(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたものを含む従来のスタッドピンは、氷雪路面での走行性能について依然として改善の余地がある。
【0006】
本発明は、スタッドピンにおける氷雪路面での走行性能を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ボディと、前記ボディから突出するシャフトとを備え、前記シャフトは、前記ボディから突出する第1段部と、前記第1段部から突出する第2段部とを少なくとも含む複数の段部を備える多段構造であり、前記シャフトの最先端段の前記段部の端面に孔部が設けら
れ、前記第1段部の平面視での外形形状と、前記第2段部の平面視での外形形状とが異なり、前記第2段部のエッジ成分の数は、前記第1段部のエッジ成分の数よりも少ない、スタッドピンを提供する。
【0008】
最先端段の段部の端面に設けられた孔部の孔縁はエッジ成分を構成する。従って、孔部を設けることで、エッジ成分の総数とエッジ線分の長さの合計(エッジ成分総長)を増加させることができる。従って、孔部を設けることで、エッジ成分をより効果的に機能させることができ、それによって氷雪路面での走行性能を向上できる。
【0009】
シャフトの総段数を増加すれば、エッジ成分の総数とエッジ成分総長とが増加するが、シャフトの強度(折れにくさ)は低下する。孔部を設けることで、エッジ成分の総数とエッジ成分総長とを増加させれば、シャフトの総段数を増加するよりも、シャフトの強度低下をまねきにくい。
【0010】
以上のように、最先端段の段部の端面に孔部を設けることで、スタッドピンのシャフトの強度を確保しつつ、シャフトが有するエッジ成分をより効果的に機能させ、それによって氷雪路面での走行性能を向上できる。
前記第1段部の平面視での外形形状と、前記第2段部の平面視での外形形状とが異なる。この構成により、第1段部のエッジ成分と、第2段部のエッジ成分とは、平面視での方向が異なることとなる。つまり、シャフトは多方向にエッジ成分を有し、これらのエッジ成分が多方向に作用する。その結果、氷雪路面での走行性能がさらに向上する。
前記第2段部のエッジ成分の数は、前記第1段部のエッジ成分の数よりも少ない。エッジ成分の数が多い程、個々のエッジ成分の長さは短くなる。第1段部でのエッジ成分の数を相対的に多く設定することで、個々のエッジ成分の長さを確保しつつ、多方向にエッジ成分を確保できる。また、第2段部のエッジ成分の数を相対的に少なく設定することで、個々のエッジ成分の長さを確保しつつ、第1段部のエッジ成分とは異なる方向にもエッジ成分を確保できる。
【0011】
前記最先端段の前記段部の前記端面の平面視での輪郭の面積A1と、前記孔部の面積A2は、以下を満たすことが好ましい。
【0012】
【数1】
【0013】
面積A1,A2をこの範囲に設定することで、孔部を設けることによるシャフトの強度低下を抑制しつつ、孔部を設けることによるエッジ成分の総数とエッジ成分総長との増加を実現できる。
【0014】
前記孔部の深さは、前記最先端段の前記段部の突出高さ以上であることが好ましい。
【0015】
この構成により、シャフト、具体的には最先端段の段部の摩耗が進行しても、孔部が残る。従って、このような摩耗が進行しても、孔部を設けたことによるエッジ成分の総数とエッジ成分総長の増加という利点が維持される。
【0020】
最先端段の段部のエッジ成分の数は、最先端段から2番目の段部のエッジ成分の数より多いことが好ましい。
【0021】
一般に、ある段部のエッジ成分の数が多い程、その段部の氷雪路面への突き刺さり効果が高い。また、最先端段の段部は、他の段部と比較して、氷雪路面への突き刺さり効果が最も高い。従って、最先端段の段部のエッジ成分の数を相対的に多く設定することで、シャフトの氷雪路面への突き刺さり効果を効果的に向上できる。
【0022】
前記孔部の孔縁が構成するエッジ成分の数は、前記最先端段の段部のエッジ成分の数より多いことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スタッドピンのシャフトの強度を確保しつつ、シャフトが有するエッジ成分をより効果的に機能させ、それによって氷雪路面での走行性能を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1から
図3を参照すると、本実施形態のスタッドピン1の全体的として、それ自体の軸線AXに沿って延びた形状を有する。以下の説明において、スタッドピン1を軸線AXに沿って先端側から見た形状について、「平面視」という用語を使用する場合がある。
