特許第6806892号(P6806892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許68068923価クロム及び無機化合物を含有した表面処理溶液組成物、これを用いて表面処理された亜鉛系めっき鋼板、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806892
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】3価クロム及び無機化合物を含有した表面処理溶液組成物、これを用いて表面処理された亜鉛系めっき鋼板、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/30 20060101AFI20201221BHJP
   C23C 22/42 20060101ALI20201221BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20201221BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20201221BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20201221BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20201221BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20201221BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C23C22/30
   C23C22/42
   C23C28/00 C
   C09D5/08
   C09D183/04
   C09D175/04
   C09D7/61
   C09D5/02
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-518915(P2019-518915)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公表番号】特表2019-536899(P2019-536899A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】KR2017010918
(87)【国際公開番号】WO2018070720
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0130893
(32)【優先日】2016年10月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ス−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ウォン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 チャン−フン
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−531696(JP,A)
【文献】 特開2002−069660(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137680(WO,A1)
【文献】 特開2009−149926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00−22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)をA/(A+B)が0.3〜0.6の含有量比で含む3価クロム化合物を10〜20重量%と、
テトラエチルオルソシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される1種の第3シランである、3種のシラン化合物が架橋結合され、前記第1シラン、前記第2シラン及び前記第3シランが10〜12重量%、10〜12重量%及び5〜7重量%の含有量で含まれた、シラン系ゾルゲル樹脂を20〜40重量%と、
フッ素系防錆剤(モリブデンフッ素化物は除く)、バナジウム系防錆剤(フッ素化合物は除く)、セリウム塩系防錆剤(フッ素化合物は除く)、及びコバルト系防錆剤(フッ素化合物は除く)からなる群より選択される一つ以上である、防錆耐食剤を0.2〜0.4重量%と、
モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上である、モリブデン系化合物を0.1〜0.3重量%と、
水溶性カチオン性ウレタン樹脂を5〜10重量%と、
シランカップリング剤を0.5〜2.0重量%と、
アルミニウムヒドロキシド、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、リン酸アルミニウムからなる群より選択される一つ以上である、Al化合物を0.5〜2.0重量%と、
水を25.3〜63.7重量%と、を含む、亜鉛系めっき鋼板の表面処理溶液組成物。
【請求項2】
前記シランカップリング剤は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上である、請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板の表面処理溶液組成物。
【請求項3】
鋼板と、
前記鋼板の少なくとも一面に形成された亜鉛系めっき層と、
前記亜鉛系めっき層上に形成された3価クロメート被膜層と、を含み、
前記3価クロメート被膜層は、
リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)をA/(A+B)が0.3〜0.6の含有量比で含む3価クロム化合物を31.47〜35.23重量%と、
テトラエチルオルソシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される1種の第3シランである、3種のシラン化合物が架橋結合され、前記第1シラン、前記第2シラン及び前記第3シランが10〜12重量%、10〜12重量%及び5〜7重量%の含有量で含まれた、シラン系ゾルゲル樹脂を32.49〜36.36重量%と、
フッ素系防錆剤(モリブデンフッ素化物は除く)、バナジウム系防錆剤(フッ素化合物は除く)、セリウム塩系防錆剤(フッ素化合物は除く)、及びコバルト系防錆剤(フッ素化合物は除く)からなる群より選択される一つ以上である、防錆耐食剤を2.03〜2.27重量%と、
モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上である、モリブデン系化合物を1.14〜1.52重量%と、
ウレタン樹脂を12.18〜13.64重量%と、
シランカップリング剤を5.68〜10.15重量%と、
アルミニウムヒドロキシド、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、リン酸アルミニウムからなる群より選択される一つ以上である、Al化合物を5.68〜10.15重量%と、を含む、表面処理された亜鉛系めっき鋼板。
【請求項4】
前記シランカップリング剤は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上である、請求項に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板。
【請求項5】
前記3価クロメート被膜層は、厚さが0.3〜0.5μmである、請求項3又は4に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板。
【請求項6】
亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板上に、表面処理溶液組成物をコーティングする段階と、前記コーティングされた表面処理溶液組成物を乾燥して、3価クロメート被膜層を形成する段階と、を含み、
前記表面処理溶液組成物は、
リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)をA/(A+B)が0.3〜0.6の含有量比で含む3価クロム化合物を10〜20重量%と、
テトラエチルオルソシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される1種の第3シランである、3種のシラン化合物が架橋結合され、前記第1シラン、第2シラン及び第3シランが10〜12重量%、10〜12重量%と5〜7重量%の含有量で含まれた、シラン系ゾルゲル樹脂を20〜40重量%と、
フッ素系防錆剤(モリブデンフッ素化物は除く)、バナジウム系防錆剤(フッ素化合物は除く)、セリウム塩系防錆剤(フッ素化合物は除く)、及びコバルト系防錆剤(フッ素化合物は除く)からなる群より選択される一つ以上である、防錆耐食剤を0.2〜0.4重量%と、
モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上である、モリブデン系化合物を0.1〜0.3重量%と、
水溶性カチオン性ウレタン樹脂を5〜10重量%と、
シランカップリング剤を0.5〜2.0重量%と、
