(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の製造方法であって、前記製造方法が、nモル当量の式(II)のオルガノシラノール化合物:{R1−Si(R2)(R3)−[O−Si(R4)(R5)]m−OH(II)[式中、下付き文字m及びn並びにR1〜R5基は式(I)で定義される]を、式(A)の金属塩反応体:M1(X1)q (A)、又はその溶媒和物[式中、M1は、+3の形式的な正の酸化状態δ+を有する金属原子Alであり、下付き文字qは前記式(A)中のM1の形式的な正の酸化状態δ+であり、各X1は独立して、ハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンであり、式(A)中の各X1は独立して、式(I)中の各X1と同じであるか又は異なる]と、所望により非プロトン性ルイス塩基であるLの存在下で、接触させて、前記式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を得る工程を含む、製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。金属原子は、アルミニウム、セリウム、鉄、バナジウム、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせであってもよい。非プロトン性オルガノシラノキシド配位子は、オルガノシラノールの共役塩基形態であり、かつ非プロトン性オルガノシラノキシド配位子1個当たり平均して少なくとも1個のアニオン性官能基Si−O
−を含む、アニオンであり得る。非プロトン性オルガノシラノキシド配位子は、−OH、−NH、−SH、−PH、及び任意によりSiH基を含まない。金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物、組成物及び配合物は、建築、建設、消費者製品、エレクトロニクス、エネルギー、インフラストラクチャー、包装、電気通信、及び輸送などの産業における多様な用途で使用することができる。本発明を、複数の代表的で非限定的な実施形態及び実施例を開示することによって例示的に本明細書で説明する。一部の実施形態において、本発明は、以下の番号付けされた態様のいずれか1つである。
【0005】
態様1.式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物:{R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−O}
n−M
1(←L)
o(X
1)
p (I)[式中、M
1は、Alの場合は+1〜+3、Ceの場合は+2〜+4、Feの場合は+1〜+6、又はVの場合は+1〜+5の形式的な正の酸化状態δ
+を有する金属原子Al、Ce、Fe、又はVであり、下付き文字nは1〜δ
+の整数であり、下付き文字oは0、1又は2の整数であり、各Lは独立して非プロトン性ルイス塩基であり、下付き文字p=(δ
+−n)であり、各X
1は独立してハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンであり、下付き文字mは3〜100の整数であり、R
1〜R
5のそれぞれは独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基又は非プロトン性(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つは独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基又は非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基である]。(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基は、2〜20個の炭素原子と、N、O、S、及びP;あるいは、N、O、及びS;あるいはN及びO;あるいはN;あるいはO;あるいはS;あるいはPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子と、を含む。
【0006】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、分子又は分子の集合体であってもよい。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の各金属原子は独立して、上述の金属原子の既知の正の酸化状態を表す、形式的な正の酸化状態δ
+を有する。非プロトン性オルガノシラノキシド配位子の各アニオン性官能基Si−O
−は、−1に等しい形式的な負の酸化状態δ
−を有し、非プロトン性オルガノシラノキシド配位子は、−yに等しい全体の形式的な負の酸化状態δ
−を有し、ここでyは、非プロトン性オルガノシラノキシド配位子1個当たりのアニオン性官能基Si−O
−の総数に等しい整数である。一部の態様において、非プロトン性オルガノシラノキシド配位子1個当たり、すなわち分子のアニオン1個当たり、1個のアニオン性官能基Si−O
−が存在し、δ
−=−y=−1である。一部の実施形態では、(−y
*−1)=金属原子のδ
+(式中、
*は乗算記号である)であり、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は他のアニオン性配位子を含まない。他の実施形態において、(−y
*−1)<金属原子のδ
+であり、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、ハロゲン化物及び非プロトン性オルガノヘテリルアニオンから独立して選択される、p個の更なるアニオン性配位子を更に含み、p+(−y
*−1)=δ
+である。
【0007】
一部の態様において、少なくとも1個のM
1あるいは各M
1は、金属原子Al、Ce又はFe;あるいはAl、Ce又はV;あるいはAl、Fe又はV;あるいはCe、Fe又はVである。
【0008】
態様2.M
1がAlであり、δ
+が+1又は+2、あるいは+1又は+3、あるいは+2又は+3、あるいは+1、あるいは+2、あるいは+3である、態様1に記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。この化合物は、アルミニウム非プロトン性オルガノシラノキシドと呼ぶことができる。
【0009】
態様3.M
1がCeであり、δ
+が+2又は+3、あるいは+2又は+4、あるいは+3又は+4、あるいは+2、あるいは+3、あるいは+4である、態様1に記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。この化合物は、セリウム非プロトン性オルガノシラノキシドと呼ぶことができる。
【0010】
態様4.M
1がFeであり、δ
+が+2〜+6、あるいは+1〜+5、あるいは+2〜+5、あるいは+2〜+4、あるいは+1又は+2、あるいは+2又は+3、あるいは+2又は+4、あるいは+3又は+4、あるいは+1、あるいは+2、あるいは+3、あるいは+4、あるいは+5、あるいは+6である、態様1に記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。この化合物は、鉄非プロトン性オルガノシラノキシドと呼ぶことができる。
【0011】
態様5.M
1がVであり、δ
+が+2〜+5、あるいは+1〜+4、あるいは+2〜+5、あるいは+1又は+2、あるいは+2又は+3、あるいは+3又は+4、あるいは+4又は+5、あるいは+1、あるいは+2、あるいは+3、あるいは+4、あるいは+5である、態様1に記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。この化合物は、バナジウム非プロトン性オルガノシラノキシドと呼ぶことができる。
【0012】
態様6.M
1がAlであり、δ
+が+3である、M
1がCeであり、δ
+が+3又は+4である、M
1がFeであり、δ
+が+2又は+3である、又はM
1がVであり、δ
+が+5である、態様1〜5のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。
【0013】
態様7.下付き文字nが2〜δ
+の整数、あるいはδ
+である、態様1〜5のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。
【0014】
態様8.下付き文字oが0、あるいは1又は2、あるいは1、あるいは2の整数である、態様1〜7のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。oが0であるとき、Lは存在しない。oが1であるとき、1個のLが存在し、供与結合とも呼ばれる配位結合をM
1と形成する。oが2であるとき、2個の独立して選択されたLが存在するか、又は1個の二座配位子Lが存在し、合計2個の配位結合をM
1と形成する。Lとしての非プロトン性ルイス塩基は中性の、1モル当たりの分子量が50〜500グラム(g/mol)である電子対供与体化合物であり、アルケン、アルキン、式R
3Nの第三級アミン、式RCO
2Rのカルボン酸エステル、式RORのエーテル、式RC(=O)Rのケトン、式RSRのチオエーテル、式(R)
3Pのトリヒドロカルビルホスフィン(trihydrocarbylphosphine)、又はこれらの対応する二官能性類似体、例えばジアミン、ジカルボン酸エステル、ジエーテル、ジケトン、ジチオエーテル、若しくはジホスフィンなど、から独立して選択することができる。
【0015】
態様9.下付き文字p=(δ
+−n)であり、下付き文字nが2〜δ
+の整数、あるいはδ
+である、態様1〜8のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。
【0016】
態様10.下付き文字mが、3〜50、あるいは70〜100、あるいは40〜69、あるいは3〜39、あるいは3〜30、あるいは3〜20、あるいは3〜10、あるいは11〜100、あるいは15〜100、あるいは20〜100、あるいは3、あるいは4、あるいは5、あるいは6、あるいは7、あるいは8、あるいは9、あるいは10の整数であり、あるいはmが、3〜100の全てから選択される1つの(selected from all but one of)整数である、態様1〜9のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。mが3又は4の整数であるとき、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、金属非プロトン性オリゴオルガノシラノキシド化合物と称することができる。mが5〜100の整数であるとき、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、金属非プロトン性ポリオルガノシラノキシド化合物と称することができる。mが1又は2又は>100であれば、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、弱い接着を促進する又は接着を共促進する(co−promoting)効果を示す可能性があり、配合物に望ましくない物理的特性を付与する(例えば、mが1又は2であれば動的粘度が低くなりすぎるか又は揮発性になりすぎ、mが>100であれば動的粘度が高くなりすぎるか又はM
1の好ましい効果が失われる)。
【0017】
態様11.各X
1が独立して、ハロゲン化物、あるいは非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである、態様1〜10のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物;あるいはフッ化物、塩化物、又は臭化物;あるいはフッ化物又は塩化物;あるいはフッ化物;あるいは塩化物であり得る。非プロトン性オルガノヘテリルアニオンは、アルコキシド(すなわち、R
XO
−)、カルボキシレート(すなわち、R
XC(=O)O
−)、オキシメート(oximate)(すなわち、R
X2C=NO
−)、第二級アミノ(R
X2N−)、又はトリヒドロカルビルシラノキシド(すなわち、R
X3SiO
−)から選択することができる。各R
Xは独立して、(C
1−C
20)アルキル、(C
2−C
20)アルケニル、又は(C
6−C
20)アリール;あるいは(C
1−C
6)アルキル又は(C
2−C
6)アルケニル;あるいは(C
1−C
6)アルキル;あるいはメチル、エチル、又はフェニル、から選択される非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビルである。
【0018】
態様12.R
1〜R
5のそれぞれが独立して、以下の制限(i)〜(x):(i)R
1〜R
5のそれぞれが独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基又は非プロトン性(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基である;(ii)R
1〜R
5のそれぞれが独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基又は非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基である;(iii)R
1〜R
5のそれぞれが独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基である;(iv)R
1〜R
5のそれぞれが独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基である;(v)R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基又は非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基であり、残りのR
1〜R
5が独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基である;(vi)R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基であり、R
1〜R
5のうちの少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基であり、残りのR
1〜R
5が独立して、非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基である;(vii)R
