルであってもよい。導波管18は、導波管直径Dfをそれぞれ規定することができ、導波管18の一部が光ケーブル16の遠位端20から突出するように、光ケーブル16よりも長い寸法にすることができる。導波管直径Dfは、5マイクロメートル(μm)と1000μmとの間であってよい。他の非限定的な例では、導波管直径Dfは、所望に応じて、5μm未満又は1000μm超とすることができる。
【0028】
図1の図示された非限定的な例では、導波管18の各々は、光ケーブル16の遠位端20から等距離に突出している。別の非限定的な例では、導波管18はそれぞれ、光ケーブル16の遠位端20から異なる距離に突出している。各導波管18が突出する距離は、各導波管18に対して異なる又は一定の固定された所定の値であってもよく、又は他の非限定的な例では、各導波管18が距離光ケーブル16から突出する距離は、光線治療システム10のユーザによって可変的に制御され得る。光ケーブル16の遠位端20は、光ケーブル16から突出する導波管18の部分を含むステント状構造(図示せず)を含むことができる。ステント状構造は、光ケーブル16が患者の食道又は気道に挿入されたときに、導波管18が組織表面に接触するのを防止するのを助ける。
【0029】
図2に示すように、光ケーブル16は40本の導波管18を含むが、他の構成では光導波管18の数が異なっていてもよい。例えば、光ケーブル16は、1本の導波管18を含むことができ、あるいは光ケーブル16は、導波管直径Dfが所望の数の導波管18を光ケーブル16の直径D内に適合させるのに十分小さい限り、任意の数の導波管18を含むことができる。
【0030】
図1〜5を参照すると、導波管18の各々は、光源14から遠位に配置された先端22を含む。先端22は、導波管18を透過する光源14からの光出力を放射するように構成される。先端22は、
図3及び
図4に示すように、先端22を成形することによって光を拡散して放射するか、
図5に示すように、先端22の上又は中に拡散光学素子又は要素を含めることによって光線を拡散して放射するように構成される。先端22から拡散して放射された光によって、光線治療システム10は患者内の大きな容量の組織(即ちガス交換肺)を均一に処置できる。さらに、先端22から拡散して放射する光又は新鮮なガスの吸入の終わりのゲート照明により、患者内の治療される組織に照射される照射量(単位面積当たりのエネルギー)が減少し、治療される組織が過熱する可能性が低下する。
【0031】
図3に示すように、1つの非限定的な例において、先端22は、導波管の直径Dfから先端直径Dtに向かって先細になる実質的に円錐形を画定することができ、DtはDf未満である。DfからDtまで先細になることにより、先端22は、先端22に沿って放射状に及び軸方向に放射することによって、光源14から光を拡散して放射することができる。
図4に示すように、別の非限定的な例において、先端22は実質的に丸い形状を画定することができる。先端22の丸みを帯びた形状により、先端22が先端22の周囲に光を放射状に拡散して放射することができる。
図4の例示の先端22は、導波管Dfの直径にほぼ等しい先端直径Dtを画定する。あるいは、先端直径Dtは、必要に応じて、導波管Dfの直径より大きくても小さくてもよい。当業者であれば、先端22から放出された光の拡散を助長するために先端22の他の形状又は幾何学的形状が可能であることがわかるであろう。
【0032】
図5に示すように、さらに別の非限定的な例では、先端22は、先端22の上又は内部に配置された1つ又は複数の拡散要素24を含むことができる。拡散要素24は、先端22内に機械加工されたノッチの形状や、先端22の上又は内部に配置された光学レンズ、先端22内に配置された散乱粒子、当該技術分野で知られている任意の他の拡散要素を含むことができる。拡散要素24の形態にかかわらず、導波管18を透過する光源14から出力された光が拡散要素24に接触すると、拡散要素24は入射光を散乱させ、光を次いで先端22の側面の周りに拡散して放射状に放射させる。
【0033】
さらに他の非限定的な例では、先端22は、空気又は水を介してビームの発散及び自然散乱を利用して、先端22から放射された光を拡散的に伝搬させることができる。
【0034】
図6を参照すると、光ケーブル16は患者30の食道28に挿入されるように構成されて、導波管18を食道28内に配置する。光ケーブル16は、光線治療システム10のユーザによって、口腔又は患者30の鼻孔を通って食道28内に挿入され得る。光ファイバ16の遠位端20、よって先端22は、食道28に沿った任意の所望の位置に配置することができる。非限定的な例では、光ケーブル16は、光ケーブル16の遠位端20が食道28にどの程度まで挿入されているかの指示を光線療法システム10のユーザに提供する増分距離マーカーを含むことができる。
【0035】
追加的又は代替的に、
図7に示すように、光ケーブル16を患者30の気管32内に挿入して、導波管18を気管32及び/又は患者30の気管支樹内に配置するように構成することができる。1つの非限定的な例において、光ケーブル16は、挿管チューブを通って又はそれに沿って挿入され得る。これに代えて又はこれに加えて、光ケーブル16は、口腔内又は患者30の鼻孔を通して挿入することができる。光ケーブル16は光線療法システム10のユーザによって操作されて、光ケーブル16の遠位端20を、よって先端22を、気管32又は気管支樹に沿った任意の所望の位置に配置することができる。例えば、
図7に示すように、光ケーブル16の遠位端20は、患者30の左側の主幹気管支34内に位置する。あるいは、光ケーブル16の遠位端20は、光線治療システム10は、光線療法システム10のユーザによって操作されて、患者30の右の主幹気管支36内に配置される。光ケーブル16の直径Dは、光ケーブル16が右又は左の主幹気管支の何れかを通過して小さな気道に挿入され得る程十分に小さい大きさとされてよい。
【0036】
代替的に又は付加的に、光ケーブル16は、必要に応じて、胸部管を通して挿入されるように構成されて患者30の肺33を取り囲む胸膜腔内に導波管18を配置するができるか、又は患者の身体の上又は内部の任意の場所に導波管18を配置するように構成されて光線療法を提供する。
【0037】
1つの非限定的な例では、導波管18の導波管直径Dfは十分に小さくすることができ、導波管18が製造される材料は、十分な可撓性があって、患者の気道を通って流れる空気によって、導波管18が位置付けられる。即ち、光ケーブル16が患者の気管に挿入されると、導波管18は患者の気道を流れるガスによって運ばれて、
図8に示すように、患者30が吸入する(又は正の圧力で換気される)ときに気管支樹の全体に導波管18を位置付け得る。このプロセスを助けるために、各先端22は、
図9に示すように、フィン26を含むことができる。フィン26は、先端22を横切って抗力又はガス抵抗を増加させるように構成されて、積極的な圧力換気又は随意呼吸によって駆動される、強制的な機械的な深い吸入又は大きな自発的な一回換気量の間に、導波管18を移動させるのを助ける。あるいは、光線療法システム10のユーザによって加えられた正の圧力の配備中に、導波管18を変位させることができる。フィン26のそれぞれは、抗力に影響を及ぼすであろうサイズ、形状、又は何れの他の物理的特徴で変わってよく、気管支樹の全体に先端22を促進して分配する。代替的又は追加的に、先端22は、患者30の気管支樹内の組織及び/又は粘液に接着する接着剤でコーティングされてもよい。
