特許第6807130号(P6807130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6807130
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】化粧品容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   A45D34/04
   A45D34/04 515Z
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-512889(P2020-512889)
(86)(22)【出願日】2019年11月13日
(86)【国際出願番号】JP2019044599
【審査請求日】2020年3月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509119197
【氏名又は名称】株式会社エイエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宏紀
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−003921(JP,U)
【文献】 特開2017−047202(JP,A)
【文献】 特開平08−324562(JP,A)
【文献】 特開2003−192031(JP,A)
【文献】 実開平07−003514(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0055678(US,A1)
【文献】 特開2013−075672(JP,A)
【文献】 特開2018−134738(JP,A)
【文献】 特表2008−531198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B43K 1/00
B43K 5/00
B65D 1/00
B65D 1/02
B65D 23/00
B65D 1/40
B65D 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部容器の内側に内部容器が挿入されて形成される容器本体を有する化粧品容器であって、
前記内部容器の本体部は、基部と、前記基部の上方に形成される拡径部から構成され、
前記容器本体が形成されたときに、前記外部容器の内面と前記内部容器の前記基部の外面の間の距離は、下方に向かうに連れて大きくなるように構成されており、
前記内部容器の前記基部の外周面及び前記拡径部の外周面にわたって、前記内部容器の長手方向における長さが、前記長手方向と直交する方向の長さよりも長い溝部が形成されており、
前記溝部の前記長手方向の長さは、前記外部容器の内面と前記内部容器の前記基部の外面の間の距離によって規定されており、
前記溝部は、前記内部容器が前記外部容器に挿入されたときに、前記容器本体の外部に通じるように構成されている、
化粧品容器。
【請求項2】
前記溝部の幅は、前記内部容器の上端に向かうほど大きくなるように構成されている、
請求項1に記載の化粧品容器。
【請求項3】
前記溝部は、前記拡径部に形成される第一溝部と、前記拡径部と前記本体部にわたって形成される第二溝部とで構成されており、
前記第二溝部は、前記内部容器の上端に向かうほど幅が大きくなり、
前記第一溝部の幅は、前記第二溝部における最も大きい幅よりも小さく構成されている、請求項1に記載の化粧品容器。
【請求項4】
前記溝部が延存する方向は、前記長手方向と直交する方向成分を有する、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の化粧品容器。
【請求項5】
前記溝部は、螺旋状に形成された螺旋状部分と、前記螺旋状部分の所定の位置を接続する直線状に形成された直線状部分を有する、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の化粧品容器。
【請求項6】
前記外部容器及び前記内部容器は、長手方向に直交する方向の断面は円形に形成されており、
前記内部容器は樹脂で形成されており、前記内部容器の前記本体部の前記拡径部の直径は、前記外部容器の内周面の上端部の直径よりも所定の程度だけ大きく形成されている、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の化粧品容器。
【請求項7】
外部キャップの内側に内部キャップが挿入されて形成されるキャップを有し、
前記内部キャップの上端部と前記外部キャップの天井面との間には空間が存在し、
