(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮蔽部は、前記第1ガラス板の外面、第1ガラス板の内面、第2ガラス板の外面、または第2ガラス板の内面の少なくとも一箇所に積層された遮蔽膜によって構成されている、請求項6または7に記載のサイドガラス。
前記第1バスバー、前記第2バスバー、前記第1中継バスバー、及び前記第2中継バスバー、前記複数の加熱線が同一の材料により一体的に形成されている、請求項2に記載のサイドガラス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような曇りの問題はウインドシールドだけでなく、サイドガラスにおいても生じうる問題である。しかし、サイドガラスはウインドシールドに比べて小さいため、加熱線の配置が問題となる。例えば、加熱線による消費電力Wは以下の式(1)で求めることができる。
W=V
2R=(S/ρL)V
2 (1)
但し、V:電圧、R:加熱線の抵抗、S:加熱線の断面積、L:加熱線の長さ、ρ:熱伝導率
【0005】
ここで、電圧Vは高い方が車両にとっては利点が多い。例えば、モータやジェネレータの出力が同じであれば、駆動電圧を高くした方が電流を小さくすることができ、これによって消費電力量を低減することができる。また、電流が小さくなれば、電力供給用のハーネスの直径を小さくできるため、その分、車両の重量が低下し、燃費を向上することができる。このように、電圧Vが高くすると種々の利点があるものの、発熱量が高すぎるとガラスに割れが生じるため、消費電力Wはできるだけ小さくすることが好ましい。したがって、加熱線の長さLは長くする必要があり、直列とした方がよいが、加熱線は細線であるため、断線のおそれがある。そのため、これを考慮すると、加熱線を並列に配置することが好ましい。しかしながら、加熱線を並列に配置すると、すべての加熱線が接続されるだけの長さを有するバスバーが必要になるが、このようなバスバーを配置すると、車外または車内から視認可能となり、見栄えが悪い。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、一対のバスバーを設け、これらバスバーを接続するように、複数の加熱線を並列に配置したとしても、バスバーが車内または車外から視認できないようにすることができる、サイドガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るサイドガラスは、以下の態様である。
項1:車両に用いられるサイドガラスであって、
上辺、下辺、前側辺、及び後側辺を有する、矩形状の第1ガラス板と、
前記上辺、下辺、前側辺、及び後側辺のいずれかである第1辺に沿って延びる第1バスバーと、
前記上辺、下辺、前側辺、及び後側辺のいずれかである第2辺に沿って延びる第2バスバーと、
前記第1バスバーと第2バスバーとを連結するように並列に配置される複数の加熱線と、
を備えており、
前記第1及び第2バスバーは、遮蔽部により車外または車内から視認できないように構成されている、サイドガラス。
【0008】
なお、第1辺と第2辺は、第1ガラス板における上辺、下辺、前側辺、及び後側辺のなかの異なる辺であってもよいし、同じ辺であってもよい。
【0009】
項2:前記遮蔽部は、前記第1ガラス板の外面または内面の少なくとも一箇所に積層された遮蔽膜によって構成されている、項1に記載のサイドガラス。
【0010】
項3:前記遮蔽部は、当該サイドガラスが取り付けられるドアのフレームによって構成されている、項1または2に記載のサイドガラス。
【0011】
項4:前記第1辺は、前記第1ガラス板の上辺であり、
前記第2辺は、前記第1ガラス板の下辺である、項1から3に記載のサイドガラス。
【0012】
項5:前記第1辺は、前記第1ガラス板の下辺であり、
前記第2辺は、前記第1ガラス板の前側辺または後側辺である、項1から3に記載のサイドガラス。
【0013】
項6:前記第2辺は、前記第1ガラス板の前側辺である、項5に記載のサイドガラス。
【0014】
項7:前記第1辺及び第2辺は、前記第1ガラス板の下辺であり、前記第1バスバー及び第2バスバーは、前記第1ガラス板の下辺に沿って、一直線上に隣接するように配置されている、項1から3に記載のサイドガラス。
【0015】
項8:前記第1辺は、前記第1ガラス板の前側辺であり、
前記第2辺は、前記第1ガラスの後側辺である、項1から3のいずれかに記載のサイドガラス。
【0016】
項9:前記第1バスバー及び第2バスバーとは異なる位置で、前記第1ガラス板のいずれかの辺に沿って配置される少なくとも1つの中継バスバーをさらに備え、
前記複数の加熱線は、前記第1バスバーから少なくとも1つの前記中継バスバーを介して前記第2バスバーに接続されている、項4に記載のサイドガラス。
【0017】
項10:前記各バスバーの第1端部が近接し、前記各バスバーの第2端部が離れるように配置され、
前記複数の加熱線は、前記第1端部側から第2端部側にいくにしたがって、線幅が太くなるように形成されている、項5から7のいずれかに記載のサイドガラス。
【0018】
項11:少なくとも一箇所の隣接する前記加熱線の間に、少なくとも1つの補助加熱線がさらに配置されており、
前記各補助加熱線の一端部は、隣接するいずれかの前記加熱線の中間部に接続されており、前記各補助加熱線の他端部は、前記第1または第2バスバーに接続されている、項5から7のいずれかに記載のサイドガラス。
【0019】
項12:取付角度が鉛直方向から±30度である、項8に記載のサイドガラス。
【0020】
項13:前記第1ガラス板と対向配置され、前記第1ガラス板と略同形状の第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置される中間膜と、
を備え、
前記第1バスバー、第2バスバー、及び前記複数の加熱線は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置されている、項1から12のいずれかに記載のサイドガラス。
【0021】