【0038】
図10は、光ケーブル16の遠位端20が第1の遠位セクション38と第2の遠位セクション40とに分割されている光線療法システム10の別の非限定的な例を示す。導波管18の一部は第1の遠位セクション38から突き出て、導波管18の残りの部分は第2の遠位セクション40から突き出ている。第1の遠位セクション38及び第2の遠位セクション40は、第1の遠位セクション38又は第2の遠位セクション40のいずれかが、
図11に示すように、光ケーブル16が患者の気管32を通って挿入されたときに、患者30の左主気管支34又は右主気管支36のいずれかの中に収容される。さらにこの非限定的な例において、導波管18は、
図11に示されているように、患者30の両方の肺33において、例えばフィン26の助けを借りて、気管支樹全体にわたって移動することができる。
【0039】
図12及び
図13は、バルーン44を光ケーブル16の遠位端20に取り付けることができる光線療法システム10のさらに別の非限定的な例を示す。バルーン44は、光ケーブル16の遠位端20から突き出た導波管18の部分を包む。バルーン44は、先端22から放出された光を効率的に伝達することができる生体適合性材料から製造される。バルーン44は、光ケーブル16の内部にそれに沿って配置された流体通路を通じてガス源46及び/又は液体源48と連通している。バルーン44は、収縮状態(
図12)と膨張状態(
図13)との間で拡張可能に構成されている。ガス源46及び/又は液体源48のいずれかを使用して、収縮状態(
図12)と膨張状態(
図13)との間でバルーン44を拡張することができる。1つの非限定的な例において、ガス源46は、空気又は酸素の加圧された供給源であってもよい。光ケーブル16が患者30の食道28に挿入され、バルーン44が膨張状態にあるとき、
図14に示すように、バルーン44は食道28の壁を拡張して薄くすることができ、よって、食道28の壁の厚さを最小にする。これにより、患者30の食道28内で光線療法を適用しながら、先端22から放出された光が浸透しなければならない組織の量を最小にすることができる。
【0040】
ガス源46及び/又は液体源48は、バルーン44内に冷却流体を提供することができる。冷却流体は、導波管18の先端22から放射される光によって照射される組織の加熱を低減することができる。したがって、冷却流体がバルーン44内に存在する場合、バルーン44内に冷却流体が存在しない場合と比較して、組織受容光線療法は、光源14からのより高い出力の光出力を許容することができる。追加的に又は代替的には、冷却流体は、IVを供給するために使用される脂質エマルジョンのような、流体を透過させ、光源14からの光出力を拡散的に散乱させることができる低吸収流体でもよい。
【0041】
図15は、光線療法システム10の別の非限定的な例を示し、光線療法システム10が気管支鏡50に組み込まれている。気管支鏡50は、光源14に結合された光ポート52と、光ケーブル16に結合された作業ポート54と、吸引ポート56と、観察ポート58と、光ケーブル16に機械的に結合された1つ又は複数の調節機構60と、を含む。吸引ポート56は、光ケーブル16の内部にそれに沿って配置されている吸引通路に連通する。観察ポート58によって、光線療法システム10のユーザは光ケーブル16の遠位端20に配置された光学系によって取得された画像を見ることができる。調節機構60は光ケーブル16の遠位端20の位置を調節するように構成される。
【0042】
吸引ポート56は、患者の気管及び/又は気管支樹から流体サンプルを除去するために、吸引通路全体に亘って真空を生成するように構成された吸引装置に接続することができる。観察ポート58及び調節機構60により、光線療法システム10のユーザは、光ケーブル16の遠位端20の位置をリアルタイムで表示し調整することができる。
【0043】
光線療法システム10の動作の1つの非限定的な例を
図1〜
図16を参照して説明する。動作中、光線療法システム10のユーザはCO中毒患者を治療することができる。ユーザがCO中毒で患者を治療するために行うことができるステップが
図16に示されている。光線療法システム10のユーザは、通常、訓練された医療従事者である。光線療法システム10を使用するCO被毒の治療の以下の説明は、1つの例示的な非限定的な例であり、当業者によって認識されるように、代替の方法又は異なるステップが使用されてもよいことを理解すべきである。
【0044】
図16に示すように、まず、導波管18がユーザによってステップ62で位置決めされて、導波管18が患者の身体の一部(例えば、肺又は皮膚)に光を放射する。ステップ62で導波管18を配置するのは、光ケーブル16を患者の食道、気管、気管支樹又は胸膜腔(例えば、開胸術用チューブ又はチューブを介して)に挿入することによって達成することができる。代替的に、導波管18は、所望に応じて、患者の身体の任意の部分の内部又はその上(例えば、皮膚)に配置することができる。別の非限定的な例では、導波管18はステップ62において位置決めされて、開胸手術の後に患者の肺に光を直接放射できる。さらに別の非限定的な例では、導波管18をステップ62で配置して、患者の皮膚の全部又は一部に光を直接放射することができる。この非限定的な例では、呼吸のために患者に純粋な酸素(すなわち、100%O2)を提供することができ、及び/又は患者の体表面(すなわち皮膚)を純粋な酸素で洗い流すかそれに晒す。
【0045】
ステップ62で導波管18の位置決めが行われた後、ユーザはステップ64でコントローラ14を介して光源14をオンにする。ステップ64で光源14がオンにされると、光源から光が出力される導波管18を通って患者14の体に照射される。上述したように、1つの非限定的な例において、光源14は590nmと650nmの間の波長の光を出力するように構成することができ、波長は人間の組織の中に又はそれを通って浸透できCOHbのよって吸収され得る。したがって、導波管18が患者の食道、気管、気管支樹又は胸膜腔内に位置するかどうかにかかわらず、導波管18から放射された光は周囲組織を貫通して患者の肺血管系に到達する。ステップ64で光源が点灯された状態で、光源14から導波管18を通って放射された光は肺の脈管構造に到達する。肺の脈管構造では、放出された光はCOHbによって吸収され、それによってHbからCOを光解離させる。肺又は人体を取り巻く酸素分圧は肺脈管構造又は皮膚脈管構造におけるCOの分圧よりもはるかに大きいことがあるため、酸素圧勾配は、COよりもはるかに高い割合で酸素分子を脱酸素化Hbに結合する。したがって、COは、COHbから患者の肺胞内に光解離され、次の換気ガス呼気の間に吐き出される。
【0046】
