(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段が、前記第1除去処理の前に、前記ローラー回転手段に前記2個のローラーの少なくともいずれかを複数回、回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載の農産物の不用部除去装置。
前記接触除去手段が、前記不用部を前記農産物の表面から削り取るドリル刃を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の農産物の不用部除去装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、農産物を1個1個クランプで支持し、回転させつつ不用部を除去する必要がある。したがって、複数個の農産物を同時に処理する場合、クランプを回転させる機構を同時に処理する農産物の数だけ設けなければならない。また、農産物をクランプで把持しつつこれを適切に回転させるには、2つの把持点を結ぶ直線が農産物の中心を通るようにする必要がある。しかしながら、ジャガイモ等の農産物は、大きさや形状が1個1個異なる。このため、複数個の農産物のそれぞれについて中心を適切に把握してクランプに把持させるのは困難である。
【0005】
本発明の目的は、大きさ又は形状が異なる複数個の農産物を同時に処理しやすい農産物の不用部除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点による農産物の不用部除去装置は、形状及び大きさの少なくともいずれかが互いに異なる複数個の農産物のそれぞれの表面における複数個所に存在する不用部を除去する農産物の不用部除去装置であって、互いの回転軸が平行になり且つ前記回転軸に沿って並ぶ複数個の窪みを共に形成するように並んだ2個のローラーからなるローラー対が設けられ、前記複数個の窪みのそれぞれにおいて前記複数個の農産物のそれぞれを支持する農産物支持手段と、前記ローラー対が支持する前記農産物の表面まで移動可能であり、前記農産物の表面に接触して前記不用部を除去する接触除去手段と、前記複数個の農産物を同時に回転させるように前記2個のローラーの少なくともいずれかを回転させるローラー回転手段と、前記不用部のそれぞれの位置を検出する位置検出手段と、前記接触除去手段及び前記ローラー回転手段を制御する制御手段とを備えており、前記制御手段が、前記接触除去手段に前記位置検出手段が検出した位置へと移動させると共に前記ローラー対が支持する農産物の表面から前記不用部を除去させる第1除去処理を実行した後に、前記ローラー回転手段に前記2個のローラーの少なくともいずれかを回転させることで前記ローラー対が支持する前記複数個の農産物の姿勢を同時に変更する姿勢変更処理と、前記接触除去手段に、前記姿勢変更処理によって姿勢が変更された前記農産物の表面における除去前の前記不用部に関して前記位置検出手段が検出した位置へと移動させつつ前記不用部を除去させる第2除去処理とをそれぞれ1回、又は、複数回繰り返して実行する。
【0007】
本発明によると、ローラー対が形成する窪み上に農産物を支持し、ローラーを回転させることで農産物を回転させる。このため、農産物の中心を把握しなくても、大きさや形状が異なる農産物を適切に支持しつつ回転させることが可能である。また、ローラーの回転軸に沿って複数個の窪みが形成され、複数個の農産物のそれぞれを各窪みにおいて支持する。したがって、複数個の農産物を同時に回転させ、不用部を除去することができる。このように、本発明によれば、大きさ又は形状が異なる複数個の農産物を同時に処理しやすい不用部除去装置が実現する。
【0008】
また、本発明においては、前記2個のローラーのそれぞれに括れが形成されており、前記2個のローラーに形成された両方の前記括れによって前記窪みが形成されていることが好ましい。これによると、2個のローラーが形成する窪みに農産物が安定して支持されやすい。
【0009】
また、本発明においては、前記制御手段が、前記第1除去処理の前に、前記ローラー回転手段に前記2個のローラーの少なくともいずれかを複数回、回転させることが好ましい。これによると、ローラーに載置された農産物の姿勢を安定化させてから不用部の除去処理を実施できる。よって、不用部を適切に除去しやすい。
【0010】
また、本発明においては、前記ローラーの表面に複数本のスリットが形成されていることが好ましい。これによると、ローラーに載置された農産物の滑り止めとしてスリットが機能する。このため、姿勢変更処理において所望の回転量だけ農産物を回転させやすい。
【0011】
