特許第6807059号(P6807059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807059
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】水面清掃船
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/32 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   B63B35/32 C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-135425(P2016-135425)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-226403(P2017-226403A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】592170411
【氏名又は名称】船山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517079803
【氏名又は名称】特定非営利活動法人地域リサイクル推進機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504024597
【氏名又は名称】独立行政法人水資源機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】岡村 敏和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 恭央
(72)【発明者】
【氏名】井村 真己
(72)【発明者】
【氏名】町田 輝次
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−245838(JP,A)
【文献】 特開平11−020781(JP,A)
【文献】 実開昭54−018895(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0087119(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0018385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状になる網の先端開口部面に円形又は多角形の第1の枠体を有する芥収納網と、前記第1の枠体と係合し、前記収納網の先端開口面を船体の進行方向に対向するように、船体の両側面に第2の枠体を設置し、前記芥収納網の第1の枠体と船体に設けた第2の枠体をそれぞれ係合する係合手段を設け、前記船体の進行方向前側に前記第1の枠体が配置されると共に前記船体の進行方向後側に前記第2の枠体が配置され、前記第2の枠体の開口面に前記第1の枠体の開口面を重ねたとき前記第1の枠体が前記第2の枠体を前記船体の進行方向後側に通り抜けないような大きさに設定され、芥集収の際に船体の両側に設置した一対の芥収納網で船体を進行させ水面を清掃することを特徴とする水面清掃船。
【請求項2】
前記第2の枠体は、前記芥収納網の先端開口面の高さを調整できるように、船体の両側面に第2の枠体の上下高さを調整可能に設置してなることを特徴とする前記請求項1記載の水面清掃船。
【請求項3】
前記係合手段は、前記芥収納網の先端開口面の高さを調整できるように、前記第1の枠体前記第2の枠体の係合位置を上下に調整できるようにしたことを特徴とする前記請求項1記載の水面清掃船。
【請求項4】
前記係合手段は、前記第2の枠体の上部に突出された網釣り具及び前記芥収納網の第1の枠体に設けられた第一の枠体吊下げベルトからなり、第一の枠体吊下げベルトに前記網釣り具が突き刺しされる取り付け穴が複数個形成されてなることを特徴とする前記請求項1乃至3記載の水面清掃船。
【請求項5】
前記芥収納網は、紐などにより開口部を閉じることができるよう閉止手段を設けたことを特徴とする前記請求項1乃至4記載の水面清掃船。
【請求項6】
