【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、
− 異相ポリプロピレンであって、i)プロピレンホモポリマー、ならびに/または最大3重量%のエチレンおよび/もしくは少なくとも1種のC
4〜C
8α−オレフィンを含むプロピレンコポリマーであって、重量%は、コポリマーの重量を基準とする、プロピレンコポリマーのマトリックス相と、ii)エチレン−C
3〜C
8α−オレフィンコポリマーの分散相であって、エチレン含有量は、エチレン−C
3〜C
8α−オレフィンコポリマーの重量を基準として少なくとも40重量%である、分散相とを含有する異相ポリプロピレンと、
− 1種以上の相溶化剤であって、i)少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステル、ならびに/またはii)ポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーであって、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10の平均M/E比を有する、ブロックコポリマーである、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である、1種以上の相溶化剤と
を含む、組成物に関する。
【0010】
本発明者らは、ポリプロピレンと、ポリエチレン結晶を含むポリエチレン相とを含む組成物中に、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステル(ここで、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である)を比較的少ない量で使用した場合に相溶化効果がもたらされることを見出した。
【0011】
特に、本発明者らは、このようなポリエステルが、エチレンコポリマー相内の結晶と少なくとも部分的に共結晶化すること、および/またはエチレンコポリマー相内のエチレン結晶上にエピタキシャルに結晶化し得ることを観測した。少なくとも、特にエチレンコポリマー相内の結晶の量が少ない場合、このポリエステルは分散相のポリマーと絡み合うであろう。本発明者らはまた、ポリエステルがポリプロピレンと相互作用することも観測した。これらの観測結果に従い、本発明者らは、本明細書に定義したポリエステルを比較的少ない量で添加することにより、異相ポリプロピレンの特性を改良し得ることを見出した。ポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーに関しても、ポリプロピレンブロックがポリプロピレン相と相互作用するという同様の結果が観測された。本発明者らは、ポリエステル系相溶化剤(ポリエステルまたはポリプロピレン−ポリエステルブロックコポリマーのいずれか)が材料に一定の極性を付与し、それによって印刷適性または易塗装性が改善され、フレーム処理、コロナ放電処理、フッ素処理等の前処理の必要性が減るかまたはその強度が抑えられることをさらに見出した。
【0012】
したがって、本発明を適用することにより上述の目的が達成される。
【0013】
異相ポリプロピレン
異相ポリプロピレンは、好ましくは、60〜95重量%のマトリックス相と、5〜40重量%の分散相とを含み、重量%は、異相ポリプロピレンの重量を基準とする。異相ポリプロピレンは、70〜90重量%のマトリックス相と、30〜10重量%の分散相とを含むことができる。
【0014】
マトリックス相のポリプロピレンは、好ましくはプロピレンホモポリマーである。
【0015】
分散相のエチレンコポリマーは、好ましくはエチレンプロピレンコポリマーである。
【0016】
エチレンコポリマーがある程度の結晶化度を有すると、ポリエステルとの相互作用が高くなるために好ましい。したがって、好ましい実施形態において、分散相のエチレンコポリマーは結晶ドメインを含む。
【0017】
エチレンコポリマーのエチレン含有量の好ましい範囲は、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%または少なくとも65重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%である。エチレンコポリマーのエチレン含有量は、最大で90重量%、より好ましくは最大で85重量%であり、重量百分率は、分散相のエチレンコポリマーの重量を基準とする。
【0018】
異相ポリプロピレンのメルトフローレートは変化させることができ、目的の用途に応じて異なる。例えば、メルトフローレートは、0.1〜100g/10minとすることができる。導管用途には、メルトフローレートを0.1〜3g/10minとすることができ、一方、射出成形用途には、メルトフローレートをより高くすることができ、通常、10〜80g/10minの範囲となる。本発明者らは、異相ポリプロピレンのメルトフローレートが、本明細書に開示する相溶化剤の相溶化効果にそれほど影響しないと考えている。
【0019】
同様に、分散相の粘度を所望の用途に応じて変化させることができる。例えば、ISO−1628−1および−3(デカリン)に準拠して測定された分散相の冷キシレン可溶部の固有粘度を1.0〜4.0dl/gの範囲、例えば、1.0〜3.0dl/g、1.5〜2.5dl/gとすることができる。
【0020】
異相ポリプロピレンは、好ましくは反応器系異相ポリプロピレンである。当業者は、本発明の異相ポリプロピレンが2種以上の(反応器系)異相ポリプロピレンの混合物であってもよいことを理解するであろう。
【0021】
ポリエステル相溶化剤
本発明による組成物中のポリエステルは、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステルであり、ここで、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である。平均M/E比は数平均を意味する。
【0022】
ポリエステルが非芳香族であるとは、ポリエステルが芳香族基を含まないことを意味する。
【0023】
ポリエステルの骨格が好ましくは飽和であるとは、好ましくは二重結合を含まないことを意味する。ポリエステルの骨格は脂肪族であることが好ましい。
【0024】
ポリエステルの骨格は、一実施形態において、メチル分岐、エチル分岐、プロピル分岐、ブチル分岐、ペンチル分岐、ヘキシル分岐等の短鎖脂肪族分岐を含むことができる。このような分岐の量は、ポリエステルブロックの(共)結晶化挙動に悪影響を与える可能性があるため、好ましくは少量に維持される。他の実施形態において、骨格は、酸素、窒素、硫黄等の1種以上のヘテロ原子を含む。ポリエステルの骨格がメチレン単位をベースとする、すなわち、エステル基が非分岐脂肪族基を介して結合していることが好ましい。
