特許第6807334号(P6807334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6807334ダイレベルのリフトオフの最中におけるメカニカルダメージを低減するためのサファイアコレクタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807334
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ダイレベルのリフトオフの最中におけるメカニカルダメージを低減するためのサファイアコレクタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20201221BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01L21/02 C
   H01L33/00
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-559464(P2017-559464)
(86)(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公表番号】特表2018-524798(P2018-524798A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2016060458
(87)【国際公開番号】WO2016180831
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/160,814
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517152128
【氏名又は名称】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ニー,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ティー,キアン,ホック
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−024117(JP,A)
【文献】 特表2011−512256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタシステムであって、
レーザリフトオフを介してサブマウントからリリースされたチップを受け入れるキャビティであり、受け入れのために前記チップが通過する開口部を有する下面を含む、キャビティと、
前記キャビティに対して結合されたトンネルであり、前記キャビティから前記チップを除去するように真空である、トンネルと、
前記トンネルと反対側の前記キャビティに対して結合された複数の空気プッシャであり、前記チップを前記トンネルに向かって押すように、前記キャビティに対して加圧空気を提供する、複数の空気プッシャと、
を含み、
前記キャビティの前記下面は、前記開口部の長さの少なくとも5倍より大きい、前記キャビティの前壁と前記トンネルとの間の長さを有する、
コレクタシステム。
【請求項2】
上面を有する前記キャビティは、前記開口部の真上に傾斜した部分を含む、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項3】
前記キャビティは、前記トンネルの中へ流れ込む空気が通過する少なくとも一つの壁を含む、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項4】
前記空気は、前記キャビティのそれぞれの壁から前記トンネルの中へ流れ込む、
請求項3に記載のコレクタシステム。
【請求項5】
前記真空の程度は、−3.0kPaより小さい、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項6】
前記真空の程度は、−1.5kPaより小さい、
請求項5に記載のコレクタシステム。
【請求項7】
前記サブマウントから前記キャビティにおける前記開口部までの高さは、前記チップの大部分が、前記開口部に最も近い前記空気プッシャからの加圧空気に対して垂直から30度の範囲内に向けられるように、選択される、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項8】
前記高さは、5.5mmと6.5mmとの間である、
請求項7に記載のコレクタシステム。
【請求項9】
各空気プッシャと前記サブマウントに対して垂直に延びるラインとの間の距離は、前記サブマウントの上方の高さが増すにつれて増加する、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項10】
前記キャビティの前記前壁は、前記前壁と前記サブマウントに対して垂直に延びるラインとの間の距離が前記サブマウントの上方の高さが増すにつれて増加するように、傾斜している、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項11】
