(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記把持送出機構は、前記チャックスプリングを収容するスリーブと、該スリーブを前記軸筒に対して相対的に前方に付勢するクッションスプリングと、前記筆記芯に軸線方向の所定の負荷が加えられたときに前記スリーブが後退できる後退しろを更に有する、請求項3に記載のシャープペンシル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、
図1A及び
図1Bに基づいて本発明の第1実施形態を説明する。シャープペンシル1は、ノックボタン11aのノックキャップ11a1へのノック操作により先口3の先端から筆記芯Tが送り出されて突出する後端ノック型のシャープペンシルである。なお、以下の説明では、シャープペンシル1の先口3が配置される側を中心軸線方向(軸線方向)における前方とし、ノックボタン11aが配置される側を後方として説明する。
【0010】
シャープペンシル1は略円筒形状の軸筒本体2と略円錐形状の先口3とを備える。軸筒本体2と軸筒本体2の前方に配置される先口3とは後に詳述するように接続筒7を介して螺子締結される。軸筒本体2の後端には、ノックボタン11aが着脱可能に取り付けられる。ノックボタン11aは、後述する芯パイプ11bに着脱可能に嵌合するノックボタン本体11a2を有する。略筒状に形成されるノックボタン本体11a2の後部には、字消しホルダー11a3が固定される。字消しホルダー11a3にはその中心軸線に沿って貫通穴が形成される。字消しホルダー11a3の貫通穴及び略筒状に形成されたノックボタン本体11a2の内側を通過させて筆記芯Tをシャープペンシル1に補充することができる。字消しホルダー11a3の後端には、字消し5が着脱可能に取り付けられる。ノックボタン11aの後端の外周には、字消し5を覆うノックキャップ11a1が着脱可能に取り付けられる。
【0011】
ノックボタン11aの前方には、ノックボタン11aが着脱可能に嵌合される略筒状の芯パイプ11bが配置される。芯パイプ11bの前部は、芯パイプ11bのさらに前方に配置される略筒状のチャック継手11cに組み付けられる。略筒状に形成された芯パイプ11b及びチャック継手11cの内側を通して筆記芯Tをさらに前方に供給することができる。ノックボタン11a、芯パイプ11b及びチャック継手11cは、筆記芯収容部11を構成する。
【0012】
軸筒本体2の前方側には、軸筒本体2の内周面から径方向内側に向けて環状に突出する環状突起2aが形成される。環状突起2aは、後に詳述するように軸線方向の前方に面する係合面を含む第1の段差を有する。一方、チャック継手11cの外周面上には、径方向外側に向けて突出する3つのフランジ11c1が形成される。チャック継手11cのフランジ11c1は、
図1Bに示すように周方向に120度間隔で配置された3つの突起として形成される。また、軸筒本体2の環状突起2aには、チャック継手11cのフランジ11c1が軸線方向において通過可能な3つの貫通溝2a1が
図1Bに示すように周方向に120度間隔で形成される。チャック継手11cのフランジ11c1、軸筒本体2の環状突起2aの貫通溝2a1及び第1の段差については後に詳述する。
【0013】
チャック継手11cの先端には、チャック12が固定される。チャック12は、中心軸線を中心として3方に分割されて筆記芯Tを径方向に挟圧することにより把持可能に形成される。チャック12は、チャック継手11cに固定される後端の基部12aと、基部12aから前方に延在する梁状部12bと、この梁状部12bの前端に形成される膨出部12cと、を有する。膨出部12cは、前端面部12c1と、最大外周面部12c2と、傾斜部12c3と、をさらに有する。前端面部12c1は、チャック12が筆記芯Tを把持したときに中心軸線に対して略直交する面となるように形成される。最大外周面部12c2は、側面視において中心軸線と略平行となる外周面として形成されて前端面部12c1と接続される。傾斜部12c3は、最大外周面部12c2と接続されて後方に向かって外径を減ずる傾斜面として後方に延在する。傾斜部12c3は、後端で梁状部12bに接続する。
【0014】