また、本発明においては、前記ローラー対が、前記軸方向と直交する直交方向に関して複数配列されており、前記制御手段が、前記ローラー回転手段によるローラーの回転、及び、前記位置検出手段による前記農産物の位置の検出を複数個の前記ローラー対及び複数個の前記農産物に対して同時に実行することが好ましい。これによると、複数個の窪みを形成するローラー対を直交方向に関して複数個設ける。そして、これら複数個のローラー対が支持する複数個の農産物に対して同時に処理を実行する。また、複数個の農産物を同時に撮影した画像等に基づいてこれらの農産物に対して同時に不用部の位置の検出処理を実行する。このため、農産物を効率的に処理できる。
【0012】
また、本発明においては、前記接触除去手段が、前記不用部を前記農産物の表面から削り取るドリル刃を有していることが好ましい。これによると、ドリル刃によって不用部を適切に除去できる。
【0013】
また、本発明においては、前記接触除去手段が前記不用部を削り取る際に前記ローラー対との間に前記農産物を挟んで支持する支持部材と、前記ローラー対に向かう弾性力を前記支持部材に付与する弾性部材とをさらに備えていることが好ましい。これによると、弾性部材からの弾性力によって支持部材がローラー対との間に農産物を確実に挟み込んで支持する。したがって、接触除去手段による不用部の削り取りの際、その反動で農産物の位置がずれたりしにくい。
【0014】
また、本発明の第2の観点による農産物の不用部除去装置は、形状及び大きさの少なくともいずれかが互いに異なる複数個の農産物のそれぞれの表面における複数個所に存在する不用部を除去する農産物の不用部除去装置であって、互いの回転軸が平行になり且つ1個以上の窪みを共に形成するように並んだ2個のローラーからなる複数個のローラー対が、前記回転軸に沿った軸方向に関して配列され、前記複数個のローラー対によって形成される複数個の前記窪みのそれぞれにおいて前記複数個の農産物のそれぞれを支持する農産物支持手段と、前記ローラー対が支持する前記農産物の表面まで移動可能であり、前記農産物の表面に接触して前記不用部を除去する接触除去手段と、前記複数個の農産物を同時に回転させるように前記複数個のローラー対に含まれる2つ以上の前記ローラーを回転させるローラー回転手段と、前記不用部のそれぞれの位置を検出する位置検出手段と、前記接触除去手段及び前記ローラー回転手段を制御する制御手段とを備えており、前記制御手段が、前記接触除去手段に前記位置検出手段が検出した位置へと移動させると共に前記ローラー対が支持する農産物の表面から前記不用部を除去させる第1除去処理を実行した後に、前記ローラー回転手段に前記2つ以上のローラーを回転させることで前記ローラー対が支持する前記複数個の農産物の姿勢を同時に変更する姿勢変更処理と、前記接触除去手段に、前記姿勢変更処理によって姿勢が変更された前記農産物の表面における除去前の前記不用部に関して前記位置検出手段が検出した位置へと移動させつつ前記不用部を除去させる第2除去処理とをそれぞれ1回、又は、複数回繰り返して実行する。
【0015】
上記第1の観点によると、1組のローラー対に複数個の窪みが形成されている。これに対し、第2の観点では、1個以上の窪みを形成するローラー対が複数個並ぶことによって複数個の窪みが形成される。かかる態様においても、第1の観点と同様、大きさ又は形状が異なる複数個の農産物を同時に処理しやすい不用部除去装置が実現する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るジャガイモの芽取り装置1(以下、芽取り装置1とする)について
図1〜
図6を参照しつつ説明する。芽取り装置1(不用部除去装置)は、
図1及び
図2に示すように、ジャガイモの加工工場等の床上に設置されるステージ2と、ステージ2上に設置されたフレーム3、芋搬送部20(農産物支持手段)、ロボットアーム50等の各装置と、ロボットアーム50等の駆動を制御する制御部100(制御手段)とを備えている。ステージ2は、
図1に示すように、四面に金属製の外板2a〜2c等の壁板が配された脚付きの台である。
【0018】
芋搬送部20は、
図1に示す通り、ステージ2の上部に設けられている。芋搬送部20は、
図1及び
図2に示すように、芋の搬送方向Xに関して水平に並んだ複数個のローラー21、各ローラー21を支持する2つのL字ステイ24、2本のコンベアチェーン27等を有している。搬送方向Xは、芽取り装置1の前後方向と直交し水平面に沿った方向である。複数個のローラー21のそれぞれは、
