(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施形態の概要)
初めに、本実施形態にて開示する推定装置の概要について説明する。
推定装置は、蓄電素子の実容量又は実容量の総低下量を推定する推定装置であって、経過時間に対する実容量の推移又は実容量の総低下量の推移を示す容量変化曲線を複数の直線で近似した近似データに基づいて、蓄電素子の実容量又は実容量の総低下量を演算する演算処理部を備える。
【0009】
この構成では、容量変化曲線を直線で近似するから、蓄電素子の実容量又は実容量の総低下量を算出するにあたり、例えば、ルート計算が不要となり、演算処理部の演算負荷を抑えることが出来る。
【0010】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記容量変化曲線は、複数の領域に分割して直線で近似され、前記容量変化曲線を分割する複数の領域は、実容量又は実容量の総低下量を所定値で区切った領域である。この実施態様では、経過時間の総経過時間をカウントして保持しておく必要がなく、蓄電素子の実容量又は実容量の総低下量が算出し易い。
【0011】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記容量変化曲線は、蓄電素子の温度ごとに設けられており、前記演算処理部は、蓄電素子の温度に対応する容量変化曲線を複数の直線で近似した近似データに基づいて、蓄電素子の実容量又は実容量の総低下量を演算する。この構成では、アレニウス則に従って容量変化曲線を温度ごとに設けているので、温度変化によらず、蓄電素子の実容量又は実容量の総低下量を精度よく推定することが出来る。
【0012】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記容量変化曲線を近似する前記直線の傾きは、単位時間当たりの実容量の低下量を表し、前記容量変化曲線を分割する各領域及び各電池温度について、単位時間当たりの実容量の低下量を表す容量低下量マップを保持する記憶部を備える。この構成では、容量低下量マップを参照することで、各電池温度について、単位時間当たりの実容量の低下量を得ることが出来る。
【0013】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記演算処理部は、前記蓄電素子の製造後、所定時間が経過するごとに、蓄電素子の所定時間当たりの実容量の前記低下量を、蓄電素子の温度のデータと前記容量低下量マップとに基づいて算出し、実容量の前回値から所定時間当たりの実容量の低下量を減算することにより実容量の現在値を算出する、又は実容量の総低下量の前回値に対して所定時間当たりの前記実容量の前記低下量を加算することにより実容量の総低下量の現在値を算出する。
【0014】
この構成では、実容量の前回値から所定時間当たりの実容量の低下量を減算することにより実容量の現在値を算出することが出来る。また、所定時間あたりの実容量の低下量を求めて前回値に加算することにより実容量の総低下量を求めることが出来る。すなわち、非常に簡単な演算で実容量又は実容量の総低下量を求めることが出来る。
【0015】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記容量変化曲線を近似する前記直線の傾きは、単位時間当たりの前記実容量の低下量を表し、前記容量変化曲線を分割する各領域の単位時間当たりの前記実容量の前記低下量の比率を表す第1データと、前記容量変化曲線を分割する一領域について、電池温度毎の単位時間あたりの前記実容量の前記低下量を表す第2データと、を保持した記憶部を備える。この構成では、容量低下量マップに比べて、保持するべきデータ数を削減することが出来る。
【0016】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記演算処理部は、前記蓄電素子の製造後、所定時間が経過するごとに、前記蓄電素子の温度のデータと前記第1データと前記第2データとに基づいて、前記蓄電素子の所定時間当たりの前記実容量の前記低下量を算出し、実容量の前回値から所定時間当たりの実容量の低下量を減算することにより実容量の現在値を算出する、又は実容量の総低下量の前回値に対して所定時間当たりの前記実容量の前記低下量を加算することにより実容量の総低下量の現在値を算出する。
【0017】
この構成では、実容量の前回値から所定時間当たりの実容量の低下量を減算することにより実容量の現在値を算出することが出来る。また、所定時間あたりの実容量の低下量を求めて前回値に加算することにより実容量の総低下量を求めることが出来る。すなわち、非常に簡単な演算で実容量又は実容量の総低下量を求めることが出来る。
【0018】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記演算処理部は、前記蓄電素子のSOCに基づいて、単位時間当たりの実容量の低下量のデータを補正する。この構成では、単位時間当たりの実容量の低下量のデータをSOCに応じて補正するので、実容量又は実容量の総低下量の推定精度が高くなる。