ステップ64で光源14が点灯されると、制御装置12は、ステップ66で、所望の量の光が放出されたかどうかを判定する。そうである場合(68)、光源14は、ステップ70でコントローラ12によって自動的に又はコントローラ12を介してユーザによって手動でオフにされる。そうでない場合(72)、光源14はコントローラ12がステップ66で所望の光量が放出されたことを判断するまでオンし続ける。光源14によって放射される所望の光量は、患者の動脈COHbレベル(デジタルパルスCOオキシメータ(Massimo Corp.)を使用して非侵襲的かつ連続的に測定することができる))を下げるのに十分な光線療法を提供すること、及び導波管18からの発光によって照射された周囲組織が過熱するのを防止することの間のバランスを達成するのに関連する。ユーザは、コントローラ12を介して光源14のパルス幅、周波数、及びエネルギー出力を制御して、光源14によって出力された出力が照射された組織を損傷することなくCOHbの十分な光解離をもたらす。さらに、ユーザは、所望の量の光が放出され且つ照射された組織が損傷していないことを確実にするために所定時間後に光源14をオフにするようコントローラ12に指示することができる。これに代えて又はこれに加えて、光源14から提供される光は、コントローラ12を介してフレッシュなガスの吸入の所定期間にゲートされ、その後、呼気中にオフにされて組織の加熱を低減することができる。
【0047】
ステップ70において、コントローラ12又はユーザが光源14をオフにすると、導波管18は、ステップ74において、食道、気管、樹木、胸膜腔、又は患者の他の部分から外される。代替的に又は追加的に、導波管18が上記のように生分解性材料から製造され得るので、導波管18は患者の体内に残される。
【0048】
代替的又は追加的に、光ケーブル16は、上述したように、光ケーブル16の遠位端20に取り付けられたバルーン44を含むことができる。この非限定的な構成では、ユーザがステップ62で患者の食道に沿った所望の位置に導波管18を配置すると、バルーン44をステップ76で食道の壁を薄くする膨らんだ状態に膨張させることができる。ステップ76において、バルーン44が膨張すると、ステップ78でバルーン44内にガス源46又は液体源48の何れかから冷却流体を供給して周囲の組織を冷却することができる。ステップ78でバルーンの内部に冷却流体が供給されると、光源14はステップ64でコントローラ12を介してユーザによってオンにされる。
【0049】
代替的又は追加的に、導波管18の先端22は、上述のようにフィン26を含むことができる。この非限定的な構成では、ユーザがステップ62で導波管18を患者の遠位気管又は気管支樹内の所望の位置に配置すると、導波管18は、ステップ80で、吸入中に又は正圧展開中に、患者の気管及び/又は気管支樹全体に導波管18を分配するように変位される。ステップ80において導波管18が変位されると、ステップ64において、コントローラ14を介してユーザが光源14をオンにすることができる。
【0050】
代替的又は追加的に、EKG信号及び/又は患者の気道を通る空気流量は、上述したように、コントローラ12に伝達され得る。この非限定的な構成において、ステップ64において光源14が一度オンにされると、コントローラ12は、ステップ82で光源14を変調するように構成することができる。すなわち、コントローラ12は、EKG信号に基づいて患者の心周期中の特定の時間に光源14を制御するように構成することができ、又はコントローラ12は、患者の気道又は円周方向の胸部/腹部ベルト容量センサを用いた胸郭の拡張を介した空気流量で示されるように、吸気中に光源14をオンにし、呼気中に光源14をオフにする。他の非限定的な例では、心拍数を含む任意の生理的マーカー又は特徴(すなわち、EKG QRS複合をトリガーする)を使用又は組み合わせることができて(例えば、吸入時に人工呼吸器位相をゲートするのにEKGをピーク肺動脈血流にゲートする)、ステップ82で、光源14の変調をトリガ又はゲートする。
【0051】
図17は、CO中毒を治療又は予防するための光線療法システム100の別の非限定的な例を示す。光線療法システム100は、中央管腔104を有する管102を含む。管102の中央管腔104は、液体源106とバッグ108との間の連通を提供する。中央管腔104はまた、光源110とバッグ108との間の連通を提供する。チューブ102は、PVC、PTFE、PES又は当技術分野で知られている他の任意の可撓性のある生体適合性材料から製造することができる。チューブ102は、チューブ102の直径Dが患者の食道に挿入された場合にチューブ102の周りで呼吸することを確実にする(特に呼気を妨げない)のに十分小さいような寸法にされる。代替的又は追加的に、チューブ102は1つ又は複数の胸部(開胸)チューブに挿入されるように構成されて、バッグ108を患者の肺を取り囲む胸膜腔内に配置することができる。1つの非限定的な例では、チューブ102は、少なくとも10mmより小さい直径Dを画定することができる。
【0052】
液体源106は、中央管腔104を通してバッグ108に液体の流れを供給するように構成される。液体源106は、水、食塩水、光を散乱させる低光吸収流体、例えばIV供給のために使用される脂質エマルジョン、又は当該分野で公知の任意の他の生体適合性液体が挙げられる。液体源106によって提供される液体は、バッグ108を取り囲む組織に冷却を提供することができ、及び/又は光源110と混合されて、光源110を流動化しバッグ108全体に拡散的に分配することができる。バッグ108は、光源110から発せられた光を効率的に透過させることができる、折りたたみ可能で生体適合性のある材料から形成される。バッグ108及び/又はチューブ102は、バッグ108及び/又はチューブ102が患者の食道内に患者の肺を取り囲む胸膜腔内に又は患者の身体の他の部分内に適合できるように構成され得る。
【0053】
光源110は、化学発光液体、複数の化学発光粒子、複数の燐光粒子、レーザ、又はLEDであってもよい。光化学反応の反応物は、所望の波長で発光する化学発光液体/粒子を生成するように選択することができることは、当該技術分野において周知である。したがって、光源110が化学発光液体又は粒子である場合、化学発光液体/粒子は、約590nm〜650nmの間の波長の光を放出する光化学反応を生成する反応物を含むことができる。他の非限定的な例において、化学発光液体/粒子は、約390nmと約690nmの間の波長で光を放出する光化学反応を生成する反応物を含むことができる。さらに他の非限定的な例において、化学発光液体/粒子は、COHbによって吸収される任意の波長で光を放射する光化学反応を生成する反応物を含む。
【0054】
典型的には、燐光性粒子は、ホスト格子にドープされたドーパントイオン(一般に燐光体とも呼ばれる)を含む。ドーパントイオンは、外部励起源(例えば、光放射)によって上部励起状態に励起され、緩和して基底状態に戻ると、ドーパントイオンは所定の波長で発光する。燐光性粒子は、典型的には化学的に不活性であり、吸収された励起エネルギーを百パーセント近くの量子効率で放出された光に変換することができるので特に興味深い。ドーパントイオン、ホスト格子、ホスト格子の結晶構造、励起源、及びホスト格子内のドーパントイオンの濃度が、中でも、燐光性粒子によって放出される光の波長に影響を与え得ることは、当該技術分野において周知である。したがって、光源110が燐光粒子を含む場合、燐光粒子は、励起源112によって励起されたとき、約590nm〜約650nmの間の波長の光を放出するドーパントイオン及びホスト格子を含むことができる。他の非限定的な例において、燐光性粒子は、励起源によって励起されると、約390nm〜約690nmの間の波長の光を放出するドーパントイオン及びホスト格子を含むことができる。さらに他の非限定的な例において、燐光性粒子は、励起源によって励起されたときにCOHbによって吸収される任意の波長で光を放射するドーパントイオン及びホスト格子を含むことができる。
