特許第6806913号(P6806913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806913合成ガスループボイラ、並びに、そのチューブシート注入孔内に保護スリーブを挿入および溶接するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806913
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】合成ガスループボイラ、並びに、そのチューブシート注入孔内に保護スリーブを挿入および溶接するための方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20201221BHJP
   F28F 9/013 20060101ALI20201221BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20201221BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20201221BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20201221BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F28D7/16 A
   F28F9/013 B
   F28F9/013 J
   F28F27/00 511G
   F28F21/08 F
   B23K9/04 N
   B23K9/04 S
   B23K31/00 L
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-540571(P2019-540571)
(86)(22)【出願日】2018年1月18日
(65)【公表番号】特表2020-507048(P2020-507048A)
(43)【公表日】2020年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2018051193
(87)【国際公開番号】WO2018141556
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年7月26日
(31)【優先権主張番号】17425012.6
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・コロンボ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィオ・サルティ
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−029090(JP,A)
【文献】 特開昭63−294493(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/165247(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第201407945(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
B23K 9/04
B23K 31/00
F28F 9/013
F28F 21/08
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ束(14)を包囲する筐体(12)を備える合成ガスループボイラ(10)であって、前記チューブ束(14)は複数のチューブ(16)を備え、前記チューブ(16)の各々の一端部には、合成ガスを前記ボイラ(10)に注入するための対応するチューブシート注入孔(20)が設けられたチューブシート(18)に接合され、各チューブシート注入孔(20)には、両端部において前記チューブシート注入孔(20)の対応する面に溶接された少なくとも1つの保護スリーブ(22)が内部に設けられ、各チューブシート注入孔(20)には、前記チューブシート注入孔(20)の注入口に置かれたそれぞれの第1溶接オーバーレイ(24A)が設けられ、これにより各保護スリーブ(22)の第1の端部が前記第1溶接オーバーレイ(24A)に溶接される合成ガスループボイラ(10)において、各チューブシート注入孔(20)には、それぞれのボア内第2溶接オーバーレイ(24B)を収容する少なくとも1つのボア溝(26)が内部に設けられ、これにより前記保護スリーブ(22)の第2の端部は、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)に溶接されることを特徴とする、合成ガスループボイラ(10)。
【請求項2】
各保護スリーブ(22)は、オーステナイト系ニッケル−クロムベース超合金によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の合成ガスループボイラ(10)。
【請求項3】
前記第1溶接オーバーレイ(24A)及び前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の各々は、オーステナイト系鋼またはニッケルベース合金によって製造されることを特徴とする、請求項1または2に記載の合成ガスループボイラ(10)。
【請求項4】
前記チューブ(16)は、U字形状のチューブであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の合成ガスループボイラ(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の合成ガスループボイラ(10)の対応するチューブシート注入孔(20)内に保護スリーブ(22)を挿入および溶接するための方法であって、前記方法は、
前記合成ガスループボイラ(10)の前記チューブシート(18)内に少なくとも1つのチューブシート注入孔(20)を得るステップと、