【0019】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記演算処理部は、前記蓄電素子の基準温度での容量変化曲線を近似する複数の直線の傾きと、前記蓄電素子の温度と、前記蓄電素子が前記温度で経過する時間を基準温度で経過する時間に換算した換算時間と、に基づいて、前記温度下における前記時間あたりの実容量の低下量を算出する。この構成では、容量変化曲線を近似する直線のデータを、基準温度分だけ保持しておけばよく、それ以外の電池温度はデータを保持しておく必要がない。そのため、保持するべきデータ数を削減することが出来る。
【0020】
本実施形態にて開示する推定装置の一実施態様として、前記換算時間は、前記蓄電素子の温度が高いほど長い。この構成では、温度が高い程、換算時間が長くなり、算出される実容量の低下量は大きくなる。そのため、温度変化による実容量の低下量を正確に推定することが出来る。
【0021】
前記演算処理部は、前記温度で経過する時間に対して前記温度に対応した係数を乗算することにより、前記換算時間を算出する。この構成では、乗算といった比較的簡単な演算で換算時間を求めることが出来る。
【0022】
尚、本技術は、実容量又は実容量の総低下量の推定方法、推定プログラムに適用することが出来る。
【0023】
<実施形態1>
次に、本発明の実施形態1を
図1から
図8によって説明する。
1.バッテリモジュールの説明
図1はバッテリモジュールの斜視図、
図2はバッテリモジュールの分解斜視図、
図3はバッテリモジュールの電気的構成を示すブロック図である。
【0024】
バッテリモジュール20は、
図1に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や制御基板28が収容されている。尚、以下の説明において、
図1および
図2を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向をとして説明する。
【0025】
電池ケース21は、
図2に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋26とを備えて構成されている。ケース本体23内には、
図2に示すように、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0026】
位置決め部材24は、
図2に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されており、位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0027】
中蓋25は、
図1に示すように、平面視略矩形状をなし、Y方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋25のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部22P、22Nが設けられている。一対の端子部22P、22Nは、例えば、鉛合金等の金属からなり、22Pが正極側端子部、22Nが負極側端子部である。
【0028】
また、中蓋25は、
図2に示すように、制御基板28が内部に収容可能とされており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池31と制御基板28とが接続されるようになっている。
【0029】
次に
図3を参照してバッテリモジュール20の電気的構成を説明する。バッテリモジュール20は、組電池30と、電流センサ41と、温度センサ43と、組電池30を管理する電池管理装置(以下、BM)50とを有する。組電池30は、直列接続された複数のリチウムイオン二次電池(本発明の「蓄電素子」の一例)31から構成されている。
【0030】
電流センサ41は、接続ライン35を介して、組電池30と直列に接続されている。電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31に流れる電流を検出する機能を果たす。温度センサ43は接触式あるいは非接触式で、二次電池31の温度[℃]を測定する機能を果たす。
【0031】
電流センサ41と温度センサ43は、信号線によって、BM50に電気的に接続されており、電流センサ41や温度センサ43の検出値は、BM50に取り込まれる構成になっている。電流センサ41は、電池ケース21内に設けられている。
【0032】
BM50は、電圧検出回路60と制御部70とを備えており、制御基板28に設けられている。BM50の電源ライン(図略)は組電池30に接続されており、BM50は組電池30から電力の供給を受ける。
【0033】
電圧検出回路60は、検出ラインを介して、各二次電池31の両端にそれぞれ接続され、制御部70からの指示に応答して、各二次電池31の電圧及び組電池30の総電圧を測定する機能を果たす。
【0034】
制御部70は、中央処理装置であるCPU(本発明の「演算処理部」の一例)71と、メモリ(本発明の「記憶部」の一例)73とを含む。CPU71は、電流センサ41、電圧検出回路60、温度センサ43の出力から、二次電池31の電流、電圧、温度を監視している。また、後述するように、リチウムイオン二次電池31の実容量Cの総低下ΣYを推定する。
