【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、産学共創基礎基盤研究プログラム、「ナノカーボン材料を用いた新規テラヘルツ検出器の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁波が入射する導体基板の平面において、前記電磁波のうち第1波長から第2波長の受信する所望の帯域と前記平面上の所定の位置を中心とする角度とに応じて前記第1波長の間隔から前記第2波長の間隔に変化する間隔で、前記平面上の所定の位置を中心に同心円状に配置される複数の溝を金属の蒸着により形成する
ことを特徴とするプラズモニックアンテナの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0019】
図1は、検出装置の一実施形態を示す。
【0020】
図1に示した検出装置100は、光源10、プラズモニックアンテナ20および検出部30を有する。
【0021】
光源10は、THz帯の電磁波をプラズモニックアンテナ20に向けて射出する。なお、光源10が射出する電磁波の周波数および帯域幅は、例えば、検出装置100に含まれるプロセッサ等の演算処理装置、または検出装置100に接続される外部のコンピュータ装置等により、適宜制御されることが好ましい。
【0022】
プラズモニックアンテナ20は、例えば、金、銀、銅等の金属の導体基板であり、光源10により射出された電磁波が入射する導体基板の面上に、同心円状に複数の溝が形成されたBE構造を有する。そして、プラズモニックアンテナ20は、BE構造による表面プラズモンにより、光源10から受信するTHz帯の電磁波をBE構造の中心に集光する。プラズモニックアンテナ20は、集光したTHz帯の電磁波を、BE構造の中心に配置された検出対象の対象物OBJに照射する。プラズモニックアンテナ20は、対象物OBJを透過したTHz帯の電磁波を検出部30に出力する。プラズモニックアンテナ20については、
図2−
図5で説明する。
【0023】
なお、対象物OBJは、プラズモニックアンテナ20におけるBE構造の中心に配置されたが、光源10とプラズモニックアンテナ20との間に配置されてもよい。この場合、プラズモニックアンテナ20は、対象物OBJを透過したTHz帯の電磁波を受信し、受信した電磁波を集光して検出部30に出力する。
【0024】
検出部30は、例えば、フォトダイオード等の検出器であり、プラズモニックアンテナ20から出力された電磁波を検出し、電気信号等に変換する。検出部30は、電気信号を検出装置100の演算処理装置や外部のコンピュータ装置に出力する。そして、検出装置100の演算処理装置や外部のコンピュータ装置は、例えば、受信した電気信号に対してスペクトル処理等を実行し、対象物OBJにおける固有の格子振動等、対象物OBJの内部構造を解析する。これにより、例えば、包装された錠剤等の非破壊検査における物質固有の吸収スペクトルを検出することができる。なお、検出部30は、プラズモニックアンテナ20と一体に形成されてもよい。
【0025】
図2は、
図1に示したプラズモニックアンテナ20の一例を示す。
図2(a)は、光源10からの電磁波が入射する導体基板の平面上に形成されたプラズモニックアンテナ20を示す。
図2(b)は、
図2(a)に示した破線A1−A2におけるプラズモニックアンテナ20の断面を示す。なお、
図2では、プラズモニックアンテナ20が形成される導体基板の平面をXY平面とし、XY平面に対して垂直で、プラズモニックアンテナ20から光源10の方向をZ軸とする。
【0026】
図2(b)に示すように、プラズモニックアンテナ20は、例えば、電磁波が入射するXY平面上に、所望する2つのTHz帯の電磁波の受信波長に応じた間隔d1、d2で、黒色の領域で示す半円の複数の溝40、50が同心円状に配置されたBE構造を有する。なお、間隔d1、d2は、THz帯の電磁波の波長であることから、数100マイクロメートルの大きさとなる。
【0027】
また、プラズモニックアンテナ20には、同心円状に配置された溝40、50の中心に、Z軸方向に貫通した穴部HLが配置される。そして、プラズモニックアンテナ20は、BE構造による表面プラズモンにより、光源10から受信するTHz帯の電磁波を穴部HLに向けて集光し、穴部HLを介して集光した電磁波を検出部30に出力する。なお、
図1に示すように、対象物OBJが穴部HLの位置に配置される場合、プラズモニックアンテナ20は、集光した電磁波を対象物OBJに照射し、対象物OBJを透過した電磁波を検出部30に穴部HLを介して出力する。
