【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明は、特に前記タンパク質が別の分子と結合されるべきである場合、特に、例えば治療用の、タンパク質を得るための工業的なタンパク質の製造において、タンパク質を製造するための新規な方法を提供することにより、上記に同定された必要性を解決する。
第1の実施形態では、本発明は、
a)宿主細胞中でタンパク質を発現させる工程、
b)前記宿主細胞および他の夾雑物を含有する混合物から前記タンパク質を精製する工程であって、前記精製は、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含み、還元剤が前記混合物に添加され、第1のクロマトグラフィー工程から最後のクロマトグラフィー工程まで前記タンパク質は、前記の前記還元剤の存在下で維持される、
前記タンパク質を製造する方法を提供する。
【0013】
典型的には、第1のクロマトグラフィー工程は、タンパク質捕捉工程として役立ち、そのために当業者に利用可能な異なるクロマトグラフィー工程が存在し、例えば親和性クロマトグラフィー、陽イオンクロマトグラフィー、アニオンクロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーまたは疎水性電荷誘導クロマトグラフィーに使用するための固相として適切な官能性を有するビーズ型樹脂または膜を使用するクロマトグラフィーなどが使用することができる、生成物捕捉は、通常、結合および溶出モードで行われ、対象タンパク質を固相に結合させることにより、関心のあるタンパク質が固相に結合したままである間に、夾雑タンパク質のような不純物がクロマトグラフィー媒体を通って流れることを可能にする。次いで、目的の結合タンパク質は、目的タンパク質が固相に結合するメカニズムを崩壊させる溶出バッファーを用いて固相から回収される。最も適切な生成物捕捉ステップは、精製されるべきタンパク質の性質に基づいて決定され、例えば、全長抗体を製造する際の共通生成物捕捉工程は、Protein−Aに基づくアフィニティークロマトグラフィーである。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、前記第1のクロマトグラフィー工程はカチオン交換クロマトグラフィー工程であり、目的タンパク質はクロマトグラフィー媒体に結合し、続いて前記タンパク質を含む第1の溶出液に溶出される。
【0015】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、前記カチオン交換クロマトグラフィーの間に使用されるバッファー中に還元剤が存在する。より詳細には、還元剤は、ロードバッファー中、洗浄バッファー中および溶出バッファー中に存在する。
前のセクションで説明したように、第1のクロマトグラフィー工程は、一般に、さらなる不純物、典型的には残留工程及び製品関連不純物を除去するのを助けるための、1つ以上の後続のクロマトグラフィー工程が続く。一般に、このような工程は、ゲル濾過クロマトグラフィー、陽イオンクロマトグラフィー、アニオンクロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよび疎水性電荷誘導クロマトグラフィーを使用するための適切な官能性を有する固相を使用する非親和性クロマトグラフィー工程を用いる。これらは、結合および溶出モードまたは通過画分(フロースルー)モードで操作することができる。通過画分モードでは、不純物は固相に結合するか、固相で移動度が減少し、一方標的タンパク質は、溶出又は通過画分で回収される。
【0016】
本発明の方法の別の特定の実施形態では、第1のクロマトグラフィー工程に続いてアニオン交換クロマトグラフィー工程が行われ、不純物が捕捉されタンパク質を含む通過画分が生成する。
【0017】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、該アニオン交換クロマトグラフィーの間に使用されるバッファー中に還元剤が存在して不純物を捕捉し、該タンパク質を含む通過画分を生成する。より詳細には、還元剤がロードバッファーおよび溶出バッファー中に存在する。
【0018】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、混合物からのタンパク質精製の工程が、タンパク質を含む第1の溶出液が溶出されるカチオン交換クロマトグラフィー工程である第1のクロマトグラフィー工程と、該タンパク質を含む通過画分を生成するアニオン交換クロマトグラフィー工程である第2のクロマトグラフィー工程を含む。
【0019】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、前記カチオン交換クロマトグラフィー中に還元剤が存在し、前記アニオン交換クロマトグラフィーの間に還元剤が存在する。より特定的には、前記還元剤は、前記陽イオン交換クロマトグラフィーおよび前記アニオン交換クロマトグラフィーの間に使用されるバッファー中に存在する。さらなる実施形態では、1つ以上の限外濾過または透析濾過(UF/DF)工程が、クロマトグラフィー工程の間で行われる。工業的スケールのタンパク質製造において、これは典型的には、製品の濃縮とバッファー交換のためになされる膜による接線流ろ過ステップを用いて行われる。これらは通常、低タンパク質結合性で、製品ロスを防ぐため、特定の標準分子量カットオフがあり、例えば、これらは、10kDaの標準分子量カットオフを有するポリエーテルスルホン(PES)膜(Pall Life Sciences社製T−シリーズオメガ PES膜)や、10kDaの標準分子量カットオフを有する再生セルロース(Pall Life Sciences社製デルタ再生セルロース膜)を含む。
