(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のホイールローダを実施形態毎に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る作業車両としてのホイールローダの外観図、
図2は第1実施形態に係るホイールローダのシステム構成図である。第1実施形態に係るホイールローダ1は、アクセル操作量検出装置の検出信号と及びブレーキ操作量検出装置の検出信号と車両の走行状態に基づいて、制御装置がロックアップクラッチの切替制御を行うことを特徴とする。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係るホイールローダ1は、キャブ2を備えた後フレーム3と、連結ピン4を介して後フレーム3の前方側(ホイールローダ1の前進側)に連結された前フレーム5と、これら後フレーム3及び前フレーム5に設けられた後輪6及び前輪7と、前フレーム5の前方部分に取り付けられた作業機8と、から主に構成されている。後輪6及び前輪7内には、ブレーキディスク等の制動装置9が組み込まれている。なお、本明細書においては、後フレーム3及び前フレーム5を総称して「車体」ということがある。
【0014】
作業機8は、一端が連結ピン10を介して前フレーム5に連結されたリフトアーム11と、連結ピン12を介してリフトアーム11の先端部に連結されたバケット13と、連結ピン14、15を介して両端部が前フレーム5とリフトアーム11とに連結されたリフトアームシリンダ16と、連結ピン17を介してリフトアーム11に揺動可能に連結されたベルクランク18と、一端がベルクランク18に連結され、他端がバケット13に連結されたリンク部材19と、連結ピン20、21を介して両端部が前フレーム5とベルクランク18とに連結されたバケットシリンダ22と、からなる。なお、本明細書においては、リフトアームシリンダ16及びバケットシリンダ22を総称して「油圧アクチュエータ」ということがある。また、本例においては、リフトアーム11、連結ピン12、14、15、リフトアームシリンダ16がそれぞれ1つずつしか備えられていないが、実機においては、これらの各部材がバケット13の左右に一組ずつ備えられる。
【0015】
キャブ2内には、エンジン回転数を増減するアクセルペダル31と、ホイールローダ1を制動するブレーキペダル32と、が備えられており、キャブ2内に乗り込んだオペレータがこれらの各ペダル31、32を操作することによって、ホイールローダ1の加速、減速及び停止を行えるようになっている。
【0016】
また、キャブ2内には、ホイールローダ1の走行方向を前進又は後進に切り替える前後進切替スイッチ等の前後進切替操作部材33と、前進又は後進時の速度段を第1速、第2速、第3速又は第4速に切り替えるシフトスイッチ等のシフト切替操作部材34とが備えられており、キャブ2内に乗り込んだオペレータがこれらの各切替操作部材33、34を操作することによって、ホイールローダ1の前後進切替及び速度段の選択を行えるようになっている。
【0017】
更に、キャブ2内には、図示しないステアリング装置が備えられており、キャブ2内に乗り込んだオペレータがホイールローダ1を前進又は後進させた状態でステアリング装置を操作することにより、ホイールローダ1をステアリング装置の操作方向に応じた方向に操舵できるようになっている。なお、ステアリング装置を操作すると、連結ピン4を中心として前フレーム5が後フレーム3に対して屈曲し、ホイールローダ1の操舵が可能になる。
【0018】
また、キャブ2内には、リフトアームシリンダ16を伸長・収縮操作するリフトアーム操作レバー等のリフトアーム操作部材35と、バケットシリンダ22を伸長・収縮操作するバケット操作レバー等のバケット操作部材36と、が備えられており、キャブ2内に乗り込んだオペレータがこれらの各操作部材35、36を操作することによって、リフトアーム11の上昇又は下降と、バケット13の上向きチルト又は下向きチルトが行えるようになっている。即ち、リフトアームシリンダ16を伸長させると、リフトアーム11及びバケット13が上昇し、リフトアームシリンダ16を収縮させると、リフトアーム11及びバケット13が下降する。また、バケットシリンダ22を伸長させると、バケット13が上向きにチルトし、バケットシリンダ22を収縮させると、バケット13が下向きにチルトする。
【0019】
オペレータは、ホイールローダ1の前後進操作又は制動操作、リフトアーム11の上昇操作又は下降操作、並びにバケット13の上向きチルト操作又は下向きチルト操作を組み合わせて行うことにより、ホイールローダ1に掘削、走行、積込等の各種の作業を行わせることができる。
【0020】
