特許第6807075号(P6807075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807075
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】削り器
(51)【国際特許分類】
   B43L 23/06 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   B43L23/06
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-167210(P2016-167210)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-34334(P2018-34334A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】谷 仁一
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−027395(JP,U)
【文献】 実開昭53−047968(JP,U)
【文献】 実開昭54−068954(JP,U)
【文献】 実開昭58−115396(JP,U)
【文献】 特開2006−035819(JP,A)
【文献】 米国特許第03851687(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 23/00 − 23/08
A45D 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンシルの先端部を削る削り器であって、
前記ペンシルの先端部が挿入されるケースと、
前記ケースの内部に設置されており、前記ケースに挿入された前記ペンシルから見て前記ペンシルの軸線方向に対して交差する方向である左右方向のそれぞれに配置され複数の弾性体と、
前記複数の弾性体のそれぞれに支持されており、前記弾性体の弾性力によって前記左右方向に一定量移動可能とされた複数の移動体と、
前記複数の移動体のそれぞれにおける前記ペンシルに対向する部位に、互いに対称となる位置に設けられている複数の刃部と、
前記複数の移動体のそれぞれに設けられており、前記ペンシルに当接して、前記刃部の刃先を前記ペンシルの先端部以外の箇所から離間させる当接部と、
を備え、
前記複数の刃部のそれぞれは、前記弾性体が前記移動体を前記ペンシル側に付勢することによって前記ペンシルの先端部に当接し、前記ペンシルの軸線方向に対して傾斜する平面に沿って前記ペンシルの先端部を削る、
削り器。
【請求項2】
前記刃部、及び前記刃部の刃先は、前記軸線方向及び前記左右方向に対して垂直な垂直方向に対して傾斜する方向に延びている、
請求項に記載の削り器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンシルの先端部を削る削り器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からペンシルの先端部を削る削り器としては種々のものが知られている。例えば実開平1−158196号公報には、製図用の鉛筆を研磨する研磨器が記載されている。この研磨器は、外側筐体と、外側筐体に対して移動可能とされた内側筐体と、外側筐体に貫通して形成された鉛筆差込み孔と、内側筐体の鉛筆差込み孔の対向箇所に位置するカッターとを備えている。
【0003】
この研磨器では、鉛筆差込み孔に鉛筆の先端部を挿入し、この鉛筆を回転させることにより、カッターで鉛筆の木の部分を削ることが可能となっている。また、この研磨器は、上記の鉛筆差込み孔とは別に設けられた鉛筆挿入孔と、内側筐体の内部に配置された研磨ユニットとを備える。鉛筆挿入孔に挿入された鉛筆が研磨ユニットの2個の研磨片に当てられることにより、鉛筆の芯先が所定の芯厚となるように研磨される。
【0004】
また、図15(a)及び図15(b)に示されるように、先端部101の芯102及び木部103の両方が平面状に削られたペンシル100が知られている。このペンシル100の形状は、薙刀状とも称される。ペンシル100において、先端部101には複数の平面部が形成されている。すなわち、先端部101は扁平な形状とされている。
【0005】
このペンシル100では、先端部101において芯102が線状に形成されるため、芯102の細い部分102aを使って細かい描写を行うことが可能となっている。また、ペンシル100では、木部103が先端側に長く延びる部分103aを複数有するため、芯102が折れにくくすることを可能としている。このペンシル100は、カッターを手で持って、径方向の一方側からカッターでペンシル100を平面状に削ると共に、上記一方側の反対側からカッターでペンシル100を平面状に削ることによって製作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−158196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、複数の平面部が先端部101に形成されたペンシル100は、人がカッターを手で持ち、径方向の一方側及び反対側からカッターで削ることによって製作される。このように、ペンシル100は人手で削られて製作されるので、時間がかかり容易にペンシル100を製作することができていないという現状がある。
【0008】
また、ペンシル100は、人手で製作されるので、ペンシル100を製作する製作者が熟練しているか否か等によって、製作されたペンシル100の品質にばらつきが生じる。例えば、未熟な製作者がペンシル100を製作する場合には、削っている途中で芯102が折れたり、上手くペンシル100を削れなかったりする問題が生じうる。