1〜R
5のうちの少なくとも2つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基である、制限(v)又は(vi);(viii)R
1〜R
5のうちの少なくとも2つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル及び/又は非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基である、制限(i)〜(vii)のうちのいずれか1つ;(ix)R
1〜R
5のうちの少なくとも2つが独立して、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基である、制限(i)〜(viii)のうちのいずれか1つ;並びに(x)各非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基が独立して、非プロトン性(C
1−C
20)アルキル、非プロトン性(C
3−C
20)シクロアルキル、及び非プロトン性(C
6−C
20)アリール基から選択される、制限(i)〜(ix)のうちのいずれか1つ、のうちのいずれか1つで定義される、態様1〜11のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物。
【0019】
好適な非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基の例は、非プロトン性(C
2−C
10)アルケニル、非プロトン性(C
2−C
6)アルケニル、非置換(C
2−C
6)アルケニル、ビニル、アリル、1−ブテン−1−イル、1−ブテン−4−イル、及び1−ヘキセン−6−イルである。
【0020】
好適な非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基の例は、非プロトン性(C
2−C
10)アルキニル、非プロトン性(C
2−C
6)アルキニル、非置換(C
2−C
6)アルキニル、アセチレニル、プロパルギル、1−ブチン−1−イル、1−ブチン−4−イル、及び1−ヘキシン−6−イルである。
【0021】
好適な非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビル基の例は、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル;非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル;非プロトン性(C
1−C
10)ヒドロカルビル;非プロトン性(C
1−C
10)アルキル;非プロトン性(C
3−C
10)シクロアルキル;非プロトン性(C
6−C
10)アリール;非置換(C
1−C
10)アルキル;非置換(C
3−C
10)シクロアルキル;非置換(C
6−C
10)アリール;メチル;エチル;プロピル;1−メチルエチル;ブチル;1−メチルプロピル;2−メチルプロピル;1,1−ジメチルエチル;及びフェニルである。
【0022】
好適な非プロトン性(C
2−C
20)ヘテロヒドロカルビル基の例は、非プロトン性(C
2−C
10)ヘテロヒドロカルビル;非プロトン性(C
2−C
6)ヘテロヒドロカルビル;非プロトン性(C
2−C
6)ヘテロアルキル;非プロトン性(C
2−C
6)ヘテロシクロアルキル;非プロトン性(C
2−C
6)ヘテロアリール;非置換(C
2−C
6)ヘテロアルキル;非置換(C
2−C
6)ヘテロシクロアルキル;非置換(C
2−C
6)ヘテロアリール;1−メトキシエチル;オキシラニル;ピペリジン−1−イル;チアゾリル;及びピリジニルである。
【0023】
前述のR
1〜R
5及びR
X基(まとめて「R」)はいずれも、非置換であってもよく、又はハロ、非置換若しくはフルオロ置換(C
1−C
6)アルキル、非置換若しくはフルオロ置換(C
1−C
6)アルコキシ、非置換若しくはフルオロ置換(C
1−C
6)メルカプト、オキソ(=O;アルキル基上の)、非置換若しくはフルオロ置換フェニル、非置換若しくはフルオロ置換(C
1−C
6)アシル、非置換若しくはフルオロ置換(C
1−C
6)カルボキシ、非置換若しくはフルオロ置換(C
1−C
6)アルキルOC(=O)−、非置換若しくはフルオロ置換(C
2−C
6)エポキシ、非置換ジ((C
1−C
6)アルキル)アミノ、及びニトリル(−CN)から独立して選択される1つ以上の非プロトン性置換基で置換されていてもよい。ハロは、F、Cl、Br、又はI;あるいはF、Cl、又はBr;あるいはF又はCl;あるいはF;あるいはClである。特定の「R」基中に2つ以上の置換基が存在する場合、置換基の数は2〜パー置換(per substitution)である。典型的には、パー置換はハロ置換基、例えばトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はペンタクロロエチルに限定される。典型的には、特定の「R」基中の非ハロ置換基の最大数は、その「R」基の対応する非置換型の炭素原子の数と等しい。例えば、置換(C
6)ヒドロカルビル基は、それぞれが上記の通り独立して選択される置換基を最大で6個含み得る。
【0024】
R
1〜R
5及びR
X基のいずれか1つ以上におけるフルオロ置換基は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の25℃での貯蔵寿命安定性(shelf−life stability)を向上させ得る。あるいは、R
1〜R
5及びR
X基のいずれか1つ以上における非置換ジ((C
1−C
6)アルキル)アミノ置換基は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の25℃での貯蔵寿命安定性を低下させ得る。一部の実施形態において、非置換ジ((C
1−C
6)アルキル)アミノ置換基は、それを含む置換された式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の分子の集合体をゲル化することを可能にし得る。基材表面のプライマー処理、又はサーマルインターフェースマテリアル(thermal interface material)として使用するための熱ゲルの形成などにおいて用いられ得る用途では、ゲル化が望ましい場合がある。ゲル化が好ましくない用途では、又は長期間の貯蔵時間を可能にするためには、非置換ジ((C
1−C
6)アルキル)アミノ置換基を含む式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を溶媒中で希釈し、それによりゲル化を抑制又は防止することができる。
【0025】
(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、その溶媒和物を含む。溶媒和物は、非プロトン性有機溶媒分子を更に含むこと以外は記載の式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物であると定義することができる。溶媒分子は、N、O及びSから独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい。好適な有機溶媒の例は、カルボン酸エステル、エーテル、及びケトンなどである。
【0026】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、その中の金属及び/又は非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基及び/又は非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基の濃度によって特徴付けることができる。あるいは、又は加えて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基及び/又は非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基のモル数対金属のモル数のモル比によって特徴付けることができる。モル比は、「Unsub/Met」と略してもよく、ここで「Unsub」は非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基及び非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基の総モル数であり、「Met」は金属原子のモル数である。一部の実施形態において、Unsub/Metは、1〜2δ
+、あるいは1〜δ
+、あるいは1、あるいは2、あるいは3である。
【0027】
態様13.態様1〜12のいずれか1つに記載の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物と、少なくとも1つの他の構成要素と、を含む組成物。組成物は、その中の式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の濃度によって特徴付けることができる。濃度は、組成物の5〜<100重量パーセント(wt%)、あるいは10〜<100wt%、あるいは20〜<100wt%、あるいは50〜<100wt%、あるいは67〜<100wt%、あるいは75〜<100wt%、あるいは90〜<100wt%、あるいは50〜80wt%、あるいは20〜50wt%、あるいは99〜<100wt%であり得る。wt%濃度は、組成物に添加された構成要素の量を追跡することによって決定することができる。あるいは、又は加えて、構成要素(A)中の非プロトン性(C
2−C
20)アルケニル基及び非プロトン性(C
2−C
20)アルキニル基の総濃度は、構成要素(A)1グラム当たり>0〜10ミリモル(mmol/g)、あるいは>0〜5mmol/g、あるいは0.5〜5mmol/g、あるいは1.0〜4.0mmol/gである。あるいは、又は加えて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、その中の金属の濃度によって特徴付けることができる。金属濃度は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物1グラム当たり0.01〜100ミリモル(mmol/g)、あるいは0.01〜50mmol/g、あるいは0.020〜20mmol/g、あるいは0.050〜10mmol/g、あるいは0.10〜5mmol/g、あるいは0.15〜5mmol/g(gは式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物のg)であり得る。mmol/g金属濃度は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を調製するために添加される構成要素の量を追跡することによって決定することができる。あるいは、組成物はその中の金属の濃度によって特徴付けることができる。金属濃度は、組成物の5〜<100モルパーセント(mol%)、あるいは10〜<100mol%、あるいは20〜<100mol%、あるいは50〜<100mol%、あるいは67〜<100mol%、あるいは75〜<100mol%、あるいは90〜<100mol%、あるいは50〜80mol%、あるいは20〜50mol%、あるいは99〜<100mol%であり得る。金属濃度mol%は、組成物に添加された構成要素の量を追跡することによって決定することができる。
【0028】
組成物の少なくとも1つの他の構成要素は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物とは構造;相;機能;存在する場合は金属含量;存在する場合はケイ素含量;プロトン性(proticity);又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせが異なる。少なくとも1つの他の構成要素は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物と同じ相、あるいは異なる相であってもよい(例えば、両方が固体であってもよく、又は一方が液体であり他方が固体であってもよい)。少なくとも1つの他の構成要素は、接着促進効果がなくてもよく、あるいは接着促進効果を示してもよい。少なくとも1つの他の構成要素は、Si原子を含まなくてもよく、あるいは含んでもよい。少なくとも1つの他の構成要素は、金属原子を含まなくてもよく、あるいは含んでもよい。少なくとも1つの他の構成要素は、非プロトン性であってもよく、あるいはプロトン性であってもよい。少なくとも1つの他の構成要素の例は、構成要素(a)〜(h)である:(a)式(II)のオルガノシラノール化合物:R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OH(II)(式中、下付き文字m及びR
1〜R
5基は式(I)で定義される);(b)式(III)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子中間体:R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OM
2(←L)
o(X
1)
p(III)(式中、下付き文字m、o及びp並びにR
1〜R
5基、L基及びX
1基は独立して、式(I)で定義され、金属原子M
2は、第1族の元素又は第2族のヘミ元素(hemi−element)である);(c)式(IV)のオルガノシラン−ジオール化合物:H−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OH(IV)(式中、下付き文字m及びR
4〜R
5基は式(I)で定義される);(d)式(V)のオルガノシラノキシド−オール化合物:H−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OM
2(←L)
o(X
1)
p(V)(式中、下付き文字m、o及びp並びにR
4〜R
5基、L基及びX
1基並びに金属M
2は式(III)で定義される);(e)式(VI)の二金属オルガノシラン−ジオキシド:R
6−OM
1−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−O−M
1O−R
6(VI)(式中、各R
6は独立して、{R
1−Si(R
2)(R
3)−又はX
1であり、下付き文字m、金属M
1、並びにR
1〜R
5基及びX
1基は独立して、式(I)で定義される);(f)式(VII)の金属オルガノシラン−ジオキシド:c[−[
*O−Si(R
4)(R
5)]
m−O−M
1*]O−R
6(VII)(式中、「c[
*...
