特許第6807257号(P6807257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807257
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20201221BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F16F13/10 E
   B60K5/12 J
   B60K5/12 Z
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-50902(P2017-50902)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-155284(P2018-155284A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阿部 淳司
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−166175(JP,A)
【文献】 特開2001−099230(JP,A)
【文献】 特開平10−089401(JP,A)
【文献】 特開平08−291835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該第一の取付部材の外側端面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で該第一の取付部材と該インナブラケットが固定されて、該インナブラケットが該第一の取付部材に対して側方へ延び出していると共に、該インナブラケットの基端部には袋状のストッパゴムが被せられて非接着で装着されている防振装置において、
前記ストッパゴムが前記インナブラケットの基端部に外挿状態で装着される筒状の周壁部と該周壁部の一方の開口を塞ぐ底壁部とを備える袋状とされて、該ストッパゴムが該周壁部の他方の開口から該インナブラケットの基端部へ外挿状態で組み付けられて弾性的に嵌着されていると共に、該ストッパゴムに形成された貫通孔に前記第一の取付部材が挿通された状態で該第一の取付部材とインナブラケットが相互に固定されており、
該ストッパゴムにおける該貫通孔の周縁部には該第一の取付部材の外周面に対して該インナブラケットの先端側から押し当てられる弾性当接部が設けられている一方
該第一の取付部材よりも該ストッパゴムの前記底壁部側において該インナブラケットの下面が前記貫通孔内に露出されており、該第一の取付部材および該インナブラケットが該弾性当接部と該底壁部との間で弾性的に挟まれて、該ストッパゴムが該インナブラケットに対して該インナブラケットの延出方向で位置決めされていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該第一の取付部材の外側端面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で該第一の取付部材と該インナブラケットが固定されて、該インナブラケットが該第一の取付部材に対して側方へ延び出していると共に、該インナブラケットの基端部には袋状のストッパゴムが被せられて非接着で装着されている防振装置において、
前記ストッパゴムに形成された貫通孔に前記第一の取付部材が挿通された状態で該第一の取付部材と前記インナブラケットが相互に固定されていると共に、該ストッパゴムにおける該貫通孔の周縁部には該第一の取付部材の外周面に対して該インナブラケットの先端側から押し当てられる弾性当接部が設けられて、
該ストッパゴムが該インナブラケットに対して該インナブラケットの延出方向で位置決めされており、且つ、
前記弾性当接部が前記第一の取付部材側へ向けて次第に薄肉となるテーパ形状を有していることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該第一の取付部材の外側端面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で該第一の取付部材と該インナブラケットが固定されて、該インナブラケットが該第一の取付部材に対して側方へ延び出していると共に、該インナブラケットの基端部には袋状のストッパゴムが被せられて非接着で装着されている防振装置において、
前記ストッパゴムに形成された貫通孔に前記第一の取付部材が挿通された状態で該第一の取付部材と前記インナブラケットが相互に固定されていると共に、該ストッパゴムにおける該貫通孔の周縁部には該第一の取付部材の外周面に対して該インナブラケットの先端側から押し当てられる弾性当接部が設けられて、
該ストッパゴムが該インナブラケットに対して該インナブラケットの延出方向で位置決めされており、且つ、
前記ストッパゴムには前記弾性当接部に対して前記インナブラケットの先端側に突出する応力緩和部が設けられており、該応力緩和部が該弾性当接部と前記第一の取付部材の外周面との当接方向に対して傾斜して延びていることを特徴とする防振装置。
【請求項4】
前記ストッパゴムには前記弾性当接部に対して前記インナブラケットの先端側に離れた部分に重ね合わされる当接保持部が設けられていると共に、該弾性当接部と該当接保持部が前記応力緩和部を介して相互に連続している請求項に記載の防振装置。
【請求項5】
前記弾性当接部と前記当接保持部が何れも前記インナブラケットに当接状態で重ね合わされていると共に、前記応力緩和部と該インナブラケットの間には隙間が形成されている請求項に記載の防振装置。
【請求項6】
前記応力緩和部が厚さ方向に傾斜しながら前記弾性当接部と前記第一の取付部材の外周面の当接方向に延びる板状とされている請求項3〜5の何れか一項に記載の防振装置。
【請求項7】
前記応力緩和部が厚さ方向に湾曲する湾曲板状とされている請求項に記載の防振装置。
【請求項8】
前記弾性当接部における前記第一の取付部材への当接端が、前記貫通孔の貫通方向に所定の幅で広がる面形状とされている請求項1〜の何れか一項に記載の防振装置。
【請求項9】
前記ストッパゴムが前記インナブラケットの基端部に外挿状態で装着される筒状の周壁部と該周壁部の一方の開口を塞ぐ底壁部とを備える袋状とされており、前記弾性当接部の厚さが該周壁部の最大厚さと該底壁部の最大厚さの何れよりも小さくされている請求項1〜の何れか一項に記載の防振装置。
【請求項10】