アルミニウムヒドロキシド、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、リン酸アルミニウムからなる群より選択される一つ以上である、Al化合物を0.5〜2.0重量%と、
水を25.3〜63.7重量%と、を含む、表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記シランカップリング剤は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上である、請求項に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記表面処理溶液組成物を、2.14〜3.57μmの厚さでコーティングする、請求項6又は7に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記コーティングは、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレー圧搾又は浸漬圧搾からなる群より選択されるいずれかの方法で行われる、請求項6又は7に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に50〜60℃の温度で行われる、請求項6又は7に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥は、熱風乾燥炉又は誘導加熱炉で行われる、請求項6又は7に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱風乾燥炉は、内部温度が100〜200℃である、請求項11に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記誘導加熱炉に1000〜3500Aの電流が印加される、請求項11に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記3価クロメート被膜層を空冷させる段階をさらに含む、請求項6又は7に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記亜鉛系めっき鋼板の製造方法は連続工程で行われ、前記連続工程の速度は80〜100mpmである、請求項6又は7に記載の表面処理された亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3価クロム及び無機化合物を含有した表面処理溶液組成物、上記組成物を用いて表面処理された亜鉛系めっき鋼板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛(Zn)めっき層が形成された溶融めっき材は、犠牲防食による素地鉄の保護効果により耐食性に優れることから、建材用素材として広く用いられている。しかし、上記溶融亜鉛めっき材の露出面がZnからなるため、一般の環境、特に湿潤雰囲気に露出すると、表面に白錆が発生しやすくなり、表面外観が悪くなる。また、溶融亜鉛めっき材が高温高湿環境に露出する場合、表面の色が黒色に変化する現象、いわゆる黒変現象が簡単に発生するという問題がある。
【0003】
かかる問題を解決するために、従来は、めっき処理された鋼板に、6価クロムを用いるか、又は6価クロメート処理を行うことで、耐食性及び耐黒変性を確保してきた。しかし、このような6価クロムは有害環境物質に指定され、現在、6価クロムの使用に対する規制が強化されている。尚、6価クロムをめっき鋼板の表面処理剤として用いると、鋼板表面が黒色に変化したり、又は黒点が発生したりするという不具合の問題がある。
【0004】
そこで、現在では、3価クロムを含有する表面処理溶液組成物を鋼板上にコーティングすることで、めっき鋼板の耐食性及び耐黒変性を確保する方法が適用されている。例えば、特許文献の韓国公開特許第10−2006−0123628号公報、第10−2005−0052215号公報、及び第10−2009−0024450号公報では、3価クロムを含有した組成物に鋼板を浸漬させて化成処理する方式で耐食性及び耐黒変性を確保しているが、鉄鋼業界の連続工程に適用するには浸漬時間が長く、化成処理方法は耐指紋性の低下などの問題を抱える。
【0005】
また、韓国公開特許第10−2004−0046347号公報、特開2002−069660号公報において、3価クロムを含有した組成物をめっき鋼板上にスプレー又はロールコーターの方式でコーティングすることにより、鉄鋼業界の連続工程に適用することができ、耐指紋性の確保も可能である。しかし、上記組成物には、多孔質シリカ成分が含まれるため、湿潤雰囲気下での変色の発生が激しいMg、Al合金には適さない。上記多孔質シリカは吸湿性質が強く、その結果、Mg、Al、Zn合金鋼には、急激な変色の発生を誘発させるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有害環境物質の6価クロムを含有することなく、人体に無害な3価クロム及び無機化合物を主成分とする表面処理溶液組成物を提供し、これを亜鉛系めっき鋼板の表面に適用することにより、耐食性、耐黒変性、耐指紋性、造管油侵害性、及び耐アルカリ性に優れる表面処理された亜鉛系めっき鋼板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含む3価クロム化合物を10〜20重量%と、3種のシラン化合物が架橋結合したシラン系ゾルゲル樹脂を20〜40重量%と、防錆耐食剤を0.2〜0.4重量%と、モリブデン系化合物を0.1〜0.3重量%と、水溶性カチオン性ウレタン樹脂を5〜10重量%と、シランカップリング剤を0.5〜2.0重量%と、Al化合物を0.5〜2.0重量%と、水を25.3〜63.7重量%と、を含む表面処理溶液組成物を提供する。
【0008】
このとき、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)は0.3〜0.6を満たすことが好ましい。
【0009】
上記防錆耐食剤は、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤、及びコバルト系防錆剤からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0010】
上記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0011】
上記シランカップリング剤は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0012】
上記Al化合物は、アルミニウムヒドロキシド(aluminum hydroxide)、塩化アルミニウム(aluminum chloride)、窒化アルミニウム(aluminum nitride)、硫酸アルミニウム(aluminum sulfate)、アルミニウムイソプロポキサイド(aluminum isopropoxide)、及びリン酸アルミニウム(aluminum phosphate)からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0013】
上記3種のシラン化合物は、テトラエチルオルソシリケート(tetraethyl ortho−silicate)、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane)、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane)、メチルトリエトキシシラン(Methyltriethoxysilane)、ジメチルジメトキシシラン(Dimethyldimethoxysilane)、及びジメチルジエトキシシラン(Dimethyldiethoxysilane)からなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(3−glycidoxypropyl−trimethoxy silane)、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン(2−(3,4 epoxycyclohexyl)−ethyltrimethoxysilane)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−Glycidoxypropyltrimethoxysilane)、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(3−Glycidoxypropylmethyldiethoxysilane)からなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(3−aminopropyl−triethoxy silane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropylmethyldimethoxysilane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropyltrimethoxysilane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropyltriethoxysilane)からなる群より選択される1種の第3シランであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によると、鋼板と、上記鋼板の少なくとも一面に形成された亜鉛系めっき層と、上記亜鉛系めっき層上に形成された3価クロメート被膜層と、を含み、上記3価クロメート被膜層は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含む3価クロム化合物を31.47〜35.23重量%と、3種のシラン化合物が架橋結合したシラン系ゾルゲル樹脂を32.49〜36.36重量%と、防錆耐食剤を2.03〜2.27重量%と、モリブデン系化合物を1.14〜1.52重量%と、ウレタン樹脂を12.18〜13.64重量%と、シランカップリング剤を5.68〜10.15重量%と、Al化合物を5.68〜10.15重量%と、を含む表面処理された亜鉛系めっき鋼板を提供する。