前記内部キャップの外面には、前記長手方向の長さが、前記長手方向と直交する方向の長さよりも長い複数のキャップ溝部が形成されており、
一部の前記キャップ溝部は前記空間と前記キャップの外部の双方に通じるように構成されており、他の前記キャップ溝部は、前記空間に通じ、前記外部に通じないように構成されている、
請求項1乃至6のいずれかに記載の化粧品容器。
【請求項8】
前記キャップの外部に通じるように構成されている前記キャップ溝部の幅は、前記溝部の下端近傍の所定位置において狭くなるように構成されている、
請求項7に記載の化粧品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品容器の製造工程において、部品同士を確実に接続することが重要である。
【0003】
マスカラを格納する容器に関する技術は多数提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、ボトル2にマスカラが格納される。これに対して、外部容器の内側に、マスカラを格納するための内部容器を配置して形成される化粧品容器(以下、「二重容器」という。)を採用する場合には、外部容器と内部容器を確実に接続する必要がある。外部容器と内部容器を接続するために、例えば、熱可塑性樹脂が接続用の材料として使用される。この場合、溶解した熱可塑性樹脂を外部容器と内部容器の間に配置するのであるが、外部容器と内部容器の間に存在する気体が膨張し、外部容器と内部容器の接続が困難になる場合がある。また、いったん良好に外部容器と内部容器を接続しても、後の滅菌工程等における加熱によって、やはり、外部容器と内部容器の間に存在する気体が膨張し、外部容器と内部容器の接続が不良になる場合もある。
【0006】
本発明は、上記を踏まえて、外部容器と内部容器が確実に接続された化粧品容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、外部容器の内側に内部容器が挿入されて形成される容器本体を有する化粧品容器であって、前記内部容器の外面には、前記内部容器の長手方向の長さが、前記長手方向と直交する方向の長さよりも長い溝部が形成されており、前記溝部は、前記内部容器が前記外部容器に挿入されたときに、前記容器本体の外部に通じるように構成されている、化粧品容器である。
【0008】
第一の発明の構成によれば、内部容器の外面に形成された溝部が容器本体の外部に通じるように構成されているから、内部容器と外部容器の間において気体が膨張した場合には、容器本体の外部に排出される。このため、内部容器と外部容器の接続に際して気体が膨張しても、膨張した気体は溝部によって外部に排出されるから、内部容器と外部容器を確実に接続することができる。
【0009】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記容器本体が形成されたときに、前記外部容器の内面と前記内部容器の外面の間の距離は、下方に向かうに連れて大きくなるように構成されており、前記溝部の前記長手方向の長さは、前記距離によって規定されている、化粧品容器である。
【0010】
外部容器の内面と内部容器の外面の間の距離が、十分に大きい場合には、外部容器と内部容器の間を気体が通過するための抵抗が小さいから、溝部は不要である。これに対して、当該距離が十分に大きくない場合には、外部容器と内部容器の間を気体が通過するための抵抗が大きいから、溝部が有用である。この点、第二の発明の構成によれば、溝部の長さは、外部容器の内面と内部容器の外面の間の距離によって規定されるから、必要十分な長さにおいて溝部を形成することができる。
【0011】
第三の発明は、第二の発明の構成において、前記溝部の幅は、前記内部容器の上端に向かうほど大きくなるように構成されている、化粧品容器である。
【0012】
化粧品容器において、外部容器と内部容器は、それぞれの上端において互い位置決めされる。すなわち、外部容器と内部容器の上端において、外部容器の内面と内部容器の外面は接している。外部容器の内面と内部容器の外面の間の距離が大きいほど、気体が通過するための抵抗が小さいから、溝の幅は狭くて(小さくても)も足りる。外部容器の内面と内部容器の外面の間の距離が小さいほど、気体が通過するための抵抗が大きいから、溝の幅は広い(大きい)方がよい。そして、外部容器の内面と内部容器の外面の間の距離は、下方に向かうに連れて大きくなるように構成されているから、内部容器の上端に向かうほど、気体が通過するための抵抗が大きい。この点、第三の発明の構成によれば、溝部の幅は、容器の上端へ向かうほど大きくなるように構成されているから、容器本体の上端近傍においても、膨張した気体を溝部に取り込み、外部に放出することができる。
【0013】