精製方法は、標的タンパク質の物理化学的性質に適合するために、これらのステップのいずれかを様々な組み合わせで含むことができる。本発明の方法に従って使用できる特定の精製方法は、WO2012/013682号に開示されているものである、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0020】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、混合物からのタンパク質精製の工程は、タンパク質を含む第1の溶出液が溶出する陽イオン交換クロマトグラフィーである第1のクロマトグラフィー;第1の溶出液に適用される第1の限外濾過または透析濾過工程;陰イオン交換クロマトグラフィーである第2のクロマトグラフィー工程であって、前記タンパク質を含む通過画分を生成する第2のクロマトグラフィー工程;及び、通過画分に適用される第2の限外濾過または透析濾過工程を含む。より詳細には、還元剤は、タンパク質を含む第1溶出液が溶出する陽イオン交換クロマトグラフィーの間に用いられるバッファー;前記第1の溶出液に適用された前記第1の限外濾過または透析濾過工程の間に用いられるバッファー;及び前記タンパク質を含む通過画分を生成するためのアニオン交換クロマトグラフィーである前記第2のクロマトグラフィー工程の間に使用されるバッファーのすべての中に存在する。
【0021】
別の実施形態では、混合物からのタンパク質精製の段階が、タンパク質を含む第1の溶出液を溶出させる第1のクロマトグラフィー工程、第1の溶出液に適用される第1の限外濾過または透析濾過工程、前記タンパク質を含む第2の溶出液が溶出する結合溶出モードで行われる第2のクロマトグラフィー工程を含む。好ましくは、還元剤は、タンパク質を含む第1溶出液が溶出する陽イオン交換クロマトグラフィー工程の間に用いられるバッファー;及び前記第1の溶出液に適用された前記第1の限外濾過または透析濾過して、還元剤存在下でタンパク質が回収し、前記第2のクロマトグラフィー工程に処される工程の間に用いられるバッファーのすべてに存在するものの、前記第2のクロマトグラフィー工程から溶出液中に回収されたタンパク質は、還元剤を本質的に含まない。
当業者に利用可能な多数の還元剤が存在する。最も好適な還元剤は、例えば、回収されたタンパク質サンプル中の標的チオールの還元状態を決定することによって経験的に決定され得、例えば、Lyons et al. 1990, Protein Engineering 3,703に記載されているような遊離チオールアッセイを用いられる。また、最も好適な還元剤は、回収されたタンパク質サンプルにおける望ましくない分子内及び分子間ジスルフィド結合の量を決定する手段によって選択されてもよく、あるいは、分析サイズ排除または逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、回収された所望の反応タンパク質分子量を測定することにより選択されてもよい。
サイズ排除HPLCは、小分子がカラムを流れる分子量に基づいて粒子をより小さいものよりも早く分離する。一方、逆相HPLCは、疎水性相互作用の原理で作動して、固定相上のリガンドと会合すると、分子の固定相への結合は分子の非極性セグメントの周囲に配置されている接触表面積に比例し;極性が低い分子については、保持時間が長くなる。両方の場合において、ジスルフィド結合の存在または不在は、異なる溶出プロフィールを有する種をもたらす。
【0022】
本発明の方法の第2の実施形態では、還元剤はグルタチオン、β−メルカプトエタノール、β−メルカプトエチルアミン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンシステインおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0023】
本発明の方法の第3の実施形態では、還元剤は0.1mM〜100mMグルタチオンである。還元剤の量は、製造するタンパク質に応じて調節することができる。本発明のさらなる特定の実施形態では、前記還元剤は0.1mM〜20mM、0.1mM〜10mM、0.5mM〜5mM、好ましくは0.5mM〜2mMグルタチオンである。
疑いを避けるために、本明細書で言及されるグルタチオンの用語は、CAS番号70−18−8で定義される単量体または還元グルタチオン単量体を意味する。
【0024】
本発明の方法の第4の実施形態では、還元剤は、回収されたタンパク質から除去される 。
当業者に知られている溶液から還元剤を除去するための異なる方法があり、そのいずれもが現在のプロセスに適していてもよく、透析濾過、ゲル濾過、透析又はさらなるクロマトグラフィー工程が挙げられる。本願方法の別の態様において、還元剤はタンパク質試料から透析濾過で除去される。
【0025】
本発明の方法の第5の実施形態では、タンパク質は別の分子に結合される。
一般に、タンパク質を別の分子に結合させるプロセスは、溶媒中で行われ、例えば、リン酸塩、クエン酸塩または酢酸塩などの水性バッファーが用いられる。典型的には、これは、タンパク質が、透析濾過又はゲル濾過によって転送される。反応は、一般に、任意の適切な温度、例えば約5℃〜約70℃で実施することができる、例えば、室温、すなわち20℃、21℃または22℃であるバッファーは、必要に応じて、EDTA、EGTA、CDTAまたはDTPAなどのキレート化剤を含有し得る。あるいはまた、バッファーは、クエン酸、シュウ酸、葉酸、ビシン、トリシン、またはTrisのようなキレート化バッファーであってもよい。分子は、一般に、タンパク質の濃度に対して少なくとも等モル濃度、すなわち少なくとも1:1である。典型的には、タンパク質の濃度に対して過剰な濃度で使用される。典型的には、分子は、1〜100倍モル過剰で使用される、1.1,1.5,2,3,5,10又は50倍モル過剰である。好適な濃度のさらなる例は、1.2,1.25,1.3及び1.4倍モル過剰である。あるいは、2以上のタンパク質が単一分子に結合されている場合には、前記分子は過剰でなくてもよい、例えば、タンパク質に対する分子の比は、0.1〜1であり得、好ましくは0.5であり得る。反応の持続時間は、当業者が経験的に決定することができ、典型的には1〜20時間である。一実施形態では、反応は17時間の期間にわたって行われる。
