(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交差点を特定の方向に進んだ先にある第1の流出路へ流出しようとしている車両を、前記交差点への流入路において感知することによって得られる感知情報を取得するステップと、
前記感知情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出することを前記車両に許可する信号灯における第1の許可信号の表示時間を最大限度時間まで延長するステップと、
前記交差点を通過した前記車両から送信された走行情報を取得するステップと、
前記走行情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出しようとしている前記車両の前記流入路における渋滞度合を判定するステップと、
前記渋滞度合に基づいて、前記最大限度時間を可変に制御するステップと
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記最大限度時間を可変に制御するステップでは、
前記流入路は、前記第1の流出路へ流出しようとしている車両によって使用される第1の流入路と、前記交差点を前記特定の方向以外の方向に進んだ先にある第2の流出路へ流出しようとしている前記車両によって使用される第2の流入路とを有し、
前記第1の流入路は、前記第2の流入路から分岐点において分岐し、
前記制御部は、前記走行情報に基づいて、前記第1の流入路における渋滞度合を判定するステップと、
前記第1の流出路へ流出しようとしている前記車両が、前記第2の流出路へ流出しようとしている前記車両の進行を前記第2の流入路において妨げているかどうかを判定し、前記車両の進行を妨げているか否かに応じて、前記第1の流入路における渋滞度合を判定するステップと、
前記第2の流出路へ流出することを前記車両に許可する前記信号灯における第2の許可信号が表示されていたにも拘らず、前記分岐点よりも上流側に位置している状態で前記車両が停止していた場合、前記車両の進行を妨げていると判定するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の技術は、右折感応制御における設備(感知装置等)を交差点に設置せずに、如何にして右矢印の表示時間を適切な長さに設定するかといった技術である。しかしながら、特許文献2に記載の技術では、右折感応制御が用いられていないので、結局、交通状況の変化にリアルタイムに対応することができない。
【0009】
例えば、特許文献2に記載の技術では、右矢印の表示時間が長い時間に設定されているとき、既に右折渋滞が解消されているといった状況が発生する可能性がある。
【0010】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、交差点を特定の方向へ進んだ先にある流出路へ流出することを車両に許可する許可信号の表示時間を、交通状況の変化にリアルタイムに対応して変化させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態に係る信号制御装置は、制御部を具備する。
前記制御部は、交差点を特定の方向に進んだ先にある第1の流出路へ流出しようとしている車両を、前記交差点への流入路において感知することによって得られる感知情報を取得し、前記感知情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出することを前記車両に許可する信号灯における第1の許可信号の表示時間を最大限度時間まで延長し、前記交差点を通過した前記車両から送信された走行情報を取得し、前記走行情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出しようとしている前記車両の前記流入路における渋滞度合を判定し、前記渋滞度合に基づいて、前記最大限度時間を可変に制御する。
【0012】
この信号制御装置では、感応制御における最大限度時間を、流入路における車両の渋滞度合に合わせて適切な長さに変更することができる。また、この信号制御装置では、基本的な制御として、感応制御が実行されるので、第1の許可信号の表示時間を、交通状況の変化にリアルタイムに対応して変化させることができる。
【0013】
上記信号制御装置において、前記制御部は、前記走行情報に基づいて、前記第1の許可信号が表示されない期間を、前記車両が待った回数を判定し、前記回数に応じて、前記渋滞度合を判定してもよい。
【0014】
これにより、渋滞度合を適切に判定することができる。