図3に示すように、ローラー本体22と、回転軸A1に沿った軸方向(以下、単に軸方向とする)に関するローラー本体22の両端のそれぞれから軸方向に突出した支持軸23とからなる。ローラー本体22には、回転軸A1に向かって周面が鞍部状に凹んだ3つの括れ部22aが形成されている。3つの括れ部22aは、互いに同じ形状且つ同じ大きさを有しており、回転軸A1に沿って等間隔に並んでいる。括れ部22aの表面には複数本のスリット22bが形成されている。各スリット22bは回転軸A1に平行に延びた溝である。複数本のスリット22bは、回転軸A1を中心とした円周方向に並んでいる。各ローラー21の回転軸A1は前後方向Yに沿っている。ローラー21は、
図1及び
図2に示すように、搬送方向Xに関してローラー径より僅かに大きい配列間隔で、前後方向Yに関して互いに同じ位置に配列されている。これにより、互いに隣り合う2つのローラー21は、それぞれ、ローラー対21Pを構成している。各ローラー対21Pにおける両方のローラー21の括れ部22aが、
図2に示すように、紡錘型の平面形状を有する3個の窪みSを形成している。各窪みSには1個のジャガイモが載置される。ローラー対21Pは、搬送方向Xに関して複数個配列されている。これにより、前後方向Yに沿って並んだ3個の窪みSからなる列が、さらに搬送方向Xに沿って複数列並んでいる。
【0019】
各ローラー21は、それぞれの支持軸23が軸方向に関する両側から2つのL字ステイ24によって、回転軸A1に関して回転可能に支持されている。2つのL字ステイ24は2本のコンベアチェーン27にそれぞれ固定されている。2本のコンベアチェーン27は、正面から見て互いに重複する鉛直面に沿った周回経路に沿って走行するようにステージ2に支持されている。
図1には、一方のコンベアチェーン27の周回経路が二点鎖線によって図示されている。ステージ2内には2本のコンベアチェーン27を正面から見て同じ方向に同じ速度で走行させるコンベア駆動機構が設けられている(不図示)。このコンベア駆動機構は、ステージ2内に設けられたコンベア駆動モーター29(
図6参照)によって駆動される。
【0020】
各ローラー21において、芽取り装置1の後方へと向かって突出した支持軸23には延長軸25が固定されている。延長軸25は、支持軸23からさらに後方に向かって突出している。延長軸25の先端には磁石ユニット26が固定されている。磁石ユニット26は複数個の永久磁石が設置された円柱状の部材である。後述の通り、磁石ユニット42との間に作用する磁力によって磁石ユニット42から動力が伝達される。
【0021】
図2に示すように、芋搬送部20において、搬送方向Xに関して上流の一領域は、空のローラー21上にジャガイモが載置される芋載置領域Vである。下流の一領域は、ローラー21上に載置されたジャガイモの芽取り処理が実行される芋処理領域Wである。芋載置領域Vにおいては、作業者が手作業でローラー対21P上に形成された窪みSごとにジャガイモPを載置していく。ジャガイモPは、
図2に示すように、3行3列の合計9個ずつを1組としてローラー対21P上に配置される。ローラー対21P上にジャガイモPが載置された状態で、コンベア駆動モーター29(
図6参照)がコンベア駆動機構を駆動させると、コンベア駆動機構がコンベアチェーン27を走行させる。これによって、ローラー対21P上に載置されたジャガイモPがローラー21ごと芋載置領域Vから芋処理領域Wへと搬送される。芋処理領域Wにおいては、3行3列の9個ずつを1組とした芋群P1及びP2のそれぞれに関して芽取り処理が実行される。芋群P1は搬送方向Xに関して上流側に、芋群P2は搬送方向Xに関して下流側に配置される。芋処理領域WにおいてジャガイモPに芽取り処理が施されると、ジャガイモPがローラー21ごとさらに搬送方向Xに沿って搬送され、ステージ2の左端に設けられた排出部2Xから芽取り装置1の外部へと排出される。ジャガイモPが排出されて空になったローラー21は、ステージ2の内部を通ってコンベアチェーン27の周回経路を半周すると、ステージ2の上部の芋載置領域Vに再び戻ってくる。
【0022】
搬送方向Xに関して芋載置領域Vの範囲内には回転駆動部40A(ローラー回転手段)が、芋処理領域Wの範囲内には回転駆動部40B及び40C(ローラー回転手段)が設けられている。回転駆動部40A〜40Cは、ローラー21を回転させる駆動部である。回転駆動部40A〜40Cは、それぞれ、ローラー回転モーター41と、ローラー回転モーター41によって回転させられる磁石ユニット42とを有している。ローラー回転モーター41は芋搬送部20から僅かに後方に離隔した位置に、その出力軸が搬送方向Xに沿うように配置されている。ローラー回転モーター41の出力軸には歯車43が固定されている。磁石ユニット42は搬送方向Xに沿った円柱状の部材である。磁石ユニット42の周面の一部には歯が切られ、当該歯と歯車43とが噛み合っている。