(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下、本明細書において、同一機能を有するものは、特に断らない限り、同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0012】
<<第一の実施形態>>
本発明の第一の実施形態を説明する。本実施形態では、緊急時や点検時等に保守作業員(以下、作業員)が外部開放治具でエレベーターの乗り場ドアを外部から開放する際、乗りかご位置が適切な位置にあるか否かが判別可能な注意喚起出力を行う。
【0013】
なお、以下、本明細書において、乗りかごの位置が適切とは、保守作業時、手動でかごドアを開けた場合、作業員が安全に乗り込める位置に乗りかごがある状態を意味する。一方、乗りかごの位置が不適切とは、手動でかごドアを開けた場合、乗りかごの天井までの距離が大きく、作業員が安全に乗り込めない位置、または、足下に乗りかごの天井がなく、作業員が昇降路内に落下する可能性のある位置に乗りかごがある状態を意味する。
【0014】
まず、本実施形態のエレベーターシステム100の全体構成を説明する。以下においては、本実施形態の処理を説明するために必要な構成に主眼をおいて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のエレベーターシステム100の全体構成図である。本実施形態のエレベーターシステム100は、乗りかご105と、乗り場ドア103と、かごドア104と、伝送線110と、釣り合い錘113と、巻上機112と、制御盤120と、主ロープ106と、外部開放時安全システム190と、を備える。
【0016】
エレベーターシステム100では、乗りかご105は、主ロープ106を介して釣り合い錘113と連結される。乗りかご105と釣り合い錘113とは、主ロープ106を巻上機112で駆動することで、昇降路108内を釣瓶式に昇降する。巻上機112は、制御盤120から伝送線110を介して送信される制御信号に従って駆動される。すなわち、制御盤120は、乗りかご105の走行動作を制御する。
【0017】
乗り場ドア103は、各階の乗り場107に設置される。また、かごドア104は、乗りかご105に配置される。平常運転時、伝送線110を介した制御盤120からの指示で、乗り場ドア103およびかごドア104は動作する。例えば、乗りかご105が、目的階に到着した際、かごドア104と乗り場ドア103とが連動して開閉するよう制御される。一方、保守運転時は、手動で開閉可能なよう、各ドアに対する制御が解除される。
【0018】
[外部開放時安全システム]
外部開放時安全システム190は、緊急時や点検時等、作業員109が、乗り場107から、乗り場ドア103を開放する際、乗りかご105が適切な位置にあるか否かを判別可能な注意喚起出力を行う。本実施形態の外部開放時安全システム190は、外部開放治具200と、携帯端末300と、ビーコン400と、を備える。
【0019】
[外部開放治具]
外部開放治具200は、保守点検時、乗り場ドア103の、図示しないキー穴に差し込み、乗り場ドア103を、乗り場107側から開放する。このとき、本実施形態の外部開放治具200は、キー穴に差し込まれると、携帯端末300に信号を出力する。そして、送信先の携帯端末300から乗りかごの位置の適否の情報を受け取り、それに応じた出力を行う。
【0020】
以下、本実施形態の外部開放治具200について説明する。
【0021】
図2(b)は、本実施形態の外部開放治具200の正面図である。
図2(a)は、
図2(b)のA−A’断面図である。また、
図2(c)は、外部開放治具200のハードウェア構成図である。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態の外部開放治具200は、差込部230と、本体部260と、を備える。また、差込部230は、認識装置210を備える。さらに、本実施形態の外部開放治具200は、出力装置220と、通信装置240と、基板250と、電源部290と、を備える。出力装置220と、基板250と、電源部290とは、例えば、本体部260に収納される。
【0023】
基板250は、外部開放治具200の動作を制御する制御部と制御に必要な各種のデータを保持する記憶部として機能する。制御部による制御の詳細は、後述する。
【0024】
基板250は、