【0015】
上記信号制御装置において、前記走行情報に基づいて、前記第1の流出路の渋滞度合を判定し、前記流入路の渋滞度合及び前記第1の流出路の渋滞度合に基づいて、前記最大限度時間を可変に制御してもよい。
【0016】
これにより、感応制御における最大限度時間を、流入路の渋滞度合及び第1の流出路の渋滞度合に合わせて適切な長さに変更することができる。
【0017】
上記信号制御装置において、前記流入路は、前記第1の流出路へ流出しようとしている車両によって使用される第1の流入路と、前記交差点を前記特定の方向以外の方向に進んだ先にある第2の流出路へ流出しようとしている前記車両によって使用される第2の流入路とを有していてもよく、前記第1の流入路は、前記第2の流入路から分岐点において分岐していてもよい。この場合、前記制御部は、前記走行情報に基づいて、前記第1の流入路における渋滞度合を判定してもよい。
【0018】
これにより、渋滞度合を適切に判定することができる。
【0019】
上記信号制御装置において、前記制御部は、前記走行情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出しようとしている前記車両が、前記第2の流出路へ流出しようとしている前記車両の進行を前記第2の流入路において妨げているかどうかを判定し、前記車両の進行を妨げているか否かに応じて、前記第1の流入路における渋滞度合を判定してもよい。
【0020】
これにより、渋滞度合を適切に判定することができる。
【0021】
上記信号制御装置において、前記制御部は、前記第2の流出路へ流出することを前記車両に許可する前記信号灯における第2の許可信号が表示されていたにも拘らず、前記分岐点よりも上流側に位置している状態で前記車両が停止していた場合、前記車両の進行を妨げていると判定してもよい。
【0022】
これにより、渋滞度合を適切に判定することができる。
【0023】
上記信号制御装置において、前記制御部は、前記走行情報として、前記第1の流出路へ流出した前記車両から送信された第1の走行情報を取得し、前記第1の走行情報に基づいて、前記渋滞度合を判定してもよい。
【0024】
これにより、渋滞度合を適切に判定することができる。
【0025】
上記信号制御装置において、前記制御部は、前記走行情報として、前記第2の流出路へ流出した前記車両から送信された第2の走行情報を取得し、前記第2の走行情報に基づいて、前記渋滞度合を判定してもよい。
【0026】
これにより、渋滞度合を適切に判定することができる。
【0027】
本発明の一形態に係る信号制御方法は、交差点を特定の方向に進んだ先にある第1の流出路へ流出しようとしている車両を、前記交差点への流入路において感知することによって得られる感知情報を取得し、
前記感知情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出することを前記車両に許可する信号灯における第1の許可信号の表示時間を最大限度時間まで延長し、
前記交差点を通過した前記車両から送信された走行情報を取得し、
前記走行情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出しようとしている前記車両の前記流入路における渋滞度合を判定し、
前記渋滞度合に基づいて、前記最大限度時間を可変に制御することを含む。
【0028】
本発明の一形態に係るプログラムは、
交差点を特定の方向に進んだ先にある第1の流出路へ流出しようとしている車両を、前記交差点への流入路において感知することによって得られる感知情報を取得するステップと、
前記感知情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出することを前記車両に許可する信号灯における第1の許可信号の表示時間を最大限度時間まで延長するステップと、
前記交差点を通過した前記車両から送信された走行情報を取得するステップと、
前記走行情報に基づいて、前記第1の流出路へ流出しようとしている前記車両の前記流入路における渋滞度合を判定するステップと、
前記渋滞度合に基づいて、前記最大限度時間を可変に制御するステップと
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、交差点を特定の方向へ進んだ先にある流出路へ流出することを車両に許可する許可信号の表示時間を、交通状況の変化にリアルタイムに対応して変化させることができる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