溝加工によって各チューブシート注入孔(20)の内側に少なくとも1つのボア溝(26)を得るステップと、
溶接によって、ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)を対応するボア溝(26)内に堆積させるステップと、
前記チューブシート注入孔(20)内に前記保護スリーブ(22)を挿入するステップと、
前記保護スリーブ(22)を、その第2の端部において、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)に溶接するステップと、
前記保護スリーブ(22)を、その第1の端部において、前記第1溶接オーバーレイ(24A)に溶接するステップと、
を備える方法。
【請求項6】
前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)は、対応する前記ボア溝(26)に、複数パス溶接プロセスによって溶接されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)は、所定の溶接シーケンスに従った少なくとも5つの溶接パスによって得られることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)は、4.5mmよりも大きい厚さを有することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各チューブシート注入孔(20)は、前記チューブシート(18)の穿孔によって得られることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の堆積ステップの後、且つ前記保護スリーブ(22)の挿入ステップの前に、前記チューブシート注入孔(20)内への前記保護スリーブ(22)の前記挿入を容易にするために、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の筒形状への前加工ステップが行われることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前加工ステップの後に、それぞれの溶接ベベル(34)を形成するために、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の最終加工ステップが行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の堆積ステップの後、且つそれぞれの前記前加工ステップの後に、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)をチェックするために非破壊テスト(NDT)処置が行われ、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)は、超音波テスト(UT)プローブを通じて行われる超音波テスト(UT)によって検査されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ボア溝とボア内第2溶接オーバーレイとが設けられたチューブシート注入孔をシミュレートする標準試験片(28)を使用して、前記UTプローブの予備的キャリブレーションプロセスが行われ、前記標準試験片(28)の溶接オーバーレイの形状および寸法は、前記合成ガスループボイラ(10)の前記チューブシート(18)において得られる対応するボア内第2溶接オーバーレイ(24B)のものと実質的に同一であり、前記標準試験片(28)は、前記チューブシート(18)と同一の材料グレードおよび同一の形態で製造されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の最終加工ステップの後に、前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)の表面および前記ボア内第2溶接オーバーレイ(24B)に溶接された前記保護スリーブ(22)の両方は、光学的検査デバイスを採用した浸透探傷テスト(PT)によってチェックされることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法を指す。より正確には、本発明は、アンモニア合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための交換可能な溶接スリーブ、ならびにアンモニア合成ガスループボイラのチューブシート内に保護スリーブを挿入および溶接するための方法を指す。
【背景技術】
【0002】
知られているように、合成ガス(syngasまたはsynthesis gas)は、主に水素、一酸化炭素、アンモニアおよび非常にしばしばいくらかの二酸化炭素から成るガス混合物である。この名称は、アンモニアまたはメタノールを製造するために合成天然ガス(SNG)を生む際の中間体として使用されることによる。
【0003】
合成ガスは、天然ガス、石炭、生物燃料、または事実上任意の炭化水素供給原料などの多くの原料から、水蒸気との反応(水蒸気改質)、二酸化炭素との反応(ドライ改質)または酸素との反応(部分酸化)によって製造され得る。合成ガスは、水素、アンモニア、メタノールおよび合成炭化水素燃料の製造のための重要な中間体源である。合成ガスは、フィッシャートロプシュ法、および、以前はガソリンプロセスへのモービルメタノール(Mobil methanol to gasoline process)を介して燃料または潤滑剤として使用される合成石油を製造する際の中間体としても使用される。製造方法としては、水素を製造するための天然ガスまたは液化炭化水素の水蒸気改質、石炭のガス化、生物燃料、およびいくつかのタイプの廃棄物からエネルギーへのガス化設備がある。
【0004】