*]」は、
*OがM
1*に結合している環状基を表し、各R
6は独立して、{R
1−Si(R
2)(R
3)−又はX
1であり、下付き文字m、金属M
1、並びにR
1〜R
5基及びX
1基は独立して、式(I)で定義される);及び(g)式(VIII)のジ−エンドキャップされた(di−endcapped)オルガノシランジオール化合物:R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−O−Si(R
2)(R
3)−R
1(VIII)(式中、下付き文字m及びR
1〜R
5基は式(I)で定義される);並びにこれらの組み合わせ。典型的には、組成物は、ケイ素結合ヒドロキシル基(Si−OH)を有する化合物を含まない(すなわち、存在しない)。例えば、典型的には組成物は、式(II)、(IV)及び(V)の化合物を含まない。
【0029】
他の態様では、本発明は、式(VI)の二金属オルガノシラン−ジオキシドを含む。これらの実施形態は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の代わりに、あるいはこれに加えて、式(VI)の二金属オルガノシラン−ジオキシドを含み得る。
【0030】
他の態様では、本発明は、式(VII)の金属オルガノシラン−ジオキシドを含む。これらの実施形態は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の代わりに、あるいはこれに加えて、式(VII)の二金属オルガノシラン−ジオキシドを含み得る。
【0031】
組成物は、「硬化性配合物」に関して後述するように、硬化性であるように配合することができる。したがって、硬化性組成物又は配合物の少なくとも1つの他の構成要素は、構成要素(a)〜(g)の代わりに又はこれに加えて、モノマー、プレポリマー、又は硬化性ポリマーを含み得る。一部の態様では、硬化性組成物又は配合物は、架橋剤、硬化触媒、又は両方を更に含む。硬化性組成物又は配合物は、後述するように、縮合硬化性、ヒドロシリル化硬化性及び/又はフリーラジカル硬化性であるように配合することができる。
【0032】
一部の実施形態において、M
2は、Li、Na、K及びCs;あるいはLi、Na及びK;あるいはLi及びNa;あるいはLi及びK;あるいはNa及びK;あるいはLi;あるいはNa;あるいはK、から選択される第1族の元素である。一部の実施形態において、M
2は、ヘミMg(hemi Mg)、ヘミCa、及びヘミBa;すなわち、0.5Mg、0.5Ca、及び0.5Baから選択される第2族のヘミ元素である。mが3又は4であるとき、オルガノシラノール化合物は、オリゴオルガノシラノール化合物と称することができ、mが5〜100であるとき、オルガノシラノール化合物は、ポリオルガノシラノール化合物と称することができる。
【0033】
態様14.態様13に記載の組成物を硬化させた硬化生成物。
【0034】
態様15.式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の製造方法であって、製造方法が、nモル当量の式(II)のオルガノシラノール化合物:{R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OH(II)[式中、下付き文字m及びn並びにR
1〜R
5基は式(I)で定義される]を、式(A)の金属塩反応体:M
1(X
1)
q (A)、又はその溶媒和物[式中、M
1は、Alの場合は+1〜+3、Ceの場合は+2〜+4、Feの場合は+1〜+6、又はVの場合は+1〜+5の形式的な正の酸化状態δ
+を有する金属原子Al、Ce、Fe、又はVであり、式(A)のM
1の金属原子は、式(I)のM
1の金属原子と同じであり、式(A)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ
+は、式(I)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ
+と同じであるか又は異なり、下付き文字q=式(A)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ
+であり、各X
1は独立して、ハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンであり、式(A)中の各X
1は独立して、式(I)中の各X
1と同じであるか又は異なる]と、所望により非プロトン性ルイス塩基であるLの存在下で、接触させて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を得る工程を含む、製造方法。
【0035】
式(II)のオルガノシラノール化合物は、市販の供給源から入手するか、又は式(IV)のオルガノシラン−ジオール化合物:H−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OH(IV)(式中、下付き文字m及びR
4〜R
5基は式(IV)で定義される)を選択的にエンドキャッピングすることによって合成することができる。式(IV)のオルガノシラン−ジオール化合物は、1分子当たり平均して各末端に1個のSiOH基を有し、この化合物を1モル当量の式R
1−Si(R
2)(R
3)−X
1のエンドキャッパー(endcapper)化合物(式中、R
1〜R
3は式(I)で定義され、X
1は独立して、ハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである)と接触させることによって選択的にエンドキャッピングしてもよい。非プロトン性オルガノヘテリルアニオンは、上記で定義される、例えば、アルコキシド(すなわち、R
XO
−)、カルボキシレート(すなわち、R
XC(=O)O
−)、オキシメート(すなわち、R
X2C=NO
−)、第二級アミノ(R
X2N−)、又はトリヒドロカルビルシラノキシド(すなわち、R
X3SiO
−)であり得る。各R
Xは独立して、(C
1−C
20)アルキル、(C
2−C
20)アルケニル、又は(C
6−C
20)アリール;あるいは(C
1−C
6)アルキル又は(C
2−C
6)アルケニル;あるいは(C
1−C
6)アルキル;あるいはメチル、エチル、又はフェニル、から選択される非プロトン性(C
1−C
20)ヒドロカルビルである。エンドキャッピング方法は当該技術分野において周知である。
【0036】
式(IV)のオルガノシラン−ジオール化合物:H−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OH(IV)は、市販の供給源から入手するか、又は当該技術分野において周知の方法によって製造することができる。例えば、縮合反応条件下で、水を式(B)のジオルガノシラン:(X
1)
2SiR
4R
5(B)(式中、R
4基及びR
5基は式(IV)で定義され、X
1基は独立して、上記で定義したハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである)と接触させることによって。
【0037】
態様16.式(A)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ
+が、式(I)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ+と異なり、製造方法が、還元又は酸化反応工程を行って、場合により金属塩反応体(A)の金属M
1の形式的な正の酸化状態δ
+を式(I)の金属オルガノシラノキシド化合物の金属M
1の形式的な正の酸化状態δ
+に変換する、工程を更に含む、態様15に記載の製造方法。還元又は酸化反応工程は、それぞれ還元又は酸化を行うための還元剤又は酸化剤を更に含んでもよい。式(A)中のM
1のδ
+が式(I)中のM
1のδ
+より大きい場合、還元剤が使用される。式(A)中のM
1のδ
+が式(I)中のM
1のδ
+未満である場合、酸化剤が使用される。還元又は酸化反応工程は、接触工程の前、その間、及び/又はその後に行われ得る。還元又は酸化反応工程は、接触工程と同じ又は異なる反応槽において行われ得る。
【0038】
態様17.式(A)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ
+が、式(I)中のM
1の形式的な正の酸化状態δ
+と同じであり、製造方法が、還元又は酸化工程を更に含まなくてもよく、還元剤又は酸化剤を更に含まなくてもよい、態様15に記載の製造方法。一部の実施形態において、式(A)中の各X
1は、式(I)中のX
1と同じである。一部の実施形態において、式(A)中のM
1のδ
+は、式(I)中のM
1のδ
+と同じであり、この方法は、還元又は酸化工程を更に含まず、還元剤又は酸化剤を更に含まず、各X
1は式(A)及び(I)において同じである。一部の実施形態において、各X
1は、ハロゲン化物、あるいは非プロトン性オルガノヘテリルアニオン、あるいはアルコキシドである。
【0039】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の製造方法は、オルガノシラノール前駆体化合物(例えば上述の式(II)のオルガノシラノール)を、ケイ素を含まない金属塩反応体(例えば、上述の式(A)の金属塩反応体)と接触させて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物及び後述の副生成物を含む生成物反応混合物を得る工程を含み得る。金属塩反応体(例えば、上述の式(A)の金属塩反応体)は、市販の供給源から入手するか、又はその多くが当該技術分野において周知の任意の好適な方法によって合成することができる。
【0040】
接触工程は、金属が式(I)中のM
1と同じではない中間体金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子錯体を経ることなく、オルガノシラノール前駆体化合物及び金属塩反応体から直接式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を調製する。式(A)中のX
1が独立してハロゲン化物である場合、接触工程及び生成物反応混合物は、金属が式(I)中のM
1と同じ金属であるオルガノヘテリル金属などの金属非求核塩基を更に含み、生成物反応混合物は、第2の副生成物を更に含む。副生成物は、オルガノヘテリル金属に対応するオルガノヘテリル−Hであり、ハロゲン化物塩に対応する金属ハロゲン化物塩である。オルガノヘテリルがアルコキシドであり、ハロゲン化物が塩化物である場合、副生成物は、アルコキシドに対応するアルコール及びハロゲン化物に対応する金属塩化物である。
【0041】
あるいは、式(A)中のX
1が独立して非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである場合、金属が式(I)中のM
1と同じ金属であるオルガノヘテリル金属などの金属非求核塩基は、接触工程、及びそれにより得られる生成物反応混合物に含めなくてもよい。例えば、式(A)中でX
1が独立してアルコキシドである場合、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の製造方法は、オルガノシラノール前駆体化合物(例えば上述の式(II)のオルガノシラノール)を、ケイ素を含まない金属アルコキシド塩反応体(例えば、各X