【0026】
必要に応じて、従来の手段により、出発材料又はプロセス中に生成される他の製品から、他の分子に結合された所望のタンパク質を分離することができ、例えばイオン交換、サイズ排除または疎水性相互作用クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー技術によって、分離することができる。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、別の分子に結合したタンパク質を回収する追加の工程を含む。
前記カップリングは、1つ以上のシステインを介して行うことができる。当業者は、カップリングに利用可能なタンパク質中のシステインの数を経験的に立証することができる、例えば、タンパク質が還元剤で処理された後に生成される遊離チオールの数を決定することによって達成される。遊離チオールの数を決定する方法は、当該技術分野で周知である、例えば、Lyons et al.,1990,Protein Engineering,3,703を参照されたい。あるいは、当業者は、上記反応から得られた種を、例えば、分析逆相またはサイズ排除HPLCによって分析することができる。あるいは、種々の遺伝子工学又はタンパク質工学技術を用いてタンパク質を修飾して、結合部位として使用するためにタンパク質にシステインを導入してもよい。したがって、カップリングに使用されるシステインは、タンパク質中に自然に発生し得るか、および/または組換えDNA技術によってタンパク質に設計され得る。したがって、結合に利用可能なシステインの数および位置は、たんぱく質の用途と必要とされる共役分子の数とに依拠して、具体的に制御することができる。
【0027】
本発明の方法の第6の実施形態では、タンパク質は、タンパク質上のシステイン残基への共有結合を介して別の分子に結合される。
本発明の方法の別の実施形態では、タンパク質はシステイン残基を介して2以上の分子に結合される。
【0028】
第7の実施形態では、本発明の方法は、別の分子に結合されたタンパク質を回収する工程をさらに含む。
【0029】
本発明の方法の第8の実施形態では、タンパク質は抗体またはその抗原結合断片である。
【0030】
本発明の方法の第9の実施形態では、前記抗原結合断片はFab’である。
さらに別の実施形態では、前記Fab’は、TNFαに特異的に結合する。さらなるより具体的な実施形態では、TNFαに特異的に結合するFab’は、WO01/094585号に開示されているようにCDP870であり、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明の方法の第10の実施形態では、前記抗体または抗原結合断片中のシステインは、抗体ヒンジにある。
当業者は知っているように、所望の効果に応じて、前記抗体または抗原結合断片を異なる分子に結合させることができる。このような抗体または抗原結合断片は、例えば、抗腫瘍剤、薬物、毒素または生物学的に活性なペプチドに結合することができる。一方、前記抗体または抗原結合断片は循環中の半減期を増加させるように不活性体、例えばアルブミンのような天然に存在するタンパク質、またはポリエチレングリコール(PEG)などの合成ポリマーと結合していてもよい。
【0032】
本発明の方法の第11の実施形態では、前記分子はポリエチレングリコール(PEG)分子である。
PEG分子は、エチレンオキシドの重合から得られ、300Da〜10,000,000Daの広い範囲の分子量で市販されている。本発明の特定の実施形態によるPEG分子は、市販又は公知の方法で化学的に合成された直鎖状又は分岐状であってもよい。異なる分子量を有するPEG分子は、異なる用途において使用され、鎖長効果による粘度等の物性が異なる一方、それらの化学的性質は大きく変化しない。ポリマーの大きさは、特に、腫瘍のような特定の組織に局在化したり、循環半減期を延長させたりする能力などの製品の意図された用途に基づいて選択することができる(Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531-545を参照されたい)。例えば、製品が循環から離れ、組織を貫通することが意図され、例えば腫瘍の治療に使用する場合、低分子量、例えば約5000Daの分子量のポリマーを使用することが有利であり得る。製品が循環中に残る場合、より高い分子量、例えば25,000Da〜40,000Daの分子量のポリマーを使用することが有利であり得る。
PEG分子は市販されているか、またはポリアルキレングリコール化合物またはその誘導体として合成することができ、その際カップリング剤またはカップリングまたは活性化基を有する誘導体(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート(tresylate)、アザジン、オキシラン、または好ましくはマレイミド基例えば、PEG−マレイミド)を用いて又は用いないで合成できる。他の適切なポリアルキレングリコール化合物としては、マレイミドモノメトキシPEG、活性化されたPEGポリプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない、それ以外にも、以下のタイプの荷電または中性のポリマーも含む:デキストラン、コリン酸、または他の炭水化物系ポリマー、アミノ酸のポリマー、およびビオチンおよび他の親和性試薬誘導体。PEG部分を結合することは、しばしば、PEG化と呼ばれ、タンパク質をPEG分子と反応させるプロセスをいい、このような反応の結果として、PEG分子は、前記タンパク質に共有結合される。
【0033】