<信号制御システム100の構成及び各部の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る信号制御システム100を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る信号制御装置10及び信号灯20を示す図である。
図1及び
図2に示すように、信号制御システム100は、信号制御装置10、信号灯20、感知装置30及び路上装置40を備える。
【0033】
図1に示す例では、南北方向に延びる道路と、東西方向に延びる道路とが交差点において直角に交差する様子が示されている。南北方向に延びる道路は、片側が2車線(一部において3車線)とされており、両側で4車線(一部において5車線)とされている。一方、東西に延びる道路は、片側が1車線とされており、両側で2車線とされている。なお、車両5は左側通行であり、車両5は、信号灯20の点灯状態に応じて、交差点を右折、直進、左折することができる。
【0034】
ここで、本明細書の説明において、車両5が交差点に流入するための道路を流入路1と呼び、車両5が交差点から流出するための道路を流出路2と呼ぶ。
【0035】
図1において、交差点の南側の道路のうち中央線3よりも西側の道路、交差点の北側の道路のうち中央線3よりも東側の道路、交差点の東側の道路のうち中央線3よりも南側の道路、及び交差点の西側の道路のうち中央線3よりも北側の道路が流入路1である。
【0036】
一方、交差点の南側の道路のうち中央線3よりも東側の道路、交差点の北側の道路のうち中央線3よりも西側の道路、交差点の東側の道路のうち中央線3よりも北側の道路、及び交差点の西側の道路のうち中央線3よりも南側の道路が流出路2である。
【0037】
南北方向に延びる道路における流入路1は、一部において3車線に分かれている。3車線のうち、最も端側に位置する車線は、直進車5b及び左折車5cによって使用され、3車線の中央に位置する車線は、直進車5bによって使用される。また、3車線のうち、最も中央線3よりに位置する車線は、右折車5aによって使用される。
【0038】
なお、本明細書中の説明では、流入路1における3車線のうち、最も端側に位置する車線及び中央に位置する車線の2車線を総称して、直進流入路1a(第2の流入路)と呼ぶ。一方、流入路1における3車線のうち、最も中央線3よりに位置する車線を右折流入路1b(第1の流入路)と呼ぶ。この右折流入路1bは、直進流入路1aから分岐点6において分岐しており、その長さ(分岐点6から停止線4までの長さ)は、例えば、30mとされている。
【0039】
交差点には、4本の流入路1に対応して4つの信号灯20が設けられている。信号灯20は、左から順番に、青色の信号灯21と、黄色の信号灯22と、赤色の信号灯23とを含む。また、信号灯20は、これらの3色の信号灯20の下側に配置された右矢印の信号灯24を含む。
【0040】
なお、
図1に示す例では、右矢印の信号灯24は、南北に延びる道路の流入路1に対応して設けられた2つの信号灯20に対して設けられているが、東西に延びる道路の流入路1に対応して設けられた2つの信号灯20に対しては設けられていない。
【0041】
本明細書の説明では、青色の信号灯21が点灯し、他の信号灯22、23、24が点灯していない状態を青信号と呼び、黄色の信号灯22が点灯し、他の信号灯21、23、24が点灯していない状態を黄色信号と呼ぶ。また、赤色の信号灯23が点灯し、他の信号灯21、22、24が点灯してない状態を赤信号と呼び、赤色の信号灯23と右矢印の信号灯24が点灯し、他の信号灯21、22が点灯していない状態を右矢印信号と呼ぶ。
【0042】
本実施形態では、1サイクル期間において、青信号、黄色信号、右矢印信号、赤信号の順番で信号灯20の点灯状態が制御される。青信号は、直進、右折及び左折を車両5に許可する許可信号(第2の許可信号)であり、黄色信号は、注意信号である。また、右矢印信号は、右折を車両5に許可する許可信号(第1の許可信号)であり、赤信号は、交差点への進入を禁止する禁止信号である。
【0043】
車両5には、車載装置(図示せず)が搭載されている。この車載装置は、GPS衛星(GPS:Global Positioning System)との間で通信を行い、所定の周期ごとに、時刻情報や、車両5の位置情報等を取得し、プローブ情報(走行情報)として記憶する。
【0044】
4つの流出路2には、それぞれ、車両5に搭載された車載装置との間で、無線により情報を送受信する路上装置40が設けられている。路上装置40は、例えば、光ビーコン、電波ビーコン等の局所通信装置であり、この路上装置40は、典型的には、流出路2において交差点の近傍に配置される。
