【実施例】
【0027】
下記実施例および比較例で得られた導電積層体について、導電積層体の表面の抵抗率、金属電極のパターニング後の全光線透過率、高温高湿信頼性、密着性の評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0028】
<抵抗率>
導電積層体の抵抗率はシート抵抗を測定することで算出した。抵抗率=シート抵抗×膜厚の関係から計算した。表面抵抗は低抵抗率計ロレスタGP(MCP‐T710)(三菱化学社製)を用いて四探針圧接測定により測定し、各膜厚は透過型電子顕微鏡を用いて測定した。
【0029】
<光線透過率>
積層膜のパターニング後の全光線透過率はTt:JIS K7105(1981)に基づいた日本電色工業株式会社製の濁度計タイプNDH−5000によって測定した。透過率が80%以上のものを『○』、80%未満のものを『×』とした。
【0030】
<高温高湿信頼性>
透明フィルム基材上に酸化銅膜及び銅膜を積層後、パターニングをしていない導電積層体を温度85℃、湿度85%の環境下に500時間放置する試験を行った。試験前の表面抵抗値(R
0)に対する試験後の表面抵抗値(R)の変化率〔つまり、R/R
0〕を求めて、高温高湿信頼性を評価した。
【0031】
<密着性>
積層膜をJIS K5600に記載されたクロスカット試験法に準じ、縦・横それぞれの方向に1mm間隔でカッターナイフを用いて10本ずつ傷をつけ、セロハンテープを貼り付けて引き剥がし、この時に積層膜が基板から剥離するかを観察した。
密着力は最も高い強度レベル0から最も低い強度レベル5でランク付けし、1以下を良とした。
密着力の定義 JIS K5600参照。
0・・・カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1・・・カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受ける領域が明確に5%を上回ることはない。
2・・・塗膜はカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが、15%を上回ることはない。
3・・・塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にははがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4・・・塗膜はカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数箇所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
5・・・分類4でも分類できないはがれ程度のもの。
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
(酸化銅膜の製膜)
透明フィルム基材として、アクリル系樹脂からなる易接着層が両面に形成された厚み125μmの二軸延伸PETフィルムを用いた。このPETフィルムの両面に酸化銅膜を形成した。
【0034】
銅をターゲットとして用い、酸素ガス(流量:90sccm)とアルゴンガス(流量:270sccm)の混合ガスを装置内に導入しながら、製膜室内圧力:0.4Pa、パワー密度:1.7W/cm
2、製膜中のロール温度90℃の条件でスパッタリング製膜を行なった。得られた酸化銅膜の膜厚は20nmであった。
【0035】
(銅膜の製膜)
上記の酸化銅膜上に、銅膜を形成した。銅ターゲットを用い、アルゴンガス(流量:270sccm)を装置内に導入しながら、製膜室内圧力:0.4Pa、パワー密度:4.2W/cm
2、製膜中のロール温度90℃の条件で、スパッタリングを行なった。得られた銅膜の膜厚は300nmであった。
【0036】
(金属電極パターニング)
上記銅膜を形成後、銅膜上に防錆処理を行い、フォトリソグラフィー法によりレジスト膜をパターニングし、レジストパターンをマスクとして、酸化銅膜及び銅膜を塩化鉄(III)水溶液5%を用いて同時にエッチングし、金属配線パターニングを行い、最後に残ったレジスト配線用パターンを剥離して、線幅を5μmとした。
【0037】
[実施例2]
実施例1に対して、酸化銅製膜時の酸素導入量を50sccmに変更し、その他の条件を変更せずに透明導電積層体を作製した。
【0038】
[比較例1]
実施例1に対して、酸化銅膜を形成しなかったこと以外はその他の条件を変更せずに透明導電積層体を作製した。
【0039】
[比較例2]
実施例1に対して、酸化銅膜の製膜温度を30℃に変更したこと以外は、その他の条件を変更せずに透明導電積層体を作製した。
【0040】
[比較例3]
実施例1に対して、酸化銅膜の製膜時の酸素量を30sccmに変更したこと以外は、その他の条件を変更せずに透明導電積層体を作製した。
【0041】
[比較例4]
実施例1に対して、酸化銅膜の製膜時の酸素量を120sccmに変更したこと以外は、その他の条件を変更せずに透明導電積層体を作製した。
【0042】
[比較例5]
実施例1に対して、酸化銅膜の代わりにニッケル層を形成した以外はその他の条件を変更せずに透明導電積層体を作製した。ニッケル層はスパッタ法により形成し、ニッケル層と銅膜はインラインで連続製膜して形成した。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1より明らかなように、実施例の透明導電性積層体は、タッチパネル用としての密着性及び全光線透過率を満足し、かつ高温高湿信頼性に優れることが分かる。
【0045】
実施例及び比較例から、酸化銅膜の酸化度を上げることで強い密着力を有することが出来る。これは、透明フィルム基材表面の炭素や酸素原子と、酸化銅膜の酸素原子が結合するためと考えられる。しかし、酸化度を上げるために製膜中の酸素量を所定の範囲より過剰に導入してしまうと、高温高湿信頼性が悪化してしまう。これは酸化銅膜の酸素が過剰で、酸化銅膜から銅膜へ酸素供給があり、比抵抗が変化したと考えられる。また、下地層として酸化銅ではなく、ニッケル層等の金属膜を形成すると、銅膜とのエッチングレートの違いからパターニング不良を起こし、全光線透過率が悪化する。