【0015】
このとき、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)は0.89〜0.95を満たすことが好ましい。
【0016】
上記防錆耐食剤は、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤、及びコバルト系防錆剤からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0017】
上記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0018】
上記シランカップリング剤は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0019】
上記Al化合物は、アルミニウムヒドロキシド、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、リン酸アルミニウムからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0020】
上記3種のシラン化合物は、テトラエチルオルソシリケート(tetraethyl ortho−silicate)、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane)、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane)、メチルトリエトキシシラン(Methyltriethoxysilane)、ジメチルジメトキシシラン(Dimethyldimethoxysilane)、及びジメチルジエトキシシラン(Dimethyldiethoxysilane)からなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(3−glycidoxypropyl−trimethoxy silane)、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン(2−(3,4 epoxycyclohexyl)−ethyltrimethoxysilane)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−Glycidoxypropyltrimethoxysilane)、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(3−Glycidoxypropylmethyldiethoxysilane)からなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(3−aminopropyl−triethoxy silane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropylmethyldimethoxysilane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropyltrimethoxysilane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropyltriethoxysilane)からなる群より選択される1種の第3シランであってもよい。
【0021】
上記3価クロメート被膜層は厚さが0.3〜0.5μmであってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によると、亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板上に表面処理溶液組成物をコーティングする段階と、上記コーティングされた表面処理溶液組成物を乾燥して3価クロメート被膜層を形成する段階と、を含む。また、上記表面処理溶液組成物は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含む3価クロム化合物を10〜20重量%と、3種のシラン化合物が架橋結合したシラン系ゾルゲル樹脂を20〜40重量%と、防錆耐食剤を0.2〜0.4重量%と、モリブデン系化合物を0.1〜0.3重量%と、水溶性カチオン性ウレタン樹脂を5〜10重量%と、シランカップリング剤を0.5〜2.0重量%と、Al化合物を0.5〜2.0重量%と、水を25.3〜63.7重量%と、を含む亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0023】
このとき、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)は0.3〜0.6を満たすことが好ましい。
【0024】
上記防錆耐食剤は、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤、及びコバルト系防錆剤からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0025】
上記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0026】
上記シランカップリング剤は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0027】
上記Al化合物は、アルミニウムヒドロキシド、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、リン酸アルミニウムからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0028】
上記3種のシラン化合物は、テトラエチルオルソシリケート(tetraethyl ortho−silicate)、テトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane)、メチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxysilane)、メチルトリエトキシシラン(Methyltriethoxysilane)、ジメチルジメトキシシラン(Dimethyldimethoxysilane)、及びジメチルジエトキシシラン(Dimethyldiethoxysilane)からなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(3−glycidoxypropyl−trimethoxy silane)、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン(2−(3,4 epoxycyclohexyl)−ethyltrimethoxysilane)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−Glycidoxypropyltrimethoxysilane)、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(3−Glycidoxypropylmethyldiethoxysilane)からなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(3−aminopropyl−triethoxy silane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropylmethyldimethoxysilane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropyltrimethoxysilane)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(N−(2−aminoethyl)3−aminopropyltriethoxysilane)からなる群より選択される1種の第3シランであってもよい。
【0029】
上記表面処理溶液組成物を厚さ2.14〜3.57μmでコーティングすることができる。
【0030】
上記コーティングは、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレー圧搾又は浸漬圧搾からなる群より選択されるいずれかの方法で行うことができる。