【0045】
路上装置40は、路上装置本体41と、通信器42とを有している。通信器42は、通信エリアに入った車両5の車載装置からプローブ情報を受信し、また、車載装置に対して交通情報(渋滞情報や通行止め情報等)を送信する。路上装置本体41は、路上装置40の各部を統括的に制御したり、送受信に必要な情報を記憶したりする。また、路上装置本体41は、有線又は無線により、信号制御装置10から交通情報を受信し、また、信号制御装置10に対してプローブ情報を送信する。
【0046】
なお、路上装置40の通信器42の数は、流出路2における車線の数に合わせて設定されている。例えば、
図1に示す例では、南北に延びる道路の流出路2に設けられた路上装置40には、通信器42が2つ設けられており(2車線であるため)、一方、東西に延びる道路の流出路2に設けられた路上装置40には、通信器42が1つ設けられている(1車線であるため)。
【0047】
南北に延びる道路の流入路1において、交差点の近傍には、感知装置30が設けられている。この感知装置30は、感知装置本体31と、感知器32とを有している。感知器32は、右折流入路1bにおいて、感知エリアに車両5が存在するかどうかを感知し、感知情報を取得する。感知器32の感知エリアは、右折流入路1bにおいて、停止線4の直前に停止している車両5を感知することができる位置に設定されている。
【0048】
感知装置本体31は、感知装置30を統括的に制御したり、感知器32によって得られた感知情報を記憶したりする。また感知装置本体31は、有線又は無線により信号制御装置10に対して感知情報を送信する。
【0049】
信号制御装置10は、交差点毎に設置されており、交差点に設けられた4つの信号灯20を統括的に制御する。なお、本実施形態では、信号制御装置10が交差点毎に設置されている場合が想定されているが、信号制御装置10は、信号灯20毎に設置され、信号灯20毎に制御を行ってもよい。あるいは、信号制御装置10は、特定の地域毎に設置され、特定の地域に存在する信号灯20毎に制御を行ってもよい。信号制御装置10が特定の地域毎に設置される場合、信号制御装置10は、特定の地域における交通を管理及び制御する交通管制センター内に設置されていてもよい。
【0050】
図2に示すように、信号制御装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを有している。通信部13は、有線又は無線により、路上装置及び感知装置との間で情報を送受信する。具体的には、通信部13は、路上装置40に対して交通情報を送信し、また、路上装置40からプローブ情報を受信する。また、通信部13は、感知装置30から感知情報を受信する。
【0051】
さらに、通信部13は、有線又は無線により、交通管制センターにおける制御装置とも通信可能とされており、交通管制センターから交通情報等を受信し、また、信号灯20における表示時間等の情報を交通管制センターへ送信する。
【0052】
記憶部12は、制御部11の作業領域として用いられる揮発性のメモリと、制御部11の処理に必要な各種のプログラムや、各種の情報が記憶される不揮発性のメモリとを含む。上記各種のプログラムは、光ディスク、半導体メモリ等の可搬性の記録媒体から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置からダウンロードされてもよい。
【0053】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等により構成される。制御部11は、記憶部12に記憶された各種のプログラムに基づき種々の演算を実行し、信号制御装置10の各部を統括的に制御する。なお、本実施形態では、制御部11は、右折感応制御を実行したり、流入路1における車両5の渋滞度合に応じて、右折感応制御における最大限度時間を可変に制御したりする。この制御部11の具体的な処理については、以降において詳述する。
【0054】
<動作説明>
次に、信号制御装置10における制御部11の処理について説明する。
図3は、信号制御装置10の制御部11の処理を示すフローチャートである。
【0055】
ここで、交差点の南側の流入路1に対応して設けられた信号灯20の制御、及び交差点の北側の流入路1に対応して設けられた信号灯20の制御は、同じである。従って、制御部11の処理の説明においては、交差点の南側の流入路1に対応して設けられた信号灯20が制御される場合について代表的に説明する。
