特許第6807287号(P6807287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807287
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】車両移動台車
(51)【国際特許分類】
   B60S 13/00 20060101AFI20201221BHJP
   B62B 3/06 20060101ALI20201221BHJP
   B62B 3/10 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B60S13/00
   B62B3/06 Z
   B62B3/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-162188(P2017-162188)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-38393(P2019-38393A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142115
【氏名又は名称】株式会社協豊製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 清男
(72)【発明者】
【氏名】西尾 佳浩
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/111663(WO,A1)
【文献】 特開2003−201094(JP,A)
【文献】 特開平8−276832(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103419762(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 30/10
B60S 9/00−13/02
B62B 1/00− 5/08
B66F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における前輪又は後輪を構成する一対の車輪を持ち上げて、前記車両を移動させる車両移動台車であって、
第1移動ベースと、前記第1移動ベースに設けられ、前記車両における第1車輪を車長方向の前後から挟み込んで持ち上げることが可能な第1持ち上げ機構と、前記第1移動ベース及び第1持ち上げ機構の少なくとも一方に設けられた第1キャスタとを有する第1移動装置と、
前記第1移動ベースの車幅方向の側方に連結され、駆動源によって駆動される駆動車輪を有し、前記駆動車輪の回転によって前記第1移動装置を移動させる駆動ユニットと、
第2移動ベースと、前記第2移動ベースに設けられ、前記第1車輪に対して車幅方向に対向する位置に配置された第2車輪を車長方向の前後から挟み込んで持ち上げることが可能な第2持ち上げ機構と、前記第2移動ベース及び第2持ち上げ機構の少なくとも一方に設けられた第2キャスタとを有する第2移動装置と、
前記第1移動装置と前記第2移動装置とに連結され、前記第1移動装置と前記第2移動装置との間隔を変更可能に構成された連結部材と、を備える車両移動台車。
【請求項2】
第1持ち上げ機構は、
前記第1移動ベースに設けられ、前記車両における第1車輪の外周面に車長方向の前方から当接する第1前側当接部と、前記第1移動ベースに設けられ、前記第1車輪の外周面に車長方向の後方から当接する第1後側当接部と、前記第1前側当接部と前記第1後側当接部との車長方向の間隔を縮小させる第1アクチュエータとを有し、
第2持ち上げ機構は、
前記第2移動ベースに設けられ、前記車両における第2車輪の外周面に車長方向の前方から当接する第2前側当接部と、前記第2移動ベースに設けられ、前記第2車輪の外周面に車長方向の後方から当接する第2後側当接部と、前記第2前側当接部と前記第2後側当接部との車長方向の間隔を縮小させる第2アクチュエータとを有する、請求項1に記載の車両移動台車。
【請求項3】
前記駆動ユニットの前記駆動車輪の全体が車長方向に占める第1範囲は、前記第1持ち上げ機構によって持ち上げられる、前記車両における第1車輪の全体が車長方向に占める第2範囲と重なり、
前記駆動ユニットが前記第1移動ベースの側方に連結された車長方向の位置は、前記第2範囲内にある、請求項2に記載の車両移動台車。