第四の発明は、第二の発明の構成において、前記溝部は、前記内部容器の上端近傍の所定範囲に形成される第一溝部と、前記第一溝部と連続して形成される第二溝部とで構成されており、前記第二溝部は、前記所定範囲の所定位置まで延在しており、前記内部容器の上端に向かうほど幅が大きくなり、前記第一溝部の幅は、前記第二溝部における最も大きい幅よりも小さく構成されている、化粧品容器である。
【0014】
外部容器に内部容器が挿入される容器においては、内部容器と外部容器とは、それぞれの上端近傍において互いに位置決めされる。したがって、容器の上端近傍において、気体が通過するための抵抗を小さくするためには、溝部の幅は大きい方が望ましいのであるが、位置決めの観点からは、溝部の幅は小さい方が望ましい。ここで、溝部は、気体が通過する通路として機能するほかに、気体を保留する緩衝部としても機能する。言い換えると、膨張した気体が溝部に保留されるから、外部容器と内部容器の接続に対して、気体の膨張が直ちには影響しない。そうすると、溝部の幅は、必ずしも、上端に至るまで大きい幅を維持する必要はない。この点、第四の発明の構成によれば、溝部の幅は、第二溝部においては上端へ向かうほど大きくなるように構成されているが、第一溝部の幅は第二溝部の最も大きい幅よりも小さくなるように構成されているから、気体が通過するための抵抗を小さくするという要請と、外部容器と内部容器の位置決めを確実にするという要請を満足しつつ、気体の膨張が外部容器と内部容器の接続の障害となる問題を解消している。
【0015】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかの構成において、前記溝部が延存する方向は、前記長手方向と直交する方向成分を有する、化粧品容器である。
【0016】
第五の発明の構成によれば、長手方向と直交する方向において、膨張した気体が溝部に流れ込むことができる位置が増えるから、膨張した気体を効率的に溝部に取り込むことができる。
【0017】
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明のいずれかの構成において、前記溝部は、螺旋状に形成された螺旋状部分と、前記螺旋状部分の所定の位置を接続する直線状に形成された直線状部分を有する、化粧品容器である。
【0018】
第六の発明の構成によれば、長手方向と直交する方向におけるいずれの位置においても、膨張した気体が溝部に流れ込むことができるから、膨張した気体を効率的に溝部に取り込むことができる。
【0019】
第七の発明は、第一の発明乃至第六の発明のいずれかの構成において、前記外部容器及び前記内部容器は、長手方向に直交する方向の断面は円形に形成されており、前記内部容器は樹脂で形成されており、前記内部容器の外周面において、上端近傍の所定範囲の直径は、前記外部容器の内周面の直径よりも所定の程度だけ大きく形成されている、化粧品容器である。
【0020】
第七の発明の構成によれば、内部容器の外周面の直径は外部容器の内周面の直径よりも所定の程度だけ大きく形成されている。このため、内部容器を外部容器に挿入するときに、樹脂製の内部容器は弾性変形して縮小する。そして、挿入が完了すると、内部容器が外部容器を内側から外側に向かって押圧する力が作用する。これにより、内部容器が外部容器と強固に接続される。
【0021】
第八の発明は、第一の発明乃至第七の発明のいずれかの構成において、外部キャップの内側に内部キャップが挿入されて形成されるキャップを有し、前記内部キャップの外面には、前記長手方向の長さが、前記長手方向と直交する方向の長さよりも長いキャップ溝部が形成されており、前記キャップ溝部は、前記内部キャップが前記外部キャップに挿入されたときに、前記キャップの外部に通じるように構成されている、化粧品容器である。
【0022】
第八の発明の構成によれば、内部キャップの外面に形成されたキャップ溝部がキャップの外部に通じるように構成されているから、内部キャップと外部キャップの接続の際に、それらの間において気体が膨張した場合には、キャップ本体の外部に排出される。このため、内部キャップと外部キャップの接続に際して気体が膨張しても、その影響が溝部によって解消されるから、内部キャップと外部キャップを確実に接続することができる。
【0023】
第九の発明は、第八の発明の構成において、前記内部キャップの外面と前記外部キャップの内面との間には空間が存在し、前記内部キャップの外面には、複数の前記キャップ溝部が形成されており、複数の前記キャップ溝部のうち、一部の前記キャップ溝部は前記空間と前記キャップの外部に通じるように構成されており、他の前記キャップ溝部は、前記空間に通じ、前記外部に通じないように構成されている、化粧品容器である。