図2に示すように、第1実施形態に係るホイールローダ1には、動力源であるエンジン41と、エンジン41の駆動力をプロペラシャフト42に伝達するトルクコンバータ装置43及びトランスミッション44と、プロペラシャフト42の回転を後輪6及び前輪7に伝達するアクセルシャフト45と、が備えられている。エンジン41は、アクセルペダル31の操作量に応じた目標エンジン回転数を車体コントローラ61が算出してエンジンコントローラ62へ伝達し、エンジンコントローラ62からの目標回転数信号に基づいてエンジン回転数が制御される。また、トランスミッション44及びロックアップクラッチ46は、トランスミッションコントローラ63からの切替信号により切り替えられる。なお、本明細書においては、トランスミッション44、プロペラシャフト42、アクセルシャフト45、後輪6及び前輪7を総称して「走行装置49」という。
【0021】
図3は、第1実施形態に係るトルクコンバータ装置の模式的な構成図である。
図3に示すように、本例のトルクコンバータ装置43は、ロックアップクラッチ46とトルクコンバータ47を有している。なお、図中の符号43aは、トルクコンバータ47の入力軸を、43bは出力軸を示しており、入力軸43aはエンジン41の出力軸に、出力軸43bはトランスミッション44に接続されている。本例のロックアップクラッチ46は、油圧作動式のクラッチであり、ロックアップクラッチ用比例弁48を介して、トランスミッションコントローラ63からの切替信号により、トルクコンバータ47の出力軸43bと入力軸43aとを連結する連結状態又はトルクコンバータ47の出力軸43bと入力軸43aとの連結を解除する連結解除状態とに切替可能であるように構成されている。
【0022】
ロックアップクラッチ46が連結解除状態である場合には、エンジン41の駆動力がトルクコンバータ47を介して走行装置49に伝達される。一方、ロックアップクラッチ46が連結状態である場合には、トルクコンバータ47の入力軸43aと出力軸43bとが直結され、エンジン41の駆動力がロックアップクラッチ46を介して走行装置49に伝達される。
【0023】
また、実施形態に係るホイールローダ1には、
図2に示すように、エンジン41の駆動力により駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプ51が備えられている。リフトアームシリンダ16及びバケットシリンダ22は、油圧ポンプ51からの作動油の供給を受けて伸長又は収縮する。即ち、油圧ポンプ51の吐出口とリフトアームシリンダ16との間及び油圧ポンプ51の吐出口とバケットシリンダ22との間には、作業機用コントロールバルブ52が備えられており、作業機用コントロールバルブ52の信号入力部には、リフトアーム操作部材35の操作量及び操作方向に応じた操作信号と、バケット操作部材36の操作量及び操作方向に応じた操作信号と、が入力される。従って、リフトアームシリンダ16は、リフトアーム操作部材35の操作方向と操作量に応じたストロークだけ伸長又は収縮する。これと同様に、バケットシリンダ22は、バケット操作部材36の操作方向と操作量に応じたストロークだけ伸長又は収縮する。
【0024】
なお、本例の油圧ポンプ51は、可変容量型の油圧ポンプであり、ポンプレギュレータ53が備えられている。ポンプレギュレータ53は、車体コントローラ61から出力される指令信号に応じて油圧ポンプ51の押しのけ容積を制御する。
【0025】
車体コントローラ61は、ホイールローダ1の駆動全体を司る制御装置であり、
図2に示すように、アクセルペダル31の操作量を検出するアクセル操作量検出装置64の検出信号a、ブレーキペダル32の操作量を検出するブレーキ操作量検出装置65の検出信号b、前後進切替操作部材33の操作信号c、シフト切替操作部材34の操作信号d、トルクコンバータ装置43に備えられたトルクコンバータ出力回転センサ67の検出信号f、トランスミッション44に備えられた車速センサ68の検出信号g、ロックアップの作動情報k、が入力される。また、車体コントローラ61には、エンジンコントローラ62から出力されるエンジン出力トルク信号h及びエンジン回転数信号iが入力される。
【0026】
一方、トランスミッションコントローラ63からは、ロックアップクラッチ用比例弁48に対するロックアップクラッチ切替信号jが出力され、車体コントローラ61からはポンプレギュレータ53に対する傾転角制御信号と、エンジンコントローラ62に対する目標エンジン回転数信号mと、トランスミッションコントローラ63に対するトランスミッション切替信号n、ロックアップクラッチ用比例弁48に対する切替信号lと、が出力される。
【0027】
なお、
図2においては、車体コントローラ61とトランスミッションコントローラ63とが別体に記載されているが、車体コントローラ61とトランスミッションコントローラ63とは一体に構成することもできる。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る車体コントローラの機能ブロック図である。本例の車体コントローラ61は、