【0025】
ポリエステルは、ポリエステルホモポリマーであってもポリエステルコポリマーであってもよい。
【0026】
ポリエステルがポリエステルコポリマーである場合、骨格中の2個の隣接するエステル基間の骨格炭素原子の数は、好ましくは、ポリエステル全体にランダムに分布している。さらに、ポリエステルコポリマーのエステル基間の骨格炭素原子の数(M)は、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも10、または少なくとも12である。
【0027】
ポリエステルホモポリマーの典型的な例としては、ドデカラクトン、トリデカノラクトン、テトラデカラクトン、ペンタデカラクトン、ヘキサデカラクトン、ヘプタデカラクトン、オクタデカラクトン、ノナデカラクトン、アンブレトリド、グロバリドの開環重合により得ることができるホモポリマーが挙げられる。換言すれば、ポリエステルホモポリマーの典型的な例としては、ポリドデカラクトン、ポリトリデカノラクトン、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリヘプタデカラクトン、ポリオクタデカラクトン、ポリノナデカラクトン、ポリアンブレトリド、ポリグロバリドが挙げられる。
【0028】
ポリエステルコポリマーの典型的な例としては、ドデカラクトン、トリデカノラクトン、テトラデカラクトン、ペンタデカラクトン、ヘキサデカラクトン、ヘプタデカラクトン、オクタデカラクトン、ノナデカラクトン、アンブレトリド、グロバリド、バレロラクトン、カプロラクトン、マソイアラクトン、δ−デカラクトン、ε−デカラクトン、13−ヘキシルオキサシクロトリデク10−エン−2−オン、13−ヘキシルオキサシクロトリデカン−2−オンからなる群からの少なくとも2種のラクトンのコポリマーが挙げられる。
【0029】
他の典型的なポリエステルコポリマーの例としては、ポリエステルコポリマーが少なくとも10の平均M/Eを有することを条件として、C
2〜C
30ジオールおよびC
2〜C
32二酸の組合せから調製されるAABB型コポリエステルが挙げられる。コポリマーのM/E比が少なくとも8であることがさらに好ましい。C
xという語は、ジオールまたは二酸のそれぞれに含まれる炭素原子の総数xを指す。
【0030】
ジオールとしては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘプタン−1,7−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ウンデカン−1,11−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、トリデカン−1,13−ジオール、テトラデカン−1,14−ジオール、
ペンタデカン)−1,15−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ヘプタデカン−1,17−ジオール、オクタデカン−1,18−ジオール、ノナデカン−1,19−ジオール、イコサン−1,20−ジオール、ヘンイコサン−1,21−ジオール、ドコサン−1,22−ジオール、トリコサン−1,23−ジオール、テトラコサン−1,24−ジオール、ペンタコサン−1,25−ジオール、ヘキサコサン−1,26−ジオール、ヘプタコサン−1,27−ジオール、オクタコサン−1,28−ジオール、ノナコサン−1,29−ジオール、トリアコンタン−1,30−ジオールに加えて、これらの不飽和類縁体および分岐類縁体が挙げられる。
【0031】
二酸としては、これらに限定されるものではないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ヘンイコサン二酸、ドコサン二酸、ト
リコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸ならびにこれらの不飽和類縁体および分岐類縁体が挙げられる。ジオールおよび二酸はまた、主鎖中に酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子も含むことができ、例えば、1,5−ジオキサパン−2−オンであってもよい。
【0032】
同じく環状炭酸エステルも、平均M/Eが10以上であるポリカーボネートまたはポリ(エステル−co−カーボネート)を形成するためのモノマーまたはコモノマーとして、ラクトン、ジラクトン、ヒドロキシル酸、ヒドロキシ酸エステル、もしくはジオールおよびジカルボン酸、またはこれらのモノマーの組合せと組み合わせて使用することができる。環状炭酸エステルは、例えば、トリメチレンカーボネートおよびデカメチレンカーボネートである。
【0033】
1種以上のジオールおよび二酸の組合せに替えて、10以上である所望のM/Eを有するAABBコポリエステルを製造するために環状ジラクトンを添加することもできる。環状ジラクトンの典型的な例は、エチレンアジペート、エチレンブラシレート、ブチレンアジペートである。
【0034】
他の種類のポリエステルコポリマーとしては、結果として平均M/Eが少なくとも10であるポリエステルを生成するラクトンおよびジラクトンの組合せならびに/またはC
2〜C
30ジオールおよびC
2〜C
32二酸の組合せから調製されるAB/AABBコポリエステルが挙げられる。ラクトン、ジラクトン、ジオールおよび二酸は上に示した一覧から選択することができる。
【0035】
好ましくは、ポリエステルまたはコポリエステルは、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリ(カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(ε−デカラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(エチレンブラシレート−co−ペンタデカラクトン)、ポリ[エチレン−1,19−ノナデカン
ジオエート]、ポリ[エチレン−1,23−トリコサン
ジオエート]、ポリ[プロピレン−1,19−ノナデカン
ジオエート]、ポリ[プロピレン−1,23−トリコサン
ジオエート]、ポリ[1,4−ブタ
ンジイル−1,19−ノナデカン
ジオエート]、ポリ[1,4−ブタ
ンジイル−1,23−トリコサン
ジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサ
ンジイル−1,19−ノナデカン
ジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサ
ンジイル−1,23−トリコサン
ジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカ
ンジイル−1,19−ノナデカン
ジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカ
ンジイル−1,23−トリコサン
ジオエート]、ポリ[1,23−トリコサ
ンジイル−1,19−ノナデカン
ジオエート]、ポリ[1,23−トリコサ
ンジイル−1,23−トリコサン
ジオエート]、ポリ[1,20−イコサ
ンジイル−1,20−イコサン
ジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサ
ンジイル−1,20−イコ
サンジオ
エート]、ポリ[プロピレン−1,20−イコサンジオ
エート]から選択される。
【0036】
より一般的には、ポリエステルまたはコポリエステルは、一般構造
【化1】
(式中、R
xは、有機基、好ましくは、平均鎖長が少なくとも炭素原子10個である脂肪族基であり、n
1は繰り返し単位の数であり、これは、一般に、少なくとも25、例えば少なくとも50、例えば少なくとも100である。実際的な繰り返し単位数の最大値は2000または1000とすることができる)を有する。
【0037】
有機基R
xは、分岐または直鎖の炭化水素基であり、任意選択的に、−O−に隣接する原子が炭素原子である、すなわちヘテロ原子ではないことを条件として1種以上のヘテロ原子を含む。R
xは、1種以上の−C=C−等の不飽和を含むことができる。好ましくは、R
xは、分岐または直鎖炭化水素基、より好ましくは、R
xは、分岐または直鎖脂肪族基である。R
xは、好ましくは飽和脂肪族基である。この点に関し、本明細書において使用される鎖長という語は、2個のエステル基(O=)C−O−間の最短の原子数を指す。したがって、「鎖長」には任意選択的な分岐も側基も含まれない。例えば、R
xが(C
4H
8)である場合、鎖長は4である。同様に、R
xがCH
2−C(CH
3)
2−CH
2−CH
2である場合、鎖長は同じく4である。上の一般式において、R
xは、ポリエステル全体を通して、平均鎖長が少なくとも炭素原子10個であることを条件として同一であっても異なっていてもよい。次に示す(コ)ポリエステルの一般的な構造を考えることができ、この構造は、上に示した一般構造のより詳細な実施形態と見なすことができる。
【化2】
【0038】
R
1、R
2、R
3およびR
4の鎖長は、ポリエステルでは、M/E比が少なくとも10になるように選択される。上のR
xに関する説明は、R
1〜R
4に関しても適用される。
【0039】
M/E比が高くなり過ぎると、ポリエチレン相に吸収されるポリエステルの割合が大きくなり、ポリエチレン相およびポリプロピレン相の界面で相溶化剤として機能させるために利用できる残りのポリエステルが少なくなる可能性があるため、M/E比を高くし過ぎるべきではない。したがって、M/E比は最大で32であることが好ましい。したがって、M/E比は、好ましくは10〜32、より好ましくは12〜24である。
【0040】
ポリエステルの分子量は変化させることができ、一般に、ポリエチレンと比較的容易にブレンドすることができる材料が得られるように選択される。
【0041】
数平均分子量は、好ましくは5000〜250000g/mol、より好ましくは10000〜100000g/molであり、前記数平均分子量は、ポリエチレンを標準物質として使用し、トリクロロベンゼン中160℃で実施される高温サイズ排除クロマトグラフィーにより、ポリエチレン換算分子量として測定される。
【0042】
ポリエステル − 方法
ポリエステルは、当該技術分野において知られている様々な方法により製造することができる。
【0043】
例えば、ポリエステルは、酵素的開環重合、有機触媒を用いる触媒的開環重合、(3)アニオン開環重合および金属系触媒を用いる触媒的開環重合、(4)それぞれジエンを含むエステルもしくは不飽和環状エステルのADMET(非環状ジエンメタセシス)もしくはROMP(開環メタセシス)、または(5)重縮合により調製することができる。
【0044】
環状エステル、特に大環状ラクトン(原子数10個を超える環サイズを有するラクトン)の酵素的開環重合は、非常に効果的なプロセスであることが証明されている。例えば、固定化されたカンディダ・アンタークティカ由来リパーゼ(Candida Antarctica lipase)Bを含むNovozyme 435は、ペンタデカラクトンを70℃で2時間以内に90%を超える転化率で高分子量(M
n 86,000g/mol)ポリペンタデカラクトンに重合させることができる(Bisht,K.S.;Henderson,L.A.;Gross,R.A.;Kaplan,D.L.;Swift,G.Macromolecules 1997,30,2705−2711;Kumar,A.;Kalra,B.;Dekhterman,A.;Gross,R.A.Macromolecules 2000,33,6303−6309)。固定化されたフミコラ・インソレンス由来クチナーゼ(Humicola insolenscutinase)を用いることにより、ペンタデカラクトン重合に関して同等の結果が得られる(Hunson,M.;Abul,A.;Xie,W.;Gross,R.Biomacromolecules 2008,9,518−522)。
【0045】
1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エン(TBD)等の有機触媒を用いてラクトンおよびペンタデカラクトン等の大環状ラクトンを選択的に開環することにより、対応するホモポリマーおよびコポリマーが生成する。転化率は高いものの、報告されている全ての場合において、得られた生成物の分子量は比較的低いままである(Bouyahyi,M.;Pepels,M.P.F.;Heise,A.;Duchateau,R.Macromolecules 2012,45,3356−3366)。
【0046】
高分子量ポリ大環状ラクトンおよびラクトン−大環状ラクトンコポリマーを製造するための最も知られている経路は、アニオン開環重合または金属系触媒を用いる触媒的開環重合によるものである。これまで幅広い触媒が適用されてきた。アルミニウム−サレン触媒(国際公開第2012/065711号パンフレット、van der Meulen,I.;Gubbels,E.;Huijser,S.;Sablong,R.;Koning,C.E.;heise,A.;Duchateau,R.Macromolecules 2011,44,4301−4305)および亜鉛フェノキシイミン触媒(国際公開第2014/188344号パンフレット;Bouyahyi,M.;Duchateau,R.Macromolecules 2014,47,517−524;Jasinska−Walc,L.;Hansen,M.R.;Dudenko,D.;Rozanski,A.;Bouyahyi,M.;Wagner,M.;Graf,R.;Duchateau,R.Polym.Chem.2014,5,3306−3320)は、大環状ラクトンの開環重合による高分子量のホモポリマーおよびコポリマーの製造に関して知られている最も活性の高い触媒である。複雑な補助配位子系から構成されるディスクリートな触媒以外に、単純な金属アルコキシドも適用することができる。例えば、KOtBuおよびMg(BHT)