【請求項4】
前記駆動ユニットは、前記第1移動装置の側方において前記第1移動装置に対して着脱可能であり、かつ、前記駆動車輪を回転可能に支持するユニットボディと、前記ユニットボディに設けられた、作業者が把持するための操作ハンドルとを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両移動台車。
【請求項5】
前記連結部材は、前記第1移動装置に連結された第1連結部と、前記第2移動装置に連結され、前記第1連結部に着脱可能な第2連結部と、前記第1連結部及び前記第2連結部の少なくとも一方に設けられた補助車輪とを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両移動台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における前輪又は後輪を構成する一対の車輪を持ち上げて、車両を移動させる車両移動台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車製造工場においては、車輪の取り付けが完了している車両を、自走させることなく移動させることがある。一つの移動手法として、車両における車輪を車両の外部から回転させながら走行する、外部回転方式の車両移動台車を用いることがある。例えば、特許文献1の車両の運搬装置は、電動機によって回転する走行ローラと、走行ローラに圧接されるとともに車両の車輪に圧接される圧接ローラと、作業者が把持する手押し用のハンドルとを備える。そして、ハンドルを把持する作業者の操作によって電動機を回転させたときには、走行ローラによって運搬台車が走行する。また、このときには、走行ローラの回転を受けて圧接ローラが従動回転し、圧接ローラによって車両の車輪が回転して車両が移動する。
【0003】
また、他の移動手法としては、車輪の取り付けが完了している車両の前輪又は後輪を持ち上げて車両を移動させる持ち上げ方式の車両移動台車がある。この持ち上げ方式の車両移動台車として、例えば、特許文献2に示されるように、車両の車輪を持ち上げて、この車両を移動させる持上げトロリが知られている。持上げトロリは、2つの前輪、2つの後輪、又は4つの車輪に対して配置されて使用される。持上げトロリにおいては、伸縮自在部品に対して、走行用のキャスタが設けられた一対のローラが回転可能に取り付けられている。そして、持上げトロリは、一対のローラの間隔を縮小させるときに、一対のローラを回転させながら車両の車輪を持ち上げるよう構成されている。
【0004】
また、他の持ち上げ方式の車両移動台車として、例えば、特許文献3に示される車両移動装置も知られている。車両移動装置は、牽引車と、被牽引車とを有しており、被牽引車は、車両の2つの前輪又は後輪を持ち上げるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−190657号公報
【特許文献2】特表2003−520154号公報
【特許文献3】特開平8−318833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に示される外部回転方式の車両移動台車は、車両の前輪又は後輪が回転しないようロックされている場合には、使用することができない。一方、この場合には、特許文献2,3に示される持ち上げ方式の車両移動台車によれば、回転がロックされた前輪又は後輪を持ち上げることにより、車両を移動させることが可能になる。
【0007】
持ち上げ方式の車両移動台車を使用する際に、前輪駆動車等である車両の前輪がロックされている場合には、持上げトロリによって車両の前輪を持ち上げることになる。この場合、車両を移動させるための推進力が車両に作用するときに、この推進力を受けて、車両の前輪が載置された持上げトロリが、車両の前輪と共に左右に若干操舵されてしまうおそれがある。このときには、意図しない方向に持上げトロリが操舵され、車両を移動させる作業性が低下することになる。
【0008】