【0031】
上記乾燥は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に50〜60℃の温度で行うことができる。
【0032】
上記乾燥は熱風乾燥炉又は誘導加熱炉で行うことができる。
【0033】
上記熱風乾燥炉は内部温度が100〜200℃であることができる。
【0034】
上記誘導加熱炉には1000〜3500Aの電流が印加されることができる。
【0035】
上記3価クロメート被膜層を空冷させる段階をさらに含むことができる。
【0036】
上記亜鉛系めっき鋼板の製造方法は連続工程で行われ、上記連続工程の速度は80〜100mpmであってもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一実施形態による3価クロム及び無機化合物を含有した表面処理コーティング物で処理された亜鉛系めっき鋼板は、耐食性、耐黒変性、耐指紋性、造管油侵害性、及び耐アルカリ性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、様々な実施形態を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。
【0039】
本発明は、3価クロム及び無機化合物を含有した表面処理溶液組成物、上記組成物を用いて表面処理された亜鉛系めっき鋼板、及び上記亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関する。
【0040】
本発明の一実施形態による表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物を10〜20重量%と、シラン系ゾルゲル樹脂を20〜40重量%と、防錆耐食剤を0.2〜0.4重量%と、モリブデン系化合物を0.1〜0.3重量%と、水溶性カチオン性ウレタン樹脂を5〜10重量%と、シランカップリング剤を0.5〜2.0重量%と、Al化合物を0.5〜2.0重量%と、水を25.3〜63.7重量%と、を含み、上記3価クロム化合物は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)であり、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)が0.3〜0.6を満たす。
【0041】
本発明の一実施形態による3価クロムを含有した表面処理溶液組成物で表面処理された亜鉛系めっき鋼板は、耐食性、耐黒変性、耐指紋性、造管油侵害性、及び耐アルカリ性に優れるという効果を奏する。また、有害環境物質の6価クロムを含有することなく、人体に無害な3価クロムを主成分として含むことで、人体に対する被害や環境汚染の問題を防止するという効果も奏する。
【0042】
上記3価クロム化合物は、本発明の表面処理溶液組成物に主成分として含まれる成分であって、6価クロムと類似する自己治癒効果(self−healing effect)及び自己潤滑性を有し、耐食性及び耐黒変性を確保する作用をする。本発明の組成物に含まれる上記3価クロム化合物は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含む。
【0043】
上記リン酸クロムの割合が増加するにつれて、耐食性が向上するという効果を奏する一方で、耐黒変性は劣化する可能性がある。一方、硝酸クロムの割合が増加するにつれて耐黒変性が向上するのに対し、耐食性は劣化する可能性がある。具体的には、上記リン酸クロムで被膜を生成するとき、リン酸成分は揮発しないため被膜表面にリン酸クロム被膜が形成されて耐食性は向上するが、上記リン酸クロムの吸湿性質が原因となって耐黒変性が低下することがある。これに対し、上記硝酸クロムで被膜を生成するとき、硝酸成分はほとんど揮発して耐黒変性に影響を与えないが、硝酸クロムの含有量が多くなるにつれて被膜表面にリン酸クロム被膜が比較的形成されにくくなり、耐食性が劣化することがある。
【0044】
したがって、本発明の一実施形態においては、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)が0.3〜0.6を満たすように、各成分の含有量を制御する。上記含有量比が0.3未満である場合には、加工後の耐食性が低下する可能性があり、0.6を超えると、耐黒変性が低下するおそれがある。
【0045】
上記リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含む3価クロム化合物の全含有量は15〜30重量%であることが好ましい。上記3価クロム化合物の含有量が10重量%未満である場合には、堅固な不溶性被膜層が薄くなることから、耐食性が求められるめっき鋼板表面において、水分浸透を効果的に遮断することができなくなる。その結果、黒変を誘発し、耐食性も低下するという問題がある。これに対し、上記3価クロム化合物の含有量が20重量%を超えると、耐食性向上のために添加されるシラン系ゾルゲル樹脂、防錆耐食剤、バインダーの役割を果たす水溶性カチオン性ウレタン樹脂、シランカップリング剤、及びAl化合物の含有量が比較的減少して、十分な耐食性及び耐黒変性を確保することが難しくなるという問題がある。
【0046】
本発明の表面処理溶液組成物は、表面処理された亜鉛系めっき鋼板の耐食性を向上させるために、シラン系ゾルゲル樹脂を含む。上記シラン系ゾルゲル樹脂は、3種のシラン化合物を用いて合成されたものであり、1種のシラン化合物によって、異なる2種のシラン化合物が架橋結合したものである。本発明のように、予め合成されたシラン系ゾルゲル樹脂を用いる場合には、被膜形成のための熱処理過程で架橋反応させることに比べて水分含有量を減らすことができるため、好ましい。
【0047】
本発明において、ゾルゲル樹脂を合成するために用いられる3種のシラン化合物としては、テトラエチルオルソシリケート、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第1シラン、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される1種の第2シラン、及び3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される1種の第3シランを用いることができる。
【0048】
上記シラン系ゾルゲル樹脂は、エタノールと水、及びギ酸を含む混合溶液に、上記3種の混合シランを落として製造することができる。より具体的には、上記混合溶液は、エタノールと水を10〜30:40〜60の重量比で含む。これらは、被膜固形物質を水溶液化するために溶媒の役割を果たすものであり、上記範囲を超えてエタノールを少量含む場合には、上記シラン系ゾルゲル樹脂の安定性を減少させて溶液安定性が低下するという問題があり、過量に含む場合には、最終被膜の形成の際にエタノールが揮発しすぎてロール作業性が低下するという問題がある。
【0049】
一方、上記水と60〜80重量%のエタノールに、ギ酸を1〜1.5重量%の含有量となるように混合する。上記ギ酸は、シランの加水分解を助ける酸触媒の役割を果たすものである。ギ酸の含有量が1重量%未満である場合には、加水分解が十分に行われず、シランが安定的に分散されないという問題があり、1.5重量%を超えると、乾燥被膜中にギ酸が残存して製品物性を低下させるという問題がある。
【0050】
上記のような水、エタノール、及びギ酸を含む混合溶液に、上記3種のシラン化合物を添加してシラン系ゾルゲル樹脂を製造する。このとき、上記3種のシランは、第1シラン、第2シラン及び第3シランの順に、それぞれ10〜12重量%、10〜12重量%、及び5〜7重量%の含有量で含まれる。上記範囲を超えて第1シランの含有量比が少量の場合には、架橋の役割を十分に果たすことができず、最終の造膜形成に問題があり、過量の場合には、過度な架橋結合が原因となって溶液安定性が低下するという問題がある。また、第2シランと第3シランの含有量比が上記範囲を超えて、いずれか一方の含有量が比較的小さくなったり又は多くなったりすると、未反応の官能基成分によって溶液安定性が低下するという問題が発生する。
【0051】
上記シラン系ゾルゲル樹脂を製造するにあたり、上記水とエタノール、及びギ酸の混合溶液に3種のシラン化合物を約1時間から3時間にわたり添加することが好ましい。このとき、反応器内の温度は30℃以下に管理されるように冷却することが好ましく、添加終了後には常温で約24時間から36時間攪拌してゾルゲル樹脂を製造する。
【0052】
上記シラン系ゾルゲル樹脂の含有量は20〜40重量%であることが好ましい。上記シラン系ゾルゲル樹脂の含有量が20重量%未満である場合には、腐食因子を効果的に遮断させることができず、耐食性及び耐黒変性が低下することがある。これに対し、40重量%を超えると、耐食性を向上させるために添加される3価クロム化合物、防錆耐食剤、バインダーの役割を果たす水溶性カチオン性ウレタン樹脂、シランカップリング剤、及びAl化合物の含有量が比較的減少して、耐食性が逆に低下するという問題がある。
【0053】
上記防錆耐食剤は、本発明の表面処理溶液組成物で表面処理された亜鉛系めっき鋼板の耐食性を向上させるために含まれるものであり、上記防錆耐食剤として、好ましくは、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤、及びコバルト系防錆剤からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0054】