【0028】
このように、プラズモニックアンテナ20は、間隔d1、d2で配置された2つの溝40、50を有することにより、間隔d1、d2の各々に対応した波長を有するTHz帯の2つの電磁波を受信することができる。
【0029】
なお、プラズモニックアンテナ20では、XY平面が穴部HLの中心においてY軸方向に2分割され、分割された領域の各々において、半円の溝40、50が間隔d1、d2で同心円状にそれぞれ配置されたが、XY平面が穴部HLの中心で3以上の領域に分割されてもよい。この場合、
図2と同様に、分割された各領域には、THz帯の電磁波のうち所望の受信波長に応じた間隔で、同心円状の複数の溝が穴部HLの周囲に配置される。これにより、プラズモニックアンテナ20は、3以上の波長の電磁波を受信することができる。穴部HLの中心は、所定の位置の一例である。
【0030】
また、プラズモニックアンテナ20では、溝40、50の数は、3つおよび5つとしたが、要求される電磁波の受信感度、周波数帯域やプラズモニックアンテナ20の大きさ等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0031】
また、プラズモニックアンテナ20は、例えば、検出装置100の演算処理装置や外部のコンピュータ装置等による制御に基づいて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に圧力が印加され、溝40、50の間隔d1、d2が制御されてもよい。あるいは、プラズモニックアンテナ20は、例えば、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)を有し、外部のコンピュータ装置等がNEMSを制御することで、溝40、50の間隔d1、d2が制御されてもよい。そして、溝40、50の間隔d1、d2が制御されることにより、プラズモニックアンテナ20は、受信する電磁波の波長をシフトでき、受信する電磁波の帯域を調整できる。
【0032】
また、プラズモニックアンテナ20は、光源10と異なる外部の光源により電磁波が照射され、プラズモニックアンテナ20における誘電率およびキャリア密度の少なくとも一方を変化させることで、受信する電磁波の波長をシフトさせてもよい。
【0033】
なお、プラズモニックアンテナ20は、エッチング等により溝40、50に対応する凹凸の構造が形成されたシリコン等の基板の平面に、金等の金属を蒸着することにより、誘電体層として機能するシリコン等を有していてもよい。そして、配置された誘電体層が有する屈折率により、誘電体層中を伝播するTHz帯の電磁波の波長は、空気中を伝播する場合と比べて短くなるため、溝40、50の間隔d1、d2が小さくなる。屈折率をnとする場合、溝の間隔dと受信するTHz帯の電磁波の波長λとは、式(1)のように関係付けられる。
【0034】
d=λ/n …(1)
例えば、誘電体層がシリコンの場合、屈折率nは3.41であるため、間隔dを波長λより3.41分の1倍小さくすることができ、プラズモニックアンテナ20を小型化できる。また、プラズモニックアンテナ20は、誘電体層が配置されることにより、同じ開口面積を有する場合でも、より多くの溝40、50を配置できるため、誘電体層が無い場合と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。
【0035】
また、配置される誘電体層内で電磁波の定在波が生じるように、例えば、Z軸方向における誘電体層の厚さDzを式(2)に基づいて調整することにより、プラズモニックアンテナ20の感度を向上させることができる。
【0036】
Dz=Δ+M×λ’eff/2 …(2)
なお、λ’effは、共鳴ピーク波長の実行波長を示し、Δは、波長λ’effの定在波が存在できる最小の厚さを示し、Mは、0以上の正の整数を示す。
【0037】
図3は、
図1に示したプラズモニックアンテナ20の別例を示す。
図3は、
図2(a)の場合と同様に、電磁波が入射する導体基板のXY平面上に形成されたプラズモニックアンテナ20を示す。また、
図3のX、Y、Z軸の各々は、
図2の場合と同様である。
【0038】
図3に示したプラズモニックアンテナ20では、穴部HLの中心においてXY平面がX軸およびY軸方向にそれぞれ2分割される。そして、分割された領域の各々には、穴部HLの中心で対向する領域と同じ受信する電磁波の波長に応じた間隔d1または間隔d2で、溝40または溝50が穴部HLの周囲に同心円状に配置される。
【0039】