また、特許文献3の車両移動装置においては、車両の2つの車輪を持ち上げることにより、車両を移動させる際に前輪の舵が左右に若干切れるときの問題は解消される。しかし、車両を移動させるための牽引車は、車両の車輪を持ち上げている被牽引車とは別体に構成されており、牽引車の駆動輪(前輪)は、車両の車輪から離れた位置に配置される。そのため、車両を移動させる際に、車両の車輪がスリップしやすく、牽引車の駆動輪による回転駆動力を地面等の移動面に効果的に伝達するためには更なる改良の余地がある。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、駆動ユニットによる回転駆動力を移動面に効果的に伝達し、車両を移動させる作業性を良好に保つことができる車両移動台車を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、車両における前輪又は後輪を構成する一対の車輪を持ち上げて、前記車両を移動させる車両移動台車であって、
第1移動ベースと、前記第1移動ベースに設けられ、前記車両における第1車輪を車長方向の前後から挟み込んで持ち上げることが可能な第1持ち上げ機構と、前記第1移動ベース及び第1持ち上げ機構の少なくとも一方に設けられた第1キャスタとを有する第1移動装置と、
前記第1移動ベースの側方に連結され、駆動源によって駆動される駆動車輪を有し、前記駆動車輪の回転によって前記第1移動装置を移動させる駆動ユニットと、
第2移動ベースと、前記第2移動ベースに設けられ、前記第1車輪に対して車幅方向に対向する位置に配置された第2車輪を車長方向の前後から挟み込んで持ち上げることが可能な第2持ち上げ機構と、前記第2移動ベース及び第2持ち上げ機構の少なくとも一方に設けられた第2キャスタとを有する第2移動装置と、
前記第1移動装置と前記第2移動装置とに連結され、前記第1移動装置と前記第2移動装置との間隔を変更可能に構成された連結部材と、を備える車両移動台車にある。
【発明の効果】
【0011】
前記一態様の車両移動台車においては、駆動ユニットが連結される第1移動装置と、第2移動装置とが、第1移動装置と第2移動装置との間隔を変更可能な連結部材によって連結されている。そして、車両移動台車によって車両を移動させる際に、車両における操舵可能な2つの車輪の回転がロックされているときには、この操舵可能な2つの車輪を第1移動装置及び第2移動装置によってそれぞれ持ち上げる。
【0012】
このとき、第1持ち上げ機構及び第2持ち上げ機構は、車両における第1車輪又は第2車輪を車長方向の前後から挟み込んで持ち上げる。これにより、第1車輪及び第2車輪を鉛直方向の上方へ直接ジャッキアップする必要がなく、第1車輪及び第2車輪を持ち上げる作業を迅速かつ簡単に行うことができる。そして、駆動ユニットによって第1移動装置を移動させるときには、第2移動装置も従動し、車両を移動させることができる。なお、操舵可能な車輪は、四輪操舵車両、フォークリフトのような特殊な車両でない限りは、前輪となる。
【0013】
また、連結部材によって第1移動装置と第2移動装置とが連結されていることにより、駆動ユニットの駆動車輪による回転駆動力が、第1移動装置及び第2移動装置に作用しても、第1移動装置及び第2移動装置が第1車輪及び第2車輪と共に意図せず左右に操舵されることを防止することができる。そのため、移動させる車両の、操舵可能な車輪の回転がロックされている場合であっても、車両移動台車によってこの車両を移動させる作業性を良好に保つことができる。
【0014】
また、駆動ユニットは、第1移動装置の第1移動ベースの側方に連結されている。そして、駆動ユニットによって車両移動台車を移動させるときに、第1移動装置の自重、及び第1車輪から第1移動装置に加わる車両の荷重を、第1移動装置から駆動ユニットの駆動車輪へ、駆動車輪が地面等の移動面に押さえ付けられる力として作用させることができる。これにより、車両移動台車によって車両を移動させるときに、駆動ユニットによる回転駆動力を移動面に効果的に伝達することができ、駆動車輪がスリップする可能性を極めて低くすることができる。
【0015】
それ故、前記一態様の車両移動台車によれば、駆動ユニットによる回転駆動力を移動面に効果的に伝達し、車両を移動させる作業性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態にかかる、車両移動台車を示す斜視図。
図2】実施形態にかかる、車両移動台車を示す平面図。
図3】実施形態にかかる、第1移動装置及び駆動ユニットを車幅方向から見た状態で示す側面図。
図4】実施形態にかかる、第1移動装置を車幅方向から見た状態で示す側面図。
図5】実施形態にかかる、第1移動装置を示す平面図。