上記防錆耐食剤の含有量は、0.2〜0.4重量%であることが好ましい。上記防錆耐食剤の含有量が0.2重量%未満である場合には、耐食性の確保が難しいという問題があり、0.4重量%を超えると、耐黒変性及び耐アルカリ性の確保が難しいという問題がある。
【0055】
上記モリブデン系化合物は、本発明の表面処理溶液組成物で表面処理された、亜鉛系めっき鋼板の耐黒変性を向上させるために添加されるものであり、上記モリブデン系化合物は、モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、モリブデン酢酸塩、モリブデンリン酸塩、モリブデン炭化物、モリブデン塩化物、モリブデンフッ素化物、及びモリブデン窒化物からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0056】
上記モリブデン系化合物の含有量は、0.1〜0.3重量%であることが好ましい。上記モリブデン系化合物の含有量が0.1重量%未満である場合には、耐黒変性を確保することが難しいという問題があり、0.3重量%を超えると、耐黒変性の向上効果がわずかであり、耐食性が大幅に低下するという問題がある。
【0057】
上記水溶性カチオン性ウレタン樹脂は、本発明の表面処理溶液組成物で表面処理された亜鉛系めっき鋼板の堅固な被膜層を形成するために添加されるものである。上記水溶性カチオン性ウレタン樹脂は、無機系成分のみでは足りない被膜形成作用を向上させて堅固な被膜層を形成させることで、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を向上させる。
【0058】
上記水溶性カチオン性ウレタン樹脂の含有量は、5〜10重量%であることが好ましい。上記水溶性カチオン性ウレタン樹脂の含有量が5重量%未満である場合には、被膜形成作用が劣化して堅固な被膜層を形成することができず、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を確保することが難しいという問題があり、10重量%を超えると、3価クロム化合物とゾルゲル樹脂の含有量が比較的減少し、耐食性及び黒変性が低下する傾向を示すため好ましくない。
【0059】
上記シランカップリング剤は、無機成分と有機成分を架橋させる役割を果たすことで、乾燥を促進するとともに高耐食性を確保するために添加されるものである。上記シランカップリング剤の種類は、特に限定されないが、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランからなる群より選択される一つ以上であることが好ましい。
【0060】
上記シランカップリング剤の含有量は0.5〜2.0重量%であることが好ましい。上記シランカップリング剤の含有量が0.5重量%未満である場合には、耐アルカリ性及び造管油侵害性が劣化し、2.0重量%を超えると、被膜の乾燥度が高くなりすぎることが原因で、硬い被膜が過度に形成され、加工部耐食性が弱くなり、造管油侵害性が劣化する。
【0061】
上記Al化合物は、本発明の表面処理溶液組成物で表面処理された亜鉛系めっき鋼板の耐黒変性を向上させるために添加されるものであり、アルミニウムヒドロキシド(aluminum hydroxide)、塩化アルミニウム(aluminum chloride)、窒化アルミニウム(aluminum nitride)、硫酸アルミニウム(aluminum sulfate)、アルミニウムイソプロポキサイド(aluminum isopropoxide)、及びリン酸アルミニウム(aluminum phosphate)からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0062】
上記Al化合物の含有量は0.5〜2重量%であることが好ましい。上記Al化合物の含有量が0.5重量%未満である場合には、耐黒変性を確保することが難しいという問題があり、2重量%を超えると、耐黒変性の向上効果がわずかであり、耐食性が大幅に低下するという問題がある。
【0063】
上記水は、本発明の表面処理溶液組成物の溶媒であって、樹脂を希釈するために用いられる。上記水とは脱イオン水又は蒸留水を意味する。上記溶媒は、本発明の各構成成分の他に、残部として含まれるものであり、その含有量は、25.3〜63.7重量%であることが好ましい。
【0064】
本発明の他の実施形態によると、上述した3価クロム及び無機化合物を含有した表面処理溶液組成物で表面処理された亜鉛系めっき鋼板、及びその製造方法を提供する。
【0065】
具体的には、上記表面処理された亜鉛系めっき鋼板は、鋼板と、上記鋼板の少なくとも一面に形成された亜鉛系めっき層と、上記亜鉛系めっき層上に形成された3価クロメート被膜層と、を含む。また、上記3価クロメート被膜層は、3価クロム化合物を31.47〜35.23重量%と、シラン系ゾルゲル樹脂を32.49〜36.36重量%と、防錆耐食剤を2.03〜2.27重量%と、モリブデン系化合物を1.14〜1.52重量%と、ウレタン樹脂を12.18〜13.64重量%と、シランカップリング剤を5.68〜10.15重量%と、Al化合物を5.68〜10.15重量%と、を含む。さらに、上記3価クロム化合物は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含み、リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)が0.89〜0.95を満たす。
【0066】
上記3価クロメート被膜層は、上述の表面処理溶液組成物が乾燥されたコーティング層であって、上記3価クロメート被膜層に含まれる揮発性物質が、すべて揮発した後に残った成分に該当する。これにより、上記3価クロメート被膜層には溶媒の水が含まれなくなり、3価クロメート化合物、シラン系ゾルゲル樹脂、及びウレタン樹脂に含まれている水もなくなる。したがって、3価クロメート被膜層に含まれる成分は、全固形分100重量%を基準とした含有量に該当する。
【0067】
上記3価クロム化合物は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含み、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)が0.89〜0.95を満たす。このとき、固形分を基準とすると、31.47〜35.23重量%である。上記3価クロム化合物の含有量が31.47重量%未満である場合には、堅固な不溶性被膜層が薄くなり、耐食性が求められるめっき鋼板表面において、水分浸透を効果的に遮断することができなくなる。その結果、黒変を誘発し、耐食性も低下するという問題がある。これに対し、上記3価クロム化合物の含有量が35.23重量%を超えると、耐食性向上のために添加される防錆剤、バインダーの役割を果たす水溶性カチオン性ウレタン樹脂、シランカップリング剤の含有量が比較的減少して、十分な耐食性及び耐黒変性を確保することが難しくなるという問題がある。
【0068】
また、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)が0.89〜0.95を満たす。上記含有量比が0.89未満である場合には加工後の耐食性が低下する可能性があり、0.95を超えると耐黒変性が低下する可能性がある。
【0069】
上記表面処理溶液組成物中のリン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)は0.3〜0.6である。但し、上記リン酸クロム及び硝酸クロムは多量の水を含むものの、上記表面処理溶液組成物を亜鉛系めっき鋼板上にコーティング及び乾燥して被膜層を形成する工程において、上記水が除去されるため、上記被膜層に含まれるリン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)は0.89〜0.95である。
【0070】
上記シラン系ゾルゲル樹脂の含有量は、固形分を基準に、32.49〜36.36重量%であることが好ましい。上記シラン系ゾルゲル樹脂の含有量が32.49重量%未満である場合には、腐食因子を効果的に遮断させることができず、耐食性及び耐黒変性が低下することがある。これに対し、36.36重量%を超えると、耐食性を向上させるために添加される3価クロム化合物、防錆耐食剤、バインダーの役割を果たす水溶性カチオン性ウレタン樹脂、シランカップリング剤、及びAl化合物の含有量が比較的減少して、耐食性が逆に低下するという問題がある。
【0071】
上記防錆耐食剤の含有量は、固形分を基準に、2.03〜2.27重量%であることが好ましい。上記防錆耐食剤の含有量が2.03重量%未満である場合には、耐食性を確保することが難しいという問題があり、2.27重量%を超えると、耐黒変性及び耐アルカリ性を確保することが難しいという問題がある。一方、上記モリブデン系化合物の含有量は、固形分を基準に、1.14〜1.52重量%であることが好ましい。上記モリブデン系化合物の含有量が1.14重量%未満である場合には、耐黒変性を確保することが難しいという問題があり、1.52重量%を超えると、耐黒変性の向上効果がわずかであり、耐食性が大幅に低下するという問題がある。