一般に、PEG基を取り付けることについては、“Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications”,1992, J.Milton Harris (ed),Plenum Press,New York; “Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications”,1997,J. Milton Harris and S. Zalipsky (eds),American Chemical Society,Washington DC及び “Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,1998,M. Aslam and A. Dent, Grove Publishers,New Yorkを参照されたい。
【0034】
PEG化およびPEG化タンパク質を考慮する場合、プロセスの様々な態様、例えばタンパク質上の結合部位、PEG試薬の活性化型、性質(永久的または切断可能)、リンカーの長さおよび形状、ならびにPEG試薬の長さ、形状および構造などを考慮しなければならない。PEG化は、ランダムであってよく、タンパク質上のアミノ基が標的化され、そして種々のPEG化種の複雑な混合物をもたらす。あるいは、PEG化は、典型的には、N末端およびシステイン特異的反応を介して、部位特異的であってもよい。システイン残基は天然のタンパク質に自然に存在し得る。あるいは、遺伝子導入されたシステインを用いて、分子内の正確に決定された部位にPEG分子を導く。したがって、PEG化に利用可能なシステインの数および位置は、タンパク質の意図する用途および必要なPEG分子の数に依拠して、特異的に制御することができる。マレイミド、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、チオール試薬などの種々のチオール特異的試薬が利用可能である。形成された結合の安定性に起因して、マレイミド−PEG試薬がしばしば好ましい選択である。
本発明の方法のさらなる実施形態では、PEG分子は、マレイミド基を介してタンパク質上の単一のシステインに共有結合する。
【0035】
特定の実施形態では、PEG分子はマレイミド基を介して、抗体またはその抗原結合フラグメントのヒンジ領域に存在する単一のシステインに共有結合される。
本発明の方法の第12の実施形態では、前記PEG分子は、40,000PEG−マレイミドである。
特定の実施形態では、前記PEG分子は、分岐40,000PEG−マレイミドである。特に、前記PEG分子は2分枝を有する。
【0036】
第13の実施形態では、本発明の第11又は第12の実施形態による方法は、タンパク質を回収することをさらに含み、前記タンパク質はシステインを介して前記PEG分子に結合されている。
【0037】
本発明の第12の実施形態による方法の特定の実施形態では、前記PEG分子に結合されたタンパク質は回収され、例えばさらなるクロマトグラフィー工程のような当該技術分野で知られている手段によって、非結合タンパク質及びPEG分子からさらに精製される。
さらなる特定の実施形態では、前記PEG分子に結合されたタンパク質は抗体またはその抗原結合断片であり、特に前記タンパク質はFab’である。
本発明の方法の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片を2つ以上のPEG分子に結合させる。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは両方の重鎖上にPEG化される、または1つまたは両方の軽鎖上または重鎖および軽鎖の両方にPEG化されてもよい。
【0038】
本発明のさらなる特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合領域が結合されているPEG分子は、重鎖、軽鎖またはその両方にPEG分子が結合したFab’である。好ましい実施形態において、タンパク質は、抗体ヒンジ領域上のシステインを介してPEG分子に結合されたFab’である。特定の実施形態では、PEG化抗体は、少なくとも24kDの流体力学的サイズを有する。他の実施形態では、PEGは、20〜60kD(包括的)のいずれかからサイズが変化し得る。さらなる実施形態では、PEG結合抗体は、少なくとも200kDの流体力学的サイズを有する。抗体がPEG部分に結合されている本発明の実施形態では、抗体は、PEG部分に結合される、PEG化抗体は、PEG部分を欠く抗体に対してインビボ半減期を増加させることができる。
【0039】
代替実施形態では、本発明は、PEG分子に結合された抗体またはその抗原結合断片の製造方法に関し:
a)抗体またはその抗原結合断片を発現するような条件下で宿主細胞を培養する工程、そして
b)宿主細胞および他の不純物を含む混合物から、その抗体またはその抗原結合断片を精製する工程であって、ここで前記精製は、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含み、還元剤を前記混合物に添加し、前記抗体またはその抗原結合断片を、前記第1のクロマトグラフィー工程から最後のクロマトグラフィー工程までの前記還元剤の存在下で維持する、工程
c)抗体またはその抗原結合断片にPEGを添加する工程、そして
d)PEGに結合された抗体またはその抗原結合断片を回収する工程
を含む。
あるいは、本発明は、タンパク質を精製する方法に関し、前記タンパク質は、前記タンパク質を発現するような条件下、宿主細胞中で発現され、前記宿主細胞と他の不純物を含む混合物から前記タンパク質を精製することを含み、前記精製は、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含み、還元剤が前記混合物に添加され、前記タンパク質は、前記第1のクロマトグラフィー工程から最後のクロマトグラフィー工程までの前記還元剤の存在下で維持される、精製方法に関する。
【0040】
本発明の方法に従って製造することができる抗体または抗体断片は、組換え抗体断片をコードする1または複数の発現ベクターでトランスフェクトされた真核生物宿主細胞を培養することによって製造することができる。真核生物宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
