(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0013】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0015】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「上」及び「下」とは、基板における発光素子が形成される側の面(以下、単に「表面」という。)を基準とした相対的な位置関係を指す。例えば、本明細書では、基板の表面から遠ざかる方向を「上」と言い、基板の表面に近づく方向を「下」と言う。
【0016】
(第1実施形態)
<有機EL表示装置の構成>
図1は、第1実施形態における有機EL表示装置100の概略の構成を示す斜視図である。本実施形態における有機EL(エレクトロルミネセンス)表示装置100は、基板101の上に、複数の画素102aを含む表示部102、表示部102に対して外部からの信号を供給する端子部103、及び端子部103に対して外部からの信号を伝達するフレキシブルプリント回路基板104を有する。
【0017】
表示部102は、画像を表示する部位である。表示部102に配置された各画素102aは、各々が発光素子としての有機EL素子60(
図3)を有する。つまり、複数の画素102aの集合体が表示部102として機能する。各画素102aには、駆動素子として、後述する薄膜トランジスタ50(
図3)が設けられている。本実施形態では、各画素102aに設けられた薄膜トランジスタ50を制御することにより、各画素102aに設けられた有機EL素子60の発光制御を行う構成となっている。
【0018】
端子部103は、表示部102に接続された配線が集まって形成された配線群で構成され、外部からの信号を供給する端子として機能する。外部からの信号は、端子部103に接続されたフレキシブルプリント回路基板104から伝達される。端子部103とフレキシブルプリント回路基板104との接続は、公知の異方性導電膜を用いた方法を用いることができる。
【0019】
フレキシブルプリント回路基板104は、外部回路(図示せず)との間の信号の送受信を行うために使用される回路基板である。フレキシブルプリント回路基板104は、可撓性を有する樹脂基板上に複数の配線を配置した構成を有し、端子部103上に異方性導電膜等を用いて接着される。
【0020】
なお、本実施形態では、図示しない外部回路から表示部102に対して各種信号を入力する構成となっている。しかしながら、図示は省略するが、走査線(ゲート線)に走査信号を供給する走査線駆動回路及び/又は映像信号線(データ線)に映像信号を供給する映像信号線駆動回路を、基板101上に薄膜トランジスタ50で形成してもよい。また、図示は省略するが、これらの走査信号及び/又は映像信号を出力する駆動回路を基板101上に配置したり、フレキシブルプリント回路基板104上に配置したりすることも可能である。
【0021】
次に、本実施形態における有機EL表示装置100の画素102aの構成について説明する。
図1に示した画素102aは、実際には、RGBの三原色に対応した3つのサブ画素で構成される。具体的には、本実施形態では、赤色に対応するサブ画素102Ra、緑色に対応するサブ画素102Ga、及び青色に対応するサブ画素102Baを用いて1つの画素102aが構成されている。なお、本実施形態において、サブ画素102Ra、102Ga及び102Baは互いに同じ構造である。したがって、以下の説明では、サブ画素102Raに着目して説明を行い、サブ画素102Ga及び102Baについての説明は省略する。
【0022】
図2は、第1実施形態における有機EL表示装置100の画素102aの構成を示す平面図である。
図3は、第1実施形態における有機EL表示装置100のサブ画素102Raの構成を示す断面図である。
図3は、
図2に示すサブ画素102RaをA−A’で切断した断面図に対応する。
【0023】
図3において、基板101上には、薄膜トランジスタ50が設けられている。薄膜トランジスタ50は、いわゆるトップゲート型の薄膜トランジスタである。しかし、これに限らず、どのようなタイプの薄膜トランジスタを設けてもよい。
図3に示す薄膜トランジスタ50は、有機EL素子60に対して電流を供給する駆動用トランジスタとして機能する。また、本実施形態では、薄膜トランジスタ50として、Nチャネル型トランジスタを用いる。そのため、有機EL素子60は、薄膜トランジスタ50のソース電極50eに接続される。