2THF
2は、ラクトンおよび大環状ラクトンを開環重合するための強力な触媒/開始剤となることが示されている(Jedlinski,Z.;Juzwa,M.;Adamus,G.;Kowalczuk,M.;Montaudo,M.Macromol.Chem.Phys.1996,197,2923−2929;Wilson,J.A.;Hopkins,S.A.;Wright,P.M.;Dove,A.P.Polym.Chem.2014,5,2691−2694;Wilson,J.A.;Hopkins,S.A.;Wright,P.M.;Dove,A.P.macromolecules 2015,48,950−958)。
【0047】
ADMETおよびROMPは、高M/E値を有するポリエステルを製造するための興味深い手法である。ADMETおよびROMPの違いは、前者が段階成長プロセスであるのに対し、後者が連鎖成長プロセスである点である。しかしながら、この方法は、結果として著しく高い分子量を有するポリエステルを生成する。オレフィンメタセシスの欠点は、最終的に得られるのが飽和生成物であるため、水素化工程が必要となることである。このプロセスはまた、かなり費用が嵩む(Fokou,P.A.;Meier,M.A.R.Macromol.Rapid.Commun.2010,31,368−373;Vilela,C.;Silvestre,A.J.D.;Meier,M.A.R.Macromol.Chem.Phys.2012,213,2220−2227;Pepels,M.P.F.;Hansen,M.R.;Goossens,H.;Duchateau,R.Macromolecules 2013,46,7668−7677)。
【0048】
ω−ヒドロキシ脂肪酸またはω−ヒドロキシ脂肪酸エステルの重縮合としては、酵素または金属系触媒のいずれかを用いるものが報告されている。例えば、カンディダ・アンタークティカ由来リパーゼ(Candida Antarctica lipase)B(Novozyme 435)を用いることにより、12−ヒドロキシドデカン酸等のω−ヒドロキシ脂肪酸が重合されるが、重合度はかなり低いままである(Mahapatro,A.;Kumar,A.;Gross,R.A.Biomacromolecules 2004,5,62−68)。また、同じ酵素が、脂肪酸系二酸をジオールと共重合させて分子量が適度に高いポリエステルを得るためにも使用されている(Yang,X.;Lu,W.;Zhang,X.;Xie,W.;Cai,M.;Gross,R.A.Biomacromolecules 2010,11,259−268)。チタンを触媒とするω−ヒドロキシ脂肪酸エステルの重縮合は、高分子量ポリエステルを生成する効率が非常に高いことが示されている(Liu,C.;Liu,F.;Cai,J.;Xie,W.;Long,T.E.;Turner,S.R.;Lyons,A.;Gross,R.A.Biomacromolecules 2011,12,3291−3298)。
【0049】
本発明に適用するのに好適なポリエステルを製造するための方法は、例えば、国際公開第2012/065711号パンフレット、国際公開第2014/203209号パンフレット、国際公開第2014/147546号パンフレットにさらに開示されており、これらの内容は参照により本明細書に援用される。
【0050】
ブロックコポリマー相溶化剤
ポリエステルブロック
本発明による組成物の相溶化剤のポリエステルブロックは、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステルであり、ここで、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である。平均M/E比を用いる場合、これは数平均を意味する。M/E比は、少なくとも12、少なくとも20、少なくとも50とすることも、または少なくとも100とすることさえできる。しかしながら、印刷適性を発現させるために、一方ではポリエチレン相と相互作用させることと、他方では材料に十分な極性を付与することとのバランスを見出すと有利である。したがって、M/E比は、最大で50、好ましくは最大で32であることが好ましい。したがって、ポリエステルブロックにおけるM/E比の好ましい範囲は10〜32である。
【0051】
ポリエステルが非芳香族であるとは、ポリエステルが芳香族基を含まないことを意味する。
【0052】
ポリエステルの骨格が好ましくは飽和であるとは、好ましくは二重結合を含まないことを意味する。ポリエステルの骨格が脂肪族であることが好ましい。
【0053】
ポリエステル骨格は、一実施形態において、メチル分岐、エチル分岐、プロピル分岐、ブチル分岐、ペンチル分岐、ヘキシル分岐等の単鎖脂肪族分岐を含む。このような分岐の量はポリエステルブロックの(共)結晶化挙動に悪影響を与える可能性があるため、好ましくは少量に維持される。他の実施形態において、骨格は、酸素、窒素、硫黄等の1種以上のヘテロ原子を含む。ポリエステルの骨格がメチレン単位をベースとする、すなわち、エステル基が非分岐脂肪族基を介して結合していることが好ましい。
【0054】
ポリエステルは、ポリエステルホモポリマーであってもポリエステルコポリマーであってもよい。
【0055】
ポリエステルがポリエステルコポリマーである場合、骨格中の隣接する2個のエステル基間の骨格炭素原子の数は、好ましくはポリエステル全体にランダムに分布している。さらに、ポリエステルコポリマー中のエステル基間の骨格炭素原子の数(M)は、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも10または少なくとも12である。
【0056】
ポリエステルホモポリマーの典型的な例としては、ドデカラクトン、トリデカノラクトン、テトラデカラクトン、ペンタデカラクトン、ヘキサデカラクトン、ヘプタデカラクトン、オクタデカラクトン、ノナデカラクトン、アンブレトリド、グロバリドの開環重合により得られるホモポリマーが挙げられる。換言すれば、ポリエステルホモポリマーの典型的な例としては、ポリドデカラクトン、ポリトリデカノラクトン、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリヘプタデカラクトン、ポリオクタデカラクトン、ポリノナデカラクトン、ポリアンブレトリド、ポリグロバリドが挙げられる。
