特許第6807025号(P6807025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807025
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
   H01R13/52 301H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-83324(P2017-83324)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-181747(P2018-181747A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 湧太
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−28853(JP,A)
【文献】 特開2004−172071(JP,A)
【文献】 特開2012−33348(JP,A)
【文献】 特開2014−135194(JP,A)
【文献】 特開2012−33349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 − 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のケースに設けられた取付孔に挿入されて取り付けられるコネクタであって、
電線と、
前記電線の端末に圧着される圧着部を有し、前記圧着部の前方に端子接続部が設けられた端子と、
前記取付孔に嵌合する機器側嵌合部を有し、前記機器側嵌合部の外周に嵌着溝が周設され、前記機器側嵌合部よりも後方の位置で前記圧着部が埋設されているフロントハウジングと、
前記機器側嵌合部の前記嵌着溝に嵌着されたゴムリングと、
前方に開口したフロントフード部を有するとともに、前記フロントハウジングから後方に引き出された前記電線を覆って後方に開口したリアフード部が設けられたリアハウジングと、
前記フロントハウジングと前記リアハウジングの間に挟持されたハウジング間シール部と、
前記リアフード部の内周面と前記電線の外周面との間に挟持された電線シール部と、
前記フロントハウジングの内周面と前記電線の外周面とを水密に保持する第2電線シール部と、を備え、
前記フロントハウジングは、前記フロントフード部の内部に嵌合するハウジング側嵌合部を有し、
前記ハウジング間シール部は、前記フロントフード部の内周面と前記ハウジング側嵌合部の外周面との間に挟持されているとともに、
前記第2電線シール部は、前記ハウジング間シール部と重畳した位置において、前記ハウジング側嵌合部の内周面と前記電線の外周面との間に設けられているコネクタ。
【請求項2】
前記リアフード部の内部に装着され、前記電線シール部を保持するリアホルダを備えた請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器のケースに設けられた取付孔に嵌合可能とされた防水コネクタとして、特開2008−269858号公報(下記特許文献1)に記載のコネクタが知られている。このコネクタは、電線の端末に圧着接続された端子と、圧着部分を覆うようにして成形された一次樹脂成形部材と、一次樹脂成形部材を覆うようにして成形された二次樹脂成形部材とを備えて構成されている。二次樹脂成形部材の外周面にはゴムリングが装着されており、コネクタが電気機器に固定されると、電気機器のハウジングに設けられた取付孔の内周壁に隙間なく嵌合し、電気機器の内部がシールされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−269858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコネクタでは電線の圧着部分の外周にゴムリングが装着されているため、例えば電線径が大きくなった場合に一次樹脂成形部材と二次樹脂成形部材の双方を大径化する必要があり、さらに電気機器の取付孔の間口寸法を大径化する必要がある。電気機器の取付孔の間口寸法を大径化するには、電気機器側の設計変更も行う必要があり、コネクタ側の設計変更だけで電線の大径化を実現できなくなる。したがって、今後の大電流化に対して迅速に対応するためには、電線径が大きくなった場合でも電気機器の取付孔の間口寸法を変更しないで済むことが望ましいといえる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるコネクタは、機器のケースに設けられた取付孔に挿入されて取り付けられるコネクタであって、電線と、前記電線の端末に圧着される圧着部を有し、前記圧着部の前方に端子接続部が設けられた端子と、前記取付孔に嵌合する機器側嵌合部を有し、前記機器側嵌合部の外周に嵌着溝が周設され、前記機器側嵌合部よりも後方の位置で前記圧着部が埋設されているフロントハウジングと、前記機器側嵌合部の前記嵌着溝に嵌着されたゴムリングとを備えた構成とした。
