【実施例】
【0083】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲が下記提示された実施例によって限定されるものではない。
【0084】
実施例1
1.3価クロム化合物の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、シラン系ゾルゲル樹脂を、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤を、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)を、Al化合物として窒化アルミニウム及び水を含み、下記表2に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0085】
上記シラン系ゾルゲル樹脂は、エタノール20重量%と水50.81重量%をフラスコに入れ、ギ酸(formic acid)1.36重量%を入れて撹拌した後、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(3−glycidoxypropyl−trimethoxy silane)11.06重量%、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(3−aminopropyl−triethoxy silane)6.06重量%、及びテトラエチルオルソシリケート(Tetraethyl orthosilicate)10.7重量%を混合してフラスコに2時間滴下する。このとき、反応器内の温度が30℃以下に管理されるように冷却し、滴下完了後に24時間常温で攪拌して製造した。
【0086】
【表1】
【0087】
下記実施例では、本発明の表面処理溶液組成物が上記表1の含有量範囲を満たす場合を発明例と記載し、一つ以上の成分が上記表1の含有量範囲を満たさない場合を比較例と記載して下記表2から表8に示した。
【0088】
また、下記表2から表8に記載された各成分の含有量を「固形分基準」と記載した。すなわち、本発明の溶液組成物に含まれる溶媒の水と、3価クロム化合物、ゾルゲル樹脂、及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂に含まれた水とが除去された、乾燥被膜状態における固形分100%を基準に、各成分の含有量を記載した。
【0089】
下記表2に記載された各発明例及び比較例の組成物を、7cm×15cm(横×縦)に切断した後に油分が除去された溶融亜鉛めっき鋼板上に、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるようにバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0090】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表2に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は以下のとおりである。
<平板耐食性>
ASTM B117に準ずる方法に基づいて試験片を処理した後、時間経過に伴う鋼板の白錆発生率を測定した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:白錆発生時間が144時間以上
○:白錆発生時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生時間が55時間未満96時間未満
×:白錆発生時間が55時間未満
<加工部耐食性>
試験片をエリクソン試験機(Erichsen tester)を用いて高さ6mmに押し上げた後、24時間経過後の白錆発生程度を測定した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:48時間経過後の白錆発生率が5%未満
△:48時間経過後の白錆発生率が5%以上7%未満
×:48時間経過後の白錆発生率が7%以上
<耐黒変性>
試験片を温度50℃及び相対湿度95%が維持される恒温恒湿機に120時間放置した後、試験前/後の試験片の色変化(色差:ΔE)を観察した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0091】
【表2】
【0092】
上記表2において、3価クロム化合物(Cr
3+化合物)内のリン酸クロムと硝酸クロムの含有量比は3:0.2である。
【0093】
上記表2に示すように、3価クロム化合物の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例1から発明例4)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0094】
これに対し、3価クロム化合物を過度に少なく添加する場合(比較例1)には、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例2)には、耐黒変性を除いたすべての物性の面において「不良」を示した。
【0095】
2.3価クロム化合物に含まれるリン酸クロム(III)と硝酸クロム(III)の割合による物性変化
上記発明例3による3価クロム表面処理溶液組成物を用いるとともに、リン酸クロム(III)と硝酸クロム(III)の割合を下記表3に記載されたリン酸クロムと硝酸クロムの含有量比となるように制御した。
【0096】
具体的には、蒸留水にリン酸クロム及び硝酸クロムを投入し、80℃で1時間反応させた後、常温まで冷却して3価クロム化合物(リン酸クロム(III)と硝酸クロム(III))を製造した。このとき、上記リン酸クロムと硝酸クロムの含有量比が下記表3の割合を満たすように、各成分の含有量を制御した。
【0097】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように下記表3に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0098】
製作した試験片の平板耐食性及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表3に記載した。
【0099】
【表3】
【0100】
上記表3に示すように、上記リン酸クロムの割合が増加するにつれて耐食性が向上するという効果を奏する一方で、硝酸クロムの割合が増加するにつれて耐黒変性が向上する傾向を示す。これに対し、本発明において、リン酸クロムと硝酸クロムの割合以下、又は、以上になると、耐食性又は耐黒変性が不良の傾向を示す。
【0101】
3.ゾルゲル樹脂の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載された方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表4に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0102】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように下記表4に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0103】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表4に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は上述のとおりである。
