特許第6806749号(P6806749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806749
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/14 20060101AFI20201221BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F02M35/14 B
   F02M35/14 D
   F02M35/024 511A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-194005(P2018-194005)
(22)【出願日】2018年10月15日
(65)【公開番号】特開2020-63667(P2020-63667A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】坂 昭人
(72)【発明者】
【氏名】畠山 淳
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−030358(JP,U)
【文献】 特許第4254349(JP,B2)
【文献】 特開2004−176639(JP,A)
【文献】 特開2018−009558(JP,A)
【文献】 特許第3648365(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/14
F02M 35/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気装置であって、
内部にダストサイド室、クリーンサイド室、及び少なくとも1つの消音室を有するケースと、
前記ダストサイド室と前記クリーンサイド室との連通部に設けられたフィルタエレメントとを有し、
前記消音室の1つである第1消音室は、前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の一方と前記ケースの外縁との間に形成され、かつ前記第1消音室は前記ケースの外縁に沿って延びる第1連通路を介して前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の他方と接続され
前記第1消音室は、前記ケースの第1方向における一側の外縁に沿って設けられ、
前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の前記他方は、前記ケースの前記第1方向における他側の外縁に沿って設けられ、
前記第1連通路は、前記第1方向に延びていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記消音室の1つである第2消音室は、前記ケースの外縁との間に前記第1連通路を形成するように前記第1連通路の隣に設けられ、第2連通路を介して前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の前記一方と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記フィルタエレメントは、平板状に形成され、面に直交する方向に空気の透過を許容し、
前記第1方向は、前記フィルタエレメントの面と平行をなすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記フィルタエレメントと平行であり、かつ前記第1方向と直交する第2方向とすると、
前記ケースの前記第2方向における一側の外縁に前記第1連通路が設けられ、
前記ケースの前記第2方向における他側の外縁に、前記ダストサイド室に連通した吸気入口と、前記クリーンサイド室に連通した吸気出口とが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
前記フィルタエレメントに沿う仮想面は、前記第1消音室及び前記クリーンサイド室を通過することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気装置において、エアクリーナとレゾネータ(共鳴消音器)とを一体に形成したものが公知である(例えば、特許文献1、2)。このような吸気装置は、エアクリーナとレゾネータとを効率良く配置することができ、装置全体を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3648365号明細書