【0006】
このような構成によると、フロントハウジングにおける圧着部が埋設された部分を機器側嵌合部よりも後方の位置に設けたから、電線径が大きくなった場合に圧着部が大きくなり、圧着部が埋設された部分が大きくなるものの、機器側嵌合部を大きくしなくてもよい。したがって、機器側嵌合部が挿入される取付孔の間口寸法を変更しなくてもよい。
【0007】
本明細書によって開示されるコネクタは、以下の構成としてもよい。
前記フロントハウジングから後方に引き出された前記電線を覆って後方に開口したリアフード部が設けられたリアハウジングと、前記フロントハウジングと前記リアハウジングの間に挟持されたハウジング間シール部と、前記リアフード部の内周面と前記電線の外周面との間に挟持された電線シール部と、前記リアフード部の内部に装着され、前記電線シール部を保持するリアホルダとを備えた構成としてもよい。
【0008】
このような構成によると、フロントハウジングから後方に引き出された電線とリアフード部との間を電線シール部によってシールすることができるとともに、フロントハウジングとリアハウジングの間をハウジング間シール部によってシールすることができる。
【0009】
仮に、フロントハウジングとリアハウジングを一体に成形しようとした場合、リアフード部の内周面を成形する金型を後方に引き抜くことになり、金型によって電線に傷が付いてしまう。そこで、上記構成のようにフロントハウジングとリアハウジングの2部材に分けると、電線のない状態でリアフード部の内周面を成形できるため、電線に傷が付くことを防ぐことができる。
【0010】
前記リアハウジングは、前方に開口したフロントフード部を有し、前記フロントハウジングは、前記フロントフード部の内部に嵌合するハウジング側嵌合部を有し、前記フロントフード部の内周面と前記ハウジング側嵌合部の外周面との間に前記ハウジング間シール部が挟持されている構成としてもよい。
【0011】
このような構成によると、リアハウジングを電線に先通ししておき、フロントハウジングを成形した後、リアハウジングをフロントハウジングに組み付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書によって開示されるコネクタによれば、電線径が大きくなった場合に機器側嵌合部を大きくしなくてもよく、機器側嵌合部が挿入される取付孔の間口寸法を変更しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コネクタの平面図
図2】コネクタの正面図
図3】コネクタの側面図
図4図2におけるA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
実施形態を図1から図4の図面を参照しながら説明する。本実施形態のコネクタ10は、機器のケースCに設けられた取付孔Hに挿入されて取り付けられる防水コネクタである(図4参照)。コネクタ10は、図1に示すように、複数の端子20、これらの端子20を保持するハウジング30、ハウジング30を覆うシールドブラケット40、ハウジング30の後方に引き出された複数の電線W、複数の電線Wを一括して覆う編組線50、編組線50をシールドブラケット40にかしめて固定するかしめリング60などを備えて構成されている。
【0015】
電線Wは、導電性の金属素線を複数束ねた芯線W1と、芯線W1を覆う絶縁性の樹脂からなる絶縁被覆W2とからなる。
【0016】
端子20は図示しない端子台にボルト締結される雄端子であって、図4に示すように、相手端子に接続される端子接続部21と、端子接続部21の後方に連なって設けられた電線接続部22とを備えて構成されている。端子接続部21は、円孔形状のボルト孔23が貫通して設けられた平板状の部分とされ、電線接続部22の前縁から斜め前方に延びるように傾斜している。一方、電線接続部22は、電線Wの芯線W1が接続された芯線接続部24と、電線Wの絶縁被覆W2に圧着された圧着部25とを備えて構成されている。芯線接続部24は端子接続部21と同じく平板状の部分とされ、芯線接続部24の上面には芯線W1が抵抗溶接や超音波溶接等の溶着手段によって溶着されている。圧着部25は一対のバレル片を備え、両バレル片を絶縁被覆W2に両側から巻き付けるようにして圧着されている。
【0017】
ハウジング30は合成樹脂製であって、フロントハウジング70とリアハウジング80の2部材からなり、フロントハウジング70は、端子20と一体に成形されている。フロントハウジング70は、図4に示すように、端子20の電線接続部22と、電線接続部22から後方に引き出された電線Wの前端部WFと、をモールドした複数の樹脂モールド部71と、各樹脂モールド部71の両側に配された複数の保護壁72とを備えて構成されている。