このように、
図3に示したプラズモニックアンテナ20は、間隔d1、d2で配置された2つの溝40、50を有することにより、間隔d1、d2の各々に対応した波長を有するTHz帯の2つの電磁波を受信することができる。
【0040】
なお、プラズモニックアンテナ20では、穴部HLの中心においてXY平面が2N等分に分割されてもよい(Nは2以上の自然数)。この場合、
図3の場合と同様に、プラズモニックアンテナ20の各領域には、穴部HLの中心で対向する領域と同じ受信する電磁波の波長に応じた間隔で、溝が穴部HLの周囲に同心円状に配置される。これにより、プラズモニックアンテナ20は、N以上の波長の電磁波を受信することができる。
【0041】
また、プラズモニックアンテナ20は、例えば、検出装置100の演算処理装置や外部のコンピュータ装置等による制御に基づいて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に圧力が印加され、溝40、50の間隔d1、d2が制御されてもよい。あるいは、プラズモニックアンテナ20は、例えば、NEMSを有し、外部のコンピュータ装置等がNEMSを制御することで、溝40、50の間隔d1、d2が制御されてもよい。そして、溝40、50の間隔d1、d2が制御されることにより、プラズモニックアンテナ20は、受信する電磁波の波長をシフトでき、受信する電磁波の帯域を調整できる。
【0042】
また、プラズモニックアンテナ20は、光源10と異なる外部の光源により電磁波が照射され、プラズモニックアンテナ20における誘電率およびキャリア密度の少なくとも一方を変化させることで、受信する電磁波の波長をシフトさせてもよい。
【0043】
また、プラズモニックアンテナ20では、溝40、50の数は、3つおよび5つとしたが、要求される電磁波の受信感度、周波数帯域やプラズモニックアンテナ20の大きさ等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0044】
また、プラズモニックアンテナ20は、エッチング等により溝40、50に対応する凹凸に構造が形成されたシリコン等の基板の平面に、金等の金属を蒸着することにより、誘電体層として機能するシリコン等を有していてもよい。式(1)に示すように、配置された誘電体層の屈折率により、誘電体層中を伝播するTHz帯の電磁波の波長は、空気中を伝播する場合と比べて短くなるため、溝40、50の間隔d1、d2を小さくでき、プラズモニックアンテナ20を小型化できる。また、プラズモニックアンテナ20は、誘電体層が配置されることにより、同じ開口面積を有する場合でも、より多くの溝40、50を配置できるため、誘電体層が無い場合と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。
【0045】
また、配置される誘電体層内で電磁波の定在波が生じるように、例えば、Z軸方向の誘電体層における厚さDzを式(2)に基づいて調整することにより、プラズモニックアンテナ20の感度を向上させてもよい。
【0046】
図4は、
図1に示したプラズモニックアンテナ20の別例を示す。
図4は、
図2(a)の場合と同様に、電磁波が入射する導体基板のXY平面上に形成されたプラズモニックアンテナ20を示す。また、
図4のX、Y、Z軸の各々は、
図2の場合と同様である。
【0047】
図4に示したプラズモニックアンテナ20には、例えば、穴部HLの中心において、正のX軸方向(角度θが0度)から負のX軸方向(角度θが180度)に変化する間に、間隔がd1からd2に変化する黒色の領域で示した複数の溝40aが同心円状に配置される。例えば、溝40aの間隔daは、例えば、式(3)のように角度θと関係付けられる。
【0048】
da=d1−(d1−d2)(1−cosθ)/2 …(3)
すなわち、溝40aの間隔daは、正のX軸方向からの角度θに応じて、d1からd2に連続的に変化する。また、
図4に示したプラズモニックアンテナ20では、複数の溝40aは、穴部HLの中心を通るX軸方向に平行な破線で示した直線に対して軸対称に配置される。なお、複数の溝40aは、例えば、穴部HLの中心に対して点対称に配置されてもよい。
【0049】
図5は、
図4に示した溝40aが点対称に配置されたプラズモニックアンテナ20の一例を示す。なお、
図5は、
図4の場合と同様に、電磁波が入射する導体基板のXY平面上に形成されたプラズモニックアンテナ20を示し、X、Y、Z軸の各々は、
図4の場合と同様である。
【0050】
このように、
図4および