図2(c)に示すように、例えば、CPU256と、RAM257と、ROM258と、外部インタフェース(I/F)259と、を備える。後述する、基板250により実現される各機能は、例えば、CPU256が、ROM258に予め記憶されたプログラムを、RAM257にロードして実行することにより、実現する。
【0025】
通信装置240、認識装置210、出力装置220は、外部I/F259を介して接続される。なお、上記各機能の全部または一部は、電気回路等で実現されてもよい。
【0026】
通信装置240は、外部装置との通信を行う。本実施形態では、携帯端末300と、近距離無線通信を行う。本実施形態では、例えば、数mから数十m程度の距離の情報機器間で、電波を使って簡易な情報の送受信を行うために用いられるBluetooth(登録商標)等の規格に基づく通信を行う。
【0027】
認識装置210は、外部開放治具200をキー穴に差し込んだことを検出し、検出信号を基板250に出力する。認識装置210には、例えば、圧力を検出する圧力センサ等が用いられる。
【0028】
出力装置220は、例えば、光を出力する照明221(
図3参照)および音声を出力するブザー222(
図3参照)の少なくとも一方を備える。出力装置220は、基板250からの指示に従って、注意喚起出力を行う。
【0029】
電源部290は、基板250、出力装置220、認識装置210等に駆動電力を供給する。本実施形態では、例えば、外部電池等のバッテリで実現される。
【0030】
[携帯端末]
携帯端末300は、作業員109が保守時に携帯する端末である。保守作業に必要な各種の処理を行う。また、本実施形態では、ビーコン400が発信する位置信号を受け取り、乗りかご105の位置の適否を判断し、判断結果を外部開放治具200に送信する。適否の判断の詳細は、後述する。
【0031】
携帯端末300は、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えた制御部と、表示部および操作入力部を兼ねた表示装置と、音声出力装置と、通信装置とを備えた、例えば、一般の可搬型情報処理装置で実現できる。なお、携帯端末300の形状、態様は問わない。例えば、装着型の情報処理装置であってもよい。
【0032】
[ビーコン]
ビーコン400は、乗りかご105に配置され、位置を特定可能な位置信号として発信する発信器である。発信する位置信号は、例えば、電波、赤外線等の高周波の電磁波である。
【0033】
本実施形態では、ビーコン400は、保守作業に先立ち、取り付けられる。ビーコン400は、例えば、本実施形態では、乗りかご105の天井に取り付けられる天井ビーコン400uと、乗りかごの床下に取り付けられる床下ビーコン400dと、を備える。天井ビーコン400uおよび床下ビーコン400dは、それぞれ、例えば、乗りかご105に供給される電源から、電力を得る。
【0034】
天井ビーコン400uから発信される位置信号と、床下ビーコン400dから発信される位置信号とは、それぞれ、識別可能とする。例えば、天井ビーコン400uと床下ビーコン400dとは、それぞれ、異なる周波数の位置信号を出力する。
【0035】
なお、本実施形態のビーコン400は、例えば、180度の指向性を有するものとする。従って、天井ビーコン400uから発信される信号は、乗りかご105より上部で受信可能である。また、床下ビーコン400dから発信される信号は、乗りかご105よりも下部で受信可能である。以下、天井ビーコン400uと床下ビーコン400dとを区別する必要がない場合は、ビーコン400で代表する。
【0036】
[機能ブロック]
次に、本実施形態の外部開放治具200および携帯端末300の、外部開放時安全システム190に関する機能構成について説明する。
図3は、本実施形態の外部開放治具200および携帯端末の、外部開放時安全システム190に係る機能の、機能ブロック図である。
【0037】
本図に示すように、本実施形態の外部開放治具200の基板250(制御部)は、操作検出部251と、報知制御部252と、を備える。
【0038】
操作検出部251は、外部開放治具200が、かぎ穴に差し込まれたことを検出し、通信装置240を介して携帯端末300に出力する。操作検出部251と、認識装置210とにより、操作検出装置を構成する。
【0039】
本実施形態では、操作検出部251は、認識装置210から検出信号を受信すると、操作信号を生成し、携帯端末300へ出力する。なお、以下、本実施形態では、乗り場ドア103を解錠するため、外部開放治具200をかぎ穴に差し込む操作を、開放操作と呼ぶ。
【0040】