前記芥収納網は、前記第1の枠体の開口面の反対側の底部を開口できる開口手段を有してなることを特徴とする前記請求項1乃至4記載の水面清掃船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面上に浮遊する塵芥物を回収する水面清掃船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すような水面清掃船が開示されている。それによると、船本体1の中央部にその船主側より船尾側に向けて導水路2を設け、導水路2の入り口部近傍に回転円板3を備えた水流加速ローター4を取り付け、この水流加速ローター4の下流側に金網等で形成された回収槽5を配置して浮遊物を回収槽5へ捕集するようにしたものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、双胴船体2、3間に、浮遊物回収ドラム10を、船主側が低くなるように傾斜状にかつドラム軸線回りに回転可能に設け、ドラム10内面にらせん羽根21からなる浮遊物移動手段を設け、浮遊物を前記ドラム10の船尾側から排出し、回収バケット23に落下させるようなものが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3に示されるように、双胴船の双胴間に芥籠を設けた水面清掃船を陸岸より上げ降ろしするインクラインにおいて、あらかじめ空籠を台車上の定位置に置いて水中の適当な深さに沈めておき、芥拾集の終わった水面清掃船は芥籠を甲板上の適当な高さに支承して台車の定位置に至り、水中の空籠を双胴間に収容して台車上の支柱へ上下自由に係留し、しかる後に芥収集ずみの籠を台車上の籠吊り上げる水面清掃船芥籠交換方法などが開示されている。
【0005】
これら技術は、水面清掃の基本的方法、技術として確立しているが、水面清掃船のメンテナンス上の維持管理のための経費もかさみ、大がかりな作業となりこまめに作業を行うことは難しかった。軽度の作業を回数こなして行おうと、一般的な単胴ボートで水面清掃作業を試みたが、なかなか達成できなかった。すなわち、双胴船を用いるのは、芥を回収するのに芥の重量が増すため、清掃船が回転してしまい安定したコントロール維持できず専用の双胴船を使用し、中央部で作業を行う必要があった。また集めた芥を廃棄するのに効率よく大量の芥を廃棄できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭63−8464号公報
【特許文献2】特開平09−99891号公報
【特許文献3】特公平02−17394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明で解決しようとする問題点は、一般的に購入しやすい単胴のボートで水面清掃を行う水面清掃船及び、この水面清掃船で使用するのに適した芥収集網を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題を解決するため、本発明の請求項1における水面清掃船は、袋状になる網の先端開口部面に円形又は多角形の第1の枠体を有する芥収納網と、前記第1の枠体と係合し、収納網の先端開口面を船体の進行方向に対向するように、船体の両側面に第2の枠体を設置し、芥収納網の第1の枠体と船体に設けた第2の枠体を係合する係合手段を設け、前記船体の進行方向前側に前記第1の枠体が配置されると共に前記船体の進行方向後側に前記第2の枠体が配置され、前記第2の枠体の開口面に前記第1の枠体の開口面を重ねたとき前記第1の枠体が前記第2の枠体を前記船体の進行方向後側に通り抜けないような大きさに設定され、芥収納網が脱落しにくく安定して確実に取り付けられるようにし、芥集収の際に船体の両側に設置した一対の芥収納網で船体を進行させ水面を清掃するようにした。
【0009】
また請求項2は、第2の枠体は、芥収納網の先端開口面の高さを調整できるように、船体の両側面に第2の枠体の上下高さを調整可能に設置してなるものである。
【0010】
あるいは、請求項3において、係合手段は、芥収納網の先端開口面の高さを調整できるように、第1の枠体第2の枠体の係合位置を上下に調整できるようにしてもよいものである。
【0011】
さらに請求項4では、前記係合手段は、前記第2の枠体の上部に突出された網釣り具及び前記芥収納網の第1の枠体に設けられた第一の枠体吊下げベルトからなり、第一の枠体吊下げベルトに前記網釣り具が突き刺しされる取り付け穴が複数個形成されてなることで、船体の沈み具合に応じて、芥収納網の先端開口面の高さを調整できるようになっている。
【0012】
請求項5では、芥収納網は、紐などにより開口部を閉じることができるよう閉止手段を設けたものである。
【0013】
請求項6は、芥収納網は、第1の枠体の開口面の反対側の底部を開口できる開口手段を有してなり、芥を陸上やごみ処理場で廃棄処理を容易にした。
【発明の効果】
【0014】
これにより、水面でバランスよく水面清掃船を推進させ安定して芥収集が行え、さらに収集した芥の収集網も簡単に交換できる。また芥を詰めた収集網は水面に浮かして蓄積し、後で収集網をまとめて陸揚げして、収集網の中の芥も底の開口手段によって簡単に廃棄できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例を示す水面清掃船の船体平面説明図。
