(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806870
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】過圧防止燃料タンク
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20201221BHJP
F16K 31/20 20060101ALI20201221BHJP
B64D 37/34 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
F02M37/00 311K
F02M37/00 301R
F02M37/00 301F
F16K31/20
B64D37/34
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-185629(P2019-185629)
(22)【出願日】2019年10月9日
(62)【分割の表示】特願2017-538973(P2017-538973)の分割
【原出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2020-16241(P2020-16241A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2019年10月9日
(31)【優先権主張番号】1550916
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516363204
【氏名又は名称】ゾディアック アエロテクニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エパル、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシェール、ミシェル
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第02327469(FR,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02532590(EP,A1)
【文献】
仏国追加特許公開第02299264(FR,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B64D 37/34
F16K 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンティング・システム(2)を含む燃料タンク(1)であって、前記ベンティング・システム(2)は、前記タンク(1)の中に作製された開口部(3)を閉じるためのフラップ(4)を含み、前記フラップ(4)は、フロート(7)の支配を受けており、また、前記タンク(1)の中にヒンジ様式で装着されており、閉位置および開いたベンティング位置を取るようになっており、前記閉位置において、前記タンク(1)の中の燃料のレベルが特定の閾値に到達するときに、前記フラップ(4)は、前記フロート(7)によって押されており、また、前記開いたベンティング位置において、燃料のレベルが前記閾値を下回るときに、前記フラップ(4)は、前記フロート(7)によって駆動されている、燃料タンク(1)において、前記フラップ(4)は、弁(8)を含み、前記弁(8)は、前記タンク(1)の中にヒンジ様式で装着されている第2のフロート(14)の支配を受けており、前記弁(8)が、閉位置、および、前記タンクの中の過圧を防止するために開いたベンティング位置を取るようになっており、前記閉位置において、前記タンク(1)の中の燃料の前記レベルが特定の閾値に到達するときに、前記弁(8)は、前記第2のフロート(14)によって押されており、また、前記開いたベンティング位置において、燃料のレベルが前記閾値を下回るときに、前記弁(8)は、前記第2のフロート(14)によって駆動されており、内部圧力によって前記弁(8)に及ぼされる力は、大気圧力および前記第2のフロート(14)の重量によって前記弁(8)に及ぼされる力の総和よりも小さいことを特徴とする、燃料タンク(1)。
【請求項2】
前記第2のフロート(14)が、アーム(15)によって前記弁(8)の支配を受けており、前記アーム(15)は、前記第2のフロート(14)によって前記弁(8)に及ぼされる前記力を増加させるためにレバーを形成していることを特徴とする、請求項1に記載のタンク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、航空機の燃料タンクの技術分野に関し、より具体的には、前記タンクの中の過圧を防止するために、燃料消費に応じてタンクの内部圧力を大気圧力と均等にするためのベンティング・システムを装備している燃料タンクに関する。
【0002】
本発明は、不活性ガスの注入によって不活性化システムの支配を受ける燃料タンクにおいて、とりわけ有利に適用できることを見出した。
【背景技術】
【0003】