合成ガスループボイラは、アンモニア製造プラントでアンモニア変換器のすぐ下流に設置される圧力装置である。合成ガスループボイラは、チューブシートに接合された、水平にまたは垂直に配置されたチューブ束を内部に具備する。例えば、水平に配置されたチューブ束を有する典型的な合成ガスループボイラレイアウトが、図1に図示される。
【0005】
典型的には55%のH2、20%のNH3、6%のCH4、15%のN2、およびHe+Ar残余の混合物である合成ガスは、合成ガスループボイラのチューブシートに高温(通常400〜480℃)および高圧(約10〜20MPa)で進入する。従来の合成ガスループボイラは、例えばグレード22のフェライト鋼(2.25Cr-IMo)で製造され得る。従来の合成ガスループボイラにおいては、高温水素耐性を得るために、基材選択はAPI941「ネルソンカーブ」に従ってなされる。
【0006】
380℃よりも高温での鋼に対するアンモニアの接触は、鋼の窒化につながり、硬度の増加と高温水素侵食のリスクをもたらす。従って、合成ガスループボイラにおいては、チューブシート合成ガス面は、通常はInconel(登録商標)溶接オーバーレイによって保護される。知られているように、Inconel(登録商標)は、オーステナイト系ニッケル-クロムベースの超合金または高性能合金の系列である。Inconel(登録商標)合金は、耐酸化性および耐腐食性のある材料であり、圧力および熱に晒される非常に厳しい環境での使用によく適している。加熱されたとき、Inconel(登録商標)は、表面を更なる侵食から保護する厚く、安定した、不動態化酸化レイヤを形成する。
【0007】
従来技術によると、厚いチューブシートの孔(500mmまでのチューブシート厚おいて直径28mm以上)は、いくつかのプロセス許諾者仕様書(process licensor specifications)に従って両端部に溶接された内部スリーブによって保護される。第1のInconel(登録商標)スリーブ溶接は、通常はInconel(登録商標)溶接オーバーレイとの間で行われ、第2のInconel(登録商標)スリーブ溶接は、通常はInconel(登録商標)スリーブとチューブシート材料との間で(ボア内溶接技術によって)行われる。
【0008】
例えば、特許文献1は、チューブ内に挿入されるフェルールを有するチューブ状ボイラについて説明している。耐腐食性材料の内部溶接オーバーレイが、各チューブの内部壁の周りにバンド状に堆積される。オーバーレイは、フェルールの端部を受ける環状の内側凹部を有する。
【0009】
特許文献2は、チューブの内部に耐窒化性材料の保護スリーブを有するシェルおよびチューブ熱交換器について説明している。保護スリーブは、外側チューブ状スリーブの下端部に溶接される。
【0010】
特許文献3は、注入チューブプレートの少なくとも一部分が耐摩耗性インサートによって覆われているシェルおよびチューブ熱交換器について説明している。インサートは、熱交換器チューブ内に少なくとも部分的に挿入され得る。インサートは、注入チューブプレートに溶接された保護スリーブから成る。
【0011】
特許文献4は、チューブ端部に溶接された蒸気発生器のためのInconel(登録商標)で作られた修復スリーブについて説明している。古くなった欠陥のある溶接線が先ず除去され、次いで、フランジ領域への修復スリーブの収容および後続の溶接のための窪みを有する新しい圧延輪郭(milling contour)が形成される。
【0012】
特許文献5は、チューブをチューブシートに接合するための溶接材料としてInconel(登録商標)を使用したチューブ状熱交換器について説明している。しかしながら、チューブに保護スリーブは設けられていない。
【0013】
最後に、特許文献6は、融接中に基材に影響を与えることのない基材の溝内の溶接堆積を使用してどのようにしてチューブ封止するかについて説明している。
【0014】
溶接スリーブの短所は、チューブシート基材への溶接物が熱処理される必要があることによるものである。この理由により、スリーブを現場で交換すること、またはチューブシート基材検査のためにスリーブを除去することは実際上不可能である。現場での溶接後熱処理(PWHT: post weld heat treatment)プロセスは、非常に複雑かつ高価であり、ほとんど不可能と考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7574981B1号明細書
【特許文献2】米国特許第4401153A号明細書
【特許文献3】米国特許第8210245B2号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0199462A1号明細書
【特許文献5】米国特許第3540529A号明細書
【特許文献6】米国特許第2785459A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、発明の1つの目的は、単純、安価で、特に機能的なやり方で、従来技術の前述の欠点を解決することができる、合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法を提供することである。
【0017】
詳細には、本発明の1つの目的は、チューブシート基材の完全性をチェックするためにスリーブを(無作為に)除去し、次いで、いかなる溶接後熱処理(PWHT)プロセスも行うことなく溶接によって再設置することを可能にする、合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、ボイラの定期的な保守の最中にスリーブ溶接部のチェックを可能にする、合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法を提供することである。スリーブ溶接部に欠陥が見つかったならば、PWHTプロセスを繰り返す必要なしに再溶接が可能である。
