(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザ光を照射する照射窓及び前記バキューム手段の吸込口を囲うように配置された筒形状のカバー体と、該カバー体の先端に配置されたブラシと、を備えたカバー部材を有することを特徴とする請求項2に記載の表面処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について
図1(a)〜
図7(b)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係る表面処理装置を示す全体構成図であり、(a)はレーザヘッドを0°の位置に固定した状態、(b)はレーザヘッドを90°の位置に固定した状態、(c)はレーザヘッドを45°の位置に固定した状態、を示している。
図2は、レーザヘッドの構成を示す概略構成図であり、(a)は断面図、(b)は側面図、を示している。
【0015】
本発明の第一実施形態に係る表面処理装置1は、
図1(a)〜
図2(b)に示したように、構造物の表面に向かってレーザ光Lを照射するレーザヘッド2と、レーザヘッド2を回動可能に支持する支持部材3と、を備えている。
【0016】
レーザヘッド2は、例えば、
図2(a)及び
図2(b)に示したように、レーザ光Lの焦点距離を調節するコリメートユニット21と、レーザ光Lの進路を変更する複数の反射鏡22と、回転しながらレーザ光Lを反射するスキャナユニット23と、スキャナユニット23により反射されたレーザ光Lを線状のレーザ光Lに変換するfθレンズ24と、レーザ光Lによって除去された剥離物を吸い込むバキューム手段25と、これらの部品を収容するハウジング26と、を備えている。
【0017】
ハウジング26は、略直方体形状を有しており、レーザ光Lを外部に照射するための開口部26aを有している。開口部26aにはfθレンズ24が配置されている。fθレンズ24は、ガルバノミラー23aの等速回転運動をレンズのディストーション効果を用いて、焦点平面上を移動するスポットの等速直線運動に変換する部品である。
【0018】
コリメートユニット21は、レーザ発振器(図示せず)により発振されたレーザ光を伝送する光ファイバー27に接続されており、レーザ光Lを平行光に変換するコリメートレンズ21aを備えている。コリメートレンズ21aの位置を変更することにより、レーザヘッド2から照射されるレーザ光Lの焦点距離を、例えば、50mm〜200mm程度の範囲内で変更することができる。なお、レーザ発振器本体は、表面処理装置1の近傍又は遠隔地に配置される。
【0019】
反射鏡22は、コリメートレンズ21aを透過したレーザ光Lをスキャナユニット23に案内する部品である。ここでは、コリメートレンズ21aを透過したレーザ光Lの進路を90°変更した後、再びレーザ光Lの進路を90°変更することによって、レーザ光Lをスキャナユニット23に案内している。なお、反射鏡22の個数及び配置は、コリメートユニット21及びスキャナユニット23の配置又は構成によって任意に変更することができる。
【0020】
スキャナユニット23は、ハウジング26の開口部26aに臨む位置に配置されたガルバノミラー23aと、ガルバノミラー23aを駆動させるガルバノモータ23bと、を備えている。なお、ガルバノモータ23bの支持部材については図を省略してある。ガルバノミラー23aは、例えば、ガルバノモータ23bによって回転方向が交互に反転され往復回動される。
【0021】
バキューム手段25は、ハウジング26に配置されたバキュームホース25aと、バキュームホース25aに吸引力を付与するバキュームポンプ(図示せず)と、バキュームホース25aによって吸い込まれた塵芥を回収するバキュームタンク(図示せず)と、を備えている。バキュームホース25aの先端は、ハウジング26の開口部26aに隣接した位置にハウジング26を貫通するように配置されており、バキューム手段25の吸込口25bを形成している。なお、バキュームポンプ及びバキュームタンクは、表面処理装置1の近傍又は遠隔地に配置される。
【0022】
かかるバキューム手段25の一部をレーザヘッド2に配置することにより、表面処理される部分に近接した位置にバキューム手段25の吸込口25bを配置することができ、レーザ光Lによって除去された剥離物を容易に回収することができ、塵芥の飛散を抑制することができる。
【0023】
また、レーザヘッド2は、fθレンズ24を保護するためのカバー部材28を備えていてもよい。カバー部材28は、fθレンズ24の外周を覆うようにハウジング26の外面に配置された略円筒形状の部材である。
【0024】