項14:前記遮蔽部は、前記第1ガラス板の外面、第1ガラス板の内面、第2ガラス板の外面、または第2ガラス板の内面の少なくとも一箇所に積層された遮蔽膜によって構成されている、項13に記載のサイドガラス。
【0022】
項15:前記第1バスバー、前記第2バスバー、前記複数の加熱線が同一の材料により一体的に形成されている、項1から14のいずれかに記載のサイドガラス。
【0023】
項16:前記加熱線の線幅は、500μm以下である、項1から15のいずれかに記載のサイドガラス。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、下辺の長い台形状の合わせガラスにおいても、ガラス全体に亘って曇りを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<A.第1実施形態>
以下、本発明に係る車両用のサイドガラスの第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るサイドガラスの平面図、
図2は
図1の断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るサイドガラスは、外側ガラス板(第1ガラス板)1、内側ガラス板(第2ガラス板)2、及びこれらガラス板1,2の間に配置される中間膜3を備えている。また、内側ガラス板2の下端部には、切欠き部21,22がそれぞれ形成されており、各切欠き部21,22では、中間膜3から延びる接続材41,42がそれぞれ露出している。なお、特に断りのない限り、第1実施形態で示した構成、効果は、これに続くすべての実施形態において共通であるとする。以下、各部材について説明する。
【0027】
<1.サイドガラスの概要>
<1−1.ガラス板>
各ガラス板1,2は、ともに、上辺11、下辺12、前側辺13、後側辺14を備える矩形状に形成されている。なお、両ガラス板1,2は同形状であるため、以下では、各辺を示す符号11〜14は、各ガラス板1,2で同じものを用いることとする。ここで、矩形状とは、外形上、上辺11、下辺12、前側辺13、後側辺14が特定できるような形状を意味し、必ずしも矩形である必要はない。
【0028】
上辺11と下辺12とは平行に形成されており、上辺11が下辺12よりも短くなっている。前側辺13は、下辺12の前端から後方に向かって傾斜するように上方へ延びる第1部位131と、第1部位131の上端からさらに後方に向かって傾斜するように延びる第2部位132とを備えている。また、後側辺14は、前側辺13の第1部位131とほぼ平行に、下辺12の後端から後方に向かってやや湾曲しながら傾斜するように上方へ延びている。したがって、上辺11の後端は、下辺12の後端よりもやや後方に位置している。また、上述したように、内側ガラス板2の下辺の前端部及び後端部には、円弧状の切欠き部21,22がそれぞれ形成されている。以下では、内側ガラス板2の前端部に形成された切欠き部を第1切欠き部21、後端部に形成された切欠き部を第2切欠き部22と称することとする。
【0029】
上記外側ガラス板1及び内側ガラス板2により構成されるサイドガラスは、車両のドアに取り付けられるものであるが、ドアの内部に設けられた図示を省略する昇降モジュール(レギュレータ)によって支持され、昇降するようになっている。そして、サイドガラスが上昇し、窓が閉じた状態となっているときには、サイドガラスの下辺12は、ドアのベルトモールBよりも下方に位置するようになっている。したがって、サイドガラスの下辺12は、窓の開閉にかかわらず、車外及び車内から見えないようになっている。また、サイドガラスが上昇する過程では、前側辺13の第1部位131及び後側辺14は、ドアフレームのガイド(例えば、サッシュ部)に支持され、このガイドに沿って上下動する。したがって、前側辺13の第1部位131及び後側辺14は、ガイドに収容されているため、車外及び車内からは見えないようになっている。そして、窓が閉じた状態となったときには、前側辺13の第2部位132及び上辺11も、ドアフレーム内に収容され、車外及び車内からは見えないようになっている。なお、サイドガラスの各辺11〜14を車内及び車外から隠すドアフレームが、本発明の遮蔽部に相当する。
【0030】
また、各ガラス板11,12としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板11、12は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板11により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板12により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの組成の一例を示す。
【0031】
(クリアガラス)
SiO
2:70〜73質量%
Al
2O
3:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
R
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.08〜0.14質量%
【0032】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO
2の比率を0〜2質量%とし、TiO
2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO
2やAl
2O
3)をT−Fe
2O
3、CeO
2およびTiO
2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0033】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO
2:65〜80質量%
Al
2O
3:0〜5質量%
CaO:5〜15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10〜18質量%
K
2O:0〜5質量%
MgO+CaO:5〜15質量%
Na
2O+K
2O:10〜20質量%
SO