【0024】
なお、薄膜トランジスタ50の構造は、公知の構造であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、
図3において図示を省略するが、薄膜トランジスタ50を形成する過程において保持容量を形成してもよい。この場合、保持容量は、薄膜トランジスタ50を構成する、いずれか2つの導電膜とその間に設けられた絶縁膜とで構成することができる。このような保持容量は、公知の如何なる構成を用いても良い。
【0025】
薄膜トランジスタ50は、有機絶縁膜120で覆われている。有機絶縁膜120は、薄膜トランジスタ50の形状に起因する起伏を平坦化する平坦化膜として機能する。本実施形態では、有機絶縁膜120として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂材料を含む絶縁膜を用いる。
【0026】
有機絶縁膜120は、開口部122を有する。開口部122は、有機絶縁膜120の一部を除去することにより形成される。このとき、開口部122は、薄膜トランジスタ50のソース電極50eの一部が露出するように設けられる。後述するように、開口部122を介して薄膜トランジスタ50と画素電極132とが電気的に接続される。
【0027】
有機絶縁膜120に設けられた開口部122は、酸化物導電膜124で覆われる。本実施形態では、酸化物導電膜124として、ITO(Indium Tin Oixde)等の金属酸化物材料で構成される薄膜をパターン化したものを用いる。しかし、これに限らず、他の酸化物導電膜を用いてもよい。このとき、酸化物導電膜124は、開口部122によって露出した上述のソース電極50eに接続されている。
【0028】
さらに、有機絶縁膜120の上面には、酸化物導電膜124と同時に形成された別の酸化物導電膜を用いて保持容量55の下部電極126が形成されている。下部電極126は、有機EL素子60の下方に設けられている。後述するように、本実施形態の有機EL素子60は、上方に向かって光を出射する構成となっているため、有機EL素子60の下方の空間を利用して保持容量55を形成することが可能である。
【0029】
なお、
図2及び
図3では図示を省略するが、酸化物導電膜124及び保持容量55の下部電極126の形成に用いた酸化物導電膜を、別の用途(例えば配線)として用いることも可能である。その際、配線として使用する酸化物導電膜の上に金属膜を重ねて配置することにより、配線抵抗を下げることもできる。金属酸化物で構成される酸化物導電膜は、金属膜に比べて抵抗が高いため、配線として用いる場合は、金属膜を重ねて全体の抵抗を下げることが好ましい。このとき、前述の酸化物導電膜124は、金属膜を形成する際に、薄膜トランジスタ50のソース電極50eをエッチングガスから保護する保護膜としても機能する。
【0030】
酸化物導電膜124及び下部電極126の上には、無機絶縁膜128が設けられている。本実施形態では、無機絶縁膜128として、窒化シリコン膜を用いるであるが、これに限らず、酸化シリコン膜などの他の無機絶縁膜を用いることもできる。無機絶縁膜128には、酸化物導電膜124の一部を露出させる開口部130が設けられている。
【0031】
無機絶縁膜128の上には、画素電極132が設けられる。画素電極132は、無機絶縁膜128に設けられた開口部130を介して酸化物導電膜124に接続される。すなわち、画素電極132は、酸化物導電膜124を介して薄膜トランジスタ50に接続される。また、画素電極132は、保持容量55の上部電極としても機能すると共に、有機EL素子60の陽極(アノード電極)としても機能する。
【0032】
画素電極132は、開口部130の一部を覆う構成となっている。そのため、
図2において斜線で示される領域(以下、「水抜き領域」という。)65は、有機絶縁膜120とバンクとして機能する有機絶縁膜134とが酸化物導電膜124を挟んで対向する構造となっている。このような構造とする理由については後述する。
【0033】
なお、本実施形態では、画素電極132として、ITO等の酸化物導電膜で銀を含む薄膜を挟んだ積層構造の導電膜を用いるが、これに限られるものではない。ただし、有機EL素子60から発した光が上方に出射するように構成するためには、画素電極132は、反射性を有する導電膜を含むことが望ましい。