磁石ユニット42には複数個の永久磁石が、搬送方向Xに関してローラー21と同じ間隔で配列されている。磁石ユニット42は、芋搬送部20の磁石ユニット26より下方に、磁石ユニット42の中心軸を回転軸として回転可能に配置されている。ローラー回転モーター41から出力される動力が歯車43を介して磁石ユニット42に伝達されると、磁石ユニット42がその中心軸を回転軸として回転する。磁石ユニット42の各永久磁石が各磁石ユニット26のちょうど鉛直下方に配置された状態で磁石ユニット42が回転すると、磁石ユニット26に設けられた永久磁石と磁石ユニット42に設けられた永久磁石との間に作用する磁力によって、磁石ユニット26がローラー21の回転軸A1に関して回転する。磁石ユニット26が回転すると、延長軸25を介して磁石ユニット26と固定されたローラー21も回転軸A1に関して回転する。これにより、回転駆動部40Aは、芋載置領域Vの範囲内にあるローラー21を回転させる。回転駆動部40Bは、芋処理領域Wの範囲内にある芋群P1を支持するローラー21を回転させる。回転駆動部40Cは、芋処理領域Wの範囲内にある芋群P2を支持するローラー21を回転させる。
【0023】
芋搬送部20の芋処理領域Wの上方には、
図1及び
図2に示すように、直方体状のフレーム3が設けられている。フレーム3は、
図2に示すように、平面視において芋処理領域Wを内部に含むようにステージ2に固定されている。フレーム3の上部には2本のカメラ固定フレーム4を介して4つのカメラ45が固定されている。1本のカメラ固定フレーム4にはそれぞれ2つのカメラ45が固定されている。
図2の右側のフレーム4に固定された2つのカメラ45は、その下方におけるローラー21上に載置された3行3列の9個のジャガイモPからなる芋群P1を、互いに異なる角度から撮影できるように配置されている。
図2の左側のフレーム4に固定された2つのカメラ45は、その下方におけるローラー21上に載置された3行3列の9個のジャガイモPからなる別の芋群P2を、互いに異なる角度から撮影できるように配置されている。カメラ45は、撮像結果を示すデータ(撮像データ)を生成し、制御部100へと送信する。芋群P1側の2つのカメラ45から制御部100が受信する画像は、芋群P1について互いに異なる角度から撮影した画像データである。つまり、芋群P1についてのステレオペア画像データである。また、芋群P2側の2つのカメラ45から制御部100が受信する画像は、芋群P2について互いに異なる角度から撮影した画像データである。つまり、芋群P2についてのステレオペア画像データである。
【0024】
フレーム3内には、
図1に示すように、ロボットアーム50が設けられている。ロボットアーム50は、
図2のR1方向に関して旋回可能にロボットステージ53に支持された第1アーム51と、
図2のR2方向に関して旋回可能に第1アーム51に支持された第2アーム52とを有している。ロボットアーム50内には、ロボットステージ53に対して第1アーム51を旋回させるとともに第1アーム51に対して第2アーム52を旋回させる旋回駆動機構が設けられている。
図4に示すように、第2アーム52の下端部には鉛直下方に向かって突出した可動軸52aが設けられている。ロボットアーム50は、可動部52aを上下に移動させる可動部駆動機構も備えている。ロボットアーム50内には旋回駆動機構及び可動部駆動機構を駆動するモーターがそれぞれ設けられている。可動部52aには、後述の通り、ドリルユニット60が接続されている。ロボットアーム50は、以上のような構成により、ドリルユニット60を水平方向(搬送方向X及び前後方向Yの両方に沿った方向)に移動させることができるとともに、ドリルユニット60を鉛直方向(搬送方向X及び前後方向Yの両方と直交する方向)に移動させることができる。ロボットアーム50によるドリルユニット60の移動範囲は、水平方向に関しては芋処理領域W内の芋群P1及びP2の分布範囲を含んでいる。また、鉛直方向に関しては、移動範囲は、芋群P1及びP2に含まれる各ジャガイモPの表面に後述のドリル刃61を接触させることが可能な範囲である。
【0025】
ドリルユニット60は、
図4に示すように、ドリル刃61と、ドリル刃61を回転軸A2に関して回転可能に支持するドリル支持台62と、ドリル支持台62の上方に配置されたタイミングプーリー63とを備えている。ドリル刃61は、回転軸A2に沿ったドリル支持軸61aを有している。ドリル支持軸61aは、ドリル支持台62を貫通しつつ上方に延び、ドリル支持台62の上方のタイミングプーリー63と接続されている。ドリル支持台62上には4本の支柱64によってシャフト支持台65が支持されている。シャフト支持台65には、回転軸A2に沿った円柱状の接続孔65aが形成されている。接続孔65aには第2アーム52の下端部に設けられた可動軸52aが上方から差し込まれている。これによって、ロボットアーム50とドリルユニット60とが接続されている。