また、レーザヘッド2は、構造物の表面までの距離を計測する測距センサ29を備えていてもよい。測距センサ29は、例えば、カバー部材28に配置されるが、ハウジング26に配置するようにしてもよい。測距センサ29は、例えば、マイクロレーザや赤外線を用いた非接触式のセンサであるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
支持部材3は、例えば、長尺の棒状部材であり、先端にレーザヘッド2が回動可能に接続されている。また、支持部材3は筒状に形成されており、内部の空間にはバキュームホース25aや光ファイバー27が挿通されている。また、図示しないが、複数の棒状部材を継ぎ足したり、伸縮させたりすることにより、支持部材3の長さを変更するようにしてもよい。
【0026】
支持部材3の先端には接続金具31が固定されており、接続金具31にレーザヘッド2が回動可能に接続されている。接続金具31とレーザヘッド2との間には、レーザヘッド2の回動位置を任意の位置又は所定の位置に固定するラッチ機構や固定手段が配置されている。
【0027】
レーザヘッド2は、例えば、
図1(a)〜
図1(c)に示したように、支持部材3に対する傾斜角度が0°の状態、90°の状態、45°の状態に固定される。このように、レーザヘッド2の傾斜角度を変更することにより、任意の方向にレーザ光Lを照射することができる。なお、ラッチ機構や固定手段には、工具等の分野で一般に使用されている構成を任意に選択して採用することができる。
【0028】
また、支持部材3の後端には、表面処理装置1の作動状態を切り替えるスイッチ32が配置されていてもよい。スイッチ32を操作することにより、レーザヘッド2からレーザ光Lを照射させたり、照射を停止させたりすることができる。スイッチ32をレーザヘッド2と反対側の端部に配置することにより、作業員が支持部材3を把持したままレーザヘッド2を離隔した位置に配置した状態でレーザ光Lの照射のON/OFFを容易に切り替えることができる。
【0029】
また、支持部材3の中間部には、測距センサ29の出力に基づいて、作業員に情報を報知する信号出力部33が配置されていてもよい。信号出力部33は、例えば、レーザヘッド2が適正な位置にある場合、レーザヘッド2が適正な位置より遠い場合又はレーザヘッド2が適正な位置より近い場合を区別して、異なる信号を発信するように構成されている。信号には光や音を使用することができる。例えば、レーザヘッド2が適正な位置にある場合には青色のシグナルを点灯し、レーザヘッド2が適正な位置より遠い場合には赤色のシグナルを点灯し、レーザヘッド2が適正な位置より近い場合には黄色のシグナルを点灯するようにしてもよい。また、信号出力部33は、シグナルの点灯と点滅の組み合わせによって、レーザヘッド2の位置を知らせるようにしてもよい。
【0030】
ここで、
図3は、測距センサの作用を示す図であり、(a)はレーザヘッドが適正な位置にある場合、(b)はレーザヘッドが適正な位置より遠い場合、(c)はレーザヘッドが適正な位置より近い場合、を示している。
図3(a)〜
図3(c)において、説明の便宜上、レーザ光Lの焦点Fを黒点で表示している。なお、レーザ光Lの焦点Fの位置(すなわち、焦点距離)は、コリメートレンズ21aの位置を変更することにより任意に調整することができる。
【0031】
構造物の表面Sに対して、効率よく表面処理加工を行うには、レーザ光Lの焦点Fを表面Sの近傍に配置する必要がある。レーザ光Lの表面処理加工に有効な領域(例えば、焦点Fに対して±5〜10mm程度の領域)をΔtと定義すれば、
図3(a)に示したように、表面SからΔtの範囲に焦点Fが存在している状態を「適正な位置」として定義することができる。
【0032】
かかる定義に基づけば、レーザヘッド2が適正な位置より遠い場合とは、
図3(b)に示したように、焦点FがΔtに届いていない状態を意味し、レーザヘッド2が適正な位置より近い場合とは、
図3(c)に示したように、焦点FがΔtを通り越している状態を意味している。レーザヘッド2が適正な位置より遠い場合にはレーザ光Lの出力が弱く、レーザヘッド2が適正な位置より近い場合にはレーザ光Lの出力が強くなってしまうこととなる。
【0033】
そこで、本実施形態では、レーザヘッド2を適正な位置に適切に移動させるべく、レーザヘッド2が適正な位置にある場合、レーザヘッド2が適正な位置より遠い場合、レーザヘッド2が適正な位置より近い場合を区別して、異なる信号(例えば、青色、赤色、黄色)を発信するようにしている。したがって、赤色の点灯を視認した作業員はレーザヘッド2を表面Sに接近させ、黄色の点灯を視認した作業員はレーザヘッド2を表面Sから離隔させ、青色の点灯を視認した作業員はレーザヘッド2の位置を保持することができる。
【0034】