図4に示すように、バス71を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、CPU(Central Processing Unit)74、信号入力部75及び信号出力部76等のハードウエア資源を備えたコンピュータによって構成されている。エンジンコントローラ62及びトランスミッションコントローラ63も、これと同様のハードウエア構成を有するコンピュータが用いられる。
【0029】
ROM72は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリである。ROM72には、SDメモリカード、マイクロSDメモリカード及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等が含まれる。
【0030】
図5は、第1実施形態に係るROMのフォーマット構成図である。
図5に示すように、ROM72には、基本ソフトウェアであるOS(Operating System)の記憶部81と、OS上で動作してホイールローダ1の駆動制御を行う駆動制御プログラムの記憶部82と、アクセルペダル31が操作されたか否かを判定する際の基準となるアクセル閾値Acc_thの記憶部83と、ブレーキペダル32が操作されたか否かを判定する際の基準となるブレーキ閾値Brk_thの記憶部84と、ロックアップクラッチ46を解除を制御する際の基準となるトルク閾値Trq_thの記憶部85と、が設けられる。駆動制御プログラムの記憶部82には、ロックアップクラッチ46の切替制御を行う切替制御プログラムの記憶部86も設けられる。アクセル閾値Acc_th、ブレーキ閾値Brk_th及びトルク閾値Trq_thの設定方法については、後に説明する。
【0031】
RAM73は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリである。
【0032】
CPU74は、ROM72からプログラム及び閾値その他のデータを読み出してRAM73上に展開し、ロックアップクラッチ46の切替制御プログラムを含むホイールローダ1の駆動制御プログラムを実行する。これにより、CPU74は、ホイールローダ1の稼働状態(作業場面)に合わせた適切なロックアップクラッチ46の切替制御を実現させる制御機器として機能する。
【0033】
以下、アクセル閾値Acc_th、ブレーキ閾値Brk_th及びトルク閾値Trq_thの設定方法について説明する。
【0034】
アクセル閾値Acc_thは、アクセルペダル31が操作されたか否かの判定基準となるもので、ホイールローダ1を停止状態から走行を開始させる際に加速させる程度のアクセルペダル31の踏み込み量に設定される。また、ブレーキ閾値Brk_thは、ブレーキペダル32が操作されたか否かの判定基準となるもので、制動装置9により発生する制動力により、ホイールローダ1を減速できる程度のブレーキペダル32の踏み込み量に設定される。
【0035】
これに対して、トルク閾値Trq_thは、ロックアップクラッチ46に解除指示する際の基準となるもので、エンジンに作用する負荷によるエンジンストールやトルクコンバータ装置43及び走行装置49に作用する負荷によりそれらに故障が生じない発生トルク値に設定される。トルク閾値Trq_thは、ホイールローダ1のアクセルペダル31とブレーキペダル32の操作に応じた、積込み、掘削等の作業場面毎に適正な値が設定されるが本実施形態の説明では全てTrq_thと表現する。なお、発生トルクとは、エンジン41の出力トルクとトルクコンバータ47の入力軸43aに発生する回転に伴う慣性トルクの加算値である。エンジン41の出力トルクは、エンジンコントローラ62から入手できる。また、慣性トルクは、トルクコンバータ47の入力軸43aの慣性とトルクコンバータ47の入力軸43a又は出力軸43bの減速度から算出されるもので、ホイールローダ1の仕様値である。なお、トルクコンバータ47の入力軸43a又は出力軸43bの減速度はトランスミッション44の出力軸の減速度と選択されている速度段のギア比から算出することもできる。
【0036】
車体コントローラ61は、アクセルペダル31の操作状態及びブレーキペダル32の操作状態からホイールローダ1の作業場面を認識し、認識した作業場面に応じたトルク閾値Trq_thに基づいて、ロックアップクラッチ46の解除指示を実行する。
【0037】
図6は第1実施形態に係るホイールローダのアクセル操作状態及びブレーキ操作状態から認識できる作業場面の一覧を示す表図、
図7は第1実施形態に係るホイールローダの作業場面に合ったロックアップクラッチの解除条件の一覧を示す表図である。
【0038】
図6に示すように、アクセルペダル31及びブレーキペダル32の双方が踏まれている場合、車体コントローラ61は積込作業場面であると判定し、
図7に示すように、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、ブレーキペダル32で車速を調整しながらエンジン回転数を増大させたい積込作業場面において、作業機8に備えられた油圧アクチュエータが操作されていない状態にあっても、エンジン41の回転数を必要なエンジン回転数まで速やかに上昇させることができるので、積込作業を円滑に行うことができる。