【0055】
光源110が燐光粒子を含む場合、光線療法システム100は、燐光粒子を活性化し、燐光粒子を所望の波長で発光させるように構成された励起源112を含むことができる。励起源112は、レーザ、ランプ、1つ又は複数のLED、又は燐光性粒子を活性化することができる任意の実行可能な励起源とすることができる。
【0056】
上述のように、液体源106は、光を散乱させる低吸収流体を提供するように構成することができる。この非限定的な例では、低吸収流体は、光源110によって発せられた光を透過させて散乱させるように構成することができる。光源110は、光ファイバーのような導波管に結合されたレーザとすることができ、バッグ108の内側に配置される。低吸収液で満たされたバッグ108は、レーザによって生成され患者の胸膜腔又は他の体腔内のバッグ108に伝達される光の拡散器として機能することができる。
【0057】
光線療法システム100の動作の1つの非限定的な例を、
図17及び
図18を参照して説明する。動作中、光線療法システム100のユーザは、CO中毒患者を治療することができる。ユーザがCO中毒で患者を治療するために行うことができるステップが
図18に示されている。光線療法システム100のユーザは、通常、訓練された医療従事者である。光線療法システム100を使用するCO中毒の治療の以下の記載は、1つの例示的な非限定的な例であり、当業者には認識されるように、代替の方法又は異なるステップを使用することができることを理解すべきである。
【0058】
図18に示すように、まず、ステップ114でバッグ108を患者の体の一部の中に配置するように、ユーザがバッグ108を位置決めする。上述したように、患者の体の部分は、食道、胸膜腔、又は身体の他の部分を含むことができる。バッグ108の位置決め114に続いて、ステップ116において、光源110は中央管腔104を介してバッグ108内に流体的に連通され得る。代替的に又は追加的に、液体源106からの液体は、ステップ116において、バッグ108の位置114に中央管腔104を介してバッグ108内に流体的に連通され得る。光源110がバッグ108内に入ると、光源110から出力された光はバッグ108を透過し、患者の体の一部に放射される。上述したように、光源110は、ヒトの組織に侵入又は通過してCOHbに吸収され得る波長である590nmと650nmとの間の波長の光を出力するように構成することができる。したがって、バッグ108が食道内に配置されているか、又は患者の胸膜腔内に配置されているかにかかわらず、光源110から放射された光は周囲組織を貫通して患者の肺血管系に到達する。光源110から放射された光が肺の脈管構造に到達すると、放出された光はCOHbによって吸収され、それによりCOをHbから光解離させる。酸素の肺胞分圧は肺脈管構造中のCO分圧よりもはるかに大きいので、酸素圧力勾配は酸素分子をCOよりもずっと速く脱酸素化Hbに結合させる。このように、COはCOHbから光解離して患者の肺胞に入り呼気中に吐出される。
【0059】
薄壁で透明であり得るバッグ108は所定時間、患者の身体の部分内に残されて、所望の量の光線療法が提供され、照射された組織が損傷されないことを確実にする。バッグ108が患者の体の一部の中に所定時間内存在したならば、ユーザはステップ118で患者の身体の部分内からバッグ108を取り外すことができる。
【0060】
代替的又は追加的に、光源110は、上述のように燐光性粒子を含むことができる。この非限定的な例では、ステップ116において光源110がバッグ108に流体的に連通される前に、光源110を励起源112によって作動させることができる。
【0061】
他の非限定的な例では、バッグ108は、光源110と患者の体の一部との間にバリアを設ける必要はないことを理解されたい。即ち、いくつかの非限定的な例において、光源110は例えば患者の胸膜腔に注入することができる無毒の化学発光性流体であってもよくて、光源110からのより良好な光放射分布を提供する。光源110によって提供される光線療法の所望の持続時間に続いて、光源は例えば吸引によって取り外すことができる。
【0062】
図19は、CO中毒を治療又は予防するための光線療法システム200の別の非限定的な例を示す。光線療法システム200は、光源202と、中心管腔206を有する管204とを含む。管204は、光源202と気道208との間の連通を提供するように構成される。図示された気道208は、マスクの形態であるが、しかし、他の非限定的な例では、気道208は、患者の肺への連絡を提供するように構成された任意のデバイスの形態であってもよい。即ち、他の非限定的な例において、気道208は、いくつかの例を挙げると、気管内チューブ、鼻プロング、又は気管切開チューブの形態であってもよい。代替的又は追加的に、気道208は、患者の鼻及び口の少なくとも1つを覆う当該技術分野で公知の任意のマスク又は呼吸マスクであり得る。例えば、気道208は、典型的には消防士及び/又は軍人が着用する呼吸器とすることができる。管204は、PVC、PTFE、PES、又は当技術分野で知られている任意の他の柔軟性のある生体適合性材料のような可撓性のある生体適合性材料から製造することができる。代替的又は追加的に、管204は、気管内チューブに接続することができる。
【0063】
光源202は、複数の燐光性粒子を含むことができる。光源202の燐光性粒子は、励起源216によって励起されると、約590nm〜約650nmの波長の光を放出するドーパントイオン及びホスト格子を含む。さらに、光源202の燐光性粒子は化学的に人に対して不活性で無毒である。他の非限定的な例において、燐光性粒子は、励起源216によって励起されたとき、約390nm〜約690nmの間の波長で光を放出するドーパントイオン及びホスト格子を含むことができる。さらに他の非限定的な例において、燐光性粒子は、励起源216によって励起されたときにCOHbによって吸収される任意の波長で光を放出するドーパントイオン及びホスト格子を含むことができる。
【0064】
光源202の燐光性粒子は、人によって吸入されると燐光性粒子が気管及び気管支樹全体の場所に留まるように、変化する粒子直径を画定することができる。これに加えて又はこれに代えて、燐光性粒子を人の気管又は気管支樹内の粘液及び/又は組織に付着させる接着剤で燐光粒子をコーティングすることができる。
【0065】
図19に示すように、光源202はまた、エアロゾル化要素210及びガス源212と連通している。エアロゾル化要素210は、燐光性粒子をエアロゾル化し、これにより燐光性粒子が、ガス源212によって供給された流体と混合でき、管204の中心管腔206を通って気道208に流れる。エアロゾル化要素210はまた、人が吸入する粒子負荷が人の肺を著しく損傷させることのない程度に、特定の数の燐光性粒子をエアロゾル化する(生物反応性でない生物学的に不活性な粒子)。エアロゾル化要素210は、噴霧器、流動床、又は当技術分野で公知の他の実行可能なエアロゾル化装置であり得る。ガス源212は、加圧された空気又は酸素源とすることができる。エアロゾルサイズは、中毒時にCO呼気を生成するのに最も有用な肺の部分を標的とするサイズに設計することができる。例えば、肺胞を標的にするために1〜2ミクロンの粒子、肺胞への肺動脈供給に近い末端気管支に入る5〜10ミクロンの粒子である。