タンクの中に作製された、外部への開口部を閉じるためのフラップを含むタイプのベンティング・システムを装備している、たとえば、航空機の燃料タンクが、先行技術から公知である。とりわけ、フラップは、フロートの支配を受けており、タンクの中にヒンジ様式で装着されており、閉位置および開いたベント位置を取るようになっており、閉位置において、タンクの中の燃料のレベルが特定の閾値に到達するときに、フラップは、フロートによって押されており、また、開いたベント位置は、燃料のレベルが前記閾値を下回るときに、フラップは、フロートによって駆動されている。
【0004】
換言すれば、燃料タンクを充填する局面の間に、増加している燃料のレベルが、フロートを押し、フラップを駆動し、タンクの開口部を閉じ、燃料がタンクから前記開口部を通して排出されないように防止することを可能にするまで、フロート弁は開いたままになっている。その後に、飛行時には、および、より具体的には、燃料消費局面では、燃料のレベルが減少し、フロートが、重力の効果によってフラップを開けるように駆動するようになっており、フラップが、開いたベント位置を取るようになっており、外部空気の流入によって、タンクの内部圧力と大気圧力の均等化を可能にするようになっている。
【0005】
しかし、ベンティング・システムを装備しているこのタイプのタンクは、その構造に固有の特定の不利益を有している。
【0006】
実際に、たとえば、そのようなタンクを含む航空機のピッチングおよびローリングの間の、タンクの内側の燃料の移動は、フロートの作用によって、望ましくないフラップの閉鎖を引き起こす可能性がある。とりわけ、これは、前記タンクが不活性ガスの注入によって不活性化システムの支配を受けるときに、主な不利益となる。実際に、航空学の分野において、および、航空機安全に関する新しい要件を満たすために、および、より具体的には、タンクの中の空気および燃料蒸気の混合物の燃焼性のリスクを回避するために、タンクは、不活性化システムの支配を受け、不活性化システムは、たとえば、タンクの中の酸素含有量が特定の閾値を超えるときなど、いくつかの条件下において活性化する。したがって、フラップが非意図的に閉じている間の不活性ガスの注入は、タンクの加圧を引き起こし、その圧力は、燃料がもはやフロートに力を及ぼしていないときでも、フラップを閉位置に維持する。
【0007】
結果として、タンクのベンティング機能がもはや確保されず、圧力がタンクの内側で上昇し、それは、悲惨な結果となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的のうちの1つは、ベンティング・システムを装備している燃料タンクを提案することによって、これらの不利益を改善することであり、そのベンティング・システムは、安全であり、また、最適に、および、あらゆる環境において、前記タンクのベンティング機能を確保することを可能にし、前記タンクの中の過圧を回避するようになっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的のために、タンクの中に作製された開口部を閉じるためのフラップを含むベンティング・システムを含む燃料タンクが開発された。フラップは、フロートの支配を受けており、また、タンクの中にヒンジ様式で装着されており、閉位置および開いたベント位置を取るようになっており、閉位置において、タンクの中の燃料のレベルが特定の閾値に到達するときに、フラップは、フロートによって押されており、また、開いたベント位置において、燃料のレベルが前記閾値を下回るときに、フラップは、フロートによって駆動されている。
【0010】
フラップは、前記タンクの中の過圧を防止するために、燃料のレベルが前記閾値を下回っているが、フラップが閉位置にあるときに、弁を開けることができる手段によって制御される弁を含む。
【0011】
このように、内部圧力によって及ぼされる力によって、フラップが閉位置に望ましくなく維持されているときに、タンクのベンティング機能が、弁によって確保される。したがって、本発明によるタンクは安全である。
【0012】
本発明によるタンクの第1の実施形態によれば、弁は、ロッドの形態になっており、ロッドは、オリフィスを開ける位置とオリフィスを閉じる位置との間で、フラップのオリフィスの中をスライドするように装着されている。ロッドは、ロッドの閉位置に関するストップとして作用することが意図されるショルダー部を備えた第1の端部と、圧縮スプリングのためのシート部を形成するショルダー部を備えた第2の端部とを含み、圧縮スプリングは、ロッドの周りに配置されており、また、ロッドを閉位置に維持するためにフラップに押し付けられている。したがって、内部圧力によって弁に及ぼされる力が、大気圧力およびスプリングによって弁に及ぼされる力の総和を超えるときに、前記弁が、前記スプリングに対抗して開位置へ押し込まれるようになっており、前記タンクの中の過圧を防止するために、燃料タンクのベンティングを確実にする。
【0013】
