特許第6807316号(P6807316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807316
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】伸縮材、伸縮性部材及び衣料製品
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20201221BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20201221BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20201221BHJP
   A41D 31/18 20190101ALI20201221BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20201221BHJP
【FI】
   B32B25/08
   B32B7/022
   B32B27/08
   A41D31/18
   A41D31/02 C
【請求項の数】11
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-536495(P2017-536495)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2016075069
(87)【国際公開番号】WO2017034030
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-167640(P2015-167640)
(32)【優先日】2015年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-41417(P2016-41417)
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩康
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 栄一
(72)【発明者】
【氏名】新井 修晴
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳久
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−273147(JP,A)
【文献】 特開2004−050621(JP,A)
【文献】 特表平05−505569(JP,A)
【文献】 特開2015−120349(JP,A)
【文献】 特開平02−292038(JP,A)
【文献】 特開2000−000932(JP,A)
【文献】 特表2003−513159(JP,A)
【文献】 特表2008−540192(JP,A)
【文献】 特表2003−508254(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0286386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A41D31/00−31/32
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーを含むコア層と、
少なくとも一方向において前記コア層より高い10%引張応力を有し、且つミクロ相分離構造を形成する樹脂材料を含む、少なくとも1つのスキン層と、
を備える、伸縮材。
【請求項2】
前記コア層の両主面上にそれぞれ前記スキン層が設けられている、請求項1に記載の伸縮材。
【請求項3】
前記樹脂材料がブロックコポリマーを含有する、請求項1又は2に記載の伸縮材。
【請求項4】
前記コア層の厚みが、前記スキン層の厚み以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項5】
前記コア層の厚みTに対する前記スキン層の厚みTの比T/Tが、0.1以上1.0以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項6】
前記比T/Tが、0.2以上0.5以下である、請求項5に記載の伸縮材。
【請求項7】
少なくとも一方向において、
300%伸長時の引張応力が前記スキン層の引張降伏応力の110%以下であり、且つ、200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の伸縮材。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の伸縮材の前記スキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部と、前記伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、を備える、伸縮性部材。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、前記スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程を備える、伸縮性部材の製造方法。
【請求項10】
前記工程において、前記スキン層の一部を塑性変形させて、前記伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、前記スキン層が塑性変形した伸縮部と、を形成する、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項に記載の伸縮性部材を備える衣料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、弾性ウェブや弾性フィルムを形成可能な伸縮材に関する。また、本発明の他の一側面は、弾性ウェブや弾性フィルムとして好適に利用可能な伸縮性部材に関する。また、本発明の他の一側面は、伸縮材又は伸縮性部材を備える衣料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エラストマーコアにスキン層が積層されたエラストマーフィルム等の伸縮材が知られている。例えば、特許文献1には、エラストマー層と非弾性のスキン層とを含む多層エラストマー積層体が記載され、当該多層エラストマー積層体が衣料用途等に用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平5−501386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性ウェブ等の伸縮性部材には、衣料製品等への適用に際して他の部材との良好な接合性が求められている。
【0005】
また、一側面において、伸縮性部材は、伸縮部の伸びが不均一であると装着性や着用時の快適性を損なうおそれがあるため、伸長時に伸縮部の伸びが均一であることが求められている。
【0006】
また、他の側面において、伸縮性部材では、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、伸長時の伸縮部の幅が小さくなると、締め付け力が局所的に作用し易くなって着用時の快適性を損なうおそれがある。また、衣料製品への適用に際しては、繰り返しの使用による変形等も課題となる。
【0007】
また、他の側面において、弾性ウェブ等の伸縮性部材を採用した衣料製品(例えば、オムツ等の衛生品)では、長時間着用していてもフィット性が十分に維持されることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、少なくとも一方向においてコア層より高い10%引張応力を有し、且つミクロ相分離構造を形成する樹脂材料を含む少なくとも1つのスキン層と、を備える。
【0009】
このような側面においては、伸縮材の一部を延伸してスキン層の一部を塑性変形させることで、任意に伸縮部が形成された伸縮性部材を得ることができる。当該伸縮性部材は、伸縮部と伸縮材の層構造が維持された形状保持部とを備えるため、形状保持部において他の部材との接合性が十分に確保される。また、このような側面においては、スキン層がミクロ相分離構造を形成する樹脂材料を含むものであるため、延伸方向に均一にスキン層を塑性変形させることができる。スキン層が均一に塑性変形することで、形成される伸縮部は、伸長時の伸びの均一性に優れたものとなる。
【0010】
一態様に係る伸縮材は、コア層の両主面上にそれぞれスキン層が設けられていてよい。このような伸縮材では、両主面側の引張応力がより均一となり、伸縮部を設けたとき、不均一な収縮による反り等が防止される。また、このような伸縮材では、ロール状に巻き重ねたときにスキン層同士が接するため、伸縮材間(例えば、スキン層と、該スキン層上に巻き重ねられたコア層との間)でのブロッキングが防止され、巻き出し時の作業性及び伸縮材の保存安定性が良好になる。
【0011】
一態様において、樹脂材料はブロックコポリマーを含有するものであってよい。このような伸縮材では、ブロックコポリマーによって容易にミクロ相分離構造を形成できるため、上述の効果をより顕著に得ることができる。
【0012】
一態様において、コア層の厚みはスキン層の厚み以上であってよい。スキン層がミクロ相分離構造を有する伸縮材においてコア層とスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時における伸縮部の狭幅化(ネッキング)が十分に抑制される。すなわち、この態様の伸縮材から得られる伸縮性部材では、伸長時のネッキングが小さくなるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性が実現できる。また、本態様に係る伸縮材は、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0013】
一態様において、コア層の厚みTに対するスキン層の厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下であってよく、0.2以上0.5以下であってよい。スキン層がミクロ相分離構造を有する伸縮材では、コア層とスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時のネッキングがより顕著に抑制される。このため、本態様に係る伸縮材によれば、着用時の快適性に一層優れる衣料製品を提供できる。また、本態様に係る伸縮材は、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0014】
一態様に係る伸縮材は、少なくとも一方向において、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、伸長に要する引張応力がスキン層の引張降伏応力より著しく大きいと、伸長時に形状保持部が塑性変形して元の形状を維持できず、繰り返しの使用に支障がある場合がある。300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であると、実用上有用な200%程度の伸張を行っても、形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が一層良好となり、繰り返しの使用が可能となる。
【0015】
一態様に係る伸縮材は、少なくとも一方向において、200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、形状保持部の幅は一定幅に維持され、伸縮部は伸長に応じて狭幅化されるが、伸長時に伸縮部の幅が著しく狭くなると、形状保持部の幅と伸縮部の幅の差が大きくなってしまう。そしてこのような場合、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、装着性が低下したり、締め付け力が局所的に作用し易くなって着用時の快適性を損なうおそれがある。この態様に係る伸縮材では、200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下であるため、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用時の快適性を十分に得ることができる。
【0016】
本発明の他の一側面に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、少なくとも一方向においてコア層より低い引張降伏応力を有する、少なくとも1つのスキン層と、を備え、少なくとも一方向において、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であり、且つ、200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下である。
【0017】
このような側面においては、伸縮材の300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であるため、実用上有用な200%程度の伸張を行っても形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が良好となり、繰り返しの使用が可能となる。また、このような側面においては、伸縮材の200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下であるため、伸長時の伸縮部の狭幅化(ネッキング)の程度が十分に小さく、優れた装着性及び着用時の快適性が実現される。
【0018】
一態様に係る伸縮材は、コア層の両主面上にそれぞれスキン層が設けられていてよい。このような伸縮材では、各主面側の伸縮率が均一となり、収縮時の反り等が防止される。
【0019】