前記複数の空気プッシャからの前記加圧空気は、少なくとも0.3MPaである、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項12】
前記複数の空気プッシャからの前記加圧空気は、少なくとも0.4MPaである、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項13】
前記複数の空気プッシャは、前記サブマウントに対して実質的に平行な方向において、前記加圧空気を提供する、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項14】
前記トンネルは、フレア部分を介して前記キャビティに対して結合されており、かつ、
前記フレア部分の少なくとも一部分によって、前記空気プッシャからの空気が、前記コレクタシステムを逃げ出すことができる、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【請求項15】
前記真空は、前記トンネルまで到着したチップが前記トンネルを通って収集貯蔵所まで移動を続けることを確保するために必要な最低レベルの圧力に維持されている、
請求項1に記載のコレクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイスの分野に関し、そして、特定的には、その上で発光素子が成長するサファイア基板のレーザリフトオフの最中における発光デバイスに対するダメージを低減するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、半導体発光素子を含むものは、基板上で形成/成長され、サファイア製ウェハ基板が一般的である。発光素子の例においては、GaN核形成層(nucleation layer)がサファイア基板の上に形成されてよく、その後に、1つ以上のn型層、1つ以上の活性層、および1つ以上のp型層が続く。n型層およびp型層の外部電源に対する接続を提供するために、金属導電体(metallic conductors)が層の中および上に形成されてよく、最上の(p型)層の上のコンタクトパッドを介して、発光素子の活性層を活性化する。
【0003】
金属コンタクトパッドは、一般的に不透明または反射性であるので、発光素子は、コンタクトパッドの反対側の表面から、および、基板を通じて光を放射するようにデザインされている。光取り出し効率(light extraction efficiency)を改善するために、基板が除去されてよく、半導体表面を露出させている。半導体表面は、光取り出し効率をさらに高めるために処理されてよい。ある場合には、1つ以上のコンタクトパッドが装置の発光側に配置されてよい。
【0004】
レーザリフトオフ(laser lift-off)は、サファイア基板を発光素子から除去するために一般的に使用されるプロセスである。レーザパルスは、サファイア基板を通して投射され、そして、サファイア−半導体インターフェイスにおいて半導体層によって吸収されて、インターフェイスにおける半導体層の瞬時の熱分解のせいで、局所化された爆発的な衝撃波を生成している。
【0005】
ウェハレベルにおいてレーザリフトオフ(LLO)が実行される場合には、ウェハ全体が処理された後でウェハサイズのサファイア基板が除去される。一方で、個々のダイ(die)それぞれについてレーザリフトオフが実行される場合、ダイはサブマウントタイル(sub-mount tile)の上にフリップチップ(flip-chip)実装され、サファイアは上を向いている。レーザが各ダイに対して適用され、そして、レーザが各ダイに入射した直後に、ダイサイズのサファイアチップは、「サファイアコレクタ("Sapphire Collector")」の中へポップアップ(pop-up)し、サブマウントタイルの上に半導体構造を残している。サブマウントタイルは、その後で、例えば、各ダイの上にレンズ要素を作成するために処理され、次いで、個々の発光デバイスを提供するためにスライス/ダイシングされる。
【0006】
サファイアが除去されて、ダイがカバーされるまでの間の時間には、比較的に壊れやすい半導体表面が露出されており、そして、メカニカルダメージを受けやすい。一つの例示的な製造工程の最中に、そうしたメカニカルダメージに対する歩留まり損失(yield loss)が約0.236%であると測定されてきている。
【発明の概要】
【0007】
レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性を低減することが有利であろう。
【0008】
この問題をより上手く取り扱うために、本発明の一つの実施形態においては、ダイレベルのレーザリフトオフ(LLO)の最中に半導体構造から除去されるダイサイズのサファイアチップをキャプチャするために、一つまたはそれ以上の特徴、構造的およびパラメトリック両方のもの、がサファイアコレクタ(SC)において含まれている。これらの特徴は、半導体構造からリリースされた直後に各サファイアチップがサファイアコレクタによって確実にキャプチャされる可能性を増すようにデザインされている。
【0009】