図5に示したプラズモニックアンテナ20は、間隔daが連続する複数の溝40aを有することにより、波長λ1(間隔d1)から波長λ2(間隔d2)の帯域幅における電磁波を受信することができる。波長λ1は、第1波長の一例であり、波長λ2は、第2波長の一例である。
【0051】
なお、溝40aの間隔daは、角度θが0度から360度に変化する間に、d1からd2に変化してもよい。
【0052】
また、プラズモニックアンテナ20は、例えば、検出装置100の演算処理装置や外部のコンピュータ装置等による制御に基づいて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に圧力が印加され、溝40aの間隔daが制御されてもよい。あるいは、プラズモニックアンテナ20は、例えば、NEMSを有し、外部のコンピュータ装置等がNEMSを制御することで、溝40aの間隔daが制御されてもよい。そして、溝40aの間隔daが制御されることにより、プラズモニックアンテナ20は、受信する電磁波の波長をシフトでき、受信する電磁波の帯域を調整できる。
【0053】
また、プラズモニックアンテナ20は、光源10と異なる外部の光源により電磁波が照射される、あるいはゲート電圧により誘電体中のキャリア密度を変化させることで、受信する電磁波の波長をシフトさせてもよい。
【0054】
また、
図4および
図5に示したプラズモニックアンテナ20では、溝40aの数は、5つとしたが、要求される電磁波の受信感度、周波数帯域やプラズモニックアンテナ20の大きさ等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0055】
また、
図4および
図5に示したプラズモニックアンテナ20は、エッチング等により溝40aに対応する凹凸の構造が形成されたシリコン等の基板の平面に、金等の金属を蒸着することにより、誘電体層として機能するシリコン等を有していてもよい。式(1)に示すように、形成された誘電体層の屈折率により、誘電体層中を伝播するTHz帯の電磁波の波長は、空気中を伝播する場合と比べて小さくなるため、溝40aの間隔を短くでき、プラズモニックアンテナ20を小型化できる。また、プラズモニックアンテナ20は、誘電体層が配置されることにより、同じ開口面積でもより多くの溝40aを配置できるため、誘電体層が無い場合と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。
【0056】
また、配置される誘電体層内で電磁波の定在波が生じるように、例えば、Z軸方向における誘電体層の厚さDzを式(2)に基づいて調整することにより、プラズモニックアンテナ20の感度を向上させてもよい。
【0057】
図6は、
図1に示したプラズモニックアンテナ20の製造方法の一例を示す。
図6では、例えば、
図2に示したプラズモニックアンテナ20を生成する場合の製造方法を示す。なお、
図3−
図5に示したプラズモニックアンテナ20についても、
図6に示した方法で同様に製造される。
【0058】
図6では、例えば、金等の導体基板SBのXY平面のうち、電磁波が入射するXY平面上に、溝40、50を形成するために、溝40、50以外の網掛けで示したXY平面の部分を、フォトマスク等を用いて皮膜MKでマスクする。なお、
図6(a)は、
図2の場合と同様に、電磁波が入射する導体基板SBのXY平面を示し、
図6(b)は、
図6(a)に示した破線A1−A2の位置における導体基板SBの断面を示す。
【0059】
次に、
図6に示したパターンの皮膜MKでマスクされた導体基板SBの平面に、金等の金属を蒸着することにより、皮膜MKでマスクされた導体基板SBの部分が溝40、50として形成される。そして、皮膜MKは、導体基板SBから除去される。その後、穴部HLを形成するために、穴部HL以外の導体基板SBの部分を、フォトマスク等を用いて皮膜でマスクする。穴部HL以外の部分が皮膜でマスクされた導体基板SBをエッチングすることにより、穴部HLが形成される。そして、皮膜を除去することにより、プラズモニックアンテナ20が生成される。
【0060】
図1から
図6に示した実施形態では、プラズモニックアンテナ20は、穴部HLの中心においてXY平面を分割した複数の領域の各々において、THz帯の電磁波のうち所望の受信波長に応じた間隔d1、d2で、同心円状に配置された複数の溝40、50を有する。あるいは、プラズモニックアンテナ20は、波長λ1から波長λ2の帯域幅における電磁波の波長に応じて連続的に変化する間隔daで、穴部HLの周囲に配置された複数の溝40aを有する。すなわち、間隔が異なる複数の溝が配置されることにより、プラズモニックアンテナ20は、入射するTHz帯の電磁波のうち、所望する複数の波長の電磁波を受信することができ、広帯域化を図ることができる。