【0009】
本発明は、平面部が先端部に形成されたペンシルを容易に製作することができると共に、ペンシルの品質のばらつきを抑えることができる削り器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る削り器は、ペンシルの先端部を削る削り器であって、ペンシルの先端部が挿入されるケースと、ケースの内部に設置されており、ケースに挿入されたペンシルから見てペンシルの軸線方向に対して交差する方向である左右方向のそれぞれに配置され複数の弾性体と、複数の弾性体のそれぞれに支持されており、弾性体の弾性力によって左右方向に一定量移動可能とされた複数の移動体と、複数の移動体のそれぞれにおけるペンシルに対向する部位に、互いに対称となる位置に設けられている複数の刃部と、複数の移動体のそれぞれに設けられており、ペンシルに当接して、刃部の刃先をペンシルの先端部以外の箇所から離間させる当接部と、を備え、複数の刃部のそれぞれは、弾性体が移動体をペンシル側に付勢することによってペンシルの先端部に当接し、ペンシルの軸線方向に対して傾斜する平面に沿ってペンシルの先端部を削る。
【0011】
この削り器では、ペンシルがケースの内部に挿入されると、ペンシルは、刃部及び移動体を弾性体の弾性力に抗して移動させると共に、刃部の刃先がペンシルの先端部に当接してペンシルの先端部を削る。この刃部は、ペンシルの軸線方向に対して傾斜する平面に沿って先端部を削るので、この先端部には当該平面に沿った平面部が形成される。このように、ペンシルをケースの内部に挿入することによって平面部が形成されたペンシルを速やかに製作することができるので、この種のペンシルを容易に製作することができる。また、製作者が手に持ったカッターでペンシルを削る手間を低減させることができるので、ペンシルの品質のばらつきを抑えることができる。
【0014】
また、刃部、及び刃部の刃先は、軸線方向及び左右方向に対して垂直な垂直方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。この場合、ペンシルに対し刃先が斜めに当接するので、刃先の多くの部分をペンシルに当てることができる。よって、ペンシルに刃先を当てるときの抵抗を減らすことができるので、刃先をペンシルに入りやすくすることができる。従って、ペンシルの先端部をよりスムーズに削ることができる。また、刃部が傾斜する方向に延びることによって、刃部が取り付けられた移動体、及び移動体を収容するケースの大きさを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平面部が先端部に形成されたペンシルを容易に製作することができると共に、ペンシルの品質のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る削り器及びペンシルを示す斜視図である。
図2】(a)は、図1の削り器及びペンシルを示す平面図である。(b)は、図1の削り器及びペンシルを示す側面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4】(a)は、図1の削り器からケースを外した状態を示す斜視図である。(b)は、(a)から更に第2の移動体を外した状態を示す斜視図である。
図5】(a)は、ケースを示す斜視図である。(b)は、ケースを示す側面図である。
図6】(a)は第1の移動体を示す斜視図である。(b)は、第1の移動体を(a)の反対側から見た斜視図である。
図7】(a)は第2の移動体を示す斜視図である。(b)は、第2の移動体を(a)の反対側から見た斜視図である。
図8】蓋体を示す斜視図である。
図9図1の削り器の分解斜視図である。
図10】ペンシルを外した図2(b)の削り器のX−X線断面図である。
図11】ペンシルを省略した図2(b)の削り器のXI−XI線断面図である。
図12】ペンシルを刃部で削る状態を示す斜視図である。
図13】(a)は、ペンシルを刃部で削り始める状態を示す斜視図である。(b)は、ペンシルを刃部で削っている状態を示す斜視図である。
図14】(a)及び(b)は、薙刀形状を備えたアイブロー用のペンシルを示す側面図である。
図15】(a)は、薙刀状のペンシルを示す斜視図である。(b)は、(a)のペンシルを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る削り器とペンシルを示す斜視図である。図2(a)は、図1の削り器とペンシルを示す平面図である。図2(b)は、図1の削り器とペンシルを示す側面図である。図1図2(a)及び図2(b)に示されるように、本実施形態に係る削り器1は、ペンシルPを削るときに用いられる。
【0019】
ペンシルPは、全体形状が細長い棒状を成しており、丸棒状とされている。本実施形態において、ペンシルPは、削り器1によって薙刀状に削られる。ここで、薙刀状とは、ペンシルPの軸線方向(ペンシルPの長手方向)に対して傾斜する平面に沿って削られたペンシルPの形状を示している。すなわち、ペンシルPの先端部P3には、軸線方向に対して傾斜する複数の平面部が形成されており、先端部P3は扁平状とされている。本実施形態において、平面部は、ペンシルPの先端に向かうに従ってペンシルPの中央側に傾斜する平面を示している。
【0020】