図6】実施形態にかかる、駆動ユニットを示す平面図。
図7】実施形態にかかる、第2移動装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述した車両移動台車にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
本形態の車両移動台車1は、図1図3に示すように、車両6における前輪又は後輪を構成する一対の車輪61,62を持ち上げて、車両6を移動させるものである。車両移動台車1は、第1移動装置2、駆動ユニット3、第2移動装置4及び連結部材5を備える。図1及び図2に示すように、第1移動装置2は、第1移動ベース21と、第1移動ベース21に設けられ、車両6における第1車輪61を車長方向Lの前後から挟み込んで持ち上げることが可能な第1持ち上げ機構22と、第1持ち上げ機構22に設けられた複数の第1キャスタ26とを有する。
【0018】
図3に示すように、駆動ユニット3は、第1移動ベース21の車幅方向Wの側方に連結され、駆動源31によって駆動される駆動車輪32を有しており、駆動車輪32の回転によって第1移動装置2を移動させるよう構成されている。図1及び図2に示すように、第2移動装置4は、第2移動ベース41と、第2移動ベース41に設けられ、第1車輪61に対して車幅方向Wに対向する位置に配置された第2車輪62を車長方向Lの前後から挟み込んで持ち上げることが可能な第2持ち上げ機構42と、第2持ち上げ機構42に設けられた複数の第2キャスタ46とを有する。連結部材5は、第1移動装置2と第2移動装置4とに連結され、第1移動装置2と第2移動装置4との間隔を変更可能に構成されている。
【0019】
以下に、本形態の車両移動台車1について詳説する。
(車両移動台車1)
図1に示すように、車両移動台車1は、自動車製造工場において、車輪の取り付けが行われた車両6を移動させるために用いられる。車両6は、自走できない状態にある車両とし、完成車であっても未完成車であってもよい。車両移動台車1は、車輪を回転させずに車両6を運搬する搬送装置等の代わりに、車両6を1台ずつ個別に移動させるために用いられる。
【0020】
車両移動台車1は、車両6における2つの前輪又は2つの後輪のいずれかを持ち上げて車両6を移動させるものである。車両移動台車1は、大型車両、小型車両、フォークリフト等の種々の車両を移動させることができる。また、車両移動台車1は、通常の前輪操舵の車両のみならず、四輪操舵の車両を移動させることもできる。また、車両移動台車1は、オートマチックトランスミッション車両、マニュアルトランスミッション車両のいずれも移動させることができ、通常の自動車のみならず、ハイブリッド自動車、電気自動車等を移動させることもできる。
【0021】
車両移動台車1によって移動させる車両6においては、ハンドルを真っ直ぐにし、かつサイドブレーキを解除するとともにシフトポジションをニュートラルにする。そして、車両6が外部からの力を受ける際に、車両6の車輪が自由に回転できる状態を形成する。一方、車両6においては、前輪又は後輪の車輪の回転がロックされている場合も想定される。例えば、ハイブリッド自動車においては、セキュリティ上、キーをOFFしたとき、あるいはバッテリーの蓄電量がなくなったとき等には、電気的に車輪の回転がロックされることがある。本形態の車両移動台車1は、回転がロックされた車輪を持ち上げて車両6を移動させることができるものである。
【0022】
(第1移動装置2及び第2移動装置4)
図1及び図2に示すように、第1移動装置2の第1持ち上げ機構22及び第2移動装置4の第2持ち上げ機構42は、一対の当接部23,24又は43,44の間隔を縮小させるときに、車輪61,62を持ち上げることができるものである。第1持ち上げ機構22は、第1移動ベース21に設けられ、車両6における第1車輪61の外周面に車長方向Lの前方から当接する第1前側当接部23と、第1移動ベース21に設けられ、第1車輪61の外周面に車長方向Lの後方から当接する第1後側当接部24と、第1前側当接部23と第1後側当接部24との車長方向Lの間隔を縮小させる第1アクチュエータ25とを有する。
【0023】