【0057】
ポリエステルコポリマーの典型的な例としては、ドデカラクトン、トリデカノラクトン、テトラデカラクトン、ペンタデカラクトン、ヘキサデカラクトン、ヘプタデカラクトン、オクタデカラクトン、ノナデカラクトン、アンブレトリド、グロバリド、バレロラクトン、カプロラクトン、マソイアラクトン、δ−デカラクトン、ε−デカラクトン、13−ヘキシルオキサシクロトリデク10−エン−2−オン、13−ヘキシルオキサシクロトリデカン−2−オンを含む群からの少なくとも2種のラクトンのコポリマーが挙げられる。
【0058】
ポリエステルコポリマーの他の典型的な例としては、ポリエステルコポリマーが少なくとも10の平均M/Eを有することを条件として、C
2〜C
30ジオールおよびC
2〜C
32二酸の組合せから調製されるAABB型コポリエステルが挙げられる。さらに、コポリマーのM/E比は少なくとも8であることが好ましい。C
xという語は、それぞれジオールまたは二酸に含まれる炭素原子数xを表す。
【0059】
ジオールとしては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘプタン−1,7−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ウンデカン−1,11−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、トリデカン−1,13−ジオール、テトラデカン−1,14−ジオール、エプンタデカン−1,15−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ヘプタデカン−1,17−ジオール、オクタデカン−1,18−ジオール、ノナデカン−1,19−ジオール、イコサン−1,20−ジオール、ヘンイコサン−1,21−ジオール、ドコサン−1,22−ジオール、トリコサン−1,23−ジオール、テトラコサン−1,24−ジオール、ペンタコサン−1,25−ジオール、ヘキサコサン−1,26−ジオール、ヘプタコサン−1,27−ジオール、オクタコサン−1,28−ジオール、ノナコサン−1,29−ジオール、トリアコンタン−1,30−ジオールに加えて、これらの不飽和類縁体および分岐類縁体が挙げられる。ラクトンはまた、主鎖中に酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子も含むことができ、例えば、1,5−ジオキサパン−2−オンであってもよい。
【0060】
環状炭酸エステルも同様に、平均M/Eが10以上であるポリカーボネートまたはポリ(エステル−co−カーボネート)を形成するためのモノマーまたはコモノマーとして、ラクトン、ジラクトン、ヒドロキシル酸、ヒドロキシ酸エステル、もしくはジオールおよびジカルボン酸、またはこれらのモノマーの組合せと組み合わせて使用することができる。環状炭酸エステルの例は、トリメチレンカーボネートおよびデカメチレンカーボネートである。
【0061】
二酸としては、これらに限定されるものではないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカンデ二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ヘンイコサン二酸、ドコサン二酸、トロコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸ならびにこれらの不飽和類縁体および分岐類縁体が挙げられる。ジオールおよび二酸はまた、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子も主鎖中に含むことができる。
【0062】
1種以上のジオールおよび二酸の組合せに替えて10以上である所望のM/Eを有するAABBコポリエステルを製造するために環状ジラクトンを添加することもできる。環状ジラクトンの典型的な例は、エチレンアジペート、エチレンブラシレート、ブチレンアジペートである。
【0063】
他の種類のポリエステルコポリマーとしては、結果として平均M/Eが少なくとも10であるポリエステルを生成するラクトンおよびジラクトンの組合せならびに/またはC
2〜C
30ジオールおよびC
2〜C
32二酸の組合せから調製されるAB/AABBコポリエステルが挙げられる。ラクトン、ジラクトン、ジオールおよび二酸は上の一覧から選択することができる。
【0064】
好ましくは、ポリエステルまたはコポリエステルは、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリ(カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(ε−デカラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(エチレンブラシレート−co−ペンタデカラクトン)、ポリ[エチレン−1,19−ノナデカン二酸]、ポリ[エチレン−1,23−トリコサン二酸]、ポリ[プロピレン−1,19−ノナデカン二酸]、ポリ[プロピレン−1,23−トリコサン二酸]、ポリ[1,4−ブタジイル−1,19−ノナデカン二酸]、ポリ[1,4−ブタジイル−1,23−トリコサン二酸]、ポリ[1,6−ヘキサジイル−1,19−ノナデカン二酸]、ポリ[1,6−ヘキサジイル−1,23−トリコサン二酸]、ポリ[1,19−ノナデカジイル−1,19−ノナデカン二酸]、ポリ[1,19−ノナデカジイル−1,23−トリコサン二酸]、ポリ[1,23−トリコサジイル−1,19−ノナデカン二酸]、ポリ[1,23−トリコサジイル−1,23−トリコサン二酸]、ポリ[1,20−イコサジイル−1,20−イコサン二酸]、ポリ[1,6−ヘキサジイル−1,20−イコセンジオネート]、ポリ[プロピレン−1,20−イコサンジオネート]から選択される。
【0065】
より一般的には、ポリエステルまたはコポリエステルは、一般式
【化3】
(式中、R
xは、有機基、好ましくは、平均鎖長が少なくとも炭素原子10個である脂肪族基であり、n
1は繰り返し単位の数であり、これは、一般に、少なくとも25、好ましくは少なくとも50、例えば少なくとも100である)を有する。繰り返し単位数n
1は、好ましくは最大で2000、例えば、最大で1000または500である。
【0066】
有機基R
xは、分岐または直鎖炭化水素基であり、任意選択的に、−O−に隣接する原子が炭素原子である、すなわちヘテロ原子ではないことを条件として1種以上のヘテロ原子を含む。R
