(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記一対の積層剥離容器の第1積層剥離容器又は第2積層剥離容器の底面に設けられているピンチ部に付着する端バリ部に取出しピンを挿入し、前記突出しピンによって前記一対の積層剥離容器の前記中央バリ部が突き出された状態で、前記一対の積層剥離容器を前記第1型板から取り出すステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、周囲が中央よりも突出しているような底面を有する成形品であっても、底面が破損されない成形品、並びにその製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、中間成形品としての一対の積層剥離容器であって、第1積層剥離容器と、前記第1積層剥離容器と互いの口部が対向するように位置した第2積層剥離容器と、前記第1積層剥離容器の口部と前記第2積層剥離容器の口部との間を連結する中央バリ部と、を備え、前記一対の積層剥離容器が、外層と、前記外層に接着されない内層とから形成され、第1型板と、前記第1型板と対向する第2型板とで構成される金型が型開きされたときに前記第1型板に残置された前記一対の積層剥離容器の前記中央バリ部が、前記第1型板の背板に設けられた突出しピンによって前記第2型板の側へ突き出されて屈曲するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記中央バリ部が、中央寄りの厚肉部と、前記第1積層剥離容器の口部及び前記第2積層剥離容器の口部寄りの薄肉部とを有する。
【0009】
(3)上記(2)の構成において、前記厚肉部と前記薄肉部とが2対1から4対3の範囲の肉厚比率を有する。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記厚肉部が屈曲容易となるような形状を施されている。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記外層が、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から構成される。
【0012】
(6)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記外層が160から340MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。
【0013】
(7)本発明の第2の観点は、中央バリ部によって連結された中間成形品としての一対の積層剥離容器の製造方法であって、第1型板と、前記第1型板と対向する第2型板とで構成される金型を型締めするステップと、前記金型を型開きするステップと、前記第1型板に残置された前記一対の積層剥離容器の前記中央バリ部を、前記第1型板の背板に設けられた突出しピンによって前記第2型板の側へ突き出して屈曲させるステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
(8)上記(7)の構成において、さらに、前記一対の積層剥離容器の第1積層剥離容器又は第2積層剥離容器の底部に設けられているピンチ部に付着する端バリ部に取出しピンを挿入し、前記突出しピンによって前記一対の積層剥離容器の前記中央バリ部が押出された状態で、前記一対の積層剥離容器を前記第1型板から取り出すステップを備える。
【0015】
(9)本発明の第3の観点は、中央バリ部によって連結された中間成形品としての一対の積層剥離容器の製造装置であって、第1型板と、前記第1型板と対向する第2型板とで構成される金型と、前記第1型板の背板に設けられた突出しピンと、を備え、前記金型が型開きされたとき、前記突出しピンが、前記第1型板に残置された前記一対の積層剥離容器の前記中央バリ部を、前記第2型板の側へ突き出して屈曲させることを特徴とする。
【0016】