【特許文献1】特許第4254349号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘルムホルツ共鳴器であるレゾネータは、部屋(空洞、消音室)の体積、部屋の入口通路(首、連通路)の長さ、入口通路の開口面積によって、固有振動数が変化する。固有振動数を低下させるためには、部屋の体積を増加させる、又は入口管を長くする必要がある。しかし、部屋を大きくする、或は入口通路を長くすると、吸気装置が大型化するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、消音器を備えた吸気装置において、大型化を招くことなく、消音器の固有振動数を低下させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、内燃機関の吸気装置(1)であって、内部にダストサイド室(55)、クリーンサイド室(56)、及び少なくとも1つの消音室(61A)を有するケース(2)と、前記ダストサイド室と前記クリーンサイド室との連通部(38)に設けられたフィルタエレメント(45)とを有し、前記消音室の1つである第1消音室(61A)は、前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の一方と前記ケースの外縁との間に形成され、かつ前記第1消音室は前記ケースの外縁に沿って延びる第1連通路(61B)を介して前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の他方と接続されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、吸気装置において第1消音室、第1連通路、ダストサイド室、及びクリーンサイド室を効率良く配置することができ、吸気装置の大型化を招くことなく、第1連通路を長くすることができる。これにより、吸気装置の大型化を招くことなく、消音器の固有振動数を低下させることができる。
【0008】
上記の態様において、前記第1消音室は、前記ケースの第1方向(前後方向)における一側の外縁(8A)に沿って設けられ、前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の前記他方は、前記ケースの前記第1方向における他側の外縁(8D)に沿って設けられ、前記第1連通路は、前記第1方向に延びているとよい。
【0009】
この構成によれば、第1消音室と、第1消音室が接続されたダストサイド室又はクリーンサイド室との距離を長くして第1連通路を長くすることができる。
【0010】
上記の態様において、前記消音室の1つである第2消音室(62A)は、前記ケースの外縁(8B)との間に前記第1連通路を形成するように前記第1連通路の隣に設けられ、第2連通路を介して前記ダストサイド室及び前記クリーンサイド室の前記一方と接続されているとよい。
【0011】
この構成によれば、第1連通路の隣に第2消音室を配置することによって、ケース内の空間を効率良く使用することができる。これにより、吸気装置の大型化を招くことなく、第1消音室及び第2消音室を形成することできる。
【0012】
上記の態様において、前記フィルタエレメントは、平板状に形成され、面に直交する方向に空気の透過を許容し、前記第1方向は、前記フィルタエレメントの面と平行をなすとよい。
【0013】
この構成によれば、第1連通路がフィルタエレメントと平行に延びるため、ケースの大型化を招くことなく第1連通路を長くすることができる。
【0014】
上記の態様において、前記フィルタエレメントと平行であり、かつ前記第1方向と直交する第2方向(左右方向)とすると、前記ケースの前記第2方向における一側の外縁(8B)に前記第1連通路が設けられ、前記ケースの前記第2方向における他側の外縁(8C)に、前記ダストサイド室に連通した吸気入口(51)と、前記クリーンサイド室に連通した吸気出口(52)とが設けられているとよい。
【0015】
この構成によれば、第1連通路の入口が吸気入口及び吸気出口から離れた位置に配置される。そのため、第1連通路がダストサイド室に接続された場合においても、吸気に含まれる異物が第1連通路に進入し難くなる。
【0016】
上記の態様において、前記フィルタエレメントに沿う仮想面(S1)は、前記第1消音室及び前記クリーンサイド室を通過するとよい。
【0017】