xは、1種以上の−C=C−等の不飽和を含むことができる。好ましくは、R
xは分岐または直鎖炭化水素基であり、より好ましくは、R
xは分岐または直鎖脂肪族基である。好ましくは、R
xは飽和脂肪族基である。この点に関し、本明細書において使用される鎖長という語は、2個のエステル基(O=)C−O−間の最短の原子数を指す。したがって、「鎖長」には任意選択的な分岐も側基も含まれない。例えば、R
xが(C
4H
8)である場合、鎖長は4である。同様に、R
xがCH
2−C(CH
3)
2−CH
2−CH
2である場合、鎖長は同じく4である。上の一般式において、R
xは、ポリエステル全体を通して、平均鎖長が少なくとも炭素原子10個であることを条件として同一であっても異なっていてもよい。次に示す(コ)ポリエステルの一般構造を考えることができ、これらの構造は、上に示した一般構造のより詳細な実施形態である。
【化4】
【0067】
R
1、R
2、R
3およびR
4の鎖長は、ポリエステルの場合、M/E比が少なくとも10となるように選択される。上のR
xの説明は、R
1〜R
4にも適用される。
【0068】
平均M/E比は、好ましくは少なくとも12である。ポリエステルのM/E比が高いほど、ポリエチレンとの類似性が高くなると共に、ポリエチレン相との相互作用が高くなるであろう。それと同時に、M/E比が非常に高いポリエステルは、製造の費用効率が低くなる。加えて、その場合には材料の極性が低くなり、印刷適性を発現させるために前処理が必要となるであろう。
【0069】
したがって、M/E比は最大で32とすることができる。したがって、M/E比は10〜32、より好ましくは12〜24とすることができる。
【0070】
ポリプロピレンブロック
本発明による組成物の相溶化剤中のポリプロピレンブロックは、ポリプロピレンブロックの重量を基準として少なくとも90重量%のプロピレンを含むプロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマーである。コモノマーは、エチレンまたはC
3〜C
8α−オレフィンであってもよく、好ましくはエチレンである。好ましくは、コモノマーの量は、最大で5重量%、より好ましくは最大で2重量%である。コモノマーの量が多過ぎると材料が完全に非晶性になる可能性があり、これは機械的性質という観点で特定の用途に望ましくない。
【0071】
ブロックコポリマーの種類
本発明によるブロックコポリマーは、好ましくはAB型またはBAB型(ここで、Aはポリプロピレンを表し、およびBはポリエステルを表す)である。
【0072】
ブロックコポリマーはまた、ポリプロピレン骨格を有し、n個のポリエステル分岐がその上にグラフトされている(ここで、nは少なくとも1である)構造AB
nを有するグラフトブロックコポリマーであってもよい。グラフトコポリマーの場合、骨格がポリプロピレンブロックと見なされる。
【0073】
グラフトの量nは、最大で20、好ましくは最大で15または10である。グラフトの数が多過ぎるとポリプロピレン骨格が組成物中のポリプロピレン相と十分に相互作用しなくなるため、多くし過ぎるべきではない。
【0074】
ブロックコポリマーが2個以上のB(すなわち、ポリエステル)ブロックを含む一実施形態において、これらのBブロックの長さは同一であっても異なっていてもよい、すなわち、ブロックコポリマーを製造するためのプロセスの条件に応じて分子量が同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
本発明の組成物に相溶化剤として使用されるブロックコポリマーの数平均分子量は、好ましくは5000〜250000g/mol、より好ましくは10000〜100000g/molであり、前記数平均分子量は、トリクロロベンゼン中160℃でポリエチレンを標準物質として用いて実施される高温サイズ排除クロマトグラフィーによりポリエチレン換算分子量として測定される。
【0076】
製造方法:ブロックコポリマー
一実施形態において、ブロックコポリマーは、3段法により製造することができる。
【0077】
第1の工程(A)において、プロピレンおよび任意選択的なオレフィン性コモノマーを、触媒系を用いて重合することにより、少なくとも1つの鎖末端上に主族金属を含む第1のポリプロピレンブロックを得る。この触媒系は、
i)IUPAC元素周期律表第3〜10族の金属を含む金属触媒または金属触媒前駆体;および
ii)少なくとも1種の連鎖移動剤;および
iii)任意選択的な助触媒
を含む。
【0078】
したがって、工程(A)では、ポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)は、触媒、助触媒、少なくとも1種の連鎖移動剤および任意選択的なさらなるチェーンシャトリング試剤の存在下における配位連鎖移動(coordinative chain transfer)重合(CCTP)により調製することができる。使用される連鎖移動剤は、通常、ヒドロカルビルアルミニウム化学種、ヒドロカルビルホウ素化学種および/またはヒドロカルビル亜鉛化学種)である。このプロセスにより、末端が金属原子で官能基化されたポリプロピレン鎖またはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)鎖が得られる。これは酸素等の酸化剤と容易に反応する。
【0079】
第2の工程(B)では、工程A)で得られた少なくとも1つの鎖末端に主族金属を含む第1のポリプロピレンブロックを少なくとも1種の酸化剤と反応させ、続いて少なくとも1種の金属置換試剤(metal substituting agent)と反応させることにより、少なくとも1つの官能基化された鎖末端を含む第1のポリプロピレンブロックを得る。好ましくは、この官能基化された鎖末端はヒドロキシル基を含む。
【0080】
このように、工程(B)では、工程(A)で得られた生成物を酸素で処理した後、酸性化されたアルコール等のプロトン性基質で処理することにより、金属が除去され、ヒドロキシルで末端が官能基化されたポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)生成物が得られる。
【0081】
第3の工程(C)では、少なくとも1種の第2のポリマーブロックを第1のポリプロピレンブロック上に形成することによりブロックコポリマーが得られる。ここでは、工程B)で得られた第1のポリプロピレンブロックの官能基化された鎖末端が開始剤として使用される。第3の工程は、エステル交換または(好適な)ラクトンの開環重合(ROP)により実施することができる。
【0082】