報知制御部252は、通信装置240を介して携帯端末300から乗りかご105の位置の適否を示す判定信号を受信すると、判定信号に応じた出力をするよう出力装置220に指示を行う。判定信号に応じた出力制御は、後述するROM258等に、予め格納しておく。報知制御部252と、出力装置220とにより、報知装置を構成する。
【0041】
本実施形態では、位置が不適切であることを意味する判定信号を受信した場合、注意を喚起する出力、例えば、警告出力等を行うよう指示する。具体的には、例えば、照明221を点滅させたり、ブザー222から警告音を発したりする。
【0042】
一方、位置が適切であることを意味する判定信号を受信した場合、安全であることを報せる出力、すなわち、乗り場ドア103を開放可能であることを意味する出力を行うよう指示する。具体的には、照明221を消灯させたり、緑色で点灯させたりする。なお、位置が適切であることを意味する判定信号を受信した場合、出力は行わなくてもよい。
【0043】
携帯端末300は、通信部310と、信号受信部320と、かご位置判定部331と、判定信号生成部332と、出力制御部333と、を備える。
【0044】
通信部310は、外部開放治具200との信号の送受信を行う。本実施形態では、例えば、操作信号を受信し、判定信号を出力する。また、信号受信部320は、ビーコン400からの位置信号を受信する。
【0045】
かご位置判定部331は、通信部310を介して操作信号を受信すると、ビーコン400から受信した位置信号を用い、携帯端末300のビーコン400に対する相対位置を算出し、乗りかご105の位置の適否を判別する。
【0046】
本実施形態では、例えば、床下ビーコン400dから位置信号を受信した場合、かご位置判定部331は、不適切と判定する。また、天井ビーコン400uから位置信号を受信した場合、かご位置判定部331は、位置信号から、天井ビーコン400uと携帯端末300との距離を算出する。そして、算出した距離が、予め定めた閾値Th未満の場合、かご位置判定部331は、適切と判定する。一方、閾値Th以上の場合、不適切と判定する。また、天井ビーコン400uからも、床下ビーコン400dからも位置信号を受信しない場合は、かご位置判定部331は、適切と判定する。かご位置判定部331の判定の詳細は、後述する。
【0047】
判定信号生成部332は、かご位置判定部331の判定結果に応じた判定信号を生成し、通信部310を介して外部開放治具200へ出力する。
【0048】
なお、携帯端末300の各機能は、予めROM等の記憶装置に記憶されたプログラムをCPUがメモリにロードして実行することにより実現される。処理に必要な各データは、ROM等の記憶装置に格納される。
【0049】
なお、携帯端末300の通信部310と、外部開放治具200の通信装置240とは、信号送受信に先立ち、ペアリングしておく。
【0050】
[外部開放時安全確認処理]
次に、本実施形態の外部開放治具200と、携帯端末300と、ビーコン400とによる、外部開放時安全確認処理の流れを説明する。
図4は、本実施形態の外部開放時安全確認処理の処理フローである。
【0051】
本処理は、外部開放治具200が、乗り場ドア103のキー穴に差し込まれたことを契機に開始する。すなわち、認識装置210が開放操作を検出したことを契機に開始される。
【0052】
操作検出部251は、認識装置210が開放操作を検出すると(ステップS1101)、操作信号を生成し、通信装置240を介して、携帯端末300に送信する(ステップS1102)。
【0053】
携帯端末300側では、通信部310を介して操作信号を受信すると(ステップS1201)、信号受信部320は、そのタイミングで、ビーコン400から発信される位置信号を取得(受信)する(ステップS1202)。
【0054】
かご位置判定部331は、受信した位置信号を用い、乗りかご105の位置の適否を判別する(ステップS1203)。そして、判定信号生成部332は、判別結果を判別信号として生成し、通信部310を介して外部開放治具200に送信する(ステップS1204)。
【0055】
外部開放治具200側では、通信装置240を介して判別結果を受信すると(ステップS1103)、報知制御部252は、判別結果に応じた報知出力を行い(ステップS1104)、処理を終了する。
【0056】
なお、ステップS1104において、判別結果が不適切である場合のみ、出力するよう制御してもよい。
【0057】
[かご位置適否判別処理]