【0056】
また、制御部11の処理の説明では、単に、流入路1、直進流入路1a、右折流入路1bと呼んだ場合には、交差点の南側の流入路1、直進流入路1a、右折流入路1bを指すものとする。
【0057】
また、制御部11の処理の説明において、交差点の南側の流入路1を基準として、交差点を右折した(特定の方向に進んだ)先にある流出路2(つまり、交差点の東側の流出路2:第1の流出路)を右折流出路2aと呼ぶ。また、交差点の南側の流入路1を基準として、交差点を直進した(特定の方向以外の方向に進んだ)先にある流出路2(つまり、交差点の北側の流出路2:第2の流出路)を直進流出路2bと呼ぶ。また、交差点の南側の流入路1を基準として、交差点を左折した(特定の方向以外の方向に進んだ)先にある流出路2(つまり、交差点の西側の流出路2:第2の流出路)を左折流出路2cと呼ぶ。
【0058】
また、制御部11の処理の説明において、交差点の南側の流入路1から交差点を右折して東側の流出路2(右折流出路2a)へ流出しようとしている(あるいは、流出した)車両5を右折車5aと呼ぶ。また、交差点の南側の流入路1から交差点を直進して北側の流出路2(直進流出路2b)へ流出しようとしている(あるいは、流出した)車両5を直進車5bと呼ぶ。また、交差点の南側の流入路1から交差点を左折して西側の流出路2(左折流出路2c)へ流出しようとしている(あるいは、流出した)車両5を左折車5cと呼ぶ。
【0059】
また、制御部11の処理の説明において、単に、感知装置30と呼んだ場合には、交差点の南側の流入路1に設置された感知装置30を指すものとする。
【0060】
図3を参照して、まず、制御部11は、右折流出路2aに設けられた路上装置40によって取得されたプローブ情報を取得する(ステップ101)。次に、取得されたプローブ情報のうち、交差点の南側の流入路1から交差点を右折して右折流出路2aへ流出した車両5(右折車5a)のプローブ情報を抽出する(ステップ102)。
【0061】
ここで、右折流出路2aに設けられた路上装置40によって取得されるプローブ情報には、走行の軌跡に応じて3種類の異なるプローブ情報が混在している。1種類目は、交差点の南側の流入路1から交差点を右折して右折流出路2aへ流出した車両5(右折車5a)のプローブ情報であり、2種類目は、交差点の北側の流入路1から交差点を左折して右折流出路2aへ流出した車両5のプローブ情報である。3種類目は、交差点の西側の流入路1から交差点を直進して右折流出路2aへ流出した車両5のプローブ情報である。
【0062】
従って、ステップ102では、これらの3種類のプローブ情報のうち、交差点の南側の流入路1から交差点を右折して右折流出路2aへ流出した車両5(右折車5a)のプローブ情報を抽出する。なお、プローブ情報は、時刻情報や、車両5の位置情報を含むので、制御部11は、車両5が走行した軌跡を判定することができ、この軌跡に基づいて、特定のプローブ情報を抽出することができる。
【0063】
右折車5aのプローブ情報を抽出すると、次に、制御部11は、右折車5aのプローブ情報に基づいて、右折流出路2aにおける渋滞度合を判定する(ステップ103)。
【0064】
ここで、右折流出路2aが渋滞している場合、右折車5aが交差点へ進入してから交差点を通過し終わるまでに掛かる時間が、通常、これに掛かる時間よりも長くなる。従って、制御部11は、右折車5aのプローブ情報に基づいて、車両5が交差点へ進入してから交差点を通過し終わるまでに掛かかった時間を判断することで、右折流出路2aにおける渋滞度合を判定することができる。
【0065】
なお、右折流出路2aにおける渋滞度合は、交差点の北側の流入路1から交差点を左折して右折流出路2aへ流出した車両5のプローブ情報に基づいて判定されてもよい。同様に、交差点の西側の流入路1から交差点を直進して右折流出路2aへ流出した車両5のプローブ情報に基づいて判定されてもよい。
【0066】
つまり、右折流出路2aが渋滞している場合、交差点を左折、直進して右折流出路2aへ流出する車両5においても、交差点の通過時間が通常の通過時間よりも長くなる。従って、制御部11は、交差点を左折、直進して右折流出路2aへ流出した車両5のプローブ情報に基づいて、車両5が交差点へ進入してから交差点を通過し終わるまでに掛かかった時間を判断することで、右折流出路2aにおける渋滞度合を判定することができる。
【0067】