(10)上記(9)の構成において、さらに、前記一対の積層剥離容器の第1積層剥離容器又は第2積層剥離容器の底部に設けられているピンチ部に付着する端バリ部に挿入され、前記一対の積層剥離容器を前記第1型板から取り出す取出しピンを備え、前記取出しピンが、前記突出しピンによって前記一対の積層剥離容器の前記中央バリ部が押出された状態で、前記一対の積層剥離容器を取り出す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周囲が中央よりも突出しているような底面を有する成形品であっても、底面が破損されない成形品、並びにその製造方法及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態では、最終的に成形された最終成形品を積層剥離容器1として説明し、1面2個取りの分割金型80よって連結した状態で中間的に成形された中間成形品を一対の積層剥離容器10,10’として、説明する。なお、両者に共通する事項は、同じ用語及び符号を付している。
【0021】
(積層剥離容器1)
まず、最終成形品としての積層剥離容器1について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1に示すように、積層剥離容器1は、容器本体2と、弁部材9を備えている。積層剥離容器1の内容物は、例えば、点眼薬、流動性食料品などである。
【0022】
((容器本体2))
容器本体2は、内容物を収容する収容部3と、内容物を吐出する口部4とから構成されている。収容部3は、口部4から下方に向かって拡開して延在する肩部5と、肩部5から下方に向かって鉛直に延在する胴部6とを含んでいる。なお、本実施形態の適用にあたっては、容器本体2は、ここで示したような形状に限られるものではなく、内容物や容器の大きさなどを考慮して、設定することができる。
【0023】
胴部6の正面には、弁部材9を配置するための有底穴61と、内容物を押し出すときに利用者が指を掛け易くするための凹部62が設けられている。容器本体2の側面には、金型を用いて成形する際にパーティングライン21が形成されており、容器本体2の底面31には、パーティングライン21から延長する位置に、ピンチ部22が設けられている。
【0024】
ここで、詳しくは後述するように、本実施形態に係る積層剥離容器1は、内容物の消費、減少に伴って、内容物が充填されている内層1b(内袋)が外層1a(外殻)から剥離していく「ハクリボトル(登録商標)」であり、内層1bと外層1aは接着されていない。また、ピンチ部22は、容器本体2の底面31と直近するベース部22aの下側に位置する圧着部22bが圧着され密閉されているものの、先端部22cは圧着されていない。このような態様であることから、ピンチ部22は強く押されると割れ易いため、容器本体2の底面31の中央寄りを上げ底とし、ピンチ部22を長く設定できるようにされている。
【0025】
図2は、容器本体2の断面構造を示している。容器本体2は、
図2に示すように、収容部3及び口部4において、外層1aと内層1bの多層構造となっており、外層1aが積層剥離容器1の外殻を、内層1bが内容物を充填する内袋を構成している。
【0026】
積層剥離容器1は、前述したように、内容物の消費、減少に伴って、内容物が充填されている内層1b(内袋)が外層1a(外殻)から剥離していく「ハクリボトル(登録商標)」である。内層1bと外層1aは接着されておらず、弁部材9の働きによって、空気が外層1aと内層1bの間に導入されることにより、内容物の消費、減少に伴って、内層1bが外層1aから剥離していくこととなる。
【0027】
ここで、内層1bには酸素バリア性が付与されており、積層剥離容器1は、このような二重剥離構造によって内容物と空気の接触を減少させ、内容物の鮮度の保持力を高めている。すなわち、単層構造の容器では、内容物を吐出した後に容器内に形成される空間に空気が侵入して内容物と直接的に接するとともに、保存中においても外殻から空気が侵入するため、内容物の酸化が早く進行し、劣化が早まる。これに対し、積層剥離容器1では、内容物が消費、減少するにつれて、弁部材9によって内層1bと外層1aとの間に空気が導入されることから、内容物を吐出した後の口部4から内層1b中への空気侵入が防止されるとともに、保存中においても外層1aから侵入した空気は内層1bによってブロックされることから、内容物の酸化が大幅に抑止され、劣化が抑制されるという効果を奏する。
【0028】
また、内層1bは、柔軟性があるので内容物を所望の量だけ絞り出すことができる一方、外層1aは、所定の硬さを有しているので内容物が減少しても原型に戻るため、積層剥離容器1は、内容物の残量にかかわらず、いつでも立てて置くことが可能となる。