【0034】
また、本実施形態では、保持容量55の誘電体が他の絶縁膜に比べて誘電率の高い窒化シリコン膜であるため、大きな容量を確保しやすいという利点を有する。さらに、有機EL素子60の下方の空間を有効活用して配置することができるため、保持容量55の占有面積を大きく確保しやすいという利点を有する。
【0035】
画素電極132は、その一部が有機絶縁膜134に覆われている。具体的には、有機絶縁膜134は、画素電極132の端部を覆うと共に、画素電極132の上面の一部を露出させる開口部136を有している。このような有機絶縁膜134は、一般的には、バンク又はリブと呼ばれ、発光領域を画定する役割を持つ。有機絶縁膜134としては、感光性アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の樹脂材料を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0036】
画素電極132の上面のうち有機絶縁膜134に重畳しない領域(すなわち、開口部136の内側の領域)には、有機EL層138が設けられる。本実施形態では、有機EL層138は、有機EL材料を蒸着法により成膜して形成する。有機EL層138は、少なくとも発光層を含み、その他に、電子注入層、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔注入層、正孔輸送層及び/又は正孔ブロッキング層を含むことができる。
図3に示す有機EL層138では、赤色に発光する有機EL材料を含む発光層が用いられる。
【0037】
なお、本実施形態では、画素ごとに発光色の異なる発光層を設ける構成を例示するが、これに限るものではない。例えば、図示は省略するが、白色発光の有機EL層を複数の画素にわたって設け、白色の光を各画素に設けたカラーフィルタでRGBの各色に分離することも可能である。また、電子注入層、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層といった機能層に関しては、複数の画素にわたって設けてもよい。
【0038】
有機EL層138の上には、アルカリ金属を含む導電膜で構成される共通電極140が設けられる。アルカリ金属としては、例えばマグネシウム(Mg)、リチウム(Li)などを用いることができる。本実施形態では、アルカリ金属を含む導電膜として、マグネシウムと銀の合金であるMgAg膜を用いる。共通電極140は、有機EL素子60の陰極(カソード電極)として機能する。また、共通電極140は、複数の画素にわたって設けられる。
【0039】
有機EL層138からの出射光を上面側、つまり共通電極140側に取り出すトップエミッション型の表示装置とする場合、共通電極140には光に対する透過性が要求される。共通電極140として前述のアルカリ金属を含む導電膜を用いる場合、光に対する透過性を付与するために、共通電極140の膜厚を出射光が透過する程度に薄くする。具体的には、共通電極140の膜厚を10nm以上30nm以下とすることで光に対する透過性を付与することができる。
【0040】
共通電極140の上には、封止膜142が設けられている。封止膜142は、外部からの水分等の侵入を防ぎ、有機EL層138及び共通電極140の劣化を防ぐ役割を果たす。
図3では図示を省略するが、本実施形態では、封止膜142として、窒化シリコン膜で樹脂膜を挟んだ三層構造の積層膜を用いる。しかし、これに限らず、窒化シリコン膜に加えて、又は代えて酸化シリコン膜を用いてもよい。
【0041】
封止膜142の上には、充填材144を介してカバー部材146が設けられる。充填材144は、カバー部材146を接着する接着剤としても機能する。本実施形態では、充填材144としてアクリル樹脂を用いるが、これに限られるものではない。また、本実施形態では、カバー部材146を設けた例を示したが、充填材144及びカバー部材146を省略することも可能である。
【0042】
ところで、
図2及び
図3に示したように、本実施形態では、無機絶縁膜128の一部に開口部130が設けられ、開口部130の内側の一部で酸化物導電膜124と画素電極132が接する構成となっている。具体的には、平面視において、無機絶縁膜128は、有機絶縁膜120に設けられた開口部122と重畳しない位置に、有機絶縁膜134と重畳する開口部130を有する。