1が独立してアルコキシドである上述の式(A)の金属塩反応体)と接触させて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物及びアルコキシドに対応するアルコール副生成物を含む生成物反応混合物を得る工程を含み得る。
【0042】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物及び副生成物を含む生成物反応混合物は、「そのまま」、すなわち更に処理することなく使用してもよく、又は更に処理してもよい。生成物反応混合物の更なる処理は、そこから副生成物を除去すること、そこから溶媒を除去すること、そこから式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を単離及び/若しくは精製すること、並びに/又は生成物反応混合物の溶媒を他の溶媒と(置き換えるために)溶媒交換すること、を含み得る。オルガノヘテリル−Hである副生成物、例えばアルコール、及び溶媒は、蒸発、蒸留、ストリッピング、ブロッティング(blotting)、デカンテーション、摩砕(triturating)、抽出、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせなどの任意の好適な技術によって生成物反応混合物から除去することができる。金属ハロゲン化物である副生成物は、ろ過又は遠心分離/デカンテーションなどの任意の好適な技術によって生成物反応混合物から除去することができる。単離及び/又は精製は、そこから式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を沈殿又はろ過すること、あるいはそこから副生成物を沈殿又はろ過することを含み得る。沈殿は、生成物反応混合物を冷却することによって、及び/又は、沈殿させたいものが不溶性である有機液体などの不溶化添加剤を反応混合物に添加することによって、行うことができる。接触工程及び更なる処理工程は、大気及び湿気に感受性を有する材料のための従来の技術、例えば、真空ガスマニホールド機器(いわゆるシュレンクライン技術)、カニューレトランスファー(cannula transfer)、不活性ガス雰囲気、及び無水溶媒などを使用して行ってもよい。これらの技術はよく知られている。
【0043】
代替の実施形態において、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の製造方法は、金属がAl、Ce、Fe、又はVでない中間体金属非プロトンオルガノシラノキシド配位子錯体を経ることを含み得る。そのような実施形態において、この方法は、オルガノシラノール前駆体化合物(例えば、上述の式(II)のオルガノシラノール)を、有効量の第1族金属又は第2族ヘミ金属非求核塩基、例えば、第1族金属第2族ヘミ金属アルコキシド(例えば、カリウム第三級ブトキシド)、第1族金属第2族ヘミ金属第二級アミド(例えば、リチウムジイソプロピルアミド)、第1族金属第2族ヘミ金属カルボアニオン(carbanion)(例えば、第三級−ブチルリチウム)、第1族金属第2族ヘミ金属水素化物(例えば、NaH又はCaH
2)、グリニャール試薬(例えば、臭化エチルマグネシウム)、又は第1族金属第2族ヘミ金属ジシラザン(例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)などと事前に接触させて、金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子中間体及び中間体副生成物を含む中間体反応混合物を得ることを含む。中間体副生成物は、アルコキシドに対応するアルコール、第二級アミドに対応する第二級アミン、カルボアニオンに対応する炭化水素、分子状水素、グリニャール試薬に対応する炭化水素(例えば、エタン)、又はジシラザンに対応するビス(トリアルキルシリル)アミンである。第1族金属及び第2族ヘミ金属は、式(III)中のM
2に上記で定義され得る。第1族金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はセシウムであり得る。第2族ヘミ金属は、ヘミマグネシウム又はヘミカルシウム(すなわち、0.5Mg又は0.5Ca)であり得る。事前接触工程の後に、前段落で記載した接触工程が行われるが、ただし、オルガノシラノール前駆体化合物の代わりに金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子中間体が使用される。
【0044】
金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子中間体及び中間体副生成物を含有する中間体反応混合物は、「そのまま」、すなわち更に処理することなく使用してもよく、又は更に処理してもよい。中間体反応混合物の更なる処理は、全て次の接触工程の前に、そこから金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子中間体を単離及び/若しくは精製すること、又は中間体反応混合物を濃縮若しくは溶媒交換すること、を含み得る。単離及び/又は精製は、そこから金属非プロトン性オルガノシラノキシド配位子中間体を沈殿又はろ過すること、あるいはそこから副生成物を沈殿又はろ過することを含み得る。沈殿は、中間体反応混合物を冷却することによって、及び/又は、沈殿させたいものが不溶性である有機液体などの不溶化添加剤を中間体反応混合物に添加することによって、行うことができる。事前接触工程及び更なる処理工程は、大気及び湿気に感受性を有する材料のための従来の技術、例えば、真空ガスマニホールド機器(いわゆるシュレンクライン技術)、カニューレトランスファー、不活性ガス雰囲気、及び無水溶媒などを使用して行ってもよい。
【0045】
本明細書に記載の接触工程は独立して、典型的には、有機溶媒又はポリジメチルシロキサン流体などの溶媒中で行われるため、反応混合物は典型的には溶媒を更に含む。好適な非プロトン性有機溶媒の例は、イソアルカン、トルエン、キシレンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどのエーテル;2−プロパノール及び1−ブタノールなどのアルコール;メチルエチルケトンなどのケトン;並びにピリジンである。一部の態様では、溶媒は非プロトン性であるか、又はプロトン性である。接触工程は、−50℃〜150℃などの任意の好適な温度で、1分〜1日などの任意の好適な期間にわたって、行うことができる。一般に、接触温度が高いほど期間は短い。
【0046】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、そのまま使用してもよく、又はシリコーン配合物及び有機配合物を含む様々な配合物中の構成要素として使用してもよい。このような配合物の例は、それぞれがシリコーン配合物及び有機配合物を含む接着剤、コーティング、エラストマー、封入材、ポッティング材、及びシーラントである。そのまま使用される式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の実施形態は、プライマー、充填剤、処理剤、又は縮合反応触媒として使用され得る。プライマーは、接着、コーティング、エラストマー、封入(encapsulating)、ポッティング、又はシーリング(sealing)を必要とする基材上に使用され得る。充填剤処理剤は、未処理の充填剤に使用され得る。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物で処理され得る未処理の充填剤の例は、シリカ、窒化ホウ素、アルミナ、及び二酸化ジルコニウム;あるいはシリカ、窒化ホウ素、及びアルミナ;あるいはシリカ及び窒化ホウ素;あるいはシリカ及びアルミナ;あるいはシリカ;あるいは窒化ホウ素;あるいはアルミナ;あるいは二酸化ジルコニウムである。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物で処理され得る未処理の充填剤の更なる例は、金属粉末、セラミック粒子、及びこれらの混合物である。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物で処理され得る未処理の充填剤の更なる例は、カーボンナノチューブ(例えば、単層又は多層)、粉末状ダイヤモンド、粉末状グラファイト、グラフェン、及びカーボンブラックなどの炭素粒子である。金属粉末の例は、アルミニウム、コバルト、銅、金、鉄、ニッケル、パラジウム、白金、銀、スズ、チタン、亜鉛、及びこれらのいずれか2種以上の合金の粉末である。金属粒子は、金属酸化物又は金属窒化物表面層を有してもよい。金属粒子は、非金属コア(例えば、ガラスビーズ又は球)及びその表面に配置された外側金属シェルを含むコア−シェル粒子であってもよい。セラミック粒子の例は、酸化亜鉛;アルミナ;窒化アルミニウム若しくは窒化ホウ素などの窒化物;酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化銀、酸化亜鉛、若しくはこれらのいずれか2種以上の組み合わせなどの金属酸化物;アルミニウム三水和物、若しくは水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;オニキス、炭化ケイ素若しくは炭化タングステンなどの金属炭化物;又はチタン酸バリウムなどの金属チタン酸塩である。セラミック粒子は、金属酸化物若しくは金属窒化物表面層、又は支持体材料を有する金属粒子を含む金属粒子とは、少なくとも1つの特徴、構造、機能、反応性又は特性が異なる。縮合反応触媒は、モノマー、プレポリマー、及び/又は硬化性ポリマーの硬化を触媒するために使用され得る。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物によって硬化が触媒され得るモノマー、プレポリマー、又は硬化性ポリマーの例は、ウレタン、SiOH官能性シラン、及びSiOH官能性オルガノシロキサンである。ウレタンモノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマーの硬化により、縮合硬化ポリウレタンが得られる。SiOH官能性シラン又はオルガノシロキサンプレポリマー又は硬化性ポリマーの硬化により、縮合硬化ポリオルガノシロキサンが得られる。未処理の充填剤は、形状が立方体状、薄片状、粒状、不規則形状、針状、粉末、棒状、球状、又は立方体状、薄片状、粒状、不規則形状、針状、粉末、棒状、及び球状のうちのいずれか2つ以上の混合物であってもよい。
【0047】
シリコーン配合物中の構成要素として使用される式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の実施形態は、例えば、接着剤、コーティング、エラストマー、封入材、ポッティング材、又はシーラント配合物において、接着促進剤又は共促進剤として機能し得る。配合物は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を含まないこと以外は同一の配合物と比較して、基材に対する接着を強化することが予期される。接着剤、コーティング、エラストマー、封入材、ポッティング材又はシーラント配合物は、接着、コーティング、エラストマー機能、封入、ポッティング、又はシーリングを必要とする基材に適用され得る。接着促進剤として使用される式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の実施形態は、基材に対する接着剤、コーティング、エラストマー、封入材、ポッティング材、又はシーラント配合物の接着を強化するように機能し得る。