【0104】
【表4】
【0105】
上記表4に示すように、ゾルゲル樹脂の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例8から発明例11)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0106】
これに対し、ゾルゲル樹脂を過度に少なく添加する場合(比較例7)には、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例8)には、耐黒変性を除いたすべての物性の面において「不良」を示した。
【0107】
4.防錆耐食剤の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表5に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0108】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表5に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0109】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性を評価し、評価結果を下記表5に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は上述のとおりであり、耐アルカリ性の評価方法は以下のとおりである。
<耐アルカリ性>
試験片をアルカリ脱脂溶液に60℃で2分間浸漬した後、水洗及び空気吸込(Air blowing)前/後の色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、韓国の大韓パーカライジング社製造のFinecleaner L4460 A:20g/2.4L+L 4460 B 12g/2.4L(pH=12)を用いた。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
【0110】
【表5】
【0111】
上記表5に示すように、防錆耐食剤の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例12から発明例14)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0112】
これに対し、防錆耐食剤を過度に少なく添加する場合(比較例9)には、耐黒変性及び耐アルカリ性を除いたすべての物性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例10及び発明例11)には、耐食性を除いたすべての物性の面において「不良」を示した。
【0113】
5.モリブデン系化合物の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂を、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤を、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)を、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)を、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表6に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0114】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表6に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0115】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表6に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性の評価方法は上述のとおりである。
【0116】
【表6】
【0117】
上記表6に示すように、モリブデン系化合物の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例15から発明例17)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0118】
これに対し、モリブデン系化合物を過度に少なく添加する場合(比較例12)には、耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例13及び比較例14)には、耐食性の面において「不良」を示した。かかる結果は、モリブデン系化合物が本発明で制限する含有量を超えると、被膜形成のときの鋼板表面に析出し、塩水溶液にモリブデン化合物が溶解されてコーティング層に欠陥を生じうることによるものであることを確認した。
【0119】
6.ウレタン樹脂の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表7に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0120】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように下記表7に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0121】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を評価し、評価結果を下記表7に記載した。上記平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性の評価方法は上述のとおりであり、造管油侵害性及び耐指紋性の評価方法は以下のとおりである。
<造管油侵害性>
上記造管油侵害性(Invading Property AgainstPiping Oil)とは、パイプを製造する設備で用いられる造管油が乾燥被膜層に浸透して、上記被膜層の表面物性を低下させる程度を示すことを意味する。上記試験片の造管油侵害性を評価するために、試験片を常温で造管油に浸漬し、24時間維持した後、浸漬前/後の色差(ΔE)を測定した。上記造管油は、韓国の汎字社製造のBW WELL MP−411を10%の水で希釈して用いた。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
<耐指紋性>
試験片の表面にワセリン(登録商標)を塗布し、10分間放置した後、ワセリン(登録商標)を除去し、ワセリン(登録商標)塗布前/後の色差(ΔE)を観察した。このとき、評価基準は以下のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
×:ΔE>3
【0122】
【表7】
【0123】
上記表7に示すように、ウレタン樹脂の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例18から発明例21)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0124】
