特許第6807024号(P6807024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807024
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/115 20060101AFI20201221BHJP
   H01R 13/40 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01R13/115 A
   H01R13/40 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-80527(P2017-80527)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-181631(P2018-181631A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢一
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−106083(JP,U)
【文献】 特開2002−063961(JP,A)
【文献】 実開昭56−075483(JP,U)
【文献】 特開2015−084310(JP,A)
【文献】 特開2014−232576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/10−13/14
H01R13/40−13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子と嵌合される雌端子であって、
上下方向に対向する天井壁と底壁とを有し、前記雄端子が挿入され、前後方向に開口する箱状の雌側本体部と、
前記雌側本体部の前記天井壁と前記底壁との間に設けられ、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第一接圧付与部と、
前記第一接圧付与部と上下方向に対向する位置に設けられ、前記雄端子に前記底壁側から接触して接圧を付与する第二接圧付与部とを備え、
前記第一接圧付与部と前記雄端子とが接触する第一接点部と、前記第二接圧付与部と前記雄端子とが接触する第二接点部とは、前後方向でずれて配されており、
前記第一接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧は、前記第二接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧より低くなっており、
前記第一接圧付与部及び前記第二接圧付与部は、前記雄端子の挿入方向と交差する方向に2つ配されており、
隣り合う前記第一接圧付与部の間に設けられ、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第三接圧付与部と、
前記第三接圧付与部と上下方向に対向する位置に設けられ、前記雄端子に前記底壁側から接触して接圧を付与する第四接圧付与部とを備え、
前記第三接圧付与部と前記雄端子とが接触する第三接点部と、前記第四接圧付与部と前記雄端子とが接触する第四接点部とは、前後方向でずれて配されており、
前記第三接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧は、前記第四接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧より高くなっている雌端子。
【請求項2】
前記第二接圧付与部は、前記第二接点部から前記底壁に向けて垂直に延びる第二垂直片を備え、
前記雄端子の挿入により、前記第二垂直片の端面が、前記底壁に当接する請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記第一接圧付与部は、前記雄端子の挿入方向と交差する方向に2つ配されており、
隣り合う前記第一接圧付与部の間には、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第三接圧付与部が設けられており、
前記第三接圧付与部は、前記雄端子と接触する第三接点部から前記天井壁に向けて垂直に延びる第三垂直片を備え、
前記雄端子の挿入により、前記第三垂直片の端面が、前記天井壁に当接する請求項1または請求項に記載の雌端子。
【請求項4】
雄端子と嵌合される雌端子であって、
上下方向に対向する天井壁と底壁とを有し、前記雄端子が挿入され、前後方向に開口する箱状の雌側本体部と、