哺乳動物細胞は、組換えタンパク質の増殖および発現を支持する任意の培地中で培養することができ、好ましくは、培地は、動物由来の製品、例えば動物血清およびペプトンを含まない化学的に規定された培地である。ビタミン、アミノ酸、ホルモン、成長因子、イオン、バッファー、ヌクレオシド、グルコースまたは等価エネルギー源の異なる組み合わせを含む細胞培養培地、は当業者には利用可能であり、適切な濃度で存在させて、細胞の増殖およびタンパク質の産生を可能にする。さらなる細胞培養培地成分は、当業者に知られている細胞培養サイクル中に、異なる時期に適切な濃度で細胞培養培地に含まれ得る。
哺乳動物細胞培養は、振とうフラスコまたはバイオリアクターなどの任意の適切な容器中で行うことができ、必要とされる生産規模に応じて、流加培養(fed−batch)方式で動作させても、させなくてもよい。これらのバイオリアクターは、攪拌タンクまたはエアリフト反応器のいずれであってもよい。様々な大規模なバイオリアクターは、1,000L〜50,000Lの容量より大きく、好ましくは5,000L〜20,000L、又は〜10,000Lの容量で利用可能である。あるいは、2Lと100Lの間のようなより小さなスケールのバイオリアクターを、本発明の方法に従って抗体または抗体断片を製造するためにも使用することができる。
【0041】
本発明の方法に従って製造することができる抗体またはその抗原結合断片は、典型的には、哺乳動物宿主細胞培養物、典型的にはCHO細胞培養物の上清中に見出される。抗体やその抗原結合断片などの目的タンパク質が上清中に分泌されるCHO培養方法において、前記上清は、当業界で知られている方法、典型的には遠心分離によって回収される。
したがって、本発明の特定の実施形態では、この方法は、タンパク質精製前に遠心分離および上清回収のステップを含む。さらに特定の実施形態では、前記遠心分離は連続的な遠心分離である。疑いを避けるために、上清は、細胞培養物の遠心分離に起因する沈降細胞の上に位置する液体を意味する。
【0042】
あるいは、宿主細胞は好ましくは原核細胞、好ましくはグラム陰性細菌である。より好ましくは、宿主細胞は大腸菌細胞である。タンパク質発現のための原核生物宿主細胞は、当該技術分野において周知である(Terpe, K. (2006) Overview of bacterial expression systems for heterologous protein production: from molecular and biochemical fundamentals to commercial systems. Appl Microbiol Biotechnol 72, 211-222.)。宿主細胞は、抗体断片のような目的のタンパク質を産生するように遺伝子操作された組換え細胞である。組換え大腸菌宿主細胞は、MC4100 、TG1、TG2、DHB4、DH5a、DH1、BL21、K12、XL1ublue、及びJM109を含む任意の適切な大腸菌由来であってもよい。一例は、組換えタンパク質発酵のための一般的に使用される宿主株である、大腸菌株W3110(ATCC 27,325)である。抗体断片はまた、改変された大腸菌株、例えば代謝突然変異体またはプロテアーゼ欠損大腸菌株を培養することにより産生され得る。
【0043】
本発明の方法に従って精製することができる抗体断片は、典型的には、蛋白質の性質、生産規模及び用いる大腸菌に応じて、大腸菌宿主細胞のペリプラズムまたは宿主細胞培養上清のいずれかに見出される。これらの区画にタンパク質を標的化するための方法は、当該技術分野で周知である(Makrides,S.C.(1996). Strategies for achieving high-level expression of genes in Escherichia coli. Microbiol Rev 60,512-538.)。タンパク質をペリプラズムに導く適切なシグナル配列の例は、大腸菌PhoA、OmpA、OmpT、LamBおよびOmpFシグナル配列が挙げられる。
自然分泌経路に依存することにより、または外膜の限定された漏出を誘発することによってタンパク質分泌を引き起こして、タンパク質を上清に向かわせる。その例は、pelBリーダー、タンパク質Aリーダー、バクテリオシン放出タンパク質の共発現、培地へのグリシンの添加に伴うマイトマイシン誘発性バクテリオシン放出タンパク質、及び膜透過化のためのkil遺伝子の共発現の使用である。最も好ましくは、本発明の方法において、組換えタンパク質は、宿主大腸菌のペリプラズム中で発現される。
【0044】
大腸菌宿主細胞における組換えタンパク質の発現はまた、誘導性システムの制御下であってもよく、その結果大腸菌における組換え抗体の発現が誘導性プロモーターの制御下にあってよい。大腸菌での使用に適した多くの誘導性プロモーターは、当該分野で周知であり、組換えタンパク質のプロモーター発現に依存して、温度または成長培地中の特定の物質の濃度のような様々な因子によって誘導される。誘導性プロモーターの例としては、ラクトースまたは非加水分解性ラクトース類似体であるイソプロピル−b−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能なことを特徴とするE.coliのLac、tac及びtrcプロモーター;並びにリン酸、トリプトファン、およびL−アラビノースによってそれぞれ誘導されるphoA、trpおよびaraBADプロモーターが挙げられる。発現は、例えば、誘導物質の添加または誘導が温度依存性である場合温度変化によって誘導されてもよい。誘導物質を培養物に添加することにより、組換えタンパク質発現の誘導を達成する場合、誘導物質は、培養システムおよび誘導物質に応じて、任意の適切な方法、例えば、一度または複数回の瞬間的な添加によって、または、培養中誘導物質の漸進的な添加によって達成される。誘導物質の添加と実際のタンパク質発現の誘導との間に遅延が存在し得ることが理解されるであろう、例えば、誘導物質がラクトースの場合、ラクトース前に既存の炭素源が利用されるので、タンパク質発現の誘導が起こる前に遅延が存在し得る。大腸菌宿主細胞培養物(発酵)は、大腸菌の増殖および組換えタンパク質の発現を支持する任意の培地で培養することができる、培地は、例えば、Durany O,C.G.d.M.C.L.-S.J. (2004) Studies on the expression of recombinant fuculose-1-phosphate aldolase in Escherichia coli. Process Biochem 39, 1677-1684.に記載されているような任意の化学培地であってもよい。