【0039】
また、
図6に示すように、アクセルペダル31が踏まれ、ブレーキペダル32が踏まれていない場合、車体コントローラ61は掘削作業場面又は登坂走行場面であると判定し、
図7に示すように、エンジン41の出力トルクとトルクコンバータ47の入力軸43aに発生する慣性トルクに基づいて算出された発生トルクがトルク閾値Trq_thを超えていると判定したときに、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、掘削作業場面時に発生する駆動力伝達装置への負荷が増大する前に、ロックアップが解除できるので、エンジンストールや走行装置の故障を回避することができる。
【0040】
更に、
図6に示すように、アクセルペダル31が踏まれておらず、ブレーキペダル32が踏まれた場合、車体コントローラ61は減速のためのブレーキ操作場面であると判定し、
図7に示すように、トルクコンバータ47の入力軸43a又は出力軸43bの減速度に基づいて算出された慣性トルクがトルク閾値Trq_thを超えていると判定したときに、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、急ブレーキがかけられた際にエンジン41から走行装置49に至る走行駆動系に過大な負荷が作用することを防止できてホイールローダ1の破損を防止することができる。
【0041】
これに対して、
図6に示すように、アクセルペダル31及びブレーキペダル32の双方が踏まれていない場合、車体コントローラ61は平地減速場面であると判定し、
図7に示すように、車速のみを解除条件としてロックアップクラッチ46の解除指示をせずロックアップクラッチ46を連結状態のまま維持し、ホイールローダ1をそのときの車速で走行させる。これにより、ホイールローダ1の燃費の向上が図れる。
【0042】
以下、
図8を用いて第1実施形態に係るホイールローダのロックアップクラッチ解除判定処理手順を説明する。
図8は、第1実施形態に係るホイールローダのロックアップクラッチ解除判定処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すロックアップクラッチ解除判定処理は、車体コントローラ61のROM72に記憶されたロックアップクラッチ46の切替制御プログラムにしたがって実行される。
【0043】
ロックアップクラッチ46の解除判定処理が開始されると、車体コントローラ61は、ロックアップクラッチ46が連結状態にあるか否かの判定(手順S1)と、アクセルペダル31の踏み込み量がアクセル閾値Acc_thを超えているか否かの判定(手順S2)と、ブレーキペダル32の踏み込み量がブレーキ閾値Brk_thを超えているか否かの判定(手順S3)と、をこの順に行う。ロックアップクラッチ46が連結状態にあるか否かはトランスミッションコントローラ63からの信号に基づき判断する。
【0044】
手順S1においてロックアップクラッチ46は連結状態にある(Yes)と判定し、手順S2においてアクセルペダル31の踏み込み量がアクセル閾値Acc_thを超えている(Yes)と判定し、手順S3においてブレーキペダル32の踏み込み量がブレーキ閾値Brk_thを超えている(Yes)と判定した場合は、手順S4に移行してロックアップ解除作業を積込作業と判定し、手順S5でロックアップクラッチ46を連結解除状態に切り替える(ロックアップ解除)。
【0045】
手順S3において、ブレーキペダル32の踏み込み量はブレーキ閾値Brk_thを超えていない(No)と判定した場合は、手順S6に移行してロックアップ解除作業を掘削作業又は登坂走行と判定する。次に、手順S7に移行して発生トルクの算出を行い、発生トルクがトルク閾値Trq_thを超えているか否かについて判定する(手順S8)。手順S8において発生トルクはトルク閾値Trq_thを超えている(Yes)と判定した場合は、手順S9に移行してロックアップクラッチ46を連結解除状態に切り替え、処理を終了する。手順S8において発生トルクはトルク閾値Trq_thを超えていない(No)と判定した場合は、そのまま処理を終了する。
【0046】
手順S2において、アクセルペダル31の踏み込み量はアクセル閾値Acc_thを超えていない(No)と判定した場合は、手順S10に移行してブレーキペダル32の踏み込み量がブレーキ閾値Brk_thを超えているか否かの判定を行う。手順S10においてブレーキペダル32の踏み込み量はブレーキ閾値Brk_thを超えている(Yes)と判定した場合は、ステップS11に移行してロックアップ解除作業をブレーキ操作と判定する。次に、手順S12に移行して慣性トルクの算出を行い、慣性トルクがトルク閾値Trq_thを超えているか否かについて判定する(手順S13)。手順S13において慣性トルクはトルク閾値Trq_thを超えている(Yes)と判定した場合は、手順S14に移行してロックアップクラッチ46を連結解除状態に切り替え、処理を終了する。手順S10においてブレーキペダル32の踏み込み量はブレーキ閾値Brk_thを超えていない(No)と判定した場合、及び手順S13において慣性トルクはトルク閾値Trq_thを超えていない(No)と判定した場合は、そのまま処理を終了する。