【0066】
コントローラ214は、エアロゾル化要素210及び励起源216と連通している。コントローラ214は、エアロゾル化要素210が光源202をエアロゾル化するとき及び励起源216が光源202を活性化するときを制御するように構成される。励起源216は、レーザ、ランプ、1つ又は複数のLED、又は光源202を作動させることができる任意の実行可能な励起源とすることができる。
【0067】
光線療法システム200の動作の1つの非限定的な例を、
図19及び
図20を参照して説明する。動作中、光線療法システム200は、CO中毒を有する人を治療することができ、又はCO濃度の高い雰囲気中の人がCO中毒になるのを防止するのに使用することができる。光線療法システム200を使用してCO中毒の治療又は予防するステップが
図20に示されている。光線療法システム200を使用するCO中毒の治療又は予防の以下の説明は、当業者によって認識されるように1つの例示的な非限定的な例であり、代替の方法又は異なるステップが使用されてもよい。
【0068】
図20に示すように、最初に、光源202の燐光性粒子は、ステップ218でコントローラ214を介して励起源216にオンするように命令することができる。光源202の燐光性粒子がステップ218において活性化されると、コントローラ214は、ステップ220において、燐光性粒子をエアロゾル化するようにエアロゾル化要素210に指示する。次に、ステップ222で、エアロゾル化燐光性粒子を、ガス源212からの流体流れと混合され、これにより、エアゾル化燐光性粒子が管204の中心管管腔206に流入できる。上述したように、エアロゾル化要素210は、中央管腔206内の燐光性粒子の粒子負荷を制御するように構成することができ、これにより、人が吸入すると、粒子の負荷が人の肺に重大な損傷を引き起こすことは無い。
【0069】
エアロゾル化燐光粒子がステップ222でガス源212からの流体流れと混合されて中央管腔206に流入し始めると、気道208を装着した人はステップ224でエアロゾル化光源202を吸入して、光源202の燐光性粒子が人の気管及び気管支樹全体に分散する。上述したように、燐光粒子は、いったん活性化されると、ヒト組織に浸透するか又はCOHbに吸収される波長である590nm〜650nmの波長の光を出力するように構成することができる。したがって、人の気管及び気管支全体に散在する燐光性粒子から放射された光は、周囲の組織を貫通して人の肺血管系に到達することができる。燐光性粒子から放射された光が肺の脈管構造に到達すると、放出された光はCOHbによって吸収され、それによりHbからCOを光解離させる。酸素の肺胞分圧は肺脈管構造中のCO分圧よりもはるかに大きいので、酸素圧力勾配は酸素分子をCOよりもはるかに高い速度で脱酸素化Hbに結合させる。このように、COはCOHbから光解離されて人の肺胞に入り、呼気によって体から取り除かれる。
【0070】
光源202が吸入されると、人の肺胞に到達することができ、したがって、浸透すべき組織の厚さは非常に小さく(例えば、1〜5ミクロン未満)なることも知られている。この非限定的な例において、燐光性粒子は、390nm〜750nmの間の波長の光を出力するように構成することができる。
【0071】
代替的又は追加的に、燐光性粒子は、注入又は吸入されたときに肺に局在するように構成された脂質ナノ粒子(例えば、吸入アミカシン抗生物質又はローダミンS脂質ナノ粒子)のようなナノサイズの粒子であってもよい。この非限定的な例において、燐光性粒子は、組織の浸透が必要とされないので、COHbによって吸収される任意の波長の光を出力するように構成することができる。
【0072】
上述したように、光線療法システム200は、CO中毒を防止するのに使用することができる。この非限定的な用途は、例えば、高CO濃度の雰囲気中で働くことが要求される軍事要員又は消防士に向けられ得る。1つの非限定的な例では、光線療法システム200は、軍人又は消防士が使用する呼吸器に一体化することができる。さらに、光線療法システム200は、人の血液中の動脈CO濃度を連続的に測定することができる測定装置、例えば経皮COHbパルスオキシメータを含むことができ、コントローラ214は、人の血液中のCO濃度の上昇を測定することに応答して、エアロゾル化要素210を介して光源202をエアロゾル化するように構成することができる。
【0073】
<使用例>
以下の実施例は、本明細書に記載される光線治療システムが使用又は実施され得る方法を詳細に記載し、当業者がその原理をより容易に理解することを可能にする。以下の実施例は、説明のために提示され、決して限定することを意味しない。
【0075】
マウスをケタミン(120mg/kg)及びフェンタニル(0.09mg/kg)の腹腔内(i.p.)注射により麻酔した。気管切開後、ロクロニウム(1mg/kg)を腹腔内注射して筋弛緩を誘発した。体積制御換気が、呼吸数90回/分、1回換気量10ml/kg、呼気終末圧(PEEP)1cmH2Oで行った。カテーテルを頚動脈及び頸静脈に配置し、次いでマウスは中央開胸術を受け肺を露出させた。
【0076】
マウスは、空気中400ppmのCOを呼吸することによって被毒された。CO分析器(MSA Altair-PRO; MSA Safety Inc.、ペンシルベニア州ピッツバーグ)を用いて、吸入及び吐出CO濃度を測定した。いくつかの実験では、空気中で2000ppmのCOを呼吸することによってマウスを被毒させ、赤外線COガス分析器(MIR2M; Altech-Environment、Geneva、IL)を用いてCO濃度を測定した。動脈血中のCOHbの百分率をサンプリングし、CO中毒後及びその後に測定し、COHb半減期を算出した。
【0077】
Aura KTPレーザ(American Medical Systems、Minnetonka、MN)及び試作レーザ(Syneron-Candela、Wayland、MA)により、それぞれ532及び690nmの波長の光を発生させた。Visible Fiber レーザ(VFL−Pレーザ、MPB Communications Inc.、Montreal、カナダ)により、570、592、及び628nmの波長の光を発生させた。肺に照射される光のパワーをパワーメータ(Thorlabs Inc.、Dachau、Germany)を用いて測定した。光放射照度は、I=パワー(W)/面積(cm2)として計算した。放射照度は、RE(J/cm2)=I(W/cm2)・t(sec)として計算した。ここで、REは放射照度、Iは照度、tは暴露時間である。
【0078】
360度の光を放射する長さ1.2cmの拡散先端を有する直径1mmの光ファイバを、麻酔し機械的に換気したマウスの食道に咽頭を介して配置した。532nmでの光による間欠的光線療法を試験した。パワーを1.5Wに設定し、光を200msのパルス幅で1Hzでパルス化した。
【0079】