サファイアコレクタは、レーザリフトオフを介してサブマウントからリリースされたチップを受け入れるキャビティ、キャビティに対して真空を提供し、かつ、キャビティからチップを除去するトンネル、および、チップをトンネルに向かって押すようにキャビティに対して加圧空気を提供する複数の空気プッシャ、を含んでいる。本発明の一つの実施形態において、キャビティは、サブマウントと実質的に同じ高さであり、かつ、チップを受け入れる開口部の長さの少なくとも5倍より大きい、キャビティの前壁とトンネルとの間の長さを有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、キャビティは、以下の特徴のうち一つまたはそれ以上を含んでいる。チップをトンネルに向かって飛び跳ねさせる、開口部の真上に傾斜した部分を有する上面、トンネルの中へ向かう空気流が通過する一つまたはそれ以上のメッシュの壁、および、空気プッシャをオフセットさせる傾斜した前壁、である。
【0011】
サブマウント表面の上でキャビティにおける開口部の高さは、チップの大部分が、開口部に最も近い空気プッシャからの加圧空気に対して垂直から30度の範囲内に主平面を有するよう向けられるように、調整され得る。いくつかの実施形態において、その高さは、5.5mmと7.0mmとの間である。
【0012】
トンネル真空は、いくつかの実施形態においては、比較的に低くてよく、−3.0kPa以下、好ましくは−1.5kPa以下であってよい。空気プッシャからの圧力は、比較的高くてよく、いくつかの実施形態においては、チップの初期経路に対して実質的に垂直な空気流を用いて、少なくとも+0.3MPa、好ましくは少なくとも+0.4MPaである。3個またはそれ以上の空気プッシャが備えられてよく、各々は、少なくとも、0.2mm高さ及び7.0mm幅の空気ブレード開口部を有している。
【0013】
本発明の一つの例示的な実施形態において、レーザリフトオフ後のメカニカルダメージによる歩留まり損失は、0.236%から0.0001%未満まで3桁以上の規模で低減された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明が、さらに詳細に、そして、例として、添付図面を参照して説明される。
図1A図1Aは、レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性を実質的に低減するサファイアコレクタの一つの例を示している。
図1B図1Bは、図1Aのサファイアコレクタにおけるサファイアチップの有害な移動の例を示している。
図1C図1Cは、図1Aのサファイアコレクタにおけるサファイアチップの有害な移動の例を示している。
図2図2は、図1Aのサファイアコレクタの中におけるチップの軌道の分布について一つの例を示している。
図3A図3Aは、レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性をさらに実質的に低減するサファイアコレクタの実施形態の例を示している。
図3B図3Bは、レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性をさらに実質的に低減するサファイアコレクタの実施形態の例を示している。
図3C図3Cは、レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性をさらに実質的に低減するサファイアコレクタの実施形態の例を示している。
図3D図3Dは、レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性をさらに実質的に低減するサファイアコレクタの実施形態の例を示している。
図4図4は、図3Dのサファイアコレクタの特徴及び寸法の例を示している。
【0015】
図面全体を通して、同じ参照番号は、類似または対応する特徴または機能を示している。図面は、説明の目的のために含まれているものであり、そして、本発明の範囲を限定するように意図されたものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、限定よりもむしろ説明のために、特定のアーキテクチャ、インターフェイス、技術、等といった特定の詳細が、本発明の概念の完全な理解を提供するために、明らかにされる。しかしながら、当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細から離れて、他の実施形態において実施されてよいことが明らかであろう。同様に、この説明の文章は、図に示されている例示的な実施形態に向けられたものであり、そして、請求項の中に明確に含まれる限界を超えて請求される発明を限定するように意図されたものではない。簡潔および明確のために、周知の装置および方法の詳細な説明は、不必要な詳細により本発明の説明を不明瞭にしないように、省略される。また、簡潔および明確のために、図面は縮尺どおりに示されていない。特定の特徴が大きく描かれており、そうした特徴を明確にする注釈と他の要素が可能である。同様に、図面は直線の輪郭を使用して示されているが、当業者であれば、示された形状は長方形の構造に限定されないことを認識するであろう。