【0024】
すべての溝部が空間とキャップの外部の双方に通じていると、気体が通過するための抵抗が小さいという観点において望ましい。一方、内部キャップが外部キャップに挿入されるキャップにおいては、内部キャップと外部キャップとは、それぞれの下端近傍において互いに位置決めされる。そして、内部キャップと外部キャップの下端がキャップの外部との境界となる。位置決めのためには、内部キャップの下端部にはキャップ溝部が存在しないことが望ましいのであるが、キャップ溝部がまったく存在しない場合には、膨張した気体を外部に放出することができない。この点、第九の発明の構成によれば、一部のキャップ溝部のみが空間とキャップの外部の双方に通じるように構成されているから、位置決めの要請と膨張した気体の排出の要請の双方を満足することができる。ここで、外部に通じていないキャップ溝部は、空間を介して外部に通じているキャップ溝部と連続するから、やはり、膨張した気体の排出を行うことができる。
【0025】
第十の発明は、第八の発明または第九の発明の構成において、前記キャップの外部に通じるように構成されている前記キャップ溝部の幅は、前記溝部の下端近傍の所定位置において狭くなるように構成されている、化粧品容器である。
【0026】
第十の発明の構成によれば、内部キャップの下端部近傍が有する外部キャップとの位置決めのための機能と、気体を外部に放出する機能の双方を満足することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、外部容器と内部容器が確実に接続された化粧品容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一の実施形態にかかる化粧品容器の概略正面図である。
図2】化粧品容器の概略平面図である。
図3】化粧品容器の概略底面図である。
図4】蓋を外した状態における化粧品容器の概略正面図である。
図5】外部容器を示す概略斜視図である。
図6】外部容器の概略断面図である。
図7】内部容器を示す概略斜視図である。
図8】内部容器の概略正面図である。
図9】内部容器の概略平面図である。
図10】溝部の拡大斜視図である。
図11】溝部の拡大斜視図である。
図12】溝部の拡大平面図である。
図13】溝部の深さ等を示す概念図である。
図14】外部容器の内周面と内部容器の外周面の関係を示す図である。
図15】外部容器の内周面と内部容器の外周面の関係を示す概念図である。
図16】外部容器の内周面と内部容器の外周面の関係を示す概念図である。
図17】外部キャップを示す概略断面図である。
図18】内部キャップを示す概略正面図である。
図19】内部キャップの概略断面図である。
図20】内部キャップが外部キャップに接続された状態を示す概略図である。
図21】内部容器に接続用の樹脂を塗布した状態を示す概念図である。
図22】内部容器が外部容器に接続された状態における接続用の樹脂の状態を示す概念図である。
図23】内部容器が外部容器に接続されるときの気体の流れを示す概念図である。
図24】内部キャップが外部キャップに接続されるときの気体の流れを示す概念図である。
図25】容器本体の構成を示す概略図である。
図26】化粧品容器の構成を示す概略図である。
図27】第二の実施形態の内部容器を示す概略斜視図である。
図28】溝部の拡大斜視図である。
図29】溝部の拡大斜視図である。
図30】内部キャップを示す概略正面図である。
図31】第三の実施形態の内部容器を示す拡大平面図である。
図32】第四の実施形態の内部容器を示す概略斜視図である。
図33】第五の実施形態の内部容器を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。
【0030】
<第一の実施形態>
図1乃至図3に示すように、化粧品容器1は、外部容器10及び外部キャップ(外部蓋)30を有する。化粧品容器1は化粧品容器の一例であり、外部容器10は外部容器の一例であり、外部キャップ30は外部キャップの一例である。本明細書において、化粧品容器1の長手方向を「長手方向」と呼ぶ。長手方向は、図1の矢印Z1に示す方向である。長手方向に直交する方向を「直交方向」と呼ぶ。直交方向は、図1の矢印X1に示す方向である。
【0031】
外部容器10の内側には内部容器20(図7等参照)が挿入され、容器本体が形成される。外部キャップ30の内側に内部キャップ40(図18等参照)が挿入され、キャップ(蓋)が形成される。内部容器20は内部容器の一例であり、内部キャップ40は内部キャップの一例である。
【0032】