一態様において、コア層の厚みはスキン層の厚み以上であってよい。上述の引張応力及び縮み率の関係を備える伸縮材においてコア層とスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時における伸縮部のネッキングがより顕著に抑制される。すなわち、この態様の伸縮材から得られる伸縮性部材では、伸長時のネッキングが一層小さくなるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性が実現できる。また、本態様に係る伸縮材は、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0020】
一態様において、コア層の厚みTに対するスキン層の厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下であってよく、0.2以上0.5以下であってよい。上述の引張応力及び縮み率の関係を備える伸縮材では、コア層とスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時のネッキングが一層顕著に抑制される。このため、本態様に係る伸縮材によれば、着用時の快適性に一層優れる衣料製品を提供できる。また、本態様に係る伸縮材は、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0021】
本発明の他の一側面は、上記伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部と、伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、を備える伸縮性部材に関する。このような伸縮性部材は上述した伸縮材から作製することができ、形状保持部において他の部材との良好な接合性が得られる。
【0022】
本発明の他の一側面は、上記伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程を備える、伸縮性部材の製造方法に関する。
【0023】
一態様において、上記工程では、スキン層の一部を塑性変形させて、伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、スキン層が塑性変形した伸縮部と、を形成してよい。
【0024】
本発明の他の一側面は、上記伸縮性部材を備える衣料製品に関する。
【0025】
本発明の他の一側面に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、少なくとも一方向においてコア層より高い10%引張応力を有する少なくとも一つのスキン層と、を備え、一方向に300%伸長してスキン層を塑性変形させた伸縮部を形成したとき、当該伸縮部は、160%伸長させて40℃で1時間保持する伸長試験によるひずみが25%以下である。
【0026】
このような伸縮材によれば、伸縮材の一部を延伸してスキン層の一部を塑性変形させることで、任意に伸縮部が形成された伸縮性部材を得ることができる。そして、当該伸縮性部材は、伸縮部が伸長状態で保持された場合でもひずみが生じ難いため、衣料製品へ適用したとき、長時間の着用によっても優れたフィット性を十分に維持することができる。
【0027】
また、伸縮性部材は、伸縮部と、伸縮材の層構造を維持した形状保持部と、を備えたものとすることができる。このような伸縮性部材を衣料製品へ適用した場合、着用時には伸縮部が伸長し、形状保持部はその形状が維持される。このため、上記伸縮性部材は、形状保持部において他の部材と接合することで、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0028】
一態様に係る伸縮材は、コア層の両主面上にそれぞれスキン層が設けられていてよい。このような伸縮材では、両主面側の引張応力がより均一となり、伸縮部を設けたとき、不均一な伸縮による反り等が防止される。また、このような伸縮材では、ロール状に巻き重ねたときにスキン層同士が接するため、伸縮材間でのブロッキングが防止され、巻き出し時の作業性及び伸縮材の保存安定性が良好になる。
【0029】
一態様において、コア層の厚みは、スキン層の厚み以上であってよい。コア層及びスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時における伸縮部の狭幅化(ネッキング)が抑制される傾向がある。すなわち、この態様の伸縮材から得られる伸縮性部材では、伸長時のネッキングが小さくなるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性が実現できる。
【0030】
一態様において、コア層の厚みTに対するスキン層の厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下であってよい。コア層及びスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時のネッキングが顕著に抑制される傾向がある。このため、本態様の伸縮材によれば、着用時の快適性に優れた衣料製品を提供できる。
【0031】
一態様に係る伸縮材は、少なくとも一方向において、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、伸長に要する引張応力がスキン層の引張降伏応力より著しく大きいと、伸長時に形状保持部のスキン層が塑性変形して元の形状を維持できず、繰り返しの使用に支障がある場合がある。300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であると、実用上有用な200%程度の伸長を行っても、形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が一層良好となり、繰り返しの使用によっても良好な接合性が維持される。
【0032】
本発明の他の一側面に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、少なくとも一方向においてコア層より高い10%引張応力を有する少なくとも一つのスキン層と、を備え、エラストマーが分岐状ポリマーを含有する。
【0033】
このような伸縮材によれば、伸縮材の一部を延伸してスキン層の一部を塑性変形させることで、任意に伸縮部が形成された伸縮性部材を得ることができる。そして、当該伸縮性部材は、コア層のエラストマーが分岐状ポリマーを含有するため、伸縮部を伸長状態で保持してもひずみが生じ難いため、着用時の優れたフィット性が長時間に亘って十分に維持される。
【0034】
また、伸縮性部材は、伸縮部と、伸縮材の層構造を維持した形状保持部と、を備えたものとすることができる。このような伸縮性部材を衣料製品へ適用した場合、着用時には伸縮部が伸長し、形状保持部はその形状が維持される。このため、上記伸縮性部材は、形状保持部において他の部材と接合することで、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0035】
一態様において、エラストマーは、直鎖状ポリマーを更に含有していてよい。これによりフィルムへの加工性が向上する等の効果が奏される。
【0036】
一態様に係る伸縮材は、コア層の両主面上にそれぞれスキン層が設けられていてよい。このような伸縮材では、両主面側の引張応力がより均一となり、伸縮部を設けたとき、不均一な伸縮による反り等が防止される。また、このような伸縮材では、ロール状に巻き重ねたときにスキン層同士が接するため、伸縮材間でのブロッキングが防止され、巻き出し時の作業性及び伸縮材の保存安定性が良好になる。
【0037】
一態様において、コア層の厚みは、スキン層の厚み以上であってよい。コア層及びスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時における伸縮部の狭幅化(ネッキング)が抑制される傾向がある。すなわち、この態様の伸縮材から得られる伸縮性部材では、伸長時のネッキングが小さくなるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性が実現できる。
【0038】
一態様において、コア層の厚みTに対するスキン層の厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下であってよい。コア層及びスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、伸長時のネッキングが顕著に抑制される傾向がある。このため、本態様の伸縮材によれば、着用時の快適性に優れた衣料製品を提供できる。
【0039】
一態様に係る伸縮材は、少なくとも一方向において、300%伸長時の引張応力が前記スキン層の引張降伏応力の110%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、伸長に要する引張応力がスキン層の引張降伏応力より著しく大きいと、伸長時に形状保持部のスキン層が塑性変形して元の形状を維持できず、繰り返しの使用に支障がある場合がある。300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であると、実用上有用な200%程度の伸長を行っても、形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が一層良好となり、繰り返しの使用によっても良好な接合性が維持される。
【0040】
本発明の他の一側面は、上記伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部と、伸縮材の層構造が維持された形状保持部と、を備える、伸縮性部材に関する。このような伸縮性部材は、繰り返しの使用によっても伸縮部の弾性が十分に維持されるため、衣料製品へ適用した際に、着用時のフィット性が十分に維持される。
【0041】
本発明の他の一側面は、上記伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程を備える、伸縮性部材の製造方法に関する。
【0042】
一態様において、上記工程では、スキン層の一部を塑性変形させて、伸縮材の層構造が維持された形状保持部とスキン層が塑性変形した伸縮部とを形成してよい。
【0043】
本発明の他の一側面は、上記伸縮材又は上記伸縮性部材を備える、衣料製品に関する。
【発明の効果】
【0044】
本発明の一側面によれば、衣料製品等への適用に際して他の部材との良好な接合性が得られる伸縮性部材を提供することができる。
【0045】
また、他の一側面によれば、伸長時の伸びの均一性に優れた伸縮部を有する伸縮性部材を提供することができる。また、他の一側面によれば、伸長による形状保持部の変形が十分に防止され、繰り返しの使用が可能な伸張性部材を提供することができる。また、他の一側面によれば、締め付け力の局所的な作用が防止され、優れた装着性及び着用時の快適性を実現可能な、伸縮性部材を提供することができる。
【0046】
また、本発明の他の一側面によれば、上述の伸縮性部材を作製するための伸縮材、伸縮性部材の製造方法、及び伸縮性部材を備える衣料製品が提供される。
【0047】
また、本発明の他の一側面においては、衣料製品等への適用に際して、長時間着用しても良好なフィット性を十分に維持できる伸縮性部材が提供される。また、本発明の他の一側面においては、衣料製品等への適用に際して、他の部材との良好な接合性を得ることが可能な伸縮性部材が提供される。
【0048】
また、本発明の他の一側面においては、上述の伸縮性部材を作製するための伸縮材、及び伸縮性部材の製造方法が提供される。
【0049】
さらに、本発明の他の一側面においては、上述の伸縮材又は伸縮性部材を備える衣料製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、伸縮材の一態様を示す平面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿った拡大断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、伸縮材の延伸処理の一態様を説明するための図である。
図4図4は、伸縮性部材の一態様を示す平面図である。
図5図5は、伸縮材及び伸縮性部材の伸張率と引張応力との関係を示す図である。
図6図6は、伸縮材の一態様を示す平面図である。
図7図7は、図6のII−II線に沿った断面を示す拡大断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、伸縮材の延伸処理の一態様を説明するための図である。
図9図9は、伸縮性部材の一態様を示す平面図である。
図10図10(a)、図10(b)及び図10(c)は、伸縮部の伸長試験を説明するための図である。
図11図11は、伸縮材及び伸縮性部材の伸長率と引張応力との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0052】
[第一の実施形態]
本発明に係る伸縮材、伸縮性部材及び衣料製品の好適な第一の実施形態について以下に説明する。
【0053】
(伸縮材)
本実施形態に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、少なくとも一方向においてコア層より低い引張降伏応力を有するスキン層と、を備える。
【0054】
伸縮材は、延伸処理によりスキン層の少なくとも一部を塑性変形させることで伸縮部を有する伸縮性部材を形成できる。また、伸縮性部材の形成に際しては、スキン層の一部のみを塑性変形させて、伸縮材の層構造が維持された部分(形状保持部)を設けてよい。形状保持部を有する伸縮性部材は、当該形状保持部において他の部材との良好な接合性が確保される。
【0055】