【0018】
電線Wの前端部WFの外周面には接着剤90が全周に亘って塗布されており、この接着剤90を覆うようにして樹脂モールド部71が成形されている。接着剤90により絶縁被覆W2の外周面を伝って電線接続部22に水が浸入することが抑制されている。
【0019】
図1に示すように、複数の樹脂モールド部71は複数の端子20にそれぞれ設けられている。複数の保護壁72は、隣り合う一対の端子接続部21の間にそれぞれ1つずつ設けられ、両側に位置する一対の端子接続部21の外側にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0020】
樹脂モールド部71は、図4に示すように、機器のケースCの取付孔Hに嵌合する機器側嵌合部73を有している。機器側嵌合部73は、電線接続部22の芯線接続部24の途中位置から圧着部25の前端位置との間に設けられており、図1に示すように、複数の樹脂モールド部71と直交する配置で単一の部材として設けられている。機器側嵌合部73の外周面には嵌着溝75が周設されている。嵌着溝75にはゴムリング91が嵌着されている。機器側嵌合部73を機器のケースCの取付孔Hに嵌合させると、ゴムリング91が嵌着溝75の底面と取付孔Hの内周面との間に挟持され、機器のケースCの内部がシールされる。
【0021】
樹脂モールド部71における機器側嵌合部73の後方にはハウジング側嵌合部74が設けられている。ハウジング側嵌合部74の外周面には装着溝76が周設されている。装着溝76にはハウジング間シール部92が装着されている。ハウジング間シール部92は円筒状をなすゴムリングとされ、前後方向において接着剤90と同じ領域に配されている。ハウジング側嵌合部74の前端部は圧着部25の外周に位置しており、機器側嵌合部73よりも一回り大きめとされている。
【0022】
リアハウジング80は、電線Wを挿通させる挿通孔81が設けられた挿通板部82と、挿通板部82から円筒状をなして前方に突出し前方に開口したフロントフード部83と、挿通板部82から円筒状をなして後方に突出し後方に開口したリアフード部84とを有している。フロントフード部83とリアフード部84は同軸上に配置され、フロントフード部83がリアフード部84よりも一回り大きめとされている。リアハウジング80は、各電線Wを先通ししておき、フロントハウジング70を成形した後、フロントハウジング70に後方から組み付けられる。
【0023】
挿通板部82の挿通孔81から後方に引き出された電線Wはリアフード部84に覆われた状態で後方に延出しており、リアフード部84の後端開口から外部に露出される。フロントフード部83の内部にハウジング側嵌合部74を嵌合させると、ハウジング間シール部92が装着溝76の底面とフロントフード部83の内周面との間に挟持され、両ハウジング70、80間から電線Wへの浸水が阻止される。
【0024】
リアフード部84の内部には電線シール部93が装着されている。電線シール部93はハウジング間シール部92よりも厚みのある防水ゴム栓とされ、電線Wを通す通し孔94を有している。電線シール部93は、電線Wの外周面とリアフード部84の内周面との間に挟持され、リアフード部84から挿通板部82への浸水が阻止される。また、リアフード部84の内部にはリアホルダ85が装着されている。リアホルダ85は、リアフード部84の被ロック部87に対して内側から嵌まり込んで前方から係止するロック部86を有している。リアホルダ85は電線シール部93に後方から当接する位置に配されており、電線シール部93の抜け止めを行っている。
【0025】
ハウジング30の外周にはシールドブラケット40が装着されている。図1に示すように、シールドブラケット40は、横長の筒状をなす筒状部41と、筒状部41の両側に配された一対の取付部42とを備えて構成されている。取付部42は、機器のケースCに取り付け固定される部分である。一方、筒状部41は、ハウジング30をシールドする部分であり、図3および図4に示すように、かしめリング60を全周に亘ってかしめることで編組線50が筒状部41の外周面に圧着されている。
【0026】
さて、本実施形態のコネクタ10において電線Wの電線径が大きくなった場合には、圧着部25が大きくなり、これに伴ってハウジング側嵌合部74が大きくなる。さらに、ハウジング側嵌合部74が内部に嵌合するフロントフード部83が大きくなり、フロントフード部83の外周に配されるシールドブラケット40も大きくなる。しかしながら、機器側嵌合部73は圧着部25の前方に配置されているため、機器側嵌合部73が大きくなることはなく、機器のケースCの取付孔Hの間口寸法を変更しなくてもよい。つまり、コネクタ10側の設計変更のみを行えばよく、機器側の設計変更を行わなくてもよいという利点がある。したがって、本実施形態のコネクタ10によると、今後の大電流化に対して迅速に対応することができる。