【0026】
シャフト支持台65にはフレキシブルシャフト66の出力軸側の端部が支持されている。フレキシブルシャフト66の出力軸は、シャフト支持台65の下方に配置されたタイミングプーリー68と接続されている。フレキシブルシャフト66の入力軸は、
図1に示すように、ドリル回転モーター69と接続されている。タイミングプーリー63とタイミングプーリー68とはタイミングベルト(不図示)によって接続されている。ドリル回転モーター69から出力された動力は、フレキシブルシャフト66、タイミングプーリー68、タイミングベルト及びタイミングプーリー63を介して、ドリル支持軸61aに伝達される。これにより、ドリル刃61が回転軸A2に関して回転する。ドリル刃61が回転しているときにドリル刃61の下端がジャガイモPの芽の部分に接触すると、ドリル刃61がジャガイモPの芽の部分を削り取る。
【0027】
ドリル支持台62の下方には芋押さえプレート71が配置されている。芋押さえプレート71は、下部に押さえ部72(支持部材)が設けられた円盤状の部材である。押さえ部72は、芋押さえプレート71の下面から下方に向かって突出した円盤である。押さえ部72の下面には波型の溝72aが形成されている。芋押さえプレート71及び押さえ部72の円盤中心には厚み方向にこれらを貫通する貫通孔73が形成されている。貫通孔73の大きさ及び配置は、ドリル刃61が上下方向に貫通孔73を通過可能に設定されている。
【0028】
芋押さえプレート71の上面には3本の支柱74が固定されている。各支柱74は、芋押さえプレート71から上方のドリル支持台62に向かって鉛直上方に延びている。各支柱74は、ドリル支持台62を貫通しつつさらに鉛直上方に延び、
図5(a)に示すように、ドリル支持台62の上面に固定されたシリンダ75内に挿入されている。支柱74はシリンダ75内を上下移動可能である。支柱74におけるシリンダ75内の一部には円盤状の鍔部74aが固定されている。シリンダ75内における鍔部74aの上方の空間には、ばね76(弾性部材)が収容されている。ばね76は、鍔部74aを、シリンダ75の内底部に設けられた段差部75aへと下方に向かって押し付けている。このようなばね76の作用によって、芋押さえプレート71にジャガイモPが接触していない状態では、芋押さえプレート71の位置が、
図4に示すように、ドリル刃61の下端が押さえ部72の下面より上方に配置されるように維持されている。
【0029】
ロボットアーム50が可動軸52aをジャガイモPに向かって下方へと移動させると、押さえ部72の下面がジャガイモPの上端に接触する。ロボットアーム50が可動軸52aをさらに下方へと移動させると、芋押さえプレート71及び押さえ部72はジャガイモPと接触しているためそれ以上下降しないのに対し、ドリル支持台62は下降しようとする。これにより、
図5(b)に示すように、鍔部74aがばね76の弾性力に抗しつつ、ドリル支持台62に対して相対的に上昇する。一方、ドリル刃61はドリル支持台62と共に下降する。ドリル刃61の下端が押さえ部72の下面より下方へと突出すると、ドリル刃61の下端がジャガイモPの芽の部分に接触する。これにより、上記の通り、ドリル刃61がジャガイモPの芽の部分を削り取る。このとき、押さえ部72の下面がジャガイモPに上方から接触した状態が維持されている。押さえ部72には、鍔部74a、支柱74及び芋押さえプレート71を通じ、ばね76の弾性力が作用する。この弾性力は、下方のローラー21に向かって押さえ部72を押さえ付けるような力である。したがって、ドリル刃61がジャガイモPの芽を削り取る間、押さえ部72がローラー21との間にジャガイモPを確実に挟み込んで支持することになる。これにより、ドリル刃61による芽の削り取りの際、その反動でジャガイモPの位置がずれるおそれが低下する。
【0030】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアと、芽取り装置1の各部を制御する手段としてこれらのハードウェアを機能させるためのソフトウェアとを備えている。制御部100は、
図6に示すように、4つのカメラ45を制御して芋群P1及びP2を撮影させると共に、その撮影結果を示すステレオペア画像データをカメラ45から受信する。そして、制御部100は、ステレオペア画像データに基づいてコンベア駆動モーター29、ローラー回転モーター41、ロボットアーム50及びドリル回転モーター69を制御する。