【0035】
また、メモリ73は、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性である。メモリ73には、二次電池31を監視するための監視プログラム、それらプログラムの実行に必要なデータが記憶されている。また、二次電池31の実容量Cの総低下量ΣYを推定するための容量低下量マップMAのデータが記憶されている。
【0036】
2.容量変化曲線の直線近似
リチウムイオン二次電池31の実容量Cが低下する主な要因としては、充放電を繰り返すことによるサイクル劣化と、製造後の経過時間による経時劣化とがある。ここで、「実容量C」とは、二次電池が完全充電された状態から取り出し可能な容量である。尚、経時劣化が生じる要因としては、リチウムイオン二次電池31の負極に形成されるSEI(Solid electrolyte interface)被膜が製造後の時間経過に伴って成長して厚くなることが言われている。
【0037】
経時劣化に対しては、ルート則を用いた推定方法がある。ルート則は、実容量Cの総低下量ΣYが、経過時間Tのルート(例えば、平方根)に従って変化する法則である。尚、「経過時間T」とは、電池が製造されてから経過した時間である。
【0038】
図4は、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31について、経過時間Tに対する実容量Cの総低下量ΣYの推移を示したものである。具体的には、横軸(X軸)を経過時間T、縦軸(Y軸)を実容量Cの総低下量ΣYとした、T−ΣY相関グラフであり、実容量Cの総低下量ΣYの推移を表す容量変化曲線Laは、経過時間Tに対するルート曲線となっている。
【0039】
容量変化曲線Laは電池温度ごとに設けられており、La1は電池温度が0[℃]の容量変化曲線、La2は電池温度が25[℃]の容量変化曲線、La3は電池温度が50[℃]の容量変化曲線である。
【0040】
これら容量温度曲線La1〜La3は、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31について、製造後の時間経過に伴う実容量Cの総低下量ΣYの推移を調べる実験を、各電池温度にて行うことにより得たものである。尚、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31とは、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極活物質にグラファイトを用いた電池である。
【0041】
そして、本実施形態では、容量変化曲線Laを複数の領域E1〜E3に分割して直線で近似する。具体的には、総低下容量ΣYを所定値(本例では3[Ah])ごとに区切って3つの領域E1〜E3に分割し、容量変化曲線Laを、各領域E1〜E3ごとに直線A1〜A3で近似している。
【0042】
すなわち、容量変化曲線La1を各領域E1〜E3に対応する3つの直線A11〜A31によって分割して近似している。また、容量変化曲線La2を各領域E1〜E3に対応する3つの直線A12〜A32によって分割して近似している。また、容量変化曲線La3を各領域E1〜E3に対応する3つの直線A13〜A33によって分割して近似している。
【0043】
尚、容量変化曲線Laを近似する各直線A1〜A3は、容量変化曲線Laのうち、対応する領域Eの上限値と下限値にそれぞれ対応するポイントPを結ぶ直線として求めることが出来る。例えば、
図5に示すように、領域E1に対応する範囲を近似する直線A11〜A13の場合、実容量Cの総低下量が0[Ah]に対応する原点Oと、実容量Cの総低下量が3[Ah]に対応する容量変化曲線La1〜La3上のポイントP1〜P3をそれぞれ結んだ直線として求めることが出来る。
【0044】
また、容量変化曲線La2のうち、領域E2に対応する範囲を近似する直線A22の場合、
図5に示すように、容量変化曲線La2のうち、実容量Cの総低下量が3[Ah]に対応するポイントP2と、容量の総低下量が6[Ah]に対応するポイントP4を結んだ直線として求めることが出来る。同様、容量変化曲線La3のうち、領域E2に対応する範囲を近似する直線A23の場合、
図5に示すように、容量変化曲線La3のうち、実容量Cの総低下量が3[Ah]に対応するポイントP3と、実容量Cの総低下量が6[Ah]に対応するポイントP5を結んだ直線として求めることが出来る。
【0045】
3.容量低下量マップMAと総低下量ΣYの推定処理
容量変化曲線Laを分割する各直線A1〜A3の傾きは、単位時間当たり(本例では1か月当たり)の実容量Cの低下量Yを示している。本実施形態では、各容量変化曲線La1〜La3について、これを近似する各直線A11〜A33の傾きの大きさをそれぞれ求め、求めた結果を、二次電池31の容量低下量マップMAとしてデータ化している。
【0046】
容量低下量マップMAは、