【0048】
接着共促進剤として使用される式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の実施形態において、配合物は式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物以外の接着促進剤である更なる構成要素、例えば従来の接着促進剤などを更に含んでもよい。接着共促進剤として機能する場合、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、接着剤、コーティング、エラストマー、封入材、ポッティング材又はシーラント配合物の基材に対する接着を相乗的に強めるように、従来の接着促進剤の接着促進効果を強化し得る。いずれの実施形態においても、基材は未処理(むき出し)であってもよく、又はそこに接着剤、コーティング、封入材、又はシーラント配合物を適用する前にプライマー処理してもよい。プライマー処理された基材は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物と同じであっても又は異なってもよいプライマーで前処理された基材であり、前処理は適用工程の前に行われる。
【0049】
一部の態様において、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物と、少なくとも1つの他の構成要素と、を含む組成物は、接着剤配合物、コーティング配合物、エラストマー配合物、封入材配合物、ポッティング材配合物、又はシーラント配合物として使用される。一部の態様において、配合物は有機配合物(例えば、エポキシ系接着剤配合物)である。他の態様において、配合物は、シリコーン接着剤配合物、シリコーンコーティング配合物、シリコーンエラストマー配合物、シリコーン封入材配合物、シリコーンポッティング材配合物、又はシリコーンシーラント配合物などのシリコーン配合物である。有機又はシリコーン接着剤配合物は、感圧性接着剤配合物であってもよい。
【0050】
配合物を用いて接着、コーティング、封入、ポッティング、又は封止するために好適な基材材料としては、ケイ酸塩ガラス、金属、有機ポリマー、ポリオルガノシロキサン、木材、紙、並びにケイ素及び炭化ケイ素などの半導体材料が挙げられる。接着、コーティング、封入、ポッティング、又はシーリングを必要とする基材は、容器、布地、プラスチックフィルム、紙、プリント回路基板、機械の、車両の、若しくは製造物品の構造部材、又はテキスタイルであり得る。
【0051】
配合物は、建築、建設、消費者製品、エレクトロニクス、エネルギー、インフラストラクチャー、包装、電気通信、及び輸送などの様々な産業において有用である。例えば、接着剤配合物は、光起電セルモジュールにおいて、光起電セルをサブストレート又はスーパーストレート(superstrate)に接着するための結合層として使用することができる。コーティング配合物を使用して、自動車用途などの車両用途におけるエアバッグをコーティングしてもよい。エラストマー配合物は、電子デバイスの振動抑制構成要素として使用してもよい。封入材配合物は、発光ダイオード(LED)などの固体光源、光起電若しくは太陽パネル若しくは電池などの光起電デバイス、又はプリント回路などの電子デバイスを封入するために使用してもよい。ポッティング材配合物は、マイクロインバータなどの電力変換器構成要素をポッティングするために使用してもよい。シーラント配合物は、スマートフォン又は薄型テレビのフレームにディスプレイパネルを封止するために使用してもよい。
【0052】
先に述べたように、組成物は、硬化性シリコーン配合物などの硬化性配合物となるように配合してもよい。硬化性シリコーン配合物は、縮合硬化性、ヒドロシリル化硬化性、フリーラジカル硬化性、又はデュアル硬化性(dual−curable)であるように配合することができる。一部の態様において、シリコーン配合物は、縮合硬化性及び/又はフリーラジカル硬化性、あるいはヒドロシリル化硬化性及び/又はフリーラジカル硬化性;あるいは縮合硬化性及び/又はヒドロシリル化硬化性、あるいは縮合硬化性、あるいはヒドロシリル化硬化性、あるいはフリーラジカル硬化性、あるいはデュアル硬化性である。デュアル硬化性配合物は、縮合及びフリーラジカル硬化機構又はヒドロシリル化及びフリーラジカル硬化機構によって硬化可能であり得る。フリーラジカル硬化は、放射線硬化、過酸化物硬化、又は両方を含み得る。硬化速度は、配合物に熱、圧力、又は両方を加えることによって高めることができる。
【0053】
硬化性シリコーン配合物の少なくとも1つの他の構成要素は、構成要素(a)〜(g)の代わりに又はこれに加えて、モノマー、プレポリマー、又は硬化性ポリマーを含み得る。硬化の際、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマーは、より大きいモル質量のポリマーに化学的に変換され、その後、ネットワークに変換される。一部の態様において、硬化性シリコーン配合物は、架橋剤、硬化触媒、又は両方を更に含む。架橋剤は、ネットワークを形成するために使用され得る。これらの前述の構成要素は、使用される所期の硬化機構に基づいて選択される。例えば、ヒドロシリル化硬化させるためには、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマーはケイ素結合不飽和脂肪族基を含み得、架橋剤はケイ素結合水素原子(SiH基)を含み得る。例えば、フリーラジカル硬化させるためには、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマー及び架橋剤は独立して、ケイ素結合不飽和脂肪族基を含み得る。縮合硬化のためには、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマー及び架橋剤は独立して、ケイ素結合加水分解性基を含み得る。デュアル硬化のためには、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマーは、2種の異なるタイプの硬化性基を含み得る。
【0054】
フリーラジカル硬化は、硬化を開始させるために放射線及び/又は過酸化物を使用する。放射線は、紫外線を含み得る。過酸化物は、無機又は有機過酸化物であってもよい。無機過酸化物は、ヒドロペルオキシドであり得る。有機過酸化物は、ペルオキシカルボン酸エステル又はペルオキシカルボン酸無水物であり得る。
【0055】
縮合硬化は、硬化剤としての水、及び所望により縮合反応触媒を使用する。典型的な縮合反応触媒はスズ(Sn)化合物である。ヒドロシリル化硬化は、ヒドロシリル化触媒及び/又は架橋剤を使用する。ヒドロシリル化触媒は典型的には、白金、ロジウム、ルテニウム、又はパラジウムに基づいている。典型的には、ヒドロシリル化触媒はPt触媒である。他の態様では、組成物は、チタン及び/又はジルコニウム非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を更に含み得る。
【0056】
したがって、一部の実施形態において、本発明は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物と式(VIII)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物:{R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−O}
n−M
3(←L)
o(X
1)
p(VIII)[式中、M
3は、+1〜+6の形式的な正の酸化状態δ
+を有するPt、+1〜+6の形式的な正の酸化状態δ
+を有するPd、+1〜+6の形式的な正の酸化状態δ
+を有するRh、+1〜+8の形式的な正の酸化状態δ
+を有するRu、+1〜+4の形式的な正の酸化状態δ
+を有するSn、+1〜+4の形式的な正の酸化状態δ
+を有するTi、又は+1〜+4の形式的な正の酸化状態δ
+を有するZrであり、下付き文字m、n、o、及びp;並びにL基、X
1基、及びR
1〜R
5基は独立して、式(I)で上記で定義される]との混合物を更に含む。式(VIII)の一部の態様において、Ptのδ
+は+2又は+4、Pdのδ
+は+2又は+4、Ruのδ
+は+3又は+4、Rhのδ
+は+3、Snのδ
+は+2又は+4、Tiのδ
+は+4、Zrのδ
+は+4である。混合物の一部の態様において、式(VIII)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物において、M
3はPt、Pd、Rh又はRu;あるいはPt又はRh;あるいはPt、あるいはPd、あるいはRh、あるいはRuであり、M
3はSn、Ti、又はZrのいずれでもない。混合物の他の態様において、式(VIII)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物において、M
3はSn、Ti、又はZr;あるいはSn又はTi;あるいはSn又はZr;あるいはTi又はZr;あるいはSn、あるいはTi、あるいはZrであり、M
3はPt、Pd、Rh、又はRuのいずれでもない。架橋剤は、1分子当たり平均して2個以上のケイ素結合水素原子(SiH基)を有するオルガノシロキサンであり得る。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、態様1〜11のいずれか1つに記載され得る。
【0057】
配合物は、1成分型配合物(1−part formulation)として、又は2成分型配合物(2−part formulation)などの多成分型配合物として配合してもよい。配合物の構成要素は、振とう又は撹拌などによって一緒に機械的にかき混ぜることなどの、任意の好適な手段によって一緒に混合することができる。配合物は、接着剤、コーティング、エラストマー化(elastomerizing)、封入、ポッティング、又はシーリング用途などの特定の用途での使用に関する説明書と共にそのまま包装してもよい。多成分型配合物は、複数のパッケージ中に包装してもよく、説明書は、特定の用途において使用する前に他の部分(part)と合わせるための指示を更に含んでもよい。式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を別個の部分に、他の構成要素を他の部分に保持し、その後、用途において使用する直前にこれらの部分を互いに混合してもよい。多成分配合物は、20℃〜40℃などの任意の好適な温度で貯蔵され得る。
【0058】
1成分型配合物において式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を使用する場合、1成分型配合物は、−20℃〜20℃などのより低温で貯蔵され得る。一部の実施形態において、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、1成分型又は多成分型配合物においてin situで製造され得る。例えば、式(II)のオルガノシラノール化合物:{R
1−Si(R
2)(R
3)−[O−Si(R
4)(R
5)]
m−OH(II)を1つの部分に、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマー及び架橋剤などの他の構成要素を別の部分に、触媒を更に別の部分に保持してもよく、式(A)の金属塩反応体:M
1(X
1)