【0045】
大腸菌宿主細胞の培養は、必要な生産規模に応じて、振とうフラスコや発酵槽などの任意の適切な容器で行うことができる。様々な大規模発酵槽は、1、000リットルを超える容量から、約100、000リットルまでの容量で利用可能である。好ましくは、1,000〜50,000リットルの発酵槽が使用され、より好ましくは1,000〜25,000,20,000,15,000,12,000又は10,000Lである。より小規模な発酵槽を0.5〜1,000Lの間の容量で使用することもできる。
【0046】
大腸菌の発酵は、タンパク質および収率に応じて、任意の適切なシステム、例えば連続培養、回分培養(batch)又は流加培養(fed−batch)のモードで実施することができる。回分培養モードは、必要とされる栄養物または誘導物質の瞬間的添加と共に使用され得る。あるいは、流加培養(fed−batch)培養を使用してもよく、すなわち発酵槽に存在する最初の栄養素を使用して持続的な最大の比増殖速度で回分培養モード前培養で成長させた培養し、1つまたは複数の栄養供給体制発酵が完了するまでは、成長率を制御するために使用してもよい。流加培養(fed−batch)モードは、前誘導時に使用してもよく、大腸菌の宿主細胞の代謝を制御して、高い細胞密度を達成できる。所望であれば、宿主細胞は、発酵培地から回収され、例えば、宿主細胞は、遠心分離、濾過、または濃縮によって試料から採取され得る。
【0047】
一実施形態では、本発明による方法は、タンパク質を抽出する前に、遠心分離および細胞回収のステップを含む。
宿主細胞のペリプラズム空間に抗体断片などの目的のタンパク質が見出される大腸菌発酵プロセスにおいて、宿主細胞からタンパク質を放出させることが必要である。放出は、機械的または圧力処理による細胞溶解、凍結融解処理、浸透性ショック、抽出剤または熱処理などの任意の適切な方法によって達成することができる。タンパク質放出のためのこのような抽出方法は、当該技術分野で周知である。特定の実施形態では、本発明の方法は、タンパク質精製の前に追加のタンパク質抽出ステップを含む。より特定の実施形態では、前記タンパク質抽出ステップは、還元剤の存在下で行われる。
【0048】
本発明による方法のさらなる実施形態では、さらに、細胞培地から宿主細胞を回収し、還元剤の存在下で行われるタンパク質抽出工程を用いてタンパク質を採取し、前記タンパク質抽出工程から得られたタンパク質含有混合物を回収し、前記タンパク質を前記混合物から精製する工程を含み、前記精製は、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含み、前記混合物に還元剤を添加され、前記タンパク質は、前記第1のクロマトグラフィー工程から最後のクロマトグラフィー工程まで前記還元剤の存在下で維持される。
【0049】
本発明による方法のさらなる実施形態では、本発明のタンパク質抽出工程において存在する還元剤は、本発明の方法のタンパク質精製工程中に存在する還元剤と同一であっても異なっていてもよい。
好ましい実施形態では、抽出バッファーを試料に添加し、次いで、試料を熱処理工程にかける。熱処理工程は、米国特許第5,655,866号明細書に詳細に記載されているようなものであることが好ましく、この熱処理工程により、他の抗体関連物質の除去を容易にすることにより、正確に折り畳まれ、組み立てられた抗体断片の可溶な試料を得ることができる。
【0050】
熱処理工程は、試料を所望の高温にすることにより行われる。最も好ましくは、熱処理工程は、30℃〜70℃の範囲内で行われる所望に応じて温度を選択することができ、精製する抗体の安定性に依存し得る。別の実施形態では、温度は40℃〜65℃の範囲内である、好ましくは40℃〜60℃の範囲であり、より好ましくは45℃〜60℃の範囲内である、より好ましくは50℃〜60℃の範囲であり、最も好ましくは55℃〜60℃の範囲であり、58℃から60℃または59℃までの間であり、最低温度は30℃、35℃または40℃であり、最高温度は60℃、65℃又は70℃である。
熱処理工程は、長期間行われることが好ましい。熱処理の長さは1〜24時間であることが好ましい、より好ましくは4〜18時間であり、さらに好ましくは6〜16時間であり、10〜14時間または10〜12時間、例えば12時間の間であることが最も好ましい。これにより、最小限の熱処理時間が1,2又は3時間であり、最大は20時間、22時間又は24時間である。
特定の実施形態では、熱処理は、50℃〜60℃で10〜16時間行われる、より好ましくは59℃で10〜12時間である。当業者は、問題のサンプルおよび生成される抗体の特性に適合するように、温度および時間を選択することができることを理解するであろう。
【0051】
目的のタンパク質を含む混合物を抽出する工程に続いて、抗体断片は、遠心分離および/または濾過の段階に供され得る。
さらなる特定の実施形態では、本発明の方法は、抽出工程に続いてそして前記混合物から前記タンパク質を精製する前に、目的のタンパク質を含有する混合物のpHを調整するステップを含むことができる。
【0052】
本発明によるタンパク質製造方法のさらなる実施形態では、前記熱処理工程中に還元剤も存在する。特定の実施形態では、試料に添加される抽出バッファーは、前記還元剤を含有する。この意味で、前記熱処理工程中に存在する還元剤は、本発明の方法によるタンパク質精製中に存在する還元剤と同一であっても異なっていてもよい。