【0027】
さらに詳細に説明すると、フロントハウジング70における圧着部25が埋設された部分は嵌着溝75の後方に配されている。嵌着溝75が形成された部分では直径が小さくなっているため、この部分に圧着部25を配設しようとすると、機器側嵌合部73を大きくせざるを得ない。その点、本実施形態では嵌着溝75の後方に圧着部25を配設しているため、機器側嵌合部73を大きくしなくてもよい。また、圧着部25の外周においては上下両側を含む全周に溝部77、78が形成されており、仮に圧着部25が大きくなったとしても上側の溝部77と下側の溝部78をなくして圧着部25の上下方向の位置を微調整することで電線Wの大径化に対応することができる。すなわち、フロントハウジング70において溝部77、78が形成された部分は、機器側嵌合部73とハウジング側嵌合部74をつなぐつなぎ部79であって、圧着部25が埋設された部分の前端位置は、前後方向においてつなぎ部79の前端位置と一致している。
【0028】
以上のように本実施形態では、フロントハウジング70における圧着部25が埋設された部分を機器側嵌合部73よりも後方の位置に設けたから、電線径が大きくなった場合に圧着部25が大きくなり、圧着部25が埋設された部分が大きくなるものの、機器側嵌合部73を大きくしなくてもよい。したがって、機器側嵌合部73が挿入される取付孔Hの間口寸法を変更しなくてもよい。
【0029】
フロントハウジング70から後方に引き出された電線Wを覆って後方に開口したリアフード部84が設けられたリアハウジング80と、フロントハウジング70とリアハウジング80の間に挟持されたハウジング間シール部92と、リアフード部84の内周面と電線Wの外周面との間に挟持された電線シール部93と、リアフード部84の内部に装着され、電線シール部93を保持するリアホルダ85とを備えた構成としてもよい。
【0030】
このような構成によると、フロントハウジング70から後方に引き出された電線Wとリアフード部84との間を電線シール部93によってシールすることができるとともに、フロントハウジング70とリアハウジング80の間をハウジング間シール部92によってシールすることができる。
【0031】
仮に、フロントハウジング70とリアハウジング80を一体に成形しようとした場合、リアフード部84の内周面を成形する金型を後方に引き抜くことになり、金型によって電線Wに傷が付いてしまう。そこで、上記構成のようにフロントハウジング70とリアハウジング80の2部材に分けると、電線のない状態でリアフード部84の内周面を成形できるため、電線Wに傷が付くことを防ぐことができる。
【0032】
リアハウジング80は、前方に開口したフロントフード部83を有し、フロントハウジング70は、フロントフード部83の内部に嵌合するハウジング側嵌合部74を有し、フロントフード部83の内周面とハウジング側嵌合部74の外周面との間にハウジング間シール部92が挟持されている構成としてもよい。
【0033】
このような構成によると、リアハウジング80を電線Wに先通ししておき、フロントハウジング70を成形した後、リアハウジング80をフロントハウジング70に組み付けることができる。
【0034】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態ではフロントハウジング70とリアハウジング80が別体に形成されたハウジング30を例示しているものの、フロントハウジング70とリアハウジング80が一体に形成されたハウジングとしてもよい。
【0035】
(2)上記実施形態ではリアホルダ85がリアフード部84の内部に装着されているものの、リアフード部の外周側に嵌合するフード部を有するリアホルダとしてもよい。
【0036】
(3)上記実施形態ではハウジング間シール部92が軸シール構造とされているものの、ハウジング間シール部を面シール構造としてもよい。
【0037】
(4)上記実施形態では電線Wの芯線W1が芯線接続部24に溶着されているものを例示したが、芯線接続部が一対のバレル片を有し、一対のバレル片が芯線W1に圧着されるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…コネクタ
20…端子
21…端子接続部
25…圧着部
70…フロントハウジング
73…機器側嵌合部
74…ハウジング側嵌合部
75…嵌着溝
80…リアハウジング
83…フロントフード部
84…リアフード部
85…リアホルダ
91…ゴムリング
92…ハウジング間シール部
93…電線シール部
C…ケース
H…取付孔
W…電線
図1
図2
図3
図4