q(A)を第4の部分に保持してもよく、その後、配合物を使用する直前に、第1及び第4の部分を加熱しながら合わせて、in situで式(I)の金属非プロトン性オルガノシロキサン化合物を形成してもよく、アルコールなどの副生成物を除去してもよく、その後、得られる生成物を他の部分と合わせて配合物を得てもよい。
【0059】
本発明の実施形態はまた、硬化性配合物を硬化させることによって調製される硬化生成物も含む。一部の態様において、硬化生成物は、硬化性有機配合物(例えば、硬化性エポキシ配合物)を硬化させることによって調製される硬化有機生成物である。他の態様では、硬化生成物は、硬化性シリコーン配合物のいずれか1つを硬化させることによって調製される硬化シリコーン生成物である。硬化は、70℃〜200℃、あるいは80℃〜150℃、あるいは90℃〜120℃の硬化温度で硬化性シリコーン配合物を加熱することによって実施することができる。有利には、硬化は、硬化シリコーン生成物が気泡を含まない硬化シリコーン生成物を生成することができる。
【0060】
有利には、硬化性シリコーン配合物を硬化させることによって調製される本発明の硬化シリコーン生成物は、硬化シリコーン生成物が基材に対して良好に接着するために、基材の表面に存在する含水率に対する向上した耐性を有し得る。このことは、特に基材表面の含水率が>0wt%〜≦1.8wt%である場合、本発明の硬化性シリコーン配合物をそこに適用する前に基材の表面を予備乾燥する必要がないであろうことを意味する。対称的に、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を含まないこと以外は同一の比較(非発明)硬化性シリコーン配合物の硬化生成物は、同じ含水率を有する基材表面に対して顕著に弱い接着を有し得る。
【0061】
有利には、硬化性シリコーン配合物を硬化させることによって調製される本発明の硬化シリコーン生成物の接着は、硬化性シリコーン配合物がヒドロシリル化硬化性又はフリーラジカル硬化性などの付加硬化性配合物である場合に更に向上し得る。ヒドロシリル化硬化性シリコーン配合物をヒドロシリル化硬化させることによって調製されるヒドロシリル化硬化シリコーン生成物によって基材に対する接着を達成するためには、70℃〜120℃、あるいは80℃〜110℃、あるいは90℃〜100℃の比較的低い接着生成温度(adhesion−producing temperature)での加熱で十分であり得る。対称的に、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物を含まないこと以外は同一の比較(非発明)ヒドロシリル化硬化性シリコーン配合物は、≧140℃のより高い接着生成温度を必要とし得る。本発明のヒドロシリル化硬化性シリコーン配合物が白金ヒドロシリル化触媒を含有する場合、接着の向上は更に強化され、熱に対する安定性は有利に高まり得、一方、非発明ヒドロシリル化硬化性シリコーン配合物がチタン酸テトラブチルなどのチタン触媒を含有し、低い熱安定性を示し得る。
【0062】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、シリコーンプレポリマー若しくは硬化性シリコーンポリマー、例えばジメチルシリコーンをベースとするプレポリマー及び硬化性ポリマーなど、又はメチル、フェニルシリコーンなどの他のシリコーン材料との適合性を高めることを可能にする液体であってもよい。この適合性により、有利には、硬化性シリコーン配合物、及びそれを硬化させることによって調製される硬化シリコーン生成物を光学的に透明にすること、配合物及び用途のフレキシブルな設計を可能となる。
【0063】
一部の実施形態において、式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物は、後述の実施例1A、1AA、1B〜1G、2A〜2E、3A〜3E、及び4Aのいずれか1つ、又はいずれか2つの組み合わせであり得る。
【0064】
実施例の任意の1つの述べられた特徴若しくは限定、任意の1つの述べられたマーカッシュの亜属(subgenus)若しくは種(species)、又は範囲若しくは部分範囲の任意の1つの述べられた数が、依拠されてもよく、請求項の補正のための適切な根拠を提供するように、この説明は意図的に記載されている。特徴又は限定の列挙の後に続く「及びその溶媒和物」及び「又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせ」などの包括的な表現は、その特徴又は限定のそれぞれ1つに対して独立して適用され、また、別個の特徴又は限定として存在する。
【0065】
本明細書で特に定義されていない限り、言及された一般的な用語は下記の意味を有する。あるいは(alternatively)は、異なる実施形態の前に置かれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、1つ以上を指す。いずれの比較例も、例示の目的でのみ使用され、先行技術ではないものとする。「含まない(free of)」又は「存在しない(lack)」は、全く存在しないこと、あるいは、例えば核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、
1H−NMR、
13C−NMR、又は
29Si−NMR)又はフーリエ変換赤外線(IR)分光法を使用して検出できないことを意味する。「本発明」及び「本発明の」は、代表的な実施形態又は態様を意味し、本発明全体を意味するわけではないものとする。IUPACは、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC Secretariat,Research Triangle Park,North Carolina,USA)である。要素A及びBのマーカッシュ群は、「A及びBから選択される要素」;「A及びBからなる群から選択される要素」;又は「要素A又はB」として同等に表現することができる。各要素は独立して、属の亜属又は種であり得る。「であってもよい、し得る、ことができる、ことがある(may)」は、可能な選択肢を与えるものであり、必須ではない。「作動可能な(operative)」は、機能的に可能又は有効であることを意味する。所望による、任意の(所望により、任意に)(optional(ly))とは、存在しない(又は除外される)か、あるいは存在する(又は含まれる)ことを意味する。特性は、その測定のための標準的な試験方法及び条件(例えば、粘度:23℃及び101.3kPa)を用いて測定される。整数の範囲が小数値を含まないことを除いて、範囲は、端点、部分範囲、並びにその中に包含される整数値及び/又は小数値を含む。構成要素の混合物からある構成要素を除去することは、その誘導体/生成物がその後、混合物の他の構成要素から物理的に分離されない限り、その構成要素を選択的に誘導体化/反応させて誘導体/生成物を形成することを含まない。
【0066】
本明細書で特に定義されていない限り、言及されている化学的専門用語は、IUPACによって、又は、IUPACにない用語は、Hawley’s CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY,11
th edition,N.Irving Sax&Richard J.Lewis,Sr.,1987(Van Nostrand Reinhold)によって、定義されている意味を有する。いくつかのIUPAC用語は、IUPAC.Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the「Gold Book」).Compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson.Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997).XML on−line corrected version:http://goldbook.iupac.org(2006−)created by M.Nic,J.Jirat,B.Kosata;updates compiled by A.Jenkins.ISBN 0−9678550−9−8.doi:10.1351/goldbookにおいて見いだされる。非プロトン性は、−OH基、−NH基、−SH基、及び−PH基を含まないことを意味する。重量平均分子量(「M
w」)などのポリマーの平均分子量は、ポリスチレン標準物質を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定する。化学元素及び化学元素の族は、元素の周期表(2013年5月01日版)においてIUPACによって公開されているものを意味するものとする。化合物は、分子又はそのような分子の集合体を意味するものとし、組成物は、2種以上の異なる化合物の混合物を意味するものとし、この混合物は非硬化性であるように構成されてもよく、あるいは硬化性であるように構成されてもよく、配合物は、音響学的、化学的、電気的、磁気的、機械的、光学的、物理的、放射線学的、若しくは熱的特性、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせなどの特定の材料特性を有するように特定の用途のために構成された組成物を意味するものとする。硬化オルガノシロキサンなどの硬化生成物は、それを製造するために使用される特定の反応体及び硬化条件に応じて変わる可能性がある構造を有し得る。この可変性は無制限ではないが、反応体の構造(例えば、骨格及び/又は硬化性基構造)並びに硬化の化学的性質及び条件に応じて制限される。1成分型の配合物は、硬化生成物を生成するために必要な割合で全ての構成要素を含む混合物を意味する。1成分型配合物は、硬化プロセスを開始する、加速させる、又は完了するために、水分(縮合硬化の場合)、熱(付加硬化の場合)、又は光(付加硬化の場合)などの外的要因を使用し得る。2成分型の配合物は、異なる反応性構成要素を2つの別個の補完的な区分に分けて、硬化の早期開始を防止する系を意味する。例えば、主要部分(primary part)には触媒ではなくモノマー、プレポリマー、又は硬化性ポリマーが含まれ得、補助部分(secondary part)には、モノマー、プレポリマー又は硬化性ポリマーではなく硬化触媒が含まれ得る。硬化の開始は、主要部分と補助部分を一緒に合わせて1成分型配合物を形成することによって実現される。「置換された」は、水素の代わりに、パー置換を含む1個以上の置換基を有することを意味する。各置換基は独立して、ハロゲン原子、−NH
2、−NHR、−NR
2、−NO
2、−OH、−OR、オキソ(=O)、−CN、−C(=O)−R、−OC(=O)R、−C(=O)OH、−C(=O)OR、−SH、−SR、−SSH、−SSR、−SC(=O)R、−SO
2R、−OSO
2R、−SiR
3、又は−Si(OR)
3であり得、式中、各Rは独立して、非置換(C
1−C
30)ヒドロカルビル、あるいは(C
1−C
6)ヒドロカルビルである。ハロゲン原子は、F、Cl、Br、又はI;あるいはF、Cl、又はBr;あるいはF又はCl;あるいはF;あるいはClである。各置換基、あるいは全ての置換基は非プロトン性、あるいはプロトン性であってもよい。ビヒクルは、担体、希釈剤、分散剤、貯蔵媒体、上清、又は他の材料のための溶媒としての役割を果たす液体を意味する。
【0067】
本明細書中のいずれの化合物も、天然存在形態及び/又は同位体濃縮された形態を含めて、全てのその同位体形態を含む。同位体濃縮された形態は、同位体濃縮された形態の検出が治療又は検査に役立つ医療又は偽造防止用途などの、更なる用途を有し得る。