図4に示すように、化粧品容器1から外部キャップ30を外すと、内部容器20が視認可能な状態になる。上述のように、外部キャップ30の内側には内部キャップ40が挿入されている。内部キャップ40には、柄42が接続され、柄42にはブラシ44が接続されている。内部容器20には、液体状の化粧品が格納される。液体状の化粧品は、例えば、マスカラである。
【0033】
化粧品容器1は、使用者が手に把持して使用可能な大きさに形成されている。例えば、化粧品容器1の長手方向の長さL1(図1参照)は、119.5ミリメートル(millimeter)であり、直交方向の最大幅LW1は、16.59ミリメートルである。外部容器10の長さL2は78ミリメートルであり、外部キャップ30の長さL3は41.3ミリメートルである。
【0034】
外部容器10及び外部キャップ30は、金属で形成される。金属は、例えば、アルミニウムである。内部容器20及び内部キャップ40は、樹脂で構成される。樹脂は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene)である。内部容器20及び内部キャップ40は、弾性変形可能に構成されている。
【0035】
図5及び図6に示すように、外部容器10は、上方が開口した容器である。外部容器10の直交方向の断面は円形に形成されている。外部容器10において、外面を外周面10a、内面を内周面10bと呼ぶ。外部容器10は、上端部が開口しており、上端部から底部へ向かって、次第に縮径する形状に構成されている。図6に示すように、内周面10bの上端部は、直径d1に形成されている。また、内周面10bは、長手方向において、曲率半径R1を有する曲面として形成されている。
【0036】
図7及び図8に示すように、内部容器20は、上方が開口した容器である。内部容器20の直交方向の断面は円形に形成されている。内部容器20は、本体部22及び接続部24から構成される。接続部24には雄ネジ24aが形成されており、内部キャップ40のネジ44d(図19参照)と係合するようになっている。
【0037】
本体部22は、基部22a及び拡径部22bで構成される。基部22aの外面を外周面22a1、拡径部22bの外面を外周面22b1と呼ぶ。外周面22a1及び外周面22b1にわたって、溝部22cが形成されている。溝部22cは、長手方向の長さが直交方向の長さよりも長い。溝部22cは、接続部24の肩面24bに通じている。内部容器20が外部容器10に挿入されて接続されて容器本体を形成したときに、溝部22cは容器本体の外部に通じるようになっている。すなわち、溝部22cは、肩面24bにおいて開口している。
【0038】
図8に示すように、拡径部22bの外周は直径d2に形成されている。直径d2は、外部容器10の内周面10bの上端部の直径d1よりも所定の程度だけ大きい。所定の程度は、所定の数値範囲において規定される。例えば、直径d1を基準として、直径d2は、0.2パーセント(%)以上0.7パーセント以下の数値範囲において大きい。例えば、直径d1は14.8ミリメートル(mm)であり、直径d2は14.85ミリメートルである。
【0039】
基部22aは、長手方向において、曲率半径R2の曲面として形成されている。曲率半径R2は、外部容器10の曲率半径R1よりも所定の程度だけ小さい。所定の程度は所定の数値範囲において規定される。例えば、曲率半径R1を基準として、曲率半径R2は、0.03パーセント以上0.08以下の数値範囲において小さい。例えば、曲率半径R1は938ミリメートルであり、曲率半径R2は937.55ミリメートである。
【0040】
溝部22cは、第一溝部22c1及び第二溝部22c2から構成される。第一溝部22c1と第二溝部22c2は、連続した一体の溝として形成されている。より詳細には、第一溝部22c1が形成する拡径部22bの外周面22b1に対する窪みと、第二溝部22c2が形成する外周面22b1及び基部22aの外周面22a1に対する窪みは連続して、一体となっている。
【0041】
図9に示すように、溝部22c(第一溝部22c1及び第二溝部22c2)は、基部22aの外周面22a1及び拡径部22bの外周面22b1において、複数形成されている。具体的には、溝部22cは、外周面22a1及び22b1において、90度の角度だけ乖離して、4つ形成されている。
【0042】
図10乃至図13に示すように、第一溝部22c1は、内部容器20の上端近傍の所定範囲に形成される。図10は溝部22cを上方から視た拡大図であり、図11は溝部22cを下方から視た拡大図である。本明細書において、内部容器20の「上端近傍」は拡径部22bを意味する。第一溝部22c1は、長手方向において、拡径部22bの上端を含む所定範囲に形成される。所定範囲は、例えば、図12及び図13の部分22b1aである。第一溝部22c1は、肩面24bに通じている。すなわち、第一溝部22c1は、肩面24bにおいて、開口している。