前記ストッパゴムが前記インナブラケットの基端部に外挿状態で装着される筒状の周壁部と該周壁部の一方の開口を塞ぐ底壁部とを備える袋状とされており、該周壁部における該底壁部と反対側の開口端部には、該インナブラケットに外挿状態で弾性的に嵌着される環状の先端嵌着部が設けられている請求項1〜の何れか一項に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウントなどに適用される防振装置に係り、特に第一の取付部材の外側端面に対してインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で第一の取付部材とインナブラケットが相互に固定された構造を有すると共に、インナブラケットの基端部にストッパゴムが取り付けられた防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウントなどに適用される防振装置が知られている。この防振装置は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有しており、それら第一の取付部材と第二の取付部材がパワーユニットと車両ボデーのような振動伝達系の構成部材の各一方に取り付けられることにより、それら振動伝達系の構成部材の間に介装されるようになっている。
【0003】
また、防振装置には、第一の取付部材と振動伝達系の構成部材の間に配されるインナブラケットを備えた構造も提案されている。例えば、特許第5449052号公報(特許文献1)に示されているように、第一の取付部材の上面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で、インナブラケットの基端部が第一の取付部材に固定されていると共に、インナブラケットが第一の取付部材に対して側方へ延び出している。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の防振装置では、インナブラケットの基端部にストッパゴムが装着されている。ストッパゴムは、インナブラケットの先端側へ向けて開口する袋状とされており、インナブラケットの基端部を覆うように非接着で被せ付けられている。そして、インナブラケットが第二の取付部材に取り付けられたアウタブラケットに対してストッパゴムを介して当接することにより、第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位量を制限するストッパが構成されている。
【0005】
このような特許文献1の防振装置では、ストッパゴムがインナブラケットに接着されることなく被せ付けられていることから、ストッパ荷重の作用時などに、ストッパゴムがインナブラケットに対して移動する場合がある。ところが、車両の特性などによっては、ストッパゴムがインナブラケットに対して高度に位置決めされていることを要求される場合もあり、そのような場合に接着工程などを要することなく対応可能な構造も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5449052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、第一の取付部材に固定されるインナブラケットに対して、ストッパゴムを非接着で装着して簡単に位置決めすることができる、新規な構造の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該第一の取付部材の外側端面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で該第一の取付部材と該インナブラケットが固定されて、該インナブラケットが該第一の取付部材に対して側方へ延び出していると共に、該インナブラケットの基端部には袋状のストッパゴムが被せられて非接着で装着されている防振装置において、前記ストッパゴムが前記インナブラケットの基端部に外挿状態で装着される筒状の周壁部と該周壁部の一方の開口を塞ぐ底壁部とを備える袋状とされて、該ストッパゴムが該周壁部の他方の開口から該インナブラケットの基端部へ外挿状態で組み付けられて弾性的に嵌着されていると共に、該ストッパゴムに形成された貫通孔に前記第一の取付部材が挿通された状態で該第一の取付部材とインナブラケットが相互に固定されており、該ストッパゴムにおける該貫通孔の周縁部には該第一の取付部材の外周面に対して該インナブラケットの先端側から押し当てられる弾性当接部が設けられている一方該第一の取付部材よりも該ストッパゴムの前記底壁部側において該インナブラケットの下面が前記貫通孔内に露出されており、該第一の取付部材および該インナブラケットが該弾性当接部と該底壁部との間で弾性的に挟まれて、該ストッパゴムが該インナブラケットに対して該インナブラケットの延出方向で位置決めされていることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた防振装置によれば、ストッパゴムの弾性当接部が、第一の取付部材の外周面に対してインナブラケットの先端側から押し当てられている。これにより、ストッパゴムがインナブラケットに対してインナブラケットの延出方向で位置決めされて、目的とするストッパ特性や耐久性などを実現することができる。
【0011】
しかも、ストッパゴムをインナブラケットに被せて弾性当接部を第一の取付部材の外周面に押し当てることにより、ストッパゴムをインナブラケットに対して接着するなどの特別な位置決め作業を要することなく、ストッパゴムをインナブラケットに対して位置決めすることができる。
【0013】
また、本態様によれば、ストッパゴムがインナブラケットに外挿状態で装着される周壁部の締付けと、インナブラケットに対する弾性当接部と底壁部の押当てとによって、ストッパゴムがインナブラケットに対して複数の方向で位置決めされる。これにより、ストッパゴムがインナブラケットに対して適切な位置に保持されて、目的とするストッパ特性や耐久性などを有利に実現することができる。
【0014】
