特許第6807195号(P6807195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807195
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】生体貼付用積層体
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/24 20060101AFI20201221BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20201221BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61L15/24 110
   A61L15/26 110
   C09J7/00
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-180361(P2016-180361)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-42783(P2018-42783A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 良真
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英志
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133727(WO,A1)
【文献】 実開昭63−062123(JP,U)
【文献】 実開平02−142434(JP,U)
【文献】 特開2003−081817(JP,A)
【文献】 特開平07−033646(JP,A)
【文献】 特開2000−201965(JP,A)
【文献】 特開2000−201966(JP,A)
【文献】 特開2000−201967(JP,A)
【文献】 特開2000−201969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00− 15/64
A61K 9/00− 9/72
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に貼付するための感圧接着剤層と、
前記感圧接着剤層の厚み方向一方面に配置され、前記感圧接着剤層を支持する基材層と、
前記基材層の厚み方向一方面に配置される保護層と
を備え
前記保護層が、ポリビニルアルコールの架橋体を含有することを特徴とする、生体貼付用積層体。
【請求項2】
前記保護層が、耐薬品層および耐摩擦層の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1に記載の生体貼付用積層体。
【請求項3】
前記保護層が、耐薬品層であり、
前記耐薬品層のSP値(SPcover)と、印刷層の形成に用いる溶媒のSP値(SPsolvent)との差の絶対値(|SPcover−SPsolvent|)が1.0以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生体貼付用積層体。
【請求項4】
前記保護層が、耐薬品層であり、
前記耐薬品層のSP値(SPcover)が、12.0以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体貼付用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体貼付用積層体、詳しくは、医療用や衛生材料用を含む各種用途に用いられる生体貼付用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用や衛生材料に各種粘着テープを用いることが知られている。このような粘着テープは、皮膚に直接貼付するため、皮膚の曲面や動きに追従できる柔軟性を有するとともに、剥離時に皮膚に与える物理的刺激を抑えている。
【0003】
例えば、フィルム上に、主成分であるアクリル酸エステル系ポリマーと、皮膚から容易に剥離するために添加されるカルボン酸エステルとを含む樹脂組成物から形成した粘着剤層を有する粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−342541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1を含む粘着シートは、用途によっては、その表面に、印刷層が印刷される場合があり、その場合には、印刷方式に応じた印刷耐性が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、生体に貼付するための感圧接着剤層と、前記感圧接着剤層の厚み方向一方面に配置され、前記感圧接着剤層を支持する基材層と、前記基材層の厚み方向一方面に配置される保護層とを備える、生体貼付用積層体を含む。
【0007】
この生体貼付用積層体では、基材層の厚み方向一方面に配置される保護層を備えるので、印刷層が印刷されるときに、印刷層の形成に用いる溶媒が生体貼付用積層体の内部に移行することを抑制することができる。そのため、生体貼付用積層体の膨潤を抑制し、しわなどの変形を抑制することができる。または、印刷器具の摩擦による損傷を抑制することができる。したがって、この生体貼付用積層体は、印刷耐性に優れる。
【0008】
本発明(2)は、前記保護層が、耐薬品層および耐摩擦層の少なくとも一方である、(1)に記載の生体貼付用積層体を含む。
【0009】
この生体貼付用積層体では、耐薬品性および耐摩擦性の少なくとも一方を備えるため、印刷層の形成に用いる溶媒によって、生体貼付用積層体の膨潤を抑制し、しわなどの変形を抑制することができる。または、印刷器具の摩擦による損傷を抑制することができる。
【0010】
本発明(3)は、前記保護層が、耐薬品層であり、前記耐薬品層のSP値(SPcover)と、印刷層の形成に用いる溶媒のSP値(SPsolvent)との差の絶対値(|SPcover−SPsolvent|)が1.0以上である、(1)または(2)に記載の生体貼付用積層体を含む。
【0011】
この生体貼付用積層体では、印刷層の形成に用いる溶媒が積層体の内部に移行することをより一層抑制することができるため、生体貼付用積層体の膨潤を抑制し、しわなどの変形をより確実に抑制することができる。したがって、この生体貼付用積層体は、印刷耐性により一層優れる。
