(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807191
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】露出アスファルト防水層用仕上げ材及び露出アスファルト防水層の仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/10 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
E04D5/10 A
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-170653(P2016-170653)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-35600(P2018-35600A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226714
【氏名又は名称】日新工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】池上 篤
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】相臺 公豊
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−261212(JP,A)
【文献】
特開2002−167886(JP,A)
【文献】
実開昭58−195719(JP,U)
【文献】
特開2010−019028(JP,A)
【文献】
特開2010−196257(JP,A)
【文献】
特開2011−094454(JP,A)
【文献】
特開平01−278648(JP,A)
【文献】
特開2003−313992(JP,A)
【文献】
実開昭60−133029(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第1869375(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00− 5/14
E04D 7/00
E04D 11/00−11/02
E04D 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂シートとアルミニウム箔を、ポリオレフィンフィルムを介して、かつドライラミネート用接着剤で接着して張り合わせてなる複合層体をアスファルト層の表層へ張り付けて構成された、すなわち「塩化ビニル樹脂シート:ポリオレフィンフィルム:アルミニウム箔:アスファルト層」の接合・積層体からなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
【請求項2】
アルミニウム箔の厚さが5〜15μmであることを特徴とする請求項1記載の仕上げ材。
【請求項3】
塩化ビニル樹脂シートの厚さが100〜300μmであることを特徴とする請求項1記載の仕上げ材。
【請求項4】
アスファルト層中に100〜200g/m2の合成繊維不織布製の芯材が介装されてなることを特徴とする特徴とする請求項1記載の仕上げ材。
【請求項5】
合成繊維不織布製の芯材が、ポリエステル、ビニロン、ナイロン、ガラスなどの単独の合成繊維材料又はそれら単独の合成繊維材料の混合体で構成されてなるものであることを特徴とする請求項4記載の仕上げ材。
【請求項6】
アスファルト層に用いるアスファルトが、改質アスファルトあるいは防水工事用3種アスファルトであることを特徴とする請求項1記載の仕上げ材。
【請求項7】
アルミニウム箔層とアスファルト層との間に、10〜50g/m2の合成繊維製不織布を張り合わせ・介在させてなることを特徴とする請求項1記載の仕上げ材。
【請求項8】
表面の塩化ビニル樹脂層が型押しのエンボス加工を施してなるものであることを特徴とする請求項1記載の仕上げ材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の仕上げ材の下面に鉱物質細砕物が散在・付着されてなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の仕上げ材の下面に粘着材層が設けられ、更にその下面に剥離性保護フィルムが貼着されてなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の仕上げ材の下面に点状に粘着材層が設けられ、更にその下面に剥離性保護フィルムが貼着されてなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、露出アスファルト防水層用仕上げ材の提供に係るものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト防水は、施工性や耐久性、漏水に対する信頼性から古くから用いられ多くの実績がある防水工法である。近年は、新築工事よりも改修工事の物件数の方が多く、そのほとんどの場合露出防水が採用されており、露出防水層は、最上層に砂付ルーフィングが施工されている。
この砂付ルーフィングは、紫外線などからアスファルトの劣化を防止するため表層に細かい砂を圧着させ成形させており、さらに防水層の意匠性・耐候性の向上として塗料を塗布して仕上げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この露出防水用ルーフィングは、施工後数年で表層部分に以下の不具合が発生することがある。