本発明によるタンクの第2の実施形態によれば、弁は、第2のフロートの支配を受けており、タンクの中にヒンジ様式で装着されており、前記弁が、閉位置、および、前記タンクの中の過圧を防止するために開いたベンティング位置を取るようになっており、閉位置において、タンクの中の燃料のレベルが特定の閾値に到達するときに、弁は、第2のフロートによって押されており、また、開いたベンティング位置において、燃料のレベルが前記閾値を下回るときに、弁は、第2のフロートによって駆動されており、内部圧力によって弁に及ぼされる力は、大気圧力および第2のフロートの重量によって弁に及ぼされる力の総和よりも小さい。
【0014】
有利には、この実施形態では、第2のフロートは、アームによって弁の支配を受けており、アームは、第2のフロートによって弁に及ぼされる力を増大させるためのレバーアームを形成している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
他の利点および性質が、添付の図面を参照して、非限定的な例として提供されている、本発明による燃料タンクのいくつかの実施形態の以下の説明から理解されることとなる。
【
図1】弁がスプリングによって制御されている、本発明の第1の実施形態を図示する概略図である。
【
図2】弁が第2のフロートによって制御されている、本発明の第1の実施形態を図示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、タンク(1)に関係し、タンク(1)は、燃料を受け入れることを意図しており、また、タンク(1)の内部圧力を大気圧力と均等にするための、および、任意の前記タンクを回避するための、ベンティング・システム(2)を装備している。
【0017】
本発明は、たとえば、飛行機またはヘリコプターなどの任意のタイプの航空機、民間航空機または軍用機に関するタンク(1)に関係している。
【0018】
既知の方式で、タンク(1)は、開口部(3)を含み、開口部(3)は、タンクのベンティングのために、前記タンク(1)の外部との連通を提供している。タンク(1)のベンティング・システム(2)は、閉鎖フラップ(4)を含み、閉鎖フラップ(4)は、タンク(1)に対してピン(5)の周りに枢動するように装着されており、閉位置および開いたベンティング位置を取るようになっており、閉位置では、それは、タンク(1)の開口部(3)を閉じ、開いたベンティング位置では、それは、前記開口部(3)を自由にする。
【0019】
フラップ(4)は、その下側において、アーム(6)によって拡張されており、アーム(6)は、フロート(7)において終端している。フラップ(4)が閉位置にあるときに、アーム(6)は、本質的に水平方向になっており、また、開口部(3)に近接しており、タンク(1)が満杯のときに、フロート(7)に対する燃料の作用が、フラップ(4)を閉位置に維持し、ベント開口部(3)を通した燃料の任意の漏出を防止するようになっている。
【0020】
燃料のレベルが減少するとき、フロート(7)は、燃料のレベルと一緒に低下し、タンク(1)をベントするために、フラップ(4)がピン(5)の周りに枢動および開口することを引き起こす。
【0021】
本発明によれば、フラップ(4)は、ロッド(8a)の形態の弁(8)を含み、ロッド(8a)は、フラップ(4)が閉位置にあるときに、および、燃料のレベルが閾値を下回っているときに、タンク(1)のベンティングを確実にするように意図されている。
【0022】
より具体的には、
図1に図示されている本発明の第1の実施形態によれば、弁ロッド(8a)は、オリフィス(9)の中でスライドするように装着されており、オリフィス(9)は、外部に連通しており、前記フラップ(4)の中に作製されている。弁ロッド(8a)は、オリフィス(9)を開ける位置と、オリフィス(9)を閉じる位置との間で、スライドすることが可能である。上側端部において、弁ロッド(8a)は、上側ショルダー部(10)を含み、上側ショルダー部(10)は、前記弁ロッド(8a)の閉位置のためのストップとして作用することが意図されている。前記上側ショルダー部(10)は、有利には、閉位置にある弁ロッド(8a)をシールするためのOリング(11)を含む。弁ロッド(8a)は、圧縮スプリング(13)のためのシート部を形成する下側ショルダー部(12)を含む下側端部を含み、圧縮スプリング(13)は、弁ロッド(8a)の周りに配置されており、一方では、前記下側ショルダー部(12)に押し付けられており、他方では、フラップ(4)に押し付けられている。圧縮スプリング(13)は、弁(8)を閉位置に維持する。弁(8)は、開位置を取ることが可能であり、タンク(1)の内部圧力によって及ぼされる力によって、前記圧縮スプリング(13)に対抗して押される。
【0023】
実際に、たとえば、航空機のピッチまたはロールに起因して、フロート(7)に対する燃料の作用によって、フラップ(4)が閉位置にある間に、タンク(1)の内側の圧力が上昇するとき、たとえば、不活性化システムが不活性ガスをタンク(1)の中へ注入するとき、前記ガスの注入は、内部圧力の上昇を引き起こし、燃料が前記フラップ(4)のフロート(7)に対してもはや作用していないときでも、前記内部圧力によって及ぼされる力がフラップ(4)を閉位置に維持する。