図6に示すように、容量変化曲線Laを分割する各領域E1〜E3及び電池温度ごとに、単位時間当たりの実容量Cの低下量Yを求めたものである。例えば、電池温度25[℃]の場合、各領域E1〜E3について、単位時間あたりの実容量Cの低下量Yは、それぞれ2.3623[Ah/momth]、0.7874[Ah/momth]、0.4725[Ah/momth]であり、これらの数値は、容量変化曲線La2を近似する3つの直線A12、A22、A32の傾きの大きさとなっている。
【0047】
バッテリモジュール20は、BM50のメモリ73に対して、
図6に示す容量低下量マップMAのデータを予め保持している。そして、制御部70のCPU71は、二次電池の温度のデータと容量低下量マップMAとに基づいて、経時劣化に伴う、二次電池31の実容量Cの総低下量ΣYを推定する処理(
図8のS10〜S30の処理)を行う。
【0048】
総低下量ΣYの推定処理は、
図8に示すようにS10〜S30の処理から構成されており、まず、S10では、電池の製造後、所定時間(一例として1か月)が経過するごとに、温度センサ43の出力に基づいて、二次電池31の所定時間(一例として1か月)あたりの平均温度を算出する処理が行われる。
【0049】
その後、S20では、二次電池31の所定時間(一例として1か月)当たりの実容量Cの低下量Yを、電池温度のデータと、容量低下量マップMAとに基づいて算出する処理が行われる。そして、S30にて、電池温度のデータと容量低下量マップMAから算出した、所定時間(一例として1か月)あたりの実容量Cの低下量Yを、総低下量ΣYの前回値に対して加算することで、総低下量ΣYの現在値を算出することが出来る。
【0050】
具体的に説明すると、電池製造直後は、実容量Cの総低下量ΣYは0[Ah]であり、二次電池31の総低下量ΣYの区分は、領域E1に含まれている。そのため、電池の製造後から1か月が経過するまでの期間について、実容量Cの低下量Yは、0.5241[Ah/month]、2.3623[Ah/month]、8.4343[Ah/month]のいずれかとなる。
【0051】
図7は、電池製造後、二次電池31の各月の平均温度を示しており、図の例では1か月目の平均温度は0[℃]である。従って、この場合、1か月当たりの実容量Cの低下量は、0.5241[Ah/month]となり、電池製造後、1か月が経過した時点の、実容量Cの総低下量ΣYは、
図9に示すように、0.5241[Ah]となる。
【0052】
電池製造後1か月が経過した時点の、実容量Cの総低下量ΣYが0.5241[Ah]の場合、二次電池31の総低下量ΣYの区分は、領域E1(0〜3[Ah])に含まれている。そのため、電池製造後1か月〜2か月が経過するまでの期間について、1か月当たりの実容量Cの低下量は、0.5241[Ah/month]、2.3623[Ah/month]、8.4343[Ah/month]のいずれかとなる。
【0053】
図7の例では、電池製造後、2か月目の平均温度は25[℃]である。従って、この場合、電池製造後の2か月目について、実容量Cの低下量は2.3623[Ah/month]となる。そのため、電池製造後、2か月が経過した時点の実容量Cの総低下量ΣYは、電池製造後、1か月が経過した時点の実容量Cの総低下量ΣYに対して2か月目の実容量Cの低下量Yを加算した数値、すなわち、0.5241[Ah]+2.3623[Ah]となり、
図9に示すように2.8864[Ah]となる。
【0054】
電池製造後、2か月が経過した時点の、実容量Cの総低下量ΣYが2.8864[Ah]の場合、二次電池31の総低下量ΣYの区分は、領域E1(0〜3[Ah])に含まれている。そのため、電池製造後2か月〜3か月が経過するまで期間について、1か月当たりの実容量Cの低下量は、0.5241[Ah/month]、2.3623[Ah/month]、8.4343[Ah/month]のいずれかとなる。
【0055】
図7の例では、電池製造後、3か月目の平均温度は25[℃]である。従って、この場合、電池製造後の3か月目について、1か月当たりの実容量Cの低下量Yは2.3623[Ah/month]となる。そのため、電池製造後、3か月が経過した時点の実容量Cの総低下量ΣYは、電池製造後、2か月が経過した時点の実容量C総低下量ΣYに対して3か月目の実容量C低下量Yを加算した数値、すなわち、2.8864[Ah]+2.3623[Ah]となり、
図9に示すように5.2487[Ah]となる。
【0056】
電池製造後、3か月が経過した時点の、実容量Cの総低下量ΣYが5.2487[Ah]の場合、二次電池31の総低下量ΣYの区分は、領域E2(3〜6[Ah])に含まれている。そのため、電池製造後、3か月〜4か月が経過するまで期間について、1か月当たりの実容量Cの低下量は、0.1747[Ah/month]、0.7874[Ah/month]、2.8114[Ah/month]のいずれかとなる。
【0057】
図7の例では、電池製造後、4か月目の平均温度は25[℃]である。従って、この場合、電池製造後の4か月目について、1か月当たりの実容量Cの低下量Yは0.7874[Ah/month]となる。そのため、電池製造後、4か月が経過した時点の実容量Cの総低下量ΣYは、電池製造後、3か月が経過した時点の実容量C総低下量ΣYに対して4か月目の実容量C低下量Yを加算した数値、すなわち、5.2487[Ah]+0.7874[Ah]となり、