次に、第二実施形態に係る表面処理装置1について、
図4(a)及び
図4(b)を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、本発明の第二実施形態に係る表面処理装置を示す部分拡大図であり、(a)はブラシを構造物の表面に当接させた状態、(b)はブラシを構造物の表面に押し付けた状態、を示している。
【0035】
図4(a)及び
図4(b)に示した第二実施形態に係る表面処理装置1は、第一実施形態に係る表面処理装置1におけるカバー部材28を異なる構成のカバー部材4に置換したものである。具体的には、カバー部材4は、レーザ光Lを照射する照射窓(fθレンズ24)及びバキューム手段25の吸込口25bを囲うように配置された筒形状のカバー体41と、カバー体41の先端に配置されたブラシ42と、を備えている。
【0036】
ブラシ42は、構造物の表面Sに接触してカバー体41と表面Sとの隙間を埋めつつ、外部の空気をカバー体41内に通すことができるように構成されている。したがって、カバー部材4を用いることにより、表面Sの加工対象部分をカバー部材4で封止した状態で表面処理を行うことができ、その剥離物をバキューム手段25で効率よく回収することができ、塵芥の飛散を効果的に抑制することができる。
【0037】
また、ブラシ42は、
図4(a)に示したように、レーザ光Lの有効領域Δtの幅よりも短い長さを有していることが好ましい。また、レーザ光Lの焦点Fは、カバー体41の先端位置よりも遠く、かつ、ブラシ42の先端位置よりも近い位置に設定することが好ましい。この場合、ブラシ42の先端を構造物の表面Sに当接させるだけでレーザヘッド2を適正な位置に配置することができる。また、
図4(b)に示したように、ブラシ42を表面 Sに押し付けた場合であってもレーザヘッド2を適正な位置に配置することができる。
【0038】
ここで、
図5は、表面処理を行う場所の一例を示す図であり、(a)は橋梁の横桁開口部、(b)は橋梁の支承部、を示している。
【0039】
図5(a)に示したように、橋梁5の床版51の下には幅方向に横桁52が配置されており、横桁52には検査路を構成する開口部53が形成されている。この開口部53は、幅400mm×高さ600mm程度の大きさを有し、その外周には高さ100mm程度の鋼板により囲われている。この開口部53を形成する鋼板の内側部分の塗膜等を剥離する場合、従来の表面処理装置では開口部53に作業員が入り込んで作業しなければならず、表面処理作業に十分な空間を確保できないことがある。
【0040】
それに対して、上述した実施形態に係る表面処理装置1では、開口部53から離れた位置からでもレーザヘッド2を開口部53内に挿入することができ、レーザヘッド2の向き(レーザ光Lの照射方向)も任意に変更することができる。したがって、作業員が開口部53内に入り込まなくても、横桁52に沿って配置された足場から開口部53内の表面処理作業を容易に行うことができる。
【0041】
また、
図5(b)に示したように、橋梁5は、橋台54の上に配置された支承部55を介して主桁56が支持されている。この支承部55の外周(点線で囲んだ領域P)及び橋台54と主桁56との間における主桁56の下面(点線で囲んだ領域Q)は、狭隘部を形成していることから、作業員がこの隙間に入り込んだ場合であっても表面処理作業に十分な空間を確保できないことがある。
【0042】
上述した実施形態に係る表面処理装置1では、表面処理したい部分から離隔した位置からでもレーザヘッド2を所定の位置に配置することができ、レーザヘッド2の向き(レーザ光Lの照射方向)も任意に変更することができる。したがって、作業員が狭隘部に入り込まずに足場から表面処理を行うこともできるし、作業員が狭隘部に入り込んだ場合であっても楽な姿勢で表面処理作業を行うことができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態について、
図6(a)〜
図7(b)を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、本発明の第三実施形態に係る表面処理装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、を示している。
図7は、本発明の第四実施形態に係る表面処理装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、を示している。なお、上述した第一実施形態に係る表面処理装置1と同じ構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0044】
図6(a)及び