前記雌側本体部の前記天井壁と前記底壁との間に設けられ、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第一接圧付与部と、
前記第一接圧付与部と上下方向に対向する位置に設けられ、前記雄端子に前記底壁側から接触して接圧を付与する第二接圧付与部とを備え、
前記第一接圧付与部と前記雄端子とが接触する第一接点部と、前記第二接圧付与部と前記雄端子とが接触する第二接点部とは、前後方向でずれて配されており、
前記第一接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧は、前記第二接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧より低くなっており、
前記第一接圧付与部は、前記雄端子の挿入方向と交差する方向に2つ配されており、
隣り合う前記第一接圧付与部の間には、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第三接圧付与部が設けられており、
前記第三接圧付与部は、前記雄端子と接触する第三接点部から前記天井壁に向けて垂直に延びる第三垂直片を備え、
前記雄端子の挿入により、前記第三垂直片の端面が、前記天井壁に当接する雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の雌端子の一例として、特開2014−53205号(下記特許文献1)に記載のメス端子が知られている。このメス端子は、板金をプレス加工、及び曲げ加工をして作られている。さらに、加工されたメス端子に対して、メッキ処理が施されている。メス端子は、オスタブ端子が挿入される角筒形のボックス部と、ボックス部の後側に電線の導体が圧着される導体圧着部とを有している。ボックス部の内部には、板バネと、タブ受部とが備えられている。板バネは、ボックス部の内部の上壁に設けられ、オスタブ端子と弾性的に接触する。タブ受部は、ボックス部の内部の下壁に設けられ、オスタブ端子と接触する。
【0003】
オスタブ端子は、板金をプレス加工、及び曲げ加工して作られている。さらに、加工されたオスタブ端子に対して、メッキ処理が施されている。オスタブ端子は、棒状をなすオス側本体部を有している。
【0004】
オス側本体部がメス端子のボックス部の内部に挿入されると、オス側本体部は板バネとタブ受部の間に挟まれる。これにより、オスタブ端子とメス端子とは弾性的に接触し、電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−53205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オスタブ端子をメス端子のボックス部に挿入する際、オスタブ端子のオス側本体部は、ボックス部の内部の板バネに弾性的に押さえつけられながら挿入されるため、オスタブ端子とメス端子との接触部では、メス端子に施されたメッキが摩耗する。特に、オスタブ端子を多挿抜させる必要がある場合、メッキの摩耗が増大することとなる。このようなメッキの摩耗を防ぐためには、一般的に、メス端子の板バネの接圧を下げる必要がある。しかしながら、メス端子の板バネの接圧を下げた場合、端子同士の接続信頼性が低下し、振動等により、端子同士の接続不良が生じやすくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される雌端子は、雄端子と嵌合される雌端子であって、上下方向に対向する天井壁と底壁とを有し、前記雄端子が挿入され、前後方向に開口する箱状の雌側本体部と、前記雌側本体部の前記天井壁と前記底壁との間に設けられ、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第一接圧付与部と、前記第一接圧付与部と上下方向に対向する位置に設けられ、前記雄端子に前記底壁側から接触して接圧を付与する第二接圧付与部とを備え、前記第一接圧付与部と前記雄端子とが接触する第一接点部と、前記第二接圧付与部と前記雄端子とが接触する第二接点部とは、前後方向でずれて配されており、前記第一接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧は、前記第二接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧より低くなっている。
このような構成にすると、雌側本体部の内部の底壁側から第二接圧付与部により雄端子に付与される接圧を高接圧とし、雌側本体部の内部の天井壁側から第一接圧付与部により雄端子に付与される接圧を低接圧とすることができる。