右折流出路2aの渋滞度合の判定には、典型的には、右折車5aのプローブ情報が用いられるが、上記した3種類のプローブ情報のうち、いずれか1つのプローブ情報を用いれば右折流出路2aの渋滞度合を判定することができる。なお、これらの3種類のプローブ情報のうち2種類以上のプローブ情報が右折流出路2aの渋滞度合の判定に用いられてもよく、判定に用いられるプローブ情報の種類が増えるほど、右折流出路2aの渋滞度合の判定の精度を向上させることができる。
【0068】
右折流出路2aの渋滞度合を判定すると、次に、制御部11は、右折流出路2aの渋滞度合が所定の閾値以上であるかどうかを判定する(ステップ104)。そして、右折流出路2aの渋滞度合が所定の閾値以上である場合、制御部11は、右折感応制御における最大限度時間を第1の時間に設定する(ステップ109)。なお、第1の時間は、後述の第2の時間よりも短い時間であり、例えば、15秒程度とされる。
【0069】
つまり、右折流出路2aが渋滞している場合、右折感応制御における最大限度時間を長くしたとしても、結局、右折車5aは右折流出路2aへは進めないので、制御部11は、最大限度時間を、第2の時間よりも短い第1の時間に設定する。
【0070】
ステップ104において、右折流出路2aが渋滞していない場合(ステップ104のNO)、制御部11は、次のステップ105へ進む。ステップ105では、制御部11は、右折車5aのプローブ情報に基づいて、右折車5aが交差点付近に到着して最初に停止した時刻と、右折車5aが交差点を通過して右折流出路2aへ流出した時刻(≒右折車5aが右折流出路2aにおける路上装置40の前を通過した時刻)との差を算出する。
【0071】
次に、制御部11は、上記差が信号灯20における1サイクル期間の2倍以上(他の値もとり得る)であるかを判定する(ステップ106)。1サイクル期間は、信号灯20が青信号となってから、青信号が、黄色信号、右矢印信号、赤信号と変化した後、再び、青信号となるまでの期間である。
【0072】
ここで、制御部11は、ステップ105及びステップ106において、信号灯20において右折矢印が表示されない期間を、右折車5aが待った回数(信号待ち回数)を判定することによって、流入路1(特に、右折流入路1b)の渋滞度合を判定している。なお、上記差が、1サイクル期間の2倍以上である場合とは、右折車5aによる信号待ち回数が2回以上である場合である。
【0073】
上記差が1サイクル期間の2倍以上である場合(ステップ106のYES)、つまり、信号待ち回数が2回以上である場合、制御部11は、右折感応制御における最大限度時間を第2の時間に設定する(ステップ110)。この第2の時間は、上述の第1の時間よりも長い時間であり、例えば、30秒程度とされる。
【0074】
なお、右折車5aにおける信号待ち回数は、他の方法によっても判定することも可能である。
【0075】
この場合、例えば、制御部11は、右折車5aのプローブ情報に基づいて、右折車5aが流入路1において交差点付近に到着して最初に停止してから交差点を通過して右折流出路2aへ流出するまでの間に、右折車5aが流入路1において停止した回数を判定する。この停止回数は、信号待ち回数を示している。
【0076】
そして、この停止回数(信号待ち回数)が所定の回数(例えば、2回)以上である場合、制御部11は、右折感応制御における最大限度時間を第2の時間に設定する。一方、停止回数(信号待ち回数)が所定の回数未満である場合、制御部11は、右折感応制御における最大限度時間を第1の時間に設定する。
【0077】
ここで、流入路1が渋滞している場合、車両5は、少し進んで少し停止、少し進んで少し停止といった動作を繰り返す場合がある。このような動作における停止と、信号待ちにおける停止とを区別するため、制御部11は、車両5が所定時間以上停止していた場合に限り、信号待ちにおける停止回数としてカウントする処理を実行してもよい。
【0078】
ステップ106において、上記差が1サイクル期間の2倍未満である場合(ステップ106のNO)、制御部11は、次のステップ107へ進む。ステップ107では、制御部11は、右折車5aのプローブ情報に基づいて、右折車5aが流入路1において交差点付近に到着して最初に停止した位置を判定し、この位置が、右折流入路1bの分岐点6よりも上流側であったかどうかを判定する。なお、分岐点6の位置は、流入路1における停止線4から例えば30m上流側の位置である。
【0079】
右折車5aの最初の停止位置が、分岐点6よりも下流側であった場合(ステップ107のNO)、制御部11は、右折感応制御における最大限度時間を第1の時間に設定する(ステップ109)。
【0080】