【0068】
一部の態様において、本明細書に記載されている任意の組成物又は配合物は、元素周期表の第1族〜第18族の化学元素のうちの任意の1つ以上を含み得る。他の態様では、少なくとも1つのそのような化学元素は、そのような除外がその組成物又は配合物の存在を否定する場合を除き、組成物又は配合物から特に除外される。例えば、Si原子はケイ素化合物から除外されず、炭素原子は有機基から除外されない。一部の態様において、除外されない元素は、Si、O、H、C、N、F、Cl、Br、及びI;あるいはSi、O、H、C、F、及びClである。
【0069】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明され、本発明の実施形態は、この非限定的な実施例の特徴及び限定の任意の組み合わせを含み得る。周囲温度は別段の表示がない限り、約23℃である。
【実施例】
【0070】
29Si−NMR装置及び溶媒:Varian 400 MHz Mercury分光計を使用した。C
6D
6を溶媒として使用した。実施例において使用する−OH含量という用語は、生成物の総重量(又はモル)の百分率としてのHO−基の重量(又はモル)を意味し、ここでは、ケイ素原子に結合しているHO−基のみが含まれている。
【0071】
調製1、2、3、4、5、6、及び7:実施例の式(II)のオルガノシラノール化合物の合成。
【0072】
調製1:250mLの三口フラスコ中で、101.6グラム(g)のジ(OH末端)−PDMS流体(Gelest DMS−S12;「PDMS」はポリジメチルシロキサンを意味する)を、33.2gの1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラザンと混合した。0.1gのトリフルオロ酢酸(TFA)を添加して反応を触媒した。混合物を室温で80分間撹拌した後、約30℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(114.2g)として生成した。
29Si NMRに基づいて、生成物は、3.2wt%の−OH含量、及び5.5wt%のVi含量を有しており、50wt%を超える下記式のシリコーン流体:Vi(Me)
2Si[OSi(Me)
2]
nOH(式中、nは5又は6であり、Viはビニルであり、Meはメチルである)を含んでいた。
【0073】
調製2:1リットルの三口フラスコ中で、404.3gのジ(OH−末端)−ポリ(ジメチル)(ビニル,メチル)シロキサン流体(Dow Corning(登録商標)4−7042流体)を、80.0gの1,1,1,2,2,2−ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)と混合した。0.2gのTFAを添加して反応を触媒した。氷浴を用いて熱を除去し、温度を30℃未満に維持した。3時間後、約30℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(447.9g)として生成し、これは4.7wt%の−OH含量を有することを
29Si NMRで測定し、物質収支が保存されることを想定して10.2wt%のVi含量を有すると算出された。生成物は、50%を超える下記式のシリコーン流体:(Me)
3Si[OSi(Me)(Vi)]
nOH(式中、nは約4であり、Viはビニルであり、Meはメチルである)を含む。
【0074】
調製3(予測的(prophetic)):1リットルの三口フラスコ中で、405.2gのジ(OH−末端)−PDMS流体を79.9gの1,2−ジメチル−1,1,2,2−テトラビニルジシラザンと混合する。0.28gのTFAを添加して反応を触媒する。水浴を用いて熱を除去し、温度を30℃未満に維持する。2.5時間後、25℃〜30℃で5.5時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去する。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(427.5g)として生成し、これが3.25wt%の−OH含量、及び2wt%のVi含量を有することを
29Si NMRで測定する。生成物は、50%を超える下記式のシリコーン流体:Vi(Me)
2Si[OSi(Me)
2]
nOH(式中、nは5又は6であり、Viはビニルであり、Meはメチルである)を含む。
【0075】
調製4:250mLの三口フラスコ中で、103.7gのジ(OH−末端)−ポリ(フェニル,メチル)シロキサン(Dow Corning(登録商標)PB流体)を、15.38gの1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラザンと混合した。3滴のTFAを添加して反応を触媒した。混合物を室温で2時間撹拌した後、65℃で1時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(111.0g)として生成し、これが2.84wt%の−OH含量、及び2.98wt%のVi含量を有することを
29Si NMRで測定した。生成物は、50%を超える下記式のシリコーン流体:Vi(Me)
2Si[OSi(Me)(Ph)]
nOH(式中、nは4又は5であり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、Meはメチルである)を含む。
【0076】
調製5〜7:ジ(OH−末端)−ポリジオルガノシロキサンとジシラザンとの反応後に副生成物アンモニア(NH
3)を除去する代替方法:
【0077】
調製5:500mLの三口フラスコ中で、134.6gのジ(OH−末端)−ポリ(フェニル,メチル)シロキサン(Dow Corning(登録商標)PB流体)を、134.6gのトルエン及び16.3gのHMDZと混合した。0.1gのTFAを添加して反応を触媒した。混合物を室温で30分間にわたって撹拌した後、これを分液漏斗に移した。分液漏斗に260gのヘプタンを添加し、得られる溶液を、水洗液のpH値がpH6〜pH7になるまで250gの水で4回洗浄し、3回目の水洗工程で0.2gの酢酸を添加してpHを調整した。溶液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥することによってヘプタン溶液中に残存する残留水を除去し、50〜60℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(138.1g)として生成し、これが3.32wt%の−OH含量、及び0wt%のVi含量を有することを
29Si NMRで測定した。生成物は、50wt%を超える下記式のシリコーン流体:(Me)
3Si[OSi(Me)(Ph)]
nOH(式中、nは4又は5であり、Phはフェニルであり、Meはメチルである)を含んでいた。
【0078】
調製6:1リットルの三口フラスコ中で、432gのジ(OH−末端)−ポリ(フェニル,メチル)シロキサン(Dow Corning(登録商標)PB流体)を、320gのヘプタン及び64.6gの1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラザンと混合した。2.0gのTFAを添加して反応を触媒した。混合物を室温で1.5時間にわたって撹拌した後、これを分液漏斗に移した。溶液を500gのブライン(NaCl水溶液)で2回、1.0gの酢酸で酸性化した水500gで1回、その後、500gの中性pHの水で1回、洗浄した。無水硫酸ナトリウム上で溶液を乾燥することによってヘプタン溶液から残留水を除去した。55℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(425.1g)として生成し、これが4.09wt%の−OH含量、及び1.55wt%のVi含量を有することを
29Si NMRで測定した。生成物は、50wt%を超える下記式のシリコーン流体:Vi(Me)
2Si[OSi(Me)(Ph)]
nOH(式中、nは4又は5であり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、Meはメチルである)を含んでいた。
【0079】
調製7:2リットルの三口フラスコ中で、703.8gのジ(OH−末端)−PDMS流体(Gelest DMS−S12)を53.6gの1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラザンと混合した。1.35gのTFAを添加して反応を触媒した。混合物を室温で2時間にわたって撹拌した後、これを分液漏斗に移した。160gのヘプタンを混合物に添加し、このヘプタン溶液を、a)6.0gの酢酸を含有するブライン420g;b)1.0gの酢酸を含有するブライン420g;c)1.0gの酢酸を含有する水420g;及びd)pH中性の水420g、で連続して洗浄した。無水硫酸ナトリウム上で溶液を乾燥することによってヘプタン溶液から残留水を除去した。30℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(706.1g)として生成し、これが5.78wt%の−OH含量、及び3.22wt%のVi含量を有することを
29Si NMRで測定した。生成物は、50%を超える下記式のシリコーン流体:Vi(Me)
2Si[OSi(Me)
2]
nOH(式中、nは5又は6であり、Viはビニルであり、Meはメチルである)を含んでいた。
【0080】
実施例1A、1AA、1B、1C、1D、1E、2A、2B、2C、2D、2E、3A、3B、3C、3D、3E、4A、及び5A:式(I)の金属非プロトン性オルガノシラノキシド化合物の例の合成。
【0081】
実施例1A:2.70gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中70%)を、8.0gのトルエン及び15.70gの調製1の生成物シリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、約50℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(14.2g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは生成物1グラム当たり0.54ミリモルAl(mmol/g;1.46wt%)のAl含量及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0082】
実施例1AA:3.68gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中70%)を、13.0gのトルエン及び17.1gの調製1の生成物シリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、約50℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(15.6g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.67mmol/g(1.81wt%)のAl含量及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0083】