本発明の第の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該第一の取付部材の外側端面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で該第一の取付部材と該インナブラケットが固定されて、該インナブラケットが該第一の取付部材に対して側方へ延び出していると共に、該インナブラケットの基端部には袋状のストッパゴムが被せられて非接着で装着されている防振装置において、前記ストッパゴムに形成された貫通孔に前記第一の取付部材が挿通された状態で該第一の取付部材と前記インナブラケットが相互に固定されていると共に、該ストッパゴムにおける該貫通孔の周縁部には該第一の取付部材の外周面に対して該インナブラケットの先端側から押し当てられる弾性当接部が設けられて、該ストッパゴムが該インナブラケットに対して該インナブラケットの延出方向で位置決めされており、且つ、前記弾性当接部が前記第一の取付部材側へ向けて次第に薄肉となるテーパ形状を有していることを、特徴とする。
【0015】
の態様によれば、上記[0010]及び[0011]に記載の効果に加えて、第一の取付部材の外周面に対する弾性当接部の当接位置をテーパ形状の角度などによって調節することができて、例えば、弾性当接部が第一の取付部材の外周面の凹凸などに押し当てられるのを避けることができる。それ故、第一の取付部材の外周面に対して弾性当接部を適切に押し当てて、ストッパゴムとインナブラケットの相対的な位置決めを有効に実現することができる。
【0016】
特に、弾性当接部のインナブラケット側の面を、第一の取付部材側へ向けて次第にインナブラケットから離れるように傾斜するテーパ面とすれば、第一の取付部材とインナブラケットの固定時に、弾性当接部が第一の取付部材とインナブラケットの間に挟み込まれ難くなる。
【0017】
本発明の第の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該第一の取付部材の外側端面にインナブラケットの基端部が重ね合わされた状態で該第一の取付部材と該インナブラケットが固定されて、該インナブラケットが該第一の取付部材に対して側方へ延び出していると共に、該インナブラケットの基端部には袋状のストッパゴムが被せられて非接着で装着されている防振装置において、前記ストッパゴムに形成された貫通孔に前記第一の取付部材が挿通された状態で該第一の取付部材と前記インナブラケットが相互に固定されていると共に、該ストッパゴムにおける該貫通孔の周縁部には該第一の取付部材の外周面に対して該インナブラケットの先端側から押し当てられる弾性当接部が設けられて、該ストッパゴムが該インナブラケットに対して該インナブラケットの延出方向で位置決めされており、且つ、前記ストッパゴムには前記弾性当接部に対して前記インナブラケットの先端側に突出する応力緩和部が設けられており、該応力緩和部が該弾性当接部と前記第一の取付部材の外周面との当接方向に対して傾斜して延びていることを、特徴とする。
【0018】
の態様によれば、上記[0010]及び[0011]に記載の効果に加えて、例えば、ストッパゴムが弾性当接部よりも先端側においてインナブラケットによって保持されている場合にも、弾性当接部を第一の取付部材の外周面に押し当てる力が、当該力の作用方向に対して傾斜して延びる応力緩和部によって調節されて、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に対して適当な力で押し当てられる。更に、第一の取付部材の外周面に対する弾性当接部の押当てによってストッパゴムに作用する反力が、反力の作用方向に対して傾斜して延びる応力緩和部によって低減されて、反力によるストッパゴムのずれなども防止される。
【0019】
本発明の第の態様は、第の態様に記載された防振装置において、前記ストッパゴムには前記弾性当接部に対して前記インナブラケットの先端側に離れた部分に重ね合わされる当接保持部が設けられていると共に、該弾性当接部と該当接保持部が前記応力緩和部を介して相互に連続しているものである。
【0020】
の態様によれば、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に押し当てられることによる反力が、応力緩和部によって調節されて当接保持部に及ぼされることから、例えば、当接保持部が当該反力の作用によってインナブラケットに対して移動してしまうのを防ぐことができる。更に、当接保持部がインナブラケットに重ね合わされることで弾性当接部を第一の取付部材に押し付ける方向の力が作用しても、当接保持部と弾性当接部の間に配された応力緩和部によって、弾性当接部に伝達される力が調節されて、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に対して適度に押し付けられる。
【0021】
本発明の第の態様は、第の態様に記載された防振装置において、前記弾性当接部と前記当接保持部が何れも前記インナブラケットに当接状態で重ね合わされていると共に、前記応力緩和部と該インナブラケットの間には隙間が形成されているものである。
【0022】
の態様によれば、弾性当接部がインナブラケットに当接状態で保持されることによって、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に対して所定の位置に安定して押し付けられると共に、当接保持部がインナブラケットに当接状態で保持されることによって、ストッパゴムが先端側においてもインナブラケットに位置決めされる。更に、弾性当接部と当接保持部をつなぐ応力緩和部がインナブラケットから離れて配されていることにより、応力緩和部がインナブラケットで拘束されることなく容易に変形可能とされて、弾性当接部と当接保持部の間での力の伝達が応力緩和部によって効果的に調節される。
【0023】
本発明の第の態様は、第三〜第五の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記応力緩和部が厚さ方向に傾斜しながら前記弾性当接部と前記第一の取付部材の外周面の当接方向に延びる板状とされているものである。
【0024】
の態様によれば、応力緩和部が板状とされているとともに厚さ方向に傾斜していることから、弾性当接部と第一の取付部材の外周面との当接方向の力が応力緩和部に作用する場合に、応力緩和部が変形し易くされている。それ故、例えば第一の取付部材の外周面に対する弾性当接部の押付けによる反力などが応力緩和部に及ぼされる場合などに、応力緩和部の変形によって力の伝達が効果的に低減される。
【0025】
本発明の第の態様は、第の態様に記載された防振装置において、前記応力緩和部が厚さ方向に湾曲する湾曲板状とされているものである。
【0026】