このように、工程(C)では、工程(B)の生成物がジブロックコポリマーを形成するための高分子開始剤として使用される。この工程(C)において、ラクトンの開環重合または予め合成されたポリエステルのエステル交換は、工程(B)の生成物である鎖末端がヒドロキシルで官能基化されたポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)と、開環重合触媒および/またはエステル交換触媒との存在下で実施される。工程(C)は、(芳香族)炭化水素の溶液または溶融物中で実施することができる。ポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)−ポリエステルブロックコポリマーを製造するためのプロセスは、例えば、HDPE−PLLAジブロックコポリマー(Chem.Eur.J.2012,18,13974−13978)またはシンジオタクチックPP−ポリエステルジブロックコポリマー(Macromolecules 2010,42,3073−3085)に関して報告されているプロセスに類似するプロセスである。エステル交換反応は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)およびポリカプロラクトンのカップリングに関して報告されている反応に相当するものである(Macromol.Mater.Eng.2009,294,643−650)。
【0083】
したがって、上に述べた工程A〜Cは、カスケード様プロセス(cascade−like process)において、例えば、同一の反応器もしくは槽または後続する/連結された反応器もしくは槽のいずれかで、好ましくは中間工程および/またはワークアップ工程および/または乾燥工程および/または精製工程を追加することなく、さらに好ましくは連続的に実施することもできる。カスケード様プロセスにおいて、ポリマー調製は、金属置換工程(例えば、加水分解による)を行うことなく実施することができる。本発明に関連する反応器として押出機も考えられることに留意されたい。
【0084】
製造方法:グラフトブロックコポリマー
グラフトブロックコポリマー、すなわちポリエステルブロックがポリプロピレン骨格上にまたはポリプロピレン骨格からグラフトされているブロックコポリマーは3段法で製造することができる。
【0085】
第1の工程(D)では、少なくとも1種の第1の種類のオレフィンモノマーと、少なくとも1種の第2の種類の、金属で活性抑制された(metal−pacified)官能基化されたオレフィンモノマーとを、触媒系を用いて共重合することにより、1種または複数種の金属で活性抑制された官能基化短鎖分岐を有するポリプロピレン主鎖が得られる。この触媒系は、
i)IUPAC元素周期律表第3〜10族からの金属を含む金属触媒または金属触媒前駆体;
ii)任意選択的な助触媒
を含む。
【0086】
このように、工程(D)では、プロピレンは、活性抑制されたヒドロキシル官能基化オレフィンコモノマーを用いて、他の触媒を用いるオレフィン重合と同様にして(ヒドロキシル官能基化オレフィン性コモノマーが共重合前にTiBA等のアルキルアルミニウムと反応させることによって活性抑制されている点が異なる)、触媒および助触媒の存在下で共重合される。
【0087】
第2の工程(E)では、工程(D)で得られた、1種または複数種の金属で活性抑制された官能基化短鎖分岐を有するポリプロピレン主鎖を、少なくとも1種の金属置換試剤と反応させることにより、1種または複数種の官能基化された短鎖分岐を有するポリプロピレン主鎖が得られる。好ましくは、官能基化された鎖末端はヒドロキシル基を含む。
【0088】
すなわち、工程(E)では、工程(
D)の生成物を酸性化アルコール等のプロトン性基質で処理することにより保護基が除去される。工程(E)の生成物は、プロピレンとヒドロキシル官能基化オレフィンとのランダムコポリマーであり、ヒドロキシル基は短鎖分岐に位置する。
【0089】
第3の工程(F)では、ポリプロピレン主鎖上に1つ以上のポリエステル側鎖を形成することによりグラフトコポリマーを得ることができる。ここでは、工程(E)で得られたポリプロピレン主鎖上の官能基化された短鎖分岐を開始剤として使用することができる。工程(F)は、エステル交換または(好適な)ラクトンの開環重合(ROP)により実施することができる。
【0090】
このように、工程(E)の生成物は、次の工程(F)において、グラフトブロックコポリマーを形成するための高分子開始剤として使用される。工程(F)では、ラクトンの開環重合または予め合成しておいたポリエステルのエステル交換が、工程(
E)で得られたプロピレンおよびヒドロキシル官能基化オレフィンのランダムコポリマーと、開環重合触媒および/またはエステル交換触媒との存在下で実施される。工程(
F)は、(芳香族)炭化水素の溶液中または溶融物中で実施することができる。プロピレンおよびヒドロキシル官能基化オレフィンおよびポリプロピレン−グラフト−ポリエステルブロックコポリマーを製造するためのプロセスは、例えば、エチレンおよびヒドロキシル官能基化オレフィンを共重合させた後、グラフトコポリマーを形成させることに関して報告されているプロセスに類似するプロセスである(J.Polym.Sci.Part A Polym.Chem.2014,52,2146−2154)。エステル交換反応は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)およびポリカプロラクトンのカップリングに関して報告されている反応に相当する反応である(Macromol.Mater.Eng.2009,294,643−650)。
【0091】
上に述べた工程D〜Fは、カスケード様プロセスにおいて、例えば、同一の反応器もしくは槽または後続する/連結された反応器もしくは槽のいずれかで、好ましくは中間工程および/またはワークアップ工程および/または乾燥工程および/または精製工程を追加することなく、さらに好ましくは連続的に実施することができる。カスケード様プロセスにおけるポリマーの調製は、好ましくは、金属置換工程(例えば、加水分解による)を行うことなく実施することができる。本発明に関連する反応器として押出機も考えられることに留意されたい。
【0092】
ポリプロピレン
本発明組成物中のポリプロピレンは、
− 1種以上のプロピレンホモポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー、好ましくは、プロピレンエチレンまたはプロピレンC
4〜C
8α−オレフィンランダムコポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンブロックコポリマー、
− マトリックス相および分散相を含む1種以上の異相ポリプロピレンコポリマーであって、マトリックス相は、プロピレンホモポリマー、ならびに/または最大で3重量%のエチレンおよび/もしくは少なくとも1種のC