3:0.05〜0.3質量%
B
2O
3:0〜5質量%
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.02〜0.03質量%
【0034】
本実施形態に係る合わせガラスの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4〜4.6mmとすることが好ましく、2.6〜3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7〜3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板1と内側ガラス板2との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みを決定することができる。
【0035】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.0〜3.0mmとすることが好ましく、1.6〜2.3mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0036】
内側ガラス板2の厚みは、外側ガラス板1と同等にすることができるが、例えば、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6〜2.0mmであることが好ましく、0.8〜1.8mmであることがさらに好ましく、1.0〜1.6mmであることが特に好ましい。更には、0.8〜1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0037】
<1−2.中間膜>
続いて、中間膜3について説明する。中間膜3は、発熱層31、及びこの発熱層31を挟持する一対の接着層32,33、を有する3層で構成されている。以下では、外側ガラス板1側に配置される接着層を第1接着層32、内側ガラス板2側に配置される接着層を第2接着層33と称することとする。
【0038】
<1−2−1.発熱層>
まず、発熱層31について説明する。発熱層31は、シート状の基材311と、この基材311上に配置される、第1バスバー312、第2バスバー313、及び複数の加熱線314を備えている。基材311は、上記ガラス板1,2と対応する形成することができるが、必ずしも両ガラス板1,2と同形状でなくてもよく、両ガラス板1,2よりも小さい形状であってもよい。例えば、
図1に示すように、上下方向には、内側ガラス板2の切欠き部21,22と干渉しないように、ガラス板1,2の上下方向の長さよりも短くすることができる。また、基材311の左右方向の長さも両ガラス板1,2の幅よりも短くすることができる。
【0039】
各バスバー312,313は帯状に形成されており、第1バスバー312は、基材311上で、ガラス板1,2の前側辺13の第1部位131に沿って延びるように形成されている。一方、第2バスバー313は、基材311上で、ガラス板1,2の後側辺14に沿って延びるように形成されている。但し、各バスバー312,313の下端部は、中間膜3が両ガラス板1,2に挟持されたときに、上述した切欠き部21,22から、それぞれ露出しないように、切欠き部21,22よりも上方に配置される。なお、各バスバー312,313の前後の幅は、例えば、1〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがさらに好ましい。これは、バスバー312,313の幅が5mmより小さいと、ヒートスポット現象が生じ、加熱線よりも高く発熱するおそれがある一方、バスバー312,313の幅が50mmよりも大きいと、バスバー312,313がドアフレームのガイドからはみ出し、車外及び車内から見えるおそれがあることによる。
【0040】
複数の加熱線314は、両バスバー312,313を結ぶように、前後方向に延びるように形成されている。また、複数の加熱線314は並列に延びるように形成されているが、すべてが平行に配置されているわけではない。例えば、最下部に配置された加熱線は、第1バスバー312の下端部と第2バスバー313の下端部とを結ぶように下辺12に沿って延びているが、最上部に配置されている加熱線314は、第1バスバー312の上端部から前側辺13の第2部位132及び上辺11に沿って、第2バスバー313の上端部まで延びている。すなわち、第1バスバー312が、第2バスバー313よりも上下方向の長さが短いため、複数の加熱線314は、隣接する加熱線314間の間隔が概ね広がるように後方に向かって延びている。但し、複数の加熱線314は、概ね同じ長さとなっている。
【0041】
各加熱線314の線幅は、視認しがたいように、3〜500μmであることが好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましく、8〜10μmであることが特に好ましい。また、隣接する加熱線314の間隔は、例えば、1〜4mmであることが好ましく、1.25〜3mmであることがさらに好ましく、1.25〜2.5mmであることが特に好ましい。
【0042】
なお、各加熱線314は、直線状に形成できるほか、波形など、種々の形状にすることができる。特に、各加熱線314を正弦波的な形状にすることで、熱の分布が均一になるほか、光学的に、加熱線314がウインドシールドの視野を妨げるのを防止することができる。なお、正弦波的な形状とは、正弦波のように振幅や波長が一定である必要はなく、振幅や波長がランダムな波形をいう。
【0043】
加熱線314の幅は、例えば、VHX−200(キーエンス社製)などのマイクロスコープを1000倍にして測定することができる。なお、発熱量が影響するのは実際には加熱線314の断面積であるが、幅と断面積は技術的にはほぼ同義である。そして、幅が小さいほど、視認しがたくなるため、本実施形態に係るウインドシールドには適している。
【0044】