第2持ち上げ機構42は、第2移動ベース41に設けられ、車両6における第2車輪62の外周面に車長方向Lの前方から当接する第2前側当接部43と、第2移動ベース41に設けられ、第2車輪62の外周面に車長方向Lの後方から当接する第2後側当接部44と、第2前側当接部43と第2後側当接部44との車長方向Lの間隔を縮小させる第2アクチュエータ45とを有する。第2持ち上げ機構42の構造は、第1持ち上げ機構22の構造と同様である。以下に、第1持ち上げ機構22の構造について説明する。
【0024】
図1及び図4に示すように、第1移動ベース21は、車長方向Lに長い形状に形成されており、第1前側当接部23及び第1後側当接部24は、第1移動ベース21における車長方向Lに並んで、第1移動ベース21から車幅方向Wの内側に向けて配置されている。第1前側当接部23及び第1後側当接部24は、第1移動ベース21から車幅方向Wの内側に向けて配置された軸部231,241と、軸部231,241の外周に回転自在に装着されたローラ部232,242とを有する。ローラ部232,242は、ベアリング等を介して軸部231,241の外周に装着されている。第1キャスタ26は、第1前側当接部23の軸部231における両端及び第1後側当接部24の軸部241における両端に取り付けられている。第1キャスタ26は、その回転軸の向きを水平方向の任意の方向に変更可能な自在キャスタによって構成されている。
【0025】
第1前側当接部23又は第1後側当接部24は、第1移動ベース21に対して車長方向Lにスライド可能である。また、第1アクチュエータ25の本体部は、第1移動ベース21に取り付けられており、第1アクチュエータ25の可動部は、第1移動ベース21に対してスライド可能な第1前側当接部23又は第1後側当接部24に取り付けられている。そして、第1アクチュエータ25の可動部の移動量を調整することにより、第2前側当接部43と第2後側当接部44との車長方向Lの間隔を調整することができる。
【0026】
第1アクチュエータ25は、油圧等を用いて推力を出力するシリンダーによって構成されている。第1アクチュエータ25は、電気信号を受けて動作するものとすることができる。この場合、第1移動装置2又は第2移動装置4には、第1アクチュエータ25を動作させるためのバッテリーが搭載される。また、連結部材5には、バッテリーから第1アクチュエータ25及び第2アクチュエータ45の両方に電力を供給するための電力供給ケーブルを配置することができる。この場合には、第1移動装置2と第2移動装置4とを分割する際には、電力供給ケーブルはコネクタ等によって取り外し可能とする。
【0027】
また、第1アクチュエータ25は、作業者による手動操作を受けて動作するものとしてもよい。この場合、第1アクチュエータ25は、油圧による推力を水平方向に作用させて、第1前側当接部23と第1後側当接部24との車長方向Lの間隔を縮小させるものとしてもよい。
【0028】
第1前側当接部23の軸部231と第1後側当接部24の軸部241との一方は、固定側当接部として第1移動ベース21に固定されている。第1前側当接部23の軸部231と第1後側当接部24の軸部241との他方は、可動側当接部として、第1アクチュエータ25の推力を受けて、第1移動ベース21に対して可動するよう構成されている。
【0029】
そして、図4に示すように、第1前側当接部23及び第1後側当接部24を第1車輪61の下に配置して、第1アクチュエータ25によって第1前側当接部23と第1後側当接部24との車長方向Lの間隔を縮小させるときには、第1前側当接部23及び第1後側当接部24における各ローラ部232,242が第1車輪61に接触して回転しながら、第1車輪61を持ち上げることができる。これにより、第1車輪61と第1前側当接部23及び第1後側当接部24との間に生じる摩擦を低減しつつ、円滑に第1車輪61を持ち上げることができる。そして、第1車輪61を鉛直方向の上方へ直接ジャッキアップする必要がなく、第1車輪61を持ち上げる作業を迅速かつ簡単に行うことができる。
【0030】
なお、第2前側当接部43、第2後側当接部44、第2アクチュエータ45及び第2キャスタ46の構成は、第1前側当接部23、第1後側当接部24、第1アクチュエータ25及び第1キャスタ26の構成と同様である。
【0031】
(駆動ユニット3)