ペンシルPは、描画される芯P1と、芯P1を覆う木部P2とを含んでいる。ペンシルPは、鉛筆、筆記具、描画材、化粧鉛筆、又は製図用鉛筆等を含んでいる。化粧鉛筆としては、アイライナー、アイブロウ及びリップライナー等が含まれる。削り器1は、ペンシルPが挿入されるケース2と、蓋体3とを外観構成として具備する。蓋体3は、2本のネジN1によってネジ止めされている。
【0021】
図3は、図2(a)のIII−III線断面図である。図4(a)は、削り器1からケース2及び蓋体3を外した状態を示す斜視図である。図4(b)は、図4(a)から更に片側の移動体を外した状態を示す斜視図である。ケース2及び蓋体3の内部には、第1の移動体4と、ペンシルPを挟んで第1の移動体4の反対側に位置する第2の移動体5と、第1の弾性体6(図9参照)及び第2の弾性体7と、第1の刃部8及び第2の刃部9が収容されている。
【0022】
第1の移動体4、第1の弾性体6及び第1の刃部8は、ペンシルPに対して、第2の移動体5、第2の弾性体7及び第2の刃部9と互いに対称となる位置に配置されている。ケース2の内部において、第1の弾性体6は第1の移動体4をペンシルP側に付勢し、第2の弾性体7は第2の移動体5をペンシルP側に付勢する。第1の刃部8は第1の移動体4のペンシルPに対向する部位に取り付けられており、第2の刃部9は第2の移動体5のペンシルPに対向する部位に取り付けられている。
【0023】
削り器1に対して、ペンシルPは、その長手方向に挿入され、その後、削り器1からペンシルPが引かれるときにペンシルPは削られる。このとき、第1の刃部8は、ペンシルPの径方向の一方側に当接してペンシルPを当該一方側から平面状に削り、第2の刃部9は、ペンシルPの径方向の他方側に当接してペンシルPを当該他方側から平面状に削る。
【0024】
以下では、各図の矢印に示されるように、削り器1にペンシルPを挿入する方向を前方向、削り器1からペンシルPを引く方向を後方向、ペンシルPから見て第1の移動体4が位置する方向を右方向、ペンシルPから見て第2の移動体5が位置する方向を左方向とする。そして、図3の紙面の上方を上方向、図3の紙面の下方を下方向として説明する。なお、これらの方向は、単なる説明の便宜上のものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
削り器1に対し、ペンシルPは前後方向に挿通されるが、この前後方向は、ペンシルPの軸線方向、ペンシルPの長手方向、及びペンシルPの延在方向に一致する。また、「軸線」とは、ペンシルPの前後に延びる中心線を示しており、「軸線方向」とは、前後方向であって且つ軸線に沿った方向を示している。
【0026】
図5(a)はケース2を示す斜視図であり、図5(b)はケース2を示す側面図である。図5(a)及び図5(b)に示されるように、ケース2は、第1の前部2aと、第2の前部2bと、上部2cと、後部2dと、右側部2eと、底部2fとを外観構成として具備しており、ケース2の開口された左側の部分からケース2の内部に各部品が収容される。第1の前部2a、第2の前部2b、上部2c、後部2d、右側部2e及び底部2fは、いずれも板状とされている。
【0027】
第1の前部2aは、ケース2の上部2cから斜め下方に延びる長方形状とされており、第2の前部2bは、第1の前部2aの下端から底部2fに向かって斜め下方に延びる長方形状とされている。第1の前部2aは上部2cから下方且つ前方に斜めに延びており、第2の前部2bは第1の前部2aから下方且つ後方に斜めに延びている。このように、第1の前部2a及び第2の前部2bが斜めに延びることにより、ケース2の内部に各部品を配置するスペースを確保しつつ削り器1の高さを抑えることが可能となっている。
【0028】
図1及び図5に示されるように、第1の前部2aは、ケース2の内側からペンシルPが通される貫通孔2gを備える。貫通孔2gは、第1の前部2aの左右方向中央に設けられており、第1の前部2aにおける貫通孔2gの上下位置は、中央よりも若干上側とされている。第1の前部2aの貫通孔2gの左右両側には、一対の貫通孔2hが設けられており、これらの貫通孔2hは、縦長の長方形状とされている。第2の前部2bは、貫通孔2jを備えており、この貫通孔2jは、左右方向に延びる横長の長方形状とされている。
【0029】
上部2cは、前後一対の貫通孔2k,2mを備えている。これらの貫通孔2k,2mによって、ケース2の内部のペンシルPを視認可能となっており、削り屑を排出することも可能である。貫通孔2kは、貫通孔2mよりも前方に設けられており、且つ貫通孔2mよりも面積が小さい。貫通孔2k及び貫通孔2mは、共に、前後方向に延びる長方形状とされている。
【0030】
後部2dは、後方に突出すると共に後部2dを貫通する筒部2nと、筒部2nの下方に位置する貫通孔2pとを備える。筒部2nは、ペンシルPをケース2に挿入させるための部位であり、円筒状とされている。筒部2nの内径は、ペンシルPを筒部2nの内部に安定して挿通できる程度とされており、筒部2nの内径とペンシルPの外径との差は、例えば2mm程度である。筒部2nの軸線方向(前後方向)の長さ、すなわち後部2dからの筒部2nの突出高さは、内部に挿通されるペンシルPが傾くのを抑制可能な値とされている。
【0031】
例えば、ペンシルPの長さが18cm程度であるのに対し、筒部2nの軸線方向の長さは1.9cm程度である。これにより、筒部2nにペンシルPを安定して挿入することが可能であり、挿入されたペンシルPが筒部2nの内部で傾かないようにすることができる。また、貫通孔2pは、左右方向に延びる横長の長方形状とされている。
【0032】