一方、右折車5aの最初の停止位置が、分岐点6よりも上流側であった場合(ステップ107のYES)、制御部11は、次のステップ108へ進む。ステップ108では、制御部11は、右折車5aのプローブ情報に基づいて、信号灯20で青信号が表示されていたにも拘らず、分岐点6よりも上流側に位置している状態で右折車5aが停止していたかどうかを判定する。
【0081】
ここで、信号灯20で青信号が表示されていたにも拘らず、分岐点6よりも上流側に位置している状態で右折車5aが停止していた場合とは、右折車5aが、直進車5bの進行を直進流入路1aにおいて妨げていた場合である。つまり、制御部11は、ステップ107及びステップ108において、右折車5aが、直進車5bの進行を直進流入路1aにおいて妨げていたかどうかを判定することによって、流入路1(特に、右折流入路1b)の渋滞度合を判定している。
【0082】
図4は、信号灯20で青信号が表示されているにも拘らず、右折車5aが、直進車5bの進行を直進流入路1aにおいて妨げてしまっているときの様子を示す図である。
図4に示す例では、直進流入路1a(3車線の中央)において、分岐点6よりも上流側の位置に、3台の車両5が停止している(一点鎖線の囲み参照)。3台の車両5のうち、前の2台の車両5が右折車5aであり、3台目の車両5が直進車5bであるとする。
【0083】
図4において、直進車5bは、現在、青信号が表示されているので、直進して進みたい。しかしながら、前の2台の車両5が右折車5aであり、かつ、この2台の右折車5aは、右折流入路1bが渋滞してしまっているので、右折流入路1bに入ることができない。結果として、この2台の右折車5aは、分岐点6よりも上流側において、直進流入路1aに停止せざるを得ず、3台目の直進車5bの進行を妨げてしまっている。ステップ107及びステップ108では、制御部11は、このような状況を判定している。
【0084】
なお、ここでの説明では、右折車5aのプローブ情報(第1の走行情報)に基づいて、右折車5aによる直進車5bの進行の妨げが判定される場合について説明したが、直進車5bのプローブ情報(第2の走行情報)に基づいて、右折車5aによる直進車5bの進行の妨げが判定されてもよい。つまり、妨げる側の右折車5aのプローブ情報ではなく、妨げられる側の直進車5bのプローブ情報に基づいて、直進車5bの進行の妨げが判定されてよい。
【0085】
この場合、制御部11は、直進車5bのプローブ情報に基づいて、直進車5bが流入路1において交差点付近に到着して最初に停止した位置を判定し、この位置が、右折流入路1bの分岐点6よりも上流側であったかどうかを判定する(ステップ107)。直進車5bのプローブ情報は、直進流出路2bに設けられた路上装置40から取得することができる。
【0086】
そして、直進車5bの最初の停止位置が、分岐点6よりも上流側であった場合(ステップ107のYES)、制御部11は、ステップ108へ進む。ステップ108では、制御部11は、直進車5bのプローブ情報に基づいて、信号灯20で青信号が表示されていたにも拘らず、分岐点6よりも上流側に位置している状態で直進車5bが停止していたかどうかを判定する。
【0087】
なお、
図4に示す例では、直進流入路1aが2車線である場合が示されているが、直進流入路1aが1車線である場合には、左折車5cの進行が右折車5aによって妨げられる場合がある。従って、左折車5cのプローブ情報(第2の走行情報)に基づいて、右折車5aによる左折車5c(あるいは、直進車5b)の進行の妨げが判定されてもよい。なお、左折車5cのプローブ情報は、左折流出路2cに設置された路上装置40により取得することができる。
【0088】
右折車5aによる直進車5b、左折車5cの進行の妨げの判定には、典型的には、右折車5aのプローブ情報が用いられるが、右折車5a、直進車5b、左折車5cのプローブ情報のうち、いずれか1つのプローブ情報を用いれば進行の妨げを判定することができる。なお、右折車5a、直進車5b、左折車5cのプローブ情報のうち、2種類以上のプローブ情報が進行の妨げの判定に用いられてもよく、判定に用いられるプローブ情報の種類が増えるほど、進行の妨げの判定の精度を向上させることができる。
【0089】
ステップ108において、信号灯20で青信号が表示されていたにも拘らず、分岐点6よりも上流側に位置している状態で右折車5aが停止していた場合(ステップ108のYES)、制御部11は、最大限度時間を第2の時間に設定する(ステップ110)。
【0090】
右折感応制御における最大限度時間を、第1の時間(ステップ109)、あるいは、第2の時間(ステップ110)に設定すると、次に、制御部11は、右折感応制御を実行する(ステップ111)。