図9に示すように6.0361[Ah]となる。
【0058】
以上説明したように、容量低下量マップMAから求めた1か月あたりの実容量Cの低下量を、前月までの総低下量ΣYに対して加算することで、実容量Cの総低下量ΣYの現在値を求めることが出来る。
【0059】
そして、本実施形態では、容量変化曲線La1〜La3を複数の直線A11〜A33で近似するから、実容量C又は実容量Cの総低下量ΣYを算出するにあたり、ルート計算が不要となり、制御部70の演算負荷を抑えることが出来る。
【0060】
また、実施形態1では、容量変化曲線LaをY軸方向に分割している。すなわち、総低下量ΣYを所定値で区切った領域E1〜E3で分割している。このようにすれば、経過時間Tの総経過時間をカウントして保持しておく必要がなく、実容量Cの総低下量ΣYが算出し易いというメリットがある。すなわち、容量変化曲線LaをX軸方向に分割する場合(経過時間Tを所定値で区切って分割する場合)、実容量Cの総低下量ΣYを求めるには、経過時間Tの総経過時間をカウントして保持しておく必要があるが、本例では、そのような必要が一切ない。
【0061】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図10、
図11によって説明する。
実施形態1では、各容量変化曲線La1〜La3について、これを近似する各直線A11〜A33の傾きの大きさをそれぞれ求め、求めた結果を、二次電池31の容量低下量マップMAとしてデータ化して保持した。
【0062】
ここで、単位時間当たり実容量Cの低下量Yについて、領域E〜E3間の比率Kは、電池温度が25[℃]の場合、下記の通りとなる。
【0063】
Y1=2.3623、Y2=0.7874、Y3=0.4725
K=Y1:Y2:Y3=「1.0000」:「0.3333」:「0.2000」
尚、Y1〜Y3は、各領域E1〜E3での単位時間当たり実容量Cの低下量である。
【0064】
一方、電池温度が0[℃]の場合、上記比率Kは「1.0000」:「0.3333」:「0.2000」となり、また、電池温度が50[℃]の場合、上記比率Kは「1.0000」:「0.3333」:「0.2000」となる。このように、各領域E1〜E3間の単位時間あたりの実容量Cの低下量Y1〜Y3の比率Kは、電池温度に関係なく一定となる。
【0065】
実施形態2では、実容量Cの低下量Y1〜Y3の比率Kが、電池温度に関係なく概ね一定となる性質に着目して、
図4で示した容量低下量マップMAのデータを、
図10に示す第1データと、
図11に示す第2データとにより保持する。すなわち、実施形態1では、メモリ73に対して、
図4に示す容量低下量マップMAのデータを保持する構成としたが、実施形態2では、容量低下量マップMAに代えて、
図10に示す第1データと、
図11に示す第2データを保持する。
【0066】
第1データは、
図10に示すように、容量変化曲線Laを分割する各領域E1〜E3について単位時間あたりの実容量Cの低下量Y1〜Y3の比率Kを表すデータである。この例では、比率Kの代表値として25[℃]の数値を記載している。
【0067】
また、第2データは、
図11に示すように、容量変化曲線Lを分割する一領域である領域E1(総低下量:0〜3Ah)について、電池温度毎の、単位時間あたりの実容量Cの低下量Yを表すデータである。
【0068】
図10に示す第1データと、
図11に示す第2データをメモリ73に保持しておけば、
図11に保持された単位時間あたりの実容量Cの低下量Yに対して、各領域間の比率Kを乗算することにより、
図11に保持されていない、他の領域E2、E3についても、単位時間当たりの実容量Cの低下量Y2、Y3を算出することが出来る。
【0069】
例えば、電池温度が25℃の場合、領域E1における単位時間あたりの実容量Cの低下量(Y1=2.3623)に対して、領域E1に対する領域E2の実容量Cの低下量の比率(0.3333)を乗算することにより、領域E2における単位時間あたりの実容量Cの低下量(Y2=0.7874)が得られる。また、領域E1における単位時間あたりの実容量Cの低下量(Y1=2.3623)に対して、領域E1に対する領域E3の実容量Cの低下量の比率(0.2000)を乗算することにより、領域E3における単位時間あたりの実容量Cの低下量(Y3=0.4725)が得られる。
【0070】
また、各領域E1〜E3間の実容量Cの低下量K1〜K3の比率Kは、電池温度に関係なく概ね一定となることから、電池温度が0[℃]や50[℃]など、25[℃]以外でも、上記の計算方法と同様の計算により、容量変化曲線Laを分割する各領域E2、E3について、単位時間当たりの実容量Cの低下量Y2、Y3を算出することが出来る。
【0071】
尚、実容量Cの総低下量ΣYを算出することは、実施形態1と同じであり、実施形態2では、第1データと第2データを用いて、所定時間あたりの実容量Cの低下量Yを求め、それを総低下量ΣYの前回値に加算することで、総低下量ΣYの現在値を算出する。
【0072】
このように実施形態2では、容量低下量マップMAに代えて、
図10に示す第1データと、