右側部2eは、その前側に位置する貫通孔2qと、貫通孔2qよりも後方の位置において右側部2eからケース2の内側に突出する3個の筒部2r,2s,2tとを備えている。貫通孔2qは、ペンシルPの削り屑を排出するための穴であり、四角形状(台形状)とされている。貫通孔2qを成す4つの辺のうち3辺は、上部2c、第1の前部2a及び第2の前部2bのそれぞれに沿って延びており、残り1辺は上部2cから第1の前部2aと平行に延びている。
【0033】
筒部2r、筒部2s及び筒部2tは、この順で前から後に向かって並んでおり、後側に位置する筒部2tが最も上側に配置されており、前側に位置する筒部2rが最も下側に配置されている。3つの筒部2r,2s,2tのうち、両端側の2つの筒部2r,2tは、蓋体3をケース2に固定するネジN1を螺合させる。筒部2r,2tの内側には、予め雌螺子が設けられていてもよいし、最初は雌螺子は設けられておらずネジN1のねじ込みで雌螺子を形成してもよい。筒部2r,2tの内側には、それぞれ、径方向内側に突出する縮径部2r1,2t1が形成されており、各筒部2r,2tの内面は段付き状とされている。
【0034】
3つの筒部2r,2s,2tのうち、中央の筒部2sは、第1の弾性体6(図9参照)をケース2に設置するために設けられる。筒部2sの根元には、右側部2eから突出すると共に筒部2sから拡径する円環状の突出部2s1が設けられており、この突出部2s1に第1の弾性体6の一端が嵌め込まれる。第1の弾性体6は、コイルスプリングであり、突出部2s1の外径は第1の弾性体6の内径と同程度である。従って、筒部2sに第1の弾性体6を通すと共に突出部2s1に第1の弾性体6を嵌め込むことによって、突出部2s1の周方向外側に第1の弾性体6を支持させることが可能である。
【0035】
底部2fは、3つの貫通孔2v,2w,2xを備えており、これらの貫通孔2v,2w,2xは、この順で左方から右方に向かって並んでいる。貫通孔2v及び貫通孔2xは、共に前後方向に延びる長方形状とされており、左右に互いに対称となる位置に配置されている。貫通孔2wは、ケース2の左右方向中央において前後方向に延びる長方形状とされており、貫通孔2wの幅は、貫通孔2v,2xの幅よりも広い。このように貫通孔2wの幅を広くすることにより、ケース2の内部のペンシルPを視認しやすくすると共に、削り屑を排出することが可能である。また、貫通孔2wの前後方向の長さは、貫通孔2v,2xの前後方向の長さよりも短い。
【0036】
図6(a)及び図6(b)は、第1の移動体4を示す斜視図である。第1の移動体4は、ケース2に対して左右方向に一定量移動可能とされている。図6(a)及び図6(b)に示されるように、第1の移動体4は、第1の前部4aと、第2の前部4bと、上壁部4cと、後壁部4dと、底壁部4eと、左側部4fとを外観構成として備えている。第1の移動体4の右側には、前側に位置する第1の開口4gと、後側に位置する第2の開口4hとが形成されている。第1の前部4a、第2の前部4b、上壁部4c、後壁部4d及び底壁部4eは、共に板状とされている。
【0037】
第1の前部4aは上壁部4cから斜め下方に延びる長方形状とされており、第2の前部4bは第1の前部4aの下端から底壁部4eに向かって斜め下方に延びる長方形状とされている。第1の前部4aは下方且つ前方に斜めに延在しており、第2の前部4bは下方且つ後方に斜めに延在している。後壁部4dは略矩形状とされており上下方向に延びている。後壁部4dの上側には第1の移動体4の内側に窪む矩形状の凹部4jが形成されている。
【0038】
底壁部4eは、前後方向に延びる形状とされている。底壁部4eの左側且つ前側には第1の移動体4の内側に三角状に窪む凹部4kが形成されており、底壁部4eの右側且つ後側には第1の移動体4の内側に窪む凹部4mが形成されている。凹部4kは、前方を向く後端面4nと、後端面4nから斜め前方に延びるテーパ面4pとによって形成されている。
【0039】
左側部4fは、前側に位置する平坦部4qと、平坦部4qの後方に位置する四角形状の貫通孔4rと、貫通孔4rの後側で第1の刃部8を位置決めして組み込む凹状の組み込み部4sと、組み込み部4sの後方に位置する3つの貫通部4t,4v,4wとを備えている。平坦部4qは、削り器1に挿入されたペンシルPを押さえる当接部(ペンシル押さえ部)として機能する。
【0040】
平坦部4qは、第1の刃部8を組み込む組み込み部4sの前方に設けられており、組み込み部4sに組み込まれた第1の刃部8の刃先8aの前方且つ左側(ペンシルP側)に位置する。この平坦部4qについては後に詳述する。貫通孔4rは、ペンシルPの削り屑が通る穴であり、ケース2の貫通孔2qと連通する。貫通孔4rは、貫通孔2qと同様の形状とされている。
【0041】
組み込み部4sは、第1の刃部8(図4等参照)に倣う形状となっており、この凹状の組み込み部4sに第1の刃部8が組み込まれることにより、第1の刃部8の位置決めがなされる。組み込み部4sは、底面4s1と、組み込み部4sの上端から後方且つ下方に湾曲する第1の内側面4s2と、第1の内側面4s2の下端から貫通孔4rに沿って斜め下方に延びる第2の内側面4s3と、第2の内側面4s3の下端から貫通孔4rに向かって斜め上方に延びる第3の内側面4s4によって形成されている。底面4s1は、前方に向かうに従って左側(ペンシルP側)に傾斜している。底面4s1には、第1の刃部8を第1の移動体4に固定させるネジN2(図9参照)を螺合させるネジ穴4s5が形成されている。このように、底面4s1には、予めネジ穴4s5が設けられていてもよいし、最初は単に穴だけ設けられており、ネジN2のねじ込みでネジ穴4s5を形成してもよい。
【0042】