図2】本発明の一実施例を示す水面清掃船における図1の側面説明図。
図3】本発明の一実施例を示す芥収納網の第一の枠体及び収納の説明図。
図4】本発明の一実施例を示す芥収納網及び第1及び第2の枠体の説明図。
図5】本発明の一実施例を示す芥収納網の芥を収集する状態を示す説明図。
図6】本発明の一実施例を示す芥収納網の芥を収集した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1図2は、本発明の特許請求項1に示されるように、水面清掃船の船体平面と船体側面を説明するものであって、船体1の両側に芥収納網2が配置できるように、袋状になる網の先端開口部面に円形又は多角形の第1の枠体3を有する芥収納網2を配置してなるものであって、この第1の枠体3と係合し、芥収納網2の先端開口面を船体1の進行方向に対向するように、船体1の両側に第2の枠体4を設置し、芥収納網2の第1の枠体3船体1に設けた第2の枠体4をそれぞれ係合する係合手段を設け、芥集収の際に船体1の両側に設置した一対の芥収納網2で船体1を推進させ、芥収集網2に芥を収集しながら水面を清掃するようにしている。船体1の両側に芥収集網2が設けられているので、このため船体1は、バランスよく芥の収集を行えるようになっている。
【0017】
次に図3に基づいて、芥収納網2について詳細に説明する。芥収納網2(図3中でこの芥収納網2は、上部、底部以外の網部分を破線で表現している。)は、ポリエステル基布PVC樹脂メッシュの網で構成され、円柱状の収納網(生地)11が形成される。この芥収納網2の入り口は、口径580mmの円形のアルミ製の6mm径の心材からなる第一の枠体3を有し、芥収納網2と一体に取り付けられている。芥収納網2と第一の枠体3は、第一の枠体3の周囲12カ所を結束バンドで固定されるが、生地を50mm折り返し、第一の枠体3を覆い、この生地11と結束されている。
【0018】
また、この第一の枠体3の一部に後述する、第二の枠体3に固定する第一の枠体吊下げベルト12が第一の枠体3と生地11に一体的に取り付けられている。この第一の枠体吊下げベルト12は、長さ300mm、幅20mmのベルトで、50mm間隔で7mm径の取り付け穴13が複数設けられている。材質としては、ゴム製、革製又は樹脂製など適宜に選択すればよい。
【0019】
収納網2の入り口から600mm程度後段に、収納網2に収納された芥に蓋をするための4mm径のロープ15が取り付けられている。このロープ15は、収納網2のメッシュ網に一カ所エステル帆布18でミシン縫製されて、ロープ15の結び目付近でロープ15通しを構成するためにエステル帆布19でロープ15を跨いで、芥収納網2のメッシュ網に縫い付けられている。
【0020】
さらに後段には、芥収納網2の入り口から1950mm後段が、芥収納網2の奥行になるが、最後段は、100mm折り返されて縫い付けられている。しかも、芥収納網2の折り返し後端に6カ所に奥行方向に切り込み20が形成されている。この最後段はこの折り返しの中を、ロープ16を通して、ロープ16を引き締めて縛り袋として構成されるように構成されている。
【0021】
また、この底部には、芥収納網2が浮くようにフロート(図示せず)が取り付けられる帆布ベルト25mm×100mmを50mmで折り返り生地に縫い付けられフロート用ロープ17通しが形成されている。
【0022】
図4に基づいて、特許請求項3における芥収納網2の第1の枠体3船体1に設けた第2の枠体4とを係合する係合手段について、その正面図、左側面図、平面図に基づいて詳細に説明する。便宜上船体1の前方から見た、左側のみを説明する。第2の枠体4は、船体1の枠体21が船体1の進行方向に直行する横方向に取り付けられる角パイプ22と、この角パイプ22の先端に、コの字状の先端が90°に曲げられた(図中折曲部24)丸パイプ25が差し込まれて接続(接続部23)されている。このコの字状の丸パイプ25の他端26は、前記角パイプ22の中間点に補強版27と共に固定されて、略四角形状の第2の枠体4が構成される。
【0023】
この第2の枠体4の上部には、前記芥収納網2の第1の枠体3に設けられた第一の枠体吊下げベルト12の取り付け穴13に突き刺し、固定する8mm径の丸棒からなる網釣り具30が突出されている。
【0024】
図4に示されるように、前記芥収納網2の第1の枠体3は、前記第2の枠体4の(船体1の進行方向側)手前側に位置し、芥収納網2は、前記第2の枠体4の奥手側に位置して、第一の枠体吊下げベルト12の取り付け穴13が、網釣り具30に突き刺さることで、固定される。