【0031】
以下、制御部100による制御処理の詳細と、本制御処理に伴ってジャガイモPに施される一連の処理の流れについて、
図7を参照しつつ説明する。まず、芋載置領域Vのローラー21上にジャガイモPが載置される(S1)。次に、制御部100が回転駆動部40Aのローラー回転モーター41を制御することにより、芋載置領域Vの複数個のローラー対21Pを同時に、複数回、回転させる(S2)。S1において載置されたばかりのジャガイモPは、ローラー21上で必ずしも安定した姿勢になっているとは限らない。これに対し、S2の処理によりローラー21上のジャガイモPが揺すぶられ、これによってジャガイモPの姿勢が窪みS内で安定になる。なお、「ジャガイモPの姿勢が安定になる」とは、ジャガイモPの長軸方向がローラー21の軸方向と平行な状態に近づくことで、例えば、ジャガイモPの重心が水平方向に関してローラー21同士の中間位置に近づいたり、ローラー21とジャガイモPとの接触点や接触面積が増加したりすることを示す。S2におけるローラー21の1回の回転角度は何度でもよい。例えば、1回当たり90°未満の比較的小さい角度で複数回、ローラー21を回転させる。これにより、例えば、
図8(a)のように比較的高い位置に載置されたジャガイモPを、
図8(b)のように低い安定な位置に落ち着かせることができる。
【0032】
次に、制御部100がコンベア駆動モーター29を制御することにより、芋載置領域Vから芋処理領域Wへとローラー21ごとジャガイモPを搬送する(S3)。これによって、
図2に示すように、芋処理領域W内に芋群P1及びP2が配置される。次に、制御部100が芋群P1に含まれる各ジャガイモPの表面における芽の部分の3次元位置(鉛直方向及び水平方向のそれぞれに関する位置)を検出する(S4)。具体的には、まず、制御部100は、芋群P1側の2つのカメラ45を制御することでこれらのカメラ45に芋群P1を撮影させる。撮影結果を示すステレオペア画像データは制御部100へと送信される。次に、制御部100は、芋群P1について、2つのカメラ45からのステレオペア画像データに基づき、ジャガイモPの表面における凹凸の状況から、ジャガイモPの表面に存在する芽の部分の3次元位置を取得する。これにより、カメラ45の撮像範囲、つまり、芋群P1の各ジャガイモPにおけるカメラ45側に面した表面における芽の部分のそれぞれの3次元位置が取得される。なお、カメラ45の撮像データに基づいて芽の部分の3次元位置を検出する制御部100の機能は、本発明の位置検出手段の機能に対応する。
【0033】
次に、制御部100は、ロボットアーム50及びドリル回転モーター69を制御することでジャガイモPの芽取り処理を実行する(S5;第1除去処理)。具体的には、制御部100は、ロボットアーム50を制御し、S4で取得された芽の部分の水平位置にドリル刃61が配置されるようにドリルユニット60を水平方向に関して移動させる。そして、制御部100は、ドリル回転モーター69及びロボットアーム50を制御することで、ドリル刃61を回転させつつ、S4で取得された芽の部分の鉛直位置までドリルユニット60を降下させる。これにより、ジャガイモPの芽の部分がドリル刃61によって削り取られる。制御部100は、芋群P1に含まれる9個のジャガイモPのそれぞれに関し、その表面に存在する芽の部分のそれぞれについてS5の処理を実行する。これにより、芋群P1の各ジャガイモPの表面におけるカメラ45側に面した領域内の芽の部分が削り取られる。
図9(a)は、S5の処理直後のジャガイモPを示す。ジャガイモPの表面においてカメラ45側の領域、つまり、上方に面した領域は芽取り処理済みの領域となる。一方、カメラ45とは反対側の領域、つまり、下方に面した領域は未処理の領域となる。
【0034】
制御部100は、芋群P1に関するS5の処理の最中に、芋群P2に関しては、S4の処理と同様の処理内容で位置検出処理を実行する(S6)。つまり、制御部100は、芋群P2側の2つのカメラ45による撮影結果に基づき、芋群P2に含まれる各ジャガイモPの表面における芽の部分の3次元位置を検出する。そして、制御部100は、S6で取得した芽の部分の位置に基づき、S5の処理と同様、芋群P2に関して各ジャガイモPの芽取り処理を実行する(S7;第1除去処理)。
【0035】
制御部100は、芋群P2に関するS7の処理の最中に、芋処理領域Wにおける回転駆動部40Bのローラー回転モーター41を制御することにより、芋群P1に含まれる9個のジャガイモPを支持した4つのローラー21を回転させる(S8;姿勢変更処理)。このときのローラー21の回転角度は、例えば、180°である。これによって、芋群P1における9個のジャガイモPの姿勢を変更し、各ジャガイモPの向きを上下方向に関して反転させる。したがって、