【0027】
スタッドピン1は、最も基端側のベース2と、ベース2から突出するシャンク3と、シャンク3の先端に設けられたボディ4とを備える。また、スタッドピン1は、ボディ4から突出するシャフト5を備える。
【0028】
本実施形態手では、ベース2は概ね円盤状で、ボディ4は概ね円柱状である。シャンク3は概ね、ベース2及びボディ4よりも小径の短円柱状である。また、ベース2、シャンク3、及びボディ4は一体構造で、アルミニウム、又はアルミニウム合金製である。ベース2、シャンク3、及びボディ4のいずれについても、他の構造及び他の材料を採用できる。
【0029】
ボディ4は、端面4aと側面4bとを備える。本実施形態に端面4aは、概ね、軸線AXに直交して拡がる平坦面である。端面4aは、軸線AXに対して傾斜していてもよいし、非平坦面であってもよい。ボディ4の端面4aからシャフト5が軸線AXに沿う方向に突出している。シャフト5の平面視での輪郭ないし外形形状は、ボディ4の端面4aの平面視での外形形状に囲まれた領域内に収まっている。つまり、シャフト5の平面視での外形形状の面積は、ボディ4の端面4aの平面視での外形形状の面積よりも狭い。例えば、前者の面積は後者の面積の10〜45%に設定できる。
【0030】
本実施形態では、シャフト5の材質は、タングステンである。また、シャフト5はベース2、シャンク3、及びボディ4とは別部品であり、嵌合によりボディ4に固定されている。シャフト5について、他の材料を採用できる。シャフト5はボディ4と一体構造でもよい。
【0031】
図4を併せて参照すると、スタッドピン1は、空気入りタイヤ6のトレッド部6aに形成されたピン孔6bに装着して使用される。ベース2及びシャンク3の全体がピン孔6bに収容される。ボディ4は、その端面4aとシャフト5とがトレッド部6に露出した状態で、ピン孔6bに収容される。
【0032】
シャフト5は、複数の段部を備える多段構造である。本実施形態では、シャフト5は3段の段部、つまり第1段部11、第2段部12、及び第3段部13を備える。シャフト5の第1から第3段部11,12,13は、端面11a,12a,13aと、側面11b,12b,13bをそれぞれ備える。最基端段側の段部、つまり第1段部11は、ボディ4の端面4aから突出している。また、中間段の段部、つまり第2段部12は、第1段部11の端面11aから突出している。さらに、最先端段の段部、つまり第3段部13は第2段12の端面12aから突出している。シャフト5は4段以上の段部を備えていてもよい。また、シャフト5は2段の段部により構成されていてもよい。
【0033】
シャフト5の全高(本実施形態ではボディ4の端面4aから第3段部13の端面13aまでの高さ)は、例えば0.5mm以上3mm以下に設定できる。また、シャフトの全高に対する、第1段部11以外の段部の高さの和(本実施形態では第2及び第3段部12,13の高さの和)の割合は、例えば10%以上90%以下に設定できる。
【0034】
シャフト5の第1から第3段部11,12,13は、ボディ4側、つまり基端側ほど平面視での端面11a,12a,13aの外形形状が大きい。逆に言えば、シャフト5の第1から第3段部11,12,13は、先端側ほど平面視での端面11a,12a,13aの外形形状が小さい。そのため、シャフト5は、全体として、ボディ4の端面4aから突出する階段状に尖った突起を構成している。
【0035】
本実施形態では、第1から第3段部11,12,13の端面11a,11b,11cは、概ね、軸線Aに直交し拡がる平坦面である。端面11a,11b,11cは、軸線AXに対して傾斜していてもよいし、非平坦面であってもよい。
【0036】
図2に最も明瞭に示すように、第1から第3段部11,12,13の端面11a,12a,13aの平面視での外形形状は、それぞれ五角形、四角形、及び四角形である。端面11aが五角形である第1段部11では、端面11aと側面11bとにより、5個の辺ないしエッジ成分21a,21b,21c,21d,21eが形成されている。また、端面12aが四角形である第2段部12では、端面12aと側面12bとにより、4個の辺ないしエッジ成分22a,22b,22c,22dが形成されている。さらに、端面13aが四角形である第3段部13では、端面13aと側面13bとにより、4個の辺ないしエッジ成分23a,23b,23c,23dが形成されている。本実施形態では、エッジ成分21a〜21e,22a〜22d,23a〜23dは、直線状である。しかし、これらのエッジ成分21a〜21e,22a〜22d,23a〜23dは、幾何学的に厳密な意味で直線状である必要はなく、氷雪路面に対する引っ掻き効果が得られる限り、ある程度湾曲又は蛇行していてもよい。また、氷雪路面に対する引っ掻き効果が得られる限り、これらのエッジ成分21a〜21e,22a〜22d,23a〜23eに面取りを施してもよい。