統計解析は、Sigma Plot 12.5(SPPS、Inc.、Chicago、IL)を用いて行った。スチューデントのt検定及びポストホックボンフェローニ検定(両側検定)を用いた一方向ANOVAを用いてデータを分析した。反復測定のための二元配置ANOVAを用いて、群間の経時的な変数を比較した。生存分析のために、カプラン・マイヤー推定値を生成し、対数ランク検定を用いて比較した。統計的有意性は0.05未満のp値として定義した。特に明記しない限り、すべてのデータは平均±SDとして表す。
【0080】
ヘモグロビンからCOを解離するために可視光が使用され得るかどうかをインビボで調べるために、CO被毒のネズミモデルが開発された。麻酔し機械的に換気したマウスに、空気中400ppmのCOを1時間吸入させて被毒させた後、空気又は100%O2のいずれかを呼吸することによって処置した。呼気CO濃度を連続的にモニターし、CO取り込み率及び排出率を測定した。CO中毒及びその後の治療期間中、動脈血中のCOHb濃度を連続的に測定し、COHb−t1/2を計算した。
【0081】
処置期間中の呼気CO濃度の曲線下面積(AUC)は、COの排除量を表す。100%O2呼吸の最初の15分間における呼気CO濃度は、
図21Aに示すように、空気の呼吸の最初の15分間よりも有意に大きく、この期間中により多くのCOが排除されたことを示す(AUC:3568±242対1744±101、p<0.001)。対照的に、処置の約20分後、呼気CO濃度は空気呼吸のマウスで有意に高く、排出のために残存するより多量のCOの存在を実証した(AUC:858±41対275±49、p<0.001)。
【0082】
1時間の被毒期間の終わりに、循環ヘモグロビンの28.0±0.6%(平均±SD)がCOで飽和した。100%O2による換気処置は、
図21Bに示すように、空気による処置よりも速くCOHb濃度を減少させた(COHb−t1/2:8.2±1.2対31.5±3.1分、p<0.001)。このマウスモデルでは、呼気CO濃度及び動脈COHbレベルの両方が、CO中毒後の空気呼吸に対して100%O2を呼吸する利点を反映している。
【0083】
CO除去率に対する肺の直接照射の影響を評価するために、麻酔し機械的に換気したマウスに正中胸骨切開を施し両側肺を露出させた。400ppmのCOを1時間呼吸させた後、628nmの波長(λ)及び54mW/cm2の放射照度で光線療法をする場合又はしない場合で、空気又は100%O2のいずれかによる換気でマウスを処置した。これらの試験のための試験装置を
図22に示す。
【0084】
100%O2呼吸に追加された肺光線療法は、処置の最初の5分間の呼気CO濃度の劇的な増加を誘発し、
図23Aに示すように、より大きなCO除去を示す(AUC:2763±215対1904±106;p<0.001)。処置の8分後に開始して、呼気COレベルは、軽度及び100%O2と比較して100%O2単独で処置したマウスで有意に高く、前者に残ったより多量のCOの存在を実証した。100%O2及び光線療法による治療中の血液COHb濃度の減少は、
図23Bに示すように、100%O2単独による治療よりも大きく、COHb−t1/2は有意に短かった(3.8±0.5対8.2±1.2分、p<0.001)。
【0085】
より低い濃度の吸気O2の存在下での光線療法の有効性を評価するために、マウスが空気を呼吸している間に肺光線療法がCO除去速度を増加させるかどうかを試験した。空気呼吸に加えられた光線療法は、
図23Cに示すように、処置の最初の25分間に排除されたCOの量の増加(AUC:3451±175対2359±130、p<0.001)、及びCOHb-t1/2は、
図23Dに示すように有意に短かった(19.2±1.3対31.5±3.1分、p<0.001)。
図24A、24B及び
図25に示すように、光線療法の有無にかかわらず処置したマウス間で、全身動脈圧、心拍数、直腸又は肺表面温度に有意差はなかった。これらの結果は、CO中毒後、直接肺光線療法が、100%O2又は空気のいずれかを呼吸するマウスにおけるCO除去率を増加させることを示す。
【0086】
異なる波長の可視光がインビボでCOHbを解離できるかどうかを試験するために、マウスをCOで被毒させ、532、570(緑色)、592(黄色)又は628(赤色)nmの光を用いた光線療法で治療した。CO除去速度に対する肺照射の非特異的影響を排除するために、COHbをインビトロで解離しない690nm(赤外)の光も試験した。マウスに麻酔をかけ機械的に換気し、正中線開胸術を施した後、400ppmのCOで5分間被毒させた後、100%O2で単独に又は各選択波長での光線療法と一緒に25分間処理した。CO除去率は、被毒期間(T90%CO)に吸収されたCOの90%を除去するのに必要な時間を計算することによって決定した。532、570、592又は628nmでの光線療法は、100%O2処置に加えた場合、
図26Aに示すように、100%O2処置と比較した場合、T90%COを有意に減少させた(それぞれ8.7±1.2、7.2±0.2、8.8±2.2,10.2±2.7対21.8±2.4分、各比較p<0.005)。対照的に、690nmでの光線療法は、100%O2処置(19.4±1.5対21.8±2.4分、p=0.892)と比較して、T90%COを低下させなかった。これらの結果は、532〜628nmの波長での光線療法が、CO被毒マウスにおけるCO除去率を改善することを示している。
【0087】
光エネルギーとCOHb光解離効率との間の関係を調べるために、マウスをCOで被毒させ、低、中又は高出力(放射照度=24、54、及び80mW/cm2)のいずれかを用いて628nmで連続光線療法と組み合わせた100%O2で処置した。これらの3つのエネルギーレベルの各々は、
図26Bに示すように、100%O2の呼吸単独(4.8±0.5、3.8±0.5、3.1±0.2対8.2±1.2分、各比較p<0.001)で処置したマウスと比較して、血液COHb-t1/2を減少させた。その結果、24mW/cm2の低照度の連続光線療法が効果的にCO除去速度を増加させることが示された。さらに、光線療法で得られたCOHb-t1/2の減少は、入射光のエネルギの増加と共に高められた。
【0088】
連続照射によって生じる熱は、肺に損傷を与える可能性がある。組織加熱を減少させる1つのアプローチは、断続的に光を投与することである。断続的光線療法がCO除去速度に及ぼす影響を調べるために、マウスを400ppmのCOで5分間被毒させた後、100%O2単独か又はこれに加えて3つのエネルギーレベル(80、160及び250mW/cm2)及び1Hzの一定周波数で3つの異なるパルス幅(100、500、1000msec)の光で25分間処理した。80mW/cm2の光及び100msecのパルス幅を用いた場合、
図26Cに示すように、T90%COは、100%O2を単独で呼吸する場合に比べて低下しなかった。各エネルギーレベルで、パルスが長いほどT90%COの減少が大きかった。試験したパルス幅ごとに、放射照度が80mW/cm2から160mW/cm2に増加したとき、T90%COが低下した。放射照度を250mW/cm2に増加させた場合、それ以上の減少はなかった。これらの結果は、断続的光線療法がCO除去率を改善し得ることを示しているが、その効果は連続光線療法よりも低い。
【0089】
CO除去速度に対するパルス幅及び光放射照度の複合効果を評価するために、各処理の放射照度を計算した。CO除去速度と放射露光との間の関係は、
図26Dに示される3つのパラメータの指数減衰曲線(R2=0.93、p<0.0001)によって記述される。
