特許第6806716号(P6806716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイナミック フード イングリディエンツ コーポレーションの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806716
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】2,4−ジヒドロキシ酪酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/00 20060101AFI20201221BHJP
   C07C 59/10 20060101ALI20201221BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C07C51/00
   C07C59/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-566358(P2017-566358)
(86)(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公表番号】特表2018-520138(P2018-520138A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】US2016039282
(87)【国際公開番号】WO2016210281
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年6月18日
(31)【優先権主張番号】62/204,796
(32)【優先日】2015年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/184,571
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508233548
【氏名又は名称】ダイナミック フード イングリディエンツ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】DYNAMIC FOOD INGREDIENTS CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステイプレイ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンダース,デビット
【審査官】 池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−514433(JP,A)
【文献】 特表2009−526131(JP,A)
【文献】 特開2005−154302(JP,A)
【文献】 Gakhokidze, R. A.,Acid Transformation of Hydroxy Aldehydes, Hydroxy Ketones, and Aldoses by the Danilov-Venus-Danilova Reaction,ZHURNAL OBSHCHEI KHIMII,1976年,vol.46, no.7,pp.1620-1628,特に、第1622頁第10-13行、第1625頁第22−42行
【文献】 Richards, G. N.,Four-carbon Saccharinic Acids from the Alkaline Degradation of 3-O-Methyl-L-glycerotetrulose and 4-O-Methyl-D-threose,Journal of The Chemical Society,1957年,pp.3222-3227,特に、第3225頁第47行−第3226頁第7行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00
C07C 59/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中で四炭糖及び水酸化物塩(水酸化鉛を除く)を混合することを含む、2,4-ジヒドロキシブチラートを製造する方法であって、
四炭糖が、エリトロース、トレオース又はエリトルロースである、方法
【請求項2】
四炭糖がトレオース又はエリトルロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶液の温度が100℃未満に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
四炭糖が釈されて、40%を超えるDHBのモル収率が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
四炭糖がDHBを含む溶液で希釈される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
連続反応器システムで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶液の水酸化物濃度が、0.1Mから4Mある、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶液の温度が100℃未満に維持される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
四炭糖がDHBを含む溶液で希釈される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶液から酸素を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