これに対し、ウレタン樹脂を過度に少なく添加する場合(比較例13)には、平板耐食性及び耐黒変性を除いたすべての物性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例16)には、加工部耐食性、平板耐食性、及び耐黒変性の物性の面において「不良」を示した。
【0125】
7.シランカップリング剤の含有量及び種類による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂を、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤を、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)を、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)を、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表8に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0126】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表8に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0127】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を評価し、評価結果を下記表8に記載した。平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性の評価方法は、上述のとおりである。
【0128】
【表8】
【0129】
上記表8に示すように、シランカップリング剤の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例22から発明例25)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0130】
これに対し、シランカップリング剤を過度に少なく添加する場合(比較例17)には、耐アルカリ性及び造管油侵害性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例18)には、被膜の乾燥度が高くなり、堅固な被膜が形成されて加工部耐食性が弱くなり、耐黒変性の面において「不良」を示した。
【0131】
上記発明例23による3価クロム表面処理溶液組成物を用いるとともに、シランカップリング剤の種類は、下記表9に記載されたシランカップリング剤を用いた。下記表9に記載されたシランカップリング剤を用いた組成物で、上述のように試験片を製作し、平板耐食性を評価した上でその結果を下記表9に記載した。
【0132】
【表9】
【0133】
上記表8に示すように、発明例26から発明例59は、平板耐食性が「良好」又は優れた結果を示した。特に、発明例42の組成に応じて製造された3価クロム表面処理溶液組成物を用いた試験片の場合、144時間以上後に発生した白錆面積が0%と、最も優れた結果を示した。
【0134】
8.Al化合物の含有量による物性変化
本発明の3価クロムを含有した表面処理溶液組成物は、3価クロム化合物として硝酸クロム及びリン酸クロム、発明の詳細な説明に記載した方法で製造されたゾルゲル樹脂、防錆耐食剤としてコバルト系防錆剤、モリブデン系化合物としてモリブデン塩化物及び水溶性カチオン性ウレタン樹脂(酸性状態で使用可能なカチオンを有するウレタン樹脂)、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(1:1の混合物)、Al化合物として窒化アルミニウムを含み、下記表10に記載された含有量(組成物の固形分を基準とする)で混合した。
【0135】
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、乾燥被膜層の厚さが0.4μmとなるように、下記表10に示すように製造した3価クロム表面処理溶液組成物をバーコーティングし、PMT60℃の条件で乾燥させることで試験片を製作した。
【0136】
製作した試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、造管油侵害性、及び耐指紋性を評価し、評価結果を下記表10に記載した。平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、及び耐アルカリ性の評価方法は、上述のとおりである。
【0137】
【表10】
【0138】
上記表10に示すように、Al化合物の含有量が、本発明が提案する含有量を満たす場合(発明例60から発明例63)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0139】
これに対し、Al化合物を過度に少なく添加する場合(比較例19)には、耐黒変性の面において「不良」を示し、過度に多く添加した場合(比較例20)には、耐食性の面において「不良」を示した。
【0140】
かかる結果は、Al化合物が本発明で制限する含有量を超えると、被膜形成のときの鋼板表面に析出し、水分にAl化合物が溶解されてコーティング層に欠陥を生じうることによるものであることを確認した。
【0141】
9.被膜層の厚さ及び乾燥温度による物性変化
溶融亜鉛めっき鋼板を7cm×15cm(横×縦)に切断して油分を除去した後、上記発明例42の組成物をバーコーティングし、熱風乾燥炉で乾燥させることで試験片を製作した。コーティングされた被膜層の厚さ及びPMT温度を下記表11に記載された厚さで制御した。
【0142】
製作した試験片の耐アルカリ性、造管油侵害性、耐指紋性、平板耐食性、加工部耐食性、及び耐黒変性を評価し、評価結果を下記表11に記載した。
【0143】
【表11】
【0144】
上記表11に示すように、0.3〜0.5μmで被膜層を形成する場合(特に発明例65から発明例67及び発明例70)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示した。
【0145】
これに対し、形成された被膜が薄すぎる場合(発明例64)には、耐指紋性以外のすべての物性の面において「普通(△)」の結果を示した。一方、過度に厚く形成された場合(発明例68)には、すべての物性の面において「良好」以上の結果を示したが、発明例67に比べて改善効果を示さないため、経済的な側面において発明例67以上の被膜厚さは求められない。
【0146】
また、上記表11に示すように、被膜の乾燥温度が50〜60℃で被膜層を形成する場合(特に発明例65から発明例68及び発明例70)のすべての物性の面において、「良好」以上の結果を示した。
【0147】
これに対し、乾燥温度が低すぎる場合(発明例69)には、十分に乾燥されないため、耐アルカリ性及び造管油侵害性の面において「通常(△)」を示した。一方、乾燥温度が高すぎる場合(発明例71)には、空気中の冷却過程(空冷)で鋼板が十分に冷却されずに包装されることとなり、結露現象が原因となって、耐黒変性の面において「通常(△)」を示した。
【0148】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。