【0043】
第二溝部22c2は、第一溝部22c1と連続して形成される。第二溝部22c2は、基部22aから拡径部22bの所定範囲の位置まで延在している。拡径部22bの所定範囲は、例えば、図12及び図13の部分22b1bである。第二溝部22c2の幅は、内部容器20の上端に向かうほど大きくなるように形成されている。
【0044】
図12に示すように、第一溝部22c1は幅w1に形成されている。第二溝部22c2において、最も大きい幅は幅w2に形成されている。幅w1は幅w2よりも小さい。
【0045】
図13に示すように、第一溝部22c1は深さe1に形成されている。第二溝部22c2は、部分22b1bにおいては、深さe2に形成されており、基部22aにおいては、深さe3に形成されている。深さe1は深さe3よりも浅く、深さe3は深さe2よりも浅い。すなわち、「e1<e3<e2」(式1)の関係を満たす。
【0046】
図14を参照して、内部容器20が外部容器10に挿入されて容器本体を形成したときの、内部容器20の外周面22a1及び22b1と外部容器10の内周面10bの関係を説明する。外周面22a1を上端部からの高さに応じて、外周面22a1乃至22a3に区分し、底部を底部22a4とする。同様に、内周面10bを上端部からの高さに応じて、内周面10b0乃至10b3に区分し、底部を底部10b4とする。
【0047】
外周面22b1は内周面10b0と接し、内部容器20と外部容器10が位置決めされる。第一溝部22c1は、外周面22b1に形成されている。第二溝部22c2は外周面22b1、外周面22a1及び22a2にわたって形成されている。溝部22cは、長さL4に形成されている。
【0048】
図15及び図16を参照して、内部容器20の外周面22a1と外部容器10の内周面10bの距離について説明する。図15に示すように、長手方向において、外部容器10の内周面10bは曲率半径R1の曲面として形成されており、内部容器20の外周面22a1は曲率半径R2の曲面として形成されている。上述のように、曲率半径R2は曲率半径R1よりも小さい。このため、内部容器20が外部容器10に挿入されると、図16に示すように、上端部が接触し、外周面22a1と内周面10bの距離は、下方に向かうに連れて大きくなる。
【0049】
溝部22cの長さL4は、外周面22a1と内周面10bの距離によって規定される。すなわち、内部容器20が外部容器10に挿入された状態において、外周面22a1と内周面10bとの間に十分な隙間が存在する位置においては、気体が大きな抵抗を受けずに通過可能であるから、溝部22cは形成されない。これに対して、外周面22a1と内周面10bとの間に十分な隙間が存在しない位置においては、気体が通過するときに大きな抵抗を受け、あるいは、通過が不可能であるから、溝部22cが形成される。上述の外周面22a3と内周面10b3との間は、十分な隙間が存在するから、溝部22cは形成されない。これに対して、外周面22a1と内周面10bとの間は、隙間が不十分であるから、溝部22cが形成される。
【0050】
上述のように、内部容器20が外部容器10に接続されて容器本体を形成すると、その上端において、外周面22a1と内周面10bとの間の距離が最も小さい。この点、本実施形態においては、第二溝部22c2の幅を上端に向かうほど大きく形成することによって、膨張した気体を取り込むことができるようになっている。
【0051】
図17に示すように、外部キャップ30は、下端部が開口した蓋である。外部キャップ30の直交方向の断面は円形に形成されている。外部キャップ30において、外面を外周面30a、内面を内周面30bと呼ぶ。外部キャップ30は、下端部から上方に向かうに連れて、拡径する形状に形成されており、上端部及び上端近傍部は球面として形成されている。
【0052】
図18及び図19に示すように、内部キャップ40は、本体部44と、本体部44に接続される柄42を有する。内部キャップ40は、下端部44cが開口している。本体部44の内面には、ネジ44dが形成されている。なお、柄42の下端部にはブラシ44(図4参照)が接続されているが、以下の説明において、ブラシ44は省略する。
【0053】
図18に示すように、内部キャップ40の外周面44aには、キャップ溝部44a1が形成されている。キャップ溝部44a1は、長手方向の長さが、直交方向の長さよりも長い溝である。キャップ溝部44a1は複数形成されており、キャップ溝部44a1のうち、一部のキャップ溝部44a1は、第二キャップ溝部44a2と連続している。以下、第二キャップ溝部44a2と連続しているキャップ溝部44a1を「連続キャップ溝部」と呼ぶ。内部キャップ40が外部キャップ30に挿入されてキャップが形成されたときに、第二キャップ溝部44a2はキャップの外部に通じるように構成されている。第二キャップ溝部44a2の幅は、キャップ溝部44a1の幅よりも小さい。