【0012】
本発明(4)は、前記保護層が、耐薬品層であり、前記耐薬品層のSP値(SPcover)が、12.0以上である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の生体貼付用積層体を含む。
【0013】
この生体貼付用積層体では、印刷層の形成に用いる溶媒が生体貼付用積層体の内部に移行することをより一層抑制することができるため、生体貼付用積層体の膨潤を抑制し、しわなどの変形をより確実に抑制することができる。したがって、この生体貼付用積層体は、印刷耐性により一層優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生体貼付用積層体は、印刷耐性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の生体貼付用積層体の一実施形態(剥離層を備える態様)の断面図を示す。
図2図2は、図1に示す生体貼付用積層体の変形例(剥離層を備えない態様)の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1. 生体貼付用積層体の層構成
本発明の一実施形態である生体貼付用積層体1は、図1に示すように、感圧接着剤層2と、基材層3と、保護層4とを備える。また、生体貼付用積層体1は、剥離層5を備える。具体的には、生体貼付用積層体1は、剥離層5と、感圧接着剤層2と、基材層3と、保護層4とを厚み方向一方側に向かって順に備える。以下、各層を順に説明する。
【0017】
2. 剥離層
剥離層5は、生体貼付用積層体1における厚み方向他方面を形成する厚み方向他方側層である。剥離層5は、感圧接着剤層2の作製に供されるフィルムであって、生体貼付用積層体1の使用前には、感圧接着剤層2を保護し、生体貼付用積層体1の使用時には感圧接着剤層2から剥離される剥離層である。
【0018】
剥離層5は、面方向(厚み方向に直交する方向)に延びる略平板(シート)形状を有する。剥離層5としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムなどの、樹脂フィルム、例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、トップコート紙などの剥離紙などが挙げられる。また、剥離層5の表面には、剥離処理が施されていてもよい。
【0019】
剥離層5の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0020】
3.感圧接着剤層
感圧接着剤層2は、基材層3を生体に貼付するための貼付層である。感圧接着剤層2は、剥離層5の厚み方向一方面の全面に接触している。感圧接着剤層2は、面方向に延びる略平板(シート)形状を有する。感圧接着剤層2は、感圧接着剤組成物からなる。
【0021】
感圧接着剤組成物は、例えば、アクリルポリマーを含有する。好ましくは、感圧接着剤組成物は、アクリルポリマーと、カルボン酸エステルとを含有する。
【0022】
アクリルポリマーは、感圧接着剤組成物における主成分であって、例えば、感圧接着成分である。
【0023】
アクリルポリマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(具体的には、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メトキシエチルなど)を主成分(モノマー成分における含有割合が70質量%以上、99質量%以下)とし、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマー(具体的には、アクリル酸など)を任意成分(モノマー成分における含有割合が30質量%以下、1質量%以上)として含有するモノマー成分を重合したポリマーである。アクリルポリマーとしては、例えば、特開2003−342541号公報に記載のアクリルポリマーなどが挙げられる。
【0024】
感圧接着剤組成物(感圧接着剤層2)に対するアクリルポリマーの含有割合は、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下であり、また、例えば、30質量%以上、好ましくは、60質量%以上である。
【0025】
感圧接着剤組成物におけるカルボン酸エステルは、アクリルポリマーの感圧接着力を低減して、感圧接着剤層2の感圧接着力を調整する感圧接着力調整剤である。また、カルボン酸エステルは、アクリルポリマーと相溶可能なカルボン酸エステルである。
【0026】
カルボン酸エステルは、例えば、カルボン酸と、アルコールとのエステルである。
【0027】
カルボン酸としては、分子中にカルボキシル基を1個含有する脂肪酸が挙げられる。脂肪酸としては、例えば、吉草酸(ペンタン酸、炭素数5)、カプロン酸(ヘキサン酸、炭素数6)、エタント酸(ヘプタン酸、炭素数7)、カプリル酸(オクタン酸、炭素数8)、ペラルゴン酸(ノナン酸、炭素数9)、カプリン酸(デカン酸、炭素数10)、ウンデカン酸(炭素数11)、ラウリン酸(ドデカン酸、炭素数12)、ミリスチン酸(デトラデカン酸、炭素数14)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸、炭素数16)、ステアリン酸(オクタデカン酸、炭素数18)、ベヘン酸(ドコサン酸、炭素数22)などの、炭素数5以上、22以下の直鎖状の飽和脂肪酸、例えば、2−エチルヘキサン酸、ジメチルオクタン酸、イソステアリン酸(2−ヘプチルウンデカン酸)などの、炭素数8以上、18以下の分岐状の飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの、炭素数5以上、22以下の不飽和脂肪酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
【0028】
また、カルボン酸として、例えば、フマル酸、フタル酸などのジカルボン酸などの、分子中にカルボキシル基を2個以上含有する多価カルボン酸も挙げられる。さらに、カルボン酸として、例えば、乳酸などのヒドロキシカルボン酸なども挙げられる。
【0029】