【0019】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲に述べられる合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法を提供することによって、本発明により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本出願による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置の範囲は、特許文献1に見られるような場所におけるチューブシートのチューブを保護するものではないことが指摘されるべきである。それどころか、本出願による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置の範囲は、溶接物を熱処理する必要なしに、チューブシート材料へのフェルールチューブの溶接を可能にする。チューブシート基材(通常、グレード22のフェライト鋼)は、溶接ストレスを低下させ、焼き戻し構造(tempered structure)を達成するために、溶接後に溶接後熱処理を要する。本出願によると、堆積の後にInconel(登録商標)バタリングが溶接後熱処理され、次いで、その後の新たなフェルールの設置、除去、および再溶接は、更なる溶接後熱処理(PWHT)プロセスなしになされ得る。
【0021】
本発明の更なる特徴は、本説明の一体的な部分である従属請求項によって強調される。
【0022】
本発明による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法の特徴および利点は、添付の概略的な図面を参照して以下に例として挙げられた非限定的な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】水平に配置されたチューブ束を有する合成ガスループボイラの概略的な図である。
図2】従来技術による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するためのスリーブの断面図である。
図3図2のスリーブの拡大図であり、スリーブとチューブシート孔との溶接部の断面が巨大的に図示されている。溶接部は、Inconel(登録商標)スリーブとグレードF22チューブシート材料とを含んでいる。
図4】本発明による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置の断面図である。
図5図4の装置のボア内溶接オーバーレイの拡大図であり、チューブシート孔内のInconel(登録商標)溶接オーバーレイの断面が巨大的に図示されている。このステップにおいて、溶接オーバーレイは、筒形状へと前加工され、可能性のある溶接欠陥を検知するための専用の超音波プローブによる体積試験を可能にする。
図6図4の装置のボア内溶接オーバーレイに溶接されたスリーブの拡大図であり、チューブシート孔内のスリーブと溶接オーバーレイとの間の最終溶接部の断面が巨大的に図示されている。スリーブ溶接部は、グレードF22チューブシート基材に影響せず、溶接部およびその影響ゾーンは完全に溶接オーバーレイ内にあることが留意されるべきである。このことは、いかなるPWHTプロセスも行わずに将来的に再溶接することを可能にする。
図7A】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図7B】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図7C】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図7D】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図7E】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図7F】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図7G】チューブシートおよびチューブシート孔内に得られるそれぞれの溶接オーバーレイの製造シーケンスを図示する図である。
図8】チューブシートの拡大図であり、溶接オーバーレイの製造ステップを図示する図である。
図9】溶接オーバーレイを具備するチューブシート孔をシミュレートする標準試験片を図示する図である。標準試験片は、超音波プローブを使用したテストを行うために使用され得る。
図10】チューブシートの別の拡大図であり、溶接オーバーレイの更なる製造ステップ、すなわち、スリーブとInconel(登録商標)溶接オーバーレイとの間の溶接部を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置の一実施形態が示される。合成ガスループボイラ10は、チューブ束14を包囲する筐体12を備えるタイプのものである。合成ガスループボイラ10は水平の向きに図示されているが、これは、垂直にも、または水平面に対して任意の角度にも向けられ得る。
【0025】
チューブ束14は複数のチューブ16を備える。チューブ16は、好ましくは、U字形状のチューブであるが、本発明による装置および方法は、直線状のチューブを有するチューブ束にも適用され得る。チューブ16の各々の一端部は、合成ガスをボイラ10内に注入するための対応するチューブシート注入孔20を具備するチューブシート18に接合される。U字形状のチューブの場合には、チューブ16の各々の他端部は、チューブシート18に接合され、チューブシート18は、合成ガスを流出させるためのチューブシート流出孔を具備する。直線状のチューブの場合には、チューブの各々の他端部は、合成ガスを流出させるためのチューブシート流出孔を具備する別のチューブシートに接合される。チューブシート18は、典型的には、グレードF11、F12、F21、F22、F22Vまたは同等の低合金鋼、好ましくはグレードF22低合金鋼によって製造され得る。