【0043】
このように、本実施形態の有機EL表示装置100では、開口部130が、酸化物導電膜124と画素電極132との間の電気的接続を確保するための領域(すなわち、コンタクトホール)として機能するだけでなく、樹脂材料で構成される有機絶縁膜120から発生する水分を逃がすための領域として機能する。
【0044】
樹脂材料を用いて絶縁膜を形成した場合、絶縁膜中に残存した水分がその後の加熱プロセスにおいて内部から放出される場合がある。そこで、本実施形態では、有機絶縁膜120の内部から放出される水分を逃がすために、無機絶縁膜128に開口部130を設けている。
図2では、開口部130がサブ画素102Ra、102Ga及び102Baごとに設けられているが、開口部130は任意に位置に設けることができる。例えば、サブ画素102Ra、102Ga及び102Baのいずれかには設けない構成としてもよいし、複数画素に1つの割合で設ける構成としてもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態では、有機絶縁膜120から放出された水分が無機絶縁膜128によって逃げ場を失うことがないように、無機絶縁膜128に対して開口部130を設け、水抜き領域65を形成している。これに加えて、本実施形態では、開口部130の内側において、有機絶縁膜120が酸化物導電膜124で覆われている点に特長がある。その理由について、
図4A、
図4B及び
図4Cを用いて説明する。
【0046】
図4A、
図4B及び
図4Cは、無機絶縁膜128の開口部130の内側に酸化物導電膜124が配置されない場合を想定した一例を示す図である。なお、矢印で示される領域64は、後に水抜き領域65となる領域を示している。
【0047】
図4Aにおいて、有機絶縁膜120の上には、酸化物導電膜124が形成される。その際、酸化物導電膜124の形成時に、露出した有機絶縁膜120の表面近傍(領域121a)にダメージが与えられる可能性がある。例えば、酸化物導電膜124をドライエッチング法によりエッチングする場合には、有機絶縁膜120がプラズマによるダメージを受ける可能性がある。また、酸化物導電膜124をウェットエッチング法によりエッチングする場合には、有機絶縁膜120の組成がエッチング液の影響を受けて変性し、ダメージを受ける可能性がある。
【0048】
図4Bにおいて、有機絶縁膜120及び酸化物導電膜124の上には、無機絶縁膜128が形成される。本実施形態では、無機絶縁膜128として窒化シリコン膜を用いるため、エッチングには通常ドライエッチング法を用いる。そのため、無機絶縁膜128に対して開口部130を形成する際には、領域121bの範囲において、有機絶縁膜120がプラズマによるダメージを受ける可能性がある。
【0049】
図4Cにおいて、有機絶縁膜120、酸化物導電膜124及び無機絶縁膜128の上に、画素電極132が形成される。このとき、画素電極132を形成する際においても、有機絶縁膜120の表面近傍(領域121c)は、エッチング処理に伴うダメージを受ける可能性がある。
【0050】
以上のように、無機絶縁膜128の開口部130の内側に酸化物導電膜124が配置されない場合、有機絶縁膜120の表面近傍は、画素電極132を形成するまでの間に少なくとも3回のダメージを受ける可能性がある。本発明者らの知見では、上述したダメージを受けた樹脂膜は、吸湿性が増してしまう場合がある。そのため、
図4Aから
図4Cに示した過程を経た場合には、有機EL層138及び共通電極140を形成した後において、ダメージを受けた樹脂膜から徐々に水分が放出されることが懸念される。
【0051】
以上のことを踏まえ、本実施形態の有機EL表示装置100は、無機絶縁膜128に設けられた開口部130の内側において、有機絶縁膜120が酸化物導電膜124で覆われた構造を有している。具体的には、本実施形態の有機EL表示装置100は、
図3に示されるように、有機絶縁膜120と有機絶縁膜134が、無機絶縁膜128に設けられた開口部130において酸化物導電膜124を挟んで対向する構造を有している。
【0052】
このような構造を採用することにより、有機絶縁膜120は、