【0029】
口部4には、係止部4dが設けられており、係止部4dには、雌ねじを有するキャップやポンプ(いずれも不図示)などが取り付けられる。また、口部4は、収容部3の肩部5に近い位置に、内層1bのズレ落ちを抑制する内層支持部4cを備える。内層支持部4cは、口部4にくびれを設けることによって形成される。内層支持部4cによって内層1bのズレ落ちが抑制されるので、内袋を構成する内層1bが外殻を構成する外層1a内に脱落してしまうことを抑制することができる。
【0030】
収容部3は、前述したとおり、口部4から拡開的に延在する肩部5と、肩部5から下方に延在する胴部6と、を含んでいる。口部4と肩部5の境界には、折り曲げ部5aが形成されている。折り曲げ部5aがない場合には、内層1bと外層1aの間の剥離が胴部6から肩部5を経由して口部4にまで広がり、口部4においても内層1bと外層1aが剥離されてしまう可能性がある。そのようになってしまうと、口部4において、内層1bから構成される内袋が外層1aから構成される外殻内に脱落してしまい、内容物を口部4から用途に応じた吐出が困難となる。
【0031】
本実施形態では、このような事態を防止するため、折り曲げ部5aを設けることにより、内層1bと外層1aの間の剥離が胴部6から折り曲げ部5aまで広がると、内層1bが折り曲げ部5aで下方に向かって垂れ下がることにより、内層1bを外層1aから剥離する力が折り曲げ部5aの上側の部分に伝達されず、その結果、折り曲げ部5aよりも上側の部分での内層1bと外層1aの間の剥離が抑制される。
【0032】
収容部3の底面31は、前述したとおり、上げ底になっており、上げ底になっている中央凹領域31aと、その周囲に設けられている周縁領域31bとから構成される。底面31の中央凹領域31aからは前述したピンチ部22が突出しており、ピンチ部22は、
図3に示すように、底面31側から順に、ベース部22aと、圧着部22bと、先端部22cを含んでいる。
【0033】
((弁部材9))
容器本体2の収容部3には、
図2に示すように、肩部5の直下の胴部6に設けられている有底穴61に弁部材9が設けられている。弁部材9は、有底穴61の外層1aを貫通する空気導入孔61aに嵌入されている。有底穴61とその周辺に対応する外層1aと内層1bの間には初期的に空気を導入した中間空間1cが形成されており、弁部材9は、中間空間1cと外部空間Sとの間の空気の出入りを調節する。すなわち、容器本体2の凹部62を利用者が指で押すと容器本体2の内部の圧力が上がって弁部材9が閉じ、内容物を吐出した後に容器本体2から指を離すと弁部材9が開くことによって空気が導入される。これにより、中間空間1cが徐々に拡大していき、内袋である内層1bが外殻である外層1aから剥離していく。
【0034】
弁部材9としては、種々の態様のものを採用してよいが、
図2では、空気導入孔61aに挿通される軸部9aと、軸部9aの中間空間1c側に設けられ、軸部9aよりも断面積が大きい蓋部9cと、軸部9aの外部空間S側に設けられ、弁部材9が中間空間1cに入り込むことを防ぐ係止部9bを備える例を示している。
【0035】
蓋部9cは、軸部9aから離れる方向に拡開するようにテーパー状になっており、外層1aを圧縮すると軸部9a側に移動して空気導入孔61aを閉塞する。係止部9bは、ブリッジ状に構成されており、空気導入孔61a側に撓むように構成されており、矢印F1で示すように容器本体2の外側すなわち容器本体2から離れる方向の復元力が生じ、これによって蓋部9cに同じ方向の付勢力が働いて、蓋部9cが空気導入孔61aに中間空間1cの側から押し付けられる。
【0036】
この状態では、蓋部9cは空気導入孔61aに軽く押し付けられているだけであるが、外層1aを外側から圧縮すると、中間空間1c内の圧力が外圧よりも高くなって、この圧力差によって蓋部9cが空気導入孔61aに対してさらに強く押し付けられて、蓋部9cが空気導入孔61aをより強固に閉塞する。
【0037】