次に、本実施形態の携帯端末300のかご位置判定部331による乗りかご105の位置の適否を判別するかご位置適否判別処理の流れを説明する。
図5は、本実施形態のかご位置適否判別処理のフローチャートである。また、
図6は、かご位置適否判別処理を説明するための図である。なお、本処理は、操作信号を受信したことを契機に開始される。
【0058】
かご位置判定部331は、信号受信部320が、床下ビーコン400dから位置信号を受信したか否かを判別する(ステップS1301)。受信した位置信号が、床下ビーコン400dから発信されたものである場合、かご位置判定部331は、不適切と判定し(ステップS1302)、処理を終了する。
【0059】
床下ビーコン400dからの位置信号を受信するのは、乗りかご105が、携帯端末300を携帯する作業員109が現在いる階床よりも高い位置に配置されている場合である。例えば、
図6に示す位置に乗りかご105が有る場合、1階(1F)に作業員109がいる場合等である。このような場合、作業員109が乗り場ドア103を開放すると、昇降路108に落下する可能性がある。従って、かご位置判定部331は、不適切と判定する。
【0060】
次に、かご位置判定部331は、信号受信部320が、天井ビーコン400uから位置信号を受信したか否かを判別する(ステップS1303)。受信した位置信号が、天井ビーコン400uから発信されたものである場合、かご位置判定部331は、作業員109がいる階床から天井ビーコン400uまでの距離DLを算出する(ステップS1304)。
【0061】
作業員109がいる階床から天井ビーコン400uまでの距離DLは、例えば、携帯端末300と天井ビーコン400uとの間の距離H1を算出し、携帯端末300を保持する平均的な高さh2を減算することにより得る(DL=H1−h2)。天井ビーコン400uから携帯端末300までの距離H1は、例えば、天井ビーコン400uから発信される信号の強度の減衰量から算出する。
【0062】
そして、かご位置判定部331は、算出された距離DLが、予め定めた閾値Th以上であるか否かを判別する(ステップS1305)。距離DLが閾値Th以上の場合、かご位置判定部331は、不適切と判定する(ステップS1302)。閾値Thは、作業員109が安全に乗りかごの天井の乗り込める高さに設定される。
【0063】
まず、天井ビーコン400uからの信号を受信するのは、
図6の例では、携帯端末300を携帯する作業員109が、3階(3F)または4階(4F)にいる場合である。ここで、作業員109がいる階床から天井ビーコン400uまでの距離DLが、閾値Th以上となるのは、作業員109が4Fにいる場合である。この場合、作業員109が乗り場ドア103を開放すると、乗りかご105の天井まで昇降路108を落下する可能性がある。従って、かご位置判定部331は、不適切と判定する。
【0064】
一方、算出した距離DLが、予め定めた閾値Th未満の場合、適切と判定し(ステップS1306)、処理を終了する。
【0065】
例えば、
図6の例では、3Fに作業員109がいる場合等である。この場合、作業員109が乗り場ドア103を開放しても、作業員109は、乗りかご105の天井に乗ることができ、昇降路108に落下することはない。従って、かご位置判定部331は、適切と判定する。
【0066】
また、いずれのビーコン400からも信号を受信していない場合は、適切と判定する(ステップS1306)。このような状態は、
図6の例では、例えば、作業員109が2階(2F)にいる場合等である。この場合、作業員109が乗り場ドア103を開放しても、昇降路108に落下することはない。従って、かご位置判定部331は、適切と判定する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、乗りかご105が、適正な位置にない場合、注意喚起出力が行われる。また、適正な位置にある場合、安全であることがわかる出力(安全出力)がなされる。本実施形態によれば、作業員109は、外部開放治具200と、自身が保持する携帯端末300と、ビーコン400とによる簡易な構成で、外部開放治具200により乗り場ドア103を開放する前に、安全であるか否かを判断できる。
【0068】
すなわち、本実施形態によれば、実効性のある注意喚起を行うことができる。これにより、安全性の高い、外部開放時安全システム190を提供できる。
【0069】