図9(a)に示す状態が、
図9(b)に示す状態、つまり、芽取り処理済みの領域が下方に面し、未処理の領域が上方に面した状態となる。これにより、S5では取り切れなかった芽がカメラ45による撮影範囲内に露出する。次に、制御部100は、S4の処理と同様、芋群P1側の2つのカメラ45による撮影結果に基づき、芋群P1に含まれる各ジャガイモPの表面における芽の部分の位置検出処理(S9)を実行する。そして、制御部100は、S9で取得した芽の部分の位置に基づき、S5の処理と同様、芋群P1に関して各ジャガイモPの芽の部分を削り取る処理を施す(S10;第2除去処理)。制御部100は、芋群P1に関するS9及びS10の処理の最中に、回転駆動部40Cのローラー回転モーター41を制御することにより、S8の処理と同様、芋群P2のジャガイモPの姿勢を変更する(S11;姿勢変更処理)とともに、芋群P2側の2つのカメラ45による撮影結果に基づき、芋群P2に含まれる各ジャガイモPの表面における芽の部分の位置検出処理(S12)を実行する。そして、制御部100は、S12で取得した芽の部分の位置に基づき、S5の処理と同様、芋群P2に関して各ジャガイモPの芽の部分を削り取る処理を施す(S13;第2除去処理)。
【0036】
次のジャガイモPについての芽取り処理に関しては、S3の処理後のいずれかの段階で芋載置領域VにジャガイモPが新たに載置される(S14)とともに、新たに載置されたジャガイモPに関してS2の処理と同様に姿勢安定化の処理が実行される(S15)。つまり、制御部100が回転駆動部40Aのローラー回転モーター41を制御し、芋載置領域Vのローラー21を複数回、回転させることで、ジャガイモPの姿勢を安定化させる。次に、制御部100がコンベア駆動モーター29を制御することにより、芋載置領域Vから芋処理領域Wへとローラー21ごとジャガイモPが搬送されるとともに、芋処理領域Wにおいて芽の部分が除去された芋群P1及びP2が排出部2Xから排出される(S16)。その後、芋載置領域VにおいてはS14以降の処理が、芋処理領域Wの新たな芋群P1に関してはS4以降の処理が、芋処理領域Wの新たな芋群P2に関してはS6以降の処理が繰り返される。
【0037】
以上説明した本実施形態によると、ローラー対21Pの窪みS上にジャガイモPが支持された状態でローラー21が回転する。これによって、ローラー21がジャガイモPを回転させる。このため、農産物をクランプに把持させる従来技術と異なり、大きさや形状が異なるジャガイモのような農産物を適切に支持しつつ回転させることが可能である。また、1個のローラー対21Pを構成する2個のローラー21が形成する窪みSにジャガイモPが安定して支持される。各ローラー対21Pにおいては、ローラー21の回転軸A1に沿って複数個の窪みSが形成され、複数個のジャガイモPのそれぞれが各窪みSに支持される。したがって、各ローラー対21Pを回転させることで複数個のジャガイモPを同時に回転させることができる。このように、本実施形態によると、大きさ又は形状が異なる複数個のジャガイモPを同時に処理しやすい装置が実現する。
【0038】
また、本実施形態においては、ジャガイモPが載置されたローラー21を芽取り処理前に回転させることで、ジャガイモPに安定な姿勢を取らせる(
図7のS2)。したがって、その後の芽取り処理(S5等)においてドリルユニット60がジャガイモPに接触した際、ジャガイモPの位置がずれにくい。よって、芽取りを適切に実行しやすい。また、仮に、姿勢変更処理の際にジャガイモPの長軸方向が軸方向から大きく外れていると、姿勢変更処理においてジャガイモPを回転させた際にジャガイモPの長軸方向が軸方向に沿うように急激にずれるおそれがある。これに対し、本実施形態においては、姿勢変更処理(S8等)の前にジャガイモPに安定な姿勢を取らせる(S2)。つまり、姿勢変更処理に当たってジャガイモPの長軸方向をあらかじめ軸方向に近づけておく。このため、姿勢変更処理においてジャガイモPの長軸が急激にずれるおそれを回避できる。
【0039】
また、本実施形態においては、ローラー21の表面に形成された複数本のスリット22bが、ローラー21に載置されたジャガイモPの滑り止めとして機能する。このため、例えば、ジャガイモPの姿勢変更の処理(S8等)において所望の回転量(例えば、180°)だけジャガイモPを回転させやすい。
【0040】