カルボン酸としては、好ましくは、分子中にカルボキシル基を1個含有する脂肪酸、より好ましくは、直鎖状の飽和脂肪酸、さらに好ましくは、炭素数6以上、18以下の直鎖状の飽和脂肪酸が挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数8以上、16以下の直鎖状の飽和脂肪酸が挙げられ、最も好ましくは、カプリル酸(炭素数8)が挙げられる。
【0030】
アルコールとしては、例えば、1価アルコール、多価アルコールなどが挙げられる。
【0031】
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、セチルアルコール(1−ヘキサデカノール))、イソセチルアルコール、ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)、ステアリルアルコール(1−オクタデカノール)などが挙げられる。
【0032】
多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコールなどが挙げられる。
【0033】
アルコールとして、好ましくは、多価アルコール、より好ましくは、3価アルコール、さらに好ましくは、グリセリンが挙げられる。
【0034】
なお、カルボン酸エステルにおいて、アルコールが多価アルコールである場合に、多価アルコールにおけるヒドロキシル基の一部がエステル結合を形成し、残部がヒドロキシル基として残存することもできる。
【0035】
具体的には、カルボン酸エステルとして、例えば、トリカプリル酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパンなどの、カルボン酸(脂肪酸)と3価アルコールとのエステルが挙げられる。また、第1のカルボン酸エステルとして、例えば、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコールなどの、カルボン酸と2価アルコールとのエステルが挙げられる。また、第1のカルボン酸エステルとして、例えば、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ミリスチン酸ステアリル、オレイン酸ステアリル、ジメチルオクタン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、コハク酸ジオクチルなどの、カルボン酸と1価アルコールとのエステルが挙げられる。さらに、第1のカルボン酸エステルとして、乳酸セチル、乳酸ミリスチルなどが挙げられる。
【0036】
カルボン酸エステルとして、好ましくは、脂肪酸と3価アルコールとのエステルが挙げられ、より好ましくは、相溶性の観点から、脂肪酸とグリセリンとのエステル(トリ脂肪酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリド、または、トリカプリル酸グリセライド)が挙げられ、さらに好ましくは、直鎖状の飽和脂肪酸とグリセリンとのエステル(トリ[直鎖状脂肪酸]グリセリル)、とりわけ好ましくは、トリカプリル酸グリセリルが挙げられる。
【0037】
また、カルボン酸エステルが、脂肪酸と3価アルコールとのエステルである場合には、1分子当たりのエステル基数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、より好ましくは、3である。
【0038】
これらのカルボン酸エステルは、単独使用または併用することができる。好ましくは、単独使用が挙げられる。
【0039】
カルボン酸エステルの含有割合は、アクリルポリマー100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。また、感圧接着剤組成物(感圧接着剤層2)に対するカルボン酸エステルの含有割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0040】
また、感圧接着剤組成物は、必要により、架橋剤を含有することもできる。架橋剤は、アクリルポリマーを架橋する架橋成分である。架橋剤として、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、過酸化化合物、尿素化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、アミン化合物などが挙げられる。架橋剤は、単独使用または2種以上併用することができる。架橋剤として、好ましくは、ポリイソシネート化合物(多官能イソシアネート化合物)が挙げられる。架橋剤の割合は、アクリルポリマー100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0041】
感圧接着剤層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、80μm以下である。
【0042】
4. 基材層
基材層3は、感圧接着剤層2の厚み方向一方側に配置されている。具体的には、基材層3は、感圧接着剤層2の厚み方向一方面全面に配置されている。つまり、基材層3は、感圧接着剤層2の厚み方向一方面に接触している。基材層3は、面方向に延びる略平板(シート)形状を有する。これにより、基材層3は、感圧接着剤層2を支持する。基材層3は、基材組成物からなる。
【0043】
基材組成物は、例えば、基材樹脂を含有する。好ましくは、基材組成物は、基材樹脂と、カルボン酸エステルとを含有する。
【0044】
基材樹脂は、基材組成物における主成分であって、例えば、基材層3に適度な柔軟性、靱性、可撓性、伸縮性を付与できる可撓性樹脂である。
【0045】
基材樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0046】
基材組成物(基材層3)に対する基材樹脂の含有割合は、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下であり、また、例えば、70質量%以上、好ましくは、80質量%以上である。
【0047】
基材組成物におけるカルボン酸エステルは、柔軟性を付与するための弾性調整剤である。カルボン酸エステルとしては、上記した感圧接着剤組成物におけるカルボン酸エステルと同様のものが挙げられ、これらの中から、用途および目的に応じて、適宜選択される。基材組成物におけるカルボン酸エステルとして、好ましくは、感圧接着剤組成物におけるカルボン酸エステルと同一種類のカルボン酸エステルが挙げられる。基材組成物におけるカルボン酸エステルとして、好ましくは、トリ脂肪酸グリセリルが挙げられる。具体的には、基材組成物におけるカルボン酸エステルおよび感圧接着剤組成物におけるカルボン酸エステルが、好ましくは、ともにトリ脂肪酸グリセリルである。