ここで、高接圧とは、嵌合された雄端子及び雌端子に振動等が加えられた際、雌端子と雄端子との接点部において、電気的接続が途切れない程度の接圧である。このような高接圧が雄端子に付与された状態で、雄端子を雌端子に挿抜すると、雄端子と雌端子との接点部に施されたメッキは摩耗する。一方、低接圧とは、高接圧より低い接圧であって、雄端子を雌端子に挿抜しても、雄端子と雌端子の接点部において、雌端子に施されたメッキが摩耗しない程度の接圧である。
このようにすることで、高接圧の第二接圧付与部と雄端子とが接触する第二接点部では、雌端子に施されたメッキは摩耗することとなるが、振動等の影響を受けにくくなり、雄雌両端子間の接続不良が生じにくくなる。一方、低接圧の第一接圧付与部と雄端子とが接触する第一接点部では、雌端子に施されたメッキの摩耗を防ぐことができるため、雄端子の多挿抜によるメッキの摩耗を防ぎつつ導通を確保することができる。従って、高接圧の第二接圧付与部ではメッキの摩耗を許容しつつも端子同士の接続信頼性が確保され、さらに低接圧の第一接圧付与部ではメッキの摩耗が防止され、雄端子の雌端子への多挿抜によっても導通が確保される。
【0008】
また、前記第一接圧付与部及び前記第二接圧付与部は、前記雄端子の挿入方向と交差する方向に2つ配されており、隣り合う前記第一接圧付与部の間に設けられ、前記雄端子に前記天井壁側から接触して接圧を付与する第三接圧付与部と、前記第三接圧付与部と上下方向に対向する位置に設けられ、前記雄端子に前記底壁側から接触して接圧を付与する第四接圧付与部とを備え、前記第三接圧付与部と前記雄端子とが接触する第三接点部と、前記第四接圧付与部と前記雄端子とが接触する第四接点部とは、前後方向でずれて配されており、前記第三接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧は、前記第四接圧付与部によって前記雄端子に付与される接圧より高くなっていることとしても良い。
このような構成にすると、雄端子に対して、底壁側からは2つの第二接圧付与部により高接圧を付与し、天井壁側からは1つの第三接圧付与部により、高接圧を付与することとなる。
例えば、雄端子が雄ハウジング内に収容されている場合、雄端子と雌端子とを嵌合させ易くするため、雄ハウジング内の雄端子にはがたつきを持たせている場合もある。このように雄端子にがたつきを持たせている場合であって、低接圧の第一接圧付与部と高接圧の第二接圧付与部とが一対しかない場合においては、雄端子が高接圧の第二接圧付与部の第二接点部を通過する時、雄端子が雄ハウジング内でがたつくことで天井壁側に変位し、雄端子と低接圧の第一接圧付与部とが高接圧で接して摺動する。これにより、第一接圧付与部のメッキが摩耗することとなる。
しかし、上述のように、底壁側からだけでなく、天井壁側からも第三接圧付与部により高接圧を付与するようにすることで、雄端子ががたつくような場合においても、第一接圧付与部のメッキが摩耗することなく、雄端子を雌側本体部の内部に挿抜することができる。
【0009】
また、前記第二接圧付与部は、前記第二接点部から前記底壁に向けて垂直に延びる第二垂直片を備え、前記雄端子の挿入により、前記第二垂直片の端面が、前記底壁に当接することとしても良い。
このような構成にすると、雄端子が雌側本体部の内部に挿入されると、雄端子と接する第二接圧付与部の第二接点部は、底壁に向けて変位する。それに伴い、第二接圧付与部の第二垂直片も底壁に向けて変位し、第二垂直片の端面は底壁に当接する。しかし、第二垂直片は、第二接点部から底壁に向けて垂直に延びているため、ほとんど撓まないことから、第二垂直片が底壁に当接すると、第二接点部は、底壁に向けてほとんど変位しない。従って、第二接圧付与部は雄端子に対して高い接圧を付与することができる。
【0010】
また、前記第三接圧付与部は、前記第三接点部から前記天井壁に向けて垂直に延びる第三垂直片を備え、前記雄端子の挿入により、前記第三垂直片の端面が、前記天井壁に当接することとしても良い。
このような構成にすると、上述の第二接圧付与部と同様、第三接圧付与部は雄端子に対して高い接圧を付与することができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示される雌端子によれば、振動対策を行いつつ端子同士の接続信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における雌端子の斜視図
図2】雌端子の正面図
図3】雌端子の平面図