チャック12の膨出部12cの外周には、チャックリング13が嵌合する。チャックリング13は、その後端に内径方向へ向けて延存する環状壁を有する略筒状に形成されて、膨出部12cの最大外周面部12c2に後方から着脱可能に嵌合する。このチャックリング13の膨出部12cに対する嵌脱により、チャック12及びチャックリング13は、筆記芯Tを把持又は解放する。より詳細には、チャック12は、チャックリング13が膨出部12cに嵌合していないときには、梁状部12bの弾性により3分割されたチャック12の先端の各々が外径方向へ開いて筆記芯Tを解放するように形成される。一方、チャックリング13の先端がチャック12の傾斜部12c3上を摺動してチャック12の膨出部12cに嵌合してチャック12を閉じたときには、チャック12及びチャックリング13が筆記芯Tを径方向内側に挟圧して把持する。
【0015】
チャック継手11cの先端部分、チャック12の基部12a及び梁状部12bの外周には、略筒状に形成されたスリーブ14が配置される。スリーブ14の前端には内径方向に向けて環状に突出する環状壁部14aが形成される。また、スリーブ14の後方側の外周面上には外径方向に向けて環状に突出する環状突起14bが形成される。チャック継手11cの前方側の外周における、スリーブ14の後端面とチャック継手11cのフランジ11c1の前面との間には、コイルスプリングであるチャックスプリング15が軸線方向に圧縮されて配置される。従って、チャック12及び筆記芯収容部11は、チャックスプリング15によってスリーブ14に対して後方に付勢される。チャック12及び筆記芯収容部11は、チャックリング13をスリーブ14の環状壁部14aの前面に向けて押圧し、これによりチャック12とチャックリング13とが嵌合して筆記芯Tを把持する。
【0016】
スリーブ14の環状突起14bの後面と軸筒本体2の環状突起2aの前面との間には、コイルスプリングであるクッションスプリング16が軸線方向に圧縮されて配置される。スリーブ14及びクッションスプリング16はシャープペンシル1の把持送出機構10を軸線方向において弾性的に支持する。このため、筆記芯Tに軸線方向の所定の筆圧が負荷されたときは、筆記芯Tを把持した把持送出機構10が後方に後退して筆記芯Tの圧縮を軽減することができるから、筆記芯Tの折損を防ぐことができる。
【0017】
スリーブ14の前部の径方向外側及びスリーブ14の前方には、軸筒本体2と先口3とを接続する接続筒7が配置される。接続筒7の外周面上には、雄ねじ部7a及び7bが形成される。前側の雄ねじ部7aは、先口3の後部の内周面上に形成された雌ねじ部3aと螺合する。後側の雄ねじ部7bは、軸筒本体2の前部の内周面上に形成された雌ねじ部2bと螺合する。接続筒7を介して、軸筒本体2と先口3とが接続されることで、軸筒4を構成する。接続筒7は、その前方に配置されてスライダ8を収容するスライダ収容部7cと、スライダ収容部7cよりも大径の内部空間を有してスライダ収容部7cの後方に配置されたチャックリング収容部7dと、チャックリング収容部7dよりもさらに大径の内部空間を有してチャックリング収容部7dの後方に配置されたスリーブ収容部7eと、を有する。
【0018】
スリーブ収容部7eとチャックリング収容部7dとの接続部にはスリーブ14(環状壁部14a)の前端面と軸線方向で当接する段部7fが形成される。接続筒7の段部7fがスリーブ14を前方に向けて付勢するクッションスプリング16の付勢力を受け止めてスリーブ14のさらなる前方への移動を規制する。チャックリング収容部7dとスライダ収容部7cとの接続部には、前進したチャックリング13の前端が当接する段部7gが形成される。後退したチャックリング13の前端と段部7gとの間には所定の間隔が空けられてチャックリング13の前進を許容する。この所定の間隔だけ前進した後に、チャックリング13の前端が段部7gに当接し、チャックリング13がチャック12に対して相対的に後方へ向けて移動することでチャック12から離脱する。チャック12はスライダ収容部7c内をさらに前進して筆記芯Tを解放し、これにより筆記芯Tはシャープペンシル1における1ノック操作当たりの所定の送り出し量だけ送り出される。その後、シャープペンシル1の把持送出機構10がノック操作から解放されると、送り出された筆記芯Tを残してチャック12及びチャックリング13が後退し、筆記芯Tのより後方の位置を再び把持する。
【0019】