本実施形態において、伸縮材は、コア層の両主面上にそれぞれスキン層が積層された層構造(スキン層/コア層/スキン層)を有していてよい。このような伸縮材では、両主面側の引張応力がより均一となり、伸縮部を設けたとき、不均一な収縮による反り等が防止される。また、このような伸縮材では、ロール状に巻き重ねたときにスキン層同士が接するため、伸縮材間(例えば、スキン層と、該スキン層上に巻き重ねられたコア層との間)でのブロッキングが防止され、巻き出し時の作業性及び伸縮材の保存安定性が良好になる。伸縮材の層構造はこれに限定されず、例えば伸縮材は、コア層の一方面側のみにスキン層が積層された層構造(コア層/スキン層)を有していてよく、スキン層の両主面上にそれぞれコア層が積層された層構造(コア層/スキン層/コア層)を有していてもよい。
【0056】
本実施形態において、コア層とスキン層とは直接的に接着されていてよく、中間層を介して間接的に接着されていてもよい。中間層は、例えば、色材を含む修飾層、コア層及びスキン層を接合する接着剤層等であってよい。コア層とスキン層の接着態様は特に限定されず、例えばコア層及びスキン層を構成する樹脂材料同士が融着していてよく、コア層及びスキン層の間に介在する接着剤層により接着されていてよい。
【0057】
本実施形態において、コア層の厚みTはスキン層の厚みT以上であってよい。このような伸縮材では、伸長時における伸縮部の狭幅化(ネッキング)がより顕著に抑制される。すなわち、このような伸縮材から得られる伸縮性部材では、伸長時のネッキングが小さくなるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性が実現できる。特に、スキン層が後述するミクロ相分離構造を有する場合、コア層とスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、ネッキングがより顕著に抑制され、着用時の快適性が一層向上する。また、このような伸縮材では、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0058】
本実施形態において、コア層の厚みTに対するスキン層の厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下であってよく、0.2以上0.5以下であってよい。このような伸縮材によれば、伸長時のネッキングがより顕著に抑制されるため、着用時の快適性に一層優れる衣料製品を提供できる。特に、スキン層が後述するミクロ相分離構造を有する場合、コア層とスキン層の厚みの関係を上記のようにすることで、ネッキングがより顕著に抑制され、着用時の快適性が一層向上する。また、このような伸縮材では、伸長時の伸びが一層均一になる傾向がある。
【0059】
なお、伸縮材に複数のスキン層が積層されているとき、スキン層の厚みTは各スキン層の厚みの合計を示す。また、伸縮材に複数のコア層が積層されているとき、コア層の厚みTは各コア層の厚みの合計を示す。
【0060】
本実施形態において、伸縮材は、少なくとも一方向での300%伸長時の引張応力が、同方向でのスキン層の引張降伏応力の110%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、伸長に要する引張応力がスキン層の引張降伏応力より著しく大きいと、伸長時に形状保持部が塑性変形して元の形状を維持できず、繰り返しの使用に支障がある場合がある。300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力を大きく越えなければ、実用上有用な200%程度の伸張を行っても形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が一層良好となり、繰り返しの使用が可能となる。このような伸縮材では、300%伸長時の引張応力とスキン層の引張降伏応力とが上記関係を満たす方向に延伸して伸縮部を形成してよい。
【0061】
なお、本実施形態において、伸縮材の300%伸長時の引張応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。また、スキン層の引張降伏応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。なお、伸縮材が複数のスキン層を有するとき、各スキン層の引張降伏応力のうち最大のものを、「スキン層の引張降伏応力」とする。スキン層の引張降伏応力は、伸縮材からスキン層のみを剥離して測定してよく、スキン層と同等の試験片を用いて測定してよい。なお、簡易な判別方法として、伸縮材の引張応力試験において、全てのスキン層が塑性変形する降伏点をスキン層の引張降伏応力と見做すこともできる。
【0062】
本実施形態において、伸縮材は、少なくとも一方向に200%伸張させた時、伸張方向に直交する幅方向への縮み率(伸長前の幅に対する、伸長により縮んだ幅の比率)が、30%以下であってよく、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、形状保持部の幅は一定幅に維持され、伸縮部は伸長に応じて狭幅化される。ここで、伸長時に伸縮部の幅が著しく狭くなると、形状保持部の幅と伸縮部の幅の差が大きくなってしまう。そしてこのような場合、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、装着性が低下したり、締め付け力が局所的に作用し易くなって着用時の快適性を損なうおそれがある。上記伸縮材では、200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下であることで、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用時の快適性を十分に確保することができる。このような伸縮材では、縮み率が上記範囲となる方向に延伸して伸縮部を形成してよい。
【0063】
なお、本実施形態において、200%伸長時の伸張方向に直交する幅方向への縮み率は、以下の方法で測定される値を示す。まず、伸張方向及びそれに直交する幅方向に沿って長辺及び短辺を有する長方形状の試験片(幅50mm、長さ50mm以上)を準備する。試験片の伸張方向の両端を延伸部分の長さが50mmとなるように挟持し、伸張方向に200%延伸させる。試験片の初期幅をL1、200%延伸時の試験片の最小幅をL2としたとき、縮み率(%)は、(L2/L1)×100で算出される。
【0064】
以下に、本実施形態に係る伸縮材を構成する各層について詳述する。
【0065】
<コア層>
本実施形態に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層を備える。コア層は、伸縮性部材の弾性機能を担う層であり、所望のゴム弾性を有するようにその組成等が選択されていてよい。
【0066】
コア層に含まれるエラストマーはゴム弾性を有する材料であり、コア層はスキン層より低い10%引張応力を有する。なお、本実施形態において、10%引張応力は10% Modulusともいい、10%伸長させるのに必要な単位面積当たりの力であり、JIS K 6251に準拠して測定される。
【0067】
コア層の10%引張応力は、例えば0.5MPa以下であってよく、0.3MPa以下であってよく、0.1MPa以下であってよい。これにより、小さい応力にも追随して伸びるため、取扱い性に優れる伸縮性部材が得られる。なお、コア層は、少なくとも一方向において上記範囲の10%引張応力を有していてよい。また、コア層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の10%引張応力を有していてよい。
【0068】
コア層の300%引張応力は、例えば4MPa以下であってよく、2MPa以下であってよい。これにより、小さい応力にも追随して伸びるため、取扱い性に優れる伸縮性部材が得られる。また、コア層の300%引張応力は、例えば1MPa以上であってよく、1.5MPa以上であることが好ましい。これにより、際限なく伸びることが抑制される。なお、コア層は、少なくとも一方向において上記範囲の300%引張応力を有していてよい。また、コア層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の300%引張応力を有していてよい。
【0069】
コア層の厚みTは、例えば10μm以上であってよく、15μm以上であることが好ましい。また、コア層の厚みTは、十分な効果を得つつ材料費を低減する観点からは、例えば100μm以下であってよく、50μm以下であってよく、35μm以下であってもよい。
【0070】
コア層は、エラストマーを含む樹脂材料(以下、「樹脂材料(A)」ともいう。)で構成されていてよい。エラストマーの種類は特に限定されず、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、ポリウレタン、エチレンコポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー)、プロピレンオキシド(PO)等が挙げられる。
【0071】
コア層を構成する樹脂材料(A)は、上記以外の他の成分を含んでいてよい。例えば、樹脂材料(A)は、剛化剤(例えば、ポリビニルスチレン、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、クマロン−インデン樹脂)、粘度降下剤、可塑剤、粘着付与剤(例えば、脂肪族炭化水素粘着付与剤、芳香族炭化水素粘着付与剤、テルペン樹脂粘着付与剤、水素化テルペン樹脂粘着付与剤)、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、接着剤、粘着防止剤、スリップ剤、熱安定剤、光安定剤、発泡剤、ガラスバブル、スターチ、金属塩、マイクロファイバー等を含んでいてよい。
【0072】
<スキン層>
本実施形態に係る伸縮材は、少なくとも一方向においてコア層より高い10%引張応力を有する、スキン層を備える。スキン層は、伸縮材においてコア層を保護する機能を有し、伸縮性部材の製造時には延伸処理によって塑性変形される。このとき、コア層は弾性変形し、スキン層のみが塑性変形することで、延伸部分が伸縮性部材の伸縮部として利用可能となる。なお、スキン層は、伸縮性部材において、形状保持部の形状を維持する機能を有していてよい。
【0073】
スキン層の10%引張応力は、例えば1MPa以上であってよく、2MPa以上であってよい。これにより、小さい引張応力で変形しなくなり、伸縮材の取扱い性が良好となる。また、スキン層の10%引張応力は、例えば15MPa以下であってよく、10MPa以下であってよい。これにより、スキン層を塑性変形させるための応力を小さくでき、加工性が向上する。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の10%引張応力を有していてよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の10%引張応力を有していてよい。なお、本実施形態において、スキン層の10%引張応力は、JIS K 6251に準拠して測定される。
【0074】
スキン層の引張降伏応力は、例えば2N/25mm以上であってよく、好ましくは2.5N/25mm以上、より好ましくは3N/25mm以上であってよい。また、スキン層の引張降伏応力は、例えば10N/25mm以下であってよく、好ましくは7N/25mm以下であってよい。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の引張降伏応力を有していてよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の引張降伏応力を有していてよい。なお、スキン層の引張降伏応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。
【0075】
スキン層の引張降伏ひずみは、例えば20%以下であってよく、好ましくは15%以下であってよい。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の引張降伏ひずみを有していてよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の引張降伏ひずみを有していてよい。本実施形態において、スキン層の引張降伏ひずみは、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。
【0076】
スキン層の厚みTは、上述の好適な引張特性が容易に得られること、製造が容易となることなどの観点から、例えば2μm以上であってよく、5μm以上であることが好ましい。また、スキン層の厚みTは、十分な効果を得つつ材料費を低減する観点から、例えば30μm以下であってよく、20μm以下であることが好ましい。
【0077】
スキン層を構成する樹脂材料(以下、「樹脂材料(B)」ともいう。)は、ミクロ相分離構造を形成するものであってよい。このようなスキン層では、塑性変形しやすい相構造がスキン層全体に緻密に分布しているため、延伸処理によって均一に塑性変形させることができる。これにより、形成される伸縮部は、伸長時の伸びの均一性に優れたものとなる。またスキン層がミクロ相分離構造を有することで、伸長時のネッキングがより顕著に抑制され、着用時の快適性に一層優れる伸縮性部材が実現される。
【0078】
さらに、このようなスキン層を用いると、100%延伸等の比較的低い延伸度合においても伸びが均一になることから、100%、150%、200%、250%、300%等の任意の延伸度合で伸縮材の延伸処理を行うことができる。なお、延伸処理時の延伸度合が異なると、形成される伸縮部の弾性、引張応力等の機械的特性が変化する。すなわち、この態様では、延伸処理時の延伸度合を変化させることで、同一の伸縮材から異なる特性を有する伸縮部を形成することができる。このため、例えば、衣料製品の部位によって求められる特性が異なる場合でも、所望の特性に応じて延伸度合を調整しすることで、同一の伸縮材を各部位に適用できる。
【0079】
樹脂材料(B)が形成するミクロ相分離構造は、例えば、ラメラ構造、ジャイロイド構造、シリンダ構造、BCC構造等であってよい。ミクロ相分離構造は、例えばブロックコポリマーにより形成されたものであってよく、ポリマーブレンドにより形成されたものであってよい。