次に、発熱層31の材料について説明する。基材311は、両バスバー312,313、加熱線314を支持する透明のフィルムであり、その材料は特には限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどで形成することができる。また、両バスバー312,313及び加熱線314は、同一の材料で形成することができ、銅(またはスズメッキされた銅)、タングステン、銀など、種々の材料で形成することができる。
【0045】
続いて、両バスバー312,313、加熱線314の形成方法について説明する。これら両バスバー312,313、加熱線314は、予め形成された細線(ワイヤなど)などを基材311上に配置することで形成できるが、特に、加熱線314の線幅をより細くするには、基材311上にパターン形成することで、加熱線314を形成することができる。その方法は、特には限定されないが、印刷、エッチング、転写など、種々の方法で形成することができる。このとき、各バスバー312,313、加熱線314を別々に形成することもできるし、これらを一体的に形成することもできる。なお、「一体的」とは、材料間に切れ目がなく(シームレス)、界面が存在しないことを意味する。
【0046】
また、両バスバー312,313を基材311上で形成し、加熱線314用の基材311を残して、両バスバー312,313に対応する部分の基材311を剥離して取り外す。その後、両バスバー312,313の間の基材上に加熱線を配置することもできる。
【0047】
特に、エッチングを採用する場合には、一例として、次のようにすることができる。まず、基材311にプライマー層を介して金属箔をドライラミネートする。金属箔としては、例えば、銅を用いることができる。そして、金属箔に対して、フォトリソグラフィー法を利用したケミカルエッチング処理を行うことにより、基材311上に、両バスバー312,313、複数の加熱線314を一体的にパターン形成することができる。特に、加熱線314の線幅を小さくする場合(例えば、15μm以下)には、薄い金属箔を用いることが好ましく、薄い金属層(例えば、5μm以下)を基材311上に蒸着やスパッタリング等により形成し、その後、フォトリソグラフィーによりパターニングを実施してもよい。
【0048】
<1−2−2.接着層>
両接着層32,33は、発熱層31を挟持するとともに、ガラス板1,2への接着を行うためのシート状の部材である。両接着層32,33は、両ガラス板1,2と同じ大きさに形成されているが、両接着層32,32には、内側ガラス板2の切欠き部21,22と対応する位置に同形状の切欠き部がそれぞれ形成されている。また、これら接着層32,33は、種々の材料で形成することができるが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)などによって形成することができる。特に、ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性のほか、耐貫通性にも優れるので好ましい。なお、接着層と発熱層との間に界面活性剤の層を設けることもできる。このような界面活性剤により両層の表面を改質することができ、接着力を向上することができる。
【0049】
<1−2−3.中間膜の厚み>
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。また、発熱層31の基材311の厚みは、0.01〜2.0mmであることが好ましく、0.03〜0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各接着層32,33の厚みは、発熱層31の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。なお、第2接着層33と基材311とを密着させるため、その間に挟まれる両バスバー312,313、加熱線314の厚みは、3〜20μmであることが好ましい。
【0050】
発熱層31及び接着層32,33の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、発熱層31及び接着層32,33の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値を発熱層31及び接着層32,33の厚みとする。
【0051】
<1−3.接続材>
次に、接続材について説明する。接続材41,42は、各バスバー312,313と接続端子(陽極端子又は陰極端子:図示省略)とを接続するためのものであり、導電性の材料によりシート状に形成されている。以下では、第1バスバー312に接続される接続材を第1接続材41、第2バスバー313に接続される接続材を第2接続材42と称することとする。また、両接続材41,42の構成は同じであるため、以下では主として第1接続材41について説明する。
【0052】
第1接続材41は、矩形状に形成されており、第1バスバー312と第2接着層33との間に挟まれる。そして、半田などの固定材5によって第1バスバー312に固定される。固定材5としては、後述するサイドガラスの組立て時にオートクレーブで同時に固定することができるよう、例えば、150℃以下の低融点の半田を用いることが好ましい。また、第1接続材41は、第1バスバー312から外側ガラス板1の上端縁まで延び、内側ガラス板2に形成された第1切欠き部21から露出するようになっている。そして、この露出部分において、電源へと延びるケーブルが接続された接続端子が半田などの固定材によって接続される。このように、両接続材41,42は、両ガラス板1,2の端部から突出することなく、内側ガラス板2の切欠き部21,22から露出した部分に接続端子が固定されるようになっている。なお、両接続材41,42は、薄い材料で形成されているため、
図2に示すように、折り曲げた上で、端部を固定材5でバスバー312に固定することができる。
【0053】
<2.サイドガラスの製造方法>
次に、サイドガラスの製造方法について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0054】