図11に示す第2データを保持する構成としたので、メモリ73に保持するデータを削減することが出来る。
【0073】
実施形態1の例では、容量変化曲線Laとして、La1〜La3の3種の温度パターン持つ例を示した。また、各容量変化曲線La1〜La3を3分割して直線で近似した例を示した。仮に、容量変化曲線Laを10分割し、100種の温度パターン持つ場合、容量低下量マップMAとして、「10×100通り」のデータを持つ必要がある。実施形態2の構成であれば、容量変化曲線Laを10分割し、100種の温度パターン持つ場合でも、「10+100通り」のデータを持つだけでよい。すなわち、メモリ73に記憶するデータ数が、この例であれば、約1/9程度に抑えることが可能であり、データ削減に極めて効果的である。
【0074】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を
図12によって説明する。
実施形態1では、経過時間Tの経過に伴う実容量Cの総低下量ΣYを算出した例を示した。実施形態3では、経過時間Tの経過に伴う実容量Cを算出する。
【0075】
図12は、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31について、横軸(X軸)を経過時間T、縦軸(Y軸)を実容量Cとした、T−C相関グラフである。
図12に示すように、実容量Cの推移を表す容量変化曲線Lbは、
図4に示す容量変化曲線LaをX軸で折り返した反転した曲線であり、容量変化曲線Laと同様に経過時間Tに対するルート曲線である。
【0076】
図12に示すように、容量変化曲線Lbは、容量変化曲線Laと同様に、複数の領域E1〜E3に分割して近似することが出来る。
図12の例では、容量変化曲線Lb1を各領域E1〜E3に対応する3つの直線B11〜A31によって分割して近似している。また、容量変化曲線Lb2を各領域E1〜E3に対応する3つの直線B12〜A32によって分割して近似している。また、容量変化曲線Lb3を各領域E1〜E3に対応する3つの直線B13〜B33によって分割して近似している。
【0077】
以上のことから、実施形態1と同様に、各容量変化曲線Lb1〜Lb3について、これを近似する各直線B11〜B33の傾きの大きさをそれぞれ求め、求めた結果を、二次電池31の容量低下量マップMBとしてデータ化しておけば、容量低下量マップMBを用いて、所定時間当たりの実容量Cの低下量Yを算出することが可能となる。そして、算出した実容量Cの低下量Yを、実容量Cの前回値から減算することにより、実容量Cの現在値を算出することが出来る。
【0078】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を
図13によって説明する。単位時間あたりの実容量Cの低下量Yは、リチウムイオン二次電池31のSOC(State of charge)により異なる場合がある。そこで、実施形態4では、二次電池31のSOCの値に基づいて、所定時間(1か月)あたりの実容量Cの低下量Yを補正する処理を行う。
【0079】
具体的には、実施形態4では、
図4に示す容量低下量マップMAに加えて、
図13に示す補正データをメモリ73に対して予め記憶している。補正データは、二次電池31のSOCに補正係数αを対応させて記憶したものである。尚、実容量Cの低下量Yは、経過時間Tが同じであれば、SOCが低いほど小さい傾向になることから、補正係数の大小関係は、
図13に示すように、α1<α2<α3となる。
【0080】
制御部70は、実施形態1と同様に、容量低下量マップMAを参照して、電池の製造後の各月について実容量Cの低下量Yを算出する。また、制御部70は、電池製造後の各月についてSOCの平均値を算出する処理を行う。そして、
図13に示す補正データから、SOCに対応する補正係数αを読み出して、各月の実容量Cの低下量Yを補正する。
【0081】
そして、総低下量ΣYの前回値に対して、補正後の低下量Yを加算することで、総低下量ΣYの現在値を算出する。このように、実施形態4では、実容量Cの低下量YをSOCに応じて補正するので、補正を行わない場合に比べて、二次電池31の実容量Cの総低下量ΣYを精度よく推定することが出来る。尚、二次電池31のSOCは、いわゆる電流積算法やOCV法を用いて求めることが出来る。
【0082】
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を
図14〜
図19によって説明する。
図14は、横軸を経過時間T、縦軸を実容量Cとした、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31のT−C相関グラフであり、電池温度が25[℃]、45[℃]、60[℃]の3パターンについて経過時間Tに対する実容量Cの推移を示している。
図14に示すように、実容量Cは電池製造後の時間経過により低下するが、経過時間Tが同じであっても、電池温度が高い程、容量低下は顕著である。すなわち、電池温度が高い程、実容量Cは「加速的」に低下する。
【0083】