【0048】
カルボン酸エステルは、単独使用または併用することができる。好ましくは、単独使用が挙げられる。
【0049】
カルボン酸エステルの基材樹脂100質量部に対する含有割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、25質量部以下である。基材組成物(基材層3)に対するカルボン酸エステルの含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0050】
基材層3の破断伸度は、例えば、100%以上、好ましくは、200%以上、より好ましくは、300%以上であり、また、例えば、2000%以下、好ましくは、1500%以下、より好ましくは、1000%以下である。破断伸度の測定は、後の実施例で説明する。基材層3の破断伸度が上記範囲であれば、ハンドリング性の低下や強度の低下を抑制することができる。基材層3の破断伸度は、後の実施例に記載の方法で、求められる。
【0051】
また、基材層3の透湿度は、例えば、300(g/m/day)以上、好ましくは、600(g/m/day)以上、さらに好ましくは、1000(g/m/day)以上である。基材層3の透湿度が上記した下限以上であれば、生体貼付用積層体1を生体に貼着しても、生体に対する負荷を抑制することができる。基材層3の透湿度は、後の実施例に記載の方法で、求められる。
【0052】
基材層3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0053】
基材層3の厚みが上記した下限以上であれば、基材層3を確実に保形することができる。そのため、基材層3を備える生体貼付用積層体1は、取扱性に優れる。基材層3の厚みが、上記した上限以下であれば、基材層3を、生体に確実に貼付することができる。
【0054】
5. 保護層
保護層4は、生体貼付用積層体1の厚み方向一方面(保護層表面)に、印刷によって印刷層(仮想線で示される符号6)が形成されるときに、生体貼付用積層体1の変形や損傷を抑制するための保護層である。保護層4は、基材層3の厚み方向一方側に配置されている。具体的には、保護層4は、基材層3の厚み方向一方面全面に配置されている。つまり、保護層4は、基材層3の厚み方向一方面に接触している。保護層4は、面方向に延びる略平板(シート)形状を有する。
【0055】
保護層4としては、例えば、耐薬品層、耐摩擦層などが挙げられる。
【0056】
5−1. 耐薬品層
耐薬品層は、印刷時に使用されるインキ(印刷液)に含有される溶媒によって、生体貼付用積層体1(具体的には、耐薬品層や基材層3)が膨潤され、変形されることを抑制する潤滑抑制層である。具体的には、耐薬品層は、例えば、JIS K 7114(プラスチック−液体薬品への浸漬効果を求める試験方法)において、溶媒(好ましくは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)に10分間接触させたときに、その表面の外観に変化がない、または、ほとんど変化がない(例えば、接触面積の80%以上が変化しない程度の)層である。
【0057】
耐薬品層は、例えば、樹脂を含有する保護組成物から形成されている。耐薬品層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの架橋体、ポリビニルアルコールの共重合体、ポリビニルアルコールの変性物、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、シリコーン樹脂、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルポリマーとエポキシ樹脂との架橋体などが挙げられる。
【0058】
耐薬品層の樹脂としては、耐薬品性の観点から、好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの架橋体、ポリビニルアルコールの共重合体、ポリビニルアルコールの変性物が挙げられ、より好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの架橋体が挙げられる。
【0059】
ポリビニルアルコール(PVA)は、ポリ酢酸ビニルの加水分解物(具体的には、部分加水分解物)である。また、ポリビニルアルコールは、水溶性ポリマーである。
【0060】
ポリビニルアルコールのケン化度は、例えば、80モル%以上、好ましくは、90モル%以上、より好ましくは、95モル%以上であり、また、例えば、100モル%以下である。ケン化度を上記範囲とすることにより、薬品性をより一層向上させることができる。
【0061】
ポリビニルアルコールの重合度は、例えば、1000以上、好ましくは、1500以上、より好ましくは、1800以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下である。重合度を上記範囲とすることにより、薬品性をより一層向上させることができる。
【0062】
ポリビニルアルコールの4質量%水溶液(20℃)における粘度は、例えば、5mPa・s以上、好ましくは、10mPa・s以上であり、また、例えば、100mPa・s以下、好ましくは、50mPa・s以下である。
【0063】
ポリビニルアルコールのケン化度、重合度および粘度は、ともに、JIS K 6726(1994)に記載の「ポリビニルアルコール試験方法」に従って、算出される。
【0064】
ポリビニルアルコールの架橋体は、架橋剤を用いてポリビニルアルコールを架橋することにより得られる。
【0065】
架橋剤としては、イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸無水物、カルボジイミド系化合物、ビスビニルスルホン系化合物、有機チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。耐薬品性や耐摩擦性の観点から、好ましくは、イソシアネート系化合物、有機チタン系化合物、ビスビニルスルホン系化合物が挙げられ、より好ましくは、イソシアネート系化合物、有機チタン系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、イソシアネート系化合物が挙げられる。