【0047】
第1実施形態に係るホイールローダ1は、車体コントローラ61がアクセルペダル31の踏み込み量及びブレーキペダル32の踏み込み量に基づいて作業場面を判定し、判定した作業場面がエンジン回転数を増大させたい作業場面であると判定した場合は、油圧アクチュエータの操作状況によらず、エンジン41の回転数を作業に必要なエンジン回転数まで速やかに上昇させることができるので、積込み作業を円滑に行うことができる。また、判定した作業場面がエンジン41から走行装置49に至る走行駆動系に大きな負荷が作用する作業場面であると判定した場合にも、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替えるので、エンジンストールや走行駆動系の破損を確実に防止できる。また、エンジン回転数を増大させたい作業場面ではないと判定した場合及び走行駆動系に大きな負荷が作用しない作業場面であると判定した場合には、ロックアップクラッチ46を連結状態のまま維持するので、ホイールローダ1の燃費を向上させることができる。
【0048】
この点についてより詳細に説明すると、従来技術では、ダンプトラックへ接近しながら、作業機を上げ操作するような作業時には、操作レバーによる操作量の閾値を、作業機の負荷が増大する条件としているため、ブレーキ操作をする前段階からロックアップが解除され、ブレーキ操作が開始されるまでの間の分だけ、ロックアップした状態での走行割合が少なくなってしまう。また、駆動力伝達装置に大きな負荷が作用しないようにロックアップを解除する車速の閾値を設定するとその値を高くする必要があり、ロックアップした状態での低速走行の割合が少なくなってしまう。これに対して、本願発明の構成を採用すると、ロックアップした状態での走行の割合を長くできるので、燃費を向上させることができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図9〜
図12に基づいて説明する。本発明の第2実施形態は、アクセルペダル31の踏み込み量、ブレーキペダル32の踏み込み量及びホイールローダ1の傾斜に基づいてホイールローダ1の作業場面を判定することを特徴とする。
【0050】
図9は、第2実施形態に係るホイールローダの車体コントローラ及びトランスミッションコントローラに対する各種信号の接続状態を示す図である。
図9に示すように、第2実施形態に係るホイールローダ1は、車体コントローラ61に傾斜角センサ69の検出信号が入力されている。傾斜角センサ69は、ホイールローダ1の車体の適宜の位置に設置される。その他については、第1実施形態に係るホイールローダ1と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図10は第2実施形態に係るホイールローダの傾斜状態、アクセル操作状態及びブレーキ操作状態から認識できる作業場面の一覧を示す表図であり、
図11は第2実施形態に係るホイールローダの作業場面に合ったロックアップクラッチの解除条件の一覧を示す表図である。
【0052】
傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は平地又は降坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31及びブレーキペダル32の双方が踏まれている場合、車体コントローラ61は積込作業場面であると判定し、
図11に示すように、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、エンジン41の回転数を作業に必要なエンジン回転数まで速やかに上昇させることができるので、作業を円滑に行うことができる。
【0053】
また、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は平地又は降坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31が踏まれ、ブレーキペダル32が踏まれていない場合、車体コントローラ61は掘削作業場面であると判定し、
図11に示すように エンジン41の出力トルクとトルクコンバータ47の入力軸43aに発生する慣性トルクに基づいて算出された発生トルクがトルク閾値Trq_thを超えていると判定したときに、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、掘削作業場面時に発生する駆動力伝達装置への負荷が増大する前に、ロックアップが解除できるので、エンジンストールや走行装置の故障を回避することができる。
【0054】