スライダ収容部7cの内部には、後退したスライダ8を収容することができる。スライダ8の先端部には、芯ガイド9が固定される。スライダ8の後端部の外周面には外径方向に突出した環状の係合部8aが形成される。スライダ8の係合部8aは接続筒7のスライダ収容部7cの先端部の内周面に形成された内径方向に突出する係合部と係合し、スライダ8の軸線方向の移動に対する所定の係合力をスライダ8に付与する。このため、例えば芯ガイド9に定規を当てて線を引く場合などに、芯ガイド9に軸線方向後方への力が作用した場合にも、芯ガイド9はスライダ8によって軸線方向に所定の係合力で支持されているために、芯ガイド9が後退してしまうことがない。一方で、接続筒7とスライダ8との係合により生じる所定の係合力を超える軸線方向後方への荷重を芯ガイド9に負荷した場合には、接続筒7とスライダ8との係合は解除されるから、芯ガイド9をスライダ収容部7c内に収容することができる。また、スライダ8の係合部8aの外周面は接続筒7のスライダ収容部7cの内周面に接触して摺動するように構成されている。このため、後に詳述するように把持送出機構10へのノック操作によってスライダ8がチャック12に押圧されて前方に向けて再び移動されない限り、芯ガイド9が意図せず先口3から突出してしまうことがない。このように芯ガイド9を軸筒4内に収容することができるので、例えばシャープペンシル1を服のポケット内に入れて持ち運ぶ場合などにも、芯ガイド9が折れ曲がるなどして破損してしまうことがない。
【0020】
スライダ8は、内径方向に突出する環状突起として形成されたブレーカ部8bをさらに有する。ブレーカ部8bは筆記芯Tを径方向に挟圧することで、筆記芯Tの軸線方向への移動に対する所定の抵抗力を負荷して、筆記芯Tがチャック12に把持されていないときに、筆記芯Tが意図せず軸線方向に移動してしまうことを防止する。本実施形態の筆記芯Tの把持及び送り出しをおこなう把持送出機構10は、筆記芯収容部11、チャック12、チャックリング13、スリーブ14、チャックスプリング15、クッションスプリング16を有する。本発明の複数の実施形態では、本実施形態の筆記芯収容部11のように、その一部(具体的には、ノックボタン11aの一部)が軸筒本体2から後方へ突出しているが、この場合にも、把持送出機構10は、実質的に軸筒4に収容されているものとみなす。
【0021】
スライダ8を軸筒4内に収容したシャープペンシル1をノック操作した際の把持送出機構10の作動について説明する。チャックスプリング15の弾発力に抗してノックボタン11aを前方にノック操作して筆記芯収容部11を前進させると、筆記芯収容部11に固定されたチャック12が筆記芯Tを把持した状態で前進する。接続筒7の段部7gとチャックリング13の前端が当接すると、チャック12の膨出部12cからチャックリング13が後方に離脱して、筆記芯Tは前方に送り出された位置で解放される。このとき、スライダ8の後端がチャック12の前端に押圧されて前進し、芯ガイド9が先口3の先端から突出した状態となって接続筒7の先端部とスライダ8の後端部とが係合する。ノックボタン11aの押圧(ノック操作)を解除すると、チャックスプリング15の弾発力によりチャック12及び筆記芯収容部11が後退する。このとき、接続筒7と係合したスライダ8のブレーカ部8bにより、筆記芯Tが前方に送り出された位置で挟持されているので、解放された筆記芯Tは後退しない。さらにチャック12及び筆記芯収容部11が後退すると、チャック12の膨出部12cにチャックリング13が嵌合し、チャックリング13の後面とスリーブ14の環状壁部14aの前面が当接したノック操作前の状態に戻って、筆記芯Tはノック操作前よりもその後方の位置を再びチャック12により把持される。
【0022】
ノックボタン11aのノック操作を繰り返すと、筆記芯Tを順次前方に送り出すことができるから、筆記芯Tが芯ガイド9の先端から突出して、シャープペンシル1で筆記をすることができる。シャープペンシル1の筆記時における筆圧は、筆記芯Tを把持するチャック12及びチャック12に嵌合したチャックリング13を介してチャックリング13と当接するスリーブ14に伝達される。さらにシャープペンシル1の筆記時における筆圧は、スリーブ14を弾性支持するクッションスプリング16を介して軸筒本体2の環状突起2aによって軸線方向において支持される。
【0023】
ここで、筆記芯Tにクッションスプリング16の取付荷重を超える所定の筆圧が負荷された場合には、クッションスプリング16が圧縮されてシャープペンシル1の把持送出機構10が後退する。本実施形態のシャープペンシル1では、
図1Bに示す通り、チャック継手11cのフランジ11c1は軸筒本体2の環状突起2aの貫通溝2a1を通過して後退することができるように構成されている。フランジ11c1が貫通溝2a1を通過して後退した後には、チャックスプリング15の後端はフランジ11c1に代わって軸筒本体2の環状突起2aにより軸線方向において支持される。
【0024】