図4を用いて説明した3回のダメージを受けることがない。すなわち、本実施形態では、酸化物導電膜124が、画素電極132と薄膜トランジスタ50とを接続する電極として機能すると共に、有機絶縁膜120をエッチングプロセスから保護する保護膜として機能する。
【0053】
また、無機絶縁膜128には開口部130が設けられているため、有機絶縁膜120の内部で発生した水分は、水抜き領域65を介して外部に放出することができる。このとき、本実施形態の有機EL表示装置100では、水抜き領域65が酸化物導電膜124で覆われている。しかしながら、窒化シリコン膜で構成される無機絶縁膜128に比べて、酸化物導電膜124は水分の透過性が高いため、水分を透過することが可能である。
【0054】
以上のとおり、本実施形態によれば、有機EL表示装置において、樹脂材料を含む絶縁膜に含まれる水分の影響を低減することができる。
【0055】
<有機EL表示装置の製造方法>
次に、本実施形態における有機EL表示装置100の製造方法について
図5A〜
図5Fを用いて説明する。
図5A〜
図5Fは、本実施形態における有機EL表示装置100の製造工程の一例を示す断面図である。
【0056】
まず、
図5Aに示されるように、基板101上に薄膜トランジスタ50及び映像信号線110を形成する。薄膜トランジスタ50の形成方法は、特に限定されず、公知の方法で形成することができる。また、基板101として、本実施形態ではガラス基板を用いるが、他の絶縁基板を用いてもよい。
【0057】
なお、基板101として、樹脂材料で構成されるフレキシブル基板を用いる場合は、別の支持基板上にポリイミド等の樹脂膜を形成し、その樹脂膜の上に薄膜トランジスタ50及び映像信号線110を形成する。そして、最終的に
図3に示した封止膜142を形成した後に支持基板を剥離すればよい。
【0058】
本実施形態では、基板101上に下地絶縁膜(図示せず)を設け、その上に半導体膜50aを形成する。次に、半導体膜50aを覆うゲート絶縁膜50bを形成する。ゲート絶縁膜50bを形成したら、ゲート絶縁膜50b上の、半導体膜50aと重畳する領域にゲート電極50cを形成する。次に、ゲート電極50cを覆う絶縁膜50dを形成し、その後、絶縁膜50dに形成されたコンタクトホールを介して半導体膜50aに接続されるソース電極50e及びドレイン電極50fを形成する。また、これと同時に、映像信号線110を形成する。こうして、基板101上に、薄膜トランジスタ50及び映像信号線110が形成される。
【0059】
次に、
図5Bに示されるように、薄膜トランジスタ50及び映像信号線110を形成した後、有機絶縁膜120を形成する。本実施形態では、有機絶縁膜120を構成する材料として、ポジ型の感光性を有するアクリル樹脂材料を用いる。より詳細には、有機絶縁膜120を構成するアクリル樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィにより開口部122を形成する領域を選択的に感光させてパターニングを行い、不要なアクリル樹脂材料を除去する。これにより、エッチング処理を行うことなく、開口部122を有する有機絶縁膜120を形成することができる。なお、
図5Bに示されるように、開口部122は、薄膜トランジスタ50のソース電極50eを露出させるように形成される。
【0060】
次に、
図5Cに示されるように、開口部122を形成した後、開口部122を覆ってITO等の金属酸化物材料で構成される酸化物導電膜124及び保持容量55の下部電極126を形成する。酸化物導電膜124及び下部電極126は、有機絶縁膜120を覆って形成されたITO等の酸化物導電膜をフォトリソグラフィによりパターン化して形成する。酸化物導電膜124は、薄膜トランジスタ50のソース電極50eの露出した部分を覆う。下部電極126は、後に有機EL素子60が形成される領域に設けられる。
【0061】
なお、酸化物導電膜124は、有機絶縁膜120の表面のうち、
図2及び
図3に示した水抜き領域65に対応する領域64まで重畳するように設けられる。したがって水抜き領域65に対応する領域64において、有機絶縁膜120に対して酸化物導電膜124の形成に伴うダメージが与えられることがない。
【0062】
また、光に対する透過性を必要としない領域においては、金属酸化物材料を含む導電膜に直接金属膜を積層し、積層構造の導電膜を形成してもよい。このような積層構造の導電膜は、金属膜によって抵抗を下げることができるため、配線又は電極として利用する上で有効である。