【0037】
シャフト5の最先端段である第3段部13の端面13aには、有底の孔部41が設けられている。本実施形態では、孔部41の平面視での形状は端面13aと相似な四角形である。また、孔部41は平面視で端面13aと図心の位置が概ね一致するように設けられている。本実施形態では、孔部41の深さ方向全体で均一な断面形状を有する。しかし、孔部41は、深さ方向に断面形状が変化するものであってもよい。
【0038】
本実施形態の孔部41の平面視での外形形状は四角形であるので、孔部41の側壁41aと第3段部13の端面13aとにより形成される孔部41の孔縁が、4個の辺ないしエッジ成分42a,42b,42c,42dを構成している。本実施形態では、孔部41のエッジ成分42a〜42dは、直線状である。しかし、これらのエッジ成分42a〜42dは、幾何学的に厳密な意味で直線状である必要はなく、氷雪路面に対する引っ掻き効果が得られる限り、ある程度湾曲又は蛇行していてもよい。また、氷雪路面に対する引っ掻き効果が得られる限り、これらのエッジ成分42a〜42dに面取りを施してもよい。
【0039】
従って、孔部41を設けることで、シャフト5は、第1から第3段部11〜13のエッジ成分21a〜21e,22a〜22d,23a〜23dに加え、孔部41のエッジ成分42a〜42dを備えることなる。つまり、孔部41を設けることで、シャフト5のエッジ成分の総数とエッジ線分の長さの合計(エッジ成分総長)を増加させることができる。従って、孔部41を設けることで、シャフト5のエッジ成分をより効果的に機能させることができ、それによって氷雪路面での走行性能を向上できる。
【0040】
孔部を設ける代わりに、シャフト5が備える段部の総段数を増加してもエッジ成分の総数とエッジ成分総長とを増加させることができる。しかし、この場合、シャフト5の全高Haが増加するため、シャフト5の強度(折れにくさ)は低下する。孔部41を設けることで、エッジ成分の総数とエッジ成分総長とを増加させれば、シャフト5の総段数を増加するよりも、シャフトの強度低下をまねきにくい。
【0041】
孔部41を設けることにより、最先端段の段部である第3段部13は、孔部41を設けない場合と比較して氷雪路面に突き刺さりやすくなる。この点でも、孔部41を設けることにより氷雪路面での走行性能を向上できる。
【0042】
以上のように、最先端段の段部である第3段部13の端面13aに孔部41を設けることで、シャフト5の強度を確保しつつ、シャフト5が有するエッジ成分をより効果的に機能させ、それによって氷雪路面での走行性能を向上できる。
【0043】
最先端段の段部である第3段部13の端面13aの平面視での輪郭に囲まれた領域の面積A1と、平面視で孔部41の孔縁、つまりエッジ成分42a〜42dで囲まれた領域の面積A2は以下の不等式で規定される範囲に設定できる。
【0045】
面積A1,A2をこの範囲に設定することで、孔部42を設けることによるシャフト5の強度低下を抑制しつつ、孔部42を設けることによるエッジ成分の総数とエッジ成分総長との増加を実現できる。
【0046】
図3を参照すると、孔部41の深さDEthは、最先端段の段部である第3段部13の突出高さHt(第2段部12の端面12aから第3段部13の端面13aまでの高さ)以上である。具体的には、孔部41の深さDEthは、孔部41aの底壁41bが最基端段の段部である第1段部11の端面11a付近に位置するように設定されている。孔部41の深さDEthを深く設定することで、シャフト5、具体的には最先端段の第3段部13の摩耗が進行しても、孔部41が残る。また、第2段部12の摩耗が進行しても孔部41が残る。つまり、摩耗が進行しても、孔部を設けたことによるエッジ成分の総数とエッジ成分総長の増加という利点が維持される。
【0047】
前述のように、第1段部11の端面11aの平面形状は五角形で、第2端部12の端面12aの平面形状は四角形である。つまり、シャフト5の第1端部11と第2端部12とは、端面11a,12aの平面視での外形形状が異なる。そのため、そのため、第1段部11のエッジ成分21a〜21eと、第2段部12のエッジ成分22a〜22dは、平面視での方向が異なる。より具体的には、平面視で、第2段部12のエッジ成分22a〜22dはいずれも、第1段部11のエッジ成分21a〜21eのうちのいずれとも平行ではない。つまり、シャフト5は、