この構成によれば、第1消音室及びクリーンサイド室をフィルタエレメントの側方に配置することによって吸気装置全体を薄く形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の構成によれば、消音器を備えた吸気装置において、大型化を招くことなく、消音器の固有振動数を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る吸気装置の斜視図
図2】実施形態に係る吸気装置の底面図
図3】実施形態に係る吸気装置の下ケース部材の平面図
図4】実施形態に係る吸気装置の断面図(図3のIV−IV断面図)
図5】リッド及びフィルタエレメントを省略して示す吸気装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る吸気装置1の実施形態について説明する。吸気装置1は、自動車の内燃機関の吸気通路に設けられる装置であり、エアクリーナ及びレゾネータの機能を有する。以下、説明のために、吸気装置1の各方向を図1に示すように定める。吸気装置1の各方向は、吸気装置1の車体に対する取り付け方向を限定するものでない。
【0021】
図1に示すように、吸気装置1は、外殻を形成するケース2を有する。ケース2は、下ケース部材3、上ケース部材4、及びリッド5を有する。下ケース部材3、上ケース部材4、及びリッド5は、樹脂から形成されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、下ケース部材3は、面が上下を向く底板7と、底板7に周縁に沿って設けられた縁壁8とを有し、上方に向けて開口した箱形をなす。底板7は、前後方向(第1方向)に短く、前後方向に直交する左右方向(第2方向)に長く形成されている。縁壁8は、底板7の前縁に沿って左右に延びる前縁壁8Aと、底板7の左右の側縁に沿って前後に延びる左縁壁8B及び右縁壁8Cと、底板7の後縁に沿って左右に延びる後縁壁8Dとを有する。前縁壁8A、左縁壁8B、後縁壁8D、及び右縁壁8Cは互いに連続し、環状をなす。前縁壁8A、左縁壁8B、後縁壁8D、及び右縁壁8Cの上端には、面が上方を向く、環状の下側フランジ9が形成されている。
【0023】
底板7の上面には、上方に向けて隔壁10が突設されている。隔壁10は、右縁壁8Cの内側面から左方に延びる第1壁部11と、第1壁部11の左端から前方に延びる第2壁部12と、第2壁部12の前端から左方に延びる第3壁部13と、第3壁部13の左端から後方に延びる第4壁部14と、第4壁部14から左方に延びる第5壁部15と、第5壁部15の左端から前方に延びる第6壁部16と、第6壁部16の前端から右方に延びる第7壁部17と、第7壁部17の右端から前方かつ右方に延びる第8壁部18と、第8壁部18の前端から前方に延び、前縁壁8Aに接続した第9壁部19と、第9壁部19の後端から右方に延びた第10壁部20と、前縁壁8Aにおける第9壁部19との結合部より右側の部分から後方に延びた第11壁部21と、前縁壁8Aにおける第11壁部21との結合部より右側部分から後方に延び、屈曲して左方に延びた第12壁部22と、右縁壁8Cにおける第1壁部11との結合部より前側の部分から左方に延びた第13壁部23とを有する。
【0024】
第1〜第10壁部11〜20は、下ケース部材3の内部を後部及び左端部を含む第1部分26と、前部及び右端部を含む第2部分27とに区画している。第2〜第4壁部12〜14は、第1壁部11、及び第5〜第13壁部23よりも低く形成されている。
【0025】
第10壁部20の右端は、第11壁部21の後端に対して左右に隙間をおいて配置されている。第12壁部22の左端は、第11壁部21の後端に対して左右に隙間をおいて配置されている。第13壁部23の左端は、第12壁部22の屈曲部に対して左右に隙間をおいて配置されている。
【0026】
図4及び図5に示すように、上ケース部材4は、後方に向けて下方に傾斜した上板31と、上板31の後部中央から下方に凹んだ凹部32とを有する。後述するように、凹部32を覆うようにリッド5が設けられ、上板31とリッド5は実質的に連続した面となるよう配置される。上板31の外周縁部には、面が下方を向く、環状の上側フランジ33が形成されている。上側フランジ33の下方を向く端面は、下ケース部材3の下側フランジ9の上方を向く端面と結合されている。上側フランジ33及び下側フランジ9は、例えば溶着によって結合されているとよい。
【0027】