図4】雌端子の背面図
図5図2におけるA−A断面図
図6図2におけるB−B断面図
図7図2におけるC−C断面図
図8図3におけるD−D断面図
図9図3におけるE−E断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
図1から図9を参照して本実施形態を説明する。
本実施形態の雌端子10は、銅板金を打ち抜き加工及び曲げ加工することにより形成されている。さらに、加工された雌端子10に対して、銀等でメッキ処理が施されている。雌端子10は、図1に示すように、雌側本体部11と、雌側本体部11の後方に設けられた電線接続部18とを備えている。雌端子10は、図示しない雄端子と嵌合される。
【0014】
雄端子は、図示しないものの、板状をなしており、板金を打ち抜き等することにより形成されている。さらに、加工された雄端子に対して、銀等でメッキ処理が施されている。
【0015】
雌側本体部11は、図5に示すように、箱状をなしており、前後方向に開口している。雌側本体部11の内部には、上下方向に対向する天井壁12と底壁15とを有している。以降の説明では、雌端子10の雄端子との嵌合方向を前方、雌側本体部11の底壁15から天井壁12に向かう方向を上方とする。
【0016】
天井壁12は、図2図5から図7に示すように、雄端子に低接圧を付与する2つの第一接圧付与部20と、雄端子に高接圧を付与する1つの第三接圧付与部40とを備えている。
ここで、高接圧とは、嵌合された雄端子及び雌端子10に振動等が加えられた際、雌端子10と雄端子との接点部において、電気的接続が途切れない程度の接圧である。このような高接圧が雄端子に付与された状態で、雄端子を雌端子10に挿抜すると、雄端子と雌端子10との接点部に施されたメッキは摩耗する。
一方、低接圧とは、高接圧より低い接圧であって、雄端子を雌端子10に挿抜しても、雄端子と雌端子10の接点部において、雌端子10に施されたメッキが摩耗しない程度の接圧である。
【0017】
2つの第一接圧付与部20は、図5に示すように、天井壁12の前端縁から雌側本体部11の内方に折り返された形状をなす第一基端部13を介して、後方に延びて形成されている。第一接点部21は、雌側本体部11の後端側に設けられており、雌側本体部11の内部においてエンボス状に下方に突出して形成されている。第一接点部21は図示しない雄端子と接触する。
【0018】
第三接圧付与部40は、図2及び図に示すように、2つの第一接圧付与部20の間に配されている。第三接圧付与部40は、図示しない雄端子と接触する第三接点部41と、第三接点部41から天井壁12側の第一基端部13に向けて傾斜する第三傾斜部42と、第三接点部41から天井壁12に向けて垂直に延びる第三垂直片43とを備えている。第三接点部41は、低接圧を付与する第一接圧付与部20の第一接点部21より前方に設けられている。第三垂直片43の端面44と天井壁12とは当接していないが、図示しない雄端子が雌側本体部11の内部に挿入されると、端面44と天井壁12とは当接される。端面44が天井壁12に当接した状態で、さらに雄端子を雌側本体部11の内部に挿入すると、第三垂直片43は雄端子により天井壁12に抑えつけられることとなる。しかし、第三接点部41から天井壁12に向けて垂直に延びているため、第三接圧付与部40が撓むことはほとんどない。そのため、第三接圧付与部40が雄端子に付与する接圧は高接圧となる。
【0019】
底壁15は、図2図5から図7に示すように、雄端子に高接圧を付与する2つの第二接圧付与部30と、雄端子に低接圧を付与する1つの第四接圧付与部50とを備えている。
【0020】
2つの第二接圧付与部30は、図2図5図7に示すように、第一接圧付与部20と上下方向に対向する位置に設けられている。また、2つの第二接圧付与部30は、図5に示すように、図示しない雄端子と接触する第二接点部31と、第二接点部31から底壁15に連なる第二基端部16に向けて傾斜する第二傾斜部32と、第二接点部31から底壁15に向けて垂直に延びる第二垂直片33とを備えている。第二垂直片33の端面34と底壁15とは当接していないが、図示しない雄端子が雌側本体部11の内部に挿入されると、端面34と底壁15とは当接される。第二基端部16は、底壁15の前端縁から雌側本体部11の内方に折り返された形状をなしている。第二接点部31は、後述する第四接点部51より前方に設けられている。このように、第二接圧付与部30は、第三接圧付与部40と同様の形状をなしており、雄端子に対して高接圧を付与することができる。
【0021】