【0026】
各チューブシート注入孔20は、両端部において前記チューブシート注入孔20の対応する面に溶接された少なくとも1つの保護スリーブ22を内部に具備する。各保護スリーブ22は、典型的には、Inconel(登録商標)という商標名で知られるオーステナイト系ニッケル-クロムベース超合金によって製造され得る。
【0027】
例えば、図2および図3は、従来技術による溶接構成を図示し、そこでは、Inconel(登録商標)保護スリーブ22の少なくとも一端部が、チューブシート18のF22材料に直接的に溶接される。この溶接部は、チューブシート18基材の熱影響ゾーンを焼き戻してH2使用に適した硬度(通常、基準硬度はAPI934の手法によって示唆される値である)を達成するために溶接後熱処理されることを必要とする。
【0028】
図4図6は、本発明による溶接構成を図示し、そこでは、少なくとも1つのボア内溶接オーバーレイ24Bが各チューブシート注入孔20内に設置される。より正確には、それ自体が知られたやり方において、各チューブシート注入孔20は、前記チューブシート注入孔20の注入口に置かれたそれぞれの第1溶接オーバーレイ24Aを具備し、各保護スリーブ22の第1の端部が前記第1溶接オーバーレイ24Aに溶接される。加えて、本発明によると、各チューブシート注入孔20は、それぞれのボア内第2溶接オーバーレイ24Bを収容する少なくとも1つのボア溝26を内部に具備し、各保護スリーブ22の第2の端部は前記ボア内第2溶接オーバーレイ24Bに溶接される。
【0029】
各溶接オーバーレイ24A、24Bは、好ましくはInconel(登録商標)超合金によって、またはオーステナイト系鋼またはニッケルベース合金によって製造され、好ましくは、Inconel(登録商標)保護スリーブ22の両端部に設けられる。換言すれば、各Inconel(登録商標)保護スリーブ22は結果的に、両端部において、いかなる溶接後熱処理(PWHT)プロセスも行うことのない除去および再設置の可能性を持って、それぞれのInconel(登録商標)溶接オーバーレイ24A、24Bに溶接される。
【0030】
図5および図6を参照すると、チューブシート18の基材における第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ熱影響ゾーンは、ボイラ10の製造中に熱処理される。Inconel(登録商標)保護スリーブ22とボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bとの間の溶接部は熱処理を必要とせず、その熱影響ゾーンは完全に前記ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24B内にあり、基材に影響しない。
【0031】
新たな解決策の製造は、ボア溝26内にボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bを堆積し、前記ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24BにInconel(登録商標)保護スリーブ22を溶接する新たな溶接処置を開発することを伴っていた。チューブシート18のボア溝26内にボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bを挿入および溶接するための方法は、図7Aにおいて図示されるように、前記チューブシート18に少なくとも1つのチューブシート注入孔20を得る予備的なステップを備える。各チューブシート注入孔20は、好ましくはチューブシート18の穿孔によって得られる。続いて、図7Bに図示されるように、溝加工によって各チューブシート注入孔20内に少なくとも1つのボア溝26が得られる。
【0032】
次いで、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bが、溶接、好ましくは複数パス溶接プロセスによって、対応するボア溝26内に堆積される。この処置は図7Cにおいて図示され、および図8においてより詳細に図示される。例えば、図8において図示されるように、堆積された第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bは、所定の溶接シーケンスに従った少なくとも5つの溶接パスによって得ることができ、4.5mmよりも大きな厚さを有し得る。
【0033】
好ましくは、図7Dにおいて図示されるように、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bは、筒形状に前加工される。この作業は、チューブシート注入孔20内へのInconel(登録商標)保護スリーブ22の挿入を容易にするが、本明細書において以下に説明されるように、Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bの超音波テスト(UT:ultrasonic testing)を行うことを要する。
【0034】
非破壊検査(NDT:non-destructive testing)処置は、第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bをチェックするために開発された。詳細には、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bの堆積の後、それぞれの前加工の後に、前記ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bは、カスタマイズされた自動UTプローブ(図示略)を通じて行われる超音波テスト(UT)によって検査される。UTプローブは、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24BのCスキャン表現を提供し、結合検知の不足のために行われる。