の態様によれば、応力緩和部が湾曲板状とされて、応力緩和部の厚さ方向の傾斜角度が連続的に変化していることによって、例えば、応力緩和部に対する比較的に小さな入力に対しても、応力緩和部における傾斜角度の大きな部分が変形することで、応力緩和部の変形による作用力の伝達の調節作用が有効に発揮される。
【0027】
本発明の第の態様は、第一〜第七の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記弾性当接部における前記第一の取付部材への当接端が、前記貫通孔の貫通方向に所定の幅で広がる面形状とされているものである。
【0028】
の態様によれば、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に対して面接触状態で押し当てられて、弾性当接部と第一の取付部材の外周面との当接面積が確保されることから、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に押し当てられることによるストッパゴムの位置決めが、より有利に実現される。
【0029】
本発明の第の態様は、第〜第の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記ストッパゴムが前記インナブラケットの基端部に外挿状態で装着される筒状の周壁部と該周壁部の一方の開口を塞ぐ底壁部とを備える袋状とされており、前記弾性当接部の厚さが該周壁部の最大厚さと該底壁部の最大厚さの何れよりも小さくされているものである。
【0030】
の態様によれば、第一の取付部材の外周面に押し当てられる弾性当接部の厚さが、ストッパゴムの周壁部や底壁部の最大厚さより小さくされていることから、弾性当接部が第一の取付部材の外周面に押し当てられることでストッパゴムに作用する反力が低減されて、ストッパゴムがインナブラケットに対して適切な位置に保持され易くなる。
【0031】
本発明の第十の態様は、第一〜第九の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記ストッパゴムが前記インナブラケットの基端部に外挿状態で装着される筒状の周壁部と該周壁部の一方の開口を塞ぐ底壁部とを備える袋状とされており、該周壁部における該底壁部と反対側の開口端部には、該インナブラケットに外挿状態で弾性的に嵌着される環状の先端嵌着部が設けられているものである。
【0032】
十の態様によれば、袋状とされたストッパゴムの開口端部に環状の先端嵌着部が設けられて、先端嵌着部がインナブラケットに外挿状態で嵌着されることから、ストッパゴムがインナブラケットに対してより安定した装着状態で位置決めされて、ストッパ特性の安定化や耐久性の向上などが有利に図られ得る。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ストッパゴムにおける貫通孔の周縁部に設けられた弾性当接部が、第一の取付部材の外周面に対してインナブラケットの先端側から押し当てられることによって、ストッパゴムがインナブラケットに対してインナブラケットの延出方向で位置決めされている。これにより、ストッパゴムをインナブラケットに対して接着するなどの特別な位置決め作業を要することなく、ストッパゴムをインナブラケットに対してインナブラケットの延出方向で位置決めすることができて、目的とするストッパ特性や耐久性などを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す斜視図。
図2図1に示すエンジンマウントの断面図であって、図3のII−II断面に相当する図。
図3図2のIII−III断面図。
図4図2のIV−IV断面図。
図5図1に示すエンジンマウントを構成するインナブラケットの平面図。
図6図5に示すインナブラケットの底面図。
図7図5に示すインナブラケットの正面図。
図8図1に示すエンジンマウントを構成するストッパゴムの平面図。
図9図8に示すストッパゴムの底面図。
図10図8に示すストッパゴムの右側面図。
図11図8に示すストッパゴムの左側面図。
図12図8に示すストッパゴムの正面図。
図13図10のXIII−XIII断面図。
図14図13のAを拡大して示す要部の断面図。
図15図8のストッパゴムを図5のインナブラケットに装着する過程を示す斜視図。
図16図2のBを拡大して示す要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1〜4には、本発明に従う構造とされた防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体12にインナブラケット14とアウタブラケット16が装着された構造を有しており、マウント本体12は第一の取付部材18と第二の取付部材20が本体ゴム弾性体22によって弾性連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは図2中の上下方向を、前後方向とは図3中の左右方向を、左右方向とは図2中の左右方向を、それぞれ言う。
【0037】
より詳細には、第一の取付部材18は、金属や繊維補強合成樹脂などで形成された高剛性の部材であって、小径の略円柱形状とされていると共に、下部が下方に向けて次第に小径となるテーパ形状とされている。更に、第一の取付部材18には、中心軸上を延びて上面に開口するねじ穴24が形成されている。
【0038】
第二の取付部材20は、第一の取付部材18と同様に高剛性の部材であって、薄肉大径の略円筒形状とされている。そして、第一の取付部材18と第二の取付部材20が同一中心軸上で上下に配されて、それら第一の取付部材18と第二の取付部材20が本体ゴム弾性体22によって弾性連結されている。
【0039】
本体ゴム弾性体22は、略円錐台形状とされており、小径側の端部が第一の取付部材18に加硫接着されていると共に、大径側の端部の外周面が第二の取付部材20に加硫接着されている。これにより、第二の取付部材20の上開口部は、本体ゴム弾性体22によって閉塞されている。なお、本体ゴム弾性体22は、第一の取付部材18と第二の取付部材20を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0040】
さらに、本体ゴム弾性体22には、大径側の軸方向端面に開口する逆向きすり鉢状の凹所26が形成されている。更にまた、本体ゴム弾性体22の外周端部には、下方へ延び出すシールゴム層28が一体形成されている。シールゴム層28は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、第二の取付部材20の内周面に加硫接着されている。