凹部32は、上板31に対して下方にオフセットして配置された凹部底板35と、凹部底板35の左右の縁部から上板31に延びる左右の凹部側壁36と、凹部底板35の後縁から上板31に延びる凹部後壁37とを有する。凹部底板35は、面が上下を向き、上板31に対して傾斜している。凹部後壁37は、左右の凹部側壁36と連続している。凹部底板35と上板31との上下方向における距離は、後側より前側の方が大きくなっている。凹部底板35の前縁と上板31との間には、前後に貫通した第1開口38が形成されている。凹部底板35の前縁は、上下に延びる複数の縦壁39によって上板31に接続されている。各縦壁39は、左右に互いに離れて配置され、第1開口38を上下に横切っている。各縦壁39の間には、スリットが形成されている。凹部底板35の中央部には、厚み方向(上下方向)に貫通する第2開口41が形成されている。
【0028】
第1〜第13壁部11〜23の上端のそれぞれは、上ケース部材4の下面と結合している。詳細には、第1壁部11及び第5〜第13壁部15〜23は上ケース部材4の上板31の下面に結合され、第2〜第4壁部12〜14は凹部底板35の下面に結合されている。第2壁部12は凹部底板35の下面の右縁に結合され、第3壁部13は凹部底板35の下面の前縁(第2開口41より前側の部分)に結合され、第4壁部14は凹部底板35の下面の左縁に結合されている。第1壁部11は、上板31に結合されると共に右側の凹部側壁36にも結合されている。第5壁部15は、上板31に結合されると共に左側の凹部側壁36にも結合されている。
【0029】
図4に示すように、下ケース部材3の第1部分26は第2開口41を介して凹部32に連通し、下ケース部材3の第2部分27は第1開口38を介して凹部32に連通する。第1部分26と第2部分27とは、凹部32を介して連通し、凹部32を介さずに直接に連通しない。
【0030】
第2開口41には、フィルタエレメント45が配置されている。フィルタエレメント45は平板状に形成され、面に直交する方向に空気の透過を許容する。フィルタエレメント45は例えば空気中のダスト(異物)を濾過する濾紙であってよい。フィルタエレメント45の縁部には、略長方形のフレーム46が設けられている。フレーム46は、凹部底板35の上面における第2開口41の周縁部に結合されている。フレーム46は、例えばねじによって着脱可能に凹部底板35の上面に締結されているとよい。フィルタエレメント45及びフレーム46は第2開口41の全域を覆う。フィルタエレメント45は凹部底板35に取り付けられた状態で、面が上下を向き、前後方向及び左右方向と平行な方向に延在している。フィルタエレメント45が凹部底板35に取り付けられた状態で、フィルタエレメント45に沿う仮想面S1は上下方向と直交する。
【0031】
凹部32の上部は、リッド5によって覆われている。リッド5は、上板31の上面における凹部32の周縁部にねじによって着脱可能に締結されている。リッド5の下面の周縁部と上板31の上面との当接部にはシール部材が設けられているとよい。リッド5を開くことによって、フィルタエレメント45を交換することができる。
【0032】
図1に示すように、右縁壁8Cにおける第1壁部11が結合した部分より後側の部分には、第1部分26に連通する吸気入口51が形成されている。吸気入口51は、右縁壁8Cに突設された管51Aによって形成されている。吸気入口51は、ダクトを介して吸気の取入れ口であるエアインレットに接続されている。右縁壁8Cにおける第1壁部11が結合した部分より前側部分には、第2部分27に連通する吸気出口52が形成されている。吸気出口52は、右縁壁8Cに突設された管52Aによって形成されている。吸気出口52は、ダクトやスロットルバルブ、吸気マニホールド等を介して内燃機関の吸気ポートに接続されている。
【0033】
吸気は、吸気入口51から下ケース部材3の第1部分26、フィルタエレメント45、凹部32、及び第2部分27を順に通過して吸気出口52に流れる。吸気は、フィルタエレメント45においてダストが除去される。図3及び図4に示すように、吸気装置1のフィルタエレメント45より上流側かつ吸気が流れる空間をダストサイド室55とする。吸気装置1のフィルタエレメント45より下流側かつ吸気が流れる空間をクリーンサイド室56とする。第2開口41は、ダストサイド室55とクリーンサイド室56との連通部をなす。
【0034】
ダストサイド室55は、第1部分26において吸気入口51とフィルタエレメント45(第2開口41)とに接続する空間である。詳細には、ダストサイド室55は、下ケース部材3の底板7、後縁壁8D、右縁壁8Cの第1壁部11との結合部より後側の部分、及び第1〜第4壁部11〜14と、上ケース部材4の上板31の後縁部及び凹部底板35とによって形成されている。