【0054】
内部キャップ40を外部キャップ30に挿入してキャップを形成すると、内部キャップ40の外面と外部キャップ30の内面の間に空間が存在するようになっている。図20に示すように、内部キャップ40の上端部44bと外部キャップ30の天井面30b1との間に空間S1が存在する。連続キャップ溝部は、空間S1とキャップの下方部の外部の双方に通じるように構成されている。連続キャップ溝部を構成しないキャップ溝部44a1は、空間S1に通じ、キャップの外部には通じないように構成されている。
【0055】
次に、図21及び図22を参照して、内部容器20と外部容器10の接続について説明する。まず、図21に示すように、内部容器20の外周面22a1に、接続用の樹脂100を塗布する。樹脂100の融点は、内部容器20を形成する樹脂の融点以下である。樹脂100は、溶融した状態で塗布される。溶融した樹脂100から放射される熱により、周りの気体は膨張する。
【0056】
次に、図22に示すように、内部容器20が外部容器10に挿入される。内部容器20の外周面22a1と外部容器10の内周面10bの間において、樹脂100は広がり、外周面22a1と内周面10bの間の空間を埋め、接続手段として機能する。上述のように、内部容器20の拡径部22bの直径d2は、外部容器10の内周面10bの上端部の直径d1よりも大きいから、内部容器20が外部容器10に挿入されるとき、拡径部22bは弾性変形して縮小し、挿入が完了すると、内側から外部容器10の内周面10bを押圧する。このようにして、内部容器20は外部容器10の内側に固定される。この状態において、外部容器10の内面10bの底面10b4と、内部容器20の外面の底面22a4の間に空間S2が存在する。
【0057】
内部容器20を外部容器10に挿入するとき、樹脂100は溶融状態であり、熱を放射しているから、内部容器20と外部容器10の間の気体は膨張する。空気中において化粧品容器1の製造を行う場合には、気体は空気である。図23に示すように、膨張した気体は、例えば、矢印A1及びA2に示すように溝部22cに流れ込み、矢印A3に示すように、内部容器20と外部容器10の間から放出される。
【0058】
このため、膨張した気体が、内部容器20と外部容器10の接続の障害となることはない。また、内部容器20と外部容器10が接続され、内部容器20の内部にマスカラが格納された状態において、滅菌等のために加熱した場合にも、空間S2に存在する気体など、外部容器10と内部容器20の間に存在する気体は膨張するが、やはり、溝部22cに流れこみ、外部容器10と内部容器20の接続状態に影響することはない。なお、図23の矢印A1乃至A3に示す気体の流れは、内部容器20と外部容器10の間の気体の流れを示すが、図23においては、外部容器10の記載を省略している。
【0059】
次に、内部キャップ40が外部キャップ30に接続されるときの状態について説明する。内部キャップ40が外部キャップ30に挿入されるとき、上述の内部容器20と同様に、内部キャップ40の外周面44aには、溶融した樹脂100が塗布される。そうすると、内部キャップ40と外部キャップ30の間の気体は膨張するが、図24に示すように、連続キャップ溝部については、矢印B3に示すように、キャップ溝部44a1に流れ込み、第二キャップ溝部44a2を通って外部に放出される。連続キャップ溝部以外のキャップ溝部44a1に流れ込んだ気体は、矢印B1及びB2に示すように、空間S1に流れ込み、その後、連続キャップ溝部に流れ込み、やはり、外部に放出される。
【0060】
このため、膨張した気体が、内部キャップ40と外部キャップ30の接続の障害となることはない。また、内部キャップ40と外部キャップ30が接続された状態において、滅菌等のために加熱した場合にも、外部キャップ30と内部キャップ40の間に存在する気体は膨張するが、やはり、キャップ溝部44a1に流れ込み、連続キャップ溝部を介して外部に排出されるから、外部キャップ30と内部キャップ40の接続状態に影響することはない。なお、図24の矢印B1乃至B3に示す気体の流れは、内部キャップ40と外部キャップ30の間の気体の流れを示すが、図24においては、外部キャップ30の記載を省略している。
【0061】