【0066】
イソシアネート系化合物としては、例えば、イソシアネート基がブロック化されたブロックイソシアネート系化合物も含まれる。このようなブロックイソシアネート系化合物としては、具体的には、明成化学工業社製のメイカネートシリーズ、SUシリーズ、DMシリーズ、NBPシリーズが挙げられる。
【0067】
有機チタン系化合物としては、例えば、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタントリエタノールアミネートなどが挙げられる。
【0068】
ビスビニルスルホン系化合物としては、例えば、N−N´−エチレンビス[2−(ビニルスルフォニル)アセトアミド]、N−N´−トリメチレン[2−(ビニルスルフォニル)アセトアミド]などが挙げられる。
【0069】
ポリビニルアルコールの架橋体は、ポリビニルアルコールと架橋剤とを配合し、その後、加熱によって架橋反応を進行させて、生成される。架橋剤の、ポリビニルアルコール100質量部に対する配合割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、50質量部未満、好ましくは、35質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0070】
ポリビニルアルコールの共重合体は、酢酸ビニルとコモノマーを共重合させ、その後、酢酸基をケン化反応により水酸基に変換させることにより得られる。この際に用いられるコモノマーとしては、例えば、エチレンなどのオレフィン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドなどが挙げられる。
【0071】
ポリビニルアルコールの変性物は、ポリビニルアルコールの水酸基に、アルキル基、エステル基、アミド基、アセトアセチル基、シリル基などの官能基を結合させることにより得られる。
【0072】
保護組成物は、用途および目的に応じて、例えば、界面活性剤などの添加剤を含有することができる。界面活性剤は、保護組成物における樹脂の塗布性を向上させる塗布性向上剤である。界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。添加剤(界面活性剤)の添加割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0073】
耐薬品層のSP値(SPcover)は、例えば、10.0以上、好ましくは、11.0以上、より好ましくは、12.0以上であり、また、例えば、16.0以下、好ましくは、14.0以下である。耐薬品層のSP値が、上記した範囲内であれば、印刷層6の形成に用いる溶媒が耐薬品層(保護層4)内部に移行および膨潤することを有効に防止することができる。
【0074】
SP値は、Fedors法に基づいて、算出される。具体的には、耐薬品層などの保護層に含有される樹脂の構造をHSPiPなどの解析ソフトに入力することにより、SPが取得される。あるいは、SP値は、Fedors法に基づいて既に計算された文献値に基づいて、得ることもできる。
【0075】
耐薬品層のSP値(SPcover)と、印刷層6の形成に用いる溶媒のSP値(SPsolvent)との差の絶対値(|SPcover−SPsolvent|)は、例えば、1.0以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、3.0以上、さらに好ましくは、3.5以上であり、また、例えば、7.0以下、好ましくは、5.0以下、より好ましくは、4.0以下であるように、設定される。絶対値が、上記した範囲内であれば、溶媒が耐薬品層(保護層4)内部に移行および膨潤することを有効に防止することができる。
【0076】
印刷層6の形成に用いる溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸、n−プロピル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。好ましくは、エステル系溶媒が挙げられ、より好ましくは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0077】
溶媒のSP値(SPcover)は、印刷層6の種類や印刷方式に応じて適宜設定されるが、例えば、7.0以上、好ましくは、8.0以上、より好ましくは、9.0以上であり、また、例えば、13.0以下、好ましくは、10.0以下である。
【0078】
5−2. 耐摩擦層
耐摩擦層は、印刷時に、アプリケータなどの印刷器具の接触によって、生体貼付用積層体1の厚み方向一方面(具体的には、耐薬品層の表面)が損傷されることを抑制する層である。具体的には、耐摩擦層では、例えば、JIS K 5600−5−4(塗膜の機械的性質 引っかき硬度(鉛筆法)、鉛筆硬度B)による測定で、その表面の外観に変化がない、または、ほとんど変化がない(例えば、小傷が認められる程度の)層である。
【0079】
耐摩擦層は、例えば、樹脂を含有する保護組成物から形成されている。耐摩擦層に用いる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールの架橋体、ポリビニルアルコールの共重合体、ポリビニルアルコールの変性物などが挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールの架橋体が挙げられる。
【0080】
エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族系エポキシ樹脂、脂肪族・脂環族系エポキシ樹脂、含窒素環系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0081】
芳香族系エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂およびこれらの変性体などのビスフェノール型エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、例えば、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0082】