チャックスプリング15の後端が軸筒本体2の環状突起2aで支持されると、チャック12をスリーブ14に対して後方に付勢するチャックスプリング15の付勢力の一部とチャックスプリング15を軸筒本体2の環状突起2aが前方に向けて支持する力とが相殺される。すなわち、筆記芯Tを把持するようにチャックスプリング15がチャック12を後方に向けて付勢する付勢力(チャック12に対するチャックスプリング15の出力)が減少される。このとき、チャックスプリング15の後端面(係合面)を含む把持送出機構10の第2の段差が軸筒本体2の環状突起2aが有する第1の段差と軸線方向において係合している。チャックスプリング15を軸筒本体2の環状突起2aが前方に向けて支持する力は軸筒本体2に対して負荷される筆圧により提供される。これにより、把持送出機構10に対するチャックスプリング15の出力が減少され、チャック12及びチャックリング13による筆記芯Tの把持が緩められる。
【0025】
チャック12及びチャックリング13による筆記芯Tの把持が緩められると、シャープペンシル1による筆記芯Tの芯保持力が低下して筆記芯Tが軸線方向後方へ後退可能となる。この際、チャック12及びチャックリング13による筆記芯Tの把持は少なくとも通常よりも緩められているので、従来のように筆記芯Tを通常通り把持した状態で芯すべりが生じてしまう場合と比較して、筆記芯Tの外周面が傷付けられてしまうことを防ぐことができる。このため、その後、再び筆記芯Tを送り出して使用する際のシャープペンシル1による筆記芯Tの芯保持力の低下を防ぐことができる。さらに前述のように芯ガイド9も先口3内に没入可能に構成されているため、本実施形態のシャープペンシル1の筆記芯Tに軸線方向に所定の荷重が負荷されたときには芯ガイド9及び筆記芯Tを共にシャープペンシル1内に収容することができる。本実施形態のシャープペンシル1では、筆記芯Tに意図せず軸線方向の所定の荷重が負荷された場合に芯ガイド9及び筆記芯Tの破損を防ぐことができる。さらに、筆記芯Tに意図して軸線方向の所定の荷重を負荷した場合にはノック操作を要することなく芯ガイド9及び筆記芯Tを容易にシャープペンシル1内に収容することができる。ここで、所定の荷重とは、例えば、クッションスプリング16が所定の距離だけ軸線方向に圧縮される荷重とすることができ、また例えば、シャープペンシル1が把持した筆記芯Tの芯すべりを生じてしまう荷重未満の荷重とすることができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態であるシャープペンシル1Aについて
図2に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態におけるスリーブ14及びチャック継手11cの形状を変更して、チャックスプリング15の配置を変更した。ここで、第1実施形態と同じ部材や箇所には同じ符号を付して、その説明は省略又は簡略化する。
【0027】
本実施形態におけるスリーブ14Aは、略筒状に形成されて、前端に環状壁部14Aaが形成され、後端の外周面上には外径方向に向けて環状に突出する環状突起14Abが形成される。チャックスプリング15は、スリーブ14A内におけるチャック12(梁状部12b)の外周に圧縮して配置される。チャックスプリング15の前端は環状壁部14Aaの後面に当接して支持される。チャックスプリング15の後端は、チャック継手11Acの前端面と当接して支持される。第1実施形態と同様に、チャック12及び筆記芯収容部11のスリーブ14Aに対する後方への相対的な移動は、チャックリング13の後面と環状壁部14Aaの前面とが当接することにより規制される。
【0028】
チャック継手11Acの外周面上には、軸筒本体2の環状突起2aの第1の段差に軸線方向で対向する第2の段差を有するチャック継手11Acの環状突起11Ac1が外径方向に突出して形成される。本実施形態の軸筒本体2の環状突起2aの第1の段差とチャック継手11Acの環状突起11Ac1の第2の段差とは軸線方向に離間して、筆記芯収容部11及びチャック12、チャックリング13及びスリーブ14Aの所定の後退ストロークS(後退しろS)が画成される。
【0029】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ノックボタン11aへのノック操作により筆記芯Tを繰り出すことができる。本実施形態のシャープペンシル1Aを使用中に筆記芯Tに軸線方向の所定の荷重が負荷された場合には、チャック12、チャックリング13、スリーブ14A及びチャック継手11Acは、クッションスプリング16の弾性支持力に抗して、後方に後退ストロークSだけ後退する。把持送出機構10Aが後退ストロークSだけ後方に移動すると、軸筒本体2の環状突起2aの前面(係合面)を含む第1の段差にチャック継手11Acの環状突起11Ac1の後面(係合面)を含む第2の段差が前方から当接して係合する。