次に、図25及び図26を参照して、化粧品容器1の組み立て工程を説明する。なお、図25及び図26においては、他の部材の内側に位置する部材も実線で示している。図25に示すように、外部容器10に内部容器20が挿入されて固定された状態において、内部容器20の接続部24には、ゲート部材26が接続される。ゲート部材26は、直交方向の断面が円形に形成されている。ゲート部材26は、化粧品容器1が使用されるときに、ブラシ44と接し、ブラシ44に付着したマスカラの量を調整する。図26に示すように、外部キャップ30に接続された内部キャップ40が、外部容器10に接続された内部容器20と係合し、化粧品容器1が形成される。
【0062】
<第二の実施形態>
図27乃至図30を参照して、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項については説明を省略し、第一の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
図27乃至図29に示すように、第二の実施形態の内部容器20Aにおいては、基部22a及び拡径部22bにわたって、溝部22Acが形成されている。溝部22Acは、内部容器20Aの上端部に向かうに連れて幅が大きくなっている。すなわち、溝部22Acは、肩面24bにおける開口部において最も幅が大きい。
【0064】
図30に示すように、内部キャップ40Aにおいては、すべてのキャップ溝部44a1が、それぞれ、第二キャップ溝部44a2に接続し、連続キャップ溝部となっている。
【0065】
<第三の実施形態>
図31を参照して、第三の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項については説明を省略し、第一の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0066】
第三の実施形態の内部容器20Bにおいては、複数の第二溝部22c2のうち、一部の第二溝部22c2が、第一溝部22c1と連続している。例えば、図31に示すように、4つの第二溝部22c2のうち、1つの第二溝部22c2のみが第一溝部22c1と連続して、連続溝部を構成している。連続溝部を構成しない第二溝部22c2に流れ込んだ気体は、空間S2(図22参照)など、内部容器20Bと外部容器10の間の空間を介して連続溝部に流れ込み、外部に排出される。
【0067】
<第四の実施形態>
図32を参照して、第四の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項については説明を省略し、第一の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0068】
第四の実施形態の内部容器20Cにおいては、第二溝部22c3が延在する方向は、長手方向の成分に加えて、直交方向の成分を有する。例えば、図32に示すように、第二溝部22c3は蛇行して形成されている。これにより、膨張した気体を迅速に第二溝部22c3に取り込み、外部に排出することができる。
【0069】
<第五の実施形態>
図33を参照して、第五の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項については説明を省略し、第一の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0070】
第五の実施形態の内部容器20Dにおいては、第二溝部22c4が延在する方向は、長手方向の成分に加えて、直交方向の成分を有する。具体的には、第二溝部22c4は、基部22aの外周面22a1において、螺旋状に形成された螺旋部22c41と、螺旋部22c41の部分を上下方向において接続する複数の直線部22c42から構成される。これにより、膨張した気体を迅速に第二溝部22c4に取り込み、外部に排出することができる。
【0071】
なお、本発明の化粧品容器は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 化粧品容器
10 外部容器
20,20A,20B,20C,20D 内部容器
30 外部キャップ
40,40A 内部キャップ
22c,22d,22e 溝部
44a1 キャップ溝部
44a2 第二キャップ溝部
【要約】
本発明は、外部容器と内部容器が確実に接続された化粧品容器を提供するものである。本発明の化粧品容器1は、外部容器10の内側に内部容器20が挿入されて形成される容器本体を有し、内部容器20の外面には、内部容器20の長手方向の長さが、長手方向と直交する方向の長さよりも長い溝部22cが形成されており、溝部22cは、内部容器20が外部容器10に挿入されたときに、容器本体の外部に通じるように構成されている。
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