公知の方法で、外側ガラス板11及び内側ガラス板12が成形されると、これに続いて、中間膜3を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟む。具体的には、まず、外側ガラス板1、第1接着層32、発熱層31、第2接着層33、及び内側ガラス板2をこの順で積層する。このとき、発熱層31は、第1バスバー312等が形成された面を第2接着層33側に向ける。また、発熱層31の下端部は、内側ガラス板2の切欠き部21,22よりも上方に配置される。さらに、第1及び第2接着層32,33の切欠き部を、内側ガラス板2の切欠き部21,22と一致させる。これにより、内側ガラス板2の切欠き部21,22からは、外側ガラス板1が露出する。続いて、各切欠き部21,22から、発熱層31と第2接着層33との間に、各接続材41,42を挿入する。このとき、各接続材41,42には固定材5として低融点の半田を塗布しておき、この半田が各バスバー312,313上に配置されるようにしておく。
【0055】
こうして、両ガラス板1,2、中間膜3、及び接続材41,42が積層された積層体を、ゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能であり、次の方法を採ることもできる。例えば、上記積層体をオーブンにより45〜65℃で加熱する。次に、この積層体を0.45〜0.55MPaでロールにより押圧する。続いて、この積層体を、再度オーブンにより80〜105℃で加熱した後、0.45〜0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0056】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、両接着層32,33が、発熱層31を挟んだ状態で各ガラス板1,2に接着される。また、接続材41,42の半田が溶融し、各接続材41,42が各バスバー312,313に固定される。こうして、本実施形態に係るサイドガラスが製造される。
【0057】
<3.サイドガラスの使用方法>
上記のように構成されたサイドガラスは、車体に取付けられ、さらに各接続材41,42には、接続端子が固定される。その後、各接続端子に通電すると、接続材41,42、各バスバー312,313を介して加熱線314に電流が印加され、発熱する。この発熱により、サイドガラスの曇りを除去することができる。
【0058】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
(1) 本実施形態では、サイドガラスの前側辺13及び後側辺14に沿うように第1バスバー312及び第2バスバー313をそれぞれ配置し、これら両バスバー312,313を結ぶように複数の加熱線314を並列に配置している。このように、複数の加熱線314はサイドガラスの長手方向である前後方向に沿うように配置しているため、加熱線314の長さを長くすることができる。そのため、割れを防止しつつ、サイドガラスの加熱を行うことができる。そして、サイドガラスの前側辺13の第1部位131及び後側辺14は、ドアフレームのガラスランに収容されるため、両バスバー312,313を、車外及び車内から見えないようにすることができる。
【0060】
(2) 両バスバー312,313と加熱線314とが同じ材料で形成されているため、両バスバー312,313及び加熱線314の線膨張係数が同じになる。これにより、次のような利点がある。両バスバー312,313と加熱線314を異なる材料で形成した場合には、線膨張係数が異なるため、例えば、これらの部材を別々に作製して固定した場合には、ヒートサイクル試験などの過酷な環境変化によって、バスバーから加熱線が剥がれたり、これに起因して合わせガラスを構成する2枚のガラス板が互いに浮き上がる、といった不具合が生じる可能性があるが、本実施形態のように、両バスバー312,313と加熱線314とが同じ材料で形成すると、そのような不具合を防止することができる。
【0061】
(3) 両バスバー312,313と加熱線314とを一体的に形成しているため、両者の間の接触不良,ひいては発熱不良を防止することができる。発熱不良について詳細に説明すると、以下の通りである。一般的に、防曇のためにガラス板を加熱する場合には、ガラスクラックの発生を防止するため、加熱温度の上限値を、例えば70〜80℃となるように電流値を制御することが求められる。これに対して、上記のような接触抵抗による局所的な発熱があれば、その部分を加熱温度の上限値として電流値の制御を行う必要がある。その結果、加熱線が全体的に十分に発熱するように制御できないという問題がある。しかしながら、上記構成によれば、局所的な発熱を防止できるため、加熱線も全体的に十分に発熱できるよう制御することができる。
【0062】
(4) 両バスバー312,313と加熱線314が配置された発熱層31を,接着層32,33によって挟持し、これを両ガラス板1,2の間に配置している。そのため、発熱層31を,両ガラス板1,2に対して確実に固定することができる。また、第2接着層33により、両バスバー312,313と加熱線314を覆うことで、これらがガラス板に接触するのを防止することができる。その結果、ガラス板の割れなどを未然に防ぐことができる。
【0063】
<B.第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態について
図3を参照しつつ説明する。
図3は第2実施形態に係るサイドガラスの平面図である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、バスバー及び加熱線の配置であるため、以下では、相違部分のみを説明し、同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図3に示すように、本実施形態に係るサイドガラスでは、第1バスバー312が、各ガラス板1,2の下辺12に沿って配置され、第2バスバー313が、後側辺14に沿って配置されている。そして、これら2つのバスバー312,313を結ぶ複数の加熱線314は並列に配置されるとともに、円弧状に形成されている。すなわち、複数の加熱線314は、サイドガラスの下辺12と後側辺14とが交差する角部17を概ねの中心とした同心状に形成されている。したがって、例えば、第1バスバー312の後端部(第1端部)付近と第2バスバー313の下端部(第1端部)付近を結ぶ加熱線314aは短く形成され、第1バスバー312の前端部(第2端部)付近と第2バスバー313の上端部(第2端部)付近を結ぶ加熱線314bは、前側辺13の第2部位132及び上辺11に沿って延びるため、長く形成されている。そして、加熱線314の長さが長くなるにしたがって、加熱線314の幅が太くなるように形成されている。