【0030】
第1の段差と第2の段差とが軸線方向において係合すると、軸筒本体2から第1の段差及び第2の段差を介して軸線方向の前方に向けて負荷される筆圧とチャックスプリング15がチャック12を軸線方向の後方に向けて付勢する付勢力とが相殺されてチャックスプリング15の付勢力が低減される。本実施形態のチャックスプリング15がチャック12を軸線方向の後方に向けて付勢する付勢力は、チャックスプリング15のチャック12に対する出力であり、言い換えれば、チャックスプリング15の把持送出機構10Aに対する出力である。このチャックスプリング15の出力によって把持送出機構10Aは筆記芯Tを把持する。
【0031】
チャック12に対するチャックスプリング15の出力が低減されると、チャック12及びチャックリング13による筆記芯Tの把持が緩められる。このため、軸線方向に所定の荷重が負荷された筆記芯Tは、破損することなくスライダ8及び芯ガイド9と共に先口3内に没入することができる。従って、第1実施形態と同様に、芯ガイド9及び筆記芯Tの破損を防ぐことができ、さらに芯ガイド9及び筆記芯Tをノック操作を要することなく容易に先口3内に収容することができる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図3に基づいて説明する。本実施形態では、第2実施形態におけるシャープペンシル1Aの第1の段差及び第2の段差をシャープペンシルの後端部に配置するように変更したシャープペンシル1Bを説明する。よって、以下の説明では、前述の第1及び第2実施形態と同じ部材や箇所については同じ符号を用いて、その説明は省略又は簡略化する。
【0033】
本実施形態のシャープペンシル1Bは、第2実施形態の軸筒本体2の環状突起2a及びチャック継手11Acの環状突起11Ac1を含まない。一方で、軸筒本体2は、その後端に取り付けられる後端カバー6を有する。後端カバー6は、略筒状の後端カバー本体6aと、後端カバー本体6aの後端に形成された径方向内側に向けて突出する環状壁部6bとを有する。後端カバー6の環状壁部6bは第2実施形態の軸筒本体2の環状突起2aに相当し、軸線方向に面する前面2Bを含む第1の段差を有する。後端カバー本体6aの内周面と軸筒本体2の後端の外周面の各々には一対のねじが形成されて、軸筒本体2と後端カバー6とは着脱可能に締結される。このように、第2実施形態における軸筒本体2の環状突起2aに相当する部分を軸筒本体2とは別体として形成して軸筒本体2に組み付けるものとしてもよい。
【0034】
芯パイプ11bの後端には、ノックボタン11Baが後方から嵌合されて組み付けられる。本実施形態のノックボタン11Baは、ノックキャップ11Ba1と、ノックボタン本体11Ba2と、を有する。ノックキャップ11Ba1は、ノックキャップ11Ba1の径方向内側に向けて突出した複数の当接突起11Ba4をさらに有する。複数の当接突起11Ba4の前端をノックボタン本体11Ba2の後端に当接した状態で、ノックキャップ11Ba1がノックボタン本体11Ba2の後端に着脱可能に組み付けられる。ノックキャップ11Ba1の後端は、後端カバー6の環状壁部6bから後方に向けて突出する。ノックキャップ11Ba1の前端には、ノックキャップ11Ba1の径方向外側に向けて突出するフランジ部11Ba11が形成される。フランジ部11Ba11の後面と後端カバー6の環状壁部6bの前面との間には、ノックスプリング11Bbが軸線方向に圧縮されて配置される。
【0035】
ノックキャップ11Ba1の外周面には、第2の段差を有する大径部が形成され、第2の段差の後面(当接面)11Ba3は第1の段差の前面(当接面)2Bに軸線方向で対向する。ノックキャップ11Ba1はノックスプリング11Bbで軸線方向の前方に向けて弾性支持され、後端カバー6の第1の段差の前面2Bとノックキャップ11Ba1の第2の段差の後面11Ba3とは、軸線方向に所定の後退ストロークSを有するように配置される。
【0036】