【0017】
図1Aは、2014年8月19日に提出された米国仮特許出願第62/038988号に開示されている、サファイアコレクタ(SC)120を示している。そして、今や、2015年7月29日に提出された国際特許出願第PCT/IB2015/055712号であって、ここにおいて参照として包含されている。SC 120は、トンネル130に対して開放された収集キャビティ(collection cavity)125を含んでいる。トンネル130は負圧(negative pressure)の下にあり、トンネルの中へ真空流(vacuum flow)135を生じさせる。SC 120は、また、パイプ140の中で圧力145の下に空気をそれぞれに提供する、キャビティ125への入力パイプ140も含んでいる。追加のトンネルおよびパイプを、また、備えられてよい。
【0018】
レーザ素子110は、ゲート128を介してSC 120に入るパルスレーザビーム115を提供する。ゲート128は、レーザビーム115を遮断しないようにデザインされているが、サファイアチップ170がキャビティ125に入った後で逃げ出すことを防止する。ゲート128は、例えば、レンズ素子、または、単純な格子であってよい。
【0019】
SC 120の下には、サファイア基板チップ170が取り付けられた複数の発光素子165がサブマウント160の上にマウントされている。レーザリフトオフの最中に、SC 120は、サファイアチップ170が取り付けられた発光素子165の上に置かれている。SC 120をサブマウント160に関して移動すること、または、サブマウント160を開口部122に関してSC 120のキャビティ125へ移動すること、のいずれかによるものである。
【0020】
開口部122の下に置かれた発光素子165およびチップ170について、パルスレーザビーム115が適用されて、チップ170が発光素子165から爆発的にリリースされる(released)。上向きの力によって、解放されたチップ170は開口部122に進入し、そして、真空流135がチップをトンネル130に向かって移動させる。パイプ140を出てくる加圧空気流145も、また、移動しているチップ170をトンネル130に向かって押すように働く。
【0021】
真空流135および加圧空気145に関するチップ170の初期リフトオフ軌道の方向および速度に依存して、チップ170は、直接的に、または数回の飛び跳ね(ricochets)の後で、真空トンネル130中に進入することができる。理想的には、たとえチップ170がキャビティ125の内側で飛び跳ねても、チップ170は、最終的にトンネル130の中に入る。チップの速度が継続的に減少し、かつ、従って、真空流135および加圧空気流145による影響をますます受けるためである。
【0022】
発明者らは、高速カメラを用いて、サブマウント160および開口部122に関してレーザリフトオフ動作(operation)を記録し、そして、いくらかのチップ170が開口部122から出て行き、ダメージを生じさせることを観察した。
【0023】
ある場合には、チップ170が開口部122の下方をホバリング(hovering)し、そして、最終的にキャビティ125の中へ吸い戻され、有害な影響を生じることはない。他の場合には、しかしながら、チップ170は十分な下向き速度(downward speed)で移動しており、真空流135および加圧空気流145は、図1Bに示されるように、チップが開口部122から出て行き、サブマウント160に当たる以前に、方向を反転または変更するには不十分である。下向き移動のおそらくの原因は、キャビティ125の壁または上面から外れるチップ170の飛び跳ねである。大部分の飛び跳ねているチップ170は、おそらく、真空流135および加圧空気のせいで、最終的にトンネル130の中へ吸い戻される。しかし、いくらかのチップ170は、開口部122を通じて逃げ出し、そして、マウントされている発光素子165と共にサブマウント160に当たる。
【0024】
出て行くチップ170が、サファイアチップ170が取り付けられることなく発光素子165が置かれている場所(すなわち、チップ170がレーザ除去された素子165)に当たる場合は、たとえ低速であっても、半導体表面の壊れやすい性質は、おそらく結果として素子165の破壊を生じるだろう。
【0025】
図1Cは、出て行くチップ170が、SC 120の下部外面126とサブマウント160との間で繰り返して飛び跳ねるところの観察された故障メカニズムを示している。しばしばサブマウント160上の複数の素子165に対して、かなりのダメージを生じさせるものである。
【0026】
上述のように、先行技術においてはレーザリフトオフ後のメカニカルダメージによる歩留り損失は、主に出て行くチップ170が負わせるダメージにより、一式の製造行程において0.236%に達することが観察されている。図1Aの強化されたサファイアコレクタ120は、レーザリフトオフ後のメカニカルダメージによる歩留まり損失を、0.236%から0.023%へ、一桁だけ減少させてきた。しかしながら、発光デバイスに対する競争が増加している市場では、このような低い歩留まり損失であっても、これらのデバイスについての利益率に大きな影響を及ぼし得るものである。