貫通部4t及び貫通部4vは、共に、円形状とされている。貫通部4t及び貫通部4vは、ケース2の2つの筒部2r,2sに対応しており、貫通部4t及び貫通部4vのそれぞれには、筒部2r及び筒部2sのそれぞれが右側から挿通される。貫通部4wはケース2の筒部2tに対応しており、この貫通部4wには筒部2tが右側から挿通される。貫通部4wは円形状とされており、貫通部4wの外周には貫通部4wからU字状に突出する突出部4w1が形成されている。
【0043】
第1の開口4gの内部には、第1の前部4aから第1の移動体4の内側(後側)に突出するリブ部4xが形成されている。第1の開口4gは、貫通孔4rに連通しており、ペンシルPの削り屑を排出するために設けられる。また、リブ部4xは、ケース2の貫通孔2qから第1の移動体4の内部への指を侵入を防止するために設けられる。
【0044】
リブ部4xは複数設けられており、複数のリブ部4xが第1の前部4aに沿って斜め下方に並設されている。第1の前部4aの内側面4a1は、第1の開口4gの奥側に向かうに従って第1の開口4gを狭める方向に傾斜している。これにより、第1の開口4gからペンシルPの削り屑を排出できると共に、第1の移動体4の内部への指の侵入が更に確実に防止される。
【0045】
第2の開口4hの内部には、左側部4fの裏面4f1から第1の移動体4の内側に突出する3個の筒部4y1,4y2,4y3が設けられている。3個の筒部4y1,4y2,4y3のそれぞれは、前述した貫通部4t,4v,4wのそれぞれから第1の移動体4の内側に突出している。筒部4y1,4y2,4y3のそれぞれには、ケース2の筒部2r,2s,2tのそれぞれが右側から挿入される。
【0046】
3つの筒部4y1,4y2,4y3のうち、中央の筒部4y2は、コイルスプリングである第1の弾性体6に挿通する。筒部4y2の根元側には裏面4f1から突出する円環状の拡径部4y4が設けられており、この拡径部4y4に第1の弾性体6が嵌め込まれる。すなわち、拡径部4y4は第1の弾性体6を第1の移動体4に設置するために設けられる。拡径部4y4の外径は第1の弾性体6の内径と同程度である。従って、筒部4y2を第1の弾性体6に通して第1の弾性体6を拡径部4y4に嵌め込むことによって、拡径部4y4の周方向外側に第1の弾性体6を支持させることが可能である。
【0047】
前述したように、第1の弾性体6は、その一端がケース2の右側部2eの突出部2s1に支持されると共に、その他端が第1の移動体4の裏面4f1の拡径部4y4に支持される。このように、第1の弾性体6は、突出部2s1及び拡径部4y4に嵌め込まれると共に、右側部2eと裏面4f1との間に介在した状態で、第1の移動体4を左側(ペンシルP側)に付勢する。
【0048】
図7(a)及び図7(b)は、第2の移動体5を示す斜視図である。第2の移動体5は、蓋体3に対して左右方向に一定量移動可能とされている。図7(a)及び図7(b)に示されるように、第2の移動体5は、前述した第1の移動体4と略左右対称の形状を成しており、第1の移動体4と略同様の構成を含んでいる。従って、図7(a)及び図7(b)等の各図では、第2の移動体5の構成のうち、第1の移動体4の各部と同一の部分には当該各部と同一の符号を付している。また、以降では、第2の移動体5の構成のうち、第1の移動体4と重複する部分については適宜説明を省略する。
【0049】
第2の移動体5は、第1の前部5aと、第2の前部5bと、上壁部5cと、後壁部5dと、底壁部5eと、右側部5fとを外観構成として備えている。第2の移動体5の左側には前方に位置する第1の開口5gと後方に位置する第2の開口5hとが形成されている。底壁部5eの右側且つ前側には第2の移動体5の内側に三角状に窪む凹部5kが形成されており、底壁部5eの左側且つ後側には第2の移動体5の内側に窪む凹部5mが形成されている。
【0050】
右側部5fは、前側に位置する平坦部5qと、平坦部5qの後方に位置する四角形状の貫通孔5rと、貫通孔5rの後側で第2の刃部9を位置決めして組み込む組み込み部5sと、組み込み部5sの後方に位置する3つの貫通部5t,5v,5wとを備えている。平坦部5qは、第2の刃部9を組み込む組み込み部5sの前方に設けられており、組み込み部5sに組み込まれた第2の刃部9の刃先9aの前方且つ右側(ペンシルP側)に位置する。平坦部5qは、削り器1に挿入されたペンシルPを押さえる当接部として機能する。
【0051】
組み込み部5sは、第2の刃部9(図4(b)参照)に倣う形状となっている。組み込み部5sは、底面5s1と、組み込み部5sの下端から後方且つ上方に湾曲する第1の内側面5s2と、第1の内側面5s2の上端から貫通孔5rに沿って斜め上方に延びる第2の内側面5s3と、第2の内側面5s3の上端から貫通孔5rに向かって斜め上方に延びる第3の内側面5s4によって形成されている。また、組み込み部5sは、ネジ穴4s5と同様のネジ穴5s5を備える。底面5s1は、前方に向かうに従って右側(ペンシルP側)に傾斜している。
【0052】
第2の開口5hの内部には、右側部5fの裏面5f1から第2の移動体5の内側に突出する筒部5y1,5y2,5y3が設けられている。3つの筒部5y1,5y2,5y3のうち中央の筒部5y2は、コイルスプリングである第2の弾性体7に挿通する。筒部5y2の根元側には拡径部4y4と同様の拡径部5y4が設けられており、この拡径部5y4に第2の弾性体7が嵌め込まれる。拡径部5y4の外径は第2の弾性体7の内径と同程度である。従って、拡径部5y4に第2の弾性体7を嵌め込むことによって、拡径部5y4の周方向外側に第2の弾性体7を支持させることが可能である。
【0053】
図8は、蓋体3を示す斜視図である。図8に示されるように、蓋体3は、削り器1の左側面を構成する板状部3aと、板状部3aから突出する3個の筒部3b,3c,3dとを備えている。板状部3aは、五角形の平板状とされている。板状部3aは、ケース2の第1の前部2aに沿う第1の辺3a1と、第2の前部2bに沿う第2の辺3a2と、底部2fに沿う第3の辺3a3と、後部2dに沿う第4の辺3a4と、上部2cに沿う第5の辺3a5とを有する。