【0041】
一方、第二の取付部材20の下開口部は、可撓性膜30によって閉塞されている。可撓性膜30は、全体として薄肉の略円形ドーム状とされたゴム膜で形成されており、伸縮乃至は撓み変形を許容されていると共に、初期形状で弛みを有している。また、可撓性膜30の外周端部には環状の固定部材32が加硫接着されており、固定部材32が第二の取付部材20の下端部に差し入れられた状態で、第二の取付部材20に八方絞りなどの縮径加工が施されることにより、固定部材32が第二の取付部材20の下端部に嵌着されている。これにより、第二の取付部材20の下開口部が、可撓性膜30によって流体密に閉塞されている。
【0042】
このように、本体ゴム弾性体22の一体加硫成形品の第二の取付部材20に対して、可撓性膜30が流体密に取り付けられることにより、第二の取付部材20の内周側における本体ゴム弾性体22と可撓性膜30の間には、外部から流体密に隔てられて非圧縮性流体が封入された流体室34が画成されている。流体室34に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、水やエチレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などの液体が好適に採用され得る。更に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を効率的に得るためには、流体室34に封入される流体として0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
【0043】
また、流体室34には、仕切部材36が配設されている。仕切部材36は、金属や合成樹脂などで形成された硬質の部材であって、全体として略円板形状とされている。更に、仕切部材36の外周端部には、外周面に開口しながら周方向へ二周未満の長さで螺旋状に延びる周溝38が形成されている。そして、仕切部材36は、シールゴム層28が固着された第二の取付部材20に内挿された状態で、第二の取付部材20が縮径加工されることによって、第二の取付部材20の軸方向中間部分に嵌着されている。なお、仕切部材36の外周面と第二の取付部材20の内周面がシールゴム層28を介して流体密に重ね合わされることから、仕切部材36に形成された周溝38の外周開口が第二の取付部材20によって流体密に覆蓋されている。
【0044】
このように、仕切部材36がシールゴム層28を介して第二の取付部材20によって支持された状態で流体室34に配されることにより、流体室34が軸直角方向に広がる仕切部材36によって上下に二分されている。即ち、仕切部材36よりも上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体22によって構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室40が形成されていると共に、仕切部材36よりも下側には、壁部の一部が可撓性膜30によって構成されて、容積変化が許容される平衡室42が形成されている。なお、受圧室40と平衡室42には、流体室34に封入された非圧縮性流体がそれぞれ封入されている。
【0045】
また、受圧室40と平衡室42は、仕切部材36に形成されたオリフィス通路44を通じて相互に連通されている。オリフィス通路44は、トンネル状とされた周溝38の一方の端部が上連通孔46を通じて受圧室40に連通されると共に、他方の端部が下連通孔48を通じて平衡室42に連通されることにより、仕切部材36の外周端部を周方向に延びるように形成されている。本実施形態のオリフィス通路44は、通路断面積と通路長の比によって設定されるチューニング周波数が、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数に調節されている。そして、後述するエンジンマウント10の車両への装着状態において、第一の取付部材18と第二の取付部材20の間にエンジンシェイクに相当する周波数の振動が入力されると、受圧室40と平衡室42の間でオリフィス通路44を通じた流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。
【0046】
かくの如き構造とされたマウント本体12には、インナブラケット14とアウタブラケット16が装着されている。
【0047】
インナブラケット14は、金属などで形成された高剛性の部材であって、図5〜7に示すように、全体として左右に長手とされた厚肉の矩形長手板形状を有していると共に、左右の中間部分には下面に段差50が設けられており、基端側(図7中の左側)が先端側(図7中の右側)よりも上下方向で薄肉とされている。また、インナブラケット14の左端部である基端部52には、後述する連結用ボルト64の頭部を収容する収容凹所54が上面に開口して形成されていると共に、収容凹所54の底壁部を貫通する連結用ボルト孔56が形成されている。更に、インナブラケット14の基端部52には、下方に向けて突出する一対のガイド突起58,58が前後に対向して配置されている。一方、インナブラケット14の右端部である先端部60には、上下に貫通する第一の取付用ボルト孔62が前後に並んで二つ形成されている。
【0048】
そして、インナブラケット14は、基端部52の下面が第一の取付部材18の外側端面である上面に重ね合わされた状態で、基端部52の連結用ボルト孔56に挿通された連結用ボルト64が第一の取付部材18のねじ穴24に螺着されることにより、基端部52において第一の取付部材18に固定されている。かかるインナブラケット14の第一の取付部材18への固定状態において、インナブラケット14の先端部60は、第一の取付部材18に対して側方(右方)へ延び出している。本実施形態では、第一の取付部材18の上端部が、インナブラケット14の基端部52に形成された一対のガイド突起58,58の間に差し入れられることにより、第一の取付部材18とインナブラケット14が固定される前にある程度位置決めされるようになっている。
【0049】