【0027】
計算流体力学(CFD)の使用と、高速度(750fps)カメラおよび透明な壁を用いて作成されたサファイアコレクタの使用を通して、発明者らは、チップ170は実質的に大部分が、キャビティ125の上面に当たっており、チップ170がトンネル130に直接入ることは、あるとしても、わずかであることを発見してきた。
【0028】
発明者らは、その後に、チップ170は高い垂直速度(28m/s以上)でキャビティ125に進入すること、および、キャビティ125内の乱流(turbulence)が空気プッシャ150および真空135の有効性を低下させることを確認した。
【0029】
図2は、シミュレーションおよび透明キャビティ225を通じた観察によって決定される、例示的なサファイアコレクタ内でのチップの軌道の例示的な分布を示している。この例示的なSCにおいては、3つの空気流145が提供されている。
【0030】
高いリフトオフ速度(約28m/s)のせいで、ほとんど全てのチップ170がキャビティ225の上面228におけるメッシュ128に衝突する。平均的経路210およびメッシュ上の衝突位置の例示的な分布250によって示されるようにである。メッシュに衝突した後で、チップは飛び跳ね、そして、平均的経路215を介してトンネル130のフレア部分133まで移動する。例示的な分布260によって示されるように、チップは、最初の衝突位置の分布250よりも広い範囲にわたりフレア部分133に衝突している。
【0031】
飛び跳ね経路216、218は、チップ170の大部分が、平均的経路216を介してトンネル130に向かって移動するという事実を説明するように意図されている。フレア部分133の表面に対する法線233に関して、チップが表面133に当たるところの入射角によるものである。多くのチップ170は、しかしながら、平均的経路218を介して開口部122に向かって飛び跳ねて戻り、そして、これらのチップ170のうち少数(a few of)が開口部122を出て行く可能性が存在する。図1B、1Cにおいて説明したように、おそらくサブマウント160の上の保護されていないチップ165に対してダメージを生じさせている。
【0032】
図3A−3Dは、レーザリフトオフ後の発光素子に対するメカニカルダメージの可能性をさらに実質的に低減するサファイアコレクタの実施形態の例を示している。上述のように、これらの実施形態は縮尺どおりには描かれていない。
【0033】
図3Aに示されるように、キャビティの上面328は、トンネル130に向かう飛び跳ね角度(ricochet angle)を増加させるために傾斜されてよい。図2のSCと対比して、開口部122に進入する170の平均的経路310は、図2の平均的経路210と実質的に同じである。しかしながら、平均的な飛び跳ね経路315によって示されるように、傾斜した上面328は、チップ170を、トンネル130により近いフレア部分133に、法線233に関してより大きな入射角335で衝突させる。増加した入射角335は、平均的経路316を介してトンネル130に向かって飛び跳ねるより多くのチップ170、および、平均的経路318を介して開口部122に向かって飛び跳ねるより少ない170を結果として生じる。
【0034】
図3Bに示されるように、キャビティ325の中に延長された下面330が備えられる場合に、経路315に沿ったチップの入射角335は、法線333に関してさらに大きくなる。チップは、開口部122に向かって傾斜したトンネルのフレア部分より、むしろ、サブマウント160に対して平行な表面330に当たるからである。このより大きな入射角335のおかげで、より多くのチップ170が、平均的経路316を介してトンネル130に向かい、そして、より少ないチップ170が、平均的経路318を介して開口部122に向かって飛び跳ねる。
【0035】
上述のように、図は縮尺どおりではなく、そして、そうした特徴を明確にする注記および他のエレメントが可能であるように、所定の特徴が大きく描かれている。一つの例示的な実施形態において、前壁380とトンネル130のフレア部分133との間の、延長された下面330の長さは、開口部122の長さの少なくとも5倍である。
【0036】
開口部122を出て行くチップ170の数量をさらに減少させるために、空気流145の圧力、および、トンネル130の真空135が調整されてよく、キャビティ325の中のチップ170の水平速度Vhを増加させ、かつ/あるいは、それらの垂直速度Vvを減少させる。期待されるように、空気流145の圧力とボリュームを増加させることは、経路310、315に沿ったチップ170の水平速度Vhを増加させる。顕著なことに、空気のボリュームを増加させるためにより大きい空気ブレード開口部(air blade opening)を備えることは、チップ170の水平速度Vhに影響を及ぼすように薄い空気ブレード開口部を使用することよりも、肯定的な効果をもたらすことが見い出された。一つの例示的な実施形態においては、約0.2mm+/−0.05mmの空気ブレード開口部について、空気流145の圧力は、少なくとも0.3MPaであってよく、かつ、好ましくは0.4MPa以上である。