【0035】
クリーンサイド室56は、リッド5によって閉じられた凹部32の空間と、第2部分27において第1開口38と吸気出口52とに接続する空間とを有する。詳細には、クリーンサイド室56のうちで第2部分27に対応する部分は、下ケース部材3の底板7、第1〜第3、第8、第10、第12、第13壁部11〜13、18、20、22、23、右縁壁8Cの第1壁部11との結合部より前側の部分、上ケース部材4の上板31によって形成されている。
【0036】
図3に示すように、前縁壁8A、左縁壁8B、第7〜第9壁部17〜19、底板7、及び上板31は、第1消音室61Aを形成する。左縁壁8B、第6壁部16、底板7、及び上板31は、第1連通路61Bを形成する。第1消音室61A及び第1連通路61Bは、第1レゾネータ61を形成する。第1消音室61Aは、ケース2の前縁とクリーンサイド室56との間に形成されている。すなわち、第1消音室61Aは、前後方向(第1方向)において、ダストサイド室55が設けられたケース2の後縁と相反する前縁に設けられている。第1消音室61Aは、ダストサイド室55と離間するよう設けられていてもよく、第1消音室61Aとダストサイド室55との間に、クリーンサイド室56や他の消音器の一部が配置されていてもよい。第1連通路61Bは、ケース2の左縁に沿って前後に延び、第1消音室61Aと、ケース2の後縁に沿って設けられたダストサイド室55とを接続している。第1消音室61A及び第1連通路61Bは、左右方向(第2方向)において吸気入口51及び吸気出口52が設けられたケース2の右縁と相反する左縁に設けられている。
【0037】
第4〜第7壁部14〜17、底板7、及び上板31は、第2消音室62Aを形成する。第4壁部14の前端と第7壁部17の右端とは、それらの間に第2消音室62Aとクリーンサイド室56とを接続する第2連通路62Bを形成する。第2消音室62A及び第2連通路62Bは、第2レゾネータ62を形成する。第2消音室62Aは、ケース2の左縁との間に第1連通路61Bを形成するように、第1連通路61Bの右隣に設けられている。第2消音室62Aの右隣にはダストサイド室55が設けられている。
【0038】
前縁壁8A、第9〜第11壁部19〜21、底板7、及び上板31は、第3消音室63Aを形成する。第10壁部20の右端と第11壁部21の後端とは、それらの間に第3消音室63Aとクリーンサイド室56とを接続する第3連通路63Bを形成している。第3消音室63A及び第3連通路63Bは、第3レゾネータ63を形成する。第3消音室63Aは、ケース2の前縁に沿って設けられ、第1消音室61Aの右隣に設けられている。
【0039】
前縁壁8A、第11及び第12壁部21、22、底板7、及び上板31は、第4消音室64Aを形成する。第11壁部21の後端と第12壁部22の左端とは、それらの間に第4消音室64Aとクリーンサイド室56とを接続する第4連通路64Bを形成している。第4消音室64A及び第4連通路64Bは、第4レゾネータ64を形成する。第4消音室64Aは、ケース2の前縁に沿って設けられ、第3消音室63Aの右隣に設けられている。
【0040】
前縁壁8A、右縁壁8C、第12及び第13壁部22、23、底板7、及び上板31は、第5消音室65Aを形成する。第12壁部22の屈曲部(後端)と第13壁部23の左端とは、それらの間に第5消音室65Aとクリーンサイド室56とを接続する第5連通路65Bを形成している。第5消音室65A及び第5連通路65Bは、第5レゾネータ65を形成する。第5消音室65Aは、ケース2の前縁に沿って設けられ、第4消音室64Aの右隣に設けられている。第1及び第3〜第5消音室61A、63A〜65Aは、左右に並んで配置され、クリーンサイド室56(ケース2)の前縁を構成する。
【0041】
第1〜第5レゾネータ61〜65は、ヘルムホルツ共鳴器であり、固有振動数を低減したい騒音の振動数と合わせることによって、騒音を低減することができる。第1〜第5レゾネータ61〜65の固有振動数は、以下の式1によって表され、消音室61A〜65A(空洞)の体積、連通路61B〜65B(首)の長さ及び開口面積によって定まる。
ω=c×√(S/VL) ...(1)
ここで、ωは固有振動数[Hz]、cは音速[m/s]、Sは連通路の開口面積[m]、Lは連通路の長さ[m]、Vは消音室の体積[m3]である。
【0042】