また、本実施形態においては、複数個の窪みSを形成するローラー対21Pが、搬送方向Xに関して複数個設けられている。これらのローラー対21P上には、3行3列の9個のジャガイモPが載置され、ローラー21によって同時に支持される。そして、これら9個のジャガイモPからなる芋群P1及びP2のそれぞれに対し、ローラー21の回転処理が同時に実行される。さらに、芋群P1及びP2のそれぞれに対し、9個のジャガイモPを同時に撮影したステレオペア画像に基づいて、芽の部分の位置を9個のジャガイモPに対して同時に検出する。このため、多数のジャガイモPの処理を効率的に実行できる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、複数個のローラー21が搬送方向Xに関して1列に配列されている。しかし、複数個のローラー21が搬送方向Xに関して配列されたローラー列が、前後方向Yに関して複数列、設けられてもよい。
図10に示すローラー列21M及び21Nはその一例である。この場合、カメラ45、ロボットアーム50、ローラー回転モーター41等、位置検出処理、姿勢変更処理及び芽取り処理を施す構成が、ローラー列21M及び21Nのそれぞれに対して設けられてもよいし、ローラー列21M及び21Nの両方に共通に設けられてもよい。
図10の構成では、ローラー21が2列に並ぶことで、前後方向Yに関して6つの窪みSを形成している。このように、複数個のローラー21を前後方向Yに並べることで複数個の窪みSが形成されてもよい。また、ローラー21は3つの括れを有しているが、1つの括れのみを有するローラーを前後方向Yに関して複数個並べることで複数個の窪みSが形成されてもよい。さらに、括れの数が互いに異なる複数個のローラーが前後方向Yに関して並べられてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、ジャガイモPの不用部として芽の部分を除去するために本発明が適用されている。しかし、形状又は大きさが互いに異なるその他の農産物における不用部除去に本発明が適用されてもよい。例えば、パイナップルの表面の棘を除去するために本発明が適用されてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、回転するドリル刃61をジャガイモPの芽の部分に接触させることで芽が取り除かれる。しかし、ドリル刃61以外の部材をジャガイモPの芽の部分に接触させることで芽が取り除かれてもよい。例えば、外周面に突起がある円柱状の部材を回転させつつその外周面をジャガイモPの芽の部分に接触させることで芽が取り除かれてもよい。また、カッターにジャガイモPの芽の部分を掬い取るようにジャガイモPに接触させることで芽が取り除かれてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態では、芋群P1及びP2のそれぞれに、最初の芽取り処理を施した後、姿勢変更処理及び芽取り処理を1回ずつ施すことにより、各ジャガイモPから芽が取り除かれている。しかし、最初の芽取り処理後、姿勢変更処理及び芽取り処理を2回以上施すことによりジャガイモPから芽が取り除かれてもよい。例えば、上述の実施形態の姿勢変更処理ではローラー21を180°回転させている。これに対し、1回目の芽取り処理後、姿勢変更処理としてローラー21を90°回転させることにより、ジャガイモPを90°ずつ回転させてもよい。つまり、最初の芽取り処理後、姿勢変更処理(90°)→芽取り処理→姿勢変更処理(90°)→芽取り処理→姿勢変更処理(90°)→芽取り処理の順に各処理を実行することにより、各ジャガイモP全体に芽取り処理を施してもよい。この場合、最初の芽取り処理(第1除去処理)後に、姿勢変更処理及び芽取り処理(第2除去処理)をそれぞれ3回繰り返すことになる。また、1回にローラー21を回転させる角度は360°の約数である必要はない。例えば、50°や160°等であってもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、ローラー対21Pに含まれる2つのローラー21を回転させることで、そのローラー対21Pが支持するジャガイモPを回転させる。しかし、2つのローラー21の一方のみを回転させることでジャガイモPを回転させてもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、ローラー対21Pに含まれる2つのローラー21にあらかじめ形成された括れ部22aによって1つの窪みSが形成される。しかし、あらかじめ括れ等が形成されていないローラーによって窪みが形成されてもよい。例えば、ローラーの外表面が弾性部材によって覆われており、2つのローラー間にジャガイモPが載置された際にジャガイモPの重量によって上記弾性部材が歪むことで窪みが形成されてもよい。