脂肪族・脂環族系エポキシ樹脂としては、例えば、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0083】
含窒素環系エポキシ樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートエポキシ樹脂、ヒダントインエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0084】
保護組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、好ましくは、さらに硬化触媒を含有する。
【0085】
硬化触媒としては、エポキシ樹脂を硬化させる触媒であり、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、トリフェニルボラン系化合物、アミノ基含有化合物、酸無水物系化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール系化合物が挙げられる。
【0086】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール4,5−ジメタノール、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル(1)’)エチル−s−トリアジン・イソシアヌール酸付加物などが挙げられる。
【0087】
硬化触媒の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0088】
耐摩擦層における保護組成物においても、例えば、界面活性剤などの添加剤を含有することができる。
【0089】
本発明では、保護層4としては、好ましくは、耐薬品層兼耐摩擦層が挙げられる。すなわち、保護層4は、好ましくは、耐薬品性および耐摩擦性を併有する。優れた耐薬品性および耐摩擦性を併有できる層を形成する樹脂としては、好ましくは、ポリビニルアルコールの架橋体が挙げられる。すなわち、好ましくは、保護層4は、ポリビニルアルコールの架橋体から形成されている。
【0090】
保護層4の厚みは、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0091】
保護層4の厚みの、基材層3の厚みに対する比(保護層4の厚み/基材層3の厚み)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上であり、また、例えば、0.50以下、好ましくは、0.20以下である。
【0092】
保護層4の厚みが、上記した上限以下であれば、生体貼付用積層体1の柔軟性を保持することができる。保護層4の厚みが、上記した下限以上であれば、保護層4によって、印刷層6の形成時における膨潤や摩擦をより有効に防止することができる。
【0093】
6.生体貼付用積層体の作製方法
生体貼付用積層体1を作製するには、まず、複数の剥離層5を用意する。続いて、感圧接着剤層2および基材層3のそれぞれを、それぞれの剥離層5の表面に作製する。
【0094】
感圧接着剤層2を作製するには、まず、感圧接着剤組成物を調製する。具体的には、例えば、アクリルポリマーと、必要により、カルボン酸エステルと、架橋剤とを配合して、それらを混合し、感圧接着剤組成物(感圧接着剤層用塗布液)を調製する。次いで、感圧接着剤組成物を剥離層5の表面に塗布し、続いて、加熱により、乾燥させる。乾燥温度は、例えば、100℃以上、140℃以下であり、また、乾燥時間は、例えば、1分間以上、15分間以下である。
【0095】
その後、感圧接着剤組成物が、架橋剤などを含有する場合には、乾燥した感圧接着剤組成物をさらに加熱(熟成)させる。熟成温度は、例えば、40℃以上、80℃以下であり、また、熟成時間は、例えば、1時間以上、100時間以下である。
【0096】
これにより、感圧接着剤層2を、剥離層5の表面に作製する。
【0097】
別途、基材層3を作製する。基材層3を作製するには、基材組成物を調製する。具体的には、例えば、基材樹脂と、溶媒と、必要により、カルボン酸エステルとを配合して、それらを混合し、基材組成物の溶液(基材用塗布液)を調製する。基材用塗布液に用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒が挙げられる。溶媒は、単独使用または併用することができる。また、基材樹脂が予め溶媒に溶解された溶液として調製されている場合には、上記した溶液に含まれる溶媒をそのまま用い、別途、溶媒を追加せずに、基材用塗布液を調製してもよい。
【0098】
次いで、基材用塗布液を剥離層5の表面に塗布する。塗布後、基材用塗布液を乾燥させる。
【0099】
乾燥温度は、例えば、100℃以上、140℃以下である。乾燥時間は、例えば、1分間以上、15分間以下である。
【0100】
これにより、基材層3を、剥離層の表面に作製する。
【0101】
その後、感圧接着剤層2および基材層3を、例えば、ラミネータなどにより、貼り合わせる。具体的には、感圧接着剤層2および基材層3を接触させる。その後、基材層3側の剥離層5を剥離する。
【0102】
これにより、剥離層5、感圧接着剤層2および基材層3を備える積層体を作製する。
【0103】
次いで、保護層4を作製する。保護層4を作製するには、まず、保護組成物を調製する。具体的には、例えば、樹脂と、溶媒と、必要により、架橋剤と、界面活性剤とを配合して、それらを混合し、保護組成物(保護層用塗布液)を調製する。
【0104】
保護層用塗布液に用いる溶媒としては、基材用塗布液に用いる溶媒のほか、水などの水系溶媒が挙げられる。また、樹脂が予め溶媒に溶解された溶液として調製されている場合には、上記した溶液に含まれる溶媒をそのまま用い、かかる溶液に架橋剤、さらには、界面活性剤を必要により配合することができる。溶媒の配合割合は、保護層用塗布液に対する樹脂の含有割合が、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、また、例えば、75質量%以下、好ましくは、50質量%未満となるように、調整される。
【0105】
次いで、保護組成物を剥離層5の表面に塗布し、続いて、加熱により乾燥させる。乾燥温度は、例えば、80℃以上、120℃以下であり、また、乾燥時間は、例えば、1分間以上、15分間以下である。
【0106】