図6(b)に記載した第三実施形態に係る表面処理装置1は、板部材Wの側端部Wsの塗膜を剥離する際に使用する支持治具6を有している。支持治具6は、板部材Wの一方の面(例えば、上面)に接触する第一挟板61と、板部材Wの他方の面(例えば、下面)に接触する第二挟板62と、第一挟板61及び第二挟板62を連結する連結部材63と、第一挟板61及び第二挟板62に摺動可能に接続される支持部材64と、を備えている。
【0045】
第一挟板61は、一端に板部材Wの側端部Wsに係止可能な段差部61aを有し、他端に支持部材64の側部に係止可能なフック部61bを有している。第二挟板62も、同様に、一端に板部材Wの側端部Wsに係止可能な段差部62aを有し、他端に支持部材64の側部に係止可能なフック部62bを有している。連結部材63は、例えば、ボルト・ナット等の締結具であり、ナットを締め付けることによって第一挟板61と第二挟板62との距離を狭め、第一挟板61及び第二挟板62は板部材Wに押し付けられて固定される。
【0046】
支持部材64は、両側部に第一挟板61及び第二挟板62のフック部61b,62bを挿通可能な溝部64aと、中央部に形成された開口部64bと、を有している。溝部64aは、フック部61b,62bを挿通可能な断面L字形状を有している。開口部64bは、レーザヘッド2のカバー部材28を位置決めする段差部64cを有している。
【0047】
かかる支持治具6を用いることにより、支持治具6を板部材Wの側端部Wsに固定した状態で、レーザヘッド2を支持治具6にセットすることにより、
図6(b)に示したように、支持部材64の開口部64b及び第一挟板61及び第二挟板62の隙間にレーザ光Lを通過させて側端部Wsにレーザ光Lを照射することができる。
【0048】
また、
図6(a)に示したように、支持部材64及びレーザヘッド2を矢印方向に移動させることにより、側端部Wsの厚さ幅方向(例えば、図の上下方向)にレーザ光Lを照射することができる。すなわち、支持治具6は、板部材Wの側端部Wsにレーザヘッド2をスライド可能に支持するように構成されている。
【0049】
図7(a)及び
図7(b)に記載した第四実施形態に係る表面処理装置1は、板部材Wの上端部Wuの塗膜を剥離する際に使用する支持治具7を有している。支持治具7は、板部材Wの一方の面(例えば、右面)に接触する第一挟板71と、板部材Wの他方の面(例えば、左面)に接触する第二挟板72と、第一挟板71及び第二挟板72を板部材Wに固定する連結部材73と、第一挟板71及び第二挟板72に摺動可能に接続される支持部材74と、を備えている。
【0050】
第一挟板71及び第二挟板72は、例えば、
図7(a)に示したように、側面視でL字形状を有する板材であり、水平方向に延在する直線部には支持部材74を摺動可能に支持するレール71a,72aを有している。レール71a,72aの横幅は、
図7(b)に示したように、第一挟板71及び第二挟板72の横幅よりも大きく形成される。連結部材73は、例えば、ボルト・ナット等の締結具である。
【0051】
支持部材74は、下面にレール71a,72aに係止可能な爪部74aを有し、上面にレーザヘッド2を載置可能な凹部74bを有している。なお、
図7(b)では、説明の便宜上、レーザヘッド2の図を省略してある。
【0052】
かかる支持治具7を用いることにより、支持治具7を板部材Wの側面に固定した状態で、レーザヘッド2を支持治具7にセットすることにより、
図7(a)に示したように、板部材Wの上端部Wuにレーザ光Lを照射することができる。
【0053】
また、支持部材74を71a,72a上で矢印方向に移動させることにより、レーザヘッド2を板部材Wに接近させたり離隔させたりすることができ、上端部Wuの横幅方向(例えば、図の左右方向)にレーザ光Lを照射することができる。すなわち、支持治具7は、板部材Wの上端部Wuにレーザヘッド2をスライド可能に支持するように構成されている。
【0054】
上述した第一実施形態〜第四実施形態に係る表面処理装置1は、例えば、構造物の表面にコーティングされた塗膜や表面被覆材、構造物の表面に発生した錆や付着した汚れ等を剥離又は除去する処理(いわゆる、ケレン処理)を行う装置である。
【0055】
また、これらの実施形態に係る表面処理装置1は、
図5(a)及び(b)に示した橋梁の一部に使用されるものに限定されず、橋梁以外の鋼構造物やコンクリート構造物等の表面において適宜使用することができる。
【0056】
また、上述した表面処理装置1は、塗膜の剥離作業のみならず、構造物のコンクリート・樹脂・ライニング等をはつる処理や構造物の洗浄や除染等を行う処理にも使用することができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。