また、本実施形態によれば、作業員109は、外部開放治具200による開放操作を行った際、外部開放治具200の出力により、そのまま操作を継続して乗り場ドア103を開放した場合、昇降路に落下する可能性があるか否かを、判別できる。作業員109は、これを利用して、乗りかご105を、確実に安全な位置まで、容易に移動させることができる。
【0070】
例えば、安全出力がなされた場合は、そのまま、乗り場ドア103を開放する操作を進める。一方、注意喚起出力がなされた場合、作業員109は、乗りかご105を適切な位置まで移動させてから解錠操作を進めることができる。このとき、乗りかご105を移動させる毎に、外部開放治具200をキー穴に挿入し、出力を得る。これを、安全出力を得るまで繰り返す。
【0071】
このように、本実施形態によれば、実効性の高い、注意喚起出力または安全出力を得ることができるため、安全性が向上するとともに、作業効率も向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、注意喚起出力の出力先が外部開放治具200である。従って、作業員109は、手元で危険を察知できる。
【0073】
また、乗りかごの位置が適切であれば、安全出力を行うよう構成することにより、作業員109は、外部開放治具200のバッテリの状態も容易に把握できる。外部開放治具200の電源部290が電池切れを起こしている場合は、注意喚起出力および安全出力のいずれも、出力されないためである。これにより、電池切れにより、外部開放治具200から注意喚起の出力がなされない、という不具合も最低限に抑えられる。
【0074】
<変形例1>
なお、上記実施形態では、外部開放治具200側に注意喚起出力、安全出力を行うよう構成している。しかしながら、本実施形態の出力先は、外部開放治具200に限定されない。例えば、携帯端末300に出力させてもよい。
【0075】
この場合、携帯端末300において、判定信号生成部332は、判定結果を出力制御部333に出力する。これを受け、出力制御部333は、不適切な場合、適切な場合、それぞれについて、予め定めた出力を行う。
【0076】
本変形例の外部開放時安全確認処理の流れを
図7に示す。上記実施形態の外部開放時安全確認処理と同じ処理には、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。
【0077】
第一の実施形態同様、携帯端末300において、かご位置判定部331が、乗りかご位置の適否を判別すると(ステップS1203)、判定信号生成部332は、判定結果に応じて判定信号を生成し、それを、出力制御部333に出力する(ステップS1401)。
【0078】
出力制御部333は、判定信号に応じて、出力を行い(ステップS1402)、処理を終了する。
【0079】
なお、携帯端末300に出力する場合、出力先は、例えば、携帯端末300が備える表示装置(液晶パネル)とすることができる。この場合、照明の点灯等ではなく、例えば、メッセージを出力してもよい。
【0080】
乗りかご105の位置が不適切な場合は、注意喚起を促すメッセージ、乗りかご105の位置が適切な場合は、適切であることを示すメッセージをそれぞれ出力する。これらのメッセージは、予めROM等のメモリに保持しておく。
【0081】
また、出力先は、携帯端末300が備えるスピーカであってもよい。スピーカから出力する音声メッセージも、予めROM等のメモリに保持しておき、適切、不適切の判定結果に応じて、選択し、出力する。
【0082】
なお、外部開放治具200が、音声合成部等を備えている場合、外部開放治具200から、注意喚起の音声メッセージを出力するよう構成してもよい。
【0083】
また、注意喚起出力、安全出力は、外部開放治具200と携帯端末300との両方に行うよう構成してもよい。
【0084】
<変形例2>
また、上記実施形態では、ビーコン400は、指向性を有し、例えば、180度の配向角を持つ場合を例にあげて説明した。しかし、ビーコン400はこのような特性のものに限定されない。例えば、指向性の無い、配向角が360度のビーコン400(無指向性無線標識)を用いてもよい。
【0085】
この場合、かご位置判定部331は、かご位置判定処理において、床下ビーコン400dからの位置信号と、天井ビーコン400uからの位置信号との強度を比較する。そして、床下ビーコン400dからの位置信号の強度の方が大きい場合、不適切、と判定する。
【0086】
この場合、乗りかご105が、携帯端末300を保持する作業員109のいる階床よりも高い位置に存在するためである。
【0087】