【0054】
板状部3aには、第2の移動体5の貫通孔5rに連通する四角形状の貫通孔3eが形成されている。貫通孔3eは、ペンシルPの削り屑が通る穴であり、貫通孔5rと同様の形状とされている。筒部3b,3c,3dは、この順で前から後に向かって並んでおり、後側に位置する筒部3dが最も上側に位置しており、前側に位置する筒部3bが最も下側に位置している。
【0055】
3つの筒部3b,3c,3dのうち、両端側の2つの筒部3b,3dは、それらの内部にネジN1を挿通させる。また、筒部3b,3c,3dそれぞれの軸線方向先端には、環状突出部3b1,3c1,3d1が設けられている。環状突出部3c1がケース2の筒部2s内に嵌合すると共に、環状突出部3b1,3d1が筒部2r,2tの縮径部2r1,2t1に嵌合することにより、ケース2に蓋体3が嵌め込まれる。
【0056】
3つの筒部3b,3c,3dのうち、中央の筒部3cは、第2の弾性体7に挿通される。筒部3cの根元には円環状の拡径部3fが設けられており、この拡径部3fの外径は第2の弾性体7の内径と同程度である。従って、筒部3cに第2の弾性体7を通して第2の弾性体7を拡径部3fに嵌め込むことによって、拡径部3fの周方向外側に第2の弾性体7を支持させることが可能である。
【0057】
前述したように、第2の弾性体7は、その一端が第2の移動体5の拡径部5y4に支持されると共に、その他端が蓋体3の板状部3aの拡径部3fに支持される。このように、第2の弾性体7は、拡径部5y4及び拡径部3fに支持されて裏面5f1と板状部3aとの間に介在することにより、第2の移動体5を右側(ペンシルP側)に付勢する。
【0058】
図9は、削り器1の分解斜視図である。前述したように、第1の刃部8は、第1の移動体4の組み込み部4sに組み込まれる。図9に示されるように、第1の刃部8は、長尺状とされており、第1の刃部8の長手方向に延びる鋭利な刃先8aを備える。第1の刃部8は、組み込み部4sに組み込まれたときに、上下方向に対して斜めに傾斜する方向に延在する。具体的には、第1の刃部8は、上方に向かうに従って後方に傾斜している。
【0059】
第1の刃部8は、上記の刃先8aと、刃先8aの一端において当該一端から離れると共に刃先8aと平行となるように湾曲する湾曲部8bと、湾曲部8bの刃先8aとの反対側の端部において刃先8aと平行に延在する第1の直線部8cと、第1の直線部8cの湾曲部8bとの反対側の端部から刃先8aに延びる第2の直線部8dとを有する。
【0060】
また、第1の刃部8は、ネジN2を挿通させる貫通孔8eを有する。第1の刃部8は、組み込み部4sに組み込まれた状態において、貫通孔8eにネジN2が挿入される。そして、ネジN2が組み込み部4sのネジ穴4s5に螺合されたときに、刃先8aは組み込み部4sから前方に突出し且つ左側(ペンシルP側)に傾斜した状態となる。
【0061】
第2の刃部9は、第1の刃部8の刃先8a、湾曲部8b、第1の直線部8c、第2の直線部8d及び貫通孔8eと同様、刃先9a、湾曲部9b、第1の直線部9c、第2の直線部9d及び貫通孔9eを備えている。第2の刃部9は、第1の刃部8とは配置の向きが異なっている。
【0062】
具体的には、湾曲部9b、第1の直線部9c及び第2の直線部9dの上下の向きが、湾曲部8b、第1の直線部8c及び第2の直線部8dと逆になっている。第2の刃部9は、第2の移動体5の組み込み部5sに組み込まれる。第2の刃部9は、組み込み部5sに組み込まれたときに、上下方向に対して斜めに傾斜する方向に延在する。具体的には、第2の刃部9は上方に向かうに従って後方に傾斜しており、第2の刃部9と第1の刃部8は互いに平行に延びている。そして、貫通孔9eにネジN2が挿入されてネジN2が組み込み部5sのネジ穴5s5に螺合した状態において、刃先9aは、前方に突出すると共に、右側(ペンシルP側)に傾斜した状態となる。
【0063】
以上のように構成される削り器1の組立方法について以下で説明する。まず、ケース2に第1の弾性体6を取り付ける。具体的には、ケース2の開口された左側の部分から第1の弾性体6を挿入し、筒部2sを第1の弾性体6に挿入させる。そして、第1の弾性体6を突出部2s1に嵌め込むことによって第1の弾性体6の一端側をケース2に設置する。
【0064】
続いて、ケース2及び第1の弾性体6に第1の移動体4を取り付ける。すなわち、ケース2の開口された左側の部分から第1の移動体4をケース2の内部に挿入する。このとき、第1の移動体4の貫通部4t,4v,4wのそれぞれにケース2の筒部2r,2s,2tのそれぞれを右側から挿通させる。そして、第1の移動体4の右側に位置する筒部4y2を第1の弾性体6に通すと共に第1の弾性体6を拡径部4y4に嵌め込む。これにより、第1の弾性体6の他端側を第1の移動体4に設置する。
【0065】
なお、前述のように、ケース2及び第1の弾性体6に第1の移動体4を取り付けるのではなく、予め第1の移動体4に第1の弾性体6を取り付けておき、第1の弾性体6が取り付けられた第1の移動体4をケース2に組み立ててもよい。
【0066】
次に、第1の移動体4に第1の刃部8を固定する。具体的には、第1の移動体4の組み込み部4sに第1の刃部8を組み込み、第1の刃部8の貫通孔8e及び第1の移動体4のネジ穴4s5に左側からネジN2を挿入し、ネジN2をネジ穴4s5にねじ込んで第1の刃部8を第1の移動体4に固定させる。
【0067】