【0080】
樹脂材料(B)はブロックコポリマーを含むものであってよい。ブロックコポリマーとしては、ミクロ相分離構造を形成するブロックコポリマーが好ましい。ブロックコポリマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン系、エチレンテレフタレートなどのエステル系、スチレンなどのスチレン系等を要素として含むものが挙げられる。
【0081】
樹脂材料(B)は2種以上のポリマーを含むポリマーブレンドによりミクロ相分離構造を形成していてもよい。樹脂材料(B)に含まれるポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0082】
樹脂材料(B)は、上記以外の他の成分を含んでいてよい。例えば、鉱物油増量剤、静電防止剤、顔料、染料、粘着防止剤、スターチ、金属塩、安定剤等を含んでいてよい。
【0083】
本実施形態に係る伸縮材の製造方法は、特に限定されず、例えば、樹脂材料を用いた一般的な多層フィルム成形技術を適用できる。
【0084】
本実施形態に係る伸縮材は、例えば、コア層を構成する樹脂材料(A)及びスキン層を構成する樹脂材料(B)の同時押出成形により、コア層とスキン層とが一体的に成形されたものであってよい。同時押出成形の条件は、樹脂材料(A)及び樹脂材料(B)の組成等に応じて適宜調整してよい。また、本実施形態に係る伸縮材は、樹脂材料(A)を含むA層と樹脂材料(B)を含むB層とをそれぞれ成形し、積層させることによって製造してもよい。
【0085】
(伸縮性部材)
本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部(活性化部ともいう)を備える。また、本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮材の層構造が維持された形状保持部(未活性化部ともいう)をさらに備えていてよい。
【0086】
本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮部がゴム弾性体として機能するため、衣料製品等に適用される弾性ウェブとして好適に用いることができる。また、本実施形態に係る伸縮性部材は、形状保持部において他の部材と接合させることで、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0087】
伸縮性部材は、伸長時の伸びが不均一であると、装着性及び着用時の快適性が損なわれるおそれがある。本実施形態に係る伸縮性部材は、上述の伸縮材から形成されるため、伸縮部の伸びの均一性に優れたものになり得る。
【0088】
また、伸縮性部材は、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、伸長時の伸縮部の幅が小さくなると、締め付け力が局所的に作用し易くなって着用時の快適性を損なうおそれがある。本実施形態に係る伸縮性部材は、上述の伸縮材から形成されるため、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用時の快適性が十分に確保され得る。
【0089】
また、伸縮性部材では、衣料製品への適用に際して繰り返しの使用による変形が課題となり得る。本実施形態に係る伸縮性部材は、上述の伸縮材から形成されるため、繰り返しの使用によっても形状保持部が元の形状を維持でき、他の部材との良好な接合性が維持され得る。
【0090】
伸縮部は、伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する。すなわち、伸縮部は、コア層と、塑性変形したスキン層とを含むものであってよい。伸縮部において、塑性変形したスキン層は連続した一層として存在していてよく、延伸により分断されていてもよい。
【0091】
形状保持部は、伸縮材の層構造を有する。すなわち、形状保持部は、コア層とスキン層とを含むものであってよい。形状保持部は、伸縮材の未延伸部分ということもできる。
【0092】
伸縮性部材は、使用用途に応じて伸縮材に延伸処理を施して製造される。伸縮性部材の用途は特に限定されず、例えば衣料用途に用いてよい。より具体的には、伸縮性部材は、例えば、使い捨ておむつ、大人用失禁当て、シャワーキャップ、手術ガウン、帽子及びブース、使い捨てパジャマ、競技用肩掛け、クリーンルーム用衣類、帽子用ヘッドハンド又はバイザー(visor)等、足首バンド(例えばパンスのカウスプロテクター)、手首バンド、ゴムパンシ、ウエットスーツ等に用いられる。
【0093】
伸縮性部材の製造方法は、伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程(伸縮材の少なくとも一部を活性化させる工程ともいう)を備えるものであってよい。伸縮材をスキン層が塑性変形するまで延伸させることによって、伸縮部が形成される。塑性変形は、一般的にはスキン層の引張降伏ひずみを超えて延伸することで達成される。
【0094】
伸縮性部材の製造方法では、スキン層の一部のみを塑性変形させることにより、伸縮部と形状保持部とを形成してもよい。
【0095】
伸縮材の延伸方法は特に限定されない。例えば、伸縮材の両端を所定幅で挟持して延伸することで、所定幅の2つの形状保持部(挟持された未延伸部分)と、形状保持部の間に形成された伸縮部と、を備える伸縮性部材が形成される。
【0096】
伸縮材の延伸時の温度条件は特に限定されず、室温であってよい。伸縮材の延伸倍率は、スキン層の引張降伏ひずみ以上であればよく、実用上想定される延伸倍率以上であってよい。また、上述のとおり、延伸倍率によって伸縮部の機械的特性が変化し得ることから、所望の特性に応じた延伸倍率としてもよい。
【0097】
次に、図面を参照しつつ本実施形態の好適な一態様について説明する。
【0098】
図1は、本実施形態に係る伸縮材の一態様を示す平面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った拡大断面図である。図1及び図2に示すとおり、伸縮材10は、コア層1と、コア層1の両主面上にそれぞれ設けられたスキン層2a及びスキン層2bを備えている。
【0099】
伸縮材10において、コア層1の厚みTは、スキン層2a及びスキン層2bの総厚みT以上であり、コア層1の厚みTに対するスキン層2a及びスキン層2bの総厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下である。
【0100】
伸縮材10において、スキン層2a及びスキン層2bはいずれもミクロ相分離構造を形成する樹脂材料を含んで構成されている。スキン層2a及びスキン層2bは、塑性変形しやすい相構造がスキン層全体に緻密に分布しているため、延伸処理によって均一に塑性変形させることができる。このため、伸縮材10から形成される伸縮部は、伸長時の伸びの均一性に優れたものとなる。
【0101】
伸縮材10は平面図において略長方形状であり、その長手方向に延伸処理されることで伸縮性部材として機能する。スキン層2a及びスキン層2bを構成する樹脂材料はその組成が互いに略同一である。また、スキン層2a及びスキン層2bの長手方向における引張降伏応力は略同一である。伸縮材10を長手方向に延伸することで、スキン層2a及びスキン層2bが塑性変形し、伸縮部が形成される。
【0102】
伸縮材10の長手方向における300%伸長時の引張応力は、スキン層2aの引張降伏応力及びスキン層2bの引張降伏応力の110%以下である。これにより、実用上有用な200%程度の伸長時を行っても、後述する形状保持部が元の形状を維持でき、他の部材との良好な接合性が維持される。
【0103】
図3(a)及び図3(b)は、伸縮材の延伸処理の一態様を説明するための図である。本態様では、伸縮材10の長手方向の中央部の領域3aと末端の領域3b及び領域3cにおいて長方形状の挟持部材で伸縮材10を挟持し、領域3aを固定して領域3b及び領域3cを長手方向に沿って引張することによって、領域3a及び領域3bの間、並びに領域3a及び領域3cの間を延伸させる。
【0104】
図3(b)は延伸時の伸縮材の状態を示しており、挟持部材で挟持された領域3a、3b及び3cに対応する形状保持部4a、4b及び4cは、伸縮材10の形態が維持されており、領域3a及び領域3bの間並びに領域3a及び領域3cの間の延伸部5a及び5bでは、伸縮材10が延伸され、伸縮材10のスキン層が塑性変形される。
【0105】
伸縮材10は、長手方向に200%伸長させた時、長手方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下である。なお、「縮み率」は、伸長前の幅L2に対する、伸長により縮んだ幅(伸長前の幅から伸長時の最小幅を引いた値(L2−L1))の比(L2−L1)/L2を示す。また、「200%伸長時」とは、伸長させる部分の初期の長さL3に対して、伸長時の長さL4が200%であることを示す。
【0106】
図4は、本実施形態に係る伸縮性部材の一態様を示す平面図である。伸縮性部材20は、伸縮材10の層構造が維持された形状保持部14と、形状保持部14の間に形成された伸縮部15とを備える。伸縮性部材20は、長手方向に引張したとき、伸縮部15が伸長し、形状保持部14はその形状が保持される。このため、伸縮性部材20では、形状保持部14で他の部材と接合させることにより、他の部材との良好な接着性が得られる。
【0107】
図5は、一態様に係る伸縮材及び伸縮性部材の伸張率と引張応力との関係を示す図である。図5において、線51は、伸縮材の伸張率と引張応力との関係を示す。線52は、伸縮材を300%伸長させて形成された伸縮性部材を伸張させたときの、伸張率と引張応力との関係を示す。図5の点53は、スキン層の引張降伏点に相当し、点53における引張応力が、スキン層の引張降伏応力に相当する。図5の点54は、伸縮材の300%伸長時の点であり、点54における引張応力は、点53における引張応力の110%以下であってよい。
【0108】
[第二の実施形態]
本発明に係る伸縮材、伸縮性部材及び衣料製品の好適な第二の実施形態について以下に説明する。
【0109】
(伸縮材)
本実施形態に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層と、少なくとも一方向においてコア層より高い10%引張応力を有するスキン層と、を備える。
【0110】
伸縮材は、延伸処理によりスキン層の少なくとも一部を塑性変形させることで伸縮部を有する伸縮性部材を形成できる。また、伸縮性部材の形成に際しては、スキン層の一部のみを塑性変形させて、伸縮材の層構造が維持された部分(形状保持部)を設けてもよい。形状保持部を有する伸縮性部材は、形状保持部において他の部材との良好な接合性を確保することができる。
【0111】
本実施形態において、伸縮材は、コア層の両主面上にそれぞれスキン層が積層された層構造(スキン層/コア層/スキン層)を有していてよい。このような伸縮材では、両主面側の引張応力がより均一となり、伸縮部を設けたとき、不均一な収縮による反り等が防止される。また、このような伸縮材では、ロール状に巻き重ねたときにスキン層同士が接するため、伸縮材間(例えば、スキン層と、該スキン層上に巻き重ねられたコア層との間)でのブロッキングが防止され、巻き出し時の作業性及び伸縮材の保存安定性が良好になる。但し、伸縮材の層構造は、上記のものに限定されない。例えば、伸縮材は、コア層の一方面側のみにスキン層が積層された層構造(コア層/スキン層)を有していてよく、スキン層の両主面上にそれぞれコア層が積層された層構造(コア層/スキン層/コア層)を有していてもよい。
【0112】
本実施形態において、コア層とスキン層とは直接的に接着されていてよく、中間層を介して間接的に接着されていてもよい。中間層は、例えば、色材を含む修飾層、コア層及びスキン層を接合する接着剤層等であってよい。コア層とスキン層との接着態様は特に限定されず、例えば、コア層及びスキン層を構成する樹脂材料同士が融着して接着されていてよく、コア層及びスキン層の間に介在する接着剤層によって接着されていてもよい。
【0113】
本実施形態において、コア層の厚みTは、スキン層の厚みT以上であってよい。このような伸縮材では、伸長時における伸縮部の狭幅化(ネッキング)が抑制される傾向がある。すなわち、このような伸縮材から得られる伸縮性部材では、伸長時のネッキングが小さくなるため、締め付け力の局所的な作用が防止され、着用時の優れた快適性が実現できる。
【0114】
また、スキン層の厚みを小さくすることで、伸長状態を長時間維持したときの伸縮部のひずみをより低減できる。なお、スキン層が無い場合には、伸縮部のひずみを低減できると期待されるが、生産性、作業性、耐候性、保存安定性等の観点からスキン層があることが望まれており、スキン層を有し且つ伸縮部のひずみが少ない伸縮材への期待が高まっている。
【0115】
本実施形態において、コア層の厚みTに対するスキン層の厚みTの比T/Tは、0.01以上1.0以下であってよく、0.1以上0.5以下であってよい。このような伸縮材によれば、伸長時のネッキングがより顕著に抑制された伸縮性部材が得られるため、着用時の快適性に一層優れる衣料製品を提供できる。
【0116】
また、伸長状態を長時間維持したときの伸縮部のひずみをより低減できる観点から、比T/Tは0.3以下であることが好ましく、より好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.2以下であってよい。
【0117】
なお、伸縮材に複数のスキン層が積層されているとき、スキン層の厚みTは各スキン層の厚みの合計を示す。また、伸縮材に複数のコア層が積層されているとき、コア層の厚みTは各コア層の厚みの合計を示す。
【0118】