床下ビーコン400dからの位置信号の強度が、天井ビーコン400uからの位置信号の強度以下の場合、天井ビーコン400uからの位置信号を用いて、天井ビーコン400uから作業員109のいる階床までの距離DLを算出し、適否を判別する。距離DLの算出および適否の判別は、上記実施形態と同様の手法を用いる。
【0088】
また、両者の強度が等しい場合は、適切と判別する。
【0089】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明の第二の実施形態を説明する。本実施形態では、外部開放治具は、解錠防止機構を備える。そして、乗りかご105の位置が不適切である場合、解錠防止機構により、外部開放治具による解錠操作を進めることを防止する。
【0090】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0091】
図8(a)および
図8(b)に、本実施形態の外部開放治具201の外観図を示す。
図8(b)は、本実施形態の外部開放治具201の正面図である。また、
図8(a)は、
図8(b)のA−A’断面図である。
【0092】
本図に示すように、本実施形態の外部開放治具201は、第一の実施形態の外部開放治具200の構成に加え、解錠防止機構270を備える。
【0093】
解錠防止機構270は、乗りかご105の位置が不適切である場合、乗り場ドア103を解錠不能とする。本実施形態の解錠防止機構270は、解錠防止板と、駆動部とを備える。駆動部は、解錠防止板を基板250からの指示に応じて駆動させ、差込部230または本体部260内に収納したり、これらから突出させたりする。
【0094】
解錠防止板が突出している場合、外部開放治具200の機能は停止する。すなわち、解錠が不能となる。一方、解錠防止板が収納されている場合、外部開放治具200は、解錠操作を続行できる。すなわち、乗り場ドア103の解錠ができ、乗り場ドア103を開放できる。
【0095】
本実施形態の基板250の機能ブロックを、
図9を用いて説明する。本実施形態では、第一の実施形態の機能に加え、さらに、解錠防止機構270を制御する解錠防止部254を備える。
【0096】
本実施形態の解錠防止部254は、通信装置240を介して携帯端末300から、乗りかご105の位置の適否を示す判定信号を受信すると、判定信号に応じて、解錠防止機構270を制御する。すなわち、解錠防止部254は、適切を示す判定信号を受信すると、解錠防止板を収納させ、不適切を示す判定信号を受信すると、解錠防止板を突出させる。
【0097】
なお、本実施形態の外部開放治具200においては、デフォルトで、解錠防止板を突出させ、適切を示す判定信号を受信した場合のみ、収納させるよう構成してもよい。
【0098】
以下、本実施形態の外部開放時安全確認処理の流れを説明する。
図10は、本実施形態の保守作業時安全確認処理の処理フローである。判別結果を受信し、判別結果に応じた出力を行うまでの処理(ステップS1104)は、第一の実施形態と同様である。
【0099】
その後、本実施形態では、さらに、解錠防止部254は、判別結果に応じて、適切であれば(ステップS2101)、解錠防止機構270に解錠防止板271を収納するよう指示を出し(ステップS2102)、収納させ、処理を終了する。一方、不適切な場合は、そのまま、解錠防止板271を突出させておく。
【0100】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態と同様の構成を備え、第一の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態は、乗りかご105の位置が不適切な場合、解錠操作を阻止する解錠防止機構270を備える。このため、本実施形態によれば、乗りかご105の位置が、確実に安全な位置にない限り、物理的に解錠操作を進めることができない。従って、より安全性の高い外部開放時安全システム190を提供できる。
【0101】
なお、本実施形態では、注意喚起出力および安全出力は、行わなくてもよい。また、本実施形態についても、第一の実施形態の各変形例は、適用可能である。
【0102】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するためのものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0103】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。