この状態で外層1aをさらに圧縮すると、中間空間1c内の圧力が高まり、その結果、内層1bが圧縮されて、内層1b内の内容物が吐出される。そして、外層1aへの圧縮力を解除すると、外層1aが自身の弾性によって復元する。外層1aの復元に伴って中間空間1c内が減圧されることによって、蓋部9cに対して容器本体2の内側方向の力F2が加わる。これによって、ブリッジ状の係止部9bの撓みが大きくなることによって蓋部9cが容器本体2の内側に移動し、空気導入孔61aに隙間が生じ、中間空間1c内に空気が導入される。
【0038】
なお、弁部材9は、蓋部9cが空気導入孔61aを押し広げながら中間空間1c内に挿入することによって容器本体2に装着する。そのため、蓋部9cの先端は、先細り形状になっていることが好ましい。このような弁部材9は、容器本体2の外側から蓋部9cを中間空間1c内に押し込むだけで装着可能なので、容易に配置することができる。
【0039】
(一対の積層剥離容器10,10’)
次に、中間成形品としての一対の積層剥離容器10,10’について、
図4から
図8を参照して説明する。一対の積層剥離容器10,10’は、上記で説明した積層剥離容器1を得るにあたり、分割金型80(後述)で1面2個取りによって成形されるものである。一対の積層剥離容器10,10’は、
図4(c)に示すように、第1積層剥離容器10と、第1積層剥離容器10と互いの口部4が対向するように位置した第2積層剥離容器10’と、第1積層剥離容器10の口部4と第2積層剥離容器10’の口部4との間を連結する中央バリ部7とを備えている。第1積層剥離容器10及び第2積層剥離容器10’の底面31には、第1端バリ部71及び第2端バリ部71’がそれぞれ付着している。
【0040】
一対の積層剥離容器10,10’の成形は、製造方法として、次のようにして行われる。まず、
図4(a)に示すように、溶融状態の積層パリソンPをダイヘッドDHから押出し、この溶融状態の積層パリソンPを容器本体2の各種形状がブロー成形されるようなキャビティ81の形状を有する分割金型80にセットし、分割金型80を閉じる。次に、
図4(b)に示すように、中央バリ部7の一方向から、型締めを行った状態で分割金型80のキャビティ81内にエアーを吹き込む(エアーを吹き込むブローノズル82については、
図9、11及び12を参照)。そして、
図4(c)に示すように、分割金型80を開いて、一対の積層剥離容器10,10’を取り出す。
【0041】
なお、ここでは、分割金型80が次のような構成を有する場合として説明する。分割金型80は、第1型板80aと、第1型板80aと対向する第2型板80bとで構成されており、第1型板80aを固定型板、第2型板80bを可動型板とする。分割金型80が型開き、すなわち、第2型板80bが第1型板80aから退避する方向に移動したとき、一対の積層剥離容器10,10’は第1型板80aに残置される。
【0042】
この一対の積層剥離容器10,10’を取り出す際、それらの底面31が、前述したように、上げ底になっている中央凹領域31aと、その周囲に設けられている周縁領域31bとから構成されていることから、
図5に示すように、従来のように、一対の積層剥離容器10,10’の底面31の近傍Yに突出しピンを突き出した場合、範囲Xで囲んだ底面31がキャビティ81の面に衝突して取出し性が低下し、無理に取り出すと、底面31が破損することがある。そこで、底面31及び/又はピンチ部22が円滑に、かつ、破損しないように第1型板80aら取り出せるように、次のような態様で取り出す。なお、従来のように、一対の積層剥離容器10,10’では、中央バリ部7”は口部4と略同径となっている。
【0043】
すなわち、
図6に示すように、第2型板80b側から挿入されたブローノズル82によって開口しているノズル孔41と反対側において、第1型板80aの背板80aa側であって中央バリ部7に対応する位置Yに設けられている突出しピン83を中央バリ部7に突き当てる。中央バリ部7の当接部7dに突出しピン83を突き当てることによって、一対の積層剥離容器10,10’は、中央バリ部7が第1型板80aから突き出され、中央バリ部7を中心として「く」の字状に屈曲する。
【0044】
そうすると、一対の積層剥離容器10,10’の範囲Xで囲んだ底面31における中央凹領域31aの斜面と、第1型板80aのキャビティ81の対応する面との間に間隙が生じ、一対の積層剥離容器10,10’は、底面31及び/又はピンチ部22が円滑に、かつ、破損しないように第1型板80aから取り出すことが可能となる。取り出された後、第1端バリ部71及び第2端バリ部71’が除去される。この際、突出しピン83は、一対の積層剥離容器10,10’を第1型板80aから取り出す間、突き出された状態が維持されるようにすることが好ましい。