図26Dに示すように、放射曝露が0.08J/cm2より大きい場合、プラトーに達し、パワー又はパルス持続時間のさらなる増加は、CO除去速度を増加させない。
【0090】
光線療法がCO暴露中にCO中毒を予防するかどうかを試験するために、麻酔し機械的に換気したマウスを628nmで同時肺光線療法を併用して又は伴わずに空気中400ppmのCOに1時間暴露した。呼気CO濃度は、
図27Aに示すように、中毒時に光線療法を受けたマウスで有意に大きく、
図27Bに示すように、これらのマウスに吸収されたCOの量は対照マウスよりも有意に少なかった(0.134±0.005対0.189±0.011μmol/g、p<0.001)。CO暴露中に光線療法を受けたマウスでは、20、40及び60分の動脈血COHbレベルは対照よりも有意に低かった(13.4±1.1対16.5±1.9、16.8±1.1対24.2±1.2、18.4±0.6対28.0±0.6%、p<0.001)。これらの結果は、進行中のCO曝露中の直接肺照射が、CO吸収の減少及び動脈COHbレベルの低下に関連することを示す。
【0091】
CO中毒中の光線療法はCO吸収量を減少させたので、光線療法が高レベルのCOを呼吸するマウスの生存率を改善するかどうかが検討された。マウスは、532nmでの同時の直接的な肺光線療法の有無にかかわらず、空気中で2000ppmのCOを1時間呼吸した。光線療法無しでは、全てのマウスはCO曝露から30分以内に死亡した。対照的に、COを呼吸し、光線療法で治療した6匹のマウスのうち5匹は、
図28Aに示すように、60分間生存した。CO中毒の間、光線療法処置マウスの血液COHbレベルは、
図28Bに示すように、対照マウスより有意に低かった(それぞれ10分で34.1±3.5対49.9±1.9%、及び20分で38.5±4.0対62.0±0.9%、p<0.001)。
図28C及び
図28Dに示すように、CO暴露の最初の15分間で、収縮期動脈圧が減少し、心拍数が一時的に両方の群で増加した。その後、未治療のマウスでは血圧及び心拍数が劇的に低下したが、光線療法を受けたマウスでは一定のままであった。試験期間中、光線療法処置マウスの血液乳酸値は、
図28Eに示すように、未処置マウスと比較して有意に低かった(10分で3.4±1.0対4.6±1.0mmol/L、p=0.05、及び20分で3.7±1.0対11.0±1.5mmol/L、p<0.001)。これらの結果は、直接肺光線療法がCO中毒を受けたマウスの生存率を改善することを示している。減少したCO中毒の程度は、より低い血液COHb及び乳酸塩レベルと関連していた。
【0092】
開胸術無しにネズミの肺に光線療法を施す可能性を評価するために、口腔咽頭を介して食道に配置された拡散先端を有する光ファイバーを介して肺に光を送達する効果を探究した。食道の光ファイバーの肺に対する位置を最適化するために、
図29Aに示すように、生きて麻酔をかけ機械的に換気した25gのマウスのCTスキャンを捕捉した。肺の下部を照射するファイバの最適位置は、ファイバの端部が下顎切歯から3.9cmであったときに達した。
【0093】
400ppmのCOを1時間呼吸させた後、マウスを100%O2での換気単独によって又は肺の経食道光線療法と組み合わせて処置した。最初の5分間の処置中に排除されたCOの量は、
図29Bに示すように、食道光線療法(AUC:それぞれ2246±85対2030±83、p=0.001)、及びCOHb−t1/2は、
図29Cに示すように、100%O2(5.7±0.3対6.8±0.3分、p<0.001)を単独で呼吸したマウスよりも光線療法で有意に短かった。これらの結果は、食道光線療法が100%O2の呼吸単独と比較してCO除去率を増加させることを示している。
【0095】
本明細書に記載の光線療法システム及び方法の有効性をさらに試験するために、肺光線療法をマウスよりも約18倍の重さの動物であるラットで試験した。すべての動物実験は、マサチューセッツ州ボストンのマサチューセッツ総合病院の研究動物管理小委員会によって承認された。体重454±69g(平均±SD)の49匹の雄Sprague Dawleyラット(Charles River Laboratories、Wilmington、MA、USA)を試験した。ラットを腹腔内(i.p.)ケタミン(100mg/kg)及びフェンタニル(50mcg/kg)で麻酔した。気管切開後、ロクロニウム(1mg/kg)をi.p.注射した。筋弛緩を誘発し、ラットを機械的に換気した(Inspira; Harvard Apparatus、Holliston、MA、USA)。容量制御換気が、40呼吸/分、1回換気量10ml/kg、陽圧呼気圧(PEEP)2cmH2O及び吸入酸素分率(FIO2)0.21で提供された。カテーテルを頸動脈及び頸静脈に配置した。動脈血圧、心拍数、体温及びピーク気道圧を連続的にモニターした。継続的なi.v.麻酔及び筋弛緩は、フェンタニル(1.2-2.4mcg/kg/h)、ケタミン(10-20mg/kg/h)、ロクロニウム(2-4mg/kg/h)を含む。リンゲル乳酸塩は、8-12ml/kg/hの速度で注入した。
【0096】
直接光線療法がマウスより18倍重い動物のCO除去速度を増加させるかどうかを試験するために、ラットにおけるCO中毒のモデルを開発した。麻酔をかけ機械的に換気したラットを空気中500ppmのCOの呼吸で90分間被毒させた後、空気又は100%酸素で処置した。マウスの中毒期間中に観察されるように(
図23A及び23B)、呼気CO濃度はゆっくりと増加し、
図30Aに示すように、中毒の開始時にラットが大量のCOを吸収したことを示す。循環ヘモグロビンがCOで徐々に飽和するにつれて、少量のCOが時間をかけて吸収された。中毒後、ラットを100%酸素又は室内空気のいずれかを一定の分間の換気で呼吸することによって治療した。最初の30分間の100%酸素を呼吸させる処置の間、吐出されたCO濃度は空気を呼吸しているラットよりも有意に高く、この間に除去されたCOの計算量は有意に大きかった(3.8±0.1対2.0±0.3ml/kg、p<0.001)。これと並行して、ラットが100%酸素(100%酸素対室内空気:12.0±0.5対53.5±5.1分、p<0.001)を呼吸すると、
図30Bに示すように、血液COHbはより速く減少し、COHb-t1/2はより短かった。これらの結果は、CO中毒のラットモデルがCO除去の速度に対する種々の治療の効果を研究するのに適していることを示している。
【0097】
肺を直接照らすために、麻酔をかけたラットに中央開胸術を施した。Aura KTPレーザ(米国メディカルシステムズ、ミネソタ、ミネソタ、米国)により532nmの波長の光を発生させ、光ファイバーを介して両方の肺に送達した。ファイバーの先端を肺表面から10cmの距離に置いて、光ビームの面積が各肺の前面を照らすのに十分に広いようにした。レーザの出力は、54mW/cm2の放射照度で肺を照らすように設定した。
【0098】
光線療法がCO除去率を増加させるかどうかを試験するために、空気中で500ppmのCOを90分間呼吸させてラットを被毒させ、次いで直接肺光線療法を加えるか又は行わずに空気又は100%酸素を呼吸することによって治療した。