更に、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は平地又は降坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31が踏まれておらず、ブレーキペダル32が踏まれた場合、車体コントローラ61はブレーキ操作場面であると判定し、
図11に示すように、車体の減速度に基づいて算出された慣性トルクがトルク閾値Trq_thを超えていると判定したときに、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、急ブレーキがかけられた際にエンジン41から走行装置49に至る走行駆動系に過大な負荷が作用することを防止できてホイールローダ1の破損を防止することができる。
【0055】
加えて、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は平地又は降坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31及びブレーキペダル32の双方が踏まれていない場合、車体コントローラ61は平地減速場面であると判定し、
図11に示すように、車速のみを解除条件としてロックアップクラッチ46を連結状態のまま維持し、ホイールローダ1をそのときの車速で走行させる。これにより、ホイールローダ1の燃費向上が図られる。
【0056】
これに対して、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は登坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31及びブレーキペダル32の双方が踏まれている場合、車体コントローラ61は登坂走行しながらの積込作業場面であると判定し、
図11に示すように、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、登坂走行しながらの積込作業を行うために必要な作動油を油圧ポンプ51から吐出できると共に、ホイールローダ1の飛び出しが防止されて、ホイールローダ1の作業性が高められる。
【0057】
また、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は登坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31が踏まれ、ブレーキペダル32が踏まれていない場合、車体コントローラ61は登坂走行場面であると判定し、
図11に示すように、エンジン41の出力トルクとトルクコンバータ47の入力軸43aに発生する慣性トルクに基づいて算出された発生トルクがトルク閾値Trq_thを超えていると判定したときに、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、登坂走行時時に発生する駆動力伝達装置への負荷が増大する前に、ロックアップが解除できるので、エンジンストールや走行装置の故障を回避することができる。
【0058】
更に、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は登坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31が踏まれておらず、ブレーキペダル32が踏まれた場合、車体コントローラ61はブレーキ操作場面であると判定し、
図11に示すように、トルクコンバータ47の入力軸43a又は出力軸43bの減速度に基づいて算出された慣性トルクがトルク閾値Trq_thを超えていると判定したときに、ロックアップクラッチ46を連結状態から連結解除状態に切り替える信号をトランスミッションコントローラ63に出力する。これにより、ロックアップクラッチ46は、連結解除状態となり、急ブレーキがかけられた際にエンジン41から走行装置49に至る走行駆動系に過大な負荷が作用することを防止できてホイールローダ1の破損を防止することができる。
【0059】
加えて、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1は登坂状態にあると判定される場合において、
図10に示すように、アクセルペダル31及びブレーキペダル32の双方が踏まれていない場合、車体コントローラ61は平地減速場面であると判定し、
図11に示すように、車速のみを解除条件としてロックアップクラッチ46を接続状態のまま維持し、ホイールローダ1をそのときの車速のみで走行させる。これにより、ホイールローダ1の燃費向上が図られる。
【0060】
以下、
図12を用いて第2実施形態に係るホイールローダのロックアップクラッチ解除判定処理手順を説明する。
図12は、第2実施形態に係るホイールローダのロックアップクラッチ解除判定処理手順を示すフローチャートである。
図12に示すロックアップクラッチ解除判定処理は、車体コントローラ61のROM72に記憶されたロックアップクラッチ46の切替制御プログラムにしたがって実行される。