窒素、アルゴン及びその混合物からなる群から選択されるガスを溶液に通気することにより酸素を除去する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水素を溶液に通気することにより酸素を除去する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
四炭糖がエリトロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エリトロースが1種以上の他の有機酸塩を含む溶液で希釈される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
連続反応器システムで行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
エリトロースがDHBを含む溶液で希釈される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
溶液の温度が100℃未満に維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
エリトロースが1種以上の他の有機酸塩を含む溶液で希釈される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
連続反応器システムで行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
溶液から酸素を除去することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
溶液中で四炭糖及び水酸化物塩を混合することを含む、2,4-ジヒドロキシブチラートを製造する方法であって、
四炭糖がDHBを含む溶液で希釈される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリトロース及び他の4炭素の糖類からの2,4-ジヒドロキシブチラートの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
2,4-ジヒドロキシブチラート(2,4-DHB又はDHBとも称される)は、非常に有用な不斉中間体であり、経済的な関心が高い。DHBは、水性媒体中で適切なpHに調製することにより、容易にα-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンに転換する。特許文献1に記載されているように、α-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンは、家畜栄養で大きな市場を有しているメチオニン代用品、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)-ブチラート(HMTB)の製造のための卓越した前駆体である。DHBはまた、3-ヒドロキシプロパナール、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-プロパンジオール、及びマロン酸等のバイオ再生可能化学物質の有望な前駆体である。DHBは、特許文献2〜4に記載されているような、複雑な代謝工学の手法を使用して製造されてきた。そのような代謝工学の手法は、高価な原材料と複雑な反応条件とを必要とする。他の合成ルートは、特許文献5に記載されているようなHMTB等の高価な原材料を使用している。費用効果があるDHB製造方法の必要性が残されている。
【0003】
アルカリ性条件での糖類の反応は19世紀以来研究されてきた。糖類は、酸素の存在下と嫌気性条件との両方で、複雑な経路で水酸化物と反応する。例えば、ブドウ糖又は果糖は、アルカリ性水溶液中で酸素ガスと反応し(例えば、特許文献6及び7に記載されており参照されたい)、1-2炭素の結合は破断され、主として(炭素1から)ギ酸及び(炭素2-6から)アラボン酸を産生する。また、非特許文献1に記載されているように、大量の短い炭素鎖の酸もまた生成される。非特許文献2及び3に記載されているように、アルカリ性条件での糖類の嫌気性反応は、通常は分解と言われ、分析困難であるが少量のDHBを含む反応生成物の複雑な混合物をもたらす。さらに、クラスIのカラメル色素等の化合物は、嫌気性条件でブドウ糖を水酸化物と反応させることにより創出される。特許文献8に記載されているように、緩やかなアルカリ性条件下では、ブドウ糖は単に果糖に異性化されるに過ぎないことが既知である。酸素は水にわずかに可溶であるので、分解は大気に開放された時に起こることが多い。
【0004】
エリトロース等の四炭糖からのDHB製造のための費用効果のある方法の必要性が、当技術分野には残っている。エリトロースそれ自身は四炭希少糖であり、特許文献9に記載されているような、電気化学的脱炭酸により最近大規模に製造されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0318715号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0273623号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2841584号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2872640号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2013/0204016号明細書
【特許文献6】米国特許第4,125,559号明細書
【特許文献7】米国特許第5,831,078号明細書