図31Aに示すように、動物を100%酸素又は室内空気のいずれかで処置した場合、肺光線療法の添加はCO除去率を有意に増加させたが、これは処置の最初の10分間に測定されたより多くの呼気COによって示される(100%酸素対100%酸素+光線療法:2.2±0.1対2.7±0.4ml/kg、p<0.05;空気対光線+光線療法:0.9±0.1対1.2±0.1ml/kg、p=0.01)。同時に、
図31Bに示すように、血液COHbレベルのより急速な減少があって(COHb−t1/2:100%酸素対100%酸素+光線療法:12.0±0.5対7.4±1.0分、p<0.001;空気対空気+光線療法:53.5±5.1対38.4±4.6分、p=0.004)。これらの結果により、直接肺光線療法が、空気又は100%酸素のいずれかを呼吸するラットにおいてCO除去の速度を増加させることが実証される。
【0099】
光線療法で観察されたCOHbレベルのより急速な低下が重度のCO中毒後の酸素送達及び代謝に対する有益な効果を有するかどうかを調べるために、血液中の乳酸塩濃度が7mmol/L以上に達するまで、ラットが空気中2000ppmのCOを呼吸するのに曝された。すべての動物は、呼吸COの50分以内に目標乳酸塩濃度に達し、次いで、光線療法を伴うか伴わずに空気呼吸で動物を治療した。
図32A及び32Bを参照すると、中毒期間中の平均動脈圧及び心拍数は、それぞれ107±3mmHg/mmHgから56±1mmHg、及び350±15mmHg/分から平均293±12mmH/分に低下した。治療中の平均動脈圧及び心拍数は、空気単独呼吸しているラットと比較して、光線療法処置ラットにおいて差異がなかった。重要なことに、光線療法による治療中にCOHbレベルがより速く低下した。血液中の乳酸塩の濃度は、
図32C及び
図32Dに示すように、室内空気単独と比較して、光線療法及び室内空気による治療の20、40及び60分後でも低かった(20分:3.7±0.5対5.8±0.4mmol/L、p=0.01;40分:1.6±0.2mmol/L、4.1±0.9mmol/L、p=0.009;60分:1.0±0.1対3.2±1.0mmol/L、p=0.02)。これらの結果は、空気を呼吸し、肺光線療法で治療したCO被毒ラットが乳酸クリアランスを改善したことを示す。
【0100】
等炭酸ガス性過換気と肺光線療法との組み合わせがCO除去率を増加させるかどうかを調べるために、麻酔し機械的に換気したラットに空気中で500ppmのCOを90分間呼吸させて中毒させた後、54mW/cm2の直接肺光線療法を行うか又は行わずに等炭酸ガス性過換気で処置した。一定の動脈PaCO2を維持し低炭酸ガス症を回避するために5%CO2を添加することにより、わずかに低い吸入酸素濃度(約95%対100%)にもかかわらず、等炭酸ガス性過換気で治療した動物の血液COHbレベルは、正常な分時換気率(COHb−t1/2:7.1±0.4対12.0±0.5分、p<0.001)で100%酸素で処置した動物に比べて、さらに急速な減少を示した。直接肺光線療法と等炭酸ガス性過換気との組み合わせは、等炭酸ガス性過換気単独と比較して、治療の最初の10分間に大量のCOが排除されたことにより示されるように、
図33Aに示すようにCO除去率を増加させた(等炭酸ガス性高換気+光線療法対等炭酸ガス性高換気単独:±0.6対4.2±0.3ml/kg、p=0.001)。また、
図33Bに示すように、減少したCOHb−t1/2(5.2±0.5対7.1±0.4分、p=0.002)が観察された。これらの結果は、増加した分の換気がラットにおけるCO除去の速度を増加させることを示す。さらに、肺光線療法と等炭酸ガス性過換気とを95%の酸素と組み合わせることにより、CO除去率をさらに高めることができる。
【0101】
ラットの左右の胸膜腔に全方向に光を放射する3.5cmの長さの拡散先端を配置した2本の光ファイバーを用いて、胸腔内光線療法を試験した。麻酔し機械的に換気した仰臥位ラットにおいて、左右のヒポコンドリア領域の腹壁に1.5cmの切開を行った。腹腔及び横隔膜を露出させた後、2つの2mmの切開を横隔膜に行い、1本の光ファイバーを左右の胸膜腔に配置した。各肺に十分なパワーを照射するために、右のファイバーをAura KTPレーザに接続し、左のファイバーを周波数を2倍にしたNd:YAGレーザ(IRIDEX Corp., Mountain View, CA)に接続し、両方のレーザは532nmの光を発生する。拡散光ファイバによって放射される光のパワーは、570(右胸膜腔)及び450(左胸膜腔)mWであった。
【0102】
直接肺照射によるCO中毒を治療するために、肺への光送達への胸腔内アプローチを採用した。500ppmのCOによる中毒の90分後、ラットを胸腔内光線療法を行うか又は行わずに100%酸素で処置した。100%酸素単独で処置したラットと比較して、100%酸素と組み合わせた胸腔内光線療法は、
図34Bに示すように、処置の最初の10分間でより多くのCO除去量と関連し(2.4±0.2対2.1±0.1ml/kg、p=0.009)、
図34Aに示すように、より短いCOHb-t1/2であった(9.8±0.5対11.7±0.3分、p<0.001)。これらの結果は、胸腔内光線療法が、CO被毒ラットにおいて100%酸素を呼吸する際のCO除去率を高めることができることを実証している。
【0103】
化学発光によって生成された光がインビボでCOを解離しCO除去速度を増加させるかどうかを試験した。化学発光反応により生じた光スペクトルを分光光度計で測定したところ、
図35に示すように、ピーク波長517nm、中心波長532nm(バンド幅(90%)=110nm)を示した。開胸で麻酔したラットにおいて、特別製作された透明なポリエチレンザックを個々の肺の周りに置いた。各ザックは、化学発光性流体をザックに注入することができる小さなカテーテルを有していた。CO中毒の90分後に、動物が100%酸素を呼吸している間に発光性流体をポリエチレンバッグに注入した。対照動物では、ポリエチレンバッグに等容量の生理食塩水を充填した。
【0104】
化学発光アプローチの有効性を試験するために、CO被毒ラットにおけるCO除去速度を測定した。空気中で500ppmのCOを呼吸させることによりCO中毒を90分間行った後、2つの透明なザックに注入された化学発光流体によって放出された光の有無で、100%酸素でラットを治療した。治療の最初の10分間に吐き出されるCOの量は、100%酸素のみを呼吸するラット(2.4±0.1対2.1±0.1ml/kg)と比較して、
図36Bに示すように、100%酸素及び化学発光により生成された光線療法で処置したラットにおいて大きかったし、COHb-t1/2は有意に短かった(10.1±0.6対11.5±0.3分、p=0.011)。これらの結果は、両方の胸膜腔での化学発光反応によって生成された緑色光を提供することにより、CO除去速度を増加させることができ、保護された化学発光光源が肺に照射するのに用いられることを示唆している。
【0105】
したがって、本発明は、特定の実施形態及び実施例に関連して上述されたが、本発明は必ずしもそのように限定されず、多くの他実施形態、実施例、使用、変態、及び該実施形態、実施例、使用からの乖離が、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。本明細書に引用される各特許及び刊行物の全開示は、そのような各特許又は刊行物が個々に参照により本明細書に組み込まれるかのように、参照により組み込まれる。