【0024】
したがって、本発明によれば、内部圧力は、また、弁ロッド(8a)に対して力を及ぼし、それが開位置を取ることを引き起こそうとする。したがって、タンク(1)の内部圧力によって弁ロッド(8a)に対して及ぼされる力が、弁ロッド(8a)を閉位置に維持する力の総和を超えるときに、すなわち、大気圧力および圧縮スプリング(13)によって及ぼされるそれらの力を超えるときに、弁(8)は、前記圧縮スプリング(13)に対抗して開位置へ押し込まれ、燃料タンク(1)のベンティングを確実にする。
【0025】
このように、タンク(1)の内部圧力が特定の閾値に到達するときに、弁(8)が開けられ、ベンティングが確実な様式で確保されるということが理解され得る。
【0026】
当然のことながら、弁(8)が開けられるべき圧力を決定するのは、圧縮スプリング(13)である。実際に、スプリング(13)は、弁(8)を閉位置に維持するために力を及ぼすように寸法決めされており、前記力は、第1の内部圧力閾値と大気圧力との間の差によって及ぼされる力に等しくなっている。したがって、フラップ(4)が閉位置にあり、燃料のレベルが所定の閾値を下回るときに、特定の所望の内部圧力閾値から、弁(8)が開くことを可能にするように、スプリング(13)を寸法決めすることが可能である。当然のことながら、当業者は、所望の内部圧力閾値に基づいて、どのように前記スプリング(13)を寸法決めするかということを知ることとなる。
【0027】
先述のものに基づいて、タンク(1)が内部圧力閾値を上回る内部圧力を含むときに、弁(8)は、内部圧力によって及ぼされる力によって、スプリング(13)に対抗して開位置へ押し込まれ、燃料タンク(1)のベンティングを確実にする。
【0028】
図2に図示されている本発明の第2の実施形態によれば、弁ロッド(8a)は第2のフロート(14)によって制御されるが、フラップ(4)およびフロート(7)の動作は同じままである。実際に、この実施形態では、弁ロッド(8a)は、フラップ(4)のオリフィス(9)の中でスライドするように装着されているのではなく、フラップ(4)に対してピン(5)の周りに枢動するように装着されており、閉位置および開いたベンティング位置を取るようになっており、閉位置では、上側ショルダー部(10)がオリフィス(9)を閉じ、開いたベンティング位置では、前記弁ロッド(8a)が前記オリフィス(9)を自由にする。
【0029】
より正確には、弁ロッド(8a)は、第2のアーム(15)に垂直方向に取り付けられており、第2のアーム(15)は、一方の端部において、第2のフロート(14)によって拡張されており、別の端部において、ピン(5)の周りに枢動するようにフラップ(4)に取り付けられている。したがって、弁ロッド(8a)は、第2のフロート(14)の重量によって回転するように駆動され、開位置を取ることが可能であり、また、タンク(1)の中の燃料のレベルが特定の閾値に到達するときに、第2のフロートによって押され、閉位置を取ることが可能である。
【0030】
したがって、フラップ(4)が内部圧力によって閉位置に望ましくなく維持されており、燃料のレベルが閾値を下回るときに、内部圧力によって弁(8)に対して及ぼされる力は、弁(8)を開位置に向けて移動させようとする力の総和よりも低いが、すなわち、大気圧力および第2のフロート(14)の重量によって及ぼされるそれらの力よりも低いが、アーム(15)のてこの効果によって増大させられる第2のフロート(14)の重量が、弁(8)が開くことを引き起こす。
【0031】
弁(8)を開位置に移動させようとする力の総和に等しい、弁(8)に力を及ぼす内部圧力は、内部圧力閾値に対応する。
【0032】
このように、フラップ(4)が閉位置に望ましくなく維持される場合には、内部圧力が内部圧力閾値を超えるまで、ベンティングが、所定の圧力の範囲にわたって確実にされる。
【0033】
当然のことながら、弁(8)が閉位置に移動させられる内部圧力閾値を決定するのは、第2のフロート(14)の重量であるということが明らかである。実際に、第2のフロート(14)およびそのアームの長さは、弁(8)を開けようとする力を及ぼすように寸法決めされており、それは、内部圧力閾値によって弁(8)に及ぼされる力と大気圧力によって弁(8)に及ぼされる力との間の差に対応する力よりも大きい。したがって、フラップ(4)が閉位置にあり、燃料のレベルが所定の閾値を下回るときに、特定の所望の内部圧力閾値まで、弁(8)が開くことを可能にするように、第2のフロート(14)およびそのレバーアーム(15)を寸法決めすることが可能である。当然のことながら、当業者は、所望の内部圧力閾値に基づいて、どのように前記スプリング(14)およびそのアーム(15)を寸法決めするかということを知ることとなる。
【0034】
先述のものから、本発明は、前記タンクの中の過圧を防止するために、いかなる状況下においても安全にベンティングを確保することができる燃料タンクを提供するということが理解され得る。