【0037】
予想外に、しかしながら、トンネル130の真空135を減少させることは、経路310、315に沿ったチップの水平軌道を増加させる働きをする。発明者らは、真空135の程度(magnitude)が、水平成分Vhに影響を及ぼすよりも、チップの速度Vの垂直成分Vvに実質的に多くの影響を及ぼすことを確認した。垂直方向の速度Vvにおけるこの増加は、空気ブレード150からの空気流が、チップが上面328に向かって移動する際にチップ170の経路310をオフセットさせる能力を低下させる。好ましくは、真空135は、トンネル130に到着するチップ170が、トンネル130を通って、トンネル130の他端において収集貯蔵所(collection repository)(図示なし)まで移動し続けることを確保するために必要な最小レベルに維持されている。貯蔵所との近接度(proximity)に応じて、この最小真空は、−0.2kPaと低くてよいだろう。一つの例示的な実施形態では、真空135の程度は、−3.0kPa未満、そして、好ましくは−1.5kPa未満に維持される。(圧力に関して、極性は方向("−"="真空の源に向かう、"+"="圧力の源から")を意味する)を示している。−1.5kPaの真空は、−3.0kPaの真空「より小さい("less than")」)。
【0038】
低減された真空135を用いて、チップが開口部122に進入する際のチップ170の垂直速度Vvは、上記の28m/sから約19m/sまで低減され得るこの低減された速度Vvを用いて、開口部122から上面340までの移動の持続時間がより長くなり、空気ブレード150からの空気流は、チップが経路310、315に沿って移動する際にチップ170の水平軌道に影響を及ぼす時間をより多く有することができる。一つの例示的な実施形態において、経路310に沿ったチップの水平移動におけるこの増加は、図3Cに示されるように、キャビティ325の前壁380からさらに離れて、トンネル130に向かって、かつ、上部メッシュ128とのより大きな入射角で、上部メッシュ128のエッジに衝突しているチップ170を結果として生じる。このことは、これに対応して、チップ170を、トンネル130により近い下面330に、また、より大きな入射角でも、衝突させる。これによって、さらに、平均的経路318を介して開口部122に向かって飛び跳ねるチップ170の数量を低減している。
【0039】
発明者らは、また、キャビティ325の中の乱流が、チップ170の経路310、315をトンネル130に向かってオフセットさせる空気流145の有効性を減少させることも発見した。この乱流を低減するために、空気ブレード150は、図2の例示的なSCのように、または、図3Bといった、他の図において示されるように、トンネル130を指すように方向付けされるのではなく、むしろ、図3Cにも示されるように、キャビティ325の下面330に対して平行であるように方向付けられてよい。
【0040】
キャビティ325の中の乱流ならびにチップが開口部122へ進入にする際のチップの垂直方向の速度Vvは、開口部122を通じて空気を上方へ引き寄せている真空135によって生じるチップ170における上向きドラフト(upward draft)を最小化することによって、さらに低減され得る。一つの例示的な実施形態において、キャビティ325の一つまたはそれ以上の壁によって、空気をキャビティ325の中へ引き込むことができ、開口部122を介してキャビティ325の中へ引き込まれる空気を低減している。いくつかの実施形態においては、図4に示すように、前壁380、および、キャビティ(図3Dの325)の各側壁410と上部340および下部330表面のうち少なくとも一部において、メッシュ構造485、415、445、435をそれぞれに含んでおり、空気が自由にキャビティ325に進入することができる。メッシュは、チップ170がトンネル130を介する以外にキャビティ325を逃げ出すのを防ぐのに十分な大きさの、正方形、長方形、ダイヤモンド、円形、ハニカム、等といった、あらゆるパターンであってよい。
【0041】
キャビティ325の中への十分な自由空気流を用いて、開口部122へ進入する際のチップ170の垂直速度Vvは、爆発的なレーザリフトオフプロセスによって誘導される速度に概ね等しく、約12m/sであり、図2のSC関連する前述の28m/sよりも実質的に低い。メッシュの壁デザイン485、415、445、および435による垂直速度Vvにおけるこの顕著な減少は、広くされた空気ブレード150からの増加した空気流145による水平速度Vhにおける顕著な増加と一緒に、結果として、上部メッシュ128から離れて、トンネル130に向かって曲がるチップ170を生じている。その結果、チップ170は、図3Dに示されるように、上面340とのより大きな入射角でキャビティ325の上面340に当たる。
【0042】
キャビティ325の中の乱流は、空気ブレード150によって提供されている空気についてより大きな出口を備えることによって、さらに低減され得る。例示的な実施形態において、トンネル130(図3D)のフレア部分133は、また、メッシュ構造も含んでよく、空気ブレード150からの空気の実質的な部分が自由に逃げ出すことができる。同様に、SCの全体の拡張部分330、340は、メッシュ構造を含むことができる。