【0035】
より正確には、UTプローブは、2つの直列に並んだクリスタル、送信機および受信機を備え得、長手軸上において、チューブシート注入孔20内でボア溝26に位置付けられ得る。UTプローブは、0.5mmピッチの螺旋状のパスに沿って移動する。UTプローブは、ボアの内部面上において移動されるべきであり、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bの表面全体をカバーしなければならない。
【0036】
UTプローブによって得られた超音波データは、処理され、未処理形態で記憶される。スキャン中に、スキャン画像はオンラインで構築され得る。スキャンを終了した後で、データは評価および記録されるべきであり、これはオフラインで行われ得る。最終的な結果は、溶接セクションに対する反射体の位置、長さ、および深さ位置によって提示される。
【0037】
ボア溝とボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイとを具備するチューブシート注入孔をシミュレートする特定の標準試験片28(図9)を使用して、UTプローブの予備的キャリブレーションプロセスが行われ得る。標準試験片28の溶接オーバーレイの形状および主な寸法は、合成ガスループボイラ10のチューブシート18において得られる対応するものと実質的に同じである。加えて、標準試験片28は、合成ガスループボイラ10のチューブシート18と同一の材料グレードおよび同一の形態で製造される。
【0038】
標準試験片28は、それぞれの溶接オーバーレイに設けられた複数のキャリブレーションおよび/または照合孔30、32を具備する。標準試験片28の全ての孔30、32を明確に検知するために、スキャン範囲キャリブレーションが設定されるべきである。スキャン範囲は、UTプローブソフトウェアにおいて設定されるべきである。
【0039】
次いで、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bは、それぞれの溶接ベベル34(図10)を生むために最終加工される(図7E)。保護スリーブ22は、例えば手によってチューブシート注入孔20内に挿入され、次いで、その第2の端部において、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bに溶接される(図7Fおよび7G)。こうして、保護スリーブ22がチューブシート注入孔20内に展開される。
【0040】
ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bの最終加工ステップの後に、ボア内第2溶接オーバーレイ24Bの表面および保護スリーブ22の両方は、前記ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bに溶接されると、例えばボアスコープを備えたデベロッパー用途のための光学的検査デバイスを採用した浸透探傷テスト(PT:penetrant test)によってチェックされ得る。保護スリーブ22とボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bとの間の溶接部は、特定の要求に応じて、完全融接または部分的融接どちらであってもよい。
【0041】
保護スリーブ22とボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ24Bとの間の溶接部が完全融接プロセスによって得られる場合、溶接部の精緻な超音波テスト(UT)試験が可能である。超音波テストは、UTクリープ波を作動させてAスキャン表現を提供する特別なボアプローブによって行われる。超音波テストは、表面欠陥およびルート欠陥の両方を検知し得る。
【0042】
製造プロセスは、保護スリーブ22の第1の端部における第1溶接オーバーレイ24Aの溶接およびボア内溶接技術によるチューブシート18へのチューブ16の溶接によって完了する。次いで、ボイラ10は、それ自体が知られたやり方によって完成され、溶接後熱処理(PWHT)プロセスが行われ得る。
【0043】
かくして、本発明による合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法が、以前に概略を示した目的を達成し、特には以下の利点を得ることが示される:
いかなる溶接後熱処理(PWHT)プロセスも行うことのないスリーブの除去および再設置の可能性;
不良があった際の現場でのスリーブ溶接の修復の可能性;および
チューブシート基材の検査のための現場でのスリーブの除去および交換の可能性。
【0044】
このように考案された本発明の合成ガスループボイラのチューブシートを保護するための装置および方法は、任意の場合において多くの修正および変形の余地があり、それらの全ては本発明の概念の範囲内ある。加えて、全ての詳細は技術的に等価な要素で置き換えられ得る。実際には、使用される材料、形状およびサイズは、技術的要件に従ういかなるものであってもよい。
【0045】
従って、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0046】
10 合成ガスループボイラ
12 筐体
14 チューブ束
16 チューブ
18 チューブシート
20 チューブシート注入孔
22 保護スリーブ
24A 第1溶接オーバーレイ、Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ
24B ボア内第2溶接オーバーレイ、ボア内第2Inconel(登録商標)溶接オーバーレイ
26 ボア溝
28 標準試験片
30 キャリブレーションおよび/または照合孔
32 キャリブレーションおよび/または照合孔
34 溶接ベベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8
図9
図10