図15は、横軸を経過時間T、縦軸を実容量Cとした、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31のT−C相関グラフであり、横軸(X軸)の大きさを、電池温度25[℃]、45[℃]、60[℃]ごとに変更している。具体的には、電池温度25[℃]の横軸を基準として、電池温度45[℃]は横軸を「k1」倍し、電池温度60[℃]では、横軸を「k2」倍している。尚、k2>k1>1である。
【0084】
図15に示すように、横軸(時間軸)に対して所定の「係数k」を乗算すると、電池温度が異なっても、実容量Cの推移は概ね一致する。このことは、例えば、電池温度45[℃]での「1時間」は、電池温度25[℃]では「k×1時間」に相当することを意味する。すなわち、電池温度45[℃]の場合、「1時間」あたりの実容量Cの低下量は、電池温度25[℃]に換算すると、「k×1時間」あたりの実容量Cの低下量に相当する。
【0085】
各電池温度に対する係数kは、以下の方法により算出することが出来る。
(A)経過時間TのN乗根と各電池温度の実容量Cとが、比例関係となるNの値を決定する。
(B)各電池温度について実容量Cの直線近似式を決定する。
(C)各電池温度の直線近似式について基準温度の直線近似式に対する傾きの比Mを決定する。
(D)NとMの値から係数kを算出する。
【0086】
25[℃]を基準温度として、電池温度40[℃]、60[℃]の係数kの算出例を以下に示す。
【0087】
まず、乗数Nを変更しながら、経過時間TのN乗根と実容量Cの相関性を調べ、各電池温度25[℃]、45[℃]、60[℃]とも比例関係となるNの値を特定する。
【0088】
図16は、横軸を経過時間TのN乗根、縦軸を実容量Cとした、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31の
N√T−C相関グラフであり、各電池温度25[℃]、45[℃]、60[℃]とも、実容量Cの推移は直線で示されている。尚、Nの値は一例として「3.1215」である。
【0089】
図16より、各電池温度の実容量Cの直線近似式は、以下に求めることが出来る。
Y=−a1X+b・・・(1)
Y=−a2X+b・・・(2)
Y=−a3X+b・・・(3)
尚、(1)は電池温度25[℃]の実容量Cの直線近似式、(2)は電池温度45[℃]の実容量Cの直線近似式、(3)は電池温度60[℃]の実容量Cの直線近似式である。
【0090】
次に(1)〜(3)の直線近似式から、各電池温度の直線近似式について基準温度の直線近似式に対する傾きの比Mを決定する。
【0091】
各電池温度の傾きの比Mは下記となる。
M1=a2/a1・・・・・(4)
M2=a3/a1・・・・・(5)
【0092】
以上により、NとMの値を得られることから、下記の(6)、(7)式より、電池温度45[℃]、60[℃]について係数kを求めることが出来る。
k
45℃=M1
N・・・・・・・・(6)
k
60℃=M2
N・・・・・・・・(7)
【0093】
実施形態5では、
図17に示すように、各電池温度について係数kの値を予め算出し、そのデータをメモリ73に記憶している。
【0094】
係数kは、電池温度が高い程大きい。本例では、25[℃]を基準温度としており、電池温度が25より低い場合、係数kは1以下、高い場合は1以上である。従って、k1<k2<1であり、1<k3<k4・・・k8<k9である。
【0095】
図18は、横軸(X軸)を経過時間T、縦軸(Y軸)を実容量Cとした、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池31のT−C相関グラフであり、容量変化曲線Ldは、基準温度25[℃]における実容量Cの推移を示している。
【0096】
実施形態5も、容量変化曲線Ldを複数の領域E1〜E3に分割して近似することは、実施形態1〜4と共通しており、容量変化曲線Lcを各領域E1〜E3に対応する3つの直線D1〜D3によって分割して近似している。
【0097】
そして、メモリ73には、各電池温度について係数kのデータと共に、基準温度25[℃]の容量変化曲線Ldを分割して近似する3つの近似直線D1〜D3の傾きd1〜d3のデータが記憶されている(
図17、
図19参照)。
【0098】
実施形態5において制御部70のCPU71は、(A)〜(E)の5ステップで実容量Cの推定を行う。
(A)実容量Cに対応する基準温度での近似直線Dの傾きdを算出
(B)電池温度に対応する係数kの算出
(C)二次電池31が電池温度で経過する所定時間Wを基準温度で経過する時間に換算
(D)電池温度での所定時間Wあたりの実容量Cの低下量Ywを算出
(E)実容量Cの総低下量ΣYを算出
【0099】
以下、
図17〜
図19を参照して、実容量Cの推定例を説明する。尚、ここでは、実容量Cの初期値、前回推定時の実容量の総低下量(初期値からの総低下量)、電池温度は下記の条件とする。
【0100】
実容量Cの初期値はC0とする。また、前回は、
図18に示す時刻t1にて実容量Cを推定したものとし、前回推定時t1の実容量Cの総低下量ΣY1は、e1<ΣY1<e2の範囲にあるものとする。以下の例では、前回推定時t1から所定時間Wあたりの実容量Cの低下量Yを算出するものとする。また、所定時間Wにおいて温度センサ43により検出された二次電池31の電池温度は40[℃]とする。