【0061】
また、プラズモニックアンテナ20は、シリコン等の誘電体層が配置されることにより、プラズモニックアンテナ20の小型化および高感度化を図ることができる。
【0062】
図7は、検出装置の別の実施形態を示す。
図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0063】
図7に示した検出装置100Aは、光源10、プラズモニックアンテナ20aおよび検出部30を有する。
【0064】
プラズモニックアンテナ20aは、例えば、シリコン等の誘電体基板と、金等の導体層とを含み、誘電体基板のうち電磁波が入射する平面に対向する平面上に、同心円状に複数の溝が形成されたBE構造を有する。そして、プラズモニックアンテナ20aは、光源10により射出され、対象物OBJを透過したTHz帯の電磁波を受信する。プラズモニックアンテナ20aは、複数の溝が形成された面に配置された導体層のBE構造による表面プラズモンにより、受信した電磁波をBE構造の中心に集光する。プラズモニックアンテナ20aは、集光したTHz帯の電磁波を検出部30に出力する。プラズモニックアンテナ20aについては、
図8で説明する。電磁波が入射する誘電体基板の平面は、第1平面の一例である。電磁波が入射する平面に対向する誘電体基板の平面は、第2平面の一例である。
【0065】
なお、対象物OBJは、光源10とプラズモニックアンテナ20aとの間に配置されたが、プラズモニックアンテナ20aと検出部30との間に配置されてもよい。この場合、プラズモニックアンテナ20aは、集光したTHz帯の電磁波を対象物OBJに照射し、検出部30は、対象物OBJを透過したTHz帯の電磁波を受信する。
【0066】
図8は、
図7に示したプラズモニックアンテナ20aの一例を示す。
図8(a)は、電磁波が入射する平面と対向する誘電体基板の平面(すなわち、電磁波が検出部30に出力される平面)上に形成されたプラズモニックアンテナ20aを示す。以下では、電磁波が検出部30に出力される平面は、“出力側平面”とも称される。
図8(b)は、
図7(a)に示した破線B1−B2におけるプラズモニックアンテナ20aの断面を示す。なお、
図8では、プラズモニックアンテナ20aが形成される誘電体基板の平面をXY平面とし、XY平面に対して垂直で、プラズモニックアンテナ20aから光源10の方向をZ軸とする。
【0067】
図8(b)に示すように、プラズモニックアンテナ20aは、誘電体基板110と導体層120とを有する。誘電体基板110は、例えば、シリコンや酸化チタン等であり、出力側平面であるXY平面上に、受信するTHz帯の電磁波のうち所望の受信波長に応じた間隔dcで複数の溝40bが同心円状に配置されたBE構造を有する。
【0068】
導体層120は、例えば、金、銀、銅等の金属膜であり、溝40bが形成された誘電体基板110のXY平面(出力側平面)上に、蒸着により膜厚dtの層状に配置され、プラズモニックアンテナ20aとして動作する。なお、導体層120の膜厚dtは、溝40bの幅Wの2分の1より薄くし、溝40bが、導体層120により完全に埋まらないようにすることが好ましい。そして、導体層120が、予め溝40bが形成された誘電体基板110のXY平面に蒸着により可能な限り薄く形成されることにより、非特許文献2のように、導体基板の内部においてTHz帯の電磁波の多重反射を回避できる。この結果、プラズモニックアンテナ20aは、例えば、非特許文献2の場合と比べて、THz帯の電磁波に対する感度を200倍程度向上させることができる。
【0069】
また、誘電体基板110がシリコンの場合、屈折率nは3.41であるため、間隔dcを波長λより3.41分の1倍小さくすることができ、プラズモニックアンテナ20aを小型化できる。
【0070】
また、プラズモニックアンテナ20aでは、溝40bの数は3つとしたが、要求される電磁波の受信感度、周波数帯域やプラズモニックアンテナ20aの大きさ等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0071】