【特許文献8】米国特許第3,256,270号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0181437号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tapani Vuorinen, "Cleavage of the Intermediate Hydroperoxides in the Oxidation of D-Glucose and D-Fructose with Oxygen," Carbohydrate Research, 141(1985): 319-332
【非特許文献2】Byung Yun Yang and Rex Montgomery, "Alkaline Degradation of Glucose: Effect of Initial Concentration of Reactants," Carbohydrate Research, 280(1996), 27-45
【非特許文献3】J. F. Harris, "Alkaline Decomposition of D-Xylose-1-14C, D-Glucose-1-14C, and D-Glucose-6-14C," Carbohydrate Research, 23(July 1972): 207-215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、糖類をアルカリ性溶液中で反応させることにより四炭糖を4炭素のDHBに転換する方法を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、四炭糖及び水酸化物塩を溶液中で混合することを含む、2,4-ジヒドロキシブチラートの製造方法を開示する。いくつかの実施形態では、四炭糖はトレオース又はエリトルロースでもよい。いくつかの実施形態では、溶液の温度は100℃未満に維持される。いくつかの実施形態では、四炭糖を十分に希釈して、40%を超えるDHBのモル収率を得る。四炭糖はDHBを含む溶液で希釈してもよい。いくつかの実施形態では、方法は連続反応器システムで実施する。いくつかの実施形態では、溶液の水酸化物濃度は約0.1Mから約4Mの間でもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は溶液から酸素を除去することを含む。窒素、アルゴン及びその混合物から選択されるガスを溶液に通気することにより酸素を除去してもよい。また、水素を溶液に通気することにより酸素を除去してもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、四炭糖はエリトロースである。エリトロースは1種以上の他の有機酸塩を含む溶液で希釈してもよい。エリトロースはDHBを含む溶液で希釈してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
「エリトロース」は、C4H8O4の化学式を有する糖質アルデヒドであるアルドース(四炭糖)を意味し、任意の立体異性体、誘導体及びそれらの類似体を含む。別段の指示が無い限り、本明細書での「エリトロース」の記載は、限定するものではないが、D-(-)-エリトロース、L(+)-エリトロース、D-エリトロース、L-エリトロース、及びメソ-エリトロースの分子を含むことを意図する。D-エリトロース構造(1)のフィッシャー投影図を以下に示す。
【0012】
【化1】
【0013】
「トレオース」は、C4H8O4の化学式を有する糖質アルデヒドであるアルドース(四炭糖)を意味し、任意の立体異性体、誘導体及びそれらの類似体を含む。別段の指示が無い限り、本明細書での「トレオース」の記載は、限定するものではないが、D-(-)-トレオース、L(+)-トレオース、D-トレオース、L-トレオース、及びメソ-トレオースの分子を含むことを意図する。
【0014】
「エリトルロース」は、C4H8O4の化学式を有する糖質ケトンであるケトース(テトルロース)を意味し、任意の立体異性体、誘導体及びそれらの類似体を含む。別段の指示が無い限り、本明細書での「エリトルロース」の記載は、限定するものではないが、D-(-)-エリトルロース、L(+)-エリトルロース、D-エリトルロース、L-エリトルロースの分子を含むことを意図する。
【0015】
「2,4-ジヒドロキシブチラート」(2,4-DHB又はDHBとしても既知である)は、有機酸であり、C4H8O4の化学式を有する糖質テトロン酸又はその塩を意味し、任意の立体異性体、誘導体及びそれらの類似体を含む。別段の指示が無い限り、本明細書での「2,4-ジヒドロキシブチラート」(2,4-DHB又はDHBとしても既知である)の記載は、限定するものではないが、(S)-2,4-ジヒドロキシブチラート、(R)-2,4-ジヒドロキシブチラート、メソ-2,4-ジヒドロキシブチラート、及び3-デオキシテトロン酸塩の分子を含むことを意図する。
【0016】
本明細書で使用するように、「誘導体」は、化合物の化学的又は生物学的に修飾された変形を意味し、親化合物と構造的に類似し、(実際に又は理論的に)その親化合物から導き出せる。誘導体は、親化合物と異なる化学的又は物理的特性を有することも、有しないこともある。例えば誘導体は、親化合物と比べてより親水性であることもあり、変化した反応性を有することもある。誘導体化(すなわち修飾)は、分子内の1つ以上の部分の置換(例えば、官能基の変更)を必要としてもよいが、それは所望の目的のために分子の機能を実質的に変更するものではない。用語「誘導体」はまた、すべての溶媒和物、例えば水和物又は付加物(例えばアルコールでの付加物)、活性代謝物、及び親化合物の塩を記載するために使用する。調製することができる塩の種類は、化合物の中の部分の性質に依存している。例えば酸性基は、例えばカルボン酸基であるが、例えばアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩、また並びに四級アンモニウムイオンの塩及びアンモニアの酸付加塩、並びに例えば、トリエチルアミン、エタノールアミン又はtris-(2-ヒドロキシエチル)アミン等の生理的に許容できる有機アミン)を形成できる。塩基性基は、例えば塩酸、硫酸もしくはリン酸等の無機酸と、又は酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸もしくはp-トルエンスルホン酸等の有機のカルボン酸及びスルホン酸と、酸付加塩を形成できる。塩基性基及び酸性基を同時に含む化合物、例えば塩基性の窒素原子に加えたカルボキシル基も双性イオンとして存在できる。塩は当業者に既知の通例の方法で、例えば溶媒もしくは希釈剤中で無機もしくは有機の酸もしくは塩基と化合物を結合することにより、又は陽イオン交換もしくは陰イオン交換により他の塩から、得ることができる。