さらに、伸縮材は、一方向での300%伸長時の引張応力が、同方向でのスキン層の引張降伏応力の110%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、伸長に要する引張応力がスキン層の引張降伏応力より著しく大きいと、伸長時に形状保持部が塑性変形して元の形状を維持できず、繰り返しの使用に支障が生じる場合がある。300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力を大きく越えなければ、実用上有用な200%程度の伸長を行っても形状保持部が元の形状を維持できるため、他の部材との接合性が一層良好となる。このような伸縮材では、300%伸長時の引張応力とスキン層の引張降伏応力とが上記関係を満たす方向に延伸して、伸縮部を形成してよい。
【0119】
なお、本実施形態において、伸縮材の300%伸長時の引張応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。また、スキン層の引張降伏応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。なお、伸縮材が複数のスキン層を有するとき、各スキン層の引張降伏応力のうち最大のものを、「スキン層の引張降伏応力」とする。スキン層の引張降伏応力は、伸縮材からスキン層のみを剥離して測定してよく、スキン層と同等の試験片を用いて測定してよい。なお、簡易な判別方法として、伸縮材の引張応力試験において、全てのスキン層が塑性変形する降伏点をスキン層の引張降伏応力と見做すこともできる。
【0120】
本実施形態において、伸縮材は、少なくとも一方向に200%伸長させた時、伸長方向に直交する幅方向への縮み率(伸長前の幅に対する、伸長により縮んだ幅の比率)が、50%以下であってよく、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下であってよい。伸縮性部材が伸縮部及び形状保持部を有するとき、形状保持部の幅は一定幅に維持され、伸縮部は伸長に応じて狭幅化される。ここで、伸長時に伸縮部の幅が著しく狭くなると、形状保持部の幅と伸縮部の幅の差が大きくなってしまう。そしてこのような場合、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、装着性が低下したり、締め付け力が局所的に作用し易くなって着用時の快適性を損なう場合がある。200%伸長時の伸長方向に直交する幅方向への縮み率が30%以下であると、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用時の快適性を十分に確保することができる。このような伸縮材では、縮み率が上記範囲となる方向に延伸して伸縮部を形成してよい。なお、伸長による狭幅化によっても着用時の快適性に著しい変化が生じない場合には、伸縮材は必ずしも上記範囲の縮み率を有している必要はない。
【0121】
なお、本実施形態において、200%伸長時の伸長方向に直交する幅方向への縮み率は、以下の方法で測定される値を示す。まず、伸長方向及びそれに直交する幅方向に沿って長辺及び短辺を有する長方形状の試験片(幅50mm、長さ50mm以上)を準備する。試験片の伸長方向の両端を延伸部分の長さが50mmとなるように挟持し、伸長方向に200%延伸させる。試験片の初期幅をL1、200%延伸時の試験片の最小幅をL2としたとき、縮み率(%)は、(L2/L1)×100で算出される。
【0122】
本実施形態において、伸縮材を一方向に300%伸長して伸縮部を形成したとき、当該伸縮部は、同方向に160%伸長させて40℃で1時間保持する伸長試験によるひずみが25%以下であることが好ましく、22%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。この場合、伸縮部が伸長状態で保持された場合でもひずみが残り難いため、衣料製品へ適用したとき、繰り返しの使用によっても着用時の優れたフィット性を十分に維持することができる。
【0123】
なお、伸長試験によるひずみが25%以下とは、伸長試験前の伸縮部の長さを100%として、伸長試験後の伸縮部の長さが125%以下であることを示す。
【0124】
以下に、本実施形態に係る伸縮材を構成する各層について詳述する。
【0125】
<コア層>
本実施形態に係る伸縮材は、エラストマーを含むコア層を備える。コア層は、伸縮性部材の弾性機能を担う層であり、所望のゴム弾性を有するようにその組成等が選択されてよい。
【0126】
コア層に含まれるエラストマーはゴム弾性を有する材料であり、コア層はスキン層より低い10%引張応力を有する。なお、本実施形態において、10%引張応力は10% Modulusともいい、10%伸長させるのに必要な単位面積当たりの力であり、JIS K 6251に準拠して測定される。
【0127】
コア層の10%引張応力は、例えば0.5MPa以下であってよく、0.3MPa以下であってよく、0.1MPa以下であってよい。これにより、小さい応力にも追随して伸びるため、取扱い性に優れる伸縮性部材が得られる。なお、コア層は、少なくとも一方向において上記範囲の10%引張応力を有していてよい。また、コア層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の10%引張応力を有していてよい。
【0128】
コア層の300%引張応力は、例えば4MPa以下であってよく、2MPa以下であってよい。これにより、小さい応力にも追随して伸びるため、取扱い性に優れる伸縮性部材が得られる。また、コア層の300%引張応力は、例えば1MPa以上であってよく、1.5MPa以上であることが好ましい。これにより、実用上、際限なく伸びることが抑制される。なお、コア層は、少なくとも一方向において上記範囲の300%引張応力を有していてよい。また、コア層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の300%引張応力を有していてよい。
【0129】
コア層の厚みTは、例えば10μm以上であってよく、15μm以上であることが好ましい。また、コア層の厚みTは、十分な効果を得つつ材料費を低減する観点からは、例えば100μm以下であってよく、50μm以下であってよく、35μm以下であってもよい。
【0130】
コア層は、エラストマーを含む樹脂材料(以下、「樹脂材料(A)」ともいう。)で構成されていてよい。エラストマーの種類は、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレンブタジエンゴム、水添又は部分水添されたSIS、水添又は部分水添されたSBS、ポリウレタン、エチレンコポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー)、プロピレンオキシド(PO)等が挙げられる。
【0131】
一態様において、エラストマーは分岐状ポリマーを含有していてよい。これにより、伸縮性部材の伸縮部が、長時間の着用によってもひずみが残り難いものとなる。また、エラストマーが分岐状ポリマーを有することで、上述の伸長試験によるひずみを、25%以下の好適な範囲に抑え易くなる。すなわち、本態様によれば、長時間の着用によっても優れたフィット性を維持することが可能な伸縮性部材が得られる。
【0132】
分岐状ポリマーは、分子内に分岐構造を有するポリマーであり、例えばグラフトポリマー、スター型ポリマー、デンドリマー等であってよい。
【0133】
コア層を構成する樹脂材料(A)は、上記以外の他の成分を含んでいてよい。例えば、樹脂材料(A)は、剛化剤(例えば、ポリビニルスチレン、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、クマロン−インデン樹脂)、粘度降下剤、可塑剤、粘着付与剤(例えば、脂肪族炭化水素粘着付与剤、芳香族炭化水素粘着付与剤、テルペン樹脂粘着付与剤、水素化テルペン樹脂粘着付与剤)、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、接着剤、粘着防止剤、スリップ剤、熱安定剤、光安定剤、発泡剤、ガラスバブル、スターチ、金属塩、マイクロファイバー等を含んでいてよい。
【0134】
<スキン層>
本実施形態に係る伸縮材は、少なくとも一方向においてコア層より高い10%引張応力を有する、スキン層を備える。スキン層は、伸縮材においてコア層を保護する機能を有し、伸縮性部材の製造時には延伸処理によって塑性変形される。このとき、コア層は弾性変形し、スキン層のみが塑性変形することで、延伸部分が伸縮性部材の伸縮部として利用可能となる。なお、スキン層は、伸縮性部材において、形状保持部の形状を維持する機能を有していてよい。
【0135】
スキン層の10%引張応力は、例えば1MPa以上であってよく、2MPa以上であってよい。これにより、小さい引張応力で変形しなくなり、伸縮材の取扱い性が良好となる。また、スキン層の10%引張応力は、例えば15MPa以下であってよく、10MPa以下であってよい。これにより、スキン層を塑性変形させるための応力を小さくでき、加工性が向上する。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の10%引張応力を有していてよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の10%引張応力を有していてよい。なお、本実施形態において、スキン層の10%引張応力は、JIS K 6251に準拠して測定される。
【0136】
スキン層の引張降伏応力は、例えば2N/25mm以上であってよく、好ましくは2.5N/25mm以上、より好ましくは3N/25mm以上であってよい。また、スキン層の引張降伏応力は、例えば10N/25mm以下であってよく、好ましくは7N/25mm以下であってよい。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の引張降伏応力を有していてよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の引張降伏応力を有していてよい。なお、スキン層の引張降伏応力は、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。
【0137】
スキン層の引張降伏ひずみは、例えば20%以下であってよく、好ましくは15%以下であってよい。なお、スキン層は、少なくとも一方向において上記範囲の引張降伏ひずみを有していてよい。また、スキン層は、伸縮材の延伸方向において、上記範囲の引張降伏ひずみを有していてよい。本実施形態において、スキン層の引張降伏ひずみは、JIS K 7127に準拠し、試験片幅25mm、チャック間隔50mm、試験速度300mm/minにて測定される。
【0138】
スキン層の厚みTは、上述の好適な引張特性が容易に得られること、製造が容易となることなどの観点から、例えば2μm以上であってよく、5μm以上であることが好ましい。また、スキン層の厚みTは、伸長状態を長時間維持したときの伸縮部のひずみを一層低減できる観点から、例えば30μm以下であってよく、20μm以下であることが好ましい。
【0139】
一態様において、スキン層を構成する樹脂材料(以下、「樹脂材料(B)」ともいう。)は、ミクロ相分離構造を形成するものであってよい。このようなスキン層では、塑性変形しやすい相構造がスキン層全体に緻密に分布しているため、延伸処理によって均一に塑性変形させることができる。これにより、形成される伸縮部は、伸長時の伸びの均一性に優れたものとなる。またスキン層がミクロ相分離構造を有することで、伸長時のネッキングがより顕著に抑制され、着用時の快適性に一層優れる伸縮性部材が実現される。
【0140】
さらに、このようなスキン層を用いると、100%延伸等の比較的低い延伸度合においても伸びが均一になることから、100%、150%、200%、250%、300%等の任意の延伸度合で伸縮材の延伸処理を行うことができる。なお、延伸処理時の延伸度合が異なると、形成される伸縮部の弾性、引張応力等の機械的特性が変化する。すなわち、この態様では、延伸処理時の延伸度合を変化させることで、同一の伸縮材から異なる特性を有する伸縮部を形成することができる。このため、例えば、衣料製品の部位によって求められる特性が異なる場合でも、所望の特性に応じて延伸度合を調整しすることで、同一の伸縮材を各部位に適用できる。
【0141】
樹脂材料(B)が形成するミクロ相分離構造は、例えば、ラメラ構造、ジャイロイド構造、シリンダ構造、BCC構造等であってよい。ミクロ相分離構造は、例えばブロックコポリマーにより形成されたものであってよく、ポリマーブレンドにより形成されたものであってよい。
【0142】
樹脂材料(B)は、ブロックコポリマーを含むものであってよい。ブロックコポリマーとしては、ミクロ相分離構造を形成するブロックコポリマーが好ましい。ブロックコポリマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン系、エチレンテレフタレートなどのエステル系、スチレンなどのスチレン系等を要素として含むものが挙げられる。
【0143】
樹脂材料(B)は2種以上のポリマーを含むポリマーブレンドによりミクロ相分離構造を形成していてもよい。樹脂材料(B)に含まれるポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0144】
他の一態様において、樹脂材料(B)は、ミクロ相分離構造を形成せず、均一な層構造を成すものであってよい。これにより、伸縮性部材の伸縮部において、長時間の着用によるひずみをより顕著に抑制できる。また、スキン層が均一な層構造を有することで、上述の伸長試験によるひずみを、25%以下の好適な範囲に抑え易くなる。すなわち、本態様によれば、樹脂材料(B)がミクロ相分離構造を形成する場合と比較して、長時間の着用による伸縮部のひずみが一層抑制され、優れたフィット性をより長期間維持できる。
【0145】
樹脂材料(B)は、ホモポリマーを含むものであってよい。ホモポリマーを含む樹脂材料(B)によれば、上述の均一な層構造を有するスキン層を容易に得ることができる。
【0146】
ホモポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン等が挙げられる。
【0147】
樹脂材料(B)は、上記以外の他の成分を含んでいてよい。例えば、鉱物油増量剤、静電防止剤、顔料、染料、粘着防止剤、スターチ、金属塩、安定剤等を含んでいてよい。
【0148】
本実施形態に係る伸縮材の製造方法は、特に限定されず、例えば、樹脂材料を用いた一般的な多層フィルム成形技術を適用できる。
【0149】
本実施形態に係る伸縮材は、例えば、コア層を構成する樹脂材料(A)及びスキン層を構成する樹脂材料(B)の同時押出成形により、コア層とスキン層とが一体的に成形されたものであってよい。同時押出成形の条件は、樹脂材料(A)及び樹脂材料(B)の組成等に応じて適宜調整してよい。また、本実施形態に係る伸縮材は、樹脂材料(A)を含むA層と樹脂材料(B)を含むB層とをそれぞれ成形し、積層させることによって製造してもよい。
【0150】
(伸縮性部材)
本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する伸縮部(活性化部ともいう)を備える。また、本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮材の層構造が維持された形状保持部(未活性化部ともいう)をさらに備えていてよい。
【0151】
本実施形態に係る伸縮性部材は、伸縮部がゴム弾性体として機能するため、衣料製品等に適用される弾性ウェブとして好適に用いることができる。また、本実施形態に係る伸縮性部材は、形状保持部において他の部材と接合させることで、他の部材との良好な接合性が得られる。
【0152】
伸縮性部材は、伸縮部を伸長状態で長時間保持することで伸縮部にひずみが生じると、着用時の優れたフィット性が維持できなくなるおそれがある。本実施形態に係る伸縮性部材は、上述の伸縮材から形成されるため、伸縮部のひずみが十分に抑制され、優れたフィット性を長期間維持できるものになり得る。また、伸縮材のスキン層が均一な層構造を有する態様では、伸縮部のひずみがより顕著に抑制され、繰り返しの使用によってもフィット性の変化が顕著に小さくなり得る。
【0153】
また、伸縮性部材は、伸長時の伸びが不均一であると、装着性及び着用時の快適性が損なわれるおそれがある。本実施形態では、スキン層がミクロ相分離構造を有する態様において、伸縮部の伸びの均一性に優れたものになり得る。
【0154】
また、伸縮性部材は、特に肌に密着する衣料製品への適用に際して、伸長時の伸縮部の幅が小さくなると、締め付け力が局所的に作用し易くなって着用時の快適性を損なうおそれがある。本実施形態では、スキン層がミクロ相分離構造を有する態様において、伸長時の伸縮部の狭幅化の程度が十分に小さく、装着性及び着用時の快適性が十分に確保され得る。
【0155】
また、伸縮性部材では、衣料製品への適用に際して繰り返しの使用による変形が課題となり得る。本実施形態に係る伸縮性部材は、上述の伸縮材から形成されるため、繰り返しの使用によっても形状保持部が元の形状を維持でき、他の部材との良好な接合性が維持され得る。
【0156】
伸縮部は、伸縮材のスキン層が塑性変形した構造を有する。すなわち、伸縮部は、コア層と、塑性変形したスキン層とを含むものであってよい。伸縮部において、塑性変形したスキン層は連続した一層として存在していてよく、延伸により分断されていてもよい。
【0157】
形状保持部は、伸縮材の層構造を有する。すなわち、形状保持部は、コア層とスキン層とを含むものであってよい。形状保持部は、伸縮材の未延伸部分ということもできる。
【0158】
伸縮性部材は、使用用途に応じて伸縮材に延伸処理を施して製造される。伸縮性部材の用途は特に限定されず、例えば衣料用途に用いてよい。より具体的には、伸縮性部材は、例えば、使い捨ておむつ、大人用失禁当て、シャワーキャップ、手術ガウン、帽子及びブース、使い捨てパジャマ、競技用肩掛け、クリーンルーム用衣類、帽子用ヘッドハンド又はバイザー(visor)等、足首バンド(例えばパンスのカウスプロテクター)、手首バンド、ゴムパンシ、ウエットスーツ等に用いられる。
【0159】
伸縮性部材の製造方法は、伸縮材の少なくとも一部を延伸させて、スキン層の少なくとも一部を塑性変形させる工程(伸縮材の少なくとも一部を活性化させる工程ともいう)を備えるものであってよい。伸縮材をスキン層が塑性変形するまで延伸させることによって、伸縮部が形成される。塑性変形は、一般的にはスキン層の引張降伏ひずみを超えて延伸することで達成される。
【0160】
伸縮性部材の製造方法では、スキン層の一部のみを塑性変形させることにより、伸縮部と形状保持部とを形成してもよい。
【0161】
伸縮材の延伸方法は特に限定されない。例えば、伸縮材の両端を所定幅で挟持して延伸することで、所定幅の2つの形状保持部(挟持された未延伸部分)と、形状保持部の間に形成された伸縮部と、を備える伸縮性部材が形成される。
【0162】
伸縮材の延伸時の温度条件は特に限定されず、室温であってよい。伸縮材の延伸倍率は、スキン層の引張降伏ひずみ以上であればよく、実用上想定される延伸倍率以上であってよい。また、上述のとおり、延伸倍率によって伸縮部の機械的特性が変化し得ることから、所望の特性に応じた延伸倍率としてもよい。
【0163】
次に、図面を参照しつつ本実施形態の好適な一態様について説明する。
【0164】
図6は、本実施形態に係る伸縮材の一態様を示す平面図であり、図7は、図6のII−II線に沿った拡大断面図である。図6及び図7に示すとおり、伸縮材10は、コア層1と、コア層1の両主面上にそれぞれ設けられたスキン層2a及びスキン層2bを備えている。
【0165】
伸縮材10において、コア層1の厚みTは、スキン層2a及びスキン層2bの総厚みT以上であり、コア層1の厚みTに対するスキン層2a及びスキン層2bの総厚みTの比T/Tは、0.1以上1.0以下である。
【0166】
伸縮材10において、コア層は、分岐状ポリマーを含有する樹脂材料により構成されている。また、スキン層2a及びスキン層2bは、ホモポリマーを含む樹脂材料により構成されている。このため、伸縮材10から形成される伸縮部は、伸長状態を長時間維持した場合でもひずみが少なく、衣料製品へ適用した際には優れたフィット性を長期間維持できる。
【0167】
伸縮材10は平面図において略長方形状であり、その長手方向に延伸処理されることで伸縮性部材として機能する。スキン層2a及びスキン層2bを構成する樹脂材料はその組成が互いに略同一である。また、スキン層2a及びスキン層2bの長手方向における引張降伏応力は略同一である。伸縮材10を長手方向に延伸することで、スキン層2a及びスキン層2bが塑性変形し、伸縮部が形成される。
【0168】
伸縮材10の長手方向における300%伸長時の引張応力は、スキン層2aの引張降伏応力及びスキン層2bの引張降伏応力の110%以下である。これにより、実用上有用な200%程度の伸長時を行っても、後述する形状保持部が元の形状を維持でき、他の部材との良好な接合性が維持される。
【0169】
図8(a)及び図8(b)は、伸縮材の延伸処理の一態様を説明するための図である。本態様では、伸縮材10の長手方向の中央部の領域3aと末端の領域3b及び領域3cにおいて長方形状の挟持部材で伸縮材10を挟持し、領域3aを固定して領域3b及び領域3cを長手方向に沿って引張することによって、領域3a及び領域3bの間、並びに領域3a及び領域3cの間を延伸させる。
【0170】
図8(b)は延伸時の伸縮材の状態を示しており、挟持部材で挟持された領域3a、3b及び3cに対応する形状保持部4a、4b及び4cは、伸縮材10の形態が維持されており、領域3a及び領域3bの間並びに領域3a及び領域3cの間の延伸部5a及び5bでは、伸縮材10が延伸され、伸縮材10のスキン層が塑性変形される。
【0171】
長手方向に200%伸長させた時、長手方向に直交する幅方向への縮み率を測定する。「縮み率」は、伸長前の幅L2に対する、伸長により縮んだ幅(伸長前の幅から伸長時の最小幅を引いた値(L2−L1))の比(L2−L1)/L2を示す。また、「200%伸長時」とは、伸長させる部分の初期の長さL3に対して、伸長時の長さL4が200%であることを示す。
【0172】
図9は、本実施形態に係る伸縮性部材の一態様を示す平面図である。伸縮性部材20は、伸縮材10の層構造が維持された形状保持部14と、形状保持部14の間に形成された伸縮部15とを備える。伸縮性部材20は、長手方向に引張したとき、伸縮部15が伸長し、形状保持部14はその形状が保持される。このため、伸縮性部材20では、形状保持部14で他の部材と接合させることにより、他の部材との良好な接着性が得られる。
【0173】
図10(a)、図10(b)及び図10(c)は、伸縮部の伸長試験を説明するための図である。図10(a)は伸長試験前の試験片の状態を示している。伸長試験前の試験片30は、伸縮材10を300%伸長(図9の伸長前の長さL3に対して伸長時の長さL4が300%)して形成された伸縮部である。試験片30では、中央部を延伸部分15aとし、両端を挟持部16a及び16bとしている。伸長試験では、図10(b)に示すとおり、延伸部分15aを160%伸長(伸長前の長さL5に対して伸長時の長さL6が300%)させた状態で、40℃で1時間保持する。「伸長試験によるひずみ」は、伸長試験前の延伸部分15aの長さL5に対する、伸長試験後の延伸部分15bの長さL7の伸び率(100×(L5−L7)/L5)を示す。
【0174】
図9に示す伸縮性部材20は、伸縮部15の伸長試験によるひずみが、25%以下であってよく、好ましくは22%以下、より好ましくは20%以下であってよい。これにより、衣料製品へ適用した際に、長時間の着用によっても優れたフィット性が十分に維持される。
【0175】
図11は、一態様に係る伸縮材及び伸縮性部材の伸長率と引張応力との関係の一例を示す図である。図11において、線51は、伸縮材の伸長率と引張応力との関係を示す。線52は、伸縮材を300%伸長させて形成された伸縮性部材を伸長させたときの、伸長率と引張応力との関係を示す。図11の点53は、スキン層の引張降伏点に相当し、点53における引張応力が、スキン層の引張降伏応力に相当する。図11の点54は、伸縮材の300%伸長時の点であり、点54における引張応力は、点53における引張応力の110%以下であってよい。
【0176】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0177】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0178】
[主に第一の実施形態に関係する実施例]
(実施例X−1)
コア層を構成する樹脂材料(X−A−1)として、「Quintac3390」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)72質量部と、「Quintac 3620」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)25質量部と、「PS−M AZ 12N8613」(大日精化工業株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ)3質量部の混合材料を用いた。なお、白色マスターバッチは白色をつけるために添加している。スキン層を構成する樹脂材料(X−B)として、「Novatec PP BC2E」(日本ポリプロ株式会社製、エチレンプロピレンブロックコポリマー)を用いた。
【0179】
住友重機械モダン株式会社製の共押出フィルム製造システムにより、樹脂材料(X−B)3.5gからなる第一のスキン層、樹脂材料(X−A−1)28gからなるコア層、及び樹脂材料(X−B)3.5gからなる第二のスキン層がこの順で積層された、5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−1)を作製した。得られた伸縮材(X−a−1)において、第一のスキン層の厚みは3.8μm、コア層の厚みは30.4μm、第二のスキン層の厚みは3.8μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは0.25であった。伸縮材(X−a−1)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、下記の延伸試験1〜3を行った。
【0180】
<延伸試験1>
試験片の両端をそれぞれ挟持し、長手方向に350%まで延伸させた。100%、200%、300%及び350%延伸時に、それぞれ延伸状態を維持しつつ、延伸部の最小幅を測定した。測定された最小幅と初期の幅(5cm)から、各伸長時の縮み率を求めた。
【0181】
<延伸試験2>
試験片の一方面に1mm間隔で目印を付し、長手方向に300%まで延伸させた。100%、200%及び300%延伸時に、それぞれ延伸状態を維持しつつ、目印の間隔を測定し、各間隔の平均値及び標準偏差を求めた。
【0182】
<延伸試験3>
テンシロン万能材料試験機(RTG−1225、株式会社エー・アンド・デイ社製)によって試験片の300%までの引張応力と伸長率との関係を求め、図5に示すようにグラフ化した。得られたグラフから、試験片の引張降伏応力と、300%伸長時の引張応力を求めた。
【0183】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−1)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。また、延伸試験3で得られたグラフは、図5に示すとおりであった。
【0184】
(実施例X−2)
第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(X−B)の量をそれぞれ5.25gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(X−A−1)の量を24.5gに変更したこと以外は、実施例X−1と同様にして5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−2)を得た。