【0025】
第一の枠体吊下げベルト12の取り付け穴13の場所により、前記芥収納網2の第1の枠体3は、第一の枠体吊下げベルト12の取り付け穴13を第一の枠体3の取付け基部側で固定すると、矩形状の第2の枠体4の上部に固定でき、反対に第一の枠体3の取付け基部と反対側の端部側の穴13で固定すると、四角形状の第2の枠体4の下部に固定できようになっている(特許請求項3の作用)。
【0026】
これにより水面清掃の際、清掃用具や乗船担当員の人数などの重量により、船体1が水面に対して沈んだり浮いたりして、高さが異なるので、船体1の沈み具合に応じて、芥収納網2の先端開口面の高さを調整できるようになっている。
【0027】
この芥収納網2の先端開口面の高さを調整する場合は、芥収納網2の第1の枠体3と船体1に設けた第2の枠体4とをそれぞれ係合する係合手段によって、芥収納網2の先端開口面の高さを調整できるようにしたが、特許請求項2に示したように船体1と第2の枠体4の係合位置を上下に調整できるようにしてもよいものである(図示せず)。
【0028】
水面清掃作業において、上述した如く(特許請求項の実施例として)、第2の枠体4の開口面に対して、第1の枠体3の開口面を重ねた時に通り抜けないような大きさに設定し、船体1の進行方向に対して第1の枠体3、第2の枠体4の順に配置され、さらに前記第1の枠体3の芥収納網2部が第2の枠体4の後段側に位置することで芥収納網2が脱落しにくく安定して確実に取り付けられるようにした。
【0029】
芥収集網2の開口部を形成する第1の枠体3の径を前述した如く580mmの円形にアルミで構成し、また底部付近(又は開口部付近)にフロート用ロープ17で、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)などで構成されたフロート(図示せず)が周囲に設置され、芥収納網2に密着されている。芥収集の際は、前記芥収納網2の底部は、ロープ16で結束して袋状になり船体1の進行させることで芥を収集でき、芥が満たされたら先端側のロープ15を引き締め、芥が収納された芥収集網2の開口部を閉止することができる。そして、芥が詰まった芥収集網2は、前記フロートにより図6図6ではフロートを開口面側に結び付けた例で)示されるように第1の枠体3の開口面側が(又は底部が)上になって、水面に浮くようになっている。
【0030】
また、芥収納網2の網目は、収集する芥の種類にもよるが本発明では、7〜20mm程度が選択される。材質としては丈夫な合成樹脂などで構成され、前記第1の枠体3とは反対側の底部側があらかじめロープ等で閉じられており、芥を収納できるようになっている。
【0031】
芥で散らかった水面を本発明の水面清掃船で周回して、芥収納網2に収納し、芥で満杯になった芥収納網2を水面に蓄積しながら、新しい芥収納網2を付け替え、芥収集作業を行い、最後にまとめて水面に浮かぶ芥収納網2を集めて、陸上に引き上げ、クレーンなどで持ち上げ、各芥収納網2の底部のロープ16を開放すれば、芥は簡単に廃棄できるようになっている。
【0032】
上記実施例においては、前記芥収納網2の第1の枠体3は、アルミ製で構成したが、硬質の樹脂で構成しても良く、材質については限定しない。また、第2の枠体4の開口面に対して、第1の枠体3の開口面を重ねた時に通り抜けないような大きさに設定するに際して、本実施例では、第1の枠体3を縦長方形上にして、第1の枠体3を円形にして、第1の枠体3と第2の枠体4を重ねた時に、第1の枠体3が第2の枠体4の左右で突出しているので通り抜けないようにしているが、互いの形状の制約はなく、円形や矩形状に限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の水面清掃船は、大がかり単動船や、双胴の水面清掃船を使用せず、一般的な単胴船でもこまめに水面を清掃でき、収集した芥の処理も簡単に行え、経済的である。特に、嵐や自然災害時の後など、ダムの水面や湖面が汚れても迅速に対応しなくてはならない場合でも、手軽に清掃ができ、社会的に有用、有益な発明として万全の備えが確立できる。
【符号の説明】
【0034】
1…船体
2…芥収納網
3…第1の枠体
4…第2の枠体
11…芥収納網(生地)
12…枠体吊下げベルト
13…取り付け穴
15…ロープ
16…ロープ
17…フロート用ロープ
18…エステル帆布
19…エステル帆布
20…切り込み
21…船体の枠体
22…角パイプ
23…接続部
24…折曲部
25…丸パイプ
26…他端
27…補強板
30…網釣り具
図1
図2
図3
図4
図5
図6