4〜C
8α−オレフィンを含むプロピレンコポリマーであって、重量%は、マトリックス相を基準とする、プロピレンコポリマーからなり、および分散相は、エチレン−C
3〜C
8α−オレフィンコポリマーからなる、1種以上の異相ポリプロピレンコポリマー、
− 上述のポリプロピレンのいずれかの混合物
とすることができる。
【0093】
アイソタクチックポリプロピレンが好ましい。
【0094】
ポリプロピレンが異相コポリマーである場合、マトリックス相がプロピレンホモポリマー
および/またはプロピレン−エチレンコポリマー(最大で3重量%のエチレンを含む)であることと、さらに、分散相がエチレンプロピレンコポリマー(20〜80重量%のプロピレンおよび80〜20重量%のエチレンを含む)(ここで、重量%は分散相を基準とする)であることとが好ましい。
【0095】
ポリプロピレンは、好ましくは、プロピレンホモポリマーであるか、またはプロピレンエチレンランダムコポリマーもしくはプロピレンC
4〜C
8α−オレフィンランダムコポリマーである。ランダムコポリマーは、前記エチレンまたはα−オレフィンを、コポリマーを基準として最大で5重量%含む。ランダムコポリマーは、好ましくは、プロピレン−エチレンランダムコポリマーである。
【0096】
好ましくは、ポリプロピレンのメルトフローレートは、ISO 1133(2.16kg、230℃)に準拠して測定されて0.1〜100g/10minである。より好ましくは、メルトフローレートは5.0〜60g/10minである。
【0097】
組成物
本発明の組成物中の相溶化剤の量は、異相ポリプロピレンと相溶化剤との合わせた重量を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜10重量%、例えば2〜10重量%または3〜8重量%である。
【0098】
異相ポリプロピレンの量は、好ましくは、異相ポリプロピレンと相溶化剤との合わせた重量を基準として少なくとも80重量%、例えば、少なくとも90重量%である。
【0099】
本発明の組成物は、当該技術分野において一般的な添加剤、例えば、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、赤外線吸収剤、難燃剤、離型剤等をさらに含むことができる。このような添加剤は、組成物の重量を基準として最大で約5重量%の量で含まれる。
【0100】
本発明の組成物はまた、タルク、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス小板(glass platelet)、有機繊維、炭素繊維、セルロース系繊維等の強化剤をさらに含むことができる。タルクおよびガラス繊維が好ましい。強化剤の量は、組成物の重量を基準として1〜30重量%とすることができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、タルクを組成物の重量を基準として1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%を含む。
【0101】
本発明の組成物のメルトフローレートは、意図された用途に応じて変化させることができる。例えば、メルトフローレートは、0.1〜100g/10min、例えば10〜80g/10minまたは0.1〜3g/10min(ISO 1133、2.16kg、230℃)とすることができる。
【0102】
本発明の組成物は他のエラストマーも含むことができる。これらの他のエラストマーがエチレンコポリマーである場合、これらの他のエラストマーが(異相)ポリプロピレンの分散相を形成するか、または(異相)ポリプロピレンの分散相に溶解する可能性を考慮して、その量を相溶化剤の量の計算の基準量に追加すべきである。
【0103】
当業者は、本発明による組成物が熱可塑性組成物であることを理解するであろう。
【0104】
物品
さらに、本発明は、本明細書に開示する組成物を含む物品に関する。さらに本発明は、本明細書に開示する組成物から製造される物品に関する。一般に、この組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形等の成形技法を用いて物品に変換される。したがって、本発明は、本発明による組成物を成形することにより得られる物品にも関する。異形押出または管押出により異形材または管を製造することも可能である。
【0105】
成形または押出により得られる物品において、エチレンコポリマー相のポリエステルの一部は共結晶化および/またはエピタキシャルに結晶化しており、他の部分はポリプロピレン相内で絡み合っている。あるいは、ポリエステルは分散相のエチレンコポリマーと絡み合っている。
【0106】
物品は、自動車内装品、自動車外装品、家庭用電気器具および/またはであってもよい。
【0107】
使用
さらなる態様において、本発明は、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステル、ならびに/またはポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーであって、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10の平均M/E比を有する、ブロックコポリマーの、異相ポリプロピレンの相溶化剤としての使用であって、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である、使用に関する。
【0108】
さらなる他の態様において、本発明は、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステル、ならびに/またはポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーであって、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10の平均M/E比を有する、ブロックコポリマーの、異相ポリプロピレンの機械的性質を向上させるための相溶化剤としての前記異相ポリプロピレンにおける使用であって、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である、使用に関する。
【0109】
ここで、次に示す非限定的な実施例に基づいて本発明をさらに説明する。
【0110】
ポリエステル相溶化剤
本発明者らは、数種のポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリペンタデカラクトンの組成物を調製し、これらのブレンド物を電子顕微鏡で調査した。