実施例1B:1.90gのチタンテトライソプロポキシド(TPT)を8.0gのトルエン及び16.35gの調製1のシリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、約50℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(15.15g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.44mmol/g(2.1wt%)のTi含量及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0084】
実施例1C:35gのジルコニウムn−プロポキシド(NPZ)溶液(n−プロパノール中70%)を8.0gのトルエン及び15.60gの調製1のシリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、約50℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(14.4g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.35mmol/g(3.2wt%)のZr含量及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0085】
実施例1D(予測的):5gの実施例1Aの生成物を、5gの実施例1Bの生成物と混合して、10gの所望の生成物(残留物)を透明な液体として得、物質収支が保存されることを想定して、これは0.27mmol/g(0.73wt%)のAl含量、0.22mmol/g(1.05wt%)のTi含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0086】
実施例1E(予測的):5gの実施例1Aの生成物を、5gの実施例1Cの生成物と混合して、10gの所望の生成物(残留物)を透明な液体として得、物質収支が保存されることを想定して、0.27mmol/g(0.73wt%)のAl含量、0.17mmol/g(1.6wt%)のZr含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0087】
実施例1F(予測的):2.70gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液の代わりに2.70gの鉄sec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中70%)を使用することを除いて、実施例1Aの手順を繰り返す。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(14.2g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.54mmol/g(3.1wt%)のFe含量及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0088】
実施例1G(予測的):2.70gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液の代わりに2.70gのバナジウムsec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中70%)を使用することを除いて、実施例1Aの手順を繰り返す。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(14.2g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.54mmol/g(2.75wt%)のV含量及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0089】
実施例2A:28.2gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中70%)を、30.0gのトルエン及び109.5gの調製2のシリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、60℃〜70℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(101.6g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.78mmol/g(2.1wt%)のAl含量及び3.6mmol/g(9.7wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0090】
実施例2B:12.8gのチタンテトライソプロポキシド(TPT)を10.0gのトルエン及び102.5gの調製2のシリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、60℃〜70℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(88.3g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.50mmol/g(2.4wt%)のTi含量及び3.6mmol/g(9.7wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0091】
実施例2C:24.5gのジルコニウムn−プロポキシド(NPZ)溶液(n−プロパノール中70%)を30gのトルエン及び119.6gの調製2のシリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、60℃〜70℃で2時間にわたって1〜3mmHgで、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(102.7g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.50mmol/g(4.5wt%)のZr含量及び3.5mmol/g(9.5wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0092】
実施例2D(予測的):9gの実施例2Aの生成物を、1gの実施例2Bの生成物と混合して、10gの所望の生成物(残留物)を透明な液体として得、物質収支が保存されることを想定して、これは0.70mmol/g(1.9wt%)のAl含量、0.05mmol/g(0.24wt%)のTi含量、及び3.6mmol/g(9.7wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0093】
実施例2E(予測的):9gの実施例2Aの生成物を、5gの実施例2Cの生成物と混合して、10gの所望の生成物(残留物)を透明な液体として得、物質収支が保存されることを想定して、これは0.70mmol/g(1.9wt%)のAl含量、0.05mmol/g(0.45wt%)のZr含量、及び3.5mmol/g(9.6wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0094】
実施例3A(予測的):29.0gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中75%)を、10gのトルエン及び149.9gの調製3の生成物シリコーン流体と混合する。混合物を室温で30分間撹拌した後、60℃〜70℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去する。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(132.8g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.66mmol/g(1.8wt%)のAl含量及び0.7mmol/g(2wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0095】
実施例3B(予測的):16.0gのチタンテトライソプロポキシド(TPT)を119.1gの部分的にキャッピングされたOH−末端シリコーン流体(調製3)と混合する。混合物を室温で30分間撹拌した後、60℃〜70℃で2時間にわたって1〜3mmHgで、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去する。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(107.8g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.51mmol/g(2.4wt%)のTi含量及び0.7mmol/g(2wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0096】
実施例3C(予測的):28.6gのジルコニウムn−プロポキシド(NPZ)溶液(n−プロパノール中70%)を5gのトルエン及び130.0gの調製3のシリコーン流体と混合する。混合物を室温で30分間撹拌した後、60℃〜70℃で2時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去する。残留物である(揮発物ではない)所望の生成物が透明な液体(120.7g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.50mmol/g(4.5wt%)のZr含量及び0.7mmol/g(2wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0097】
実施例3D(予測的):8gの実施例3Aの生成物を、2gの実施例3Cの生成物と混合して、10gの所望の生成物(残留物)を透明な液体として得、物質収支が保存されることを想定して、これは0.53mmol/g(1.4wt%)のAl含量、0.140mmol/g(0.5wt%)のTi含量、及び0.7mmol/g(2wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0098】
実施例3E(予測的):8gの実施例3Aの生成物を、2gの実施例3Bの生成物と混合して、10gの所望の生成物(残留物)を透明な液体として得、物質収支が保存されることを想定して、これは0.53mmol/g(1.4wt%)のAl含量、0.10mmol/g(0.9wt%)のZr含量、及び0.7mmol/g(2wt%)のVi含量を有すると算出される。
【0099】
実施例4A:1.82gのアルミニウムsec−ブトキシド溶液(sec−ブタノール中75%)を、20.3gの調製4のシリコーン流体と混合した。混合物を室温で30分間撹拌した後、75℃で2.5時間にわたって1〜3mmHgの減圧で、ロータリーエバポレーターを使用して揮発物を除去した。所望の生成物(残留物)を透明な液体(19.6g)として生成し、物質収支が保存されることを想定して、これは0.28mmol/g(0.75wt%)のAl含量及び1.1mmol/g(2.9wt%)のVi含量を有すると算出された。
【0100】
以下の特許請求の範囲は、参照により本明細書に組み込まれ、「請求項(「claim」及び「claims」)」という用語はそれぞれ「態様(「aspect」又は「aspects」)」という用語に置き換えられる。本発明の実施形態はまた、これらの得られた番号付けされた態様も包含する。