第四接圧付与部50は、図2図6に示すように、第三接圧付与部40と上下方向に対向する位置に設けられている。第四接圧付与部50は、第二基端部16を介して、後方に延びて形成されている。第四接点部51は、雌側本体部11の後端側に設けられており、雌側本体部11の内部においてエンボス状に上方に突出して形成されている。第四接点部51は図示しない雄端子と接触する。
【0022】
雌側本体部11の天井壁12の後方には、図5に示すように、第一過度撓み防止部14が設けられている。第一過度撓み防止部14は、天井壁12の一部を叩いて、天井壁12の反対面より内方に押し出して形成されている。これにより、図示しない雄端子の挿抜によって第一接圧付与部20が上方に撓んだとしても、第一接圧付与部20が第一過度撓み防止部14に下方から当たることで、第一接圧付与部20が過度に撓んで塑性変形することを防止している。また、第三接圧付与部40が、図示しない雄端子の挿入により第三垂直片43が後方に押されても、第三垂直片43が第一過度撓み防止部14に前方から当たることで、第三接圧付与部40が過度に撓んで塑性変形することを防止している。
【0023】
雌側本体部11の底壁15の後方には、図5に示すように、第二過度撓み防止部17が設けられている。第二過度撓み防止部17も、第一過度撓み防止部14と同様に形成され、第二接圧付与部30及び第四接圧付与部50が過度に撓んで塑性変形することを防止している。
【0024】
電線接続部18は、図5に示すように、底壁15の後端から後方に突出して形成されている。電線接続部18には、図示しない電線が接続されており、雌端子10と電線とは電気的に導通している。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。
雄端子を雌端子10の雌側本体部11の内部に挿入時、図示しないものの、雄端子は底壁15側の高接圧を付与する2つの第二接圧付与部30と、高接圧を付与する天井壁12側の第三接圧付与部40に高接圧で接触する。これにより、雄端子と第二接圧付与部30の第二接点部31とは摺動する。また、雄端子と第三接圧付与部40の第三接点部41とは摺動する。これによって、雌端子10の第二接圧付与部30及び第三接圧付与部40に施されたメッキは摩耗するが、後述するように振動によって電気的接続が途切れることはない。
一方、第二接点部31の上下方向に対向する位置には第一接圧付与部20の第一傾斜部22が設けられており、第三接点部41の上下方向に対向する位置には第四接圧付与部50の第四傾斜部52が設けられている。しかし、雄端子には、底壁15側及び天井壁12側の双方から高接圧が付与されているので、第一傾斜部22及び第四傾斜部52には、上下方向に対向する位置に高接圧を付与する第二接点部31及び第三接点部41があっても、高接圧は付与されず、第一傾斜部22及び第四傾斜部52に施されたメッキは摩耗しない。
【0026】
雄端子を雌側本体部11の内部にさらに挿入していくと、図示しないものの、雄端子は、低接圧を付与する第一接圧付与部20の第一接点部21及び、低接圧を付与する第四接圧付与部50の第四接点部51と接触する。これによって、雄端子と第一接点部21とは摺動し、また、雄端子と第四接点部51とは摺動する。しかし、第一接圧付与部20及び第四接圧付与部50が雄端子に付与する接圧は低接圧のため、第一接点部21、及び第四接点部51に施されたメッキは摩耗しない。
【0027】
雄端子及び雌端子10に振動が加えられると、雄端子と雌端子10との接点も揺れ動くこととなるが、上述の通り、雄端子には、2つの第二接圧付与部30及び1つの第三接圧付与部40により高接圧が付与されているので、雄端子と雌端子10との間の電気的接続は、途切れることはなく持続されることとなる。
【0028】
雄端子を雌側本体部11の内部から抜く場合においても、上述の雄端子の挿入時と同様、低接圧を付与する第一接圧付与部20の第一接点部21及び第四接圧付与部50の第四接点部51ではメッキは摩耗しない。また、高接圧を付与する第二接圧付与部30の第二接点部31及び第三接圧付与部40の第三接点部41ではメッキは摩耗する。従って、高接圧を付与する第二接圧付与部30及び第三接圧付与部40と雄端子との摺動によるメッキの摩耗を許容したとしても、低接圧を付与する第一接圧付与部20及び第四接圧付与部50と雄端子との摺動によるメッキの摩耗を防ぐことができる。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、雌側本体部11の内部の底壁15側から第二接圧付与部30により雄端子に付与される接圧を高接圧とし、雌側本体部11の内部の天井壁12側から第一接圧付与部20により雄端子に付与される接圧を低接圧とすることができる。