図1に符号Eで概念的に示すように多方向に向いたエッジ成分を有し、これらのエッジ成分が多方向に作用する。その結果、氷雪路面での走行性能が向上する。
【0048】
第1段部11は5個のエッジ成分21a〜21eを有し、第2段部12は4個のエッジ成分22a〜22dを有する。また、第2段部12の端面12aは第1段部11の端面11aよりも小さい。一般に、段部の端面の大きさが同じであれば、エッジ成分の数が多い程、個々のエッジ成分の長さは短くなる。従って、端面11aが相対的に大きい第1段部11のエッジ成分の数を相対的に多く設定することで、個々のエッジ成分21a〜21eの長さを確保しつつ、多方向にエッジ成分を確保できる。また、端面12aが相対的に小さい第2段部12のエッジ成分の数を相対的に少なく設定することで、個々のエッジ成分22a〜22dの長さを確保しつつ、第1段部11のエッジ成分21a〜21eとは異なる方向にもエッジ成分22a〜22dを確保できる。その結果、第1段部11の端面11aの外形形状と第2段部12の端面12aの外形形状を単に異ならせた場合よりも、氷雪路面での走行性能がより向上する。
【0049】
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。これらの実施形態について特に言及しない構造及び機能は、第1実施形態と同様である。また、これらの実施形態に関する図面では、第1実施形態と同一又は同様の要素には、同一の符号を付している。
【0050】
(第2実施形態)
図5A及び
図5Bに示す第2実施形態に係るスタッドピン1では、第1から第3段部11〜13の端面11a〜13aの平面視での外形形状は、それぞれ五角形、四角形、及び四角形である。また、孔部41の平面視での外形形状は円形である。第1段部11は5個のエッジ成分21a〜21eを備え、第2段部12は4個のエッジ成分22a〜22dを備える。また、第3段部13は4個のエッジ成分23a〜23dを備える。さらに、円形である孔部41のエッジ成分の数は無限大とみなせる。
【0051】
第1段部11と第2段部12は平面視での外形形状が異なり、かつ第2段部12のエッジ成分の数は4個で、第1段部11のエッジ成分の数である5個よりも少ない。
【0052】
平面視で円形である孔部41の孔縁が構成するエッジ成分の数は無限大とみなせ、平面視で四角形である第3段部13のエッジ成分23a〜23dの数、すなわち4個よりも大きい。このように、孔部41のエッジ成分の数を最先端段の段部である第3段部13のエッジ成分の数よりも多くすることで、前述した孔部41を設けたことによる第3段部13の氷雪路面への突き刺さり効果がさらに向上する。
【0053】
(第3実施形態)
図6A及び
図6Bに示す第3実施形態に係るスタッドピン1では、第1から第3段部11〜13の端面11a〜13aの平面視での外形形状は、それぞれ五角形、四角形、及び円形である。また、孔部41の平面視での外形形状は四角形である。第1段部11は5個のエッジ成分21a〜21eを備え、第2段部12は4個のエッジ成分22a〜22dを備える。また、円形である第3段部13のエッジ成分の数は無限大とみなせる。さらに、孔部41は4個のエッジ成分42a〜42dを備える。
【0054】
第1段部11と第2段部12は平面視での外形形状が異なり、かつ第2段部12のエッジ成分の数は4個で、第1段部11のエッジ成分の数である5個よりも少ない。
【0055】
前述のように、最先端段である第3段部13の端面13aは円形であり、エッジ成分の数は無限大とみなせる。また、最先端段から2番目の段部である第2段部12の端面12aは、四角形であり、4個のエッジ成分22a〜22dを有する。つまり、最先端段である第3段部13のエッジ成分の数は、最先端段から2番目の段部である第2段部12のエッジ成分の数よりも多い。
【0056】
第1から第3段部11〜13の個々については、エッジ成分の数が多い程、その段部の氷雪路面への突き刺さり効果が高い。また、最先端段である第3段部13は、第1及び第2段部11,12と比較して、氷雪路面への突き刺さり効果が最も高い。従って、最先端段である第3段部13のエッジ成分の数を、第2段部12のエッジ成分の数よりも相対的に多く設定することで、シャフト5の氷雪路面への突き刺さり効果を効果的に向上し、それによって氷雪路面での走行性能を向上できる。
【0057】
(第4実施形態)
図7A及び