その後、保護組成物が、架橋剤などを含有する場合には、乾燥した保護組成物をさらに加熱(熟成)させる。これにより、ポリビニルアルコールなどの樹脂が、架橋剤によって架橋され、架橋体が生成される。熟成温度は、例えば、110℃以上、150℃以下であり、また、熟成時間は、例えば、1分以上、15分以下である。
【0107】
これにより、保護層4を、剥離層の表面に作製する。
【0108】
その後、積層体および保護層4を、例えば、ラミネータなどにより、貼り合わせる。具体的には、積層体の基材層3と保護層4とを接触させる。続いて、保護層4側の剥離層5を剥離する。
【0109】
これにより、剥離層5、感圧接着剤層2、基材層3および保護層4を備える生体貼付用積層体1を作製する。
【0110】
7.変形例
上記した一実施形態では、図1に示すように、生体貼付用積層体1は、感圧接着剤層2、基材層3および保護層4の他に、剥離層5を備える。
【0111】
しかし、図2に示すように、生体貼付用積層体1は、剥離層5(図1参照)を備えず、感圧接着剤層2、基材層3および保護層4のみを備えることもできる。図2に示す生体貼付用積層体1は、感圧接着剤層2、基材層3および保護層4からなる3層積層体である。
【0112】
また、上記した一実施形態では、図1に示すように、生体貼付用積層体1は、感圧接着剤層2と、基材層3と、保護層4とを備えるが、さらに、例えば、インク層(インキ層)、回路層などの印刷層6を備えることもできる。すなわち、この変形例では、生体貼付用積層体1は、好ましくは、保護層4の厚み方向一方面に配置された印刷層6を備える。
【0113】
上記印刷層6を設ける場合の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、エアナイフコーティング、ブレードコーティングなどの公知の印刷方法が挙げられる。
【0114】
インキ層としては、例えば、WO2012/008278号公報に記載のレーザーマーキング用インキ層が挙げられる。
【0115】
7.生体貼付用積層体の用途
この生体貼付用積層体1は、生体への貼付に使用される。
【0116】
生体としては、特に限定されない。生体としては、動物体、植物体が挙げられる。動物体としては、例えば、人体(人)、例えば、牛、馬、豚、豚、鶏、犬、猫などの家畜、例えば、魚類などが挙げられる。植物体としては、例えば、稲、大麦、小麦、トウモロコシ、サトウキビなどの穀類、例えば、ジャガイモ、サツマイモなどの根茎または塊根を形成する作物、例えば、大豆、いんげん豆、ソラマメ、エンドウなどのマメ科植物、例えば、ピーナッツ、ごま、ナタネ、綿実、ヒマワリ、サフラワーなどの種子作物、例えば、リンゴ、メロン、ブドウなどの果実を有する作物などが挙げられる。生体としては、好ましくは、動物体、より好ましくは、人体が挙げられる。
【0117】
生体貼付用積層体1は、例えば、医療用や衛生材料用を含む各種用途に用いられ、具体的には、絆創膏などとして用いられる。
【0118】
具体的には、生体貼付用積層体1が剥離層5を備える場合には、まず、剥離層5を感圧接着剤層2から剥離し、続いて、感圧接着剤層2の厚み方向他方面を生体に貼着する。具体的には、感圧接着剤層2を介して基材層3を生体に貼着する。
【0119】
8.生体貼付用積層体の作用効果
生体貼付用積層体1には、優れた印刷耐性が求められる場合がある。
【0120】
具体的には、生体貼付用積層体1に、上記の印刷層6が設けられる場合には、例えば、ウェアラブルデバイスの配線層などでは、配線形成時に配線層が変形しにくい(例えば、所望形状の配線層を形成し易い)、優れた印刷耐性が求められる。ここでいうウェアラブルデバイスとは、例えば、特表2012−508984号公報に記載されるような、伸縮可能な本体部および伸縮可能な電子回路を備える生体貼付型センサなどが挙げられる。
【0121】
また、例えば、WO2012/008278号公報に記載のレーザーマーキングフィルムにおけるインキ層などでは、バーコードや文字などの各種情報を示すレーザーマーキング像を鮮明に読み取る必要がある。そのため、インキ層形成時にインキ層が変形しにくい(例えば、鮮明なインキ層を形成し易い)、優れた印刷耐性が求められる。
【0122】
しかし、特許文献1に記載の粘着シートは、フィルムと、粘着剤層とから構成されているため、フィルムにインキ層などの印刷層が印刷されると、インキ中の溶媒がフィルム中に移行し、それに基づいて、フィルムが膨張し、フィルムにしわなどの変形を生じるという不具合がある。または、印刷時に、印刷器具がフィルム表面に直接接触し、摩擦によりフィルムが破損するという不具合がある。
【0123】
一方、この一実施形態では、生体貼付用積層体1が保護層4を厚み方向一方側に備えるので、印刷耐性に優れる。
【0124】
特に、生体貼付用積層体1が、保護層4として耐薬品層を備える場合、生体貼付用積層体1の厚み方向一方面(具体的には、耐薬品層の表面)にインキ層などの印刷層が印刷されても、インキの溶媒が生体貼付用積層体1の内部(保護層4や基材層3)に移行することが抑制される。そのため、生体貼付用積層体1の膨潤を抑制し、しわなどの変形を抑制することができる。よって、この場合、生体貼付用積層体1は、耐薬品性に優れる。
【0125】
また、生体貼付用積層体1が、保護層4として耐摩擦層を備える場合、生体貼付用積層体1の厚み方向一方面(具体的には、耐摩擦層の表面)にインキ層などが印刷されても、印刷器具の摩擦による損傷を抑制することができる。よって、この場合、生体貼付用積層体1は、耐摩擦性に優れる。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
する。
【0127】
実施例1
1.感圧接着剤層の作製
特開2003−342541号公報の実施例1に記載に従って、アクリル酸イソノニル(iNA)、アクリル酸メトキシエチル(MEA)およびアクリル酸(AA)からアクリルポリマーを調製した。
【0128】
次いで、アクリルポリマー100質量部と、トリカプリル酸グリセリル60質量部と、架橋剤としてコロネートHL(商品名、多官能イソシアネート化合物、日本ポリウレタン工業社製)0.01質量部とを配合し、撹拌混合して、感圧接着剤層用塗布液(感圧接着剤組成物)を調製した。その後、表面に剥離処理を施したPETフィルム(剥離層、厚み50μm)の表面に、感圧接着剤層用塗布液を塗布し、その後、120℃で3分間、乾燥し、さらに、60℃で72時間エージング(熟成)した。これにより、剥離層5に支持された感圧接着剤層2を作製した。感圧接着剤層2の厚みは、25μmであった。