【0061】
ロックアップクラッチ46の解除判定処理が開始されると、車体コントローラ61は、ロックアップクラッチ46が連結状態にあるか否かの判定(手順S101)を行い、手順S101でロックアップクラッチ46が連結状態にあると判定した場合(Yes)は、手順S102に移行して、傾斜角センサ69の検出信号からホイールローダ1が登坂状態にあるか否かを判定する。そして、手順S102でホイールローダ1は登坂状態ではない(No)と判定した場合は、手順S103〜手順S115の処理を実行する。
【0062】
手順S103〜手順S106の処理は、ロックアップ解除作業が積込作業と判定された場合の処理であり、
図8に示した手順S2〜手順S5の処理と同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。また、手順S104及び手順S107〜手順S110の処理は、ロックアップ解除作業が掘削作業と判定された場合の処理であり、
図8に示した手順S3及び手順S6〜手順S9の処理と同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。更に、手順S103及び手順S111〜手順S115の処理は、ロックアップ解除作業がブレーキ操作と判定された場合の処理であり、
図8に示した手順S2及び手順S10〜手順S14の処理と同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0063】
手順S101においてロックアップクラッチ46は連結状態にある(Yes)と判定し、手順S102においてホイールローダ1は登坂状態である(Yes)と判定し、手順S116においてアクセルペダル31の踏み込み量がアクセル閾値Acc_thを超えている(Yes)と判定し、手順S107においてブレーキペダル32の踏み込み量がブレーキ閾値Brk_thを超えている(Yes)と判定した場合は、手順S118に移行してロックアップ解除作業を登坂走行しながらの積込作業と判定し、手順S119でロックアップクラッチ46を連結解除状態に切り替える。
【0064】
手順S117において、ブレーキペダル32の踏み込み量はブレーキ閾値Brk_thを超えていない(No)と判定した場合は、手順S120に移行してロックアップ解除作業を登坂走行と判定する。次に、手順S121に移行して発生トルクの算出を行い、発生トルクがトルク閾値Trq_thを超えているか否かについて判定する(手順S122)。手順S122において発生トルクはトルク閾値Trq_thを超えている(Yes)と判定した場合は、手順S123に移行してロックアップクラッチ46を連結解除状態に切り替え、処理を終了する。手順S122において発生トルクはトルク閾値Trq_thを超えていない(No)と判定した場合は、そのまま処理を終了する。
【0065】
手順S116において、アクセルペダル31の踏み込み量はアクセル閾値Acc_thを超えていない(No)と判定した場合は、手順S124に移行してブレーキペダル32の踏み込み量がブレーキ閾値Brk_thを超えているか否かの判定を行う。手順S124においてブレーキペダル32の踏み込み量はブレーキ閾値Brk_thを超えている(Yes)と判定した場合は、ステップS125に移行してロックアップ解除作業をブレーキ作業と判定する。次に、手順S126に移行して慣性トルクの算出を行い、慣性トルクがトルク閾値Trq_thを超えているか否かについて判定する(手順S127)。手順S127において慣性トルクはトルク閾値Trq_thを超えている(Yes)と判定した場合は、手順S128に移行してロックアップクラッチ46を連結解除状態に切り替え、処理を終了する。手順S124においてブレーキペダル32の踏み込み量はブレーキ閾値Brk_thを超えていない(No)と判定した場合、及び手順S127において慣性トルクはトルク閾値Trq_thを超えていない(No)と判定した場合は、そのまま処理を終了する。
【0066】
第2実施形態に係るホイールローダ1は、第1実施形態に係るホイールローダ1と同様の効果を奏するほか、ホイールローダ1の車体に傾斜角センサ69を備え、傾斜角センサ69の検出信号に基づいて車体コントローラ61がホイールローダ1の走行状態は平地(降坂)走行であるか登坂走行であるかを判定するので、第1実施形態に係るホイールローダ1のように、エンジン回転数及び車速などから車体コントローラ61がホイールローダ1の走行状態を算出する必要がなく、車体コントローラ61の負担を軽減できる。
【0067】
なお、本発明の範囲は、上記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で上記の実施形態に適宜変更、追加、削除を施したものが含まれる。例えば、前記第1及び第2の実施形態においては、作業車両としてホイールローダ1を例にとって説明したが、ダンプトラック等の他の作業車両に本発明を適用することもできる。