【0043】
図3Dおよび図4に示されるように、チップ170の水平速度Vhの増加は、また、開口部322に最も近い空気ブレード150Aが、開口部322からより遠い空気ブレード150B、150Cよりも、チップ170の垂直経路に対してより近いように、キャビティ325の前壁380を傾斜させることによっても達成され得る。
【0044】
レーザリフトオフを誘発するレーザビーム390は、サブマウント160の上のチップ170においてフォーカスされ、そして、従って、開口部322におけるよりもメッシュ128において幅広い。前壁380を傾斜させることによって、空気ブレード150A、150B、150Cは、レーザ390の(テーパ付きの(tapered))経路を妨害することなく、チップ170の経路310に対して近くに配置され得る。
【0045】
同様にして、図4に示されるように、キャビティ325の前壁380は、テーパが付けられてよく、開口部122からの距離が増加するにつれて、より広い空気ブレード150C、150B、150Aが可能である。
【0046】
また、図4に示される寸法は、次の表において示されるように、ノミナル値を有してよい。これらのノミナル値、またはそれらの実際の値に基づいて、他の寸法が選択されてよい。例えば、空気ブレード150の幅は、拡張された表面330 Weの幅および前面380のテーパの程度に基づいて、できる限り大きくてよい。
【表1】
【0047】
図3Dに戻ると、開口部322の近傍にチップ170が再進入する可能性が低減されており、図2のSCのテーパ付き開口部122はもはや必要とされず、基板160の上の開口部322の高さHtにより、チップ170が第1の空気ブレード150Aを通過するができる。障壁331の高さは、下面330の上に堆積し得るチップ170が開口部322の中へ落下するのを防止するために、チップ170のサイズの1から3倍の間であってよい。
【0048】
チップ170の水平速度Vhは、特に経路310に沿って、キャビティ325における第1の空気ブレード150Aからの空気流と出会う際のチップ170の向きによって強く影響される。チップが空気流に出会うときに、チップ170の主表面(すなわち、エッジではなく上面または底面)370が、第1の空気ブレード150Aの空気流に対して垂直(図のように)約30度の範囲内に向けられている場合に、その水平速度Vhは強く影響される。チップ170の主表面370が空気ブレード150Aの空気流に対して平行に(図示なし)向けられている場合に、チップにおける空気流の影響が実質的に低減される。
【0049】
人は、チップ170の向きは、空気流に出会うときにはランダムであると期待するかもしれないが、出願人らは、サブマウント160の上の開口部322の高さHtは、チップが第1の空気ブレード150Aの空気流と出会うときのチップの向きと強い相関を示すことを発見した。いくつかの実施形態において、高さHtは調整可能であり、そして、適切な平速度Vhが達成されるまで試行錯誤の調整が行われる。例えば、チップ170の大部分がキャビティ325の上部340および下部330に当たる場所(トンネル130により近い方がより好ましい)を観察することによって、決定されるようにである。一つの例示的な実施形態では、レーザリフトオフによって生じる約12m/sの初期垂直速度を用いると、約6mm+/−0.5mmの高さHtが最適な水平速度Vhを提供する。
【0050】
本発明は、図面および前述の説明において詳細に示され、かつ、説明されてきたが、そうした図示および説明は、説明的または例示的なものであって、限定的なものではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、キャビティ325は、ここにおいては直線的な構造(rectilinear structure)として示されているが、当業者であれば、他の形状が使用され得ることを認識するであろう。例えば、開口部322とトンネル130のフレア部分133との間に位置するキャビティ325の部分は、円筒形のトンネル130に対して結合するように長方形からより円筒形の形状へ移行してよい。同様に、トンネル130は、キャビティ325よりも小さい断面積を有するものとして示されているが、キャビティ325と同様の断面積、または、キャビティ325よりも大きな断面積でさえも有してよい。同様に、偏向スクリーン128は、図3B、3Cに示されるように、傾斜されてよい。
【0052】
開示された実施形態に対する他の変更は、図面、明細書、および添付の請求項の研究から、請求される発明を実施する際の当業者によって理解され、かつ、成され得るものである。請求項において、単語「含む("comprising")」は、他の要素またはステップを排除するものではなく、そして、不定冠詞「一つの("a"または"an")」は、複数を排除するものではない。特定の手段が異なる従属請求項において相互に引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4