【0065】
また、第1接続材41は、第1バスバー312の前端部に接続され、第2接続材42は第2バスバー313の下端部に接続されている。したがって、これら接続材41,42が接続される位置は、第1実施形態と同じである。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。まず、第1バスバー312は、サイドガラスの下辺12に沿って配置されているため、ベルトモールBよりも下側に配置されている。したがって、車外及び車内からは見えない。一方、第2バスバー313は、ガラスランに収容されているため、これも車外及び車内からは見えない。
【0067】
また、複数の加熱線314は長さが異なっているが、加熱線314の長さが長くなるにしたがって、加熱線314の幅が太くなるように形成されているため、各加熱線314の発熱量を概ね同じにすることができる。すなわち、加熱線314の幅が同じである場合、加熱線314の長さが長くなると、短い加熱線314に比べて発熱量が低下するが、これを補うため、長い加熱線314の幅を広くしている。したがって、サイドガラスの全面に亘って均一な発熱量を提供することができ、その結果、サイドガラスの曇りを全面に亘って除去することができる。
【0068】
<C.第3実施形態>
次に、本発明に係る第3実施形態について
図4を参照しつつ説明する。
図4は第3実施形態に係るサイドガラスの平面図である。第3実施形態が第2実施形態と相違するのは、加熱線であるため、以下では、相違部分のみを説明し、同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
図4に示すように、本実施形態に係るサイドガラスでは、加熱線314の配置は、第2実施形態とほぼ同じであるが、すべての加熱線の幅が同じである。そして、複数の加熱線314のうちのいくつかには、少なくとも1つの補助加熱線315が接続されている。そして、加熱線314の長さが長くなるにしたがって、加熱線314の幅が太くなるように形成されている。
【0070】
例えば、第1バスバー312の前端部付近と第2バスバー313の上端部付近を結ぶ最上部の加熱線314aには、これと隣接する加熱線314bとの間を通過するように、3本の補助加熱線315が接続されている。これら補助加熱線315の一端は、上記のように最上部の加熱線314aに接続され、他端は第1バスバー312に接続されている。一方、短い加熱線314には、これよりも少ない数の補助加熱線315を接続したり、あるいは短い補助加熱線315を接続している。例えば、最も短い加熱線314cには、補助加熱線315は接続されていないが、これに隣接するやや長い加熱線314dには、短い補助加熱線315が接続されている。このようにして、すべての加熱線314の幅を同じにした場合、長い加熱線314の発熱量が低下するのを補完するため、少なくとも1つの補助加熱線315を接続したり、長さの異なる補助加熱線315を接続している。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、第2実施形態と同様に、サイドガラスの曇りを全面に亘って均一に除去することができる。なお、複数の補助加熱線315を設ける場合、それらは互いに交わらないようにしてもよいし、交わっていてもよい。また、補助加熱線315の配置は均一な発熱量の提供の観点から適宜決定することができるため、その数、長さは要求に応じて適宜決定することができる。また、補助加熱線315の一端を第2バスバー313に接続することもできる。また、補助加熱線315を設けるほか、加熱線314間の距離を調整することもできる。例えば、長い加熱線314が配置されている領域は、加熱線314間の距離を小さくし、ガラスに付与する熱量を大きくすることができる。
【0072】
<D.第4実施形態>
次に、本発明に係る第4実施形態について
図5を参照しつつ説明する。
図5は第4実施形態に係るサイドガラスの平面図である。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは、バスバー及び加熱線の配置であるため、以下では、相違部分のみを説明し、同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図5に示すように、本実施形態に係るサイドガラスでは、第1バスバー312が、サイドガラスの前側辺13に沿って配置されている。また、第2バスバー313は短く形成され、下辺12の後端部付近に沿って配置されている。これに加え、サイドガラスの下辺12の前端と第2バスバー313との間に、下辺12に沿う第1中継バスバー316が配置され、さらにサイドガラスの上辺11に沿って第2中継バスバー317が配置されている。第1中継バスバー316は、前後方向において、第1バスバー312、及び第2中継バスバー317の概ね前半分と対応する長さに形成されている。
【0074】