【0101】
実容量Cに対応する基準温度での近似直線Dの傾きdは、前回推定時t1の実容量Cの総低下量ΣY1と、
図19のデータから求めることが出来る。この例では、前回推定時t1の総低下量ΣY1は、e1<ΣY1<e2の範囲にある。従って、
図19より、実容量Cに対応する基準温度での近似直線はD2であり、その傾き「d2」である。
【0102】
また、電池温度に対応する係数kは、温度センサ43により計測される二次電池31の電池温度と、
図17のデータより求めることが出来る。この例では、所定時間Wの電池温度は40[℃]であることから、
図17より、係数は「k5」となる。
【0103】
そして、二次電池31が電池温度で経過する時間は、基準温度で経過する時間に対して、係数kを乗じた時間に相当する。そのため、二次電池31が電池温度で経過する所定時間Wを、基準温度での経過時間に換算した換算時間Wtは、下記の(8)式となる。
【0104】
Wt=k×W・・・・・・・・・・(8)
【0105】
そして、近似直線Dの傾きdは、単位時間あたりの実容量Cの低下量を示す。従って、換算時間Wtに対して、近似直線Dの傾きdを乗算することで、下記の(9)式で示すように、電池温度での所定時間Wあたりの実容量Cの低下量Ywを算出することが出来る。
【0106】
実容量Cの低下量Yw=(k×W)×d・・(9)式
【0107】
また、所定時間W=単位時間(例えば1[month])とすると、実容量Cの低下量Ywは、下記の(10)式で表すことが出来る。
【0108】
実容量Cの低下量Yw=k×d・・・・・・(10)式
【0109】
そして、上記の例では、係数は「k5」、近似直線の傾きは「d2」であることから、前回推定時t1から単位時間である1[month]が経過するまでの実容量Cの低下量Ywは「k5」×「d2」となる。
【0110】
このように、所定時間=単位時間の場合、「近似直線Dの傾きd」と「電池温度に対応する係数k」とを乗算することにより、電池温度での所定時間(単位時間)あたりの実容量Cの低下量Ywを算出することが出来る。
【0111】
また、前回推定時t1の実容量Cの総低下量ΣY1に対して、算出した実容量Cの低下量Ywを加算することで、時刻t2における実容量Cの総低下量ΣY2を算出することが出来る。そして、下記の(11)式に示すように、実容量Cの初期値C0からの総低下量ΣY2を減算することで、時刻t2における実容量Cを推定することが出来る。
【0112】
C=C0−ΣY2・・・・・・・・・・(11)式
【0113】
制御部70のCPUは、上記処理を所定時間(単位時間)ごとに行うことにより、実容量Cの推定を行う。
【0114】
実施形態5では、容量変化曲線のデータを、基準温度分だけ保持しておけばよく、それ以外の電池温度は、容量変化曲線のデータを保持しておく必要がない。すなわち、
図19に示す近似直線Dの傾きdのデータを、電池温度ごとに記憶しておく必要がない。そのため、メモリ73に記憶するデータ数を大幅に削減することが可能であり、効果的である。
【0115】
また、係数kは電池温度が高いほど大きく、換算時間Wtは長くなる。そのため、電池温度が高い程、実容量の低下量が大きくことから、温度変化による実容量Cの低下量Ywを正確に推定することが出来る。
【0116】
また、係数、所定時間、傾きの乗算といった比較的な簡単な演算で、換算時間Wt、所定時間あたりの実容量Cの低下量Ywを求めることが出来るので、制御部70の演算負荷も小さい。
【0117】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0118】
(1)上記実施形態1〜3では、「蓄電素子」の一例に、リン酸鉄系のリチウムイオン二次電池を例示した。本発明は、経過時間Tに対する実容量Cの総低下量ΣYの推移がルート則や所定の曲線に従う特性のリチウムイオン二次電池であれば、広く適用することが出来、例えば、3元系のリチウムイオン二次電池に対しても適用することが出来る。尚、3元系のリチウムイオン二次電池は、正極活物質にCo,Mn、Niの元素を含有したリチウム含有金属酸化物を用い、負極活物質はグラファイトやカーボン等を用いた電池である。
【0119】
また、経過時間Tに対する実容量Cの総低下量ΣYの推移が、所定の曲線に従う特性の二次電池であれば、鉛蓄電池など他の二次電池や、キャパシタなどにも適用することが出来る。
【0120】
(2)上記実施形態1〜3では、容量変化曲線La、Lbを3つの領域E1〜E3で3分割して近似した例を示した。容量変化曲線Laの分割数は「3」に限定されるものではなく、それ以上であってもよい。また、容量変化曲線Laを分割する領域Eは、必ずしも均等である必要はなく、粗密を設けてもよい。例えば、容量変化曲線La、Lbのカーブの大きい範囲は、分割する領域Eを狭くして分割数を増やす一方、直線に近い範囲は、分割する領域Eを広くして分割数を減らすようにしてもよい。
【0121】
(3)実施形態1では、電池の製造後、実容量Cの低下量Yを、1か月ごとに求めた例を示した。実容量Cの低下量Yを求める間隔は、2か月や3か月おきであってもよい。