【0185】
得られた伸縮材(X−a−2)において、第一のスキン層の厚みは5.7μm、コア層の厚みは26.6μm、第二のスキン層の厚みは5.7μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは約0.43であった。伸縮材(X−a−2)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1〜3を行った。
【0186】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−2)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0187】
(実施例X−3)
第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(X−B)の量をそれぞれ2.625gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(X−A−1)の量を29.75gに変更したこと以外は、実施例X−1と同様にして5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−3)を得た。
【0188】
得られた伸縮材(X−a−3)において、第一のスキン層の厚みは2.9μm、コア層の厚みは32.2μm、第二のスキン層の厚みは2.9μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは約0.18であった。伸縮材(X−a−3)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1〜3を行ったた。
【0189】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−3)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0190】
(実施例X−4)
コア層を構成する樹脂材料(X−A−2)として、「Quintac3390」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)47質量部と、「Quintac 3620」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)50質量部と、「PS−M AZ 12N8613」(大日精化工業株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ)3質量部との混合材料を用いた。スキン層を構成する樹脂材料(X−B)として、「Novatec PP BC2E」(日本ポリプロ株式会社製、エチレンプロピレンブロックコポリマー)を用いた。
【0191】
住友重機械モダン株式会社製の共押出フィルム製造システムで、樹脂材料(X−B)5.25gからなる第一のスキン層、樹脂材料(X−A−2)24.5gからなるコア層、及び樹脂材料(X−B)5.25gからなる第二のスキン層がこの順で積層された、5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−4)を作製した。得られた伸縮材(X−a−4)において、第一のスキン層の厚みは5.7μm、コア層の厚みは26.6μm、第二のスキン層の厚みは5.7μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは約0.43であった。伸縮材(X−a−4)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記延伸試験1〜3を行った。
【0192】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−4)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0193】
(実施例X−5)
第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(X−B)の量をそれぞれ2.625gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(X−A−2)の量を29.75gに変更したこと以外は、実施例X−4と同様にして5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−5)を得た。
【0194】
得られた伸縮材(X−a−5)において、第一のスキン層の厚みは2.9μm、コア層の厚みは32.2μm、第二のスキン層の厚みは2.9μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは約0.18であった。伸縮材(X−a−5)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1〜3を行った。
【0195】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−5)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0196】
(実施例X−6)
第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(X−B)の量をそれぞれ3.5gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(X−A−2)の量を28gに変更したこと以外は、実施例X−4と同様にして5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−6)を得た。
【0197】
得られた伸縮材(X−a−6)において、第一のスキン層の厚みは3.8μm、コア層の厚みは30.2μm、第二のスキン層の厚みは3.8μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは0.25であった。伸縮材(X−a−6)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1〜3を行った。
【0198】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−6)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0199】
(実施例X−7)
第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(X−B)の量をそれぞれ7.0gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(X−A−2)の量を21gに変更したこと以外は、実施例X−4と同様にして5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−7)を得た。
【0200】
得られた伸縮材(X−a−7)において、第一のスキン層の厚みは7.6μm、コア層の厚みは22.8μm、第二のスキン層の厚みは7.6μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは約0.67であった。伸縮材(X−a−7)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1〜3を行った。
【0201】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−a−7)は、伸長時の縮み率が十分に低く、伸びの均一性に優れ、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0202】
(実施例X−8)
第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(X−B)の量をそれぞれ8.75gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(X−A−2)の量を17.5gに変更したこと以外は、実施例X−4と同様にして5cm幅のテープ状伸縮材(X−a−8)を得た。
【0203】
得られた伸縮材(X−a−8)において、第一のスキン層の厚みは9.5μm、コア層の厚みは19.9μm、第二のスキン層の厚みは9.5μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは1.0であった。伸縮材(X−a−8)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1〜3を行い、結果を表1に記載した。
【0204】
延伸試験1〜3の結果から、伸縮材(X−8)は、伸長時の縮み率が十分に低く、300%伸長時の引張応力がスキン層の引張降伏応力の110%以下であることが確認された。
【0205】
(比較例X−1)
比較対象として、ユニチャーム株式会社製 ムーニー Sサイズで使用されている伸縮性部材を使用した(テープ状伸縮材(X−b−1))。第一及び第二のスキン層を構成する材料はポリプロピレン、コア層を構成する材料はスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーであった。
【0206】
第一のスキン層の厚みは3.8μm、コア層の厚みは30.4μm、第二のスキン層の厚みは3.8μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは0.25であった。伸縮材(X−b−1)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1及び2を行った。
【0207】
延伸試験1及び2の結果、伸縮材(X−b−1)では、実施例X−1及びX−6と比較して伸長時の縮み率が大きく、延伸部の伸びも不均一であった。
【0208】
(参考例X−1)
スキン層を構成する樹脂材料(X−B)を、「Novatec PP FA3EB」(日本ポリプロ株式会社製、ホモポリプロピレン)に変更したこと以外は、実施例X−6と同様にして、5cm幅のテープ状伸縮材(X−b−2)を作製した。得られた伸縮材(X−b−2)において、第一のスキン層の厚みは3.8μm、コア層の厚みは32.2μm、第二のスキン層の厚みは3.8μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは0.25であった。伸縮材(X−b−2)から、幅5cm、長さ7cm(延伸部分5cm、両端の挟持部分1cm)の試験片を得て、上記の延伸試験1及び2を行った。
【0209】
延伸試験1及び2の結果、伸縮材(X−b−2)では、実施例X−1及びX−6と比較して伸長時の縮み率が大きく、延伸部の伸びも不均一となる傾向があった。
【0210】
延伸試験1及び2の結果の一部を表1及び表2に示す。
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】
【0213】
[主に第二の実施形態に関係する実施例]
(実施例Y−1)
コア層を構成する樹脂材料(Y−A−1)として、「Quintac 3620」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、直鎖状ポリマーと分岐状ポリマーの混合物)40質量部と、「Quintac3390」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、直鎖状ポリマー)56質量部と、20%TiO含有のスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ4質量部と、を混合した混合材料を用いた。なお、白色マスターバッチは白色をつけるために添加している。また、スキン層を構成する樹脂材料(Y−B−1)として、「Novatec PP BC2E」(日本ポリプロ株式会社製、エチレンプロピレンブロックコポリマー)を用いた。
【0214】
住友重機械モダン株式会社製の共押出フィルム製造システムにより、樹脂材料(Y−B−1)3.5gからなる第一のスキン層、樹脂材料(Y−A−1)28gからなるコア層、及び樹脂材料(Y−B−1)3.5gからなる第二のスキン層がこの順で積層された、テープ状伸縮材(Y−a−1)を作製した。得られた伸縮材(Y−a−1)において、第一のスキン層の厚みは3.8μm、コア層の厚みは30.4μm、第二のスキン層の厚みは3.8μmであり、コア層の厚みTに対するスキン層の総厚みTの比T/Tは0.25であった。
【0215】
得られた伸縮材(Y−a−1)について下記の伸長試験を行った結果、伸長試験によるひずみは20.0%であった。
【0216】
伸縮材(Y−a−1)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、良好なフィット性が維持された。
【0217】
<伸長試験>
伸縮材を長手方向(共押出フィルム製造システムにおいてテープ状伸縮材が搬送される方向とは直交する方向、Cross Direction)に300%まで伸長させることにより、延伸部分のスキン層を塑性変形させて、伸縮部を作製した。当該伸縮部から、幅4cm、長さ15cm(延伸部分:10cm(=L5)、両端の挟持部分:各2.5cm)の試験片を得た。試験片の両端を挟持し、延伸部分を160%伸長させ、伸長状態のまま40℃で1時間保持した。1時間後、伸長状態から解放し、延伸部分の長さL7を測定した。長さL5及びL7から、以下の式で伸長試験によるひずみを求めた。
伸長試験によるひずみ(%)=100×(L5−L7)/L5
【0218】
(実施例Y−2)