図5図7に示すように、本形態の車両移動台車1は、第1移動装置2、第2移動装置4及び駆動ユニット3の3つに分割して収納できるものである。駆動ユニット3は、第1移動装置2に対して着脱可能である。駆動ユニット3が第1移動装置2に取り付けられた状態においては、駆動ユニット3は、第1移動装置2の車幅方向Wの側方に位置する。第1移動ベース21には、アタッチメント部27が設けられており、駆動ユニット3には、アタッチメント部27に取り付けられる取付部33が設けられている。取付部33は、駆動ユニット3の前方位置に設けられている。
【0032】
本形態においては、図1及び図2に示すように、駆動ユニット3の駆動車輪32が地面等の移動面Gとの間でスリップしにくくするために、駆動車輪32が第1移動ベース21の側方に配置される位置、及び駆動ユニット3が第1移動ベース21の側方に連結される位置に工夫をしている。具体的には、図4に示すように、駆動ユニット3の駆動車輪32の全体が車長方向Lに占める第1範囲A1は、第1持ち上げ機構22によって持ち上げられる、車両6における第1車輪61の全体が車長方向Lに占める第2範囲A2と重なる。また、駆動ユニット3が第1移動ベース21の側方に連結された車長方向Lの連結位置Pは、第2範囲A2内にある。これらの構成により、車両6の第1車輪61に作用する、車両6の重力を、駆動ユニット3の駆動車輪32に加えやすくすることができる。これにより、駆動車輪32がスリップしにくくなるとともに、駆動車輪32の回転駆動力を、車両6を移動させる駆動力として効果的に作用させることができる。
【0033】
アタッチメント部27は、第1移動ベース21に連結されて車幅方向Wの外側に引き出されたフレーム部271と、フレーム部271に設けられて、取付部33が取り付けられる被取付部272とを有する。また、本形態のフレーム部271は、車幅方向Wの外側に引き出されるとともに上方に屈曲して形成されている。
【0034】
駆動ユニット3は、車両移動台車1以外の台車等に設けられたアタッチメント部27に取付部33を取り付けることにより、車両移動台車1以外の台車等を移動させるために使用することもできる。
【0035】
図4に示すように、本形態においては、駆動ユニット3がアタッチメント部27を介して第1移動ベース21の側方に連結された車長方向Lの連結位置Pは、第1移動ベース21における、第1前側当接部23の中心軸線Cと第1後側当接部24の中心軸線Cとの車長方向Lの範囲内にある。また、駆動ユニット3における取付部33は、駆動車輪32の前端位置Xの上方に配置されている。そして、駆動ユニット3の取付部33が、第1移動ベース21のアタッチメント部27の被取付部272に取り付けられた状態において、取付部33と被取付部272との取付位置Yは、第1前側当接部23の中心軸線Cと第1後側当接部24の中心軸線Cとの車長方向Lの範囲内に配置される。
【0036】
また、駆動車輪32の前端位置Xは、第1前側当接部23の中心軸線Cと第1後側当接部24の中心軸線Cとの車長方向Lの範囲内に配置される。そして、駆動車輪32は、車両6の第1車輪61の側方に配置される。駆動ユニット3の車長方向Lの連結位置P、駆動ユニット3の取付部33の配置位置、及び駆動車輪32の前端位置Xの関係により、駆動車輪32の回転駆動力を車両6を移動させる駆動力として作用させる効果を、より顕著に得ることができる。
【0037】
図3に示すように、駆動ユニット3は、1つの駆動車輪32を有しており、1つの駆動車輪32を回転可能に支持するユニットボディ34と、ユニットボディ34に設けられた、作業者が把持するための操作ハンドル35とを有する。ユニットボディ34には、駆動ユニット3の姿勢を保つための複数の補助車輪36も設けられている。操作ハンドル35には、駆動源31であるモータの回転量を調整するための回転調整部が設けられている。また、操作ハンドル35の支柱部には、バッテリー、制御ボックス等を配置することができる。
【0038】
(連結部材5)
図1図2図5及び図7に示すように、第1移動装置2と第2移動装置4とは、連結部材5によって連結されるとともに、連結部材5において取り外しが可能である。連結部材5は、第1移動装置2に連結された第1連結部51と、第2移動装置4に連結され、第1連結部51と着脱可能な第2連結部52とを有する。第1連結部51及び第2連結部52は、車幅方向Wに長い長尺形状に形成されている。本形態においては、第1連結部51に比べて第2連結部52が長く形成されており、第2連結部52は、第1移動装置2の付近まで形成されている。また、第2連結部52には、第2連結部52を支え、第2連結部52が下方へ撓むことを抑制するための補助車輪53が設けられている。