【0072】
上記ウレタン樹脂の含有量は、固形分を基準に、12.18〜13.64重量%であることが好ましい。上記ウレタン樹脂の含有量が12.18重量%未満である場合には、被膜形成作用が劣化して堅固な被膜層を形成することができず、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を確保することが難しいという問題がある。これに対し、13.64重量%を超えると、3価クロム化合物及びゾルゲル樹脂の含有量が比較的減少し、耐食性及び黒変性が低下する傾向を示すため好ましくない。一方、本発明の表面処理溶液組成物には水溶性カチオン性ウレタン樹脂が含まれるが、上記水溶性カチオン性ウレタン樹脂が亜鉛系めっき鋼板上にコーティング及び乾燥する過程で、カチオン状態ではなく、ウレタン樹脂が検出される。
【0073】
上記シランカップリング剤の含有量は5.68〜10.15重量%であることが好ましい。上記シランカップリング剤の含有量が5.68重量%未満である場合には、耐アルカリ性及び造管油侵害性が劣化し、10.15重量%を超えると、被膜の乾燥度が高くなりすぎることが原因で、硬い被膜が過度に形成されて、加工部耐食性が弱くなり、造管油侵害性が劣化する。
【0074】
上記Al化合物の含有量は、5.68〜10.15重量%であることが好ましい。上記Al化合物の含有量が5.68重量%未満である場合には、耐黒変性を確保することが難しいという問題があり、10.15重量%を超えると、耐黒変性の向上効果がわずかであり、耐食性が大幅に低下するという問題がある。
【0075】
本発明の一実施形態によると、亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板を設ける段階と、上記亜鉛系めっき層上に表面処理溶液組成物をコーティングする段階と、上記コーティングされた表面処理溶液組成物を乾燥して、3価クロメート被膜層を形成する段階と、を含む、亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0076】
また、上記表面処理溶液組成物は、リン酸クロム(A)及び硝酸クロム(B)を含み、上記リン酸クロム(A)と硝酸クロム(B)の含有量比A/(A+B)が0.3〜0.6を満たす3価クロム化合物を10〜20重量%と、シラン系ゾルゲル樹脂を20〜40重量%と、防錆耐食剤を0.2〜0.4重量%と、モリブデン系化合物を0.1〜0.3重量%と、水溶性カチオン性ウレタン樹脂を5〜10重量%と、シランカップリング剤を0.5〜2.0重量%と、Al化合物を0.5〜2.0重量%と、水を25.3〜63.7重量%と、を含む。上記表面処理溶液組成物に含まれる、各成分の含有量の範囲に対する技術的意味は上述のとおりである。
【0077】
本発明の一実施形態によると、上記表面処理溶液組成物を厚さ2.14〜3.57μmでコーティングすることができる。かかる厚さでコーティングされた表面処理溶液組成物は、乾燥工程を行った後の乾燥被膜層の厚さが、0.3〜0.5μmとなり得る。上記表面処理溶液組成物の厚さが2.14μm未満である場合には、鋼板粗さの山部分に、表面処理溶液組成物が薄く塗布されて耐食性が低下するという問題が発生することがある。これに対し、上記表面処理溶液組成物の厚さが3.57μmを超えると、厚い被膜層が形成されて、溶接性及び加工性などが劣化するという問題が生じうる。
【0078】
上記表面処理溶液組成物をコーティングする方法は、通常行われるコーティング方法であれば特に制限されないが、例えば、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレー圧搾又は浸漬圧搾からなる群より選択される、いずれかの方法で行うことが好ましい。
【0079】
上記亜鉛系めっき鋼板上にコーティングされる、表面処理溶液組成物を乾燥する工程は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に、50〜60℃の温度で行われることが好ましい。上記乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に50℃未満である場合には、乾燥が完全に行われず、耐アルカリ性及び造管油侵害性が劣化することがあり、60℃を超えると、空気中の冷却過程(空冷)中に鋼板が十分に冷却されずに包装されることとなって、結露が原因で耐黒変性が劣化することがある。
【0080】
一方、上記乾燥は熱風乾燥炉又は誘導加熱炉で行うことが好ましい。上記熱風乾燥炉を用いて表面処理コーティング組成物を乾燥する場合には、上記熱風乾燥炉の内部温度は100〜200℃であることが好ましい。これに対し、上記誘導加熱炉を用いて表面処理コーティング組成物を乾燥する場合には、上記誘導加熱炉に印加される電流は1000〜3500Aであることが好ましく、1500〜3000Aであることがより好ましい。上記熱風乾燥炉の内部温度が100℃未満であるか、又は誘導加熱炉に印加される電流が1000A未満である場合には、表面処理コーティング組成物が完全に乾燥されず、その結果、耐アルカリ性及び造管油侵害性が劣化することがある。また、上記熱風乾燥炉の内部温度が200℃未満であるか、又は誘導加熱炉に印加される電流が3500Aを超えると、空気中の冷却過程(空冷)中に鋼板が十分に冷却されずに包装されることとなって、結露が原因で耐黒変性が劣化することがある。
【0081】
また、上記表面処理溶液組成物を乾燥して3価クロメート被膜層を形成した後、上記3価クロメート被膜層を空冷させることで、最終的に表面処理された亜鉛系めっき鋼板を提供することができる。
【0082】
本発明の一実施形態によると、上記亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、連続工程で行われることができる。ここで、上記連続工程の速度は80〜100mpmであることが好ましい。上記連続工程の速度が80mpm未満である場合には、生産性が低下するという問題があり、100mpmを超えると、表面処理溶液組成物が乾燥される工程で、溶液が飛散して表面欠陥を発生させることがある。
【実施例】
【0083】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲が下記提示された実施例によって限定されるものではない。
【0084】
実施例1
1.3価クロム化合物の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、シラン系ゾルゲル樹脂を、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤を、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)を、Al化合物として窒化アルミニウム及び水を含み、下記表2に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0085】
上記シラン系ゾルゲル樹脂は、エタノール20重量%と水50.81重量%をフラスコに入れ、ギ酸(formic acid)1.36重量%を入れて撹拌した後、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(3−glycidoxypropyl−trimethoxy silane)11.06重量%、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(3−aminopropyl−triethoxy silane)6.06重量%、及びテトラエチルオルソシリケート(Tetraethyl orthosilicate)10.7重量%を混合してフラスコに2時間滴下する。このとき、反応器内の温度が30℃以下に管理されるように冷却し、滴下完了後に24時間常温で攪拌して製造した。
【0086】
【表1】
【0087】
下記実施例では、本発明の表面処理溶液組成物が上記表1の含有量範囲を満たす場合を発明例と記載し、一つ以上の成分が上記表1の含有量範囲を満たさない場合を比較例と記載して下記表2から表8に示した。
【0088】
また、下記表2から表8に記載された各成分の含有量を「固形分基準」と記載した。すなわち、本発明の溶液組成物に含まれる溶媒の水と、3価クロム化合物、ゾルゲル樹脂、及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂に含まれた水とが除去された、乾燥被膜状態における固形分100%を基準に、各成分の含有量を記載した。
【0089】
下記表2に記載された各発明例及び比較例の組成物を、7cm×15cm(横×縦)に切断した後に油分が除去された溶融亜鉛めっき鋼板上に、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるようにバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0090】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表2に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は以下のとおりである。
<平板耐食性>