【0017】
本明細書で使用するように、「類似体」は他のものに構造的に類似しているが、組成がわずかに違う(1個の原子を異なる元素の原子と置換する、又は特定の官能基が存在するような)化学的化合物を意味するが、親化合物から誘導されても、そうでなくてもよい。親化合物が「誘導体」を生成するための出発物質であるが、一方「類似体」を生成するための出発物質として親化合物は必ずしも使用されなくてもよい、という点で「誘導体」は「類似体」と異なる。
【0018】
本明細書で述べる任意の濃度の範囲、割合の範囲、又は比率の範囲は、別段の指示が無い限り、その範囲内の任意の整数及びそれらの小数部分、例えば整数の10分の1及び100分の1の濃度、割合又は比率を含むと理解されるべきである。また、ポリマーのサブユニット、大きさ又は厚み等の、任意の物理的特徴に関する本明細書で述べる任意の数値範囲は、別段の指示が無い限り、述べられた範囲内の任意の整数を含むと理解されるべきである。本明細書の上記及び他の所で使用されるような用語「a」及び「an」は、挙げられた成分の「1つ以上」を意味すると理解すべきである。例えば、「a」ポリマーは、1種のポリマー又は2種以上のポリマーを含む混合物を意味する。本明細書で使用するように、用語「約」は、関連する目的又は機能に対しては実質的ではない差異を意味する。
【0019】
アルカリ性転換
四炭糖をDHBに転換するプロセスを以下に記載する。いくつかの実施形態では、四炭糖は、水酸化物イオンがアルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはアンモニウムの塩、又は塩の溶液の形態で添加される溶液として提供できる。これらの反応でのDHBの収率は、糖の濃度及び水酸化物の濃度によって大きく影響される。所与の温度では、四炭糖濃度を減少させることがDHB収率を増加させる結果となり、水酸化物の濃度を増加させることはDHB収率を増加させる結果となる。同一の水酸化物濃度では、温度を増加させることはDHB収率を増加させる結果となる。いくつかの実施形態では、エリトロースを四炭糖として提供できる。他の実施形態では、トレオース又はエリトルロースを四炭糖として提供できる。一実施形態では、溶液を窒素、水素もしくはアルゴン又はその混合物等のガスでパージして、溶液から酸素を除去する。
【0020】
いくつかの実施形態では、四炭糖を希釈するのに十分な溶液を保持する連続反応器内に四炭糖の溶液を導入することによる四炭糖のDHBへのアルカリ性転換は、結果としてDHBの高い収率をもたらす。そのような反応器では、四炭糖は、水酸化物塩、DHB、及び/又は他の有機酸塩を含む溶液により希釈されることになる。反応器は、溶液を特定の温度に維持する手段、及び四炭糖の溶液、水酸化物塩の溶液を導入する手段、及び生成物を取り除く手段を備える。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
1リットル当たり153グラムのエリトロース水溶液を用意した。表1は、エリトロース溶液の示された量を1Mの水酸化ナトリウム水溶液の10mlに添加した実験結果を提示する。混合物を示された温度で60分間撹拌した。
【0022】
【表1】
【0023】
[実施例2]
1リットル当たり156グラムのエリトロース水溶液を用意した。1mLのエリトロース溶液を表2で示された水酸化物溶液の100mLに添加し、40℃で60分間撹拌した。
【0024】
【表2】
【0025】
[実施例3]
1リットル当たり153グラムのエリトロース水溶液を用意した。1mLのエリトロース溶液を、4Mの水酸化ナトリウム溶液であって、アラボン酸ナトリウムである有機酸塩の2.4Mの濃度をも有する溶液の100mLに添加した。溶液を40℃で60分間混合した。DHBは、58%を超える分子収率を示す量であった。
【0026】
[実施例4]
4MのNaOHを含む100mlの反応器を用意し、50℃に加熱した。1リットル当たり80グラムのエリトロース水溶液を用意した。毎分1mLのエリトロース溶液を反応器に添加し、毎分0.19mLの速度で45%のNaOHを添加した。1mlのエリトロース溶液を4Mの水酸化ナトリウム溶液に添加し、アルゴン下で撹拌した。溶液を30℃で60分間維持した。反応器の容量は、実験を通して一定に維持した。4時間後に反応器中の溶液をHPLCで分析すると、DHBは46%の分子収率を示す量であった。
【0027】
[実施例5]
ヘッドスペースに中空軸混合器を伴う1Lの高圧反応器を用意した。700mLの4MのNaOH溶液を用意し、反応器を50℃に加熱した。その後反応器を表3に要約したガスで750psiに加圧した。その後1リットル当たり136gのエリトロース溶液の7mLを反応器に添加した。60分後、次いで溶液をHPLCで分析した。
【0028】
【表3】
【0029】
[実施例6]
100mgのトレオースを4Mの水酸化ナトリウム溶液の50mLに添加し、40℃で60分間撹拌した。DHBは、56%を超える分子収率を示す量であった。