コア層を構成する樹脂材料(Y−A−2)として、「Quintac 3620」50質量部と、「Quintac3390」46質量部と、20%TiO含有のスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ4質量部と、を混合した混合材料を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−2)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−a−2)を作製した。
【0219】
得られた伸縮材(Y−a−2)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは19.3%であった。また、伸縮材(Y−a−2)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、良好なフィット性が維持された。
【0220】
(実施例Y−3)
スキン層を構成する樹脂材料(Y−B−2)として、「Novatec PP FA3EB」(日本ポリプロ株式会社製、ポリプロピレンホモポリマー)を準備した。樹脂材料(Y−B−1)に代えて樹脂材料(Y−B−2)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−a−3)を作製した。
【0221】
得られた伸縮材(Y−a−3)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは19.0%であった。また、伸縮材(Y−a−3)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、良好なフィット性が維持された。
【0222】
(実施例Y−4)
実施例Y−2及びY−3と同様に樹脂材料(Y−A−2)及び樹脂材料(Y−B−2)を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−2)を用い、樹脂材料(Y−B−1)に代えて樹脂材料(Y−B−2)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして、伸縮材(Y−a−4)を作製した。
【0223】
得られた伸縮材(Y−a−4)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは16.7%であった。また、伸縮材(Y−a−4)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、良好なフィット性が維持された。
【0224】
(実施例Y−5)
実施例Y−2と同様に樹脂材料(Y−B−2)を準備した。樹脂材料(Y−B−1)に代えて樹脂材料(Y−B−2)を用い、第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(Y−B−2)の量をそれぞれ7.0gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(Y−A−1)の量を21gに変更したこと以外は、実施例Y−1と同様にして、伸縮材(Y−a−5)を作製した。
【0225】
得られた伸縮材(Y−a−5)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは24.3%であった。また、伸縮材(Y−a−5)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、フィット性が十分に維持された。
【0226】
(実施例Y−6)
実施例Y−2及びY−3と同様に樹脂材料(Y−A−2)及び樹脂材料(Y−B−2)を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−2)を用い、樹脂材料(Y−B−1)に代えて樹脂材料(Y−B−2)を用い、第一のスキン層及び第二のスキン層を構成する樹脂材料(Y−B−2)の量をそれぞれ7.0gに変更し、コア層を構成する樹脂材料(Y−A−2)の量を21gに変更したこと以外は、実施例Y−1と同様にして、伸縮材(Y−a−6)を作製した。
【0227】
得られた伸縮材(Y−a−6)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは22.3%であった。また、伸縮材(Y−a−6)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、フィット性が十分に維持された。
【0228】
(実施例Y−7)
コア層を構成する樹脂材料(Y−A−3)として、「Quintac 3620」96質量部と、20%TiO含有のスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ4質量部と、を混合した混合材料を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−3)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−a−7)を作製した。
【0229】
得られた伸縮材(Y−a−7)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは21.0%であった。また、伸縮材(Y−a−7)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、フィット性が十分に維持された。
【0230】
(実施例Y−8)
実施例Y−7及びY−3と同様に樹脂材料(Y−A−3)及び樹脂材料(Y−B−2)を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−3)を用い、樹脂材料(Y−B−1)に代えて樹脂材料(Y−B−2)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして、伸縮材(Y−a−8)を作製した。
【0231】
得られた伸縮材(Y−a−8)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは18.3%であった。また、伸縮材(Y−a−8)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、良好なフィット性が維持された。
【0232】
(実施例Y−9)
コア層を構成する樹脂材料(Y−A−4)として、「Quintac 3450」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、分岐状ポリマー)96質量部と、20%TiO含有のスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ4質量部と、を混合した混合材料を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−4)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−a−9)を作製した。
【0233】
得られた伸縮材(Y−a−9)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは23.0%であった。また、伸縮材(Y−a−9)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、伸長状態且つ体温程度の温度がかかった状態で長時間保持した場合でも、良好なフィット性が維持された。
【0234】
(比較例Y−1)
比較対象として、市販されている衣料製品として、ユニチャーム株式会社製 ムーニー Sサイズで使用されている伸縮性部材を使用した(テープ状伸縮材(Y−b−1))。テープ状伸縮材(Y−b−1)は、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーからなるコアの両面にポリプロピレン層を有していた。コアの厚みは30.4μm、ポリプロピレン層の厚みは3.8μmであった。
【0235】
テープ状伸縮材(Y−b−1)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは30.7%であった。また、テープ状伸縮材(Y−b−1)を用いた衣料製品では、長時間の延伸により伸縮部がひずみ易く、十分なフィット性を維持することが困難であった。
【0236】
(参考例Y−1)
コア層を構成する樹脂材料(Y−A−4)として、「Kraton D1114P」(クレイトンポリマージャパン社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、直鎖状ポリマー)を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−4)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして、伸縮材(Y−c−1)を作製した。
【0237】
得られた伸縮材(Y−c−1)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは25.3%であった。また、伸縮材(Y−c−1)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、長時間の延伸により伸縮部がひずみ易く、実施例と比較してフィット性が劣る傾向があった。
【0238】
(参考例Y−2)
コア層を構成する樹脂材料(Y−A−5)として、「Quintac 3421」(日本ゼオン株式会社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、直鎖状ポリマー)96質量部と、20%TiO含有のスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーベース白色マスターバッチ4質量部と、を混合した混合材料を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて樹脂材料(Y−A−5)を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−c−2)を作製した。
【0239】
得られた伸縮材(Y−c−2)について、実施例Y−1と同様の方法で伸長試験を行ったところ、伸長試験によるひずみは33.0%であった。また、伸縮材(Y−c−2)から伸縮性部材を作製して衣料製品に適用したところ、長時間の延伸により伸縮部がひずみ易く、実施例と比較してフィット性が劣る傾向があった。
【0240】
(実施例Y−10)
コア層を構成する樹脂材料として「Quintac 3620」を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて「Quintac 3620」を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−a−10)を作製した。
【0241】
伸縮材(Y−a−10)から、幅25mm、長さ100mm(延伸部分25mm、両端の挟持部分37.5mm)の試験片を得て、下記の試験を行った。試験の結果、1回目行き応力(於100%)は1.80(N/25mm)、2回目戻り応力(於50%)は0.20(N/25mm)となった。
【0242】
<応力測定試験>
試験片の両端をそれぞれ挟持し、長手方向に300mm/分で100%まで延伸させ、そのときの応力(行き応力)を測定した。この測定結果を1回目行き応力(於100%)(1st loading force at 100%)(N/25mm)とした。
次いで、伸長状態を解放し、再度300mm/分で100%まで伸長させてから、300mm/分で50%まで戻した。伸張率50%まで戻したときの応力(戻り応力)を測定し、この測定結果を2回目戻り応力(於50%)(2nd unloading force at 50%)(N/25mm)とした。
【0243】
(実施例Y−11)
コア層を構成する樹脂材料として「Quintac 3450」を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて「Quintac 3450」を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−a−11)を作製した。
【0244】
得られた伸縮材(Y−a−11)について、実施例Y−10と同様の方法で試験を行ったところ、結果は1回目行き応力(於100%)が1.62(N/25mm)、2回目戻り応力(於50%)が0.20(N/25mm)となった。
【0245】
(参考例Y−3)
コア層を構成する樹脂材料として「Quintac 3421」を準備した。樹脂材料(Y−A−1)に代えて「Quintac 3421」を用いたこと以外は、実施例Y−1と同様にして伸縮材(Y−c−3)を作製した。
【0246】
得られた伸縮材(Y−c−3)について、実施例Y−10と同様の方法で試験を行ったところ、結果は1回目行き応力(於100%)が1.58(N/25mm)、2回目戻り応力(於50%)が0.12(N/25mm)となった。
【0247】
実施例Y−10、実施例Y−11及び参考例Y−3から、コア層に分岐状ポリマーを含む場合では、コア層が直鎖状ポリマーのみの場合よりも、2回目戻り応力(於50%)が大きくなることが確認された。2回目戻り応力(於50%)が大きいことは、伸縮材を衣料製品に適用したとき、その衣料製品が着用者の身体にフィットする力が大きいことを意味している。このことから、コア層に分岐状ポリマーを含む伸縮材は、フィット性が求められる用途に特に好適であるといえる。なお、1回目行き応力(於100%)が小さいと、伸縮材の延伸処理に必要な力が小さく、加工性に優れる。実施例Y−10及び実施例Y−11では、1回目行き応力(於100%)を十分な加工性が得られる範囲に抑えつつ、2回目戻り応力(於50%)を大きくすることができている。
【符号の説明】
【0248】
1…コア層、2…スキン層、10…伸縮材、14…形状保持部、15…伸縮部、20…伸縮性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11