【0091】
右折感応制御では、まず、制御部11は、右矢印信号が表示されてから最小限度時間(例えば、5秒)が経過したかどうかを判定する。最小限度時間が経過したとき、制御部11は、感知装置30からの感知情報に基づいて、右折待ちの右折車5aが存在するかどうかを判定する。そして、右折車5aが存在していないと判定された場合、制御部11は、右矢印信号の表示をその時点で打ち切る。
【0092】
一方、右折待ちの右折車5aが存在すると判定された場合、制御部11は、単位時間(例えば、3秒)分、右矢印信号の表示時間を延長する。そして、延長された時間が経過すると、制御部11は、再び、右折待ちの右折車5aが存在するかどうかを判定し、右折待ちの右折車5aが存在しない場合には、右矢印信号の表示をその時点で打ち切る。一方、右折待ちの右折車5aが存在する場合には、制御部11は、再び、単位時間分、右矢印信号の表示時間を延長する。以後、同様の処理が繰り返される。
【0093】
表示時間の延長が繰り返されることによって、右矢印信号が表示されてから最大限度時間が経過した場合、制御部11は、右折待ちの右折車5aが存在したとしても、右矢印信号の表示をその時点で打ち切る。なお、本実施形態では、最大限度時間は、流入路1(特に、右折流入路1b)の渋滞度合及び右折流出路2aの渋滞度合に応じて、適切な時間(第1の時間、又は、第2の時間)に設定されている。
【0094】
<作用等>
本実施形態に係る信号制御装置10では、右折感応制御における最大限度時間を、流入路1(特に、右折流入路1b)における車両5の渋滞度合に合わせて適切な長さに変更することができる。従って、例えば、祭り等のイベントが開催される等の理由により、直進流出路2bが通行止めとなっているような場合にも適切に対応することができる。
【0095】
また、本実施形態では、基本的な制御として、右折感応制御が実行されるので、右矢印信号の表示時間を、交通状況の変化にリアルタイムに対応して変化させることができる。以下、これについて説明する。
【0096】
本実施形態で可変に制御している対象は、右矢印信号が表示されてから最大でもこの時間が経過すれば右矢印信号の表示が打ち切られるといった時間である最大限度時間である。
この最大限度時間は、あくまで最大限度として予定されている予定時間であり、実際に右矢印信号が表示される時間は、右折待ちの右折車5aが存在するかどうかの感知情報に依存する。
【0097】
例えば、プローブ情報に基づく予測から、流入路1が渋滞していると判定され、最大限度時間が第2の時間に設定されていたとする。ここで、プローブ情報に基づく流入路1の渋滞の予測は1テンポ遅れる可能性があるため、最大限度時間が第2の時間に設定されている時点で、流入路1の渋滞が既に解消されている場合がある。このような場合、本実施形態では、信号待ちの右折車5aが存在しなければ、最大限度時間である第2の時間まで右矢印信号は表示されず、右折車5aが存在しないと判定されたその時点で右矢印信号の表示が打ち切られる。
【0098】
このように、本実施形態では、右矢印信号の表示時間を、交通状況の変化にリアルタイムに対応して変化させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、右折車5aにおける信号待ち回数に応じて、流入路1における右折車5aの渋滞度合を判定しているため、流入路1における右折車5aの渋滞度合を適切に判定することができる。また、本実施形態では、右折車5aが、直進車5b(又は左折車5c)の進行を直進流入路1aにおいて妨げていたかどうかを判定することによって、流入路1(特に、右折流入路1b)の渋滞度合を判定している。従って、流入路1における右折車5aの渋滞度合を適切に判定することができる。
【0100】
また、本実施形態では、流入路1の渋滞度合だけでなく、右折流出路2aの渋滞度合に基づいて、最大限度時間が可変に制御される。これにより、最大限度時間を、右折流出路2aにおける車両5の渋滞度合に合わせて適切な長さに変更することができる。
【0101】
<各種変形例>
以上の説明では、右折感応制御における最大限度時間が、第1の時間及び第2の時間の2段階である場合について説明した。一方、最大限度時間は、3段階以上であってもよい。この場合、例えば、制御部11は、流入路1の渋滞が所定時間以上続いた場合に、最大限度時間を1段階ずつ徐々に延長する。
【0102】
以上の説明では、車両5が左側通行である場合について説明した。一方、本発明は、車両5が右側通行である場合にも適用可能である。この場合、以上で説明した右折、左折の関係が逆になる。