また、プラズモニックアンテナ20aは、例えば、検出装置100Aの演算処理装置や外部のコンピュータ装置等による制御に基づいて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に圧力が印加され、溝40bの間隔dcが制御されてもよい。あるいは、プラズモニックアンテナ20aは、例えば、NEMSを有し、外部のコンピュータ装置等がNEMSを制御することで、溝40bの間隔dcが制御されてもよい。そして、溝40bの間隔dcが制御されることにより、プラズモニックアンテナ20aは、受信する電磁波の波長をシフトでき、受信する電磁波の帯域を調整できる。すなわち、プラズモニックアンテナ20aの広帯域化を図ることができる。
【0072】
また、プラズモニックアンテナ20aは、光源10と異なる外部の光源により電磁波が照射され、プラズモニックアンテナ20aにおける誘電率およびキャリア密度の少なくとも一方を変化させることで、受信する電磁波の波長をシフトさせてもよい。
【0073】
また、プラズモニックアンテナ20aは、誘電体基板110を有するため、プラズモニックアンテナ20aの小型化を図ることできる。また、プラズモニックアンテナ20aは、誘電体基板110を有することにより、同じ開口面積を有する場合でも、より多くの溝40cを配置できるため、誘電体層が無い場合と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。
【0074】
また、配置される誘電体層内で電磁波の定在波が生じるように、例えば、Z軸方向における誘電体基板110の厚さDzを式(2)に基づいて調整することにより、プラズモニックアンテナ20の感度を向上させることができる。
【0075】
また、誘電体基板110に形成された複数の溝40bは、
図8に示すように、穴部HLに中心にして同心円状に形成されたが、例えば、
図2から
図5に示した形状の溝が形成されてもよい。
【0076】
図9は、
図7に示したプラズモニックアンテナ20aの製造方法の一例を示す。
図9では、例えば、
図8に示したプラズモニックアンテナ20aを生成する場合の製造方法を示す。なお、プラズモニックアンテナ20aが
図2−
図5に示したパターンの溝を有する場合についても、
図9に示した方法で同様に製造される。また、
図6で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0077】
図9では、例えば、式(2)に示す厚さDzを有する誘電体基板110のXY平面うち、出力側平面上に溝40bを形成するために、溝40b以外の網掛けで示した出力側平面の部分を、フォトマスク等を用いて皮膜MKでマスクする。なお、
図9(a)は、誘電体基板110の出力側平面を示し、
図9(b)は、
図9(a)に示した破線B1−B2の位置における誘電体基板110の断面を示す。
【0078】
次に、
図9に示したパターンの皮膜MKでマスクされた誘電体基板110をエッチングすることにより、白色で示した領域のシリコンが除去され、
図8に示した溝40bが形成される。そして、皮膜MKを誘電体基板110から除去し、溝40bが形成された誘電体基板110の出力側平面に対して、金等の金属を蒸着することにより、膜厚dtの導体層120が形成される。その後、穴部HLを形成するために、穴部HL以外の導体層120の部分を、フォトマスク等を用いて皮膜でマスクする。穴部HL以外の部分が皮膜でマスクされた導体層120をエッチングすることにより、穴部HLの導体層120が除去される。そして、皮膜を除去することにより、プラズモニックアンテナ20aが生成される。
【0079】
図7から
図9に示した実施形態では、プラズモニックアンテナ20aは、溝40bが形成された誘電体基板110の出力側平面上に、溝40bの幅Wの2分の1より薄い膜厚dtを有する導体層120が蒸着される。すなわち、導体層120は、予め溝40bが形成された誘電体基板110の出力側平面上に蒸着により形成されることで、従来と比べて薄く配置することができる。これにより、プラズモニックアンテナ20aは、従来と比べて、THz帯の電磁波の感度を200倍程度以上に向上させることができる。
【0080】
また、プラズモニックアンテナ20aは、外部のコンピュータ装置等による制御に基づいて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に圧力が印加される等により、溝40bの間隔dcが変えられることで、受信する電磁波の波長をシフトでき、受信する電磁波の帯域を調整できる。これにより、プラズモニックアンテナ20aは、受信するTHz帯の電磁波の広帯域化を図ることができる。
【0081】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。