マッドカーリング現象:すなわち、水溜り部に泥土や花粉などが堆積し、その堆積物が乾燥湿潤を繰り返し、乾燥時に体積収縮するため、表層の砂に対し食い付きの良い部分ではルーフィング表面をめくり上げる現象が生じる。また表層の砂は天然の鉱物を使用しており極微量の鉄分を含むことがあるため、錆びることがある。さらに表層部分のアスファルトが紫外線により劣化するとひび割れや砂落ちが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は従来技術の課題を解決するため鋭意工夫し、アルミニウム
箔と塩化ビニル樹脂シートを、
ポリオレフィンフィルムを介して張り合わせた複合層
体を、アスファルト層の表層へ張り付けた露出アスファルト防水層用仕上げ材を発明した。
すなわち本願発明は下記構成の露出アスファルト防水層用仕上げ材である。
[1] 塩化ビニル樹脂シート
とアルミニウム箔を
、ポリオレフィンフィルムを介して、かつドライラミネート用接着剤で接着して張り合わせてなる複合層体をアスファルト層の表層へ張り付けて構成された、すなわち「塩化ビニル樹脂シート:
ポリオレフィンフィルム:アルミニウム箔:アスファルト層」の接合・積層体からなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
[2] アルミニウム箔の厚さが5〜15μmであることを特徴とする[1]記載の仕上げ材。
[3] 塩化ビニル樹脂シートの厚さが100〜300μmであることを特徴とする[1]記載の仕上げ材。
[4] アスファルト層中に100〜200g/m
2の合成繊維不織布製の芯材が介装されてなることを特徴とする特徴とする[1]記載の仕上げ材。
[5] 合成繊維不織布製の芯材が、ポリエステル、ビニロン、ナイロン、ガラスなどの単独の合成繊維材料又はそれら単独の合成繊維材料の混合体で構成されてなるものであることを特徴とする[4]記載の仕上げ材。
[6] アスファルト層に用いるアスファルトが、改質アスファルトあるいは防水工事用3種アスファルトであることを特徴とする[1]記載の仕上げ材。
[7] アルミニウム箔層とアスファルト層との間に、10〜50g/m
2の合成繊維製不織布を張り合わせ・介在させてなることを特徴とする[1]記載の仕上げ材。
[8] 表面の塩化ビニル樹脂層が型押しのエンボス加工を施してなるものであることを特徴とする[1]記載の仕上げ材。
[9] 前記[1]〜
[8]のいずれか1項に記載の仕上げ材の下面に鉱物質細砕物が散在・付着されてなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
[10] 上記[1]〜
[8]のいずれか1項に記載の仕上げ材の下面に粘着材層が設けられ、更にその下面に剥離性保護フィルムが貼着されてなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
[11] 前記[1]〜
[8]のいずれか1項に記載の仕上げ材の下面に点状に粘着材層が設けられ、更にその下面に剥離性
保護フィルムが貼着されてなることを特徴とする露出アスファルト防水層用仕上げ材。
【発明の効果】
【0005】
本願発明によれば、アスファルトルーフィングの紫外線劣化が阻止され、かつ塩ビの可塑剤によるアスファルト層の軟化による物性劣化が防止できる。
そして、塩化ビニル樹脂シートの新設によってマッドカーリングも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施例の露出アスファルト防水層用仕上げ材の断面説明図
【
図2】他の実施例の露出アスファルト防水層用仕上げ材の断面説明図
【
図3】
図2の実施例と異なる他の実施例の露出アスファルト防水層用仕上げ材の断面説明図
【
図4】他の実施例の露出アスファルト防水層用仕上げ材に点状に粘着材層を設け、下地からの水分の圧力を分散し、防水層のフクレを防止する断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に本願発明の実施の態様について説明する。
本願発明の実施例の露出アスファルト防水層用仕上げ材は、
図1、
図2及び
図3にその断面説明図を示すごときものである。
図1では、塩化ビニル樹脂シート1にアルミニウム箔3を
、ポリオレフィンフィルム2を介して、張り合わせた複合層体をアスファルト層4の表層へ張り付けて構成された、すなわち「塩化ビニル樹脂シート1:
ポリオレフィンフィルム:アルミニウム箔3:アスファルト層4」の接合・積層体からなるものである。
なお、具体的な良好な製品としては構造体の補強、強度向上等のため、上層から下層に向かって、塩化ビニル樹脂シート1、ポリオレフィンフィルム2、アルミニウム箔3、アスファルト層4、合成繊維不織布5、アスファルト層4の順に積層されたものが好ましい。
また、更に好ましい具体的な現場使用が容易な製品としては、
図2に示すごときものが挙げられる。
上層から下層に向かって、塩化ビニル樹脂シート1、ポリオレフィンフィルム2、アルミニウム箔3、合成繊維不織布5、アスファルト層4、合成繊維不織布5−1、アスファルト層4、鉱物質細砕物6の順に積層されたものである。
そしてまた、更に好ましい具体的な現場使用が容易な製品としては、
図3に示すごときものが挙げられる。
上層から下層に向かって、塩化ビニル樹脂シート1、ポリオレフィンフィルム2、アルミニウム箔3、合成繊維不織布5−1、アスファルト層4、合成繊維不織布5、アスファルト層4、粘着材層(全面)7、剥離性保護フィルム8の順に積層されたものである。