【0129】
2.基材層の作製
ポリエーテルウレタン溶液(商品名「T−8180N」、ポリエーテルウレタンの20質量%溶液(溶媒=メチルエチルケトン:ジメチルホルムアミド=1:1)、ディーアイシーコベストロポリマー社製)と、トリカプリル酸グリセリルとを、ポリエーテルウレタンとトリカプリル酸グリセリルとの質量比が100/10となるように、常温で配合し、撹拌混合して、基材層用塗布液を調製した。その後、表面に剥離処理を施したPETフィルム(剥離層)の表面に、基材層用塗布液を塗布し、その後、120℃で5分間、乾燥した。これにより、剥離層に支持された基材層3を作製した。基材層3の厚みは、8μmであった。
【0130】
なお、基材層3の破断伸度は、剥離層を剥離した基材層3において、JIS K 7127(1999年)に従い、引張速度5mm/分、試験片タイプ2で、測定した結果、600%であった。
【0131】
また、基材層3の透湿度は、剥離層を剥離した基材層3において、JIS Z 0208(1976年)に従い、条件Aで、測定した結果、2540(g/m/day)であった。
【0132】
3.保護層の作製
ポリビニルアルコールの10質量%水溶液(商品名「VF−20」、ケン化度97.7〜98.5モル%、重合度2000、4質量%水溶液(20℃)における粘度35〜45mPa・s、日本酢ビポバール社製)28.8質量部(固形分量で2.88質量部)と、架橋剤としてブロックイソシアネート水溶液(商品名「SU−268A」、水系架橋剤、明成化学社製)1.07質量部(固形分量で0.47質量部)と、界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤(商品名「シルフェイスSAG002」、日信化学社製)0.02質量部(固形分)と、水10.10質量部とを配合し、攪拌混合して、保護層用塗布液を調製した。
【0133】
次いで、表面に剥離処理を施したPETフィルム(剥離層)の表面に、保護層用塗布液を塗布し、その後、100℃で10分間の条件で乾燥した。その後、130℃で10分間、加熱して、架橋処理を実施した。これにより、剥離層に支持され、ポリビニルアルコールの架橋体からなる保護層4を作製した。保護層4の厚みは、0.5μmであった。
【0134】
4.生体貼付用積層体の作製
感圧接着剤層2と基材層3とを、真空ラミネータにより、60℃で貼り合わせ、続いて、基材層側の剥離層を剥離し、剥離層−感圧接着剤層−基材層の積層体を得た。次いで、積層体の基材層と、保護層とを、真空ラミネータにより、室温で貼り合わせ、続いて、保護層側の剥離層を剥離した。これにより、剥離層5と、感圧接着剤層2と、基材層3と、保護層4とを順に備える生体貼付用積層体1を作製した。
【0135】
実施例2〜5および比較例2〜3
1に記載の配合処方に従い、保護層を作製し、続いて、実施例1と同様にして、生体貼付用積層体1を作製した。
【0136】
比較例1
保護層4を作製しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例の生体貼付用積層体を作製した。
【0137】
評価
(耐薬品性試験)
各実施例の積層体の保護層上に、薬品(溶媒、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ダイセル社製)、SP値(SPsolvent)9.0)を染み込ませたコットンボールを1時間載置した。その後、コットンボールを取り除き、その表面を観察した。なお、比較例1の積層体においては、基材層上にコットンボールを載置した。
【0138】
各積層体の表面の膨潤具合を観察して、下記のように評価した。結果を表1に示す。
5:全く変化がなかった。
4:載置面積のうち90%以上で変化がなかった。
3:載置面積のうち80%以上90%未満で変化がなかった。
2:載置面積のうち20%を超過し20%以下で変化があった。
1:載置面積のほぼ全域で変化があった。
【0139】
(耐摩擦性試験)
各実施例の積層体の保護層および比較例の積層体の基材層に対して、JIS K 5600−5−4(鉛筆硬度Bを使用)に準拠して、摩擦性を評価した。
【0140】
各積層体の表面の摩擦具合について、以下のように評価した。結果を表1に示す。
5:傷が認められかった
4:わずかに傷が認められた。
3:小さい傷が認められた。
2:深い傷が認められた。
1:積層体が破れた。
【0141】
【表1】
【0142】
表中の数値は、各成分における質量部数を示す。表に記載の成分などの詳細を下記に示す。
【0143】
PVA10%水溶液(1):ポリビニルアルコール(商品名「VF−20」、日本酢ビポバール社製、ケン化度97.7〜98.5モル%、重合度2000、4質量%水溶液(20℃)における粘度35〜45mPa・s)の10質量%水溶液
PVA10%水溶液(2):ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA−117」、クラレ社製、ケン化度98.0〜99.0モル%、重合度1700、4質量%水溶液(20℃)における粘度25〜31mPa・s)の10質量%水溶液
PVA10%水溶液(3):ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA−217」、クラレ社製、ケン化度87.0〜89.0モル%、重合度1700、4質量%水溶液(20℃)における粘度20.5〜24.5mPa・s)の10質量%水溶液
エポキシ樹脂:商品名「EXA−4850−150」、DIC社製、ビスフェノールA
の変性体
架橋剤(1):商品名「SU−268A」、明成化学社製、ブロックイソシアネートの水溶液(濃度44質量%)
架橋剤(2):商品名「オルガチックスTC−315」、マツモトケミカル社製、チタンラクテートの水/プロパノール溶液(濃度44質量%)
架橋剤(3):商品名「VB−S」、富士フイルム社製、N−N´−エチレンビス[2−(ビニルスルフォニル)アセトアミド]、白色粉末
エポキシ硬化触媒:商品名「2PZ」、四国化成社製、2 - フェニルイミダゾール
界面活性剤:商品名「シルフェイスSAG002」、日信化学社製、ポリエーテル変性シリコーン
iNA:アクリル酸イソノニル
MEA:アクリル酸メトキシエチル
AA:アクリル酸
【符号の説明】
【0144】
1 生体貼付用積層体
2 感圧接着剤層
3 基材層
4 保護層
5 剥離層
6 印刷層
図1
図2