【0039】
第2連結部52に補助車輪53が設けられていることにより、第1連結部51及び第2連結部52を介して、第1移動装置2と第2移動装置4とを連結する作業性を向上させることができる。
なお、第2連結部52に比べて第1連結部51が長く形成されていてもよい。そして、補助車輪53は、第1連結部51に形成されていてもよい。
【0040】
第1連結部51と第2連結部52とは、互いに抜き差し可能な構造に形成されている。第1連結部51には、第2連結部52の長尺方向における、第1連結部51の配置位置を固定するための固定具511が配置されている。第2連結部52の長尺方向における、第1連結部51の配置位置を変更することにより、車両移動台車1によって移動させる車両6の車幅に応じて、第1移動装置2及び第2移動装置4の車幅方向Wの配置位置を適切に調整することができる。
【0041】
連結部材5を第1連結部51と第2連結部52とから構成することにより、第1移動装置2と第2移動装置4との車幅方向Wの間隔の調整が容易になる。また、この構成により、車両移動台車1の全体をコンパクトにすることもできる。また、連結部材5は、収納する際に折り畳むことができる構造とすることもできる。
【0042】
また、本形態の車両移動台車1は、車両6の操舵可能な前輪を持ち上げて移動する。そして、連結部材5は、第1移動装置2及び第2移動装置4の前側に配置される。一方、車両移動台車1が、車両6の操舵不能な後輪を持ち上げて移動する場合には、連結部材5を取り外して車両移動台車1を使用してもよい。また、この場合には、連結部材5を、第1移動装置2及び第2移動装置4の後側に配置してもよい。
【0043】
本形態の第1移動装置2及び駆動ユニット3は、車両6の右側に配置される。これ以外にも、第1移動装置2及び駆動ユニット3は、車両6の左側に配置することもできる。
【0044】
(車両移動台車1の使用方法)
図5図7に示すように、車両移動台車1は、工場内等において保管する際には、第1連結部51が設けられた第1移動装置2、第2連結部52が設けられた第2移動装置4、及び駆動ユニット3の3つに分割した状態で保管することができる。これにより、工場内において車両移動台車1を収納するスペースを小さくすることができ、車両移動台車1の管理が容易になる。
【0045】
そして、車両移動台車1を使用する際には、第1移動装置2を第1車輪61の下方に配置するとともに、第2移動装置4を第2車輪62の下方に配置しつつ、第1連結部51と第2連結部52とを連結して、第1移動装置2と第2移動装置4とを組み立てる。また、第1移動装置2におけるアタッチメント部27の被取付部272に、駆動ユニット3における取付部33を取り付けて、第1移動装置2と駆動ユニット3とを組み立てる。
【0046】
第1車輪61及び第2車輪62は、車両6の前輪及び後輪のいずれであってもよく、例えば、前輪駆動車の前輪の回転がロックされているときには、この前輪を第1車輪61及び第2車輪62として、車両移動台車1によって持ち上げる。第1移動装置2が第1車輪61の下方に配置されたとき、又は車両移動台車1によって車両6の第1車輪61及び第2車輪62を持ち上げる前もしくは持ち上げた後には、駆動ユニット3が第1移動装置2に連結され、駆動車輪32が、車両6の第1車輪61の側方に配置される。
【0047】
車両移動台車1によって車両6を移動させるときには、作業者は、操作ハンドル35を把持し、回転調整部を操作して駆動ユニット3の駆動車輪32を駆動する。そして、作業者は、操作ハンドル35を左右に操舵することにより、車両6を移動させる方向を左右に変更することができる。駆動ユニット3が車両6に対する右側に位置する場合には、作業者が駆動ユニット3の操作ハンドル35を右側に操舵すると、車両6は、右側に位置する第1車輪61を中心に右側に旋回する。一方、この場合に、作業者が駆動ユニット3の操作ハンドル35を左側に操舵すると、車両6は、左側に位置する第2車輪62を中心に左側に旋回する。なお、駆動ユニット3が車両6に対する左側に位置する場合には、車両6の旋回は、前述した状態と左右逆の状態で行われる。
【0048】
(車両移動台車1の作用効果)
本形態の車両移動台車1は、駆動ユニット3を操作する作業者一人の力によって、自走できない状態にある車両6を、車両6の外部からの操作で移動させるものである。