一方、アウタブラケット16は、インナブラケット14と同様に高剛性の部材とされており、図1〜3に示すように、全体として逆向きの略有底円筒形状を有している。また、アウタブラケット16には、筒状壁部66を上底壁部68に近い位置で径方向に貫通する一対の窓部70,70が、周方向で半周に満たない大きさで形成されている。更に、アウタブラケット16の上底壁部68には、上下に貫通する挿通孔72が形成されており、後述するインナブラケット14の第一の取付部材18への装着時に、挿通孔72を通じて連結用ボルト64を連結用ボルト孔56に挿通してねじ穴24に螺着させることが可能とされている。更にまた、アウタブラケット16の筒状壁部66の下端部には、一対の窓部70,70の開口方向と略直交する径方向の両側に突出する一対の取付片74,74が形成されており、それら一対の取付片74,74には上下に貫通する第二の取付用ボルト孔75がそれぞれ形成されている。
【0050】
そして、アウタブラケット16は、筒状壁部66が第二の取付部材20に外嵌固定されることにより、マウント本体12に装着されている。なお、インナブラケット14は、アウタブラケット16がマウント本体12の第二の取付部材20に装着された後で、アウタブラケット16の窓部70に側方から差し入れられて、連結用ボルト64がアウタブラケット16の挿通孔72を通じてねじ穴24に螺着されることにより、マウント本体12の第一の取付部材18に装着される。
【0051】
このようなインナブラケット14とアウタブラケット16がマウント本体12に装着されたエンジンマウント10は、インナブラケット14の先端部60が、第一の取付用ボルト孔62に挿通される図示しない第一の取付用ボルトによって、同じく図示しないパワーユニットに固定される。一方、エンジンマウント10のアウタブラケット16は、一対の取付片74,74が第二の取付用ボルト孔75,75に挿通される図示しない第二の取付用ボルトによって、同じく図示しない車両ボデーに固定される。これらにより、エンジンマウント10がパワーユニットと車両ボデーの間に配設されて、それらパワーユニットと車両ボデーがエンジンマウント10によって防振連結されるようになっている。
【0052】
なお、インナブラケット14とアウタブラケット16の上底壁部68は、車両に装着される前のエンジンマウント10を示す図2,3において、相互に近接して配置されているが、車両への装着状態では上下により大きく離れて配置されている。即ち、エンジンマウント10の車両への装着状態では、第一の取付部材18と第二の取付部材20の間にパワーユニットの分担支持荷重が作用することから、インナブラケット14がアウタブラケット16に対して下方へ相対変位して、インナブラケット14とアウタブラケット16の上底壁部68が上下に離隔する。
【0053】
かくの如きエンジンマウント10の車両への装着状態では、第一の取付部材18と第二の取付部材20の相対変位量をインナブラケット14とアウタブラケット16の当接によって制限するストッパが構成されている。即ち、インナブラケット14の下面とアウタブラケット16の窓部70の内周面が当接することにより、第一の取付部材18と第二の取付部材20の上下接近方向の相対変位量を制限するバウンドストッパ76が構成される。更に、インナブラケット14の上面とアウタブラケット16の上底壁部68の下面が当接することにより、第一の取付部材18と第二の取付部材20の上下離隔方向の相対変位量を制限するリバウンドストッパ77が構成される。更にまた、インナブラケット14の前後各面とアウタブラケット16の筒状壁部66の内周面が当接することにより、第一の取付部材18と第二の取付部材20の前後方向の相対変位量を制限する前後ストッパ78が構成される。
【0054】
ここにおいて、各ストッパ76,77,78の当接面間には、ストッパゴム80が配されており、各ストッパ76,77,78の当接面がストッパゴム80を介して間接的に当接するようになっている。ストッパゴム80は、ゴム弾性体や樹脂エラストマなどで形成されており、図8〜13に示すように、略四角筒状の周壁部81と、周壁部81の左開口を塞ぐように設けられた底壁部82とを一体的に備えて、全体として右側へ開口する四角袋状とされている。
【0055】
また、周壁部81の下壁部には、上下に貫通する貫通孔83が形成されており、貫通孔83が第一の取付部材18の上部を挿入可能な孔形状とされている。また、周壁部81の上壁部には、上下に貫通する挿通窓84が形成されている。
【0056】
さらに、図9,13,14などに示すように、周壁部81の下壁部における貫通孔83よりも右側には、貫通孔83の開口周縁部の一部を構成する弾性当接部85が設けられている。この弾性当接部85は、周壁部81の一部であって左右方向に延びる板状とされており、貫通孔83側となる左端部が、貫通孔83に向けて次第に薄肉となるテーパ形状を有するテーパ状端部86とされている。更にまた、テーパ状端部86の左端は、上下に所定の幅を有する面形状の当接端面88とされており、この当接端面88が貫通孔83の内周面の一部を構成している。
【0057】
更にまた、弾性当接部85は、厚さ寸法が周壁部81の最大厚さと底壁部82の最大厚さの何れよりも小さくされている。これにより、後述するように弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に押し当てられる際に、弾性当接部85の弾性に基づいてストッパゴム80に作用する反力が低減されて、ストッパゴム80がインナブラケット14に対して適切な位置に保持され易くなっている。
【0058】
なお、本実施形態のテーパ状端部86は、図14に示すように、弾性当接部85の上面の貫通孔83側の端部が傾斜平面90とされることで形成されているが、例えば、上面と下面の両方が貫通孔83に向けて相互に接近する傾斜面とされることで形成されていても良い。要するに、テーパ状端部86は、弾性当接部85の貫通孔83側の端部における上面と下面の少なくとも一方が、貫通孔83に向けて弾性当接部85の厚さが薄くなる方向の傾斜面とされることによって形成されている。また、テーパ状端部86の上面と下面の少なくとも一方が、傾斜角度の変化する湾曲面とされていても良い。
【0059】
更にまた、ストッパゴム80における弾性当接部85よりも右側には、当接保持部としてのバウンド緩衝部92が設けられている。バウンド緩衝部92は、上下方向と略直交して広がる略平板形状を有しており、弾性当接部85に対して右方に離れた位置に配されていると共に、弾性当接部85よりも下方に位置している。本実施形態のバウンド緩衝部92は、弾性当接部85に比して上下に厚肉とされている。更に、バウンド緩衝部92の基端部(図13中の右端部)が周壁部81の右側の開口端部を構成していることから、周壁部81の右側の開口端部には、バウンド緩衝部92の基端部を含んで環状の先端嵌着部94が形成されている。