【0063】
次に、
図5Dに示されるように、酸化物導電膜124及び下部電極126を形成した後、無機絶縁膜128を形成する。本実施形態では、無機絶縁膜128として、窒化シリコン膜を形成する。また、無機絶縁膜128のうち酸化物導電膜124と重畳する領域(上述の領域64を含む。)には、開口部130が形成される。開口部130の形成の際、酸化物導電膜124が保護膜として機能するため、有機絶縁膜120に対して、開口部130の形成に伴うダメージが与えられることはない。なお、無機絶縁膜128は、保持容量55を構成する誘電体として機能する。
【0064】
次に、
図5Eに示されるように、無機絶縁膜128に対して開口部130を形成した後、画素電極132を形成する。このとき、画素電極132は、開口部130の内側の一部に重畳するように設けられる。したがって、画素電極132は、開口部130の内側で酸化物導電膜124と接続される。換言すれば、画素電極132は、酸化物導電膜124を介して薄膜トランジスタ50に接続される。
【0065】
このとき、開口部130の内側において、酸化物導電膜124が露出した領域は、水抜き領域65として機能する。
【0066】
また、画素電極132を形成することにより、有機EL素子60の下方には、下部電極126、無機絶縁膜128及び画素電極132で構成される保持容量55が形成される。本実施形態において、図示は省略するが、保持容量55は、Nチャネル型トランジスタで構成された薄膜トランジスタ50のゲート電極50cとソース電極50eとの間に配置される。すなわち、保持容量55の一方の電極である下部電極126は、ゲート電極50cに接続される。また、保持容量55の他方の電極である画素電極132は、ソース電極50eに接続される。
【0067】
次に、
図5Fに示されるように、画素電極132を形成した後、バンクとして機能する有機絶縁膜134を形成する。本実施形態では、有機絶縁膜134を構成する材料として、感光性のアクリル樹脂材料を用いる。有機絶縁膜134は、画素電極132の外縁を覆うと共に、画素電極132の上面を露出させるようにパターニングされる。このパターニングにより形成される開口部136は、画素電極132の上面に、発光素子として機能する領域(発光領域)を画定する。
【0068】
なお、本実施形態では、水抜き領域65において、有機絶縁膜134と酸化物導電膜124とが接する。換言すれば、開口部130の内側において、平坦化膜としての有機絶縁膜120とバンクとしての有機絶縁膜134とが酸化物導電膜124を挟んで対向する。このような構造とした場合、有機絶縁膜120から水分が放出されたとしても、水分は酸化物導電膜124及び有機絶縁膜134を経由して外部に放出される。
【0069】
本実施形態では、有機絶縁膜120を形成した後に、酸化物導電膜124、無機絶縁膜128及び画素電極132の形成に伴う加熱処理を経るため、それらの加熱処理の間に有機絶縁膜120から水分が放出される。また、有機絶縁膜134を形成する際の焼成処理においても、有機絶縁膜120から水分が放出される。
【0070】
このように、本実施形態においては、有機絶縁膜134を形成するまでの過程で有機絶縁膜120の内部に残存する水分をほぼ放出することができる。これに加えて、
図4A〜
図4Cを用いて説明したような有機絶縁膜120へのダメージもないため、有機絶縁膜120の吸湿性が増して水分を長時間にわたって放出し続けるようなこともない。したがって、次の有機EL層138及び共通電極140の形成前に、有機絶縁膜120から余分な水分を除去することができる。
【0071】
以上のようにしてバンクとして機能する有機絶縁膜134を形成したら、次に有機EL層138及び共通電極140を形成する。本実施形態では、有機EL層138及び共通電極140の形成に蒸着法を用い、画素ごとに分けて形成する例を示すが、これに限られるものではない。例えば、発光層以外の電子輸送層又は正孔輸送層などの機能層については、複数の画素に対して共通に設けてもよい。本実施形態で使用し得る有機EL層138については特に制限はなく、公知の材料を用いることが可能である。なお、
図5Fでは、赤色に発光するサブ画素102Raを例に挙げているため、有機EL層138に含まれる発光層としては、赤色に発光する発光材料を用いる。