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、熱処理工程中に存在する還元剤はグルタチオン、β−メルカプトエタノール、β−メルカプトエチルアミン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンシステインおよびこれらの組み合わせから選択される。
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、熱処理工程中に存在する還元剤は、0.1mM〜100mMグルタチオンである。還元剤の量は、製造するタンパク質に応じて調節することができる。本発明のさらなる特定の実施形態では、前記グルタチオンは0.5mM〜80mM、1mM〜50mM、1mM〜25mM、好ましくは1mM〜10mMの量で存在する。
【0053】
定義
本明細書で使用される“抗体(単数)”または“抗体(複数)”という用語は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体をいう。本明細書で使用される“抗体(単数)”または“抗体(複数)”という用語は、当該技術分野で知られているように、組換え技術によって生成される組換え抗体を含むが、これらに限定されない。“抗体”または“抗体”は、任意の種、特に哺乳動物種の抗体;IgA1、IgA2、IgD、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE及びIgM及びその改変変異体を含む任意のアイソタイプのヒト抗体などのヒト抗体;非ヒト霊長類抗体(例えばチンパンジー、ヒヒ、アカゲザルまたはカニクイザル);非ヒト霊長類抗体(例えばマウス、ラットまたはウサギからの齧歯類抗体;ヤギまたはウマ抗体;およびラクダ抗体(例えば、ナノボディ(商標)などのラクダまたはリャマ)およびそれらの誘導体;ニワトリ抗体のような鳥種またはサメ抗体のような魚種のいずれかである。
用語“抗体”または“抗体”はまた、少なくとも1つの重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第一の部分が第一の種由来であり、重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第二部分が第二の種からのものであるキメラ抗体を指す。本明細書中の目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、カニクイザルなど)由来の可変ドメインの抗原結合配列及びヒト定常領域列を含む“霊長類化された”抗体を含む。“ヒト化”抗体は、非ヒト抗体由来の配列を含むキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、その超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性および活性を有する、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリまたは非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域(または相補性決定領域(CDR))の残基で置換されているヒト抗体(レシピエント抗体)である。
多くの場合、CDRの外側のヒト(レシピエント)抗体の残基、ようするにフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基にさらに置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに改善するためになされる。ヒト化は、ヒトにおける非ヒト抗体の免疫原性を減少させ、従って、ヒト疾患の治療に対する抗体の適用を容易にする。ヒト化抗体およびそれらを生成するためのいくつかの異なる技術が当該技術分野で周知である。“抗体(単数)”または“抗体(複数)”という用語は、ヒト化の代替として生成することができるヒト抗体も指す。
【0054】
例えば、内因性マウス抗体の産生の無い状態でヒト抗体の完全なレパートリーを免疫化で産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を製造することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが報告されている。
このような生殖系列突然変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の移植は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニック動物を特定抗原で免疫する際に、特定抗原に対する特異性を有するヒト抗体の産生をもたらす。このようなトランスジェニック動物を製造するための技術およびそのようなトランスジェニック動物からヒト抗体を単離および産生するための技術は、当該技術分野で知られている。
前記トランスジェニック動物、例えば、マウスにおいて、マウス抗体の可変領域をコードする免疫グロブリン遺伝子のみを、対応するヒト可変免疫グロブリン遺伝子配列に置換する。抗体定常領域をコードするマウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子は変化しないままである。このようにして、抗体エフェクターは、本発明の免疫系において機能し、その結果、B細胞の発現は本質的に変化せず、生体内での抗原刺激に対する抗体応答の改善につながる可能性がある。対象の特定の抗体をコードする遺伝子がこのようなトランスジェニック動物から単離されると、定常領域をコードする遺伝子を、完全なヒト抗体を得るためにヒト定常領域遺伝子に置換することができる。インビトロでヒト抗体/抗体フラグメントを得るための他の方法は、ファージディスプレイ技術またはリボソームディスプレイ技術のようなディスプレイ技術に基づき、少なくとも部分的に人為的にまたはドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから生成される組換えDNAライブラリーが使用される。ヒト抗体を生成するためのファージおよびリボソームディスプレイ技術は、当該技術分野で周知である。ヒト抗体はまた、対象の抗原でex vivo免疫化され、続いて融合されてハイブリドーマを生成する単離されたヒトB細胞からも生成され得、次いでハイブリドーマは最適なヒト抗体についてスクリーニングされ得る。