図7Bに示す第4実施形態に係るスタッドピン1では、第1から第3段部11〜13の端面11a〜13aの平面視での外形形状は、それぞれ五角形、四角形、及び六角形である。また、孔部41の平面視での外形形状は四角形である。第1段部11は5個のエッジ成分21a〜21eを備え、第2段部12は4個のエッジ成分22a〜22dを備える。また、第3段部13は6個のエッジ成分13a〜13fを備える。さらに、孔部41は4個のエッジ成分42a〜42dを備える。
【0058】
第1段部11と第2段部12は平面視での外形形状が異なり、かつ第2段部12のエッジ成分の数は4個で、第1段部11のエッジ成分の数である5個よりも少ない。また、最先端段である第3段13のエッジ成分の数は6個で、最先端段から2番目の段部である第2段12のエッジ成分の数である4個より多い。
【0059】
(第5実施形態)
図8A及び
図8Bに示す第5実施形態に係るスタッドピン1では、第1から第3段部11〜13の端面11a〜13aの平面視での外形形状は、それぞれ六角形、五角形、及び三角形である。また、孔部41の平面視での外形形状は三角形である。第1段部11は6個のエッジ成分21a〜21fを備え、第2段部12は5個のエッジ成分22a〜22eを備える。また、第3段部13は3個のエッジ成分13a〜13cを備える。さらに、孔部41は3個のエッジ成分42a〜42cを備える。
【0060】
第1段部11と第2段部12は平面視での外形形状が異なり、かつ第2段部12のエッジ成分の数は5個で、第1段部11のエッジ成分の数である6個よりも少ない。
【0061】
(第6実施形態)
図9A及び
図9Bに示す第6実施形態に係るスタッドピン1では、第1から第3段部11〜13の端面11a〜13aの平面視での外形形状は、それぞれ五角形、四角形、及び四角形である。また、孔部41の平面視での外形形状は五角形である。第1段部11は5個のエッジ成分21a〜21eを備え、第2段部12は4個のエッジ成分22a〜22dを備える。また、第3段部13は4個のエッジ成分13a〜13dを備える。さらに、孔部41は5個のエッジ成分42a〜42eを備える。
【0062】
第1段部11と第2段部12は平面視での外形形状が異なり、かつ第2段部12のエッジ成分の数は4個で、第1段部11のエッジ成分の数である5個よりも少ない。また、孔部41のエッジ成分の数は6個で、最先端段の段部である第3段13のエッジ成分の数である4個より多い。
【0063】
(第7実施形態)
図10A及び
図10Bに示す第7実施形態に係るスタッドピン1では、第1から第3段部11〜13の端面11a〜13aの平面視での外形形状は、いずれも円形である。また、また、孔部41の平面視での外形形状も円形である。
【0064】
孔部41は平面視での重心の位置が、第3段部13の端面13aの平面視での重心の位置と異なるように設けられている。第1から第3実施形態についても、孔部41の重心の位置を第3段部13の端面13aの重心の位置と異ならせてもよい。
【0065】
第1から第7実施形態のいずれについても、シャフト5には設けられている孔部41の数は1個である。シャフト5の強度が確保できるのであれば、同一又は異なる平面視形状を有する2個以上の孔部を設けても良い。
【0066】
(評価試験)
後掲の表1に示すように、第1比較例、第2比較例、並びに第1から第4実施形態のスタッドピン(いずれも新品)について、駆動性能、制動性能、及び旋回性能の評価試験を行った。
【0067】
テストタイヤとして、タイヤサイズ:195/65R15、空気圧Fr/Re:220/220(kPa)を使用した。この評価試験では、テストタイヤをテスト車両(1500cc、4WDミドルセダン車)に装着してアイス路面を走行した。エッジ性能の評価では、第1比較例の場合を100として、第2比較例、並びに第1から第5実施形態を指数評価した。駆動性能については、アイス路面において停止状態から発進して30mに到達するまでの時間で評価した。制動性能については、速度40km/hでABS(Antilock Brake System)により制動力を作用させたときの制動距離で評価した。旋回性能については、同じく速度40km/hで旋回した際の旋回半径で評価した。
【0068】
第1比較例のスタッドピン1は、
図11に示すように、多段構造ではなく、単一の円柱で構成されたシャフト5を有する。第2比較例のスタッドピン1は、
図12に示すように、第1実施形態のスタッドピン1から孔部41をなくしたものである。比較例及び第1から第4実施形態のいずれについても、タイヤ回転方向が図において矢印R1で示す向きとなるように、スタッドピン1をテストタイヤに装着した。
【0070】
シャフト5に孔部41を設けた第1から第5実施形態は、駆動性能、制動性能、及び旋回性能のいずれについても、第1及び第2比較例を上回る性能を発揮した。