【0072】
本実施形態では、共通電極140としてMgAg膜を用いる。このようなアルカリ金属を含む導電膜は、有機EL層138と同様に水分等に弱い。そのため、有機EL層138の蒸着と共通電極140の蒸着は、大気開放せずに行うことが望ましい。この場合、真空を維持したまま連続的に蒸着処理を行うことが好ましいが、これに限らず、窒素雰囲気等の不活性雰囲気を維持したままに連続的に蒸着処理を行うことも有効である。
【0073】
この時点において、有機絶縁膜134に設けられた開口部136の内側には、画素電極132、有機EL層138及び共通電極140で構成される有機EL素子60が形成される。
【0074】
次に、窒化シリコン膜、アクリル樹脂材料で構成される樹脂膜及び窒化シリコン膜をこの順に積層して封止膜142を形成する。このとき、封止膜142の一部を構成する樹脂膜は、有機絶縁膜134に形成された開口部136に起因する起伏を平坦化することができる。さらに、パーティクル等の異物が共通電極140の上に存在していたとしても、樹脂膜によって起伏を平坦化できるため、樹脂膜の上に形成される窒化シリコン膜が異物の影響で剥がれたりカバレッジ不良を起こしたりする可能性を低減することができる。
【0075】
最後に、
図5Fに示す状態を得たら、樹脂材料で構成される充填材144を用いてガラス基板等のカバー部材146を基板101上に設ける。以上のプロセスを経て、
図3に示される有機EL表示装置100を形成することができる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる画素レイアウトとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0077】
図6は、第2実施形態における有機EL表示装置の画素102bの構成を示す平面図である。本実施形態においても、画素102bは、3つのサブ画素102Rb、102Gb及び102Bbで構成される。本実施形態では、サブ画素102Rb及び102Gbを垂直方向に並べて配置し、それら2つのサブ画素102Rb及び102Gbに隣接してサブ画素102Bbを水平方向に並べて配置している。
【0078】
サブ画素102Rbは、平坦化膜(図示せず)に設けられた開口部122R、酸化物導電膜124R、保持容量の下部電極126R、絶縁膜(図示せず)に設けられた開口部130R、及び画素電極132Rを有する。開口部130Rは、酸化物導電膜124Rに重畳して設けられる。酸化物導電膜124Rは、開口部122Rを介して薄膜トランジスタ(図示せず)に接続される。また、酸化物導電膜124Rは、開口部130Rの内側で画素電極132Rと接続される。このとき、開口部130Rの内側において、画素電極132Rと重畳しない領域は、水抜き領域65Rとして機能する。
【0079】
なお、サブ画素102Gb及び102Bbを構成する要素は、基本的には、上述したサブ画素102Rbと同じ構造である。したがって、上述のサブ画素102Rbについての説明において、符号中の「R」の部分をそれぞれ「G」及び「B」に置き換えればよいため、ここでの説明は省略する。
【0080】
ただし、本実施形態では、サブ画素102Bbには、水抜き領域が設けられていない。このように、水抜き領域は、すべてのサブ画素ごとに設けておく必要はなく、画素のレイアウトに応じて、任意の位置に設けておくことができる。例えば、RGBのいずれかのサブ画素に1つ又は複数画素に1つ設けられていてもよい。
【0081】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態とは異なる画素構造とした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0082】
図7は、第3実施形態における有機EL表示装置の画素102Rcの構成を示す断面図である。本実施形態では、無機絶縁膜128に対して開口部130とは異なる他の開口部131を設けている。開口部131は、有機絶縁膜120に設けられた開口部122の内側に設けられている。つまり、開口部131は、開口部122と重畳する位置に設けられている。そのため、
図7に示されるように、画素電極132は、開口部131を介して酸化物導電膜124に接続される。したがって、水抜き領域65は、無機絶縁膜128に設けられた開口部130によって画定される。