図3に示すものは、現場において、まず剥離性保護フィルム8を剥がしてから、施工素地面に粘着材層(全面)7を圧接しながら敷設することにより容易に本発明の露出アスファルト防水層用仕上げ材を敷設することができる。
図3に示すものは全面に粘着材が設けられているが、
図4は点状に粘着材層7−1を設け、下地からの水分の圧力を分散し、防水層のフクレを防止することもできる。
【0008】
本願発明者は従来製品の砂に代え、紫外線に対して耐候性の優れた塩化ビニル樹脂の仕上げにすることで砂の欠点を解決しようと試みた。
しかしながら、塩化ビニル樹脂を直接アスファルト層へ接触させると、塩化ビニル樹脂シートに含まれる可塑剤がアスファルトへ移行し、アスファルトを軟化させ接着力を低下させることが解った。
それら可塑剤は、例えば(1)ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、(2)ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、(3)エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、(4)アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤である。
すなわち本発明者は、この可塑剤がアスファルトへ移行するのを防止するため金属箔、好ましくはアルミニウム箔(好ましくは厚さが5〜15μmのアルミニウム箔)を介在させることを発想して、上記問題点を解決した。
アルミニウム箔の厚さが15μm以上では柔軟性が損なわれ、5μm以下では破れ易く取り扱いに注意を要する。
塩化ビニル樹脂の厚さは100〜300μmの範囲のものが長期の耐久性や軽歩行に耐えられ好ましい。アルミニウムと塩化ビニル樹脂シートの張り合わせはポリオレフィンフィルムをドライラミネート用接着剤(例えばウレタン系、ポリエステル系接着剤)として使用するのが製造上好ましい。
アスファルト層の芯材は従来から用いられて実績のあるポリエステル、ビニロン、ナイロン、ガラスなどの単独の不織布あるいはそれぞれの混合不織布が好ましい。
アスファルトルーフィングに用いるアスファルトは、従来一般的に使用されているJIS A6013 改質アスファルトルーフィングシートに使用される改質アスファルト、あるいはJIS A6022 ストレッチアスファルトルーフィングシートの砂付ストレッチに規定されている防水工事用3種アスファルトが好ましい。
改質アスファルトの改質材は従来から多く用いられているSBS,SEBS,APAO,APPなどが一般的である。
アルミニウム箔層のアスファルト接触面へ、10〜50g/m
2の合成繊維不織布を張り合わせると、長期にわたるアルミニウム箔とアスファルトの接着を安定的に確保できる。
表面の塩化ビニル樹脂層へ型押しのエンボス模様を設けることにより、ロール状の製品に巻いたときに発生するしわなどの不具合を防止でき美観的にも好ましい。
本発明に用いる塩化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニルの他、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体及び塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体などが挙げられる。
【0009】
本発明に用いる合成繊維不織布としては、ビニロン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなどの極細繊維からなるシート状のものが挙げられるが、ポリエステル製のものを用いるのが好ましい。
また、改質アスファルトや防水工事用アスファルトの補強に用いられる合成繊維不織布は目付100〜200g/m
2程度のものが好ましい。一方、アルミ箔と改質アスファルトとの接着を安定なものとする合成繊維不織布の目付は10〜50g/m
2程度のものが好ましい。
【実施例】
【0010】
本願発明の実施例の露出アスファルト防水層用仕上げ材は、
図1にその説明用断面図を示すごとく、
塩化ビニル樹脂シート1にアルミニウム箔3を
、ポリオレフィンフィルム2を介して、張り合わせた複合層体をアスファルト層4の表層へ張り付けて構成された、すなわち「塩化ビニル樹脂シート1:
ポリオレフィンフィルム2:アルミニウム箔3:アスファルト層4」の接合・積層体からなるものである。
そして、アルミニウム箔の厚さが10μmであり、塩化ビニル樹脂シートの厚さが200μmである。
さらに、アスファルト層の芯材は、ポリエステル、ビニロン、ナイロンなどの
合成繊維不織布5である。
なお、アルミニウム箔層とアスファルト層との間に、10〜50g/m
2の合成繊維不織布を張り合わせ・介在させてなることも好ましい。
そしてまた、表面の塩化ビニル樹脂層は型押しのエンボス加工を設けてなるものである。
【0011】
従来の露出アスファルト防水層と
図1に示す本願発明の試作品を、水が溜まり、乾燥湿潤を繰り返す様に作成した暴露試験体を作成し暴露試験を行った結果を表1に示す。
【表1】
【符号の説明】
【0012】
1:塩化ビニル樹脂シート
2:ポリオレフィンフィルム
3:アルミニウム箔
4:アスファルト層
5:合成繊維不織布(目付100〜200g/m
2)
5−1:合成繊維不織布(目付10〜50g/m
2)
6:鉱物質細砕物
7:粘着材層(全面)
7−1:点状の粘着材層
8:剥離性保護フィルム