ASTM B117に準ずる方法に基づいて試験片を処理した後、時間経過に伴う鋼板の白錆発生率を測定した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:白錆発生時間が144時間以上
○:白錆発生時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生時間が55時間未満96時間未満
×:白錆発生時間が55時間未満
<加工部耐食性>
試験片をエリクソン試験機(Erichsen tester)を用いて高さ6mmに押し上げた後、24時間経過後の白錆発生程度を測定した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:48時間経過後の白錆発生率が5%未満
△:48時間経過後の白錆発生率が5%以上7%未満
×:48時間経過後の白錆発生率が7%以上
<耐黒変性>
試験片を温度50℃及び相対湿度95%が維持される恒温恒湿機に120時間放置した後、試験前/後の試験片の色変化(色差:ΔE)を観察した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0091】
【表2】
【0092】
上記表2において、3価クロム化合物(Cr3+化合物)内のリン酸クロムと硝酸クロムの含有量比は3:0.2である。
【0093】
上記表2に示すように、3価クロム化合物の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例1から発明例4)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0094】
これに対し、3価クロム化合物を過度に少なく添加する場合(比較例1)には、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例2)には、耐黒変性を除いたすべての物性の面において「不良」を示した。
【0095】
2.3価クロム化合物に含まれるリン酸クロム(III)と硝酸クロム(III)の割合による物性変化
上記発明例3による3価クロム表面処理溶液組成物を用いるとともに、リン酸クロム(III)と硝酸クロム(III)の割合を下記表3に記載されたリン酸クロムと硝酸クロムの含有量比となるように制御した。
【0096】
具体的には、蒸留水にリン酸クロム及び硝酸クロムを投入し、80℃で1時間反応させた後、常温まで冷却して3価クロム化合物(リン酸クロム(III)と硝酸クロム(III))を製造した。このとき、上記リン酸クロムと硝酸クロムの含有量比が下記表3の割合を満たすように、各成分の含有量を制御した。
【0097】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように下記表3に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0098】
製作した試験片の平板耐食性及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表3に記載した。
【0099】
【表3】
【0100】
上記表3に示すように、上記リン酸クロムの割合が増加するにつれて耐食性が向上するという効果を奏する一方で、硝酸クロムの割合が増加するにつれて耐黒変性が向上する傾向を示す。これに対し、本発明において、リン酸クロムと硝酸クロムの割合以下、又は、以上になると、耐食性又は耐黒変性が不良の傾向を示す。
【0101】
3.ゾルゲル樹脂の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載された方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表4に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0102】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように下記表4に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0103】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表4に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は上述のとおりである。
【0104】
【表4】
【0105】
上記表4に示すように、ゾルゲル樹脂の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例8から発明例11)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0106】
これに対し、ゾルゲル樹脂を過度に少なく添加する場合(比較例7)には、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例8)には、耐黒変性を除いたすべての物性の面において「不良」を示した。
【0107】
4.防錆耐食剤の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表5に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0108】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表5に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0109】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性を評価し、評価結果を下記表5に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は上述のとおりであり、耐アルカリ性の評価方法は以下のとおりである。
<耐アルカリ性>
試験片をアルカリ脱脂溶液に60℃で2分間浸漬した後、水洗及び空気吸込(Air blowing)前/後の色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、韓国の大韓パーカライジング社製造のFinecleaner L4460 A:20g/2.4L+L 4460 B 12g/2.4L(pH=12)を用いた。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0110】
【表5】
【0111】
上記表5に示すように、防錆耐食剤の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例12から発明例14)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0112】
これに対し、防錆耐食剤を過度に少なく添加する場合(比較例9)には、耐黒変性及び耐アルカリ性を除いたすべての物性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例10及び発明例11)には、耐食性を除いたすべての物性の面において「不良」を示した。
【0113】
5.モリブデン系化合物の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂を、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤を、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)を、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)を、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表6に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0114】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表6に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0115】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表6に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は上述のとおりである。
【0116】
【表6】
【0117】
上記表6に示すように、モリブデン系化合物の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例15から発明例17)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0118】
これに対し、モリブデン系化合物を過度に少なく添加する場合(比較例12)には、耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例13及び比較例14)には、耐食性の面において「不良」を示した。かかる結果は、モリブデン系化合物が本発明で制限する含有量を超えると、被膜形成のときの鋼板表面に析出し、塩水溶液にモリブデン化合物が溶解されてコーティング層に欠陥を生じうることによるものであることを確認した。