また、前述した組み立ての各工程と平行して、蓋体3に第2の弾性体7を取り付ける。このとき、蓋体3の筒部3cを第2の弾性体7に挿入し、第2の弾性体7を蓋体3の拡径部3fに嵌め込むことにより、第2の弾性体7の一端側を蓋体3に設置する。
【0068】
次に、蓋体3及び第2の弾性体7に第2の移動体5を取り付ける。具体的には、第2の移動体5の筒部5y1,5y2,5y3のそれぞれに筒部3b,3c,3dを通すと共に、第2の弾性体7を拡径部5y4に嵌め込む。これにより、第2の弾性体7の他端側を第2の移動体5に設置する。
【0069】
なお、蓋体3及び第2の弾性体7に第2の移動体5を取り付けるのではなく、予め第2の移動体5に第2の弾性体7を取り付けておき、第2の弾性体7が取り付けられた第2の移動体5を蓋体3に組み立ててもよい。
【0070】
続いて、第2の移動体5に第2の刃部9を固定する。このとき、第1の移動体4への第1の刃部8の固定と同様、組み込み部5sに第2の刃部9を組み込み、第2の刃部9の貫通孔9e及び第2の移動体5のネジ穴5s5にネジN2を挿入し、ネジN2をネジ穴5s5にねじ込むことによって第2の刃部9を第2の移動体5に固定させる。
【0071】
その後、蓋体3をケース2に嵌め込んで蓋体3でケース2を封止する。具体的には、蓋体3の筒部3b,3c,3dのそれぞれをケース2の筒部2r,2s,2tに挿入して嵌め込む。このとき、筒部3cの環状突出部3c1をケース2の筒部2s内に嵌め込むと共に、筒部3b,3dの各環状突出部3b1,3d1をケース2の筒部2r,2tの縮径部2r1,2t1に嵌合してケース2に蓋体3を嵌め込む。そして、蓋体3でケース2の左側の開口を封止した後に、蓋体3の筒部3b,3dのそれぞれに左側からネジN1を挿入して各ネジN1を筒部2r,2tの内側にねじ込んだ後に削り器1の組み立てが完了する。
【0072】
次に、図10図13を参照して、ペンシルPを削るときにおける削り器1の各部の動作について説明する。図10は、ペンシルPが挿入されていない状態における図2(b)のX−X線断面図である。図11は、ペンシルPの図示を省略した図2(b)のXI−XI線断面図である。
【0073】
まず、図10に示されるように、ペンシルPを筒部2nに挿入する前の初期状態において、第1の移動体4は、第1の弾性体6によって削り器1の左右方向中央側に付勢されており、第2の移動体5は、第2の弾性体7によって削り器1の左右方向中央側に付勢されている。すなわち、第1の移動体4及び第2の移動体5は、互いに接近する方向に付勢されている。また、第1の移動体4の組み込み部4sに取り付けられた第1の刃部8の刃先8aは、前方に向かうに従って左側(左右方向中央側)に向かって斜めに延びており、第2の移動体5の組み込み部5sに取り付けられた第2の刃部9の刃先9aは、前方に向かうに従って右側(左右方向中央側)に向かって斜めに延びている。
【0074】
図10に示される削り器1に対し、外からケース2の筒部2nにペンシルPを挿入すると、図10及び図11に示されるように、ペンシルPが第1の移動体4と第2の移動体5の間に入り込む。このとき、ペンシルPは、第1の弾性体6による第1の移動体4への弾性力(付勢力)、及び第2の弾性体7による第2の移動体5への弾性力に抗して、第1の移動体4を右側に、第2の移動体5を左側に、それぞれ押し広げながら前方へ進行する。そして、ペンシルPの先端部P3がケース2の貫通孔2gから削り器1の外方に突出する(図1参照)。
【0075】
このように、ペンシルPが貫通孔2gから外方に突出した状態からペンシルPを後方に引くときに第1の刃部8及び第2の刃部9によってペンシルPは削られる。しかしながら、第1の移動体4の平坦部4qが第1の刃部8の刃先8aよりも左右方向中央側に位置し、第2の移動体5の平坦部5qは第2の刃部9の刃先9aよりも左右方向中央側に位置している。よって、前後方向に平行に延びるペンシルPの側面部P4(図12参照)に対しては、当接部として機能する平坦部4q,5qが側面部P4に当接し、刃先8a,9aは側面部P4に当接しない。従って、ペンシルPを後方に引いても側面部P4が削られることはない。なお、側面部P4は、ペンシルPの先端部P3以外の部分を示している。
【0076】
これに対し、ペンシルPの先端部P3に対しては、ペンシルPが後方に引かれるときに平坦部4q,5qが左右方向中央側に移動して、刃先8a,9aが先端部P3に当接する。従って、図12に示されるように、ペンシルPが後方に引かれると、刃先8aがペンシルPの先端部P3における径方向一方側の部分に入り込むと共に、刃先9aはペンシルPの先端部P3における径方向他方側の部分に入り込む。
【0077】
そして、図13(a)及び図13(b)に示されるように、ペンシルPを後方に引くと、刃先8a,9aは、ペンシルPに対して相対的に前方且つ左右方向中央側に移動する。このとき、刃先8a,9aは、軸線方向に対して傾斜する方向に直線的に移動する。よって、刃先8a,9aは、ペンシルPに入り込みながらペンシルPに対して相対的に前方且つ左右方向中央側に向かってペンシルPを平面的に削る。従って、ペンシルPは、径方向一方側及び径方向他方側のそれぞれに傾斜した平面部を有する薙刀状に削られる。このように、ペンシルPを薙刀状に削った後には、ペンシルPの製作者がカッター等で先端部P3の形状を最終仕上げする。この最終仕上げでは、例えば図14(a)及び図14(b)に示されるように、アイブロー用に最適な薙刀形状を備えたペンシルPを容易に製作することができる。
【0078】