【0060】
さらに、ストッパゴム80における弾性当接部85とバウンド緩衝部92の間には、応力緩和部96が設けられている。応力緩和部96は、左右に延びる板状とされて、弾性当接部85から右側へ突出しており、弾性当接部85とバウンド緩衝部92が応力緩和部96によって相互に連続的につながっている。更に、応力緩和部96は、弾性当接部85側からバウンド緩衝部92側へ向けて次第に下傾する傾斜形状とされており、本実施形態では、厚さ方向に湾曲する湾曲板状とされて、傾斜角度が左右方向で徐々に変化している。
【0061】
かくの如き構造とされたストッパゴム80は、インナブラケット14の基端部52に被せられて非接着で装着されている。即ち、図15に示すように、インナブラケット14が基端部52側からストッパゴム80の周壁部81に差し入れられて、図2に示すように、ストッパゴム80の周壁部81がインナブラケット14の基端部52に外挿状態で装着されていると共に、底壁部82がインナブラケット14の基端部52側の端面に重ね合わされている。
【0062】
そして、ストッパゴム80がインナブラケット14に装着された状態において、ストッパゴム80の周壁部81がインナブラケット14とアウタブラケット16の間に配されている。これにより、上下方向と前後方向の各ストッパにおいて、インナブラケット14とアウタブラケット16がストッパゴム80の周壁部81を介して間接的に当接せしめられるようになっており、ストッパゴム80の緩衝作用によって、ストッパ特性の調節や当接時の打音の低減などが図られる。
【0063】
また、ストッパゴム80の周壁部81は、インナブラケット14の基端部52を弾性的に締め付けた状態で、インナブラケット14の基端部52に装着されていることから、ストッパゴム80がインナブラケット14に対して周壁部81の弾性に基づいて上下方向および前後方向で位置決めされている。
【0064】
さらに、バウンド緩衝部92は、インナブラケット14の下面に当接状態で重ね合わされている。本実施形態では、バウンド緩衝部92の基端部が先端嵌着部94の一部を構成しており、先端嵌着部94がインナブラケット14に外挿状態で嵌着されて、先端嵌着部94がインナブラケット14を弾性的に締め付けるように装着されていることから、バウンド緩衝部92が少なくとも基端部においてインナブラケット14の下面に押し当てられている。なお、底壁部82には、略中央に窓が貫通形成されており、インナブラケット14におけるボルト頭部の収容凹所54から先端面に延びる凹溝が、かかる窓を通じて外部に開放されていることで、ストッパゴム80のインナブラケット14への装着時におけるエア抜きと、装着後における収容凹所54からの排水が図られている。
【0065】
また、第一の取付部材18の上端部がストッパゴム80の貫通孔83に下方から挿通された状態で、第一の取付部材18とインナブラケット14が相互に固定されていると共に、ストッパゴム80の弾性当接部85が、インナブラケット14に固定された第一の取付部材18の外周面に押し当てられている。弾性当接部85は、インナブラケット14の先端側から第一の取付部材18の外周面の上部に押し当てられており、第一の取付部材18が弾性当接部85と底壁部82によってインナブラケット14の延出方向である左右方向で挟まれている。これにより、ストッパゴム80は、インナブラケット14およびインナブラケット14に固定された第一の取付部材18に対して、インナブラケット14の延出方向である左右方向でも位置決めされている。
【0066】
また、弾性当接部85がインナブラケット14の段差50よりも基端側の下面に当接状態で重ね合わされていると共に、バウンド緩衝部92がインナブラケット14の段差50よりも先端側の下面に当接状態で重ね合わされている。一方、弾性当接部85とバウンド緩衝部92をつなぐ応力緩和部96は、インナブラケット14に対して下方に離れて配置されており、応力緩和部96とインナブラケット14の間には、隙間98が形成されている。なお、弾性当接部85およびバウンド緩衝部92は、インナブラケット14に当接していることが望ましいが、必ずしも全体がインナブラケット14に当接している必要はなく、部分的に離隔していても良い。また、応力緩和部96は、インナブラケット14から離隔していることが望ましいが、必ずしも全体がインナブラケット14から離れている必要はなく、部分的に当接していても良い。
【0067】
このようにストッパゴム80がインナブラケット14の基端部52に非接着で被せられて装着された状態において、インナブラケット14が第一の取付部材18に固定されることにより、ストッパゴム80が、インナブラケット14および第一の取付部材18に対して、上下方向と前後方向と左右方向の各方向において位置決めされている。特に、図2,16に示すように、弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に押し付けられることで、ストッパゴム80のインナブラケット14に対する抜け方向となる左方への移動が、接着などの手段を要することなく防止されている。
【0068】
これにより、ストッパゴム80のインナブラケット14に対する位置のずれなどに起因するストッパ特性の変化やストッパゴム80の局所的な摩耗などが回避されて、目的とするストッパ特性や耐久性などを有効に得ることができる。
【0069】
また、袋状とされたストッパゴム80の開口端部に設けられた環状の先端嵌着部94がインナブラケット14に外挿状態で嵌着されていることによって、ストッパゴム80がインナブラケット14に対してより安定した装着状態で位置決めされて、ストッパ特性の安定化や耐久性の向上などが有利に図られている。
【0070】
さらに、弾性当接部85における第一の取付部材18への当接端が上下に所定の幅を有する当接端面88とされており、弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に対して面接触状態で押し当てられている。それ故、弾性当接部85と第一の取付部材18の外周面との当接面積が確保されて、弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に押し当てられることによるストッパゴム80の位置決めがより有利に実現される。