複数の加熱線314は、3つの部分により構成されている。すなわち、複数の加熱線314は、第1バスバー312と第1中継バスバー316とを接続する第1部分314x、第1中継バスバー316と第2中継バスバー317とを接続する第2部分314y、及び第2中継バスバー317と第2バスバー313とを接続する第3部分314zにより構成されている。複数の第1部分314xは、第1バスバー312から下方に向かって概ね平行に延びており、第1中継バスバー316の前半分に接続されている。複数の第2部分314yは、第1中継バスバー316の後半分から上方に向かって概ね平行に延びており、第2中継バスバー316の前半分に接続されている。そして、複数の第3部分314zは、第2中継バスバー317の後半分から下方に向かって概ね平行に延びており、第2バスバー313に接続されている。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、第1バスバー312と第2バスバー313との間に、2つの中継バスバー316、317を設け、これらを介して複数の加熱線314x,314y,314zが第1バスバー312と第2バスバー313とを接続するように構成されている。したがって、第1バスバー312と第2バスバー313との間の加熱線314の長さを長くすることができる。これにより、大きさの小さいサイドガラスに上下方向に延びる加熱線314を配置するとき、加熱線314の長さを長くすることができ、
【0076】
<E.第5実施形態>
次に、本発明に係る第5実施形態について
図6を参照しつつ説明する。
図6は第5実施形態に係るサイドガラスの平面図である。第5実施形態は第2実施形態と概ね同じであるが、加熱線及びバスバーの配置が相違している。以下では、相違部分のみを説明し、同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、本実施形態に係るサイドガラスでは、第1バスバー312が、各ガラス板1,2の前側辺13の第1部位131に沿って配置され、第2バスバー313が、下辺12の概ね前半分に沿って配置されている。そして、これら2つのバスバー312,313を結ぶ複数の加熱線314は並列に配置されるとともに、円弧状に形成されている。すなわち、複数の加熱線314は、サイドガラスの前側辺13と下辺12とが交差する角部18を概ねの中心とした同心状に形成されている。したがって、例えば、第1バスバー312の下端部(第1端部)付近と第2バスバー313の前端部(第1端部)付近を結ぶ加熱線314は短く形成され、第1バスバー312の上端部(第2端部)付近と第2バスバー313の後端部(第2端部)付近を結ぶ加熱線314は、長く形成されている。そして、加熱線314の長さが長くなるにしたがって、加熱線314の幅が太くなるように形成されている。
【0078】
また、第1接続材41は、第1バスバー312の前端部に接続され、第2接続材42は第2バスバー313の下端部に接続されている。したがって、第2切欠き部22は、第2接続材42の位置に合わせて形成されている。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、加熱線314が配置されている箇所が、サイドガラスの前側の下端の角部18付近に形成されている。すなわち、この箇所は、ドアミラーに対応する位置である。したがって、第5実施形態では、特にドアミラーに対応する位置を加熱することで曇りを防止しているため、車内からドアミラーを確実に視認することができる。このようにサイドガラス全体を加熱しないことで、消費電力を抑えることができる。なお、長い加熱線314の幅は、第2実施形態と同様に広くしているため、加熱線314が配置された領域全体の曇りを均一に除去することができる。但し、加熱線の幅314を同じにすることもでき、この場合には、第3実施形態と同様に、補助加熱線315を設ければよい。
【0080】
<F.第6実施形態>
次に、本発明に係る第6実施形態について
図7を参照しつつ説明する。
図7は第6実施形態に係るサイドガラスの平面図である。第6実施形態は第5実施形態と同じく、ドアミラーと対応する箇所を加熱するための構成である。以下では、上記各実施形態との相違部分のみを説明し、同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図7に示すように、本実施形態に係るサイドガラスでは、第1バスバー312が、各ガラス板1,2の下辺12の前端付近に配置されている。また、第2バスバー313は、第1バスバー312の後方に配置され、下辺12に沿って延びている。すなわち、両バスバー312,313は、下辺12に沿って一直線上に配置されている。また、両バスバー312,313は、短く形成され、2つのバスバー312,313の長さの合計は、概ね下辺12の半分程度となっている。
【0082】
そして、これらバスバー312,313を接続する加熱線314は次のように形成されている。すなわち、複数の加熱線314は、第1バスバー312の後端及び第2バスバー313の前端が位置する付近を中心とした円弧状に形成されている。例えば、第1バスバー312の後端部(第1端部)付近と第2バスバー313の前端部(第1端部)付近とを接続する加熱線314は短く、上方に凸となるような小さい円弧状に形成されている。また、第1バスバー312の前端部(第2端部)付近と第2バスバー313の後端部(第2端部)付近とを接続する加熱線314は長く、上方に凸となるような大きい円弧状に形成されている。最上部に位置する加熱線314の一部は、前側辺13の第1部位131に沿って形成されている。
【0083】
このように、複数の加熱線314は、ドアミラーに対応する位置に形成されている。したがって、第6実施形態では、特にドアミラーに対応する位置を加熱することで曇りを防止しているため、車内からドアミラーを確実に視認することができる。このようにサイドガラス全体を加熱しないことで、消費電力を抑えることができる。なお、長い加熱線314の幅は、第2実施形態と同様に広くしているため、加熱線314が配置された領域全体の曇りを均一に除去することができる。但し、加熱線の幅314を同じにすることもでき、この場合には、第3実施形態と同様に、補助加熱線315を設ければよい。
【0084】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は適宜組合せが可能である。
【0085】
<5−1>
上記実施形態では、各バスバー312,313がサッシュ部に収容されるようにして車内または車外から見えないようにしているが、バスバー312,313の幅によってはサッシュ部からはみ出す場合もある。そのような場合には、ガラス板1,2において、バスバー312,313が配置される辺に沿って遮蔽層を積層することができる。