【0045】
突出しピン83によって突き出された一対の積層剥離容器10,10’は、
図7に示すように、全体として「く」の字状に屈曲されるが、屈曲する部分は中央バリ部7のみであり、最終成形品となる積層剥離容器1の部分は屈曲せず、製品としての品質に影響はない。
【0046】
このように「く」の字に屈曲された一対の積層剥離容器10,10’は、第1端バリ部71に取出しピン(不図示)を挿入して分割金型80から取り出される。分割金型80から取り出された一対の積層剥離容器10,10’は、中央バリ部7であって口部4の上側にある箇所において外層1aにのみ穴を開けて、外層1aと内層1bの間にブロアーを用いてエアーを吹き込むことによって、収容部3の、弁部材9を取り付ける有底穴61において内層1bを外層1aから予備剥離する。そして、穴あけ装置を用いて外層1aに空気導入孔61aを形成する。そして、空気導入孔61aに弁部材9を挿入する。なお、空気導入孔61aは、好ましくは丸穴であるが、別の形状であってもよい。その後、中央バリ部7が除去される。
【0047】
(中央バリ部7)
ここで、中央バリ部7の構成について、
図8を用いて、より詳しく説明する。図示するように、中央バリ部7は、一対の積層剥離容器10,10’の一対の口部4から、一対の口部4と同径で延在する一対のつなぎ部7a,7a’と、一対のつなぎ部7a,7a’よりも細径でそれらを連結する中央寄りの中央部7bとから構成されている。これにより、中央バリ部7は、中央部7bと一対のつなぎ部7a,7a’の間で屈曲容易な構成となっている。突出しピン83は、中央部7bの当接部7dを突き出す。
【0048】
さらに、屈曲し易い態様として、突出しピン83が当たる中央部7bの肉厚を、一対のつなぎ部7a,7a’と中央部7bとの境界であって第1積層剥離容器10の口部4及び第2積層剥離容器10’の口部4寄りとなる境界部7cの肉厚よりも厚くすることが、好ましい。例えば、中央部7bを1.2mm〜1.4mmと、境界部7cの肉厚を0.7mm〜0.9mmとすることができる。これを中央部7bと境界部7cとの肉厚比率で表すと、2対1から4対3の範囲となる。本実施形態では、中央部7bの肉厚を厚くした場合の当該部位を厚肉部と、境界部7cの肉厚を薄くした場合の当該部位を薄肉部ともいう。
【0049】
この肉厚比率は、その差が上記の範囲よりも大きすぎると、突出しピン83で中央部7bを突き出した際に境界部7cで破断してしまうおそれがある。また、中央部7bと境界部7cの間で樹脂が冷えていく速度に違いが出るためソリが生じ、その場合には、一対の積層剥離容器10,10’において外層1aと内層1bが予期せぬ剥離を起こし、最終成形品である積層剥離容器1に影響が出るおそれがある。他方、肉厚比率の差が上記の範囲よりも小さすぎると、境界部7cが屈曲し難くなってしまい、底面31の中央凹領域31aの深さによっては、一対の積層剥離容器10,10’の取り出しが困難になることがある。
【0050】
さらにまた、中央部7bと境界部7cとの肉厚比率の設定に加えて、又は代えて、中央バリ部7が屈曲容易となるような形状、例えば、その中央部7bに蛇腹形状やくびれ形状などが施されてもよい。
【0051】
さらにまた、中央部7bと境界部7cとの肉厚比率の設定、中央部7bへの易屈曲部40dの付与に加えて、又は代えて、積層剥離容器1に求められる性能を満足する範囲で、外層1aと内層1bを、中央バリ部7が屈曲し易いような材料の組合せによって構成してもよい。積層構成については、項をあらためて説明する。
【0052】
一対の積層剥離容器10,10’を成形する分割金型80は、
図9から
図12に示すような構成を備えている。すなわち、
図9に示すように、分割金型80は固定側としての第1型板80aと可動側の第2型板80bを備えており、それの内面には、一対の積層剥離容器10,10’を成形するためのキャビティ81が掘り込まれている。分割金型80のうち第1型板80aには、
図10に示すように、突出しピン83が設けられている。
図11は、分割金型80のうち第2型板80bの構成を示しており、