ここで、高接圧とは、嵌合された雄端子及び雌端子10に振動等が加えられた際、雌端子10と雄端子の接点部において、電気的接続が途切れない程度の接圧である。このような高接圧が雄端子に付与された状態で、雄端子を雌端子10に挿抜すると、雄端子と雌端子10との接点部に施されたメッキは摩耗する。一方、低接圧とは、高接圧より低い接圧であって、雄端子を雌端子10に挿抜しても、雄端子と雌端子10の接点部において、雌端子10に施されたメッキが摩耗しない程度の接圧である。
このようにすることで、高接圧の第二接圧付与部30と雄端子とが接触する第二接点部31では、雌端子10に施されたメッキは摩耗することとなるが、振動等の影響を受けにくくなり、雄雌両端子間の接続不良が生じにくくなる。一方、低接圧の第一接圧付与部20と雄端子とが接触する第一接点部21では、雌端子10に施されたメッキの摩耗を防ぐことができるため、雄端子の多挿抜によるメッキの摩耗を防ぎつつ導通を確保することができる。従って、高接圧の第二接圧付与部30ではメッキの摩耗を許容しつつも端子同士の接続信頼性が確保され、さらに低接圧の第一接圧付与部20ではメッキの摩耗が防止され、雄端子の雌端子10への多挿抜によっても導通が確保される。
【0030】
また、雄端子に対して、底壁15側からは2つの第二接圧付与部30により高接圧を付与し、天井壁12側からは1つの第三接圧付与部40により、高接圧を付与することとなる。
例えば、雄端子が雄ハウジング内に収容されている場合、雄端子と雌端子10とを嵌合させ易くするため、雄ハウジング内の雄端子にはがたつきを持たせている場合もある。このように雄端子にがたつきを持たせている場合であって、低接圧の第一接圧付与部20と高接圧の第二接圧付与部30とが一対しかない場合においては、雄端子が高接圧の第二接圧付与部30の第二接点部31を通過する時、雄端子が雄ハウジング内でがたつくことで天井壁12側に変位し、雄端子と低接圧の第一接圧付与部20とが高接圧で接して摺動する。これにより、第一接圧付与部20のメッキが摩耗することとなる。
しかし、上述のように、底壁15側からだけでなく、天井壁12側からも第三接圧付与部40により高接圧を付与するようにすることで、雄端子ががたつくような場合においても、第一接圧付与部20のメッキが摩耗することなく、雄端子を雌側本体部11の内部に挿抜することができる。
【0031】
また、雄端子が雌側本体部11の内部に挿入されると、雄端子と接する第二接圧付与部30の第二接点部31は、底壁15に向けて変位する。それに伴い、第二接圧付与部30の第二垂直片33も底壁15に向けて変位し、第二垂直片33の端面34は底壁15に当接する。しかし、第二垂直片33は、第二接点部31から底壁15に向けて垂直に延びているため、ほとんど撓まないことから、第二垂直片33が底壁15に当接すると、第二接点部31は、底壁15に向けてほとんど変位しない。従って、第二接圧付与部30は雄端子に対して高い接圧を付与することができる。
【0032】
また、上述の第二接圧付与部30と同様、第三接圧付与部40は雄端子に対して高い接圧を付与することができる。
【0033】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、高接圧を付与する第二接圧付与部30及び第三接圧付与部40は雌側本体部11と一体としていたが、別体としても良い。
(2)上記実施形態では、第一接圧付与部20及び第三接圧付与部40は天井壁12の前端に設けられた第一基端部13を介して後方に延びて形成されていたが、
天井壁12の後端に基端部を設け、その基端部より前方に延びて形成されても良い。同様に、第二接圧付与部30及び第四接圧付与部50は底壁15の前端に設けられた第二基端部16を介して後方に延びて形成されていたが、底壁15の後端に基端部を設け、その基端部より前方に延びて形成されても良い。
(3)上記実施形態では、高接圧を付与する第二接点部31及び第三接点部41の前後方向の位置は、低接圧を付与する第一接点部21及び第四接点部51の前方としていたが、後方としても良い。
【符号の説明】
【0034】
10…雌端子
11…雌側本体部
12…天井壁
15…底壁
20…第一接圧付与部
21…第一接点部
30…第二接圧付与部
31…第二接点部
33…第二垂直片
34…端面
40…第三接圧付与部
41…第三接点部
43…第三垂直片
44…端面
50…第四接圧付与部
51…第四接点部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9