【0083】
本実施形態においても、水抜き領域65では、有機絶縁膜120と有機絶縁膜134とが酸化物導電膜124を挟んで対向する構造となる。
【0084】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態及び第3実施形態とは異なる画素構造とした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0085】
図8は、第4実施形態における有機EL表示装置の画素102Rdの構成を示す断面図である。本実施形態においても、第3実施形態と同様に、無機絶縁膜128に対して開口部130とは異なる他の開口部131を設けている。開口部131は、有機絶縁膜120に設けられた開口部122の内側に設けられている。そのため、
図8に示されるように、画素電極132は、開口部131を介して酸化物導電膜124に接続される。
【0086】
また、本実施形態では、開口部130を覆って酸化物導電膜132aが設けられている。酸化物導電膜132aは、水抜き領域65aを保護する保護膜として機能する。
【0087】
本実施形態では、画素電極132を、ITO等の酸化物導電膜で銀を含む薄膜を挟んだ積層構造としているため、上層又は下層の酸化物導電膜を酸化物導電膜132aとして利用することが可能である。つまり、本実施形態では、酸化物導電膜132aが、画素電極132の積層構造を構成する一層である。例えば、下層の酸化物導電膜を用いて酸化物導電膜132a及び画素電極132の最下層を形成し、その後、画素電極132に対応する領域に銀を含む薄膜と上層側の酸化物導電膜を形成することもできる。勿論、上層側の酸化物導電膜を酸化物導電膜132aとして用いてもよいし、上層側と下層側の両方の酸化物導電膜を積層して酸化物導電膜132aとして用いてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、酸化物導電膜132aと画素電極132とが物理的に絶縁された構成となっているが、連続的に接続されていてもよい。
【0089】
本実施形態の場合、水抜き領域65aにおいて、有機絶縁膜120と有機絶縁膜134とが酸化物導電膜132a(つまり、画素電極132を構成する一部の導電膜)を挟んで対向する構造となる。
【0090】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態とは異なる画素構造とした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0091】
図9は、第5実施形態における有機EL表示装置の画素102Reの構成を示す断面図である。本実施形態においても、第3実施形態と同様に、無機絶縁膜128に対して開口部130とは異なる他の開口部131を設けている。開口部131は、有機絶縁膜120に設けられた開口部122の内側に設けられている。
【0092】
また、本実施形態では、有機絶縁膜120の上に窒化シリコン膜で構成される無機絶縁膜128を形成し、その上にITO等の金属酸化物材料で構成される酸化物導電膜124aを形成する。そのため、
図9に示されるように、酸化物導電膜124aは、開口部131を介して薄膜トランジスタ50のソース電極50eに接続される。なお、酸化物導電膜124aは、画素電極としても機能する。
【0093】
また、酸化物導電膜124aは、有機EL素子60の陽極としても機能する。この場合、酸化物導電膜124aは、透明導電膜であるため、有機EL素子60から発した光は、酸化物導電膜124aを通過して基板101側へ向かう。そのため、本実施形態では、共通電極140aとして用いるMgAg膜の膜厚を、第1実施形態における共通電極140よりも厚くすることが好ましい。このような構成とすることにより、有機EL素子60から共通電極140a側に向かった光を共通電極140aで反射させ、基板101側へと向かわせることができる。
【0094】
本実施形態の場合、水抜き領域65bにおいて、有機絶縁膜120と有機絶縁膜134とが酸化物導電膜124aを挟んで対向する構造となる。
【0095】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0096】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。