本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、ノックボタン11Baへのノック操作により筆記芯Tを繰り出すことができる。本実施形態のシャープペンシル1Bを使用中に筆記芯Tに軸線方向の所定の荷重が負荷された場合には、チャック12、チャックリング13、スリーブ14A及びチャック継手11Bcは、クッションスプリング16及びノックスプリング11Bbの弾性支持力に抗して、後方に後退ストロークSだけ後退する。把持送出機構10Bが後退ストロークSだけ後方に移動すると、後端カバー6の第1の段差の前面2Bとノックキャップ11Ba1の第2の段差の後面11Ba3とが軸線方向で当接して係合する。
【0037】
第1の段差の前面2Bと第2の段差の後面11Ba3とが軸線方向において係合すると、軸筒本体2から第1の段差及び第2の段差を介して軸線方向の前方に向けて負荷される筆圧とチャックスプリング15がチャック12を軸線方向の後方に向けて付勢する付勢力とが相殺されてチャックスプリング15の付勢力が低減される。本実施形態のチャックスプリング15がチャック12を軸線方向の後方に向けて付勢する付勢力は、チャックスプリング15のチャック12に対する出力であり、言い換えれば、チャックスプリング15の把持送出機構10Bに対する出力である。このチャックスプリング15の出力によって把持送出機構10Bは筆記芯Tを把持する。
【0038】
チャック12に対するチャックスプリング15の出力が低減されると、チャック12及びチャックリング13による筆記芯Tの把持が緩められる。このため、軸線方向に所定の荷重が負荷された筆記芯Tは、破損することなくスライダ8及び芯ガイド9と共に先口3内に没入することができる。従って、第1及び第2実施形態と同様に、芯ガイド9及び筆記芯Tの破損を防ぐことができ、さらに芯ガイド9及び筆記芯Tをノック操作を要することなく容易に先口3内に収容することができる。なお、本実施形態ではシャープペンシル1Bはスリーブ14及びクッションスプリング16を備えるものとして説明したが、他の実施形態では、スリーブ14及びクッションスプリング16を備えることなく、ノックキャップ11Ba1及びノックスプリング11Bbのみによるクッション機構を構成するものとしてもよい。この場合には、チャックスプリング15はチャックリング13に対してチャック12を軸線方向の後方に付勢するものとしてもよい。この場合にはさらに簡単な構成により上述のシャープペンシル1Bと同様の作動を実現することができる。
【0039】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、本発明は以上説明した実施形態に限定されることはなく、種々の形態で実施することができる。例えば、第1の段差を有する環状突起2a(第1及び第2実施形態)及び環状壁部6b(第3実施形態)は軸筒本体2の内周面から径方向の内側に向けて、第2の段差を有するチャックスプリング15の後端(第1実施形態)、環状突起11Ac1(第2実施形態)及びノックボタンの大径部(第3実施形態)は把持送出機構10,10A及び10Bの各々の外周面から径方向の外側に向けて突出するように形成するものと説明した。しかし、これに限られず、例えば、縦断面視において一方を軸線方向に第1の係合面を有する凹状に形成し、他方を軸線方向に第2の係合面を有する凸状又は凹状に形成して各々係合可能に形成することもできる。第1及び第2の段差は軸線方向に係合可能に対向していればよい。また、軸線方向に係合することができる限りにおいて、第1及び第2の係合面は任意の傾斜角を有していてもよい。また、第1の段差と第2の段差は、それぞれ一つずつ形成して組み合わせるだけでなく、それぞれ複数を形成して複数を組み合わせてシャープペンシルを構成するものとしてもよい。
【0040】
また、チャックスプリング15はスリーブ14に対してチャック12を軸線方向の後方に向けて付勢するものと説明したが、筆記芯を把持するために構成されるチャックスプリングの把持送出機構に対する出力方向は軸線方向の後方に向けたものに限られない。さらに他の実施形態では、シャープペンシルは任意の出力方向へのチャックスプリングの把持送出機構に対する出力を軸筒に負荷される筆圧と相殺して筆記芯の把持を緩めるように構成された任意の把持送出機構を備えるものとしてもよい。また、ノックボタンは後端に配置される場合に限られず、サイドノック、サイドスライドあるいは回転操作により作動するノック機構とするものとしてもよい。また、筆記芯に軸線方向に負荷される荷重は静荷重であっても衝撃荷重であってもよい。例えば、シャープペンシルを筆記芯を下方に向けた状態で落下させてしまった場合には、以上説明した実施形態において軸筒に負荷されるものと説明した筆圧に代わってシャープペンシルの落下の慣性が軸筒に作用するから、この場合にも以上説明した実施形態と同様のシャープペンシルの作動を得ることができる。