図8は、第1実施形態のサイドガラスに遮蔽層7を形成した例である(他の実施形態のサイドガラスに適用できるのは勿論である)。遮蔽層7は、例えば、黒などの濃色のセラミックにより形成することができ、外側ガラス板11の外面、外側ガラス板11の内面、内側ガラス板12の外面、及び内側ガラス板12の内面の少なくとも一箇所に形成することができる。
【0086】
遮蔽層7は、例えば、外側ガラス板11の内面のみ、内側ガラス板12の内面のみ、あるいは外側ガラス板11の内面と内側ガラス板12の内面、など種々の態様が可能である。また、セラミック、種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0087】
セラミックは、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。スクリーン印刷を採用する場合、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミックを形成することができる。
【0088】
また、遮蔽層7は、セラミックを積層するほか、濃色の樹脂製の遮蔽フィルムを貼り付けることで形成することもできる。
【0089】
<5−2>
上記実施形態では、中間膜3を発熱層31と、一対の接着層32,33の合計3層で形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、中間膜3には、少なくとも両バスバー312,313及び加熱線314が含まれていればよい。したがって、例えば、接着層を1層だけにしたり、発熱層31を接着剤などで両ガラス板1,2の間に挟むこともできる。また、発熱層31に基材311を設けないこともできる。
【0090】
<5−3>
発熱層31は、種々の形状にすることができる。例えば、予め基材311上に両バスバー312,313と加熱線314が形成されたシート状の発熱層31を準備しておき、これを適宜切断し、適当な形状にした上で、両ガラス板1,2の間に配置することができる。したがって、例えば、ガラス板1,2の端縁が湾曲していれば、それに合わせて基材311の端縁を湾曲させてもよい。また、発熱層31をガラス板1,2の形状と完全に一致させる必要はなく、防曇効果を得たい部分にのみ配置することができるため、ガラス板1,2よりも小さい形状など種々の形状にすることができる。なお、ガラス板1,2も完全な矩形以外に種々の形状にすることができる。
【0091】
上記実施形態では、基材311上に両バスバー312,313と加熱線314を配置しているが、少なくとも加熱線314が配置されていればよい。したがって、例えば、両バスバー312,313を両接着層32,33の間に配置することもできる。
【0092】
<5−4>
また、隣接する加熱線314同士を少なくとも1つのバイパス線で接続することもできる。これにより、例えば、一の加熱線314が断線したとしても、隣接する加熱線314から通電が可能となる。このようなバイパス線を設けるには、種々の態様があるが、例えば、
図9に示すようにすることができる(他の実施形態のサイドガラスにも当然に適用できる)。すなわち、隣接する加熱線314の間に、少なくとも1つのバイパス線319を設け、加熱線314同士を接続することができる。バイパス線319の位置、数は特には限定されない。また、バイパス線319の形状も特には限定されず、
図9のように斜めに延びるように配置したり、波形にするなど、種々の形状にすることができる。なお、バイパス線319は、加熱線314と同じ金属材料で形成し、加熱線314と一体的に形成することができる。
【0093】
<5−5>
接続材41,42の形態や内側ガラス板2の切欠き部21,22の構成も特には限定されない。例えば、
図10に示すように、内側ガラス板2に、接続材41,42の厚み程度の小さい切欠き部21,22を形成し、各バスバー312,313から延びる接続材41,42をこの切欠き部21,22で折り返し、内側ガラス板2の表面に貼り付けておくこともできる。こうすることで、接続材41,42が合わせガラスの端部から面方向に突出するのを防止することができる。
【0094】
<5−6>
上記各実施形態で説明したサイドガラスは、種々の角度で車両に対して取り付けることができ、例えば、
図11に示すように、サイドガラス10を鉛直方向Nに対し±30度以内の角度、好ましくは±15度以内で取り付けることができる。ウインドシールドは、大きく傾斜して配置されるが、サイドガラス10は、ウインドシールドと比べて起立しているため、例えば、第1実施形態のように加熱線314を前後方向(水平方向)に延びるように配置すると、水平方向から見たとき、加熱線314間が密にならず、視界を遮るのを防止することができる。一方、加熱線314間の距離が同じであっても、ウインドシールドのように大きく傾斜すると、水平方向から見たとき加熱線314間が密になり、視界を遮るおそれがある。
【0095】
<5−7>
ガラス板1,2の形状は特には限定されず、外形上、上辺11、下辺12、前側辺13、後側辺14が特定できるような形状であればよく、必ずしも矩形状でなくてもよい。したがって、上記実施形態の前側辺13のように、各辺11〜14が2以上の角度の辺で構成されていてもよい。また、各辺11〜14は直線のほか、曲線であってもよい。
【0096】
<5−8>
上記各実施形態では、中間膜に発熱層を設けているが、これに代わって各バスバー312,313、加熱線314を、スクリーン印刷などで外側ガラス板1の内面、あるいは内側ガラス板2の内面に形成することができる。この場合、発熱層31は、基材311のみで形成したり、あるいは少なくとも1枚の接着層のみですることができる。そして、各バスバー312,313、加熱線314の配置は、上記各実施形態のようにすることができる。
【0097】
<5−9>
上記各実施形態では、サイドガラスを、外側ガラス板1、内側ガラス板2、及び中間膜3を備えて合わせガラスで構成しているが、一枚のガラス板で構成することもできる。この場合、各バスバー312,313、加熱線314は、スクリーン印刷などでガラス板の内面に形成することができる。そして、各バスバー、加熱線の配置は、上記各実施形態のようにすることができる。