【0071】
また、弾性当接部85が第一の取付部材18側へ向けて次第に薄肉となるテーパ状端部86を有していることにより、弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に対して上下方向の中間位置で当接している。これにより、図16に示すように、第一の取付部材18の上端角部にR面が設定されている場合などにも、弾性当接部85の当接端面88を第一の取付部材18の外周面に安定した当接状態で押し付けることができる。しかも、本実施形態では、テーパ状端部86が弾性当接部85の上面に傾斜平面90を設けることで形成されていることから、第一の取付部材18とインナブラケット14を固定する際に、弾性当接部85のテーパ状端部86が第一の取付部材18とインナブラケット14の間に挟まれ難くなっている。
【0072】
また、ストッパゴム80には、厚さ方向に傾斜しながら左右に延びる応力緩和部96が設けられており、応力緩和部96が弾性当接部85から先端側である右側へ向けて延び出していると共に、弾性当接部85が先端嵌着部94のバウンド緩衝部92に対して応力緩和部96を介してつながっている。これにより、先端嵌着部94がインナブラケット14に対して位置決めされた態様などにおいて、弾性当接部85の第一の取付部材18への当接力が応力緩和部96によって調節されて、弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に対して適当な力で押し当てられる。更に、第一の取付部材18の外周面に対する弾性当接部85の押当てによってストッパゴム80に作用する反力が、応力緩和部96によって調節されて、反力によるストッパゴム80のずれなども防止される。
【0073】
しかも、応力緩和部96が厚さ方向に傾斜しながら左右に延びる板状とされていることにより、左右方向の入力に対して応力緩和部96が変形し易く、例えば、弾性当接部85と第一の取付部材18の当接による反力などが応力緩和部96に及ぼされる場合に、応力緩和部96の変形によって弾性当接部85からバウンド緩衝部92への力の伝達が効果的に低減される。
【0074】
加えて、本実施形態では、応力緩和部96が厚さ方向に湾曲する湾曲板状とされて、応力緩和部96の厚さ方向の傾斜角度が連続的に変化していることから、例えば、応力緩和部96に対する左右方向の比較的に小さな入力に対しても、応力緩和部96における傾斜角度の大きな部分が変形することで、伝達される力の調節作用が有効に発揮される。
【0075】
さらに、弾性当接部85とバウンド緩衝部92が何れもインナブラケット14の下面に当接状態で重ね合わされていると共に、応力緩和部96とインナブラケット14の間には隙間98が形成されている。これにより、弾性当接部85がインナブラケット14に沿って位置決めされて、弾性当接部85が第一の取付部材18の外周面に安定して押し付けられる。更に、バウンド緩衝部92がインナブラケット14に当接状態で保持されることによって、ストッパゴム80が先端側においてもインナブラケット14に位置決めされる。また、応力緩和部96がインナブラケット14から離れていることによって、応力緩和部96がインナブラケット14で拘束されることなく容易に変形可能とされて、弾性当接部85とバウンド緩衝部92の間で伝達される力の大きさが応力緩和部96によって効果的に調節される。
【0076】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、ストッパゴム80の応力緩和部96は、湾曲板状に限定されず、平板状であっても良い。
【0077】
また、ストッパゴム80のテーパ状端部86は、必ずしも弾性当接部85の端部に一定の傾斜角度で傾斜する傾斜平面90を設けることで形成されるものに限定されず、例えば、傾斜角度が徐々に変化する傾斜湾曲面や傾斜角度が段階的に変化する二つの傾斜平面などが弾性当接部85の端部の上下少なくとも一方の面に設けられることで形成されるようにもできる。また、テーパ状端部86は必須ではなく、例えば弾性当接部85の全体が略一定の厚さで形成されていても良い。
【0078】
さらに、弾性当接部85は、必ずしもインナブラケット14に対して当接状態で重ね合わされている必要はなく、インナブラケット14から離れていても良い。また、応力緩和部96がインナブラケット14から離れて配置されて隙間98が形成されていることは必須ではなく、応力緩和部96が部分的に乃至は全体においてインナブラケット14に当接していても良い。
【0079】
更にまた、前記実施形態では、当接保持部としてバウンドストッパ76を構成するバウンド緩衝部92が例示されているが、当接保持部は、インナブラケット14に重ね合わされるようにされていれば、バウンドストッパ76を構成するものではなくても良い。なお、当接保持部は、本発明において必須ではなく、省略され得る。
【0080】
また、前記実施形態のエンジンマウント10は、内部の流体室34に封入された流体の流動作用に基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置を例示したが、本発明に係る防振装置は、必ずしも流体封入式の防振装置に限定されず、内部に流体室34を持たない所謂ソリッドタイプの防振装置にも本発明は適用可能である。
【0081】
さらに、インナブラケット14およびアウタブラケット16の具体的な構造は、車両側の取付構造などに応じて適宜に変更され得る。
【0082】
本発明の適用範囲は、エンジンマウントとして用いられる防振装置に限定されるものではなく、例えばサブフレームマウントやボデーマウント、デフマウントなどとして用いられる防振装置も含まれる。更に、本発明は、自動車用の防振装置にのみ適用されるものではなく、例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両などに用いられる防振装置にも、適用され得る。
【符号の説明】
【0083】
10:エンジンマウント、14:インナブラケット、18:第一の取付部材、20:第二の取付部材、22:本体ゴム弾性体、52:基端部、80:ストッパゴム、81:周壁部、82:底壁部、83:貫通孔、85:弾性当接部、86:テーパ状端部、88:当接端面、92:バウンド緩衝部(当接保持部)、94:先端嵌着部、96:応力緩和部、98:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16