【0055】
本明細書で使用される“抗体(単数)”または“抗体(複数)”という用語は、また、脱グリコシル化抗体を意味する。
【0056】
本明細書で使用される“抗体断片”という用語は、当該技術分野で知られている少なくとも1つの重鎖または軽鎖イムノグロブリンドメインを含み、抗原に結合する抗体分子をいう。本発明による抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)
2並びに、FvおよびscFvフラグメントを含み、ならびにダイアボディー;トリボディー;テトラボディー;ミニボディー、sdAbsのようなドメイン抗体(dAb)、VHHおよびVnar断片、単鎖抗体、抗体断片または抗体から形成された二重特異性、三特異的、四重特異的または多重特異的抗体を含み、これらに限定されないが、Fab−FvまたはFab−Fv−Fv構築物を含む。上記で定義した抗体断片は、当該技術分野で公知である。
【0057】
本明細書で使用される用語“クロマトグラフィー”は、混合物の個々の溶質が移動相の影響下で静止媒体を通って移動する速度の差の結果として、混合物中の目的の溶質が他の溶質から分離されるプロセスをいう。
【0058】
本明細書で使用される“アニオン交換クロマトグラフィー”という用語は、例えば4級アミノ基のような1またはそれ以上の正に荷電したリガンドを結合させた固相が正に荷電されるクロマトグラフィーをいう。市販のアニオン交換樹脂としては、DEAEセルロース、QAE SEPHADEX(登録商標)及びFAST Q SEPHAROSE(登録商標)(GEヘルスケア)が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される“陽イオン交換クロマトグラフィー”という用語は、例えばカルボン酸塩またはスルホネート基のような1以上の負に荷電した配位子を有する、負に荷電された固相を含むクロマトグラフィーをいう。市販されている陽イオン交換樹脂としては、アガロース上に固定化されたカルボキシ−メチル−セルロース、スルホプロピル(SP)およびアガロース上に固定されたカルボキシ−メチル−セルロース、スルホニルが挙げられる 。
【0060】
本明細書で使用される“洗浄バッファー”という用語は、目的のポリペプチド分子を溶出させる前にイオン交換樹脂を洗浄または再平衡化するために使用されるバッファーを意味する。簡便に、洗浄バッファーおよびローディングバッファーは同じであってもよいが、これは必須ではない。
【0061】
本明細書で使用される“ロードバッファー”という用語は、対象のタンパク質を固相にロードするために使用されるバッファーを意味する。
【0062】
本明細書で使用される“溶出バッファー”という用語は、固相から関心のあるタンパク質を溶出するために使用されるバッファーをいう。これは、クロマトグラフィーの固相から目的のポリペプチドが溶出するように、添加剤を使用、および/または溶出バッファーの導電性および/またはpHを調整することによって、達成することができる。
【0063】
本明細書で使用される“限外濾過”という用語は、例えば、目的のタンパク質を含む溶液のような混合物を濃縮または精製目的のための膜を通過させる、圧力駆動プロセスを意味する。限外濾過膜は、典型的には、1〜50nmの間の平均細孔径を有し、逆浸透膜と精密濾過膜との間の平均細孔径を有する。細孔径は、通常、特定の分子量のタンパク質を保持する能力によって定量化され、通常、kDaの公称分子量カットオフ(NMWCO)に関して引用されている。限外濾過は、溶質の大きさに依存する所与の圧力駆動力に応答して、膜を横切る異なる物質の濾過速度の差に基づいて溶質を分離する。このようにして、混合物または溶液中の溶質は、サイズ差に基づき分離される。限外濾過は、タンパク質濃度、バッファー交換、脱塩、タンパク質精製、ウイルスクリアランス、および清澄化のための下流の処理において頻繁に使用される。“限外濾過”という用語は、溶液のような混合物が限外濾過膜に沿って水平に通過する接線流濾過(TFF)を含む。“限外濾過”という用語は、溶質が、大きさのみだけでなく、大きさ及び電荷に基づいて分離される高性能接線流濾過(HPFF)を含まない。
【0064】
本明細書で使用される“透析濾過”という用語は、タンパク質、ペプチド、核酸、および他の生体分子を含む溶液から塩または溶媒の濃度を本質的に置換する限外濾過膜技術のタイプをいう。プロセスは、透過性膜フィルタを選択的に使用して、それらの分子量に基づいて、溶液および懸濁液の成分を分離する。より小さい分子、例えば塩、溶媒及び水は、より大きな分子を保持する限外濾過膜を自由に通過する。タンパク質サンプル、典型的には緩衝液は、タンパク質を保持し、緩衝交換を可能にする膜を横切って反濾過される。経時的に、タンパク質を含む元のバッファーは、新しいバッファーに置換される。
あるいは、実験規模に応じて、元のバッファーを新たなバッファーに置き換える手段としてゲル濾過(重力下で操作されるセファデックスG−25脱塩カラムなど)を使用してもよい。この場合、樹脂細孔よりも大きい分子が樹脂細孔から排除され、固相を速く移動する一方、小さい分子は樹脂細孔内に拡散し、それ故よりゆっくりと保持され、よりゆっくりと固相を移動する場合に、バッファー置換が起こる。所望のタンパク質のようなより大きな分子は、樹脂平衡化バッファー中に溶出した画分に回収される。
【0065】
本明細書で使用される“PEG化”という用語は、PEG分子に共有結合したタンパク質を意味する。