図12に示すように、第2型板80bにはブローノズル82が設けられている。
【0053】
(積層構成)
積層剥離容器1、一対の積層剥離容器10,10’の積層構成について説明する。容器本体2は、累次述べているように、外層1aと内層1bとから構成される。
【0054】
まず、内層1bについて説明する。内層1bは、容器本体2の外面側に設けられた酸素バリア層1b1と、酸素バリア層1b1の容器内面側に設けられた内面層1b2と、酸素バリア層1b1と内面層1b2の間に設けられた接着層1b3を備える。酸素バリア層1b1を設けることでガスバリア性、及び外層1aからの剥離性を向上させることができる。
【0055】
酸素バリア層1b1は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層とすることが好ましく、EVOH樹脂は、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。EVOH樹脂のエチレン含有量は、例えば25〜50mol%とすることができるが、酸素バリア性の観点からは32mol%以下が好ましく、柔軟性の観点からは25mol%以上が好ましい。また、EVOH樹脂は、酸素吸収剤を含有することが好ましい。これにより、EVOH樹脂からなる酸素バリア層1b1の酸素バリア性をさらに向上させることができる。
【0056】
内面層1b2は、内容物に接触する層であり、内容物や外層1aとの相性に応じて、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)などから選択することができる。
【0057】
接着層1b3は、酸素バリア層1b1(EVOH層)と内面層1b2とを接着する機能を有する層であり、例えばポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である。接着層1b3の一例は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンと、酸変性ポリエチレンの混合物である。
【0058】
外層1aは、内容物や積層剥離容器1の大きさなどに応じて、外殻としての形状復元性、透明性、耐熱性を考慮して、ランダム共重合体を好ましく採用することができるが、本実施形態では、点眼薬等を内容物とするような比較的小さく、非使用時に立てて置くことが必ずしも強く求められないような場合、一対の積層剥離容器10,10’を分割金型80からの取出し性の観点から、中央バリ部7が屈曲し易い柔軟性のあるものを選択することが望まれる。
【0059】
外層1aの剛性が高い場合、突出しピン83によっても中央バリ部7が屈曲されず、突出しピン83の突出しを強くした場合、中央バリ部7ではなく、一対の積層剥離容器10,10’の口部4などの容器本体2が屈曲してしまう。
【0060】
そこで、本発明者らは、内層1bを、酸素バリア層1b1(EVOH層)/接着層1b3/内面層1b2(LDPE層)としたうえで、外層1aを、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)に変化させて、一対の積層剥離容器10,10’の分割金型80からの取出し性、及び中央バリ部7の屈曲性を調査した。その結果を表1に示す。
【0061】
調査にあたっては、積層剥離容器1を点眼薬の容器として用いることを想定して、外層1aについて、LDPE(ここでは、曲げ弾性率160MPaのものを使用した)、LLDPE(同じく、曲げ弾性率340MPaのものを使用した)、HDPE(同じく、曲げ弾性率1000MPaのものを使用した)、PP(同じく、曲げ弾性率630MPaのものを使用した)の4種類の素材を選び、内層1bを同一条件として、取出し性及び屈曲性を確認した。
【0063】
表1に示すように、積層剥離容器1、一対の積層剥離容器10,10’の積層構成については、少なくともその外層1aは、LDPE、LLDPE等の柔軟な、すなわち曲げ弾性率の低い素材を使用することが望ましい。
【0064】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、本実施形態は、ブロー成形に用いられることが特に好ましいが、射出成形について用いることもできる。