【0030】
[実施例7]
1リットル当たり152グラムのエリトルロース水溶液を用意した。1mLのエリトルロース溶液を2MのNaOH溶液の100mLに添加した。その後溶液を50℃で15分間撹拌した。DHBは、65%の分子収率を示す量であった。
【0031】
[実施例8]
1リットル当たり136グラムのエリトロース水溶液を用意した。1mLのエリトロース溶液を4MのNaOH溶液の200mLに、水素のヘッドスペースの下で添加した。その後溶液を40℃で表4に示した時間の間、撹拌した。DHB収率もまた表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
[実施例9]
1リットル当たり132グラムのエリトロース水溶液を用意した。1mLのエリトロース溶液を1MのBaOHの100mLに添加した。その後溶液を60℃で100分間撹拌した。DHBは、20%の分子収率を示す量であった。
【0034】
[実施例10]
1リットル当たり135グラムのエリトロース水溶液を用意した。1mLのエリトロース溶液を、表5に示した濃度のNaOH溶液の100mLに添加した。その後溶液を50℃で35分間撹拌した。DHBは、表5に示す分子収率を示す量であった。
【0035】
【表5】
【0036】
[実施例11]
1リットル当たり135グラムのエリトロース水溶液を用意した。1mLのエリトロース溶液を飽和水酸化鉛溶液の100mLに添加した。その後溶液を50℃で60分間撹拌した。DHBを定量すると、反応溶液中にDHBは存在しなかった。
【0037】
本発明が前述の実施例の詳細には限定されず、本発明がその本質的な属性から離れることなく他の特定の形態で具体化されることがあることは、当業者には明かであろう。そのため、本実施形態及び本実施例はすべての点で例示であり限定ではないと見なされ、参照は前述の説明に対してではなく、添付の特許請求の範囲に対してなされ、特許請求の範囲の均等物の目的及び範囲の内に入るすべての変化はそのため、特許請求の範囲の中に包含されると意図されていることが望まれる。
【0038】
ステートメント
1. 溶液中で四炭糖及び水酸化物塩を混合することを含む、2,4-ジヒドロキシブチラートを製造する方法。
2. 四炭糖がエリトロースである、1の方法。
3. 四炭糖がトレオース又はエリトルロースである、1の方法。
4. 溶液の水酸化物濃度が、0.1Mから4Mの間である、1〜3のいずれか1つの方法。
5. 溶液の温度が100℃未満に維持される、1〜4のいずれか1つの方法。
6. 四炭糖が十分に希釈されて、40%を超えるDHBのモル収率が得られる、1〜5のいずれか1つの方法。
7. 四炭糖がDHBを含む溶液で希釈される、1〜6のいずれか1つの方法。
8. エリトロースが、1種以上の他の有機酸塩を含む溶液で希釈される、1〜7のいずれか1つの方法。
9. 連続反応器システムで行われる、7〜8のいずれか1つの方法。
10. 溶液から酸素を除去することをさらに含む、1〜9のいずれか1つの方法。
11. 窒素、アルゴン及びその混合物からなる群から選択されるガスを溶液に通気することにより酸素を除去する、10の方法。
12. 水素を溶液に通気することにより酸素を除去する、10の方法。
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
溶液中で四炭糖及び水酸化物塩を混合することを含む、2,4-ジヒドロキシブチラートを製造する方法。
[実施形態2]
四炭糖がトレオース又はエリトルロースである、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
溶液の温度が100℃未満に維持される、実施形態1に記載の方法。
[実施形態4]
四炭糖が十分に希釈されて、40%を超えるDHBのモル収率が得られる、実施形態1に記載の方法。
[実施形態5]
四炭糖がDHBを含む溶液で希釈される、実施形態1に記載の方法。
[実施形態6]
連続反応器システムで行われる、実施形態1に記載の方法。
[実施形態7]
溶液の水酸化物濃度が、0.1Mから4Mの間である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態8]
溶液の温度が100℃未満に維持される、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]
四炭糖がDHBを含む溶液で希釈される、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]
溶液から酸素を除去することをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態11]
窒素、アルゴン及びその混合物からなる群から選択されるガスを溶液に通気することにより酸素を除去する、実施形態10に記載の方法。
[実施形態12]
水素を溶液に通気することにより酸素を除去する、実施形態10に記載の方法。
[実施形態13]
四炭糖がエリトロースである、実施形態1に記載の方法。
[実施形態14]
エリトロースが1種以上の他の有機酸塩を含む溶液で希釈される、実施形態13に記載の方法。
[実施形態15]
連続反応器システムで行われる、実施形態13に記載の方法。
[実施形態16]
エリトロースがDHBを含む溶液で希釈される、実施形態13に記載の方法。
[実施形態17]
溶液の温度が100℃未満に維持される、実施形態13に記載の方法。
[実施形態18]
エリトロースが1種以上の他の有機酸塩を含む溶液で希釈される、実施形態17に記載の方法。
[実施形態19]
連続反応器システムで行われる、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]
溶液から酸素を除去することをさらに含む、実施形態19に記載の方法。