車両移動台車1によって車両6を移動させる際に、車両6における操舵可能な2つの前輪の回転がロックされているときには、この操舵可能な2つの前輪を第1移動装置2及び第2移動装置4によってそれぞれ持ち上げる。
【0049】
このとき、第1持ち上げ機構22及び第2持ち上げ機構42は、車両6における第1車輪61又は第2車輪62を車長方向Lの前後から挟み込んで持ち上げる。これにより、第1車輪61及び第2車輪62を鉛直方向の上方へ直接ジャッキアップする必要がなく、第1車輪61及び第2車輪62を持ち上げる作業を迅速かつ簡単に行うことができる。そして、駆動ユニット3によって第1移動装置2を移動させるときには、第2移動装置4も従動し、車両6を移動させることができる。
【0050】
仮に、第1移動装置2と第2移動装置4とが分離されている場合に、駆動ユニット3の駆動車輪32による回転駆動力が、第1移動装置2及び第2移動装置4に作用したときには、回転駆動力を受けて、第1移動装置2及び第2移動装置4が、第1車輪61及び第2車輪62と共に左右に若干操舵されてしまうおそれがある。この場合には、第1移動装置2及び第2移動装置4に載置された車両6が意図しない方向に移動しようとし、車両6を移動させる作業性が低下することになる。
【0051】
これに対し、本形態の車両移動台車1においては、連結部材5によって第1移動装置2と第2移動装置4とが連結されている。これにより、駆動ユニット3の駆動車輪32による回転駆動力が第1移動装置2及び第2移動装置4に作用したときに、連結部材5の存在によって第1移動装置2及び第2移動装置4の操舵が拘束される。そのため、第1移動装置2及び第2移動装置4が意図せず左右に操舵されることを防止することができる。それ故、移動させる車両6の、操舵可能な車輪61,62の回転がロックされている場合であっても、車両移動台車1によってこの車両6を移動させる作業性を良好に保つことができる。
【0052】
なお、車両移動台車1によって、前輪及び後輪の車輪の回転がロックされていない車両6を移動させる場合には、第1移動装置2及び第2移動装置4は、車両6の前輪及び後輪のいずれを持ち上げることもできる。
【0053】
また、駆動ユニット3は、第1移動装置2の第1移動ベース21の側方に連結されている。そして、駆動ユニット3によって車両移動台車1を移動させるときに、第1移動装置2の自重、及び第1車輪61から第1移動装置2に加わる車両6の荷重を、第1移動装置2から駆動ユニット3の駆動車輪32へ、駆動車輪32が地面等の移動面Gに押さえ付けられる力として作用させることができる。なお、第1移動装置2と第2移動装置4とは連結部材5によって連結されているため、駆動車輪32には、第2移動装置4の自重も作用する。これにより、車両移動台車1によって車両6を移動させるときに、容量の小さな駆動源31を用いた場合であっても、駆動ユニット3による回転駆動力を移動面Gに効果的に伝達することができ、駆動車輪32がスリップする可能性を極めて低くすることができる。
【0054】
また、移動面Gが上り傾斜している場合であっても、車両6の自重を受けて駆動車輪32が移動面Gに押さえ付けられていることにより、車両移動台車1によって車両6を移動させることができる。また、移動面Gが下り傾斜している場合には、駆動ユニット3の駆動源31によって回生ブレーキが作用することにより、車両移動台車1の移動速度を適切に調整することができる。
【0055】
それ故、本形態の車両移動台車1によれば、駆動ユニット3による回転駆動力を移動面Gに効果的に伝達し、車両6を移動させる作業性を良好に保つことができる。
【0056】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0057】
1 車両移動台車
2 第1移動装置
21 第1移動ベース
22 第1持ち上げ機構
23 第1前側当接部
24 第1後側当接部
25 第1アクチュエータ
26 第1キャスタ
3 駆動ユニット
31 駆動源
32 駆動車輪
4 第2移動装置
41 第2移動ベース
42 第2持ち上げ機構
43 第2前側当接部
44 第2後側当接部
45 第2アクチュエータ
46 第2キャスタ
5 連結部材
51 第1連結部
52 第2連結部
53 補助車輪
6 車両
61 第1車輪
62 第2車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7