【0119】
6.ウレタン樹脂の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表7に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0120】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように下記表7に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0121】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を評価し、評価結果を下記表7に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性の評価方法は上述のとおりであり、造管油侵害性及び耐指紋性の評価方法は以下のとおりである。
<造管油侵害性>
上記造管油侵害性(Invading Property AgainstPiping Oil)とは、パイプを製造する設備で用いられる造管油が乾燥被膜層に浸透して、上記被膜層の表面物性を低下させる程度を示すことを意味する。上記試験片の造管油侵害性を評価するために、試験片を常温で造管油に浸漬し、24時間維持した後、浸漬前/後の色差(ΔE)を測定した。上記造管油は、韓国の汎字社製造のBW WELL MP−411を10%の水で希釈して用いた。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
<耐指紋性>
試験片の表面にワセリン(登録商標)を塗布し、10分間放置した後、ワセリン(登録商標)を除去し、ワセリン(登録商標)塗布前/後の色差(ΔE)を観察した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
×:ΔE>3
【0122】
【表7】
【0123】
上記表7に示すように、ウレタン樹脂の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例18から発明例21)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0124】
これに対し、ウレタン樹脂を過度に少なく添加する場合(比較例13)には、平板耐食性及び耐黒変性を除いたすべての物性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例16)には、加工部耐食性、平板耐食性、及び耐黒変性の物性の面において「不良」を示した。
【0125】
7.シランカップリング剤の含有量及び種類による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂を、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤を、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)を、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)を、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表8に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0126】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表8に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0127】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を評価し、評価結果を下記表8に記載した。平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性の評価方法は、上述のとおりである。
【0128】
【表8】
【0129】
上記表8に示すように、シランカップリング剤の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例22から発明例25)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0130】
これに対し、シランカップリング剤を過度に少なく添加する場合(比較例17)には、耐アルカリ性及び造管油侵害性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例18)には、被膜の乾燥度が高くなり、堅固な被膜が形成されて加工部耐食性が弱くなり、耐黒変性の面において「不良」を示した。
【0131】
上記発明例23による3価クロム表面処理溶液組成物を用いるとともに、シランカップリング剤の種類は、下記表9に記載されたシランカップリング剤を用いた。下記表9に記載されたシランカップリング剤を用いた組成物で、上述のように試験片を製作し、平板耐食性を評価した上でその結果を下記表9に記載した。
【0132】
【表9】
【0133】
上記表8に示すように、発明例26から発明例59は、平板耐食性が「良好」又は優れた結果を示した。特に、発明例42の組成に応じて製造された3価クロム表面処理溶液組成物を用いた試験片の場合、144時間以上後に発生した白錆面積が0%と、最も優れた結果を示した。
【0134】
8.Al化合物の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表10に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0135】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表10に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0136】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を評価し、評価結果を下記表10に記載した。平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性の評価方法は、上述のとおりである。
【0137】
【表10】
【0138】
上記表10に示すように、Al化合物の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例60から発明例63)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0139】
これに対し、Al化合物を過度に少なく添加する場合(比較例19)には、耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例20)には、耐食性の面において「不良」を示した。
【0140】
かかる結果は、Al化合物が本発明で制限する含有量を超えると、被膜形成のときの鋼板表面に析出し、水分にAl化合物が溶解されてコーティング層に欠陥を生じうることによるものであることを確認した。
【0141】
9.被膜層の厚さ及び乾燥温度による物性変化
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、上記発明例42の組成物をバーコーティングし、熱風乾燥炉で乾燥させることで試験片を製作した。コーティングされた被膜層の厚さ及びPMT温度を下記表11に記載された厚さで制御した。
【0142】
製作した試験片の耐アルカリ性、造管油侵害性、耐指紋性、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表11に記載した。
【0143】
【表11】
【0144】
上記表11に示すように、0.3〜0.5μmで被膜層を形成する場合(特に発明例65から発明例67及び発明例70)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0145】
これに対し、形成された被膜が薄すぎる場合(発明例64)には、耐指紋性以外のすべての物性の面において「普通(△)」の結果を示した。一方、過度に厚く形成された場合(発明例68)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示したが、発明例67に比べて改善効果を示さないため、経済的な側面において発明例67以上の被膜厚さは求められない。
【0146】
また、上記表11に示すように、被膜の乾燥温度が50〜60℃で被膜層を形成する場合(特に発明例65から発明例68及び発明例70)のすべての物性の面において、「良好」以上の結果を示した。
【0147】
これに対し、乾燥温度が低すぎる場合(発明例69)には、十分に乾燥されないため、耐アルカリ性及び造管油侵害性の面において「通常(△)」を示した。一方、乾燥温度が高すぎる場合(発明例71)には、空気中の冷却過程(空冷)で鋼板が十分に冷却されずに包装されることとなり、結露現象が原因となって、耐黒変性の面において「通常(△)」を示した。
【0148】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。