次に、本実施形態に係る削り器1の作用効果について詳細に説明する。削り器1では、ペンシルPがケース2の内部に挿入されると、ペンシルPは、刃部8,9及び移動体4,5を弾性体6,7の弾性力に抗して移動させると共に、刃部8,9の刃先8a,9aがペンシルPの先端部P3に当接してペンシルPの先端部P3を削る。刃部8,9は、ペンシルPの軸線方向に対して傾斜する平面に沿って先端部P3を削るので、先端部P3には当該平面に沿った平面部が形成される。このように、ペンシルPをケース2の内部に挿入することによって平面部が形成されたペンシルPを速やかに製作することができる。
【0079】
従って、薙刀状のペンシルP(ペンシル100)を容易に製作することができる。また、製作者が手に持ったカッターでペンシルPを削る手間を低減させることができるので、ペンシルPの品質のばらつきを抑えることができる。
【0080】
また、削り器1は、ペンシルPに当接して、刃部8,9の刃先8a,9aをペンシルPの先端部P3以外の箇所(側面部P4)から離間させる当接部である平坦部4q,5qを備えている。従って、平坦部4q,5qがペンシルPに当接することによって、刃部8,9の刃先8a,9aがペンシルPの先端部P3以外の側面部P4に当接するのを抑制することができる。よって、ペンシルPの先端部P3以外の箇所が削れるのを抑制することができる。なお、当接部の形状は、平坦部4q,5qのような平坦状に限られず適宜変更可能である。
【0081】
また、削り器1では、複数の刃部である第1の刃部8と第2の刃部9が互いに対称となる位置に設けられている。よって、第1の刃部8及び第2の刃部9が設けられることにより、削り器1へのペンシルPの一度の挿入でペンシルPが削れる量を多くすることができる。従って、ペンシルPを速やかに削ることができる。また、第1の刃部8及び第2の刃部9が互いに対称となる位置に設けられることにより、ペンシルPをバランスよく安定して削ることができる。
【0082】
また、刃部8,9、及び刃部8,9の刃先8a,9aは、軸線方向(前後方向)及び移動体4,5の移動方向(左右方向)に対して垂直な垂直方向(上下方向)に対して傾斜する方向に延びている。従って、ペンシルPに対し刃先8a,9aが斜めに当接するので、刃先8a,9aの多くの部分をペンシルPに当てることができる。
【0083】
よって、ペンシルPに刃先8a,9aを当てるときの抵抗を減らすことができるので、刃先8a,9aをペンシルPに入りやすくすることができる。従って、ペンシルPの先端部P3をよりスムーズに削ることができる。また、刃部8,9が傾斜する方向に延びることによって、刃部8,9が取り付けられた移動体4,5、及び移動体4,5を収容するケース2の大きさを抑えることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、削り器1を構成する各部品の構成は上記の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
例えば、前述の実施形態では、第1の前部2a、第2の前部2b、上部2c、後部2d、右側部2e及び底部2fを有するケース2について説明したが、ケースの形状及び大きさは適宜変更可能である。また、ケース2の貫通孔の形状、大きさ及び個数についても適宜変更可能である。更に、蓋体の形状及び大きさについても、前述の蓋体3に限られず、適宜変更可能である。
【0086】
また、前述の実施形態では、第1の移動体4、第1の弾性体6及び第1の刃部8が、ペンシルPに対して、第2の移動体5、第2の弾性体7及び第2の刃部9と対称となるように配置される例について説明した。しかしながら、これらの各部品は、互いに対称となるように配置されていなくてもよい。すなわち、互いに非対称に配置されていてもよい。
【0087】
また、第1の移動体4、第2の移動体5、第1の弾性体6、第2の弾性体7、第1の刃部8及び第2の刃部9それぞれの形状及び大きさは適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、移動体、弾性体及び刃部が2個ずつ設けられる例について説明したが、移動体、弾性体及び刃部の数は、1個又は3個以上であってもよい。また、刃部が延在する方向は、上下方向に対して傾斜していなくてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、刃先8a,9aが前方に向かうに従って左右方向中央側に斜めに延びており、ペンシルPを後方に引くときに刃先8a,9aがペンシルPを削る削り器1について説明した。しかしながら、削り器は、刃先が後方に向かうに従って左右方向中央側に斜めに延びており、ペンシルPを前方に押すときに当該刃先がペンシルPを削るものであってもよい。
【0089】
また、前述の実施形態では、丸棒状のペンシルPについて説明した。しかしながら、ペンシルの形状及び大きさは適宜変更可能である。すなわち、長手方向に直交する方向に延びる断面で切断したときのペンシルの断面形状は、円形に限られず、楕円、長円、三角形、四角形、五角形、六角形、その他の多角形等であってもよい。更に、ペンシルの芯及び木部の形状、大きさ及び材料も適宜変更可能である。このように、本発明に係る削り器は、様々な種類のペンシルを削ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1…削り器、2…ケース、3…蓋体、4…第1の移動体(移動体)、4q…平坦部(当接部)、5…第2の移動体(移動体)、5q…平坦部(当接部)、6…第1の弾性体(弾性体)、7…第2の弾性体(弾性体)、8…第1の刃部(刃部)、8a…刃先、9…第2の刃部、9a…刃先、P…ペンシル、P1…芯、P2…木部、P3…先端部、P4…側面部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15