第1〜第5消音室61A〜65Aは、フィルタエレメント45の側方(前後及び左右)に配置されている。フィルタエレメント45に沿う仮想面S1は、第1〜第5消音室61A〜65Aを通過している。また、仮想面S1は、クリーンサイド室56の一部を通過している。
【0043】
底板7の下面の適所には、ケース2を車体又は内燃機関に締結するための複数の締結片71が設けられている。締結片71はゴムブッシュ等の緩衝材を介し、ねじ等によって車体等に結合されているとよい。ケース2は、例えば、内燃機関のヘッドカバーの上部に締結されるとよい。
【0044】
実施形態に係る吸気装置1は、レゾネータ61〜65、ダストサイド室55、及びクリーンサイド室56を効率良く配置することができ、吸気装置1の大型化を招くことなく、各レゾネータ61〜65の固有振動数を所望の値に設定することができる。
【0045】
第1レゾネータ61の第1消音室61Aは、第1連通路61Bを介してダストサイド室55に接続されている。ダストサイド室55はケース2の後縁に設けられ、第1消音室61Aはケース2の前縁壁8Aとクリーンサイド室56の間に設けられ、第1連通路61Bはケース2の外縁(左縁)に沿って延びている。そのため、第1消音室61Aとダストサイド室55とを接続する第1連通路61Bを長くすることができ、第1レゾネータ61の固有振動数を低下させることができる。特に、ダストサイド室55がケースの後縁に設けられ、第1消音室61Aがケースの前縁に設けられ、第1連通路61Bが前後方向に伸びているため、第1連通路61Bをより長くすることができる。また、前後方向において第1消音室61Aとダストサイド室55との間には第2消音室62A及びクリーンサイド室56が配置されているため、ケース2内の空間を有効利用しつつ、第1連通路61Bを長くすることができる。
【0046】
また、第1連通路61Bがケース2の1つの外縁である左縁に沿って配置されているため、ケース2内のクリーンサイド室56や他の消音室62Aとの干渉を避けることができる。これにより、ケース2内の空間を有効利用することができ、吸気装置1の小型化が可能になる。特に、第1連通路61Bの右隣に第2消音室62Aを配置することによって、第1消音室61A、第1連通路61B、及び第2消音室62Aを効率良く配置することができ、吸気装置1の一層の小型化が可能になる。
【0047】
右縁壁8Cに吸気入口51及び吸気出口52を設け、第1連通路61Bのダストサイド室55への開口端をケース2の左縁に設けたため、第1連通路61Bの入口が吸気入口51及び吸気出口52から離れた位置に配置される。そのため、吸気に含まれる異物が第1連通路61Bに進入し難くなる。これにより、第1連通路61Bの閉塞が防止される。
【0048】
フィルタエレメント45に沿う仮想面S1が第1〜第5消音室61A〜65A及びクリーンサイド室56を通過する。すなわち、第1〜第5消音室61A〜65A及びクリーンサイド室56を仮想面S1上に配置することによって、各消音室61A〜65A及びクリーンサイド室56をフィルタエレメント45の側方に配置することができ、吸気装置1を薄く形成することができる。また、第1消音室61Aとクリーンサイド室56をフィルタエレメント45の側方に配置することによって、第1連通路61Bをより長くすることができる。
【0049】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1消音室61Aをケース2におけるダストサイド室55が設けられた側の外縁(後縁)に設け、第1連通路61Bによって第1消音室61Aをクリーンサイド室56に連通させる構成としてもよい。すなわち、第1消音室61Aが、ケース2の外縁とダストサイド室55及びクリーンサイド室56の一方との間に形成され、ケース2の外縁に沿って延びる第1連通路61Bを介してダストサイド室55及びクリーンサイド室56の他方と接続されている構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 :吸気装置
2 :ケース
5 :リッド
7 :底板
8 :縁壁
8A :前縁壁
8B :左縁壁
8C :右縁壁
8D :後縁壁
10 :隔壁
11〜23 :第1壁部〜第13壁部
31 :上板
32 :凹部
38 :第1開口
41 :第2開口
45 :フィルタエレメント
46 :フレーム
51 :吸気入口
52 :吸気出口
55 :ダストサイド室
56 :クリーンサイド室
61〜65 :第1〜第5レゾネータ
61A〜65A :第1〜第5消音室
61B〜65B :